(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】接点圧調整構造
(51)【国際特許分類】
H01H 50/58 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
H01H50/58 A
(21)【出願番号】P 2019172023
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】下川 琢也
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-171024(JP,A)
【文献】特開2020-047491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 50/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレー装置のコイルケースに備え付けられる絶縁容器と、
この絶縁容器内に備え付けられる共通電極端子と、
前記絶縁容器内に備え付けられる一対の電極端子と、
前記絶縁容器内で前記共通電極端子を前記一対の電極端子のいずれかと導通させる可動電極と、
前記絶縁容器内で傾斜に配置可能な可動導体と、
この可動導体に立設されて前記一対の電極端子の間で前記可動電極を支持する一方で当該可動導体の傾斜により当該可動電極を前記いずれかの電極端子と接触させる絶縁棒と、
この絶縁棒が立設された面と反対する前記可動導体の面を押圧する圧接バネと、
この圧接バネを前記可動導体への方向に押圧して前記コイルケースの天井部の開口部を密閉する調整
部材と
を有することを特徴とする接点圧調整構造。
【請求項2】
前記調整
部材は、
前記圧接バネが配置される
と共に前記可動導体への方向の押圧を受けて
前記開口部を密閉する押圧部と、
この押圧部の周縁に設けられる
と共に前記コイルケース内にて前記開口部の縁部に沿って
真空ロウ付け固定され、
前記押圧により当該開口部の方向に変形するフランジ部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の接点圧調整構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレー装置の接点圧を調整するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
真空リレーは、高電圧、大電流切替え回路の小型化と高速スイッチングを実現し、高電圧機器全般、半導体製造装置、各種放電回路等に用いられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
真空リレーは、絶縁容器内に、一対の固定端子と、この一対のうちいずれかの固定端子に接触可能な可動電極と、この可動電極を前記いずれかの固体端子に当接させる圧接バネを備える。真空リレーの製造工程は、高温(例えば、800℃以上)の真空炉内で絶縁容器と固定端子とを真空ロウ付けする過程を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
真空ロウ付け過程を経たリレー装置は圧接バネに自然長の縮小が生じることがある。圧接バネの自然長が縮小すると、圧接バネの圧接力が低下する。そして、これに伴う電極の接点圧力の低下により、リレー装置の通電能力の低下を招くことがある。
【0006】
本発明は、以上の事情を鑑み、真空ロウ付け過程を経たリレー装置の圧接バネに自然長の縮小が生じてもリレー装置の性能を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、接点圧調整構造であって、リレー装置のコイルケースに備え付けられる絶縁容器と、この絶縁容器内に備え付けられる共通電極端子と、前記絶縁容器内に備え付けられる一対の電極端子と、前記絶縁容器内で前記共通電極端子を前記一対の電極端子のいずれかと導通させる可動電極と、前記絶縁容器内で傾斜に配置可能な可動導体と、この可動導体に立設されて前記一対の電極端子の間で前記可動電極を支持する一方で当該可動導体の傾斜により当該可動電極を前記いずれかの電極端子と接触させる絶縁棒と、前記絶縁棒が立設された面と反対する前記可動導体の面を押圧する圧接バネと、前記リレー装置の真空ロウ付け過程の後に前記圧接バネを前記可動導体への方向に押圧する調整板とを有する。
【0008】
本発明の一態様は、前記接点圧調整構造において、前記調整部材は、前記圧接バネが配置されると共に前記真空ロウ付け過程の後に前記可動導体への方向の押圧を受けて前記コイルケース内から当該コイルケースの天井部の開口部を密閉する押圧部と、この押圧部の周縁に設けられ、前記コイルケース内にて前記開口部の縁部に沿って固定される一方で前記密閉の際に当該開口部の方向に変形が可能なフランジ部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明によれば、真空ロウ付け過程を経たリレー装置の圧接バネに自然長の縮小が生じてもリレー装置の性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明の一態様である真空ロウ付け直後の真空リレーの縦断面図、(b)は接点圧調整後の当該真空リレーの縦断面図、(c)は当該真空リレーのA-A”断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1に例示された本発明のリレー装置の一態様である真空リレー1は、絶縁容器2、共通電極端子3、一対の電極端子4a,4b、可動電極5、可動導体6、絶縁棒7、圧接バネ8及び調整板9を備える。
【0013】
絶縁容器2は、コイルケース11に備え付けられる。本態様の絶縁容器2はセラミックから成る。図示の絶縁容器2は有底円筒状を成す。絶縁容器2の開口端部は真空ロウ付けによりコイルケース11の天井部15と気密に接合される。このように、絶縁容器2の内部が真空(例えば、真空度が0.1Pa以下)に封止されることにより、小ギャップの高耐圧が得られる。
【0014】
コイルケース11には、鉄心12及びコイル13が収容される。鉄心12はコイルケース11と同心に配置される。コイル13はボビン14を介して鉄心12に巻回される。
【0015】
共通電極端子3は、絶縁容器2内に真空ロウ付けされる。共通電極端子3は、真空リレー1において電極端子4a,4bに対して共通の接続端子であり、絶縁容器2の側壁を貫通して設けられる。絶縁容器2内において共通電極端子3の一端部には可動電極5が装着される。
【0016】
電極端子4aは、絶縁容器2の側壁を貫通した状態で絶縁容器2内に真空ロウ付けされる。電極端子4aは、真空リレー1においてA接点電極端子(N/O:ノーマリーオープン端子)として機能し、コイル13に電圧が印加されたときに可動電極5を介して共通電極端子3と導通する。
【0017】
電極端子4bは、絶縁容器2の側壁を貫通した状態で絶縁容器2内に真空ロウ付けされる。電極端子4bは、真空リレー1においてB接点電極端子(N/C:ノーマリークローズ端子)として機能し、コイル13に電圧が印加されていないときに可動電極5を介して共通電極端子3と導通する。
【0018】
可動電極5は、絶縁容器2内で共通電極端子3を電極端子4a,4bのいずれかと導通させる。可動電極5は、例えば、導電性の板材を折り曲げて形成される角筒状の部材からなる。この角筒状の可動電極5の開口部に共通電極端子3の一端が挿入される。そして、この共通電極端子3の一端付近の外周面が可動電極5の内周面と接触することにより、可動電極5と共通電極端子3とが電気的に接続される。尚、可動電極5の形状は、角筒状に限定されるものではなく、板状であってもよい。
【0019】
また、可動電極5は、電極端子4aと電極端子4bとの間で揺動可能に絶縁棒7により支持される。そして、この絶縁棒7の動作に応じて可動電極5の外周面が電極端子4a,4bのいずれかの先端部に接触することにより、電極端子4a,4bのいずれかが可動電極5を介して共通電極端子3と導通する。
【0020】
可動導体6は、絶縁容器2内で傾斜に配置可能となっている。可動導体6は、矩形の板状を成し、コイルケース11の天井部15の上面において、回転軸10により電極端子4b側に回転可能に支持される。
【0021】
絶縁棒7は、電極端子4a,4bの間で可動電極5を貫通支持した状態で可動導体6に立設される。そして、この絶縁棒7は可動導体6の傾斜により可動電極5を電極端子4a,4bのいずれかと接触させる。
【0022】
圧接バネ8は、絶縁棒7が立設された面と反対する可動導体6の面を押圧する。圧接バネ8はコイルケース11の天井部15の開口部16において可動導体6と調整板9とに間に介在させている。圧接バネ8には、真空リレーにおいて一般的に適用されている周知の圧接バネを適用すればよい。
【0023】
調整板9は、前記真空ロウ付けの後に圧接バネ8を可動導体6への方向に押圧可能な調整部材である。特に、調整板9は、前記押圧した状態でコイルケース11の天井部15の開口部16を密閉可能となっている。
【0024】
調整板9の態様例としては、可動導体6の方向への押圧により変形自在な材料からなる。前記材料としては、例えば銅板が挙げられる。前記材料に比較的硬度が低い銅板が採用されると、真空ロウ付け過程を経た調整板9の押圧変形後に、調整板9は大気圧と絶縁容器2の内圧との差圧により天井部15の開口部16の方向に引っ張られた状態となるので、調整板9は大気圧のもと形状が安定した状態で開口部16を密閉できる。
【0025】
調整板9は、押圧部91とフランジ部92とを一体的に備える。押圧部91は鉄心12が同心に貫通固定されるドーナツ円板状の部材からなる。また、押圧部91には圧接バネ8が配置される。さらに、押圧部91は前記押圧により天井部15の開口部16を密閉する。フランジ部92は、押圧部91の周縁に設けられ、コイルケース11内にて天井部15の開口部16の縁部に沿って真空ロウ付けにより固定される一方で前記差圧により開口部16への方向に変形が可能である。
【0026】
以下、同図を参照して真空リレー1の組み立て過程について説明する。
【0027】
真空リレー1の部品が組み付けられた後に例えば800℃以上の高温の真空炉内で真空ロウ付けが行われる。本態様では、共通電極端子3、電極端子4a,4b及びコイルケース11が絶縁容器2とロウ付けされる。また、調整板9のフランジ部92の縁部がコイルケース11内の天井部15とロウ付けされる。さらに、鉄心12のフランジ部121が調整板9の押圧部91に支持された状態で鉄心12が押圧部91とロウ付けされる。以上の真空ロウ付けの過程を経た調整板9のフランジ部92は同図(a)に示したように下向きの状態で押圧部91を保持している。このとき、調整板9の押圧部91は圧接バネ8を下方から支持している。
【0028】
ここで、調整板9の押圧部91が下方から可動導体6への方向の押圧を受けると、同図(b)に示されたように調整板9のフランジ部92は押圧部91に釣られて開口部16の方向に変形する。そして、押圧部91が天井部15の開口部16の周縁部と当接すると、押圧部91は開口部16を閉した状態でフランジ部92により支持される共に、圧接バネ8は圧縮された状態となる。その後、コイル13を備えたボビン14が鉄心12に周設され、コイルケース11が封止部17により密閉されると、ボビン14は封止部17上に立設支持された状態となる。
【0029】
以上のように真空リレー1の組み立てが完了する。真空リレー1においては、上述のように圧接バネ8の圧縮により弾性力が強化されるので、所定の接点圧が確保される。
【0030】
次いで、同図を参照して真空リレー1の動作例について説明する。
【0031】
コイル13に電圧が印加されていない場合、鉄心12に磁力が生じないので、可動導体6は下方から圧接バネ8の押圧を受けて電極端子4b側に傾斜した状態となる。これに伴い、絶縁棒7上の可動電極5が一定の接点圧力で電極端子4bの先端部に押し付けられた状態となる。これにより、共通電極端子3は可動電極5を介して電極端子4bと導通状態となる。
【0032】
一方、コイル13に電圧が印加されると、鉄心12に磁力が生じ、可動導体6は鉄心12側に引き寄せられて電極端子4a側に傾く。これに伴い、絶縁棒7における可動電極5が一定の接点圧力で電極端子4aの先端部に押し付けられる。このとき、共通電極端子3は可動電極5を介して電極端子4aと導通状態となる。
【0033】
以上の真空リレー1の接点圧調整構造によれば、真空ロウ付け過程の後に圧接バネ8は調整板9の押圧を受けて圧縮するので弾性力が強化される。したがって、真空ロウ付け過程を経た真空リレー1の圧接バネ8の自然長に縮小が生じても真空リレー1の性能が確保される。
【0034】
尚、本発明の接点圧調整構造は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で適宜に設計変更が可能であり、この変更されたものも本発明の技術的範囲に属する。例えば、本発明の接点圧調整構造は、真空リレータイプのリレー装置に限定することなく、絶縁容器2内に絶縁ガスを封入したリレー装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1…真空リレー
2…絶縁容器
3…共通電極端子
4a,4b…電極端子
5…可動電極
6…可動導体
7…絶縁棒
8…圧接バネ
9…調整板(調整部材)、91…押圧部、92…フランジ部
11…コイルケース、15…天井部、16…開口部、17…封止部
12…鉄心、121…フランジ部
13…コイル
14…ボビン