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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】多重円板型脱水機および脱水システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/04 20060101AFI20230221BHJP
   C02F 11/121 20190101ALI20230221BHJP
   B01D 36/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B01D33/04 B ZAB
C02F11/121
B01D33/04 Z
B01D36/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019126777
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021010882
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】梅本 博史
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛
(72)【発明者】
【氏名】武部 博文
【審査官】谷本 怜美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-330060(JP,A)
【文献】特開2017-159240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 33/04
C02F 11/121
B01D 36/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に回転可能に配置されている回転軸と、前記回転軸の軸方向に沿って積層された複数のろ片を有するとともに前記複数のろ片間にろ過溝が形成された積層状回転ろ体とを含み、上方列と下方列とに複数ずつ並んで配置されている複数の回転体と、
前記筐体とは別個に形成され、上方列の前記複数の回転体のうちの少なくとも1つと、下方列の前記複数の回転体のうちの少なくとも1つとを連結するとともに、前記上方列の回転体と前記下方列の回転体との間に形成された被処理物を搬送する搬送経路から前記回転軸が外側に向かって撓むことを規制する、撓み規制部とを備え、
前記筐体には、前記被処理物が前記筐体の内部に供給されるための供給口と、前記被処理物が前記筐体の外部に排出されるための排出口とが設けられており、
前記複数の回転体は、前記排出口側に配置された第1の回転体と、前記第1の回転体よりも前記筐体の供給口側に配置された第2の回転体とにより構成されており、
前記第1の回転体は、上下方向において前記上方列の回転体と前記下方列の回転体とが対向し、
前記第2の回転体のうち最上流の回転体は、上下方向において前記上方列の回転体と前記下方列の回転体とが対向しておらず、
前記複数の回転体は、それぞれ、複数の前記積層状回転ろ体を含み、
前記第2の回転体には、前記複数の積層状回転ろ体同士の間に設けられた中間板部材が設けられており、
前記撓み規制部は、前記筐体に固定されていない状態で、前記第1の回転体のうちの前記中間板部材に対応する位置に前記中間板部材に代えて配置され、前記第1の回転体に対応する前記上方列の回転体と、前記第1の回転体に対応する前記下方列の回転体とを連結するように構成されている、多重円板型脱水機。
【請求項2】
前記撓み規制部は、前記上方列の回転体のうちの少なくとも1つの前記回転体の前記回転軸である上方回転軸が貫通して配置される上方孔部と、前記下方列の回転体のうちの少なくとも1つの前記回転体の前記回転軸である下方回転軸が貫通して配置される下方孔部とが設けられた単一の撓み規制部材を含む、請求項に記載の多重円板型脱水機。
【請求項3】
前記撓み規制部は、前記単一の撓み規制部材の前記上方孔部に配置された前記上方回転軸を保持する第1軸受部材と、前記単一の撓み規制部材の前記下方孔部に配置された前記下方回転軸を保持する第2軸受部材とを含む、請求項に記載の多重円板型脱水機。
【請求項4】
前記撓み規制部は、第1の撓み規制部と、前記第1の撓み規制部とは別個に形成され、前記第1の撓み規制部が連結する前記回転体とは異なる前記回転体を連結する第2の撓み規制部とを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の多重円板型脱水機。
【請求項5】
前記撓み規制部には、前記上方列の回転体よりも上方側の部分に、前記上方列の回転体および前記下方列の回転体のうちの少なくとも一方が保守作業される際に上方から前記撓み規制部を吊るすための保持部材が配置される保持部材配置部が設けられている、請求項1~のいずれか1項に記載の多重円板型脱水機。
【請求項6】
前記積層状回転ろ体は、複数の小径円板ろ片と、前記小径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の中径円板ろ片と、前記中径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の大径円板ろ片とを有し、
前記中径円板ろ片は、前記小径円板ろ片および前記大径円板ろ片が嵌合するとともに、隣接する前記中径円板ろ片に当接する凸部を有しており、
前記積層状回転ろ体は、隣接する前記中径円板ろ片間において、前記小径円板ろ片と前記大径円板ろ片とが揺動可能に交互に積層されることにより構成されており、
前記撓み規制部は、前記積層状回転ろ体と共に、前記回転軸に積層されるように配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の多重円板型脱水機。
【請求項7】
被処理物を濃縮させる濃縮機と、
濃縮された前記被処理物が前記濃縮機から供給される供給口を有する筐体を含む、脱水機とを備え、
前記脱水機は、
前記筐体に回転可能に配置されている回転軸と、前記回転軸の軸方向に沿って積層された複数のろ片を有するとともに前記複数のろ片間にろ過溝が形成された積層状回転ろ体とを含み、上方列と下方列とに複数ずつ並んで配置されている複数の回転体と、
前記筐体とは別個に形成され、上方列の前記複数の回転体のうちの少なくとも1つと、下方列の前記複数の回転体のうちの少なくとも1つとを連結するとともに、前記上方列の回転体と前記下方列の回転体との間に形成された前記被処理物を搬送する搬送経路から前記回転軸が外側に向かって撓むことを規制する、撓み規制部とを含み、
前記筐体には、前記被処理物が前記筐体の外部に排出されるための排出口が設けられており、
前記複数の回転体は、前記排出口側に配置された第1の回転体と、前記第1の回転体よりも前記筐体の供給口側に配置された第2の回転体とにより構成されており、
前記第1の回転体は、上下方向において前記上方列の回転体と前記下方列の回転体とが対向し、
前記第2の回転体のうち最上流の回転体は、上下方向において前記上方列の回転体と前記下方列の回転体とが対向しておらず、
前記複数の回転体は、それぞれ、複数の前記積層状回転ろ体を含み、
前記第2の回転体には、前記複数の積層状回転ろ体同士の間に設けられた中間板部材が設けられており、
前記撓み規制部は、前記筐体に固定されていない状態で、前記第1の回転体のうちの前記中間板部材に対応する位置に前記中間板部材に代えて配置され、前記第1の回転体に対応する前記上方列の回転体と、前記第1の回転体に対応する前記下方列の回転体とを連結するように構成されている、脱水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多重円板型脱水機および脱水システムに関し、特に、複数の積層状回転ろ体を備える多重円板型脱水機および脱水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層状回転ろ体を備える多重円板型脱水機および脱水システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、回転軸および積層された円板(積層状回転ろ体)を含む複数の回転ろ過素子と、回転軸の軸方向において、回転ろ過素子を挟むように設けられる一対の側板を含む処理室とを備える、ろ体回転式脱水装置が開示されている。この複数の積層された円板は、処理室内において、上方列および下方列の各々に並んで配置されている。そして、このろ体回転式脱水装置は、上方列の積層された円板と下方列の積層された円板との間において、汚泥(被処理物)を搬送しながら脱水を行うとともに、排出口から水分が除去された脱水汚泥(脱水ケーキ)を排出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-137795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されているような従来のろ体回転式脱水装置(以下、「脱水装置」という)では、より含水率の低い脱水汚泥(脱水ケーキ)を排出することが望まれている。しかしながら、上記特許文献1に記載の脱水装置では、含水率が比較的低い脱水汚泥(被処理物)を処理する場合、含水率が低い被処理物によって、上方列の積層された円板と下方列の積層された円板とが内部から比較的大きな力により押圧されると考えられる。この場合、上方列の積層された円板の回転軸と下方列の積層された円板の回転軸とが互いに遠ざかるように、上方列の積層された円板の回転軸と下方列の積層された円板の回転軸とが汚泥(被処理物)の搬送経路から外側に向かって撓んでしまう可能性があると考えられる。このため、上記特許文献1に記載の脱水装置では、含水率が比較的低い被処理物を得るために、含水率が低い被処理物によって、積層された円板(積層状回転ろ体)の回転軸が搬送経路から外側に向かって撓む可能性があるという問題点があると考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、含水率が比較的低い被処理物(脱水ケーキ)を得ることができるとともに、含水率が比較的低い被処理物によって積層状回転ろ体の回転軸が搬送経路から外側に向かって撓むのを抑制することが可能な多重円板型脱水機および脱水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による多重円板型脱水機は、筐体と、筐体に回転可能に配置されている回転軸と、回転軸の軸方向に沿って積層された複数のろ片を有するとともに複数のろ片間にろ過溝が形成された積層状回転ろ体とを含み、上方列と下方列とに複数ずつ並んで配置されている複数の回転体と、筐体とは別個に形成され、上方列の複数の回転体のうちの少なくとも1つと、下方列の複数の回転体のうちの少なくとも1つとを連結するとともに、上方列の回転体と下方列の回転体との間に形成された被処理物を搬送する搬送経路から回転軸が外側に向かって撓むことを規制する、撓み規制部とを備え、筐体には、被処理物が筐体の内部に供給されるための供給口と、被処理物が筐体の外部に排出されるための排出口とが設けられており、複数の回転体は、排出口側に配置された第1の回転体と、第1の回転体よりも筐体の供給口側に配置された第2の回転体とにより構成されており、第1の回転体は、上下方向において上方列の回転体と下方列の回転体とが対向し、第2の回転体のうち最上流の回転体は、上下方向において上方列の回転体と下方列の回転体とが対向しておらず、複数の回転体は、それぞれ、複数の積層状回転ろ体を含み、第2の回転体には、複数の積層状回転ろ体同士の間に設けられた中間板部材が設けられており、撓み規制部は、筐体に固定されていない状態で、第1の回転体のうちの中間板部材に対応する位置に中間板部材に代えて配置され、第1の回転体に対応する上方列の回転体と、第1の回転体に対応する下方列の回転体とを連結するように構成されている
【0008】
この発明の第1の局面による多重円板型脱水機では、上記のように、上方列の複数の回転体のうちの少なくとも1つと、下方列の複数の回転体のうちの少なくとも1つとを連結する撓み規制部を設ける。これにより、含水率が低下され、含水率が比較的低い状態となった被処理物から回転体へ押圧力が加わり、回転軸が搬送経路から外側に向かって撓もうとする場合でも、撓み規制部により互いに連結された上方列の回転体と下方列の回転体との相対位置の変化を規制することができる。このため、互いに連結された上方列の回転体と下方列の回転体とが、互いに遠ざかるように変形するのを抑制することができる。この結果、含水率が比較的低い被処理物(脱水ケーキ)を得ることができるとともに、含水率が比較的低い被処理物によって積層状回転ろ体の回転軸が搬送経路から外側に向かって撓むのを抑制することができる。ここで、被処理物の重力により、上方列の回転体と下方列の回転体とが筐体に対して共に下方に移動しようとする場合があると考えられる。この場合、撓み規制部と筐体とが一体的に形成されている場合には、筐体に一体的に形成されている撓み規制部に、回転体の下方への移動を規制するための応力が生じると考えられる。このため、撓み規制部には、回転軸が搬送経路から外側に向かって撓むのを抑制するための機械的強度に加えて、この応力に耐えるための機械的強度が必要になると考えられる。この結果、撓み規制部が大型化すると考えられる。これに対して、本発明では、撓み規制部を、筐体とは別個に形成するので、撓み規制部には回転体の下方への移動を規制するための応力が生じない。この結果、撓み規制部では、この応力に耐えるための機械的強度が不要になるので、撓み規制部が大型化するのを抑制することができる。ここで、被処理物の含水率は、排出口に近い程、低くなるため、排出口側に近い被処理物は比較的硬くなる。これにより、被処理物を圧搾する力に抗して生じる被処理物から第1の回転体に対する押圧力は、被処理物から第2の回転体に対する押圧力よりも大きくなる。この結果、第1の回転体は、第2の回転体よりも搬送経路から外側に向かって撓む可能性が高くなると考えられる。この点に着目して、本発明では、上記のように、筐体の排出口側に配置された第1の回転体に対応する上方列の回転体と下方列の回転体とを連結する撓み規制部を多重円板型脱水機に設ける。これにより、筐体の排出口側に配置され、比較的撓む可能性が高い第1の回転体の回転軸が撓むことを、撓み規制部によって、効果的に抑制することができる。また、被処理物をろ過する機能を有する複数の積層状回転ろ体の一部を撓み規制部として置き代える場合、撓み規制部として構成される領域においてはろ過機能が低下する場合があると考えられる。これに対して、本発明では、第1の回転体のうちの中間板部材に対応する位置に中間板部材に代えて撓み規制部を配置する。これにより、複数の積層状回転ろ体の一部を撓み規制部として置き代える場合と異なり、複数の積層状回転ろ体のろ過機能の低下を抑制することができる
【0010】
上記第1の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、撓み規制部は、上方列の回転体のうちの少なくとも1つの回転体の回転軸である上方回転軸が貫通して配置される上方孔部と、下方列の回転体のうちの少なくとも1つの回転体の回転軸である下方回転軸が貫通して配置される下方孔部とが設けられた単一の撓み規制部材を含む。このように構成すれば、単一の撓み規制部材により上方回転軸と下方回転軸とを連結することができるので、複数の部材により上方回転軸と下方回転軸とを連結する場合と異なり、撓み規制部の強度向上を図るとともに、組み立て性の向上を図ることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、撓み規制部は、単一の撓み規制部材の上方孔部に配置された上方回転軸を保持する第1軸受部材と、単一の撓み規制部材の下方孔部に配置された下方回転軸を保持する第2軸受部材とを含む。このように構成すれば、第1軸受部材により上方回転軸を回転可能に容易に保持することができるとともに、第2軸受部材により下方回転軸を回転可能に容易に保持することができる。
【0016】
上記第1の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、撓み規制部は、第1の撓み規制部と、第1の撓み規制部とは別個に形成され、第1の撓み規制部が連結する回転体とは異なる回転体を連結する第2の撓み規制部とを含む。このように構成すれば、各撓み規制部に加えられる力を分散させることができるので、撓み規制部の変形を抑制することができる。ここで、積層状回転ろ体を組み立てる際には、回転軸の一方側のみを保持する片持ち状態にし、各ろ片が回転軸に対して積層される。この場合、回転軸の他方側が自由端となるため、冶具等で固定しない限り回転軸の他方側がラジアル方向に移動する事となる。ラジアル方向の移動量は回転軸の長さに比例して大きくなるので、特に大型の多重円板型脱水機においては、回転軸の他方側のラジアル方向への移動量が増大してしまう。多数の回転軸と1つの撓み規制部とを組み合わせる場合、多数の回転軸の他方側の各々が互いにラジアル方向に移動してしまうため、多数の回転軸と1つの撓み規制部とを組み合わせることは容易ではなくなってしまう。これに対して、本発明では、撓み規制部は、第1の撓み規制部と、第1の撓み規制部とは別個に形成され、第1の撓み規制部が連結する回転体とは異なる回転体を連結する第2の撓み規制部とを含むことにより、撓み規制部の1つあたりに組み合わせられる回転軸の個数を削減することができる。この結果、撓み規制部と回転軸との組み立て性を向上させることができる。
【0017】
上記第1の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、撓み規制部には、上方列の回転体よりも上方側の部分に、上方列の回転体および下方列の回転体のうちの少なくとも一方が保守作業される際に上方から撓み規制部を吊るすための保持部材が配置される保持部材配置部が設けられている。このように構成すれば、保守作業(メンテナンス作業)時において、保持部材配置部に保持部材を配置することにより、撓み規制部および回転体を吊るすことができる。この結果、保守作業時に、回転体を保持する筐体の一部を取り除いた場合でも、撓み規制部を介して回転体を吊るすことができるので、回転体の配置位置を保持したまま保守作業を行うことができる。すなわち、多重円板型脱水機の運転時においては撓み規制部として機能する部材を、多重円板型脱水機の保守作業時においては回転体を吊るすための治具として用いることができる。
【0018】
上記第1の局面による多重円板型脱水機において、好ましくは、積層状回転ろ体は、複数の小径円板ろ片と、小径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の中径円板ろ片と、中径円板ろ片よりも大きな直径を有する複数の大径円板ろ片とを有し、中径円板ろ片は、小径円板ろ片および大径円板ろ片が嵌合するとともに、隣接する中径円板ろ片に当接する凸部を有しており、積層状回転ろ体は、隣接する中径円板ろ片間において、小径円板ろ片と大径円板ろ片とが揺動可能に交互に積層されることにより構成されており、撓み規制部は、積層状回転ろ体と共に、回転軸に積層されるように配置されている。このように構成すれば、凸部により、互いに隣接する中径円板ろ片同士の間隔を維持しながら、大径円板ろ片および小径円板ろ片の揺動により、ろ過溝が目詰まりするのを抑制することができる。これにより、ろ過溝が目詰まりするのを抑制しながら、積層状回転ろ体と共に回転軸に積層された撓み規制部により、回転軸の撓みを規制することができる。
【0019】
この発明の第2の局面による脱水システムは、被処理物を濃縮させる濃縮機と、濃縮された被処理物が濃縮機から供給される供給口を有する筐体を含む、脱水機とを備え、脱水機は、筐体に回転可能に配置されている回転軸と、回転軸の軸方向に沿って積層された複数のろ片を有するとともに複数のろ片間にろ過溝が形成された積層状回転ろ体とを含み、上方列と下方列とに複数ずつ並んで配置されている複数の回転体と、筐体とは別個に形成され、上方列の複数の回転体のうちの少なくとも1つと、下方列の複数の回転体のうちの少なくとも1つとを連結するとともに、上方列の回転体と下方列の回転体との間に形成された被処理物を搬送する搬送経路から回転軸が外側に向かって撓むことを規制する、撓み規制部とを含み、筐体には、被処理物が筐体の外部に排出されるための排出口が設けられており、複数の回転体は、排出口側に配置された第1の回転体と、第1の回転体よりも筐体の供給口側に配置された第2の回転体とにより構成されており、第1の回転体は、上下方向において上方列の回転体と下方列の回転体とが対向し、第2の回転体のうち最上流の回転体は、上下方向において上方列の回転体と下方列の回転体とが対向しておらず、複数の回転体は、それぞれ、複数の積層状回転ろ体を含み、第2の回転体には、複数の積層状回転ろ体同士の間に設けられた中間板部材が設けられており、撓み規制部は、筐体に固定されていない状態で、第1の回転体のうちの中間板部材に対応する位置に中間板部材に代えて配置され、第1の回転体に対応する上方列の回転体と、第1の回転体に対応する下方列の回転体とを連結するように構成されている
【0020】
この発明の第2の局面による脱水システムでは、上記のように、撓み規制部を設けることにより、含水率が比較的低い被処理物(脱水ケーキ)を得ることができると共に、含水率が下がった被処理物(脱水ケーキ)によって積層状回転ろ体の回転軸が搬送経路から外側に向かって撓むのを抑制することが可能な脱水システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記のように、含水率が比較的低い被処理物(脱水ケーキ)を得ることができると共に、含水率が比較的低い被処理物によって積層状回転ろ体の回転軸が搬送経路から外側に向かって撓むのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態による脱水システムを模式的に示した図である。
図2】本発明の第1実施形態による多重円板型脱水機の前後方向に沿った断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による多重円板型脱水機の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態による多重円板型脱水機を左右方向に沿った断面図である。
図5】本発明の第1実施形態による多重円板型脱水機の側面図である。
図6】本発明の第1実施形態による上方列回転体の回転軸および下方列回転体の回転軸の撓み変形の規制を模式的に示した図である。
図7】本発明の第1実施形態による撓み規制部と中間板部材との配置関係を説明するための図である。
図8】本発明の第1実施形態による撓み規制部の構成を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態による多重円板型脱水機の保守作業時の状態を説明するための図である。
図10】本発明の第1実施形態による積層状回転ろ体の構成を示す斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態による凸部の構成を説明するための図である。
図12】本発明の第1実施形態によるろ過溝の構成を説明するための図である。
図13】本発明の第2実施形態による多重円板型脱水機の前後方向に沿った断面図である。
図14】本発明の第3実施形態による多重円板型脱水機の前後方向に沿った断面図である。
図15】本発明の第1~3実施形態の第1変形例による多重円板型脱水機の左右方向に沿った断面図である。
図16】本発明の第1~3実施形態の第2変形例による脱水システムの構成を説明するための図である。
図17】本発明の第1~3実施形態の第3変形例による撓み規制部の構成を説明するための図である。
図18】本発明の第1~3実施形態の第4変形例による多重円板型脱水機の構成を説明するための図である。
図19】本発明の第1~3実施形態の第4変形例による多重円板型脱水機の左右方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
(脱水システムの構成)
図1図12を参照して、本発明の第1実施形態による脱水システム100の構成について説明する。
【0026】
図1に示すように、脱水システム100は、被処理物P(たとえば、汚泥)を濃縮および脱水することにより、被処理物Pの含水率を低下させるシステム(装置)として構成されている。そして、脱水システム100は、多重円板型脱水機101(以下、「脱水機101」という)とスクリュ式濃縮機102と、タンク103と、凝集混和槽104とを備える。なお、スクリュ式濃縮機102(以下、「濃縮機102」という)は特許請求の範囲の「濃縮機」の一例である。
【0027】
濃縮機102は、脱水機101に一体的に設けられている。濃縮機102が設けられた脱水機101は、タンク103に上方側に設置されている。すなわち、タンク103は、脱水機101(筐体部1)と、別体として構成されている。タンク103には、濃縮機102から排出されたろ液PLを受け取るろ液受け部103aと、脱水機101から排出されたろ液PLを貯留する貯留部103bとが設けられている。
【0028】
タンク103は、ろ液受け部103aにより、濃縮機102から排出されたろ液PLと、脱水機101から排出されたろ液PLとを個別に排出可能に構成されている。なお、ろ液受け部103aは、濃縮機102の下方から、脱水機101の下方側に移動可能に構成されている。そして、ろ液受け部103aは、脱水機101の下方列回転体4の下方側に移動することにより、脱水機101の上方列回転体3および下方列回転体4のろ過溝Sから排出されたろ液PLも受け取ることが可能なように構成されている。
【0029】
すなわち、ろ液受け部103aは、脱水機101の上方列回転体3および下方列回転体4の下方側に移動することにより、脱水機101の上方列回転体3および下方列回転体4のろ過溝Sから排出されたろ液PLの一部を、貯留部103bに排出されないように、受け取るように構成されている。
【0030】
また、ろ液受け部103aは、脱水機101のすべての上方列回転体3および下方列回転体4の直下に移動することにより、脱水機101の上方列回転体3および下方列回転体4のろ過溝Sから排出されたろ液PLのすべてを受け取ることも可能に構成されている。この際、貯留部103bには、ろ液PLが略排出されなくなる。
【0031】
タンク103の貯留部103bでは、被処理物貯留槽T1から被処理物Pの原液が、無機凝集剤供給部T2から無機凝集剤が供給され、撹拌ポンプT3にて被処理物Pの原液と無機凝集剤とが撹拌されることで被処理物Pの凝集処理が行われる。
【0032】
貯留部103b内の被処理物Pは、供給ポンプT4により凝集混和槽104に供給される。
【0033】
凝集混和槽104には、被処理物Pに高分子凝集剤を供給する高分子凝集剤供給部104aと、被処理物Pと高分子凝集剤とを撹拌する撹拌部104bとが設けられている。凝集混和槽104では、被処理物Pの更なる凝集処理が行われる。撹拌部104bは、モータと、モータにより駆動される撹拌羽根により構成されている。凝集混和槽104は、被処理物Pを越流により排出して、濃縮機102に供給するように構成されている。
【0034】
濃縮機102は、脱水機101の上流側に配置されている。濃縮機102は、被処理物Pを濃縮させる(濃縮処理する)ように構成されている。そして、濃縮機102は、濃縮された被処理物Pを、脱水機101の筐体部1の原液供給口11に供給するように構成されている。なお、「濃縮処理」とは、凝集された被処理物Pの含水率を、被処理物Pの流動性を保持しながら、所定の含水率(たとえば約94~約98%、より好ましくは、約96%)まで低下させる処理である。
【0035】
詳細には、濃縮機102は、スクリュ120と、積層状ろ体121と、モータ122とを備える。濃縮機102は、下流側(X2方向側)に向けて斜め上方に傾斜して配置されている。すなわち、濃縮機102は、X2方向側ほど上方に位置するように構成されている。
【0036】
スクリュ120は、直線状に延びる棒状の回転軸120aと、回転軸120aに設けられた羽根部120bを含んでいる。回転軸120aは、一端においてモータ122に接続されており、モータ122により駆動されるように構成されている。スクリュ120は、被処理物Pを、回転軸120aの回転に伴い回転軸120aの軸方向に送るように構成されている。これにより、スクリュ120は、供給された被処理物Pを、X2方向側に送るように構成されている。
【0037】
羽根部120bは、回転軸120aの外周面に設けられている。また、羽根部120bは、回転軸120aの軸方向に向けて螺旋状に延びている。また、羽根部120bは、1つの連続した羽根により形成されており、回転軸120aの軸方向のピッチが略等間隔になるように形成されている。
【0038】
図1に示すように、積層状ろ体121は、全体として、筒形状を有している。積層状ろ体121は、スクリュ120を取り囲むようにスクリュ120を内側に配置している。また、積層状ろ体121は、固定板と可動板とが交互に積層された積層構造を有している。そして、積層状ろ体121には、回転軸120aの軸方向に沿って、複数のろ過溝が等間隔で形成されている。濃縮機102は、被処理物Pが搬送される際に、ろ過溝からろ液PLが下方に落ちるように構成されている。そして、濃縮機102は、スクリュ120を回転させて、羽根部120bを回転させることにより、被処理物Pを濃縮しながら脱水機101側に被処理物Pを搬送するように構成されている。
【0039】
(脱水機の構成)
図2に示すように、脱水機101は、被処理物P(たとえば、汚泥)を脱水することにより、被処理物Pの含水率を低下させる装置として構成されている。具体的には、第1実施形態による脱水機101は、被処理物Pの含水率が80%以下になるように被処理物Pを脱水するように構成されている。たとえば、脱水機101は、予め濃縮機102により濃縮された被処理物Pを脱水することにより、低含水率(たとえば、80%以下)の固体成分(脱水ケーキPC)の被処理物Pと液体成分(ろ液PL)とを分離する固液分離装置として構成されている。
【0040】
脱水機101は、図2および図3に示すように、筐体部1と、複数のモータ2と、上方列回転体3と、下方列回転体4と、撓み規制部5と、制御部6とを備える。
【0041】
〈筐体部の構成〉
図2に示すように、筐体部1には、原液供給口11と、固体排出口12と、液体排出口13とが設けられている。また、筐体部1は、前側板部14と、後側板部15と、天板部16と、左側板部17(図4参照)と、右側板部18(図4参照)とを含む。前側板部14は、上方列回転体3および下方列回転体4よりも前方側(X2方向側、排出口側)に配置されている。また、後側板部15は、上方列回転体3および下方列回転体4よりも後方側(X1方向側、供給口側)に配置されている。また、天板部16は、上方列回転体3よりも上方側(Z1方向側)に配置されている。なお、原液供給口11は、特許請求の範囲の「供給口」の一例である。また、固体排出口12は、特許請求の範囲の「排出口」の一例である。また、下記の説明では、「供給口側」とは、図1のX1方向側を意味するものとし、「排出口側」とは、図1のX2方向側を意味するものとする。
【0042】
図4に示すように、左側板部17および右側板部18は、上方列回転体3および下方列回転体4を左右方向(Y方向)に挟み込んだ状態で、上方列回転体3および下方列回転体4を支持している。
【0043】
図2に示すように、原液供給口11は、後側板部15の上方部分に設けられており、被処理物Pが濃縮機102から供給されるように構成されている。また、固体排出口12は、前側板部14の上方部分に設けられており、被処理物Pから分離した脱水ケーキPCを脱水機101の外部に排出するように構成されている。また、液体排出口13は、筐体部1の下方部分に設けられており、被処理物Pから分離したろ液PLを脱水機101から外部に排出するように構成されている。
【0044】
〈モータの構成〉
図4および図5に示すように、モータ2は、筐体部1の外側に配置されている。たとえば、モータ2は、上方列回転体3および下方列回転体4のそれぞれの回転軸30の軸方向(Y方向)の一方端部(Y1方向側端部)に設けられている。具体的には、モータ2は、右側板部18の外側(Y1方向側)に配置されている。また、回転軸30は、左側板部17および右側板部18の各々に設けられた軸受30aにより、回転可能に支持されている。
【0045】
そして、モータ2は、回転軸30を回転駆動させるように構成されている。具体的には、モータ2は、減速機21を介して、上方列回転体3および下方列回転体4の回転軸30を回転させるように構成されている。減速機21は、たとえば、1/1200程度の減速比において、モータ2の出力を減速して各回転軸30に伝達する。
【0046】
図3に示すように、モータ2は、インバータ22に接続されている。また、モータ2は、インバータ22を介して供給される電力により回転駆動されるように構成されている。インバータ22は、電源部24から供給される電力の周波数、電流値および電圧値を変換するように構成されている。また、制御部6は、インバータ22により、モータ2に供給する交流電力の周波数を制御するように構成されている。
【0047】
たとえば、図4に示すように、モータ2は、固体排出口12側に配置された後述する第1の回転体31、32、33、34、41および42の各々に、1つずつ設けられている。また、モータ2は、原液供給口11側に配置された後述する第1の回転体43、および、第2の回転体35、36および44~48には、2つに1つずつ設けられている。具体的には、X方向に隣接する2つの上方列回転体3および下方列回転体4がチェーン23により連動して回転駆動される。
【0048】
また、固体排出口12側に配置された第1の回転体31~34、41および42を回転させる各々のモータ2には、1つずつインバータ22が設けられている。また、原液供給口11側に配置された第1の回転体43、および、第2の回転体35、36、および、44~48を回転させる各々のモータ2には、共通のインバータ22が設けられている。
【0049】
〈上方列回転体および下方列回転体の構成〉
図2に示すように、筐体部1内において、上方列回転体3と下方列回転体4との間には、被処理物Pを搬送する搬送経路Rが形成されている。具体的には、上方列回転体3は、固体排出口12側から原液供給口11側に向かって順に配置された、第1の回転体31、32、33、および、34と、第2の回転体35および36とを含む。また、下方列回転体4は、固体排出口12側から原液供給口11側に向かって順に配置された、第1の回転体41、42、および、43と、第2の回転体44、45、46、47および48とを含む。すなわち、第1の回転体31~34は、第2の回転体35および36よりも固体排出口12側に配置されている。また、第1の回転体41~43は、第2の回転体44~48よりも固体排出口12側に配置されている。
【0050】
また、脱水機101の運転中において、第1の回転体31、32、41、および42は、モータ2により、低速で回転される。たとえば、第1の回転体31、32、41、および42は、0.25rpm~1rpm程度の回転数で回転される。また、脱水機101の運転中において、第1の回転体33、34および43と、第2の回転体35、36、および、44~48とは、高速で回転される。たとえば、第1の回転体33、34および43と、第2の回転体35、36および44~48とは、0.75rpm~1.5rpm程度の回転数で回転される。これにより、被処理物Pに加えられる圧搾力が上流側から下流側に向かって徐々に大きくなる。
【0051】
また、上方列回転体3と、下方列回転体4との間の上下(Z方向)の間隔(搬送経路Rの上下方向の幅)は、原液供給口11側から固体排出口12側に向かうにしたがって狭くなるように構成されている。そして、搬送経路Rにおいて、原液供給口11側から固体排出口12側に向かうにしたがって脱水処理が加えられる被処理物Pの容積が徐々に小さくなるように構成されている。この構成によっても、被処理物Pに加えられる圧搾力が、搬送経路Rの上流側から下流側に向かって徐々に大きくなる。
【0052】
図6に示すように、被処理物Pに加えられる圧搾力に被処理物Pが抗することにより、被処理物Pから上方列回転体3および下方列回転体4への押圧力F1が生じる。この押圧力F1が大きい場合、上方列回転体3および下方列回転体4の回転軸30は、それぞれ、搬送経路Rから搬送経路Rの外側に向かって撓み変形しようとするが、後述する撓み規制部5によって、この撓み変形は規制される。
【0053】
図2に示すように、固体排出口12に設けられたフラッパー12aおよび圧力調節部12bにより、固体排出口12側に向かって被処理物Pの固形成分(脱水ケーキPC)を押圧することによって、低含水率の被処理物Pの固形成分(脱水ケーキPC)を排出可能に構成されている。
【0054】
また、下方列回転体4の第1の回転体41~43および第2の回転体44~48は、前後方向および上下方向の少なくとも一方向において、互いに所定の間隔を隔てて配置されており、互いに同じ回転方向(図2において時計回り)に回転することにより、被処理物Pを搬送するように構成されている。また、上方列回転体3の第1の回転体31~34および第2の回転体35および36は、前後方向および上下方向の少なくとも一方向において、互いに所定の間隔を隔てて配置されており、互いに同じ回転方向(図2において反時計回り)に回転することにより、被処理物Pを搬送するように構成されている。
【0055】
また、上方列回転体3および下方列回転体4により、被処理物Pの液体成分(ろ液PL)がろ過される。具体的には、下方列回転体4のろ過溝S(図12参照)からろ液PLが重力によりろ過される。これにより、被処理物Pの含水率が低下する。また、固体排出口12側に配置された第1の回転体31、32、41および42により、被処理物Pが上下方向からプレス(圧搾)されて脱水される。これにより、被処理物Pの含水率がさらに低下され、たとえば、被処理物Pの含水率は80%未満となる。また、本実施形態では、撓み規制部5を設けることにより、被処理物Pの含水率が80%未満になるように処理を行ったとしても積層状回転ろ体300の回転軸30が搬送経路Rから外側に向かって撓むのを抑制することができる。
【0056】
〈撓み規制部の構成〉
図2に示すように、撓み規制部5は、上方列回転体3のうちの少なくとも1つと、下方列回転体4のうちの少なくとも1つとを連結するとともに、搬送経路Rから回転軸30が外側に向かって撓むことを規制するように構成されている。第1実施形態では、撓み規制部5は、第1の回転体31~34および41~43を連結するとともに、第1の回転体31~34および41~43の各々の回転軸30が撓むのを規制するように構成されている。
【0057】
具体的には、撓み規制部5は、筐体部1とは別個に形成されている。また、撓み規制部5は、筐体部1から離れて配置されている。すなわち、図4に示すように、撓み規制部5は、前側板部14、後側板部15、天板部16、左側板部17および右側板部18から離間して配置されている。
【0058】
また、撓み規制部5は、上方列回転体3のうちの第1の回転体31~34と下方列回転体4のうちの第1の回転体41~43を、筐体部1から離れた状態で連結するように構成されている。すなわち、撓み規制部5は、筐体部1から離れた状態で、第1の回転体31~34と第1の回転体41~43とを、上下方向に接続するように配置されている。
【0059】
図7に示すように、撓み規制部5は、第1の回転体31~34および41~43に、複数(たとえば、2つ)の積層状回転ろ体300と共に積層されるように配置されている。また、第2の回転体35、36および44~48には、複数(たとえば、2つ)の積層状回転ろ体300と中間板部材300aとが設けられている。中間板部材300aは、複数の積層状回転ろ体300同士の間に配置されている。ここで、第1実施形態では、撓み規制部5は、第1の回転体31~34および41~43の各々において、中間板部材300aに対応する位置に中間板部材300aに代えて配置されている。たとえば、中間板部材300aは、左右方向の中央部に配置されている場合には、撓み規制部5は、左右方向の中央部に配置されている。
【0060】
図8に示すように、撓み規制部5は、単一の板状部材51を含む。板状部材51は、厚みt1(図7参照)を有する平板状に形成されている。板状部材51は、たとえば、金属部材により構成されている。また、第1実施形態では、板状部材51には、上方列回転体3のうちの第1の回転体31~34の回転軸30がそれぞれ貫通される上方孔部52aと、下方列回転体4のうちの第1の回転体41~43の回転軸30がそれぞれ貫通される下方孔部52bとが設けられている。すなわち、撓み規制部5には、4つの上方孔部52aと3つの下方孔部52bとが設けられている。なお、板状部材51は、特許請求の範囲の「単一の撓み規制部材」の一例である。また、第1の回転体31~34の回転軸30は、特許請求の範囲の「上方回転軸」の一例である。また、第1の回転体41~43の回転軸30は、特許請求の範囲の「下方回転軸」の一例である。
【0061】
そして、撓み規制部5は、複数の軸受部材53を含む。軸受部材53は、板状部材51に設けられた上方孔部52aおよび下方孔部52bの各々に配置されている。そして、軸受部材53は、たとえば、すべり軸受として構成されている。これにより、上方孔部52aに配置された軸受部材53は、上方孔部52aに配置された回転軸30を回転可能に保持するように構成されている。下方孔部52bに配置された軸受部材53は、下方孔部52bに配置された回転軸30を回転可能に保持するように構成されている。なお、上方孔部52aに配置された軸受部材53は、特許請求の範囲の「第1軸受部材」の一例である。また、下方孔部52bに配置された軸受部材53は、特許請求の範囲の「第2軸受部材」の一例である。
【0062】
また、撓み規制部5には、保持部材配置用孔部54(以下、「孔部54」という)が設けられている。孔部54は、撓み規制部5の上方列回転体3よりも上方側の部分に設けられている。図9に示すように、孔部54は、上方列回転体3および下方列回転体4が保守作業される際に上方から撓み規制部5を吊るすための保持部材55が配置されるように構成されている。孔部54は、たとえば、前後方向に略等間隔で複数設けられている。なお、孔部54は、特許請求の範囲の「保持部材配置部」の一例である。
【0063】
保持部材55は、保守作業時(メンテナンス時)に、孔部54を貫通するように配置されるとともに、たとえば、筐体部1の天板部16に取り付けられるように構成されている。すなわち、保持部材55は、脱水システム100(脱水機101)が運転している期間には撓み規制部5から取り外されている。そして、保守作業時に、左側板部17および右側板部18の一方が筐体部1から取り外された状態において、上方列回転体3および下方列回転体4は、左側板部17および右側板部18の他方と保持部材55とにより支持される。
【0064】
ここで、図6に示すように、被処理物Pに加えられる圧搾力に被処理物Pが抗することにより、被処理物Pから上方列回転体3および下方列回転体4への押圧力F1が生じる。この押圧力F1が大きい場合、上方列回転体3および下方列回転体4の回転軸30は、それぞれ、搬送経路Rから搬送経路Rの外側に向かって撓み変形しようとするが、撓み規制部5は、この撓み変形を規制するように構成されている。
【0065】
具体的には、撓み規制部5により互いに連結された上方列回転体3と下方列回転体4との距離が、略変化しないことにより、上方列回転体3の撓み変形および下方列回転体4の撓み変形が規制される。すなわち、互いに連結された上方列回転体3と下方列回転体4とが、撓み規制部5を介して、互いに引っ張り合うことにより、上方列回転体3の撓み変形と下方列回転体4の撓み変形とが規制される。詳細には、撓み規制部5が、上方列回転体3への押圧力F1を打ち消すように上方孔部52aおよび軸受部材53を介して、上方列回転体3に押圧力F2を生じさせる。また、撓み規制部5が、下方列回転体4への押圧力F1を打ち消すように下方孔部52bおよび軸受部材53を介して、下方列回転体4に押圧力F2を生じさせる。
【0066】
〈積層状回転ろ体の構成〉
また、図10に示すように、積層状回転ろ体300は、複数の中径円板ろ片301と、複数の小径円板ろ片302と、複数の大径円板ろ片303との3種のろ片を含む。そして、中間板部材300aは、中径円板ろ片301、小径円板ろ片302および大径円板ろ片303の製造誤差等によるわずかな厚みの違いを吸収する機能を有する。
【0067】
詳細には、中径円板ろ片301は、たとえば、樹脂材料により形成されている。小径円板ろ片302および大径円板ろ片303は、たとえば、金属材料により形成されている。
【0068】
中径円板ろ片301、小径円板ろ片302および大径円板ろ片303は、ともに、円環形状を有している。すなわち、中径円板ろ片301、小径円板ろ片302および大径円板ろ片303は、ともに、回転軸30を挿通する貫通穴304を中心に有している。また、中径円板ろ片301、小径円板ろ片302および大径円板ろ片303は、ともに、貫通穴304を介して回転軸30に嵌合している。このため、中径円板ろ片301、小径円板ろ片302および大径円板ろ片303は、回転軸30の軸方向(Y方向)に交差する方向に略移動することがないように構成されている。
【0069】
上方列回転体3および下方列回転体4は、回転軸30を取り囲むように回転軸30が貫通穴304に挿通された状態で、中径円板ろ片301、小径円板ろ片302および大径円板ろ片303がY方向に交互に積層された多重板構造を有している。
【0070】
複数の中径円板ろ片301は、Y方向に所定間隔で並ぶように設けられている。上方列回転体3および下方列回転体4は、Y方向に並ぶ複数の中径円板ろ片301間に、大径円板ろ片303および小径円板ろ片302を交互に配置(積層)することにより構成されている。要するに、上方列回転体3および下方列回転体4は、Y方向に、中径円板ろ片301、大径円板ろ片303、中径円板ろ片301、小径円板ろ片302の順に、各ろ片を繰り返し配置(積層)することにより構成されている。あるいは、中径円板ろ片301、小径円板ろ片302、中径円板ろ片301、大径円板ろ片303の順に、各ろ片を繰り返し配置(積層)してもよい。
【0071】
中径円板ろ片301は、円板形状の板状部301aと、板状部301aの一方表面に設けられる複数(4個)の凸部301bと、板状部301aの他方表面に設けられる複数(4個)の凸部301cとを有している。
【0072】
複数の凸部301bは、中径円板ろ片301の中心から所定距離だけ離間した位置に配置されるとともに、中径円板ろ片301の周方向において等ピッチ間隔で配置されている。複数の凸部301cは、Y方向に見て、凸部301bと重なる位置にそれぞれ設けられている。また、凸部301bの一方表面からの突出量d1は、小径円板ろ片302の厚みd3および大径円板ろ片303の厚みd4よりも大きい(d1>d3、d1>d4)。
【0073】
図11に示すように、凸部301cは、板状部301aの他方表面から僅かに突出しているだけであり、実際には、板状部301aの他方表面と略同一面上に位置している(略面一である)。また、凸部301cの他方表面からの突出量d2は、凸部301bの一方表面からの突出量d1よりも極めて小さい(d1>>d2)。なお、各図では、説明の便宜上、凸部301cの突出量d2を、実際の突出量よりも大きく図示している。
【0074】
中径円板ろ片301は、凸部301bを、Y方向の一方向側に隣接する他の中径円板ろ片301の凸部301cに接触させるとともに、凸部301cを、Y方向の他方側に隣接する他の中径円板ろ片301の凸部301bに接触させた状態で積層されている。このため、中径円板ろ片301の板状部301aは、隣接する他の中径円板ろ片301の板状部301aから、隙間(d1+d2)だけ離間している。すなわち、中径円板ろ片301の板状部301aは、隣接する他の中径円板ろ片301の板状部301aから、凸部301bと凸部301cとの突出量の合計だけ離間している。
【0075】
また、図12に示すように、隣接する2つの中径円板ろ片301(板状部301a)間には、凸部301bおよび凸部301cにより、隙間(d1+d2)のろ過溝Sが形成されている。
【0076】
小径円板ろ片302は、図10に示すように、概して、円板形状を有している。また、小径円板ろ片302は、周方向において等ピッチ間隔で配置され、外縁部から小径円板ろ片302の中心に向けて切り欠かれた複数(4個)の切欠部302aを有している。複数の切欠部302aは、Y方向に見て、中径円板ろ片301の凸部301bおよび凸部301cと重なる位置に設けられている。また、切欠部302aは、凸部301bに係合するように構成されている。小径円板ろ片302は、切欠部302aを、中径円板ろ片301の凸部301bに係合させた状態で、隣接する2つの中径円板ろ片301(板状部301a)間に配置されている。
【0077】
図8に示すように、小径円板ろ片302の厚みd3は、隣接する2つの中径円板ろ片301(板状部301a)の隙間(d1+d2)よりも小さい。したがって、隣接する2つの中径円板ろ片301(板状部301a)と、小径円板ろ片302との間には、隙間(d1+d2-d3)のろ水流出溝G1が形成されている。
【0078】
すなわち、隣接する2つの中径円板ろ片301間のろ過溝Sの小径円板ろ片302を除く部分には、隙間(d1+d2-d3)のろ水流出溝G1が形成されている。このため、小径円板ろ片302は、ろ過溝Sが形成されるY方向の揺動範囲αにおいて、揺動可能に構成されている。脱水機101は、回転軸30の回転に伴い小径円板ろ片302が揺動し、中径円板ろ片301の側面を擦りながら回転するので、ろ水流出溝G1(ろ過溝S)の目詰まりを抑制することができる。すなわち、脱水機101は、ろ水流出溝G1(ろ過溝S)をセルフクリーニングすることができる。また、ろ水流出溝G1は、被処理物Pに含まれる液体成分を通過させることにより、被処理物Pをろ過するように構成されている。
【0079】
図10に示すように、大径円板ろ片303は、円板形状を有している。また、大径円板ろ片303は、大径円板ろ片303の中心から所定距離だけ離間した位置に配置されるとともに、周方向において等ピッチ間隔で配置される複数(4個)の貫通穴303aを有している。複数の貫通穴303aは、Y方向に見て、中径円板ろ片301の凸部301bおよび凸部301cと重なる位置に設けられている。また、貫通穴303aは、中径円板ろ片301の凸部301bおよび凸部301cに嵌合するように構成されている。また、大径円板ろ片303は、貫通穴303aに、中径円板ろ片301の凸部301bを嵌合させた状態で、隣接する2つの中径円板ろ片301(板状部301a)間に配置されている。
【0080】
図12に示すように、大径円板ろ片303の厚みd4は、隣接する中径円板ろ片301(板状部301a)の隙間(d1+d2)よりも小さい。したがって、隣接する2つの中径円板ろ片301(板状部301a)と、大径円板ろ片303との間には、隙間(d1+d2-d4)のろ水流出溝G2が形成されている。
【0081】
このため、大径円板ろ片303は、ろ過溝Sが形成されるY方向の揺動範囲βにおいて、揺動可能に構成されている。脱水機101は、回転軸30の回転に伴い大径円板ろ片303が揺動し、中径円板ろ片301の側面を擦りながら回転するので、ろ水流出溝G2(ろ過溝S)の目詰まりを抑制することができる。すなわち、脱水機101は、ろ水流出溝G2(ろ過溝S)をセルフクリーニングすることができる。また、ろ水流出溝G2は、被処理物Pに含まれる液体成分を通過させることにより、被処理物Pをろ過するように構成されている。
【0082】
また、上方列回転体3(下方列回転体4)の大径円板ろ片303と、隣接する他の上方列回転体3(下方列回転体4)の大径円板ろ片303とは、Y方向において互いに重なるように交互に配置されている。すなわち、上方列回転体3(下方列回転体4)の大径円板ろ片303は、隣接する他の上方列回転体3(下方列回転体4)の小径円板ろ片302を挟み込む2つの中径円板ろ片301の間に食い込むように配置されている。また、上方列回転体3(下方列回転体4)の中径円板ろ片301と、隣接する他の上方列回転体3(下方列回転体4)の中径円板ろ片301とは、Y方向において、略同じ範囲(位置)に設けられている。
【0083】
図10に示すように、中径円板ろ片301の厚みd5は、小径円板ろ片302の厚みd3よりも大きく、かつ、大径円板ろ片303の厚みd4よりも大きい。また、中径円板ろ片301の直径d6は、小径円板ろ片302の直径よりも大きく、かつ、大径円板ろ片303の直径よりも小さい。
【0084】
中間板部材300aは、円環形状を有している。すなわち、中間板部材300aは、回転軸30を挿通する貫通穴304が中心に設けられた円板形状に形成されている。また、中間板部材300aは、貫通穴304を介して回転軸30に嵌合している。また、中間板部材300aの厚みd7は、小径円板ろ片302の厚みd3よりも大きく、かつ、大径円板ろ片303の厚みd4よりも大きい。また、中間板部材300aの直径は、中径円板ろ片301の直径d6と略同一の大きさである。また、中間板部材300aは、金属材料により構成されている。ここで、撓み規制部5の板状部材51の厚みt1は、厚みd7以下である。
【0085】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0086】
第1実施形態では、上記のように、上方列回転体3のうちの少なくとも1つと、下方列回転体4のうちの少なくとも1つとを連結する撓み規制部5を設ける。これにより、含水率が低下され、含水率が比較的低い状態となった被処理物Pから上方列回転体3および下方列回転体4へ押圧力F1が加わり、回転軸30が搬送経路Rから外側に向かって撓もうとする場合でも、撓み規制部5により互いに連結された上方列回転体3と下方列回転体4との相対位置の変化を規制することができる。このため、互いに連結された上方列回転体3と下方列回転体4とが、互いに遠ざかるように変形するのを抑制することができる。この結果、含水率が比較的低い被処理物P(脱水ケーキPC)を得ることができるとともに、含水率が比較的低い被処理物Pによって積層状回転ろ体300の回転軸30が搬送経路Rから外側に向かって撓むのを抑制することができる。また、第1実施形態では、撓み規制部5には上方列回転体3および下方列回転体4の下方への移動を規制するための応力が生じない。この結果、撓み規制部5では、この応力に耐えるための機械的強度が不要になるので、撓み規制部5が大型化するのを抑制することができる。
【0087】
また、第1実施形態では、上記のように、撓み規制部5を、上方列回転体3のうちの少なくとも1つと、下方列回転体4のうちの少なくとも1つとを、筐体部1から離れた状態で連結するように構成する。これにより、撓み規制部5を、上方列回転体3のうちの少なくとも1つと、下方列回転体4のうちの少なくとも1つとを連結させた状態で、上方列回転体3および下方列回転体4を筐体部1に取り付ければ、撓み規制部5を筐体部1に固定する作業が不要になる。この結果、脱水機101の組み立て作業数が増加するのを抑制することができる。
【0088】
また、第1実施形態では、上記のように、撓み規制部5に、上方列回転体3の回転軸30が貫通して配置される上方孔部52aと、下方列回転体4の回転軸30が貫通して配置される下方孔部52bとが設けられた単一の板状部材51を設ける。これにより、単一の板状部材51により回転軸30同士を連結することができるので、複数の部材により回転軸30同士を連結する場合と異なり、撓み規制部5の強度向上を図るとともに、組み立て性の向上を図ることができる。
【0089】
また、第1実施形態では、上記のように、撓み規制部5に、単一の板状部材51の上方孔部52aに配置された回転軸30を保持する軸受部材53と、単一の板状部材51の下方孔部52bに配置された回転軸30を保持する軸受部材53とを設ける。これにより、軸受部材53により回転軸30をそれぞれ回転可能に容易に保持することができる。
【0090】
また、第1実施形態では、上記のように、筐体部1には、被処理物Pが筐体部1の内部に供給されるための原液供給口11と、被処理物Pが筐体部1の外部に排出されるための固体排出口12とを設ける。そして、脱水機101には、筐体部1の排出口側に配置された第1の回転体31~34および41~43と、筐体部1の供給口側に配置された第2の回転体35、36および44~48とを設ける。そして、撓み規制部5を、第1の回転体31~34と、第1の回転体41~43とを連結するように構成する。これにより、筐体部1の排出口側に配置され、比較的撓む可能性が高い第1の回転体31~34および41~43の回転軸30が撓むことを、撓み規制部5によって、効果的に抑制することができる。
【0091】
また、第1実施形態では、上記のように、上方列回転体3および下方列回転体4に、それぞれ、複数の積層状回転ろ体300を設ける。第2の回転体35、36および44~48に、複数の積層状回転ろ体300同士の間に設けられた中間板部材300aを設ける。撓み規制部5を、第1の回転体31~34および41~43のうちの中間板部材300aに対応する位置に中間板部材300aに代えて配置する。これにより、複数の積層状回転ろ体300の一部を撓み規制部5として置き代える場合と異なり、複数の積層状回転ろ体300のろ過機能の低下を抑制することができる。
【0092】
また、第1実施形態では、上記のように、脱水システム100に、濃縮機102から排出されたろ液PLを受け取るろ液受け部103aを設ける。そして、ろ液受け部103aを、濃縮機102から排出されたろ液PLと、第1回転体から排出されたろ液とを個別に排出可能に構成する。これにより、ろ液受け部103aにより、比較的澄んだろ液PLと、比較的汚れたろ液PLとが混ざるのを抑制することができる。このため、比較的澄んだろ液を速やかに排出することが可能となる。
【0093】
また、第1実施形態では、上記のように、撓み規制部5に、上方列回転体3よりも上方側の部分に、上方列回転体3および下方列回転体4のうちの少なくとも一方が保守作業される際に上方から撓み規制部5を吊るすための保持部材55が配置される保持部材配置用孔部54を設ける。これにより、保守作業(メンテナンス作業)時において、保持部材配置用孔部54に保持部材55を配置することにより、撓み規制部5、上方列回転体3および下方列回転体4を吊るすことができる。この結果、保守作業時に、上方列回転体3および下方列回転体4を保持する筐体部1の一部を取り除いた場合でも、撓み規制部5を介して上方列回転体3および下方列回転体4を吊るすことができるので、上方列回転体3および下方列回転体4の配置位置を保持したまま保守作業を行うことができる。すなわち、脱水機101の運転時においては撓み規制部5として機能する部材を、脱水機101の保守作業時においては上方列回転体3および下方列回転体4を吊るすための治具として用いることができる。
【0094】
また、第1実施形態では、上記のように、積層状回転ろ体300に、複数の小径円板ろ片302と、小径円板ろ片302よりも大きな直径を有する複数の中径円板ろ片301と、中径円板ろ片301よりも大きな直径を有する複数の大径円板ろ片303とを設ける。中径円板ろ片301に、小径円板ろ片302および大径円板ろ片303が嵌合するとともに、隣接する中径円板ろ片301に当接する凸部301bおよび301cを設ける。そして、積層状回転ろ体300を、隣接する中径円板ろ片301間において、小径円板ろ片302と大径円板ろ片303とが揺動可能に交互に積層されることにより構成する。そして、撓み規制部5を、積層状回転ろ体300と共に、回転軸30に積層されるように配置する。これにより、凸部301bおよび301cにより、互いに隣接する中径円板ろ片301同士の間隔を維持しながら、大径円板ろ片303および小径円板ろ片302の揺動により、ろ過溝Sが目詰まりするのを抑制することができる。これにより、ろ過溝Sが目詰まりするのを抑制しながら、積層状回転ろ体300と共に回転軸30に積層された撓み規制部5により、回転軸30の撓みを規制することができる。
【0095】
[第2実施形態]
次に、図13を参照して、本発明の第2実施形態による脱水システム200の構成について説明する。第2実施形態の脱水システム200の脱水機201には、第1撓み規制部205aと、第1撓み規制部205aとは別個に形成された第2撓み規制部205bとが設けられている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0096】
図13に示すように、第2実施形態による脱水システム200は、脱水機201を備える。脱水機201は、第1撓み規制部205aと、第2撓み規制部205bとを含む。第2撓み規制部205bは、第1撓み規制部205aとは別個に形成され、第1撓み規制部205aが連結する第1の回転体31、32および41とは異なる第1の回転体33、34、42および43を連結するように構成されている。
【0097】
たとえば、第1撓み規制部205aと第2撓み規制部205bとは、前後方向に隣り合って配置されている。また、第1撓み規制部205aと第2撓み規制部205bとは、互いに固定されておらず、それぞれ、独立して第1の回転体31~34および41~43の撓み変形を規制するように構成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0098】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0099】
第2実施形態では、上記のように、脱水機201に、第1撓み規制部205aと、第1撓み規制部205aとは別個に形成され、第1撓み規制部205aが連結する第1の回転体31、32および41とは異なる第1の回転体33、34、42および43を連結する第2撓み規制部205bとを設ける。これにより、第1撓み規制部205aと、第2撓み規制部205bとにより、各撓み規制部に加えられる力を分散させることができるので、第1撓み規制部205aおよび第2撓み規制部205bの変形を抑制することができる。そして、第1撓み規制部205a(第2撓み規制部205b)の1つあたりに組み合わせられる回転軸30の個数を削減することができる。この結果、第1撓み規制部205a(第2撓み規制部205b)と回転軸30との組み立て性を向上させることができる。
【0100】
[第3実施形態]
次に、図14を参照して、本発明の第3実施形態による脱水システム400の構成について説明する。第3実施形態の脱水システム400の脱水機401には、第1の回転体31~34および41~43に加えて、上下方向に被処理物Pを圧搾する第2の回転体35、36および44~46を連結する撓み規制部405が設けられている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0101】
図14に示すように、第3実施形態による脱水システム400は、脱水機401と濃縮機102(図1参照)とを備える。脱水機401は、撓み規制部405を含む。
【0102】
ここで、第2の回転体35、36および44~48のうちの第2の回転体35、36および44~46は、上下方向に被処理物Pを圧搾しながら、原液供給口11側から固体排出口12側に向かって被処理物Pを搬送する圧搾用回転体として構成されている。また、第2の回転体35、36および44~48のうちの第2の回転体47および48は、被処理物Pが載置された状態で、原液供給口11側から固体排出口12側に向かって被処理物Pを搬送する搬送用回転体として構成されている。
【0103】
撓み規制部405は、第1の回転体31~34および41~43に加えて、圧搾用回転体として構成されている第2の回転体35、36および44~46を連結するように構成されている。なお、第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0104】
[第3実施形態の効果]
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0105】
第3実施形態では、上記のように、脱水システム400に、原液供給口11よりも上流側に配置された濃縮機102を設ける。そして、第2の回転体35、36および44~48のうちの回転体35、36および44~46を、上下方向に被処理物Pを圧搾しながら、原液供給口11側から固体排出口12側に向かって被処理物Pを搬送する圧搾用回転体として構成する。また、第2の回転体35、36および44~48のうちの第2の回転体47および48を、被処理物Pが載置された状態で、原液供給口11側から固体排出口12側に向かって被処理物Pを搬送する搬送用回転体として構成する。そして、撓み規制部405を、圧搾用回転体に対応する上方列回転体3と、圧搾用回転体に対応する下方列回転体4とを連結するように構成する。これにより、濃縮機102で被処理物Pの含水率をある程度下げた後に、脱水機401で被処理物Pの含水率を下げることができ、脱水機401における処理時間を、脱水機401を単独で稼動させた場合よりも短くすることができる。そして、撓み規制部405を、圧搾用回転体に対応する上方列回転体3と、圧搾用回転体に対応する下方列回転体4とを連結するように構成する。これにより、第1の回転体31~34および41~43に加えて、第2の回転体35、36および44~46において撓む可能性が高い圧搾用回転体が撓むことを効果的に抑制することができる。なお、第3実施形態によるその他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0106】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0107】
(第1変形例)
たとえば、上記第1~第3実施形態では、撓み規制部を、それぞれ、左右方向の中央部に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図15に示す第1変形例による多重円板型脱水機501のように、撓み規制部505を左右方向の中央部に設けずに、同一の上方列回転体503(および下方列回転体504)に対して2つの撓み規制部505を左右方向に間隔を隔てて設けてもよい。また、撓み規制部の数は、1つまたは2つに限られず、3つ以上の数でもよい。
【0108】
(第2変形例)
また、上記第1~第3実施形態では、濃縮機をスクリュ式濃縮機として構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、濃縮機をスクリュ式濃縮機以外の濃縮機により構成してもよい。たとえば、図16に示す第2変形例による脱水システム600には、多重円板型濃縮機602と脱水機101とが設けられている。多重円板型濃縮機602は、複数の回転体623を含み、被処理物Pを脱水機101側に搬送しながら、被処理物Pを濃縮するように構成されている。
【0109】
(第3変形例)
また、上記第1~第3実施形態では、保持部材配置用孔部を、保守作業時に、筐体部に保持部材を固定するための孔部として構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図17に示す第3変形例による脱水システム700の撓み規制部705には、シャックル755が配置される孔部754が設けられている。そして、保守作業時に、シャックル755がクレーン(図示せず)により吊るすことにより、撓み規制部705により連結された上方列回転体3が保持される。
【0110】
(第4変形例)
また、上記第1~第3実施形態では、複数のモータの全てを、回転軸の一方端部に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図18および図19に示す第4変形例による多重円板型脱水機801のように、複数のモータ2のうちの一部を、一方端部(Y1方向側端部)に設けて、複数のモータ2のうちの他部を、他方端部(Y2方向側端部)に設けてもよい。
【0111】
具体的には、図18に示すように、第4変形例による多重円板型脱水機801は、第1の回転体31~34のうちの、第1の回転体32および34の回転軸30には、一方端部(Y1方向側端部)にモータ2が接続されているとともに、第1の回転体31および33の回転軸30には、他方端部(Y2方向側端部)にモータ2が接続されている。また、第1の回転体41および42のうちの、第1の回転体41の回転軸30には、一方端部(Y1方向側端部)にモータ2が接続されているとともに、第1の回転体42の回転軸30には、他方端部(Y2方向側端部)にモータ2が接続されている。
【0112】
詳細には、図19に示すように、回転軸30の一方端部に接続されているモータ2は、右側板部18の外側(Y1方向側)において、減速機21を介して回転軸30の一方端部に接続されている。また、回転軸30の他方端部に接続されているモータ2は、左側板部17の外側(Y2方向側)において、減速機21を介して回転軸30の他方端部に接続されている。これにより、被処理物Pを搬送する力を軸方向における一方方向側(Y1方向側)および他方方向側(Y2方向側)においてバランスよく分散させることができる。このため、被処理物Pの固体成分が硬くなる固体排出口12側においても、回転軸30に大きなねじり力が作用するのを抑制することができる。これにより、回転軸30にねじり力が作用して撓み変形する可能性が高くなるのを抑制することができる。この効果は、処理量を増加させるために回転軸30を軸方向に長く構成し、回転軸30に作用するねじり力が比較的大きくなりやすい大型の多重円板型脱水機801に適用した場合に特に有効である。
【0113】
また、モータを、回転軸の一方端部(Y1方向側端部)および他方端部の両方にそれぞれ設けてもよい。この場合、たとえば、6本の上方列回転体のうちの固体排出口側から1本目~3本目または1本目~4本目の上方列回転体の回転軸の両側に、モータが配置される。また、8本の下方列回転体のうちの固体排出口側から1本目~3本目の下方列回転体の回転軸の両側に、モータが配置される。これにより、回転軸の両側からモータによって回転軸が駆動されるので、比較的回転軸が軸方向に長く構成されている場合でも、回転軸にねじり力が増大するのを抑制することができる。
【0114】
(その他の変形例)
また、上記第1~第3実施形態では、脱水機を、濃縮機などと組み合わせた脱水システムとして構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、脱水機を、濃縮機などと組み合わせて使用せずに、脱水機単体として使用してもよい。
【0115】
また、上記第1~第3実施形態では、中径円板ろ片の一方表面の凸部の突出量と、他方表面の凸部の突出量とが互いに異なるように、中径円板ろ片を形成した例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、中径円板ろ片の一方表面の凸部の突出量と、他方表面の凸部の突出量とが互いに同じになるように、中径円板ろ片を形成してもよい。
【0116】
また、上記第1~第3実施形態では、中径円板ろ片の一方表面および他方表面に、それぞれ、凸部を形成した例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、中径円板ろ片の一方表面および他方表面の一方のみに、凸部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0117】
1 筐体部(筐体)
3、503 上方列回転体(回転体)
4、504 下方列回転体(回転体)
5、405、505、705 撓み規制部
11 原液供給口(供給口)
12 固体排出口(排出口)
30 回転軸
31~34、41~43 第1の回転体
35、36、44~48 第2の回転体
51 板状部材(撓み規制部材)
52a 上方孔部
52b 下方孔部
53 軸受部材(第1軸受部材、第2軸受部材)
54、754 保持部材配置用孔部(保持部材配置部)
55 保持部材
100、200、400、600、700 脱水システム
101、201、401、801 多重円板型脱水機(脱水機)
102 スクリュ式濃縮機(濃縮機)
103a 液受け部
205a 第1撓み規制部
205b 第2撓み規制部
300 積層状回転ろ体
300a 中間板部材
301 中径円板ろ片
301b、301c 凸部
302 小径円板ろ片
303 大径円板ろ片
602 多重円板型濃縮機(濃縮機)
755 シャックル(保持部材)
801 多重円板型脱水機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19