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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/49 20070101AFI20230221BHJP
   H02M 7/797 20060101ALI20230221BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H02M7/49
H02M7/797
H02M7/12 V
H02M7/12 X
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019060479
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020162331
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】菅野 純弥
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 聡
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203517(WO,A1)
【文献】特開2017-189073(JP,A)
【文献】特開平07-007954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/49
H02M 7/797
H02M 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流の各相に対応する電線にそれぞれ接続可能にされ、互いにスター結線またはデルタ結線された複数の変換部と、前記変換部を制御する制御部とを備え、
前記変換部は、
直列に接続された複数のブリッジセルを有し、
前記ブリッジセルは、
交流電圧を入出力するための第1入出力端子および第2入出力端子と、
コンデンサと、
前記制御部からの制御信号に応じて、前記第1入出力端子および前記第2入出力端子と前記コンデンサとの間の接続を切り替えるインバータ回路と、
前記コンデンサの一端に接続された第1出力端子と、
前記コンデンサの他端に接続された第2出力端子と、を含み、
前記複数のブリッジセルのうちの一つのブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子の間に、前記一つのブリッジセルと異なる他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子の間の電圧に基づいて生成した直流電圧を供給するDC/DCコンバータを更に有する
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置は、
各前記変換部における各前記ブリッジセルの前記コンデンサは、互いに異なる静電容量を有している
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記インバータ回路は、
第1主電極、第2主電極、および制御電極をそれぞれ有する第1トランジスタ、第2トランジスタ、第3トランジスタ、および第4トランジスタと、を含み、
前記第1トランジスタの第1主電極と前記第3トランジスタの第2主電極とが前記第1入出力端子に接続され、
前記第1トランジスタの第2主電極と前記第2トランジスタの第2主電極とが前記第1出力端子に接続され、
前記第2トランジスタの第1主電極と前記第4トランジスタの第2主電極とが前記第2入出力端子に接続され、
前記第3トランジスタの第1主電極と前記第4トランジスタの第1主電極とが前記第2出力端子に接続され、
前記第1乃至第4トランジスタの各制御電極には、前記制御信号が入力される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記インバータ回路は、
第1主電極、第2主電極、および制御電極をそれぞれ有する第1トランジスタおよび第2トランジスタを含み、
前記第1トランジスタの前記第1主電極と前記第2トランジスタの前記第2主電極とが前記第1入出力端子に接続され、
前記第1トランジスタの前記第2主電極が前記第1出力端子に接続され、
前記第2トランジスタの前記第1主電極が前記第2入出力端子と前記第2出力端子に接続され、
前記第1および第2トランジスタの前記制御電極には、前記制御信号がそれぞれ入力される
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項に記載の電力変換装置において、
前記DC/DCコンバータは、
一端が前記他のブリッジセルの前記第1出力端子に接続された一次側コイルと、一端が前記一つのブリッジセルの前記第2 出力端子と接続された二次側コイルとを有するトランスと、
前記他のブリッジセルの前記第2出力端子に接続された第1主電極と、前記一次側コイルの他端に接続された第2主電極と、前記制御部から信号が入力される制御電極とを有するスイッチングトランジスタと、
一端が前記二次側コイルの他端に接続され、他端が前記一つのブリッジセルの前記第1出力端子に接続され、前記一端から前記他端へ電流を流す整流素子と、
前記整流素子の他端と前記二次側コイルの一端との間に接続された出力コンデンサと、
を含む
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項に記載の電力変換装置において、
前記他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記整流素子の他端の間、または前記他のブリッジセルの前記第2出力端子と前記二次側コイルの一端に接続された出力切替スイッチを更に有し、
前記制御部は、前記他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子との間の電圧が所定の範囲内にある場合に、前記出力切替スイッチをオンし、前記他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子との間の電圧が所定の範囲外にある場合に、前記出力切替スイッチをオフするとともに、前記スイッチングトランジスタの制御電極に信号を供給して、前記スイッチングトランジスタをスイッチングする
ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関し、例えば、高圧の交流電圧から種々の直流電圧を生成する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場やビル等の需要家側において、電力系統から供給された交流電圧を直流電圧に変換して各種電気機器に供給する電力供給システムは、変圧器、AC/DCコンバータ、およびDC/DCコンバータ等の種々の電力変換装置を用いて、送電線等から受電した高圧の交流電圧を降圧し、降圧した交流電圧から種々の直流電圧を生成している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-165732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、従来の需要家側の電力供給システムは、変圧器やAC/DCコンバータ等の複数の電力変換装置を用いて高圧の交流電圧から種々の直流電圧を生成しているため、電力の変換効率が低いという課題がある。
【0005】
また、上記電力供給システムが産業用の太陽光発電設備等の発電容量が50kW以上の発電設備を有する高圧連系用システムである場合、より多くの変圧器やAC/DCコンバータ等が必要になるため、システムがより大型になるという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、小型且つ高効率な電力供給システムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態に係る、電力変換装置は、三相交流の各相に対応する電線にそれぞれ接続可能にされ、互いにスター結線またはデルタ結線された複数の変換部と、前記変換部を制御する制御部とを備え、前記変換部は、直列に接続された複数のブリッジセルを有し、前記ブリッジセルは、交流電圧を入出力するための第1入出力端子および第2入出力端子と、コンデンサと、前記制御部からの制御信号に応じて、前記第1入出力端子および前記第2入出力端子と前記コンデンサとの間の接続を切り替えるインバータ回路と、前記コンデンサの一端に接続された第1出力端子と、前記コンデンサの他端に接続された第2出力端子とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る電力変換装置によれば、小型且つ高効率な電力供給システムを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図2A】実施の形態1に係る電力変換装置におけるブリッジセルの動作を説明するための図である。
図2B】実施の形態1に係る電力変換装置におけるブリッジセルの動作を説明するための図である。
図2C】実施の形態1に係る電力変換装置におけるブリッジセルの動作を説明するための図である。
図2D】実施の形態1に係る電力変換装置におけるブリッジセルの動作を説明するための図である。
図3】実施の形態1に係る電力変換装置におけるブリッジセルの入出力端子間から出力される電圧のタイミングチャートである。
図4】実施の形態1に係る電力変換装置の変換部によるマルチレベルの電圧の生成原理を説明するための図である。
図5】実施の形態1に係る電力変換装置の変換部の等価回路を示す図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図7A】実施の形態2に係る電力変換装置におけるブリッジセルの動作を説明するための図である。
図7B】実施の形態2に係る電力変換装置におけるブリッジセルの動作を説明するための図である。
図8】実施の形態2に係る電力変換装置におけるブリッジセルの入出力端子間から出力される電圧を示すタイミングチャートである。
図9】本発明の実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図10】本発明の実施の形態4に係る電力変換装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0011】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る電力変換装置は、三相交流の各相(a~b)に対応する電線(20a~20c)にそれぞれ接続可能にされ、互いにスター結線またはデルタ結線された複数の変換部(1a~1c)と、前記変換部を制御する制御部(2,2C)とを備え、前記変換部は、直列に接続された複数のブリッジセル(10_1~10_n,10A_1~10A_n,)を有し、前記ブリッジセルは、交流電圧を入出力するための第1入出力端子(P1)および第2入出力端子(P2)と、コンデンサ(C)と、前記制御部からの制御信号(Sa~Sc)に応じて、前記第1入出力端子および前記第2入出力端子と前記コンデンサとの間の接続を切り替えるインバータ回路(11)と、前記コンデンサの一端に接続された第1出力端子(P3)と、前記コンデンサの他端に接続された第2出力端子(P4)とを含むことを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記電力変換装置において、各前記変換部における各前記ブリッジセルの前記コンデンサは、互いに異なる静電容量を有していてもよい。
【0013】
〔3〕上記電力変換装置において、前記インバータ回路は、第1主電極、第2主電極、および制御電極をそれぞれ有する第1トランジスタ(T1)、第2トランジスタ(T2)、第3トランジスタ(T3)、および第4トランジスタ(T4)とを含み、前記第1トランジスタの第1主電極と前記第3トランジスタの第2主電極とが前記第1入出力端子に接続され、前記第1トランジスタの第2主電極と前記第2トランジスタの第2主電極とが前記第1出力端子に接続され、前記第2トランジスタの第1主電極と前記第4トランジスタの第2主電極とが前記第2入出力端子に接続され、前記第3トランジスタの第1主電極と前記第4トランジスタの第1主電極とが前記第2出力端子に接続され、前記第1乃至第4トランジスタの各制御電極には、前記制御信号が入力されていてもよい。
【0014】
〔4〕上記電力変換装置において、前記インバータ回路は、第1主電極、第2主電極、および制御電極をそれぞれ有する第1トランジスタ(T1)および第2トランジスタ(T2)を含み、前記第1トランジスタの前記第1主電極と前記第2トランジスタの前記第2主電極とが前記第1入出力端子に接続され、前記第1トランジスタの前記第2主電極が前記第1出力端子に接続され、前記第2トランジスタの前記第1主電極が前記第2入出力端子と前記第2出力端子に接続され、前記第1および第2トランジスタの前記制御電極には、前記制御信号がそれぞれ入力されていてもよい。
【0015】
〔5〕上記電力変換装置において、前記複数のブリッジセルのうちの一つのブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子の間に、前記一つのブリッジセルと異なる他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子の間の電圧に基づいて生成した直流電圧を供給するDC/DCコンバータ(4)を更に有していてもよい。
【0016】
〔6〕上記電力変換装置において、前記DC/DCコンバータは、一端が前記他のブリッジセルの前記第1出力端子に接続された一次側コイル(L1)と、一端が前記一つのブリッジセルの前記第2出力端子と接続された二次側コイル(L2)とを有するトランス(TR)と、前記他のブリッジセルの前記第2出力端子に接続された第1主電極と、前記一次側コイルの他端に接続された第2主電極と、前記制御部から信号が入力される制御電極とを有するスイッチングトランジスタ(Ts)と、一端が前記二次側コイルの他端に接続され、他端が前記一つのブリッジセルの前記第1出力端子に接続され、前記一端から前記他端へ電流を流す整流素子(DR)と、前記整流素子の他端と前記二次側コイルの一端との間に接続された出力コンデンサ(Cout)とを含んでもよい。
【0017】
〔7〕上記電力変換装置において、前記他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記整流素子の他端の間、または前記他のブリッジセルの前記第2出力端子と前記二次側コイルの一端に接続された出力切替スイッチ(SW)を更に有し、前記制御部は、前記他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子との間の電圧が所定の範囲内にある場合に、前記出力切替スイッチをオンし、前記他のブリッジセルの前記第1出力端子と前記第2出力端子との間の電圧が所定の範囲外にある場合に、前記出力切替スイッチをオフするとともに、前記スイッチングトランジスタの制御電極に信号を供給して、前記スイッチングトランジスタをスイッチングしてもよい。
【0018】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態1に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図1に示す電力変換装置100は、交流電圧から複数の直流電圧を生成する機器である。電力変換装置100は、例えば6.6kV等の高圧の交流電圧から12V、48V等の低圧の直流電圧を生成する。
【0020】
電力変換装置100は、交流電源5から出力された交流電力を電線20a~20cを介して入力する。交流電源5は、三相3線式で交流電力を供給する送電設備であり、例えば、変電所の変圧器や柱上変圧器等である。電線20a~20cは、三相(a相、b相、c相)の交流電圧をそれぞれ伝送するための電線である。
【0021】
電力変換装置100は、複数の変換部1a~1cを備えている。変換部1a~1cは、三相交流の各相に対応して設けられ、対応する一つの相の交流電圧を複数に分割する機能部である。
【0022】
各変換部1a~1cは、対応する電線20a~20cにそれぞれ接続可能にされ、互いにスター結線されている。具体的に、変換部1aの一端は、a相の交流電圧が供給される電線20aに接続され、変換部1bの一端は、b相の交流電圧が供給される電線20bに接続され、変換部1cの一端は、c相の交流電圧が供給される電線20cに接続されている。各変換部1a~1cの他端は共通に接続されている。
【0023】
なお、以下の説明において各変換部1a~1cを区別しない場合には、単に、「変換部1」と表記する場合がある。
【0024】
図1に示すように、電力変換装置100は、3つの変換部(クラスタ)1a~1cをスター形に結線した単一形マルチレベル変換回路、すなわち単一スターMMC(Modular Multilevel Converter)を構成している。
【0025】
電力変換装置100は、電線20a~20cを伝搬する三相交流電力に対する無効電力補償回路として動作するとともに、後述する各変換部1a~1cのブリッジセル10によって交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータとしても機能する。
【0026】
一般に、従来の無効電力補償装置としての単一形マルチレベル変換回路は、各ブリッジセル10のコンデンサCの両端から電圧を出力するように構成されていないが、本実施の形態に係る電力変換装置100は、各ブリッジセル10のコンデンサCの両端に出力端子P3,P4を設けることにより、コンデンサCの直流電圧が出力可能に構成されている。
【0027】
また、従来の無効電力補償装置としての単一形マルチレベル変換回路は、各ブリッジセル10のコンデンサCの静電容量が全て同一の値に設定されているが、本実施の形態に係る電力変換装置100は、各ブリッジセル10のコンデンサCの容量を互いに相違させることにより、種々の直流電圧の生成が可能となっている。
以下、電力変換装置100を構成する変換部1について、詳細に説明する。
【0028】
変換部1は、直列に接続された複数のブリッジセル10を有している。具体的に、変換部1aは、電線20aと中性点Nとの間に直列に接続されたn(nは2以上の整数)個のブリッジセル10_1~10_nを有する。変換部1bは、電線20bと中性点Nとの間に直列に接続されたn個のブリッジセル10_1~10_nを有する。変換部1cは、電線20cと中性点Nとの間に直列に接続されたn個のブリッジセル10_1~10_nを有している。
【0029】
また、図1に示すように、電流制御や短絡電流を抑制するために、各変換部1a~1cに、コイルL(バッファリアクトル)を直列に接続してもよい。
【0030】
ブリッジセル10は、入力された交流電圧から所定の直流電圧を生成する回路である。図1に示すように、ブリッジセル10_1は、入出力端子P1,P2と、出力端子P3,P4と、インバータ回路11と、コンデンサCとを含む。なお、各ブリッジセル10_1~10_nの回路構成は同一であり、図1には、一例としてブリッジセル10_1の内部構成が図示されている。
【0031】
入出力端子P1,P2は、交流電力を入出力するための端子である。すなわち、入出力端子P1,P2は、電線20a~20c側から交流電圧を入力するとともに、複数のブリッジセル10によって生成されたマルチレベルの電圧を電線20a~20c側に出力する。
【0032】
出力端子P3,P4は、直流電圧を出力するための端子である。出力端子P3,P4には、直流電圧で駆動される負荷3が接続可能となっている。
【0033】
コンデンサCは、インバータ回路11を介して電線20a~20c側から供給された電力を蓄える素子である。コンデンサCの一端は、出力端子P3と接続され、コンデンサCの他端は、出力端子P4と接続されている。
【0034】
インバータ回路11は、制御部2からの制御信号Sa~Scに応じて、入出力端子P1,P2とコンデンサCとの間の接続を切り替える回路である。インバータ回路11は、少なくとも2つのトランジスタを含んで構成されている。具体的に、インバータ回路11は、フルブリッジ回路を構成するトランジスタT1~T4と、ダイオードD1~D4とを含んでいる。
【0035】
トランジスタT1~T4は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やGCT(Gate Commutated Turn-off Thyristor)等の電流遮断機能を有するトランジスタである。
【0036】
トランジスタT1とトランジスタT3は、出力端子P3,P4間に直列に接続されている。すなわち、トランジスタT1の第1主電極としてのエミッタ電極は、入出力端子P1およびダイオードD1のアノード電極と接続されている。トランジスタT1の第2主電極としてのコレクタ電極は、出力端子P3およびダイオードD1のカソード電極と接続されている。トランジスタT3の第1主電極としてのエミッタ電極は、出力端子P4およびダイオードD3のアノード電極と接続されている。トランジスタT3の第2主電極としてのコレクタ電極は、入出力端子P1およびダイオードD3のカソード電極と接続されている。
【0037】
トランジスタT2とトランジスタT4は、出力端子P3,P4間に直列に接続されている。すなわち、トランジスタT2の第1主電極としてのエミッタ電極は、入出力端子P2およびダイオードD2のアノード電極と接続されている。トランジスタT2の第2主電極としてのコレクタ電極は、出力端子P3およびダイオードD2のカソード電極と接続されている。トランジスタT4の第1主電極としてのエミッタ電極は、出力端子P4およびダイオードD4のアノード電極と接続されている。トランジスタT4の第2主電極としてのコレクタ電極は、入出力端子P2およびダイオードD4のカソード電極と接続されている。
【0038】
各ブリッジセル10_1~10_nのトランジスタT1~T4は、制御部2からの制御信号Sa~Scによってオン/オフが制御される。
【0039】
図1において、参照符号Sa~Scは、各ブリッジセル10_1~10_nを構成する各トランジスタT1~T4を駆動するための制御信号の束を表している。すなわち、参照符号Saは、変換部1aにおける各トランジスタT1~T4の制御電極としてのゲート電極を駆動するための制御信号(ゲート駆動信号)の束を表している。参照符号Sbは、変換部1bにおける各トランジスタT1~T4の制御電極としてのゲート電極を駆動するための制御信号(ゲート駆動信号)の束を表している。参照符号Scは、変換部1cにおける各トランジスタT1~T4の制御電極としてのゲート電極を駆動するための制御信号(ゲート駆動信号)の束を表している。
【0040】
図2A図2Dは、実施の形態1に係る電力変換装置におけるブリッジセル10の動作を説明するための図である。図3は、実施の形態1に係る電力変換装置におけるブリッジセル10の入出力端子P1,P2間から出力される電圧のタイミングチャートである。
【0041】
ブリッジセル10は、トランジスタT1~T4のスイッチングパターンを切り替えることにより、電線20a~20cから入出力端子P1,P2を介して入力された交流電力によってコンデンサCを充電するとともに、コンデンサCの電圧Vcを入出力端子P1,P2から電線20a~20cに出力する。
【0042】
トランジスタT1~T4のスイッチングパターンとしては、図2A図2Dに示す4パターンがある。
【0043】
すなわち、図2Aに示す第1スイッチングパターンは、トランジスタT1,T4がオンし、トランジスタT2,T3がオフした状態である。この場合、入出力端子P1がトランジスタT1を介してコンデンサCの一端に接続され、入出力端子P2がトランジスタT4を介してコンデンサCの他端に接続される。これにより、図3に示すように、入出力端子P1,P2間の電圧Vo(入出力端子P2に対する入出力端子P1の電圧)は“+Vc”となる。
【0044】
図2Bに示す第2スイッチングパターンは、トランジスタT1,T2がオンし、トランジスタT3,T4がオフした状態である。この場合、入出力端子P1と入出力端子P2が、トランジスタT1,T2を介して短絡する。これにより、図3に示すように、入出力端子P1,P2間の電圧Voは“0”となる。
【0045】
図2Cに示す第3スイッチングパターンは、トランジスタT1,T2がオフし、トランジスタT3,T4がオンした状態である。この場合、入出力端子P1と入出力端子P2が、トランジスタT3,T4を介して短絡する。これにより、図3に示すように、入出力端子P1,P2間の電圧Voは“0”となる。
【0046】
図2Dに示す第4スイッチングパターンは、トランジスタT1,T4がオフし、トランジスタT2,T3がオンした状態である。この場合、入出力端子P1がトランジスタT3を介してコンデンサCの他端に接続され、入出力端子P2がトランジスタT2を介してコンデンサCの一端に接続される。これにより、図3に示すように、入出力端子P1,P2間の電圧Voは“-Vc”となる。
【0047】
制御部2は、制御信号Sa~Scによって各変換部1a~1cのトランジスタT1~T4のスイッチングパターンを切り替えることにより、マルチレベルの電圧を生成し、入出力端子P1,P2を介して電線20a~20c側に出力する。
【0048】
図4は、実施の形態1に係る電力変換装置の変換部1によるマルチレベルの電圧の生成原理を説明するための図である。
図4には、理解の容易化のため、変換部1に含まれるブリッジセル10の個数を二個(n=2)した場合において、変換部1が生成するマルチレベルの電圧Voの波形と、ブリッジセル10のスイッチングパターンとの対応関係が示されている。
【0049】
図4において、二つのブリッジセル10のうち電線20a~20c側に接続されるブリッジセル10を「上側ブリッジセル10H」とし、中性点N側に接続されるブリッジセル10を「下側ブリッジセル10L」と表記する。また、下側ブリッジセル10Lの入出力端子P2に対する上側ブリッジセル10Hの入出力端子P1の電圧を「Vo」と表記する。なお、ここでは、中性点Nをグラウンド電位に接続した場合が一例として示されている。
【0050】
また、図4において、上側ブリッジセル10HのコンデンサCの静電容量が“3c/4”、下側ブリッジセル10LのコンデンサCの静電容量が“c/4”であって、上側ブリッジセル10HのコンデンサCの電圧が“Vdc/4”に保持され、下側ブリッジセル10LのコンデンサCの電圧が“3Vdc/4”に保持されているとする。
【0051】
図4に示すように、期間t1において、上側ブリッジセル10HのトランジスタT1,T4をオンし、T2,T3をオフするとともに、下側ブリッジセル10LのトランジスタT1,T4をオンし、T2,T3をオフする。これにより、電圧Voは“Vdc”となる。
【0052】
期間t2において、上側ブリッジセル10HのトランジスタT1,T4をオンし、T2,T4をオフするとともに、下側ブリッジセル10LのトランジスタT1,T2をオンし、T4,T3をオフする。これにより、電圧Voは“Vdc/4”となる。
【0053】
期間t3において、上側ブリッジセル10HのトランジスタT1,T2をオンし、T3,T4をオフするとともに、下側ブリッジセル10LのトランジスタT1,T2をオンし、T3,T4をオフする。これにより、電圧Voは“0”となる。
【0054】
期間t4において、上側ブリッジセル10HのトランジスタT2,T3をオンし、T1,T4をオフするとともに、下側ブリッジセル10LのトランジスタT1,T2をオンし、T3,T4をオフする。これにより、電圧Voは“-Vdc/4”となる。
【0055】
期間t5において、上側ブリッジセル10HのトランジスタT2,T3をオンし、T1,T4をオフするとともに、下側ブリッジセル10LのトランジスタT2,T3をオンし、T1,T4をオフする。これにより、電圧Voは“-Vdc”となる。
【0056】
図4に示すように、上側ブリッジセル10Hおよび下側ブリッジセル10Lの3つのスイッチングパターンを組み合わせることにより、2つの上側ブリッジセル10Hおよび下側ブリッジセル10Lによって、“5”種類(レベル)の電圧Voを生成することができる。
【0057】
ブリッジセルがn個の場合も同様の原理でマルチレベルの電圧Voを生成することができる。すなわち、変換部1がn個のブリッジセル10で構成される場合、(2n+1)種類の電圧を生成することができる。
【0058】
変換部1a~1cは、上述したマルチレベルの電圧Voを、入出力端子P1,P2を介して、対応する電線20a~20cに供給する。その際、変換部1a~1cの各ブリッジセル10のコンデンサCの両端には、所定の直流電圧が発生している。例えば、図4の場合、上側ブリッジセル10HのコンデンサC(=3c/4)の両端には、“Vdc/4”の直流電圧が発生し、下側ブリッジセル10LのコンデンサC(=c/4)の両端には、“3Vdc/4”の直流電圧が発生している。
【0059】
そこで、実施の形態1に係る電力変換装置100では、各ブリッジセル10のコンデンサCの両端に出力端子P3,P4をそれぞれ設けることにより、出力端子P3,P4から直流電圧を取り出すことが可能となる。
【0060】
ここで、図4に示すように、一つの変換部1a~1c内の各ブリッジセル10のコンデンサCの静電容量は互いに相違していてもよい。これによれば、各ブリッジセル10のコンデンサCの両端(出力端子P3,P4間)に発生する直流電圧を互いに相違させることができ、一つの変換部1a~1cにおいて、複数の直流電圧を生成することが可能となる。
【0061】
例えば、3つのブリッジセル10を有する変換部1aによって12V、48V、72Vの直流電圧を生成する場合、12Vを発生させるブリッジセル10のコンデンサC1を“c”とし、48Vを発生させるブリッジセル10のコンデンサC2を“4c”とし、72Vを発生させるブリッジセル10のコンデンサC3を“6c”とすればよい。
【0062】
このように、各ブリッジセル10のコンデンサCの静電容量を適切に設定することにより、所望の直流電圧を得ることができる。
その一方で、電線20a~20c側の三相交流電力への悪影響を防止するため、各変換部1a~1cの入出力端子P1,P2を介して出力される電圧Voは互いに等しい必要がある。この点について、図5を用いて詳細に説明する。
【0063】
図5は、変換部1a~1cの等価回路を示す図である。
同図に示すように、各変換部1a~1cは、複数のコンデンサとコイルLが直列に接続された回路とみなすことができる。
【0064】
上述したように、各変換部1a~1cの出力電圧、すなわち端子aと端子Nとの間の電圧Vanと、端子bと端子Nとの間の電圧Vbnと、端子cと端子Nとの間の電圧Vcnとは、互いに等しい必要がある。そのため、各変換部1a~1cにおけるブリッジセル10のコンデンサは、下記式(1)を満たす必要がある。
【0065】
【数1】
【0066】
これにより、変換部1a~1cは、電線20a~20c側の三相交流電力への悪影響を抑えつつ、種々の直流電圧を生成することが可能となる。
【0067】
実際には、各ブリッジセル10のコンデンサCは通電時に充放電が発生し、コンデンサCをそのまま放置すれば、コンデンサ電圧の不均一が拡大して電圧Voの波形に歪みが生じる。そこで、各ブリッジセル10のコンデンサ電圧を一定且つ均一に保持するためのバランス制御が必要となる。具体的には、各相の変換部1a~1c間で、コンデンサCのコンデンサ電圧の算術平均がバランスするように電力の授受を発生させる。
【0068】
例えば、変換部1a~1cがスター結線されている場合、各変換部1a~1cの電圧指令値に零相電圧v0を重畳させることによって各変換部1a~1c間のバランスを保つ。通常、各変換部1a~1cの交流電圧および交流電流は、直交関係を保っているため、変換部1a~1c間で有効電力が発生しない。この状態において、各変換部1a~1cの電圧指令値に零相電圧v0を重畳させた場合、交流電圧と交流電流の位相関係が変化し、変換部1a~1c間で有効電力の授受が生じる。これを利用して、各相の変換部1a~1c間で、コンデンサCのコンデンサ電圧の算術平均をバランスさせることが可能となる。
【0069】
以上、実施の形態1に係る電力変換装置100は、複数のブリッジセル10を含む単一形マルチレベル変換回路を構成し、各ブリッジセル10のコンデンサCの両端にはそれぞれ出力端子P3,P4が設けられている。
これによれば、各ブリッジセル10を構成するスイッチとしてのトランジスタT1~T4を適切にスイッチングすることにより、変換部1は、無効電力補償装置(STATCOM)として動作するとともに、入力された交流電圧に基づいて各ブリッジセル10のコンデンサCを充電して、コンデンサCの両端の直流電圧を出力端子P3,P4から出力するAC/DCコンバータとしても動作することができる。
【0070】
実施の形態1に係る電力変換装置100において、各ブリッジセル10のコンデンサCの静電容量を相違させることにより、各コンデンサCに発生する電圧を相違させることができる。これにより、電力変換装置100は、一つの交流電圧から複数の異なる直流電圧を生成することができる。
【0071】
このように、実施の形態1に係る電力変換装置100によれば、従来の電力供給システムのように、複数のAC/DC変換回路やDC/DCコンバータを用いるのではなく、一つの交流電力から複数の直流電圧を生成することが可能となるので、従来の電力供給システムに比べて、電力の変換効率の低下を抑制することが可能になるとともに、システムの規模の増大を抑制することが可能となる。
【0072】
したがって、実施の形態1に係る電力変換装置100によれば、より小型で高効率な電力変換システムを実現することが可能となる。また、電力変換装置100は、単一形マルチレベル変換回路を構成する各ブリッジセル10によって複数の直流電圧を生成しているので、従来の電力供給システムに比べて高調波の発生が抑えられる。これにより、電力変換装置100から発生するノイズを抑えることができ、ノイズによる他の外部機器の誤動作を防止することが可能となる。
【0073】
≪実施の形態2≫
図6は、本発明の実施の形態2に係る電力変換装置の構成を示す図である。
実施の形態2に係る電力変換装置100Aは、ブリッジセルがハーフブリッジ回路である点において実施の形態1に係る電力変換装置と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様である。
【0074】
図6に示すように、電力変換装置100Aにおける各変換部1Aa~1Acを構成するブリッジセル10A_1~10A_nのインバータ回路11Aは、ハーフブリッジ回路を構成するトランジスタT1,T2と、ダイオードD1,D2とを含んでいる。
【0075】
トランジスタT1とトランジスタT2は、出力端子P3,P4間に直列に接続されている。すなわち、トランジスタT1の第1主電極としてのエミッタ電極は、入出力端子P1およびダイオードD1のアノード電極と接続されている。トランジスタT1の第2主電極としてのコレクタ電極は、出力端子P3およびダイオードD1のカソード電極と接続されている。トランジスタT2の第1主電極としてのエミッタ電極は、入出力端子P2、出力端子P4およびダイオードD2のアノード電極と接続されている。トランジスタT2の第2主電極としてのコレクタ電極は、入出力端子P1およびダイオードD2のカソード電極と接続されている。
【0076】
各ブリッジセル10A_1~10A_nのトランジスタT1,T2は、実施の形態1に係るブリッジセル10と同様に、制御部2からの制御信号Sa~Scによってオン/オフが制御される。
【0077】
図7Aおよび図7Bは、実施の形態2に係る電力変換装置100Aにおけるブリッジセル10Aの動作を説明するための図である。図8は、実施の形態2に係る電力変換装置100Aにおけるブリッジセル10Aの入出力端子P1,P2間から出力される電圧を示すタイミングチャートである。
【0078】
ブリッジセル10Aは、トランジスタT1,T2のスイッチングパターンを切り替えることにより、電線20a~20cから入出力端子P1,P2を介して入力された交流電力によってコンデンサCを充電するとともに、コンデンサCの電圧Vcを入出力端子P1,P2から電線20a~20cに出力する。
【0079】
ブリッジセル10AのトランジスタT1,T2のスイッチングパターンとしては、図7Aおよび図7Bに示す2パターンがある。
【0080】
すなわち、図7Aに示す第1スイッチングパターンは、トランジスタT1がオンし、トランジスタT2がオフした状態である。この場合、入出力端子P1がコンデンサCの一端に接続され、入出力端子P2がコンデンサCの他端に接続される。これにより、図8に示すように、入出力端子P1,P2間の電圧Voは“+Vc”となる。
【0081】
図7Bに示す第2スイッチングパターンは、トランジスタT1がオフし、トランジスタT2がオンした状態である。この場合、入出力端子P1,P2間が短絡する。これにより、図8に示すように、入出力端子P1,P2間の電圧Voは“0”となる。
【0082】
電力変換装置100Aは、制御信号Sa~Scによって各変換部1Aa~1AcのトランジスタT1,T2のスイッチングパターンを切り替えることにより、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様の原理によってマルチレベルの電圧Voを生成する。生成されたマルチレベルの電圧Voは、入出力端子P1,P2を介して電線20a~20c側に出力される。このとき、各ブリッジセル10AのコンデンサCの両端の直流電圧は、出力端子P3,P4から出力される。
【0083】
ここで、一つの変換部1Aa~1Ac内の各ブリッジセル10AのコンデンサCの静電容量を互いに相違させることにより、一つの変換部1Aa~1Acにおいて、複数の直流電圧を生成することが可能となる。
【0084】
以上、実施の形態2に係る電力変換装置100Aによれば、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様に、一つの交流電力から複数の直流電圧を生成することが可能となるので、従来の電力供給システムに比べて、電力の変換効率の低下を抑制し、且つシステムの規模の増大を抑制することが可能となる。
【0085】
≪実施の形態3≫
図9は、本発明の実施の形態3に係る電力変換装置の構成を示す図である。
実施の形態3に係る電力変換装置100Bは、変換部1a~1cがデルタ結線によって互いに接続されている点においての実施の形態1に係る電力変換装置と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様である。
【0086】
図9に示すように、各変換部1a~1cは、対応する電線20a~20cにそれぞれ接続可能にされ、互いにデルタ結線されている。具体的に、変換部1aの一端は、a相の交流電圧が供給される電線20aに接続され、変換部1aの他端は、b相の交流電圧が供給される電線20bに接続されている。また、変換部1bの一端は、b相の交流電圧が供給される電線20bに接続され、変換部1bの他端は、c相の交流電圧が供給される電線20cに接続されている。また、変換部1cの一端は、c相の交流電圧が供給される電線20cに接続され、変換部1cの他端は、a相の交流電圧が供給される電線20aに接続されている。
【0087】
電力変換装置100Bは、3つの変換部(クラスタ)1a~1cをデルタ形に結線した単一形マルチレベル変換回路、すなわち単一デルタMMCを構成している。電力変換装置100Bは、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様に、電線20a~20cを伝搬する三相交流電力に対する無効電力補償回路として動作するとともに、各変換部1a~1cのブリッジセル10によって交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータとしても機能する。
【0088】
すなわち、電力変換装置100Bは、制御信号Sa~Scによって各変換部1a~1cにおける各ブリッジセル10のトランジスタT1~T4のスイッチングパターンを切り替えることにより、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様の原理によってマルチレベルの電圧Voを生成して、入出力端子P1,P2を介して電線20a~20c側に出力するとともに、各ブリッジセル10のコンデンサCの両端の直流電圧を出力端子P3,P4から出力する。
【0089】
以上、実施の形態3に係る電力変換装置100Bによれば、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様に、一つの交流電力から複数の直流電圧を生成することが可能となるので、従来の電力供給システムに比べて、電力の変換効率の低下を抑制し、且つシステムの規模の増大を抑制することが可能となる。
【0090】
≪実施の形態4≫
図10は、本発明の実施の形態4に係る電力変換装置の構成を示す図である。
実施の形態4に係る電力変換装置100Cは、一つの負荷に対して複数のブリッジセルから直流電圧の供給が可能になっている点において、実施の形態1に係る電力変換装置と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係る電力変換装置100と同様である。
【0091】
図10に示すように、電力変換装置100Cは、上述した各相に対応する変換部1a~1cに加えて、DC/DCコンバータ4を備えている。具体的に、電力変換装置10Cは、所定の負荷3Cに対して、一つのブリッジセル10からの電力供給と、他のブリッジセル10からのDC/DCコンバータ4を介した電力供給とが可能となっている。
【0092】
より具体的には、電力変換装置10Cは、DC/DCコンバータ4と出力切替用スイッチSWを有している。
【0093】
DC/DCコンバータ4は、複数のブリッジセル10のうちの一つのブリッジセルの出力端子P3と出力端子P4との間に、上記一つのブリッジセルと異なる他のブリッジセルの出力端子P3と出力端子P4の間の電圧に基づいて生成した直流電圧を供給する。
【0094】
本実施の形態では、上記一つのブリッジセル10を“変換部1bのブリッジセル10_n”とし、上記他のブリッジセル10を“変換部1aのブリッジセル10_n”とした場合を例にとり、説明する。なお、上記一つのブリッジセル10および上記他のブリッジセル10は、上記の例に限定されず、電力変換装置10Cを構成する何れか二つのブリッジセル10であればよい。
【0095】
DC/DCコンバータ4は、例えば絶縁型のDC/DCコンバータである。例えば、DC/DCコンバータ4は、フライバックコンバータを形成するための、トランスTR、スイッチングトランジスタTs、整流素子DR、および出力コンデンサCoutを有している。
【0096】
トランスTRは、一次側コイルL1と二次側コイルL2とを含む。
スイッチングトランジスタTsは、例えば、制御電極としてのゲート電極と、第1主電極としてのソース電極と、第2主電極としてのドレイン電極とを有する電界効果トランジスタである。スイッチングトランジスタTsは、制御部2Cからゲート電極に信号が入力されることにより、スイッチング動作を行う。
整流素子DRは、一方向に電流を流す素子であり、例えばダイオードである。なお、整流素子DRは、適切にオン・オフが制御される整流用トランジスタであってもよい。
【0097】
トランスTRの一次側コイルL1の一端は、変換部1aのブリッジセル10_nの出力端子P3に接続されている。トランスTRの一次側コイルL1の他端は、スイッチングトランジスタTsのドレイン電極に接続されている。
【0098】
トランスTRの二次側コイルL2の一端は、変換部1bのブリッジセル10_nの出力端子P4に接続されている。二次側コイルL2の他端は、整流素子DRのアノード電極に接続されている。
【0099】
整流素子DRは、一端(アノード電極)が二次側コイルL2の他端に接続され、他端(カソード電極)が、変換部1bのブリッジセル10_nの出力端子P3に接続されている。具体的に、整流素子DRのカソード電極は、出力切替スイッチSWを介して、変換部1bのブリッジセル10_nに接続されている。
【0100】
出力コンデンサCoutは、整流素子DRの他端(カソード電極)と二次側コイルL2の一端との間に接続されている。
【0101】
出力切替用スイッチSWは、所定の負荷3Cに対する、変換部1bのブリッジセル10_nからの電力供給と、DC/DCコンバータ4を介した変換部1aのブリッジセル10_nからの電力供給と切り替えるための機能部である。
【0102】
例えば、出力切替用スイッチSWは、変換部1bのブリッジセル10_nの出力端子P3と整流素子DRのカソードとの間に接続されている。なお、出力切替用スイッチSWは、ブリッジセル10_nの出力端子P4と二次側コイルL2の一端との間に接続されていてもよい。
【0103】
実施の形態4に係る電力変換装置100Cは、通常時、変換部1bのブリッジセル10_nから負荷3Cに直流電圧を供給する。一方、何等かの原因で変換部1bのブリッジセル10_nが故障して負荷3Cに適切な直流電圧を供給することができなくなった場合、電力変換装置100Cは、変換部1aのブリッジセル10_nからDC/DCコンバータ4を介して、負荷3Cに直流電圧を供給する。
【0104】
例えば、制御部2Cは、変換部1bのブリッジセル10_nの出力端子P3,P4間の電圧を監視し、当該ブリッジセル10_nが適正な直流電圧を出力しているか否かを判定するとともに、判定結果に基づいて、負荷3Cへの電力供給源を切り替える。
【0105】
すなわち、制御部2Cは、変換部1bのブリッジセル10_nの出力端子P3と出力端子P4との間の電圧Voxが所定の範囲内にある場合には、出力切替スイッチSWをオンし、スイッチングトランジスタTsをオフする。これにより、変換部1bのブリッジセル10_nが正常に動作している場合には、変換部1bのブリッジセル10_nによって負荷3Cへの電力供給が行われる。
【0106】
一方、制御部2Cは、変換部1bのブリッジセル10_nの出力端子P3と出力端子P4との間の電圧Voxが所定の範囲外にある場合には、出力切替スイッチSWをオフするとともに、スイッチングトランジスタTsのゲート電極に信号を供給して、スイッチングトランジスタTsをスイッチングする。具体的には、制御部2Cは、スイッチSWをオフした状態で、変換部1bのブリッジセル10_nの出力端子P3,P4間の電圧(負荷3Cの両端の電圧)が所望の値となるように、トランジスタTsを適切なデューティ比のPWM(Pulse Width Modulation)信号によってスイッチングする。
これにより、変換部1bのブリッジセル10_nが正常に動作していない場合には、DC/DCコンバータ4を介して、変換部1aのブリッジセル10_nから負荷3Cへの電力供給が行われる。
【0107】
以上、実施の形態4に係る電力変換装置100Cにおいて、一つのブリッジセル10から直流電圧の供給を受けている負荷3Cに対して、少なくとも一つの別のブリッジセル10がDC/DCコンバータ4を介して接続されている。
【0108】
これによれば、通常時に負荷3Cに対して電力を供給している一つのブリッジセル10が故障した場合であっても、他のブリッジセル10からDC/DCコンバータ4を介して、負荷3Cへの電力供給を継続することができるので、電力変換装置100Cの信頼性を向上させることが可能となる。
【0109】
また、DC/DCコンバータ4を、トランスTRを用いた絶縁型のフライバックコンバータによって実現することにより、変換部1aのブリッジセル10と変換部1bのブリッジセル10との間を電気的に絶縁することができるので、電力変換装置100Cの信頼性を更に向上させることが可能となる。
【0110】
また、実施の形態4に係る電力変換装置100Cにおいて、制御部2Cが、通常時に電力供給を行っている変換部1bのブリッジセル10_nの電圧Voxが所定の範囲内にあるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、出力切替スイッチSWおよびDC/DCコンバータ4の制御を行う。
これによれば、負荷3Cに対するブリッジセル10_nの動作が正常であるか否かを適切に把握した上で、負荷3Cへの電力供給源を適切に切り替えることができるので、電力変換装置100Cの信頼性を更に向上させることが可能となる。
【0111】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0112】
例えば、上記実施の形態3において、デルタ結線された変換部1a~1cを構成するインバータ回路11がフルブリッジ回路である場合を例示したが、これに限られない。例えば、実施の形態2に係る電力変換装置100Aと同様に、インバータ回路11は、ハーフブリッジ回路であってもよい。
【0113】
また、上記実施の形態4において、異なる変換部1a,1bのブリッジセル10間にDC/DCコンバータを接続する場合を例示したが、これに限られず、同一の変換部内のブリッジセル間にDC/DCコンバータを接続してもよい。例えば、図10において、変換部1aのブリッジセル10_2に接続される負荷3に対して、変換部1aのブリッジセル10_nを絶縁型のDC/DCコンバータ4を介して接続してもよい。
【0114】
また、上記実施の形態4において、実施の形態1に係る電力変換装置100にDC/DCコンバータ4を含む冗長構成を採用する場合を例示したが、これに限られず、実施の形態2に係る電力変換装置100Aおよび実施の形態3に係る電力変換装置100Bにも同様に、DC/DCコンバータ4を含む冗長構成を採用することが可能である。
【0115】
また、上記実施の形態では、各変換部1a~1cがそれぞれn個のブリッジセル10_1~10_nを有する場合を例示したが、これに限られず、各変換部1a~1cが有するブリッジセル10の個数は異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1,1a~1c,1Aa~1Ac…変換部、2,2C…制御部、3,3C…負荷、4…DC/DCコンバータ、5…交流電源、10,10_1~10_n,10A,10A_1~10A_n,10C,10H,10L…ブリッジセル、11,11A…インバータ回路、20a,20b,20c…電線、100,100A~100C…電力変換装置、C…コンデンサ、Cout…出力コンデンサ、D1~D4…ダイオード、DR…整流素子、L…コイル、L1…一次側コイル、L2…二次側コイル、P1,P2…入出力端子、P3,P4…出力端子、Sa~Sc…制御信号、T1~T4…トランジスタ。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10