IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

特許7230539音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム
<>
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図1
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図2
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図3
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図4
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図5
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図6
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図7
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図8
  • 特許-音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】音信号処理装置、音信号処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
H04R3/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019014030
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020123803
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 康祐
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-184812(JP,A)
【文献】特開2016-178409(JP,A)
【文献】特開2018-201088(JP,A)
【文献】特開2016-225691(JP,A)
【文献】特開2016-225692(JP,A)
【文献】特開2006-033153(JP,A)
【文献】特開2004-056332(JP,A)
【文献】YAMAHA PM1D System Software V1.6 Supplementary Manual,2003年,pages 1-56
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コピーすべきパラメータを規定したプリセットの設定を受け付けるプリセット設定受付部と、
コピー元チャンネルの指定を受け付けるコピー元指定受付部と、
前記プリセットの選択を受け付けるプリセット選択受付処理と、
コピー先チャンネルの指定を受け付けるコピー先指定受付部と、
選択された前記プリセットに規定されている前記コピーすべきパラメータに基づいて、前記コピー元チャンネルのパラメータを前記コピー先チャンネルのパラメータにコピーするコピー処理部と、
を備え
前記プリセットの設定には、プラグインの情報が含まれていて、
前記コピー処理部は、前記プリセットの設定に前記プラグインの情報が含まれている場合、マウントすべきプラグインに必要なリソースを確認し、前記リソースに空きがある場合、対応するプラグインをマウントして、前記コピー先チャンネルに該対応するプラグインを設定する、
音信号処理装置。
【請求項2】
前記コピー処理部は、前記コピー元チャンネルの再生方式と、前記コピー先チャンネルの再生方式と、を確認し、
前記コピー元チャンネルと前記コピー先チャンネルとが異なる再生方式のチャンネルである場合には、前記コピー先チャンネルの再生方式のプラグインで、かつ前記コピー元チャンネルのプラグインと同一の種類または類似する種類のプラグインをマウントする、
請求項に記載の音信号処理装置。
【請求項3】
前記コピー処理部は、前記対応するプラグインが無い場合に、前記プラグインをマウントしない、
請求項または請求項に記載の音信号処理装置。
【請求項4】
前記コピー処理部は、前記対応するプラグインが無い場合に、警告表示を行なう、
請求項に記載の音信号処理装置。
【請求項5】
該リソースに空きがない場合に、前記プラグインをマウントしない、
請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の音信号処理装置。
【請求項6】
前記コピー処理部は、前記リソースに空きがない場合に、警告表示を行なう、
請求項に記載の音信号処理装置。
【請求項7】
前記確認は、前記コピー先チャンネルのパラメータにコピーする前に予め行なう、
請求項または請求項に記載の音信号処理装置。
【請求項8】
前記プリセットの設定には、複数チャンネルの信号を入力してゲイン調整を行ない、前記複数チャンネルの信号を出力するオートミキサに関する情報が含まれていて、
前記コピー処理部は、前記プリセットの設定に、前記オートミキサに関する情報が含まれている場合には、前記複数チャンネルの割り当てに係る情報をコピーして、パラメータの値をコピーしない、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の音信号処理装置。
【請求項9】
コピーすべきパラメータを規定したプリセットの設定を受け付けることと、
コピー元チャンネルの指定を受け付けることと、
前記プリセットの選択を受け付けることと、
コピー先チャンネルの指定を受け付けることと、
選択された前記プリセットに規定されている前記コピーすべきパラメータに基づいて、前記コピー元チャンネルのパラメータを前記コピー先チャンネルのパラメータにコピーすることと、
を備え
前記プリセットの設定には、プラグインの情報が含まれていて、
前記コピーすることにおいて、前記プリセットの設定に前記プラグインの情報が含まれている場合、マウントすべきプラグインに必要なリソースを確認し、前記リソースに空きがある場合、対応するプラグインをマウントし、前記コピー先チャンネルに該対応するプラグインを設定する、
音信号処理方法。
【請求項10】
前記コピーすることにおいて、前記コピー元チャンネルの再生方式と、前記コピー先チャンネルの再生方式と、を確認し、
前記コピー元チャンネルと前記コピー先チャンネルとが異なる再生方式のチャンネルである場合には、前記コピー先チャンネルの再生方式のプラグインで、かつ前記コピー元チャンネルのプラグインと同一の種類または類似する種類のプラグインをマウントする、
請求項に記載の音信号処理方法。
【請求項11】
前記コピーすることにおいて、前記対応するプラグインが無い場合に、前記プラグインをマウントしない、
請求項または請求項10に記載の音信号処理方法。
【請求項12】
前記コピーすることにおいて、前記対応するプラグインが無い場合に、警告表示を行なう、
請求項11に記載の音信号処理方法。
【請求項13】
該リソースに空きがない場合に、前記プラグインをマウントしない、
請求項乃至請求項12のいずれか1項に記載の音信号処理方法。
【請求項14】
前記コピーすることにおいて、前記リソースに空きがない場合に、警告表示を行なう、
請求項13に記載の音信号処理方法。
【請求項15】
前記確認は、前記コピー先チャンネルのパラメータにコピーする前に予め行なう、
請求項13または請求項14に記載の音信号処理方法。
【請求項16】
前記プリセットの設定には、複数チャンネルの信号を入力してゲイン調整を行ない、前記複数チャンネルの信号を出力するオートミキサに関する情報が含まれていて、
前記コピーすることにおいて、前記プリセットの設定に、前記オートミキサに関する情報が含まれている場合には、前記複数チャンネルの割り当てに係る情報をコピーして、パラメータの値をコピーしない、
請求項乃至請求項15のいずれか1項に記載の音信号処理方法。
【請求項17】
コピーすべきパラメータを規定したプリセットの設定を受け付けることと、
コピー元チャンネルの指定を受け付けることと、
前記プリセットの選択を受け付けることと、
コピー先チャンネルの指定を受け付けることと、
選択された前記プリセットに規定されている前記コピーすべきパラメータに基づいて、前記コピー元チャンネルのパラメータを前記コピー先チャンネルのパラメータにコピーすることと、
前記コピーすることにおいて、前記プリセットの設定にプラグインの情報が含まれている場合、マウントすべきプラグインに必要なリソースを確認し、前記リソースに空きがある場合、対応するプラグインをマウントし、前記コピー先チャンネルに該対応するプラグインを設定することと、
を音信号処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の一実施形態は、音信号処理装置、音信号処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、あるチャンネルのパラメータの内容を他のチャンネルにコピーする、チャンネルコピー機能が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-074325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チャンネルのコピーを行なう場合に、ユーザは、コピーしたいパラメータと、コピーしたくないパラメータと、がある。
【0005】
そこで、この発明の一実施形態は、チャンネルのコピーを行なう場合に、コピーしたいパラメータだけを簡単にコピーすることができる、音信号処理装置、音信号処理方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る音信号処理装置は、コピーすべきパラメータを規定したプリセットの設定を受け付けるプリセット設定受付部と、コピー元チャンネルの指定を受け付けるコピー元指定受付部と、前記プリセットの選択を受け付けるプリセット選択受付処理と、コピー先チャンネルの指定を受け付けるコピー先指定受付部と、選択された前記プリセットに規定されている前記コピーすべきパラメータに基づいて、前記コピー元チャンネルのパラメータを前記コピー先のチャンネルのパラメータにコピーするコピー処理部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、チャンネルのコピーを行なう場合に、コピーしたいパラメータだけを簡単にコピーすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】オーディオミキサの構成を示すブロック図である。
図2】信号処理部14、オーディオI/O13、およびCPU18で行われる信号処理の等価ブロック図である。
図3】ミキサ1の操作パネルの構成を示す図である。
図4】GUIの一例を示す図である。
図5】チャンネルコピーの動作を示すフローチャートである。
図6】プリセット編集画面を示す図である。
図7】プラグインのコピーを行なう場合のCPU18の動作を示すフローチャートである。
図8】DSPのリソースを模式的に示したアロケーション画面である。
図9】プラグインの一覧画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、ミキサ1の構成を示すブロック図である。ミキサ1は、本発明の音信号処理装置の一例である。ミキサ1は、表示器11、操作部12、オーディオI/O(Input/Output)13、信号処理部14、PC_I/O15、MIDI_I/O16、その他(Other)_I/O17、CPU18、フラッシュメモリ19、およびRAM20を備えている。
【0010】
バス25は、表示器11、操作部12、オーディオI/O13、信号処理部14、PC_I/O15、MIDI_I/O16、その他_I/O17、CPU18、フラッシュメモリ19、およびRAM20を、互いに接続する。また、オーディオI/O13および信号処理部14は、デジタルオーディオ信号を伝送するための波形バス27にも接続される。
【0011】
オーディオI/O13は、信号処理部14で処理すべき音信号の入力を受け付けるためのインタフェースである。オーディオI/O13には、音信号の入力を受け付けるアナログ入力ポートまたはデジタル入力ポート等が設けられている。また、オーディオI/O13は、信号処理部14で処理された後の音信号を出力するためのインタフェースである。オーディオI/O13には、音信号を出力するアナログ出力ポートまたはデジタル出力ポート等が設けられている。
【0012】
PC_I/O15、MIDI_I/O16、およびその他_I/O17は、それぞれ、種々の外部機器を接続し、入出力を行うためのインタフェースである。PC_I/O15は、例えば外部のPCを接続する。MIDI_I/O16は、例えばフィジカルコントローラまたは電子楽器のようなMIDI対応機器を接続する。その他_I/O17は、例えばディスプレイを接続する。あるいは、その他_I/O17は、マウスまたはキーボード等のUI(User Interface)デバイスを接続する。外部機器との通信に用いる規格は、イーサネット(登録商標)、またはUSB(Universal Serial Bus)等、任意のものを採用することができる。接続態様は、有線でも無線でも構わない。
【0013】
CPU18は、ミキサ1の動作を制御する制御部である。CPU18は、記憶部であるフラッシュメモリ19に記憶された所定のプログラムをRAM20に読み出すことにより各種の動作を行なう。CPU18は、プログラムにより、コピーすべきパラメータを規定したプリセットの設定を受け付けるプリセット設定受付部と、コピー元チャンネルの指定を受け付けるコピー元指定受付部と、前記プリセットの選択を受け付けるプリセット選択受付処理と、コピー先チャンネルの指定を受け付けるコピー先指定受付部と、選択された前記プリセットに規定されている前記コピーすべきパラメータに基づいて、前記コピー元チャンネルのパラメータを前記コピー先のチャンネルのパラメータにコピーするコピー処理部と、を構成する。なお、プログラムは、自装置のフラッシュメモリ19に記憶している必要はない。例えば、サーバ等の他装置から都度ダウンロードして、RAM20に読み出してもよい。
【0014】
表示器11は、CPU18の制御に従って種々の情報を表示する。表示器11は、例えばLCDまたは発光ダイオード(LED)等である。
【0015】
操作部12は、ユーザからミキサ1に対する操作を受け付ける。操作部12は、種々のキー、ボタン、ロータリーエンコーダ、またはスライダ等によって構成される。また、操作部12は、表示器11であるLCDに積層したタッチパネルによって構成される場合もある。
【0016】
信号処理部14は、ミキシング処理またはエフェクト処理等の各種信号処理を行なうための複数のDSPから構成される。信号処理部14は、オーディオI/O13から波形バス27を介して供給される音信号に、ミキシングまたはイコライジング等のエフェクト処理を施す。信号処理部14は、信号処理後のデジタルオーディオ信号を、波形バス27を介して再びオーディオI/O13に出力する。
【0017】
図2は、信号処理部14、オーディオI/O13、およびCPU18で行われる信号処理の等価ブロック図である。図2に示すように、信号処理は、機能的に、入力パッチ301、入力チャンネル302、バス303、出力チャンネル304、および出力パッチ305によって行う。
【0018】
入力パッチ301は、オーディオI/O13における複数の入力ポート(例えばアナログ入力ポートまたはデジタル入力ポート)からオーディオ信号を入力して、複数のポートのうちいずれか1つのポートを、複数チャンネル(例えば32ch)の少なくとも1つのチャンネルに割り当てる。
【0019】
入力チャンネル302の各チャンネルは、入力したオーディオ信号に所定の信号処理を施す。入力チャンネル302の各チャンネルは、信号処理後のオーディオ信号を、後段のバス303に送出する。バス303は、ステレオバス(L,Rバス)、MIXバス等の複数のバスを有する。
【0020】
出力チャンネル304は、バス303と同様に複数のチャンネルを有する。出力チャンネル304における各チャンネルは、入力チャンネルと同様に、入力されるオーディオ信号に対して、各種信号処理を施す。
【0021】
出力チャンネル304の各チャンネルは、信号処理後のオーディオ信号を出力パッチ305へ送出する。出力パッチ305は、各チャンネルを、アナログ出力ポートまたはデジタル出力ポートにおける複数のポートのうちいずれか1つのポートに割り当てる。これにより、信号処理を施された後のオーディオ信号が、オーディオI/O13に供給される。
【0022】
以上の信号処理は、各パラメータの値に基づいて制御される。CPU18は、各パラメータの現在の値(カレントデータ)をRAM20に記憶する。CPU18は、ユーザが操作部12を操作したときにカレントデータを更新する。
【0023】
また、入力チャンネル302は、プラグインエフェクトを挿入するための挿入ポイント(INSERT)302Aを備えている。ユーザは、操作部12を操作して、INSERT302Aに、プラグインを配置する指示を行うことで、プラグインを所望の信号処理ブロックに接続することができる。なお、INSERT302Aは、出力チャンネルに配置することも可能である。
【0024】
CPU18は、信号処理部14におけるDSPの処理能力(リソース)を、プラグインに割り当てることで、該プラグインをマウントさせる。これにより、CPU18は、信号処理部14に、プラグインに対応する信号処理を実行させる。以下、「プラグインをマウントする」とは、プラグインにDSPのリソースを割り当て、そのプラグインの信号処理を実行させることを意味する。
【0025】
プラグインによる信号処理も、パラメータの現在値(カレントデータ)に基づいて制御する。プラグインのパラメータも、上述したカレントデータに含まれる。プラグインは、リバーブ、ディレイ、またはコーラス等の各種の効果を実現するためのパラメータであり、フラッシュメモリ19に記憶されている。これらパラメータは、フラッシュメモリ19から読み出され、RAM20に、カレントデータとして記憶される。この様にして、信号処理部14は、プラグインをマウントして、信号処理を行う。
【0026】
図3は、ミキサ1の操作パネルの構成を示す図である。ミキサ1の操作パネル上には、図3に示すように、タッチスクリーン51およびチャンネルストリップ61等が設けられている。これら構成は、図1に示した表示器11および操作部12に相当する。なお、図4では、タッチスクリーン51およびチャンネルストリップ61だけが示されているが、実際には多数のノブまたはスイッチ等が設けられている。
【0027】
タッチスクリーン51は、操作部12の一態様であるタッチパネルを積層した表示器11であり、ユーザの操作を受け付けるためのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)画面を表示する。
【0028】
チャンネルストリップ61は、1つのチャンネルに対する操作を受け付ける複数の操作子を縦に並べて配置した領域である。この図では、操作子として、チャンネル毎に1つフェーダと1つのノブだけが表示されているが、実際には多数のノブまたはスイッチ等が設けられている。チャンネルストリップ61のうち、左側に配置された複数のフェーダおよびノブは、入力チャンネルに相当する。右側に配置された2つのフェーダおよびノブは、マスタ出力(ステレオバス)に対応する操作子である。なお、この実施形態では、操作子は、画像として表示されているが、例えば、操作部12に含まれるスライダ等の物理的な操作機構であってもよい。
【0029】
図4は、GUIの一例として、チャンネルコピー画面を示す図である。チャンネルコピー画面は、コピー元チャンネル指定ボタン501、コピー先チャンネル指定ボタン502、実行ボタン503、プリセットボタン群504、およびチャンネルボタン群506を有する。プリセットボタン群504は、複数のプリセットボタン505を有する。チャンネルボタン群506は、複数のチャンネルボタン507を有する。
【0030】
ユーザは、チャンネルコピー画面のチャンネルコピー画面は、コピー元チャンネル指定ボタン501、コピー先チャンネル指定ボタン502、実行ボタン503、プリセットボタン群504、およびチャンネルボタン群506を操作することで、任意の1または複数のチャンネルのパラメータを、任意の1または複数のチャンネルのパラメータにコピーすることができる。
【0031】
図5は、チャンネルコピーの動作を示すフローチャートである。CPU18は、まずプリセットの設定を受け付ける(S11)。例えば、ユーザがプリセットボタン群504のうちいずれかのプリセットボタン505を長押しすると、図6に示すプリセット編集画面が表示される。図6の例は、図5のプリセットボタン505のうち、「EQ」と表示されていたボタンを長押しした場合に表示される。
【0032】
プリセット編集画面は、プリセット名701、パラメータ群702、およびプラグインボタン704を含む。パラメータ群702は、複数のパラメータボタン703を含む。ユーザは、プリセット編集画面で、プリセットの設定を行なう。プリセットの設定は、プリセット名、およびコピーすべきパラメータの対象を含む。
【0033】
ユーザは、プリセット名701を選択して、プリセットの名称を変更する。また、ユーザは、プリセットの色を設定してもよい。図6の例では、「EQ」という名称を設定している。図6の例では、ユーザは、EQのパラメータボタン703を選択している。したがって、プリセット名「EQ」のプリセットボタン505を選択すると、信号処理としてイコライザのパラメータをコピーすることになる。
【0034】
図5に戻り、CPU18は、コピー元チャンネルの指定を受け付ける(S12)。ユーザは、図4のコピー元チャンネル指定ボタン501を選択し、かつチャンネルボタン群506の各チャンネルボタン507を選択して、コピー元チャンネルの指定を行なう。例えば、図4の例では、コピー元チャンネルとして入力チャンネル1が選択されている。
【0035】
その後、CPU18は、プリセットの選択を受け付ける(S13)。ユーザは、図4のプリセットボタン群504の各プリセットボタン505を選択することで、プリセットの選択を行なう。例えば、図4の例では、プリセットとして「EQ」が選択されている。
【0036】
次に、CPU18は、コピー先チャンネルの指定を受け付ける(S14)。ユーザは、図4のコピー先チャンネル指定ボタン502を選択し、かつチャンネルボタン群506の各チャンネルボタン507を選択することで、コピー先チャンネルの指定を行なう。例えば、図4の例では、入力チャンネル3、入力チャンネル4、および入力チャンネル5がコピー先チャンネルとして選択されている。
【0037】
最後に、ユーザが実行ボタン503を選択すると、CPU18は、選択されたプリセットに基づいて、パラメータのコピー処理を行なう(S15)。図4の例では、CPU18は、入力チャンネル1のパラメータのうち、イコライザのパラメータを入力チャンネル3、入力チャンネル4、および入力チャンネル5にコピーする。
【0038】
このように、本実施形態のミキサ1は、チャンネルコピーを行なう際に、プリセットの選択を行なうだけで、コピーしたいパラメータと、コピーしたくないパラメータと、を選択することができる。したがって、ユーザは、チャンネルコピーを行なう際に、全てのパラメータから、その都度、コピーしたいパラメータを選び出す必要はない。
【0039】
図7は、プラグインのコピーを行なう場合のCPU18の動作を示すフローチャートである。図5と共通する処理については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0040】
CPU18は、コピー先チャンネルの指定を受け付けた後に、プラグインのコピーを行なうか否かを判断する(S25)。図6に示す様に、プリセットの設定には、プラグインの情報が含まれている。プラグインボタン704を選択されていると、プラグインのコピーも行なう。プラグインのコピーを行なわないと判断した場合には、CPU18は、パラメータをコピーする(S15)。
【0041】
CPU18は、プラグインのコピーを行なう場合、まずDSPのリソースを確認する(S26)。図8は、DSPのリソースを模式的に示したアロケーション画面である。CPU18は、図8のアロケーション画面に示す様に、DSPのリソースを予め複数ブロック(図8の例では16×8ブロック)として確保している。図8の例では、4ブロックを占有するプラグインが4つ、3ブロックを占有するプラグインが5つ、マウントされている。したがって、この状態では、DSPのリソースに空きがある。
【0042】
次に、CPU18は、DSPのリソースに空きがあれば、対応するプラグインをマウントする(S27)。対応するプラグインとは、例えば同一のプラグインである。例えば、図4の例で、入力チャンネル1にプラグインエフェクトとしてディレイを設定していた場合、CPU18は、新たに入力チャンネル3、入力チャンネル4、および入力チャンネル5に対するエフェクトとして、同一のディレイのプラグインをマウントする。さらに、CPU18は、S15の処理において、入力チャンネル1のプラグインに設定されていたパラメータもコピーする。これにより、CPU18は、コピー先チャンネルの指定を受け付けた後に、プラグインのコピーを行なう。なお、対応するプラグインとは、類似するプラグインを含む。類似するプラグインとは、同一のメーカのプラグイン、同一の種類のプラグイン、または類似する種類のプラグインを含む。種類とは、例えば、エフェクト名またはモデル名のことを言う。例えば、効果が異なっていても「ディレイ」という同一のエフェクト名のプラグインは、同一の種類のプラグインである。また、メーカまたは種類が異なっても、ユーザが初期設定等で類似するプラグインとして予め登録しておいてもよい。その場合、CPU18は、予め登録されたプラグインを類似するプラグインとして、コピー先チャンネルに設定する。
【0043】
一方で、CPU18は、DSPのリソースに空きがない場合、警告表示を行う(S28)。この場合、CPU18は、プラグインをマウントしないで処理を終える。警告表示により、ユーザは、DSPのリソースに空きがないことを知ることができる。ただし、CPU18は、警告表示をせず、かつプラグインをマウントしないで処理を終えてもよい。また、CPU18は、警告表示を行なった後に待機し、所定時間の経過後に再びS26の判断を行なってもよい。この場合、ユーザが手動で他のプラグインのマウントを解除し、DSPのリソースに空きが生じた場合に、新たなプラグインをマウントすることができる。
【0044】
なお、CPU18は、図4の例の様に複数チャンネルに対してプラグインをマウントする場合、各チャンネルに対して順次プラグインをマウントして、リソースに空きがなくなった時点で警告表示を行なって、マウントを中止してもよい。また、図7のフローチャートでは、前記コピー先のチャンネルのパラメータにコピーする前に予めDSPのリソースを確認しているが、先にパラメータをコピーして、その後にDSPのリソースを確認してもよい。
【0045】
通常、新たなプラグインをマウントする場合、ユーザは、図8に示したアロケーション画面でプラグインをマウントして、さらにパラメータの設定を行なう必要がある。しかし、本実施形態のミキサ1は、チャンネルコピーの指示を受け付けるだけで、プラグインのマウントおよびパラメータの設定も行なう。よって、ユーザは、チャンネルコピーの指示を行なうだけで、新たなプラグインを他のチャンネルに設定することができる。
【0046】
図9は、プラグインの一覧画面である。プラグインの一覧画面は、プラグイン毎にインサートイン、およびインサートアウトのチャンネルを表示する。
【0047】
プラグインは、モノラル、ステレオ、またはデュアルモノラル等の再生方式に対応している。例えば、図9に示すディレイ(Delay)のプラグインは、モノラルの再生方式に対応している。図9に示すディレイ(Delay)のプラグインは、イン側およびアウト側ともに入力チャンネル1を接続する。図9に示すゲートリバーブ(Gate Reverb)は、ステレオの再生方式に対応している。図9に示すゲートリバーブ(Gate Reverb)のプラグインは、イン側およびアウト側ともに入力チャンネル2および入力チャンネル3を接続する。図9に示すイコライザ(Equalizer)は、デュアルモノラルの再生方式に対応している。図9に示すイコライザ(Equalizer)のプラグインは、イン側およびアウト側ともに入力チャンネル7および入力チャンネル8を接続する。図9に示すコーラス(Chorus)は、イン側にモノラルの再生方式、アウト側にステレオの再生方式に対応している。図9に示すコーラス(Chorus)のプラグインは、イン側に入力チャンネル9を接続し、アウト側に入力チャンネル9および入力チャンネル10を接続する。
【0048】
CPU18は、S27の処理でプラグインをマウントする際、コピー元チャンネルの再生方式と、コピー先チャンネルの再生方式と、を確認する。そして、CPU18は、コピー元チャンネルとコピー先チャンネルとが異なる再生方式のチャンネルである場合には、コピー先チャンネルの再生方式のプラグインで、かつコピー元チャンネルと同一の種類または類似する種類のプラグインをマウントする。
【0049】
例えば、コピー元チャンネルがステレオ(例えば入力チャンネル2および入力チャンネル3)である場合、当該コピー元チャンネルには、ステレオの再生方式に対応したプラグインが挿入されている。一方で、コピー先チャンネルがモノラル(例えば入力チャンネル1)である場合、CPU18は、モノラルの再生方式に対応したプラグインをマウントする。また、CPU18は、コピー元チャンネルと同一の種類または類似する種類のプラグインをマウントする。例えば、CPU18は、コピー元チャンネルと同じエフェクト名であるゲートリバーブで、モノラルの再生方式に対応したゲートリバーブをマウントする。
【0050】
また、コピー先チャンネルがデュアルモノラル(例えば入力チャンネル7および入力チャンネル8)である場合、CPU18は、ステレオの再生方式に対応したプラグインをマウントしないで、コピー先チャンネルの再生方式である、デュアルモノラルの再生方式に対応したプラグインをマウントする。
【0051】
また、CPU18は、異なる再生方式のプラグインをマウントしてもよい。例えば、入力チャンネル2および入力チャンネル3はステレオである。入力チャンネル2および入力チャンネル3には、ステレオの再生方式に対応したゲートリバーブのプラグインが挿入されている。ここで、例えば、モノラルのチャンネル4に対して、ステレオの再生方式に対応したゲートリバーブのプラグインを挿入してもよい。この場合、CPU18は、入力チャンネル2または入力チャンネル3のいずれかに設定されているプラグインのパラメータを、入力チャンネル4に挿入するプラグインのパラメータとしてコピーする。
【0052】
また、CPU18は、対応するプラグインが無い場合に、コピー先チャンネルに対してプラグインをマウントしないようにしてもよい。例えば、コピー元チャンネルがステレオであり、コピー先チャンネルがモノラルである場合において、モノラルに対応した同一の種類のプラグインも類似する種類のプラグインもない場合、CPU18は、プラグインをマウントしない。
【0053】
また、コピー元チャンネルにステレオのゲイン変更用プラグインが設定されていて、コピー先チャンネルがモノラルである場合、CPU18は、対応するプラグインが無いと判定して、プラグインをマウントしないようにしてもよい。ステレオのゲイン設定は、各チャンネルのパラメータ値が全く異なる場合がある。したがって、コピー元チャンネルにモノラルのゲイン変更用プラグインが設定されていて、コピー先チャンネルがステレオである場合、CPU18は、対応するプラグインが無いと判定して、コピー先チャンネルにプラグインをマウントしないようにしてもよい。ただし、CPU18は、ステレオの各チャンネルのゲインの平均値、最大値または最小値等をモノラルのパラメータ値に反映することで、モノラルのゲイン変更用プラグインをマウントしてもよい。また、CPU18は、ステレオのチャンネル間で共有されるパラメータを、そのままモノラルのパラメータ値に反映して、モノラルのプラグインをマウントしてもよい。また、コピー元チャンネルにモノラルのゲイン変更用プラグインが設定されていて、コピー元チャンネルがステレオである場合、CPU18は、ステレオの各チャンネルに同じゲインを設定して、ステレオのゲイン変更用プラグインをマウントしてもよい。
【0054】
なお、CPU18は、対応するプラグインが無い場合に、警告表示を行なってもよい。
【0055】
なお、CPU18は、コピーするプラグインにオートミキサが含まれていた場合、パラメータのコピーを行なわずに、チャンネルの割り当てに関する情報のみコピーしてもよい。オートミキサは、複数チャンネルの信号を入力してゲイン調整を行ない、複数チャンネルの信号を出力するプラグインである。オートミキサは、レベルの高い入力信号に対して高いゲインを設定し、レベルの低い入力信号に対して低いゲインを設定する。これにより、オートミキサは、レベルの高いチャンネルの音を際立たせて、SN比を向上させる。
【0056】
オートミキサは、入力信号のレベルに応じて、動的にゲインを変化させる。すなわち、オートミキサのパラメータは、動的に変化する。したがって、CPU18は、オートミキサのプラグインをコピーする場合、入力および出力の複数チャンネルの割り当てに係る情報のみコピーして、パラメータの値をコピーしない。
【0057】
本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1…ミキサ
11…表示器
12…操作部
13…オーディオI/O
14…信号処理部
15…PC_I/O
16…MIDI_I/O
17…Other_I/O
18…CPU
19…フラッシュメモリ
20…RAM
25…バス
27…波形バス
51…タッチスクリーン
61…チャンネルストリップ
301…入力パッチ
302…入力チャンネル
302A…INSERT
303…バス
304…出力チャンネル
305…出力パッチ
501…コピー元チャンネル指定ボタン
502…コピー先チャンネル指定ボタン
503…実行ボタン
504…プリセットボタン群
505…プリセットボタン
506…チャンネルボタン群
507…チャンネルボタン
701…プリセット名
702…パラメータ群
703…パラメータボタン
704…プラグインボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9