(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】パンクシーリング剤及びパンク修理システム
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20230221BHJP
B29C 73/02 20060101ALI20230221BHJP
C08L 7/02 20060101ALI20230221BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20230221BHJP
C08L 3/00 20060101ALI20230221BHJP
C08K 5/15 20060101ALI20230221BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C09K3/10 A
C09K3/10 Z
B29C73/02
C08L7/02
C08L1/02
C08L3/00
C08K5/15
C08K5/053
(21)【出願番号】P 2019018871
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2021-12-20
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド・エックハルト
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル ケグラー
(72)【発明者】
【氏名】アンヘル ジメネス
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/194104(WO,A1)
【文献】特開2002-294214(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016348(WO,A1)
【文献】特開2005-187751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K,B29C,C08L,C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックス、粘着剤水溶液及び凍結防止剤を含むパンクシーリング剤であって、
前記天然ゴムラテックス、前記粘着剤水溶液及び前記凍結防止剤は天然成分であり、
前記粘着剤は炭水化物であ
り、
前記炭水化物は、スクロース、グルコース、フルクトース又はこれらの混合物であり、
前記凍結防止剤は、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール又はこれらの2種以上の混合物であるパンクシーリング剤。
【請求項2】
前記パンクシーリング剤中の全天然成分の合計量は、前記パンクシーリング剤全質量に対して90質量%以上である請求項1記載のパンクシーリング剤。
【請求項3】
前記パンクシーリング剤全質量に対して、前記天然ゴムラテックスを40~70質量%含む請求項1又は2記載のパンクシーリング剤。
【請求項4】
前記パンクシーリング剤全質量に対して、前記粘着剤水溶液を8~30質量%含む請求項1~3のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項5】
前記パンクシーリング剤全質量に対して、前記凍結防止剤を10~35質量%含む請求項1~4のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項6】
前記パンクシーリング剤全質量に対して、前記天然ゴムラテックスを40~70質量%、天然粘着剤水溶液を8~30質量%、凍結防止剤を10~35質量%含む請求項1~5のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項7】
合成樹脂を含まない請求項1~6のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項8】
前記粘着剤水溶液中、炭水化物の質量(Z
a)と溶媒の質量(Z
b)との質量比(Z
a:Z
b)は、90:10~50:50の範囲である請求項1~7のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項9】
前記パンクシーリング剤中の炭水化物の質量は、前記パンクシーリング剤100質量部に対して5~30質量部の範囲である請求項1~8のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項10】
界面活性剤を含む請求項1~
9のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項11】
前記天然ゴムラテックスの固形分は、前記天然ゴムラテックス100質量部に対して40~80質量部である請求項1~
10のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項12】
前記凍結防止剤の量は、前記パンクシーリング剤中の前記天然ゴムラテックスの固形分100質量部に対して10~500質量部である請求項1~
11のいずれかに記載のパンクシーリング剤。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれかに記載のパンクシーリング剤を含むパンク修理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンク修理システムに用いられる優れたシール性能を有するパンクシーリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤパンク修理システムでは、パンクシーリング剤を用いて空気入りタイヤのパンク穴をシールする。パンクシーリング剤は、固体分散体を構成する液体であり、損傷したタイヤに注入される。次いで、コンプレッサーを用いてタイヤに空気を充填すると、その状態で走行させることができる。走行時、パンクシーリング剤はタイヤ内で揺れ動き、その結果、分散液の固形分が堆積し、パンク穴を覆う。
【0003】
近年、パンクシーリング剤に要求される性能レベルが高くなっている。理想的な保管性能を維持しつつ、シール性能、注入性及び/又は低温環境での注入性を改善することに努力の大部分が注がれている。
【0004】
特許文献1には、タイヤパンクシーリング剤の粘度が低い場合、パンク穴が迅速に塞がれることが記載されている。粘度を低くするために、タイヤパンクシーリング剤は、特定のグリコールエーテルと混合した合成樹脂エマルジョンと天然ゴムラテックスとを含む。
【0005】
特許文献2には、タイヤパンク修理液の除去キットが記載されている。タイヤパンク修理液を回収するのに役立つ凝固性を付与するアニオン性ポリアクリルアミドと組み合わせたα澱粉を含むエマルジョン凝固剤が開示されている。α澱粉及びアニオン性ポリアクリルアミドをエマルションに配合すると、三次元に絡み合った構造が形成され、その構造がエマルション粒子を取り込むことで、エマルション粒子の凝固を促進すると考えられる。
【0006】
パンクシーリング剤は、通常、理想的な保管性能を維持しつつ、シール性能、注入性及び/又は低温環境での注入性を改善するために合成成分を含んでいる。しかし、合成成分を使用することは、省資源化及び環境への配慮に反する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2017/0066206号明細書(A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0165929号明細書(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑み、本発明の根底にある目的は、省資源化でき、環境に配慮でき、さらに合成成分を主体とした従来のパンクシーリング剤に匹敵するシール性能、注入性及び低温環境での注入性を有するパンクシーリング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上記目的は、請求項1記載のパンクシーリング剤によって解決される。
【0010】
本発明に係るパンクシーリング剤は、天然ゴムラテックス、粘着剤水溶液及び凍結防止剤を含む。上記天然ゴムラテックス、上記粘着剤水溶液及び上記凍結防止剤は天然成分であり、上記粘着剤は炭水化物である。
【0011】
上記解決手段は、天然ゴムラテックスと粘着剤としての炭水化物水溶液とを組み合わせると、少なくとも主に天然成分を主体としているため、省資源化及び環境に配慮することができ、合成成分を主体としたパンクシーリング剤に匹敵するシール性能、注入性及び/又は低温環境での注入性を発揮できるパンクシーリング剤が得られるという驚くべき発見に基づく。また、粘着剤として炭水化物を使用することによって、パンクシーリング剤のコストを大幅に削減することができるとともに、危険な化合物や添加剤の使用を避けることができる。さらに、本発明に係るパンクシーリング剤は、使用期限が切れた後の処分が容易であり、危険も伴わない。
【0012】
本出願において、天然成分とは、自然界に存在する化合物、及び自然界に存在する化合物の誘導体、すなわち自然界に存在する化合物が化学反応などで修飾されたものをいう。
【0013】
本発明の別の態様は、本発明に係るパンクシーリング剤を含むパンク修理システムである。
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記パンクシーリング剤は、パンクシーリング剤全質量に対して、天然ゴムラテックスを40~70質量%含むことが好ましく、天然ゴムラテックスの量は、50~60質量%の範囲であることがより好ましく、55~60質量%の範囲であることが更に好ましい。シーリング剤中の天然ゴムラテックスの量が40質量%未満であると、タイヤのパンク穴のシールが不十分になったり、遅くなりすぎたりして、シーリング剤性能が低下するおそれがある。一方、天然ゴムラテックスの量が70質量%を超えると、パンクシーリング剤の注入性及び保管性能が低下するおそれがある。
【0016】
上記パンクシーリング剤において、天然ゴムラテックスの固形分は、天然ゴムラテックス100質量部に対して40~80質量部であることが好ましく、50~70質量部の範囲であることがより好ましく、55~60質量部の範囲であることが更に好ましい。固形分が40~80質量部の範囲であると、シーリング剤性能及び保管性能がバランスよく得られる。
【0017】
本発明で用いられる天然ゴムは特に限定されず、従来の天然ゴムラテックスを使用できる。天然ゴムラテックスの具体例としては、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis)からタッピングして得られるものや、タンパク質を含まない天然ゴムラテックスであるいわゆる「脱蛋白天然ゴムラテックス」が挙げられる。天然ゴムラテックスを使用することが特に好ましい。ここで、天然ゴムラテックスとは、脱蛋白天然ゴム、高純度天然ゴム(HPNR)及び変性天然ゴムも包含する。変性天然ゴムの例としては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)及びグラフト化天然ゴムなどが挙げられる。天然ゴムとしては、一般的にタイヤ工業で用いられる天然ゴム又はHPNR、例えばSIR20、RSS#3、TSR20などを使用できる。
【0018】
上記HPNRの製造方法の例としては、脱蛋白処理、けん化処理、酸処理などを施した天然ゴムラテックスを凝固、洗浄及び乾燥する方法が挙げられる。
【0019】
好ましい実施形態において、上記パンクシーリング剤は、パンクシーリング剤全質量に対して、粘着剤水溶液を8~30質量%含む。粘着剤水溶液の量は、10~25質量%の範囲であることがより好ましく、11~17質量%の範囲であることが更に好ましい。粘着剤水溶液の量が8質量%未満であると、タイヤのパンク穴のシールが不十分になったり、遅くなりすぎたりするおそれがある。一方、粘着剤水溶液の量が30質量%を超えると、パンクシーリング剤の保管性能が低下するおそれがある。
【0020】
上記パンクシーリング剤は、パンクシーリング剤全質量に対する凍結防止剤の含有量が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは23質量%以上であり、好ましくは35質量%以下、より好ましくは33質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。凍結防止剤の量が10質量%未満であると、低温環境での注入性が損なわれるおそれがある。一方、凍結防止剤の量が35質量%を超えると、シール性能が低下するおそれがある。
【0021】
上記パンクシーリング剤中の凍結防止剤の量は、パンクシーリング剤中の天然ゴムラテックスの固形分100質量部に対して10~500質量部であることが好ましく、20~250質量部の範囲であることがより好ましく、50~175質量部の範囲であることが更に好ましい。上記凍結防止剤は特に限定されないが、好ましい凍結防止剤の例としては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0022】
上記パンクシーリング剤は、パンクシーリング剤全質量に対して、天然ゴムラテックスを40~70質量%、天然粘着剤水溶液を8~30質量%、凍結防止剤(天然凍結防止剤)を10~35質量%含むことが特に好ましい。更に好ましくは、上記パンクシーリング剤は、パンクシーリング剤全質量に対して、天然ゴムラテックスを50~60質量%、上記粘着剤溶液を10~25質量%、上記凍結防止剤を20~33質量%含む。最も好ましくは、上記パンクシーリング剤は、パンクシーリング剤全質量に対して、天然ゴムラテックスを55~60質量%、上記粘着剤溶液を11~17質量%、上記凍結防止剤を23~30質量%含む。上記天然ゴムラテックス、粘着剤溶液及び凍結防止剤の量がこのような範囲であると、合成成分を主体とした従来のパンクシーリング剤に匹敵するシール性能、注入性及び低温環境での注入性を達成できる。
【0023】
上記パンクシーリング剤において、パンクシーリング剤中の全天然成分の合計量は、パンクシーリング剤全質量に対して90質量%以上であることが好ましい。上記天然成分の合計含有量は、パンクシーリング剤全質量に対して95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、99.5質量%以上であることが更に好ましく、パンクシーリング剤が天然成分のみからなることが最も好ましい。天然成分の含有量が高いことで、パンクシーリング剤は省資源化及び環境に配慮することができる。
【0024】
上記パンクシーリング剤において、合成樹脂の量は、パンクシーリング剤100質量部に対して3質量部未満であることが特に好ましく、1質量部未満であることが更に好ましい。パンクシーリング剤が合成樹脂を含まないことが最も好ましい。パンクシーリング剤中の合成樹脂の含有量が少ない、好ましくは合成樹脂が含まれない場合、パンクシーリング剤は、省資源化及び環境に配慮することができ、かつ使用期限が切れた後に容易に処分できる。
【0025】
上記粘着剤水溶液中、炭水化物の質量(Za)と溶媒の質量(Zb)との質量比(Za:Zb)は、90:10~50:50の範囲であることが好ましく、80:20~55:40の範囲であることがより好ましく、70:30~60:40の範囲であることが更に好ましい。上記比が90:10を超えると、粘着剤水溶液の粘度が高くなったり、注入性が低下したりするおそれがある。一方、上記比が50:50未満であると、パンク穴をシールするのにかかる時間が長くなり、シール性能が低下するおそれがある。
【0026】
本発明の更に好ましい実施形態において、上記パンクシーリング剤中の炭水化物の質量は、パンクシーリング剤100質量部に対して5~30質量部の範囲であり、6~25質量部の範囲であることがより好ましく、7~15質量部の範囲であることが更に好ましい。パンクシーリング剤中の炭水化物の量が30質量部を超えると、粘着剤水溶液の粘度が高くなったり、注入性が低下したりするおそれがある。一方、パンクシーリング剤中の炭水化物の量が5質量部未満であると、パンク穴をシールするのにかかる時間が長くなり、シール性能が低下するおそれがある。
【0027】
上記パンクシーリング剤において、炭水化物は単糖、オリゴ糖、多糖又はこれらの混合物であることが好ましい。オリゴ糖は二~十糖類であり、好ましくは二~五糖類である。上記炭水化物は、糖類、澱粉類、澱粉分解物、セルロース及びこれらの混合物からなる群より選択されることが好ましく、糖類、澱粉分解物及びこれらの混合物からなる群より選択されることが更に好ましい。本発明の更に好ましい実施形態において、上記炭水化物は、単糖、オリゴ糖又はこれらの混合物である。上記単糖は、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース又はこれらの混合物であってもよく、ヘキソース、ペントース及びこれらの混合物が特に好ましい。単糖類のいくつかの具体例としては、グリセリンアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、エリトロース、トレオース、エリトルロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、リブロース、キシルロース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、キュロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、フクロース、ソルボース、タガトース、セドヘプツロース、マンノヘプツロース、タロヘプツロース、アロヘプツロース、グルコヘプトース及びマンノヘプトースが挙げられる。これらの単糖類のうち、マンノース、フルクトース、グルコース及びこれらの混合物が好ましい。二糖類のいくつかの具体例としては、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、キトビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、β,β-トレハロース、α,β-トレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、パラチノース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、メリビウロース、ルチノース、ルチヌロース及びキシロビオースが挙げられる。これらの二糖類のうち、スクロース、ラクトース及びマルトースが好ましい。
【0028】
粘着剤としては、澱粉の加水分解物、例えばグルコースシロップ及び/又はグルコース・フルクトースシロップ又はデキストリンを使用することが好ましい。これらを使用すると、パンクシーリング剤のコストが削減されるからである。デキストリン、グルコースシロップ及びグルコース・フルクトースシロップは、単糖類、二糖類及びオリゴ糖類を含む液体澱粉加水分解物であり、小麦、タピオカ及びジャガイモなどのあらゆる澱粉源から製造できる。粘着剤として使用する炭水化物は、スクロース、グルコース、フルクトース又はこれらの2種以上の混合物であることが最も好ましい。貯蔵安定性の観点からスクロースを使用することが特に好ましい。
【0029】
上記パンクシーリング剤は、界面活性剤を含むことが好ましく、該界面活性剤の量は、パンクシーリング剤全質量に対して、好ましくは1~12質量%が好ましい。該界面活性剤の量の下限は1.5質量%以上がより好ましく、上限は10質量%以下がより好ましく、7質量%以下が更に好ましい。界面活性剤を使用することにより、保管中のゴム粒子の望ましくない凝固を防ぐことができるため、パンクシーリング剤の貯蔵安定性が改善される。界面活性剤の量が12質量%を超えると、シール性能が低下するおそれがある。
【0030】
上記界面活性剤は天然化合物であることが特に好ましい。界面活性剤が天然化合物であると、パンクシーリング剤は省資源化及び環境に配慮することができる。天然界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤又はこれらの混合物が挙げられる。上記天然界面活性剤は、少なくとも1種のノニオン性界面活性剤を含むことが最も好ましい。
【0031】
アニオン性界面活性剤は、負に帯電した親水性頭部を有するものであり、アニオン性界面活性剤の例としては、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、スルホコハク酸塩、サルコシン、サルコシン酸塩、イセチオン酸塩、タウリン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩及びアルケニルコハク酸塩が挙げられる。両性界面活性剤は、媒体のpHに応じて正又は負に帯電する。両性界面活性剤のいくつかの例としては、ココベタイン、ラウリルベタイン、ヒドロキシスルタイン、アルキルジメチルベタイン及びアルキルアミドベタインが挙げられる。カチオン性界面活性剤は、親水性部分に正に帯電した頭部を有する。カチオン性界面活性剤の例としては、ベンザルコニウム、ステアラルコニウム、セトリモニウム又はトリメチルアンモニウム化合物の塩化物、硫酸メチル、酢酸アルキルアミン及び四級アンモニウム塩が挙げられる。ノニオン性界面活性剤は、親水性単位にイオン電荷を有さない。ノニオン性界面活性剤のいくつかの例としては、エトキシル化酸化物、ワックス、乳化ワックス、オレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル;セテアレス及びソルビタンなどのPEG化合物;ラウリルグルコシド、ポリグルコース、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーが挙げられる。
【0032】
上記パンク修理システムは、本発明のパンクシーリング剤を保管するための容器と、タイヤに空気を充填するためのコンプレッサーとを含むことが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下に本発明を実施例を用いて説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0034】
比較例1及び実施例1~5の調製
実施例の調製で使用する各種薬品を以下に示す。
天然ゴムラテックス:HAラテックス(固形分:60質量%)、Centrotrade Minerals&Metals,Inc製
粘着付与剤:樹脂酸、ロジン酸及びカリウム塩を含む樹脂の水分散体(固形分:40質量%、AquatacTM分散液)、Kraton Corporation製
炭水化物:スクロース、フルクトース及びデキストリン、Sigma-Aldrich製
粘着剤溶液B:水30gに対してスクロース60gの濃度のスクロース水溶液を激しく攪拌して調製した(Za:Zb=60:30)。
粘着剤溶液C:水50gに対してフルクトース50gの濃度のフルクトース水溶液を激しく攪拌して調製した(Za:Zb=50:50)。
粘着剤溶液D:水50gに対してデキストリン50gの濃度のデキストリン水溶液を激しく攪拌して調製した(Za:Zb=50:50)。
粘着剤溶液E:水50gに対してスクロース50gの濃度のスクロース水溶液を激しく攪拌して調製した(Za:Zb=50:50)。
粘着剤溶液F:水30gに対してスクロース70gの濃度のスクロース水溶液を激しく攪拌して調製した(Za:Zb=70:30)。
界面活性剤:エマルゲン420、花王製
凍結防止剤:グリセロール(非固形分)、Merck Millipore製
【0035】
下記表1に示す成分を表1に示す割合で激しく攪拌して混合することにより、実施例1~5及び比較例1のタイヤパンクシーリング剤を製造した。
【0036】
【0037】
比較例1及び実施例1~5のパンクシーリング剤の粘度を8週間測定したところ、20~35mPa・sの範囲の一定値を示した。粘度の測定は、DIN EN ISO2555に従って行った。パンクシーリング剤の密度は、DIN51757に従って測定した。結果を表2に示す。
【0038】
【0039】
実施例1~5及び比較例1のパンクシーリング剤の注入性を以下の方法で確認した。タイヤパンクシーリング剤を充填した450mLボトルの内容物を10Aのコンプレッサーを用いてタイヤバルブから36L容器に注入することにより、材料がタイヤバルブで目詰まりを起こさずに該バルブを通って注入されるかどうかを確認した。表3に示すポンプΔ値は、450mLボトル側で測定された圧力と36L容器側で測定された圧力との差を表す。値が小さいほど、材料をより良好に注入できることを示す。表3に示した値は、各温度で5分後に測定された圧力差に相当する。
【0040】
パンクシール性能及び空気損失性を以下の基準で評価した。「AA」:5分以内にシールが完了した。「A」:5分超10分以内にシールが完了した。「B」:10分超15分以内にシールが完了した。「C」:15分超30分以内にシールが完了した。結果を表3に示す。
【0041】
加速安定性試験を実施し、実際の分散体の状態を変化させたり、少なくとも応力を加えたりすることで、保管性を試験した。加速安定性試験では、調製したパンクシーリング剤サンプルを70℃で15日間放置した。パンクシーリング剤の状態変化を4段階(L:液体のまま、SC:ややクリーム状に変化、C:クリーム状に変化、S:固化)で目視評価した。結果を表3に示す。
【0042】
205/55R16Falken Ziex914タイヤを使用し、30℃を超える温度でドライアスファルト路面にて実車試験を実施した。タイヤのトレッドのショルダー溝部に直径6mmのパンク穴を開けた。次に、パンクシーリング剤450mLをタイヤバルブから注入し、コンプレッサーを用いて圧力が2.5barに達するまでタイヤの充填を行った。その後、タイヤの間欠走行を行った。タイヤを50km/h以下の速度で5分間走行させてから制御した。間欠走行試験は、タイヤからの空気漏れがなくなった状態、すなわちパンク穴の付近に水を噴霧した場合に泡立ち現象が観察されない状態になるまで繰り返した。そして、パンクシール性は、水を噴霧して泡立ち現象が確認されない状態になるまでに要した時間に基づいて評価した。空気損失性は、5分ごとに空気圧を測定し、前の測定値以上になるまでに要した時間に基づいて評価した。測定結果を表3に示す。
【0043】
上記走行試験後、さらにパンクシーリング剤の長期性能について試験を行った。すなわち、実施例1および比較例1のパンクシーリング剤を損傷したタイヤ(トレッドのショルダー溝部に直径6mmのパンク穴をあけた205/55R16Falken Ziex914)に注入し、300kmの走行試験を行ってシール保持性能を評価した。表3に示すように、100km/hで300km走行後、空気漏れは見られず、シール保持性の評価は+であった。したがって、両パンクシーリング剤について十分に満足のいく結果が得られた。
【0044】
【0045】
上記表3の結果から分かるように、完全に天然成分を主体とした実施例1~5のパンクシーリング剤は、合成成分を含む比較例1と比較しても、注入性、パンクシール性能及び保管性が十分に良好であった。したがって、本出願に係るパンクシーリング剤は、非天然化合物を主体とした従来のパンクシーリング剤に代わる省資源型パンクシーリング剤である。