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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ピストン式圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 27/12 20060101AFI20230221BHJP
   F04B 27/16 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
F04B27/12 P
F04B27/12 B
F04B27/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019182508
(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2021059978
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】島田 賢
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】村西 明広
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 洋介
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240691(JP,A)
【文献】特開平7-119631(JP,A)
【文献】特開平5-306680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 27/12
F04B 27/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、冷媒が吸入される斜板室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内に回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内の冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記駆動軸に設けられ、前記駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて前記駆動軸の駆動軸心方向に前記駆動軸に対して移動可能である移動体と、
前記制御圧力を制御する制御弁とを備え、
前記移動体の前記駆動軸心方向の位置に応じて、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量である吐出流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記シリンダブロックには、前記シリンダボアに連通する第1連通路が形成され、
前記駆動軸には、前記駆動軸心方向に延びる軸路と、前記軸路と連通して前記駆動軸の径方向に延び、前記駆動軸の回転に伴い間欠的に前記第1連通路と連通する径路とが形成され、
前記移動体は、前記軸路内に前記駆動軸心方向に移動可能に配置されたスプールと、前記スプールと係合されて前記径路に配置され、前記径路と前記第1連通路との連通面積を変更可能な蓋体とを有し、
前記蓋体は、前記吐出流量が最大であるときには前記連通面積を最大にする一方、前記吐出流量が最少であるときには前記連通面積を最小にすることを特徴とするピストン式圧縮機。
【請求項2】
前記駆動軸は、前記蓋体を前記駆動軸心方向に案内する案内面を有し、
前記第1連通路と前記径路との連通開始タイミングは、前記案内面によって規定されている請求項1記載のピストン式圧縮機。
【請求項3】
前記駆動軸は、前記蓋体を前記駆動軸心方向に案内する案内面を有し、
前記第1連通路と前記径路との連通終了タイミングは、前記吐出流量が最大であるときには前記案内面によって規定され、前記吐出流量が最少であるときには前記蓋体によって規定されている請求項1又は2記載のピストン式圧縮機。
【請求項4】
前記シリンダボアは、前記駆動軸心方向の一方側に配置された一方側シリンダボアと、前記駆動軸心方向の他方側に配置された他方側シリンダボアとからなり、
前記ピストンは、前記一方側シリンダボア内に一方側圧縮室を形成する一方側ヘッドと、前記他方側シリンダボア内に他方側圧縮室を形成する他方側ヘッドとを有し、
前記第1連通路は、前記一方側シリンダボアに連通する一方側第1連通路と、前記他方側シリンダボアに連通する他方側第1連通路とからなり、
前記径路は、前記一方側第1連通路と連通する一方側径路と、前記他方側第1連通路と連通する他方側径路とからなり、
前記蓋体は、前記一方側径路に配置され、前記一方側径路と前記一方側第1連通路との連通面積を変更可能な一方側蓋体と、前記他方側径路に配置され、前記他方側径路と前記他方側第1連通路との連通面積を変更可能な他方側蓋体とからなり、
前記他方側蓋体は、前記他方側径路と前記他方側第1連通路との連通面積を構成する他方側第2連通路を自己の外周縁の一部が形成しているシャッタである請求項1乃至3のいずれか1項記載のピストン式圧縮機。
【請求項5】
前記一方側蓋体は、前記一方側径路と前記一方側第1連通路との連通面積を構成する一方側第2連通路を自己の内部が形成している枠体である請求項4記載のピストン式圧縮機。
【請求項6】
前記一方側蓋体は、前記一方側径路と前記一方側第1連通路との連通面積を構成する一方側第2連通路を自己の外周縁の一部が形成しているシャッタである請求項4記載のピストン式圧縮機。
【請求項7】
前記シャッタは、前記駆動軸の回転方向の後方側で前記スプールに係合される係合片を有している請求項4又は6記載のピストン式圧縮機。
【請求項8】
前記スプールは、前記一方側蓋体が係合される第1スプールと、前記第1スプールに対して前記駆動軸心方向に移動可能であり、前記他方側蓋体が係合される第2スプールとからなる請求項4乃至7のいずれか1項記載のピストン式圧縮機。
【請求項9】
前記スプールは、前記一方側蓋体及び前記他方側蓋体が係合されている単一のものである請求項4乃至7のいずれか1項記載のピストン式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピストン式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のピストン式圧縮機(以下、単に圧縮機という。)が開示されている。この圧縮機は、ハウジングと、駆動軸と、固定斜板と、複数のピストンと、吐出弁と、移動体と、制御弁とを備えている。
【0003】
ハウジングは、シリンダブロックを有している。シリンダブロックには、複数のシリンダボアが形成されている他、シリンダボアに連通する第1連通路が形成されている。また、ハウジングには、吐出室と、斜板室と、軸孔とが形成されている。斜板室には圧縮機の外部から冷媒が吸入される。また、斜板室は軸孔と連通している。
【0004】
駆動軸は、軸孔内で回転可能に支承されている。固定斜板は、駆動軸の回転によって斜板室内で回転可能である。固定斜板は、駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である。ピストンは、シリンダボア内に圧縮室を形成し、固定斜板に連結される。圧縮室と吐出室との間には、圧縮室内の冷媒を吐出室に吐出させるリード弁式の吐出弁が設けられている。
【0005】
移動体は、円筒状をなして駆動軸の外周面に設けられており、軸孔内に配置されている。移動体は、軸孔内で駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて駆動軸の駆動軸心方向に駆動軸に対して移動可能となっている。移動体の外周面には、第2連通路が形成されている。制御弁は、冷媒の圧力を制御して制御圧力とする。
【0006】
この圧縮機では、駆動軸が回転し、固定斜板が回転することで、ピストンがシリンダボア内を上死点と下死点との間で往復動する。ここで、ピストンが上死点から下死点に向かって移動することで、圧縮室は吸入行程となる。そして、この際に第1連通路と第2連通路とが連通することで、圧縮室に冷媒が吸入される。一方、第1連通路と第2連通路とが非連通となり、ピストンが下死点から上死点に向かって移動することにより、圧縮室は吸入した冷媒を圧縮する圧縮行程となり、さらには、圧縮した冷媒を吐出室に吐出する吐出行程となる。そして、この圧縮機は、移動体の駆動軸心方向の位置に応じて、圧縮室から吐出室に吐出される冷媒の流量である吐出流量が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平5-306680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の圧縮機では、円筒状の移動体が駆動軸の外周面に設けられている。このため、圧縮行程中や吐出行程中の圧縮室に連通する第1連通路を通じ、圧縮室内で圧縮された高圧の冷媒による荷重(以下、圧縮荷重という。)が移動体に作用する。これにより、この圧縮機では、移動体が軸孔内で駆動軸心方向に交差する方向に押圧されることで、移動体は軸孔の内壁に押し付けられる状態となる。このため、駆動軸心方向に移動する際の移動体と軸孔との摩擦力が大きくなる。これにより、移動体が駆動軸心方向に好適に移動し難くなることから、制御性が低下する。
【0009】
そこで、より大きな推力によって移動体を駆動軸心方向に移動させるために、移動体を大型化することが考えられる。しかし、この場合には、移動体の大型化に応じて軸孔等も大型化させる必要があることから、結果として圧縮機が大型化する。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現可能なピストン式圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のピストン式圧縮機は、複数のシリンダボアが形成されたシリンダブロックを有し、吐出室と、冷媒が吸入される斜板室と、軸孔とが形成されたハウジングと、
前記軸孔内に回転可能に支承された駆動軸と、
前記駆動軸の回転によって前記斜板室内で回転可能であり、前記駆動軸に垂直な平面に対する傾斜角度が一定である固定斜板と、
前記シリンダボア内に圧縮室を形成し、前記固定斜板に連結されるピストンと、
前記圧縮室内の冷媒を前記吐出室に吐出させる吐出弁と、
前記駆動軸に設けられ、前記駆動軸と一体回転するとともに、制御圧力に基づいて前記駆動軸の駆動軸心方向に前記駆動軸に対して移動可能である移動体と、
前記制御圧力を制御する制御弁とを備え、
前記移動体の前記駆動軸心方向の位置に応じて、前記圧縮室から前記吐出室に吐出される冷媒の流量である吐出流量が変化するピストン式圧縮機であって、
前記シリンダブロックには、前記シリンダボアに連通する第1連通路が形成され、
前記駆動軸には、前記駆動軸心方向に延びる軸路と、前記軸路と連通して前記駆動軸の径方向に延び、前記駆動軸の回転に伴い間欠的に前記第1連通路と連通する径路とが形成され、
前記移動体は、前記軸路内に前記駆動軸心方向に移動可能に配置されたスプールと、前記スプールと係合されて前記径路に配置され、前記径路と前記第1連通路との連通面積を変更可能な蓋体とを有し、
前記蓋体は、前記吐出流量が最大であるときには前記連通面積を最大にする一方、前記吐出流量が最少であるときには前記連通面積を最小にすることを特徴とする。
【0012】
本発明のピストン式圧縮機では、移動体のスプールが駆動軸の軸路内を駆動軸心方向に移動する。このため、移動体のスプールには圧縮荷重が作用しない。また、移動体の蓋体は、スプールと係合されて径路に配置され、径路と第1連通路との連通面積を変更する。径路は駆動軸の回転に伴い間欠的に第1連通路と連通するに過ぎず、蓋体は、吐出流量が最大であるときには連通面積を最大にする一方、吐出流量が最少であるときには連通面積を最小にする。この間、蓋体は、圧縮室が吸入行程の際に径路を第1連通路と連通させ、圧縮室が圧縮行程又は吐出行程の際には径路を第1連通路と非連通とする。これにより、駆動軸には、第1連通路を通じて圧縮荷重が作用する一方、移動体には、圧縮荷重が作用し難くなる。このため、この圧縮機では、移動体が駆動軸心方向に移動し易い。また、この圧縮機では、大きな推力を得るために移動体を必要以上に大型化させなくても足りる。
【0013】
したがって、本発明のピストン式圧縮機は、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現できる。
【0014】
駆動軸は、蓋体を駆動軸心方向に案内する案内面を有し得る。第1連通路と径路との連通開始タイミングは、その案内面によって規定されていることが好ましい。この場合、簡易な形状の蓋体を採用できるとともに、駆動軸への加工も簡易になる。また、蓋体によって最少容量を実現できることから、他の制御を省略できる。このため、ピストン式圧縮機の製造コストの低廉化を実現できる。また、蓋体の駆動軸心方向の長さを短くできるため、ピストン式圧縮機の短軸化により、車両等への搭載性を上げることができる。さらに、蓋体は、強度の弱い部分がなくなるため、耐久性が上がり、かつ高い制御性を発揮することができる。
【0015】
また、第1連通路と径路との連通終了タイミングは、吐出流量が最大であるときには案内面によって規定され、吐出流量が最少であるときには蓋体によって規定されていることが好ましい。この場合も、簡易な形状の蓋体を採用できる。
【0016】
連通開始タイミングが案内面によって規定され、かつ、連通終了タイミングは、吐出流量が最大であるときには案内面によって規定され、吐出流量が最少であるときには蓋体によって規定されている場合、最も簡易な形状の蓋体を採用できる。また、この場合、駆動軸の外周面から浅い位置で案内面が径路を形成することができるため、駆動軸のねじりに対する強度が向上し、高い耐久性を発揮することができる。
【0017】
シリンダボアは、駆動軸心方向の一方側に配置された一方側シリンダボアと、駆動軸心方向の他方側に配置された他方側シリンダボアとからなり得る。また、ピストンは、一方側シリンダボア内に一方側圧縮室を形成する一方側ヘッドと、他方側シリンダボア内に他方側圧縮室を形成する他方側ヘッドとを有し得る。さらに、第1連通路は、一方側シリンダボアに連通する一方側第1連通路と、他方側シリンダボアに連通する他方側第1連通路とからなり得る。また、径路は、一方側第1連通路と連通する一方側径路と、他方側第1連通路と連通する他方側径路とからなり得る。さらに、蓋体は、一方側径路に配置され、一方側径路と一方側第1連通路との連通面積を変更可能な一方側蓋体と、他方側径路に配置され、他方側径路と他方側第1連通路との連通面積を変更可能な他方側蓋体とからなり得る。この場合、ピストン式圧縮機が両頭型のものとなる。
【0018】
両頭型ピストン式圧縮機の場合、他方側蓋体は、他方側径路と他方側第1連通路との連通面積を構成する他方側第2連通路を自己の外周縁の一部が形成しているシャッタであることが好ましい。この場合、他方側蓋体が簡易な形状となるとともに、他方側第1連通路の位置に対するシャッタの外周縁の一部の駆動軸心方向の位置が変わることにより、他方側第2連通路の連通面積を変更し、他方側圧縮室の容量制御を簡易に行うことができる。
【0019】
両頭型ピストン式圧縮機の場合、他方側蓋体がシャッタであり、一方側蓋体は、一方側径路と一方側第1連通路との連通面積を構成する一方側第2連通路を自己の内部が形成している枠体であることは好ましい。この場合、一方側蓋体は、一方側圧縮室の容量制御を緻密に行うことができる。
【0020】
両頭型ピストン式圧縮機の場合、他方側蓋体がシャッタであり、一方側蓋体もシャッタであることは好ましい。この場合、他方側蓋体及び一方側蓋体が簡易な形状となるとともに、他方側圧縮室及び一方側圧縮室の容量制御を簡易に行うことができる。
【0021】
シャッタは、駆動軸の回転方向の後方側でスプールに係合される係合片を有していることが好ましい。駆動軸の回転方向の後方側はシャッタを回転方向に押すことから、そこで係合爪がスプールに係合しておれば、スプールとシャッタとの係合が強固になる。
【0022】
スプールは、一方側蓋体が係合される第1スプールと、第1スプールに対して駆動軸心方向に移動可能であり、他方側蓋体が係合される第2スプールとからなり得る。この場合、一方側圧縮室と他方側圧縮室とをそれぞれ緻密に容量制御することができる。
【0023】
スプールは、一方側蓋体及び他方側蓋体が係合されている単一のものであることも好ましい。この場合、一方側圧縮室及び他方側圧縮室の容量制御を簡易に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のピストン式圧縮機は、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最少流量時における駆動軸心方向の断面図である。
図2図2は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、所定流量時における駆動軸心方向の断面図である。
図3図3は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最大流量時における駆動軸心方向の断面図である。
図4図4は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、駆動軸の駆動軸心方向の断面図である。
図5図5は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、移動体の駆動軸心方向の拡大断面図である。
図6図6は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、ある方向から見たリヤ側枠体の拡大斜視図である。
図7図7は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、他の方向から見たリヤ側枠体の拡大斜視図である。
図8図8は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、駆動軸、第1スプール及びリヤ側枠体の駆動軸心に対する直角方向の断面図である。
図9図9は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、図1におけるリヤ側の要部断面図である。
図10図10は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最大流量時におけるリヤ側枠体、駆動軸等の展開図である。
図11図11は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、所定流量時におけるリヤ側枠体、駆動軸等の展開図である。
図12図12は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最少流量時におけるリヤ側枠体、駆動軸等の展開図である。
図13図13は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、ある方向から見たフロント側シャッタの斜視図である。
図14図14は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、他の方向から見たフロント側シャッタの斜視図である。
図15図15は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、駆動軸、第2スプール及びフロント側シャッタの駆動軸心に対する直角方向の断面図である。
図16図16は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、図1におけるフロント側の要部断面図である。
図17図17は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最大流量時におけるフロント側シャッタ、駆動軸等の展開図である。
図18図18は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、所定流量時におけるフロント側シャッタ、駆動軸等の展開図である。
図19図19は、実施例1のピストン式圧縮機に係り、最少流量時におけるフロント側シャッタ、駆動軸等の展開図である。
図20図20は、実施例2のピストン式圧縮機に係り、移動体の駆動軸心方向の断面図である。
図21図21は、実施例3のピストン式圧縮機に係り、移動体の駆動軸心方向の断面図である。
図22図22は、変形例のピストン式圧縮機に係り、最少流量時におけるリヤ側シャッタ、駆動軸等の展開図である。
図23図23は、変形例のピストン式圧縮機に係り、最少流量時におけるフロント側シャッタ、駆動軸等の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。実施例1~3の圧縮機は、両頭ピストン式圧縮機である。これらの圧縮機は、車両に搭載されており、空調装置の冷凍回路を構成している。
【0027】
(実施例1)
実施例1の圧縮機は、図1~3に示すように、ハウジング1と、駆動軸3と、固定斜板5と、複数のピストン7と、リヤ側弁形成プレート9と、フロント側弁形成プレート11と、移動体13と、制御弁15とを備えている。ハウジング1は、リヤハウジング17と、フロントハウジング19と、リヤ側シリンダブロック21と、フロント側シリンダブロック23とを有している。リヤ側が本発明における一方側であり、フロント側が本発明における他方側に相当する。
【0028】
本実施例では、フロントハウジング19が位置する側を圧縮機の前方側とし、リヤハウジング17が位置する側を圧縮機の後方側として、圧縮機の前後方向を規定している。また、図1~3の紙面の上方を圧縮機の上方側とし、紙面の下方を圧縮機の下方側として、圧縮機の上下方向を規定している。そして、図4以降では、図1~3に対応させて前後方向及び上下方向を表示する。なお、実施例における前後方向等は一例であり、本発明の圧縮機は、搭載される車両に対応して、その姿勢が適宜変更される。
【0029】
駆動軸3の駆動軸心Oは、圧縮機の前後方向に延びている。フロントハウジング19内には、駆動軸心O周りで環状のフロント側吐出室19aが形成されている。フロントハウジング19には、ボス部19bと、フロント側軸孔19cとが形成されている。ボス部119bは駆動軸心O方向で前方に向かって突出している。フロント側軸孔19cは、駆動軸心O方向でフロントハウジング19を貫通している。フロント側軸孔19c内には軸封装置25が設けられている。
【0030】
リヤハウジング17には、制御圧室17aと、リヤ側吐出室17bとが形成されている。制御圧室17aは、リヤハウジング17の中心側に位置している。リヤ側吐出室17bは駆動軸心O周りで環状に形成されており、制御圧室17aの外周側に位置している。
【0031】
フロント側シリンダブロック23及びリヤ側シリンダブロック21はフロントハウジング19とリヤハウジング17との間に設けられている。フロントハウジング19とフロント側シリンダブロック23との間にはフロント側弁形成プレート11が設けられ、フロント側シリンダブロック23とリヤ側シリンダブロック21との間にはガスケット27が設けられ、リヤ側シリンダブロック21とリヤハウジング17との間にはリヤ側弁形成プレート9が設けられ、これらは駆動軸心O方向に延びる図示しないボルトによって締結されている。
【0032】
フロント側シリンダブロック23とリヤ側シリンダブロック21とは斜板室29を形成している。斜板室29は、フロント側シリンダブロック23に形成された吸入口29aによって外部の図示しない蒸発器に接続され、低圧の冷媒を吸入するようになっている。また、フロント側シリンダブロック23とリヤ側シリンダブロック21とは駆動軸心O方向に延びる吐出通路31を形成している。吐出通路31は、フロント側弁形成プレート11を貫通し、フロント側吐出室19aと連通している。また、吐出通路31は、リヤ側弁形成プレート9を貫通し、リヤ側吐出室17bと連通している。吐出通路31は、フロント側シリンダブロック23に形成された吐出口31aによって外部の図示しない凝縮器に接続され、高圧の冷媒を吐出するようになっている。なお、冷媒にはオイルが含まれている。
【0033】
リヤ側シリンダブロック21は、駆動軸心O方向で後方に向かって突出するボス部21aを有している。ボス部21aは、フロント側弁形成プレート11を貫通し、制御圧室17a内に延びている。リヤ側シリンダブロック21には、円柱状の空間であるリヤ側軸孔33aが駆動軸心O方向に形成されている。リヤ側軸孔33aは制御圧室17aに開口している。
【0034】
フロント側シリンダブロック23には、円柱状の空間であるフロント側軸孔33bが駆動軸心O方向に形成されている。フロント側軸孔33bは、リヤ側軸孔33aと同軸であり、リヤ側軸孔33aよりやや大径である。フロント側軸孔33bは、フロント側弁形成プレート11に形成された挿通孔11dによってフロント側軸孔19cと連通している。
【0035】
また、リヤ側シリンダブロック21には、図9に示すように、リヤ側シリンダボア35a~35eが形成されている。リヤ側シリンダボア35a~35eは、駆動軸心O方向に延びる円柱状の空間であり、駆動軸心O周りで互いに等角度隔てられている。
【0036】
リヤ側シリンダブロック21には、各リヤ側シリンダボア35a~35eとリヤ側軸孔33aとを接続するリヤ側第1連通路37a~37eが形成されている。リヤ側第1連通路37a~37eは駆動軸心Oから放射方向に延びている。リヤ側第1連通路37a~37eは、図1~3に示すように、駆動軸心Oから離間しつつ後方に傾斜している。
【0037】
フロント側シリンダブロック23には、図16に示すように、フロント側シリンダボア39a~39eが形成されている。フロント側シリンダボア39a~39eは、駆動軸心O方向に延びる円柱状の空間であり、駆動軸心O周りで互いに等角度隔てられている。リヤ側シリンダボア35a~35eとフロント側シリンダボア39a~39eとはそれぞれ同軸かつ同径である。
【0038】
フロント側シリンダブロック23には、各フロント側シリンダボア39a~39eとフロント側軸孔33bとを接続するフロント側第1連通路41a~41eが形成されている。フロント側第1連通路41a~41eは駆動軸心Oから放射方向に延びている。フロント側第1連通路41a~41eは、図1~3に示すように、駆動軸心Oから離間しつつ前方に傾斜している。
【0039】
駆動軸3の外周面には、斜板室29内において、固定斜板5が圧入によって固定されている。固定斜板5には、駆動軸3の駆動軸心Oに垂直な平面に対する傾斜角度が一定である傾斜面5a、5bが前後に形成されている。固定斜板5は、フロント側シリンダブロック23とリヤ側シリンダブロック21との間にそれぞれスラスト軸受43、45を介して挟持されている。
【0040】
固定斜板5の傾斜面5a、5bにはそれぞれ半球状のシュー49a、49bが設けられている。シュー49a、49bには両頭のピストン7が設けられている。各ピストン7は、リヤ側ヘッド7aとフロント側ヘッド7bとを有している。リヤ側ヘッド7aはリヤ側シリンダボア35a~35e内にリヤ側圧縮室51を形成している。フロント側ヘッド7bはフロント側シリンダボア39a内にフロント側圧縮室53を形成している。
【0041】
リヤ側弁形成プレート9は、リヤ側シリンダブロック21側に配置された弁板9aと、弁板9aより後方に配置された吐出弁板9bと、吐出弁板9bのさらに後方に配置されたリテーナ板9cとからなる。弁板9aには、リヤ側シリンダボア35a~35eをそれぞれリヤ側吐出室17bに連通させる吐出ポート9dが形成されている。吐出弁板9bには、各吐出ポート9dを弾性復元力によって閉鎖する吐出リード弁9eが形成されている。リテーナ板9cには、各吐出リード弁9eの開度を規制するリテーナ9fが形成されている。
【0042】
フロント側弁形成プレート11は、フロント側シリンダブロック23側に配置された弁板11aと、弁板11aより前方に配置された吐出弁板11bと、吐出弁板11bのさらに前方に配置されたリテーナ板11cとからなる。弁板11aには、フロント側シリンダボア39a~39eをそれぞれフロント側吐出室19aに連通させる吐出ポート11dが形成されている。吐出弁板11bには、各吐出ポート11dを弾性復元力によって閉鎖する吐出リード弁11eが形成されている。リテーナ板11cには、各吐出リード弁11eの開度を規制するリテーナ11fが形成されている。吐出リード弁9e、11eが本発明の吐出弁に相当する。
【0043】
制御弁15はリヤハウジング17内に設けられている。制御圧室17aとリヤ側吐出室17bとは給気通路47aによって接続されている。制御圧室17aと斜板室29とは抽気通路47bによって接続され、抽気通路47bの途中に制御弁15が配置されている。制御弁15は図示しないコントローラの信号によって抽気通路47bの開度を調整し、制御圧室17a内の制御圧力を制御する。
【0044】
駆動軸3の外周面には、固定斜板5が圧入された部分と、スラスト軸受43、45が配置されている部分とを除き、リヤ側軸孔33a及びフロント側軸孔33b内を好適に回転摺動するようにコーティングが施されている。この駆動軸3内には、図4に示すように、リヤ側で駆動軸心O方向に延びる第1軸路3aと、第1軸路3aの前方で第1軸路3aと連通し、駆動軸心O方向に延びる第2軸路3bとが形成されている。第1軸路3aは、円柱状の空間であり、駆動軸3の後端に開口して制御圧室17aと連通するようになっている。第2軸路3bは、第1軸路3aよりも小径の円柱状の空間である。第1軸路3aと第2軸路3bとの間には段差3jが形成されている。
【0045】
また、駆動軸3には、後方側で第1軸路3aと連通して駆動軸3の径方向に延びるリヤ側径路3cと、ほぼ中央で第2軸路3bと連通して駆動軸3の径方向に延びる内部吸入口3dと、前方で第2軸路3bと連通して駆動軸3の径方向に延びるフロント側径路3eとが形成されている。
【0046】
リヤ側径路3cは、図8に示すように、駆動軸心O周りで所定の角度で形成されているとともに、図10及び図11に示すように、駆動軸心Oと平行に所定の長さで形成されている。リヤ側径路3cの後端は後端規制面3fとされ、リヤ側径路3cの前端は前端規制面3gとされている。後端規制面3f及び前端規制面3gは駆動軸心Oに対して直角方向に延びている。
【0047】
図8及び図9に示すように、駆動軸3は、駆動軸3の内径と外径との差である自己の厚み部分によって駆動軸心O方向に延びる案内面32a、32bを形成している。案内面32aと案内面32bとは面一であり、かつ駆動軸心Oと平行に延びている。案内面32aは駆動軸3の回転方向の先行側に位置し、案内面32bは駆動軸3の回転方向の後行側に位置している。
【0048】
図15に示すように、フロント側径路3eも、駆動軸心O周りで所定の角度で形成されているとともに、図17~19に示すように、駆動軸心Oと平行に所定の長さで形成されている。フロント側径路3eの後端は後端規制面3hとされ、フロント側径路3eの前端は前端規制面3iとされている。後端規制面3h及び前端規制面3iは駆動軸心Oに対して直角方向に延びている。フロント側径路3eは、リヤ側径路3cよりも、駆動軸心O周りの角度が小さく、かつ駆動軸心O方向の長さが短くされている。
【0049】
図15及び図16に示すように、駆動軸3は、駆動軸3の内径と外径との差である自己の厚み部分によって駆動軸心O方向に延びる案内面34a、34bも形成している。案内面34aと案内面34bとは面一であり、かつ駆動軸心Oと平行に延びている。案内面34aは駆動軸3の回転方向の先行側に位置し、案内面34bは駆動軸3の回転方向の後行側に位置している。
【0050】
図1~3に示すように、駆動軸3内には第1、2スプール55、57が設けられてる。第1スプール55は、段差3jとの間に第1ばね2を介して第1軸路3a内で駆動軸心O方向に移動可能に配置されている。第1スプール55は、図5に示すように、外径が第1軸路3aの内径よりやや小さくされ、厚肉の円筒状に形成された厚肉筒部55aと、厚肉筒部55aの前方に位置して外径が厚肉筒部55aと等しく、厚肉筒部55aよりも薄肉の円筒状に形成された薄肉筒部55bと、厚肉筒部55aの後端を塞ぐ端部55cとからなる。第1スプール55は樹脂製である。端部55cの外周面には、第1スプール55が第1軸路3a内を駆動軸心O方向に移動し易く、制御圧室17aの制御圧力を逃がし難い材料からなるシール55dが設けられている。
【0051】
厚肉筒部55a及び薄肉筒部55b内には第1内部流路59が形成され、厚肉筒部55aの内周面と薄肉筒部55bの内周面との間には駆動軸心Oと直交する当接面55gが形成されている。厚肉筒部55aには、第1内部流路59を外側に開く第1連通窓55eが形成されている。
【0052】
図1~3に示すように、第2スプール57は、第2軸路3bの前端との間に第2ばね4を介し、第2軸路3b及び薄肉筒部55b内に駆動軸心O方向に移動可能に配置されている。第2ばね4の付勢力は第1ばね2の付勢力よりも強く設定されている。
【0053】
第2スプール57は、図5に示すように、外径が第2軸路3b及び薄肉筒部55bの内径よりやや小さくされた円筒状の筒部57aと、筒部57aの前端で円筒状に形成されたばね座部57bとからなる。第2スプール57も樹脂製である。筒部57aの後方側の外周面には、第2スプール57が薄肉筒部55b内を駆動軸心O方向に移動し易く、制御圧室17aの制御圧力を逃がし難い材料からなるシール57cが設けられている。
【0054】
筒部57a内には、第1スプール55の第1内部流路59と連通する第2内部流路61が形成されている。また、筒部57aの駆動軸心O方向のほぼ中央には、第2内部流路61と連通する内部取入口57dが形成され、筒部57aの前方には第2内部流路61を外側に開く第2連通窓57eが形成されている。
【0055】
図1~3に示すように、固定斜板5には斜板室29から径方向に延びて形成された内部吸入口5cが形成されている。この内部吸入口5cは駆動軸3の内部吸入口3dと一致している。第2スプール57における筒部57aの内部取入口57dは、第2スプール57の駆動軸心O方向の位置により、内部吸入口3d及び内部吸入口5cと連通面積が変化する内部吸入絞り機構SVを構成している。
【0056】
斜板室29は、固定斜板5の内部吸入口5c、駆動軸3の内部吸入口3d、内部吸入絞り機構SVを経て、図5に示すように、第2スプール57の第2内部流路61及び第1スプール55の第1内部流路59に連通している。第1内部流路59は第1連通窓55eに連通し、第2内部流路61は第2連通窓57eに連通している。
【0057】
第1連通窓55eと第2連通窓57eとは、駆動軸心O周りで180°位相がずれている。第1連通窓55eは、吸入行程を行うリヤ側圧縮室51と連通するリヤ側第1連通路37a~37eと連通するようになっている。また、第2連通窓57eは、吸入行程を行うフロント側圧縮室53と連通するフロント側第1連通路41a~41eと連通するようになっている。
【0058】
第1スプール55の厚肉筒部55aには係合孔55fが形成されている。係合孔55fは第1連通窓55eの駆動軸心O方向の後方に位置している。係合孔55fにはリヤ側枠体63の係合片63aが係合され、これによって第1スプール55の厚肉筒部55aに枠体63が配置されている。枠体63はリヤ側蓋体に相当する。枠体63は、第1スプール55の駆動軸心O方向の位置に応じ、駆動軸3の案内面32a、32bに案内されるようになっている。
【0059】
また、第2スプール57の筒部57aにも係合孔57fが形成されている。係合孔57fは第2連通窓57eの駆動軸心O方向の前方に位置している。係合孔57fにはフロント側シャッタ65の係合片65aが係合され、これによって第2スプール57の筒部57aにシャッタ65が配置されている。シャッタ65はフロント側蓋体に相当する。シャッタ65は、第2スプール57の駆動軸心O方向の位置に応じ、駆動軸3の案内面34a、34bに案内されるようになっている。第1、2スプール55、57、枠体63及びシャッタ65が本発明の移動体に相当する。
【0060】
枠体63は、図6及び図7に示すように、半円筒状をなす遮蔽部63bと、遮蔽部63bの一端から駆動軸心O方向に延びる第1リム部63cと、遮蔽部63bの他端から駆動軸心O方向に延びる第2リム部63dと、第1リム部63cと第2リム部63dとを半円筒状に接続する第3リム部63eとを有してる。係合片63aは第3リム部63eから駆動軸心O方向に屈曲して形成されている。遮蔽部63bの前端面は駆動軸心Oに対して直角に形成された当接面63hとされ、第3リム部63eの後端面は駆動軸心Oに対して直角に形成された当接面63iとされている。第1リム部63cには、駆動軸心Oに近づくように屈曲された凹部63fが形成されている。
【0061】
枠体63は、図8及び図9に示すように、第1スプール55に係合されることにより駆動軸3のリヤ側径路3cに移動可能に設けられ、駆動軸3とともにリヤ側軸孔33a内を回転する。ここで、枠体63は、遮蔽部63bの後端面は所定形状のプロフィール63gとされている。プロフィール63gは第1~3リム部63c、63d、63eとともに、リヤ側第2連通路64を形成している。リヤ側第2連通路64は、図10及び図11に示すように、リヤ側径路3cとリヤ側第1連通路37a~37eとの連通面積を構成する。
【0062】
プロフィール63gは、第2リム部63dから駆動軸3の回転方向の前方側に延びる第1直線部631と、駆動軸心O方向に対して傾斜した第1傾斜部632及び第2傾斜部633と、第1リム部63cから駆動軸3の回転方向の後方側に延びる第2直線部634とから構成されている。プロフィール63gは、第2リム部63dから駆動軸3の回転方向の後方側の第1リム部63cまで、第1直線部631、第1傾斜部632、第2傾斜部633、第2直線部634の順に連続して形成されている。第1傾斜部632は、プロフィール63gのうち、駆動軸3の回転方向の後方側に位置する。第2傾斜部633は、プロフィール65gのうち、駆動軸3の回転方向の前方側に位置する。第2傾斜部633の駆動軸心O方向に対する傾斜角度β1は、第1傾斜部632の駆動軸心O方向に対する傾斜角度α1より小さく設定されている。なお、実施例1では、プロフィール63gを第1直線部631、第1傾斜部632、第2傾斜部633及び第2直線部634から構成したが、傾斜部や直線部の数は適宜設計してもよい。
【0063】
シャッタ65は、図13及び図14に示すように、半円筒状をなす遮蔽部65bと、係合片65aとからなる。つまり、シャッタ65は、枠体63のような第1~3リム部63c~63eを有していない。遮蔽部65bの外周縁のうち、前端面は駆動軸心Oに対して直角に形成された当接面65dとされ、後端面は駆動軸心Oに対して直角に形成された当接面65eとされている。当接面65eは駆動軸3の回転方向の後方側に位置している。当接面65eは係合片65aの後方側の端面である。また、遮蔽部65bの外周縁のうち、後端面の他の部分が所定形状のプロフィール65cとされている。
【0064】
プロフィール65cは、係合片65aの後方側の端面により形成される第1直線部651と、駆動軸心O方向に対して傾斜した第1傾斜部652及び第2傾斜部653と、第2傾斜部653から駆動軸3の回転方向の前方側に延びる第2直線部654とから構成されている。プロフィール65cは、第1直線部651、第1傾斜部652、第2傾斜部653、第2直線部654の順に連続して形成されている。第1傾斜部652は、プロフィール65cのうち、駆動軸3の回転方向の後方側に位置する。第2傾斜部653は、プロフィール65cのうち、駆動軸3の回転方向の前方側に位置する。第2傾斜部653の駆動軸心O方向に対する傾斜角度β2は、第1傾斜部652の駆動軸心O方向に対する傾斜角度α2より小さく設定されている。なお、実施例1では、プロフィール65cを第1直線部651、第1傾斜部652、第2傾斜部653及び第2直線部654から構成したが、傾斜部や直線部の数は適宜設計してよい。例えば、第2直線部654を削除し、第2傾斜部653が回転方向の前方側である案内面34aにつながるようにしてもよい。
【0065】
係合片65aは、遮蔽部65bの当接面65eから駆動軸心O方向に屈曲して形成されている。係合片65aは、駆動軸3の回転方向の後方側に設けられている。係合片65aは、遮蔽部65bのうち、回転方向の後方側に設けられているともいえる。また、係合片65aは、シャッタ65の内周面の中央位置に対して、回転方向の後方側に設けられているともいえる。
【0066】
遮蔽部65bの左右の端面は駆動軸心Oと平行に延びている。シャッタ65は、案内面34bに載置される後方端面65fと、案内面34aに載置される前方端面65gとを備える。後方端面65fは、シャッタ65の回転方向の後方端部にて、駆動軸心O方向に延びている。前方端面65gは、シャッタ65の回転方向の前方端部にて、駆動軸心O方向に延びている。前方端面65gより後方端面65fの方が駆動軸心O方向の長さが長く形成されている。このため、駆動軸3の回転方向の後方側である案内面34bと後方端面65fとが当接する面積は、駆動軸3の回転方向の前方側である案内面34aと前方端面65gとが当接する面積より広くなっている。
【0067】
シャッタ65は、図15及び図16に示すように、第2スプール57に係合されることにより駆動軸3のフロント側径路3eに移動可能に設けられ、駆動軸3とともにフロント側軸孔33b内を回転する。プロフィール65cはフロント側第2連通路66を形成している。フロント側第2連通路66は、図17~19に示すように、フロント側径路3eとフロント側第1連通路41a~41eとの連通面積を構成する。
【0068】
以上のように構成された圧縮機では、図1~3に示すように、駆動軸3が電磁クラッチやプーリを介してエンジンやモータによって回転駆動されると、固定斜板5が回転し、ピストン7が往復動する。このため、リヤ側ヘッド7aは、傾斜面5a、5bの傾斜角度に応じたストロークでリヤ側シリンダボア35a~35e内を上死点と下死点との間で往復動する。また、フロント側ヘッド7bは、傾斜面5a、5bの傾斜角度に応じたストロークでフロント側シリンダボア39a~39e内を上死点と下死点との間で往復動する。リヤ側ヘッド7aとフロント側ヘッド7bとは駆動軸3の回転角度で180°位相がずれている。
【0069】
ここで、リヤ側ヘッド7aが上死点から下死点に向かって移動することで、リヤ側圧縮室51は吸入行程となる。斜板室29内には吸入口29aによって蒸発器を経由した低圧の冷媒が存在している。斜板室29内の冷媒は、固定斜板5の内部吸入口5c、駆動軸3の内部吸入口3d、内部吸入絞り機構SVを経て、図5に示すように、第2スプール57の第2内部流路61、第1スプール55の第1内部流路59及び第1連通窓55e内に存在している。そして、図1~3に示すように、この際にリヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64とが連通することで、リヤ側圧縮室51に冷媒が吸入される。一方、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64とが非連通となり、リヤ側ヘッド7aが下死点から上死点に向かって移動することにより、リヤ側圧縮室51は吸入した冷媒を圧縮する圧縮行程となり、さらには、圧縮した冷媒をリヤ側吐出室17bに吐出する吐出行程となる。
【0070】
また、フロント側ヘッド7bが上死点から下死点に向かって移動することで、フロント側圧縮室53は吸入行程となる。斜板室29内の冷媒は、第2スプール57の第2内部流路61及び第2連通窓57e内にも存在している。そして、この際にフロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66とが連通することで、フロント側圧縮室53に冷媒が吸入される。一方、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66とが非連通となり、フロント側ヘッド7bが下死点から上死点に向かって移動することにより、フロント側圧縮室53は吸入した冷媒を圧縮する圧縮行程となり、さらには、圧縮した冷媒をフロント側吐出室19aに吐出する吐出行程となる。リヤ側吐出室17bに吐出された冷媒とフロント側吐出室19aに吐出された冷媒とは吐出通路31を経て吐出口31aから凝縮器に吐出される。
【0071】
これらの際、制御弁15が制御圧室17aを高圧にしておれば、図3に示すように、第1スプール55は第1ばね2の付勢力に抗して前方に移動し、第2スプール57も第2ばね2の付勢力に抗して前方に移動する。この際、第1スプール55の当接面55gが第2スプール57に当接するまでは、第1スプール55が単独で前方に移動する。第1スプール55の当接面55gが第2スプール57に当接した後は、第1スプール55と第2スプール57とは、一体となって前方に移動する。このため、枠体63は、図10に示すように、当接面63hが前端規制面3gに当接し、リヤ側径路3cの前端に位置する。このため、リヤ側第1連通路37a~37eがリヤ側第2連通路64と大きな連通面積の下で連通するため、リヤ側圧縮室51には大量の冷媒が吸入される。
【0072】
また、シャッタ65は、図17に示すように、当接面65dが前端規制面3iに当接し、フロント側径路3eの前端に位置する。このため、フロント側第1連通路41a~41eがフロント側第2連通路66と大きな連通面積の下で連通するため、フロント側圧縮室53には大量の冷媒が吸入される。
【0073】
このため、この圧縮機は、リヤ側圧縮室51からリヤ側吐出室17bに吐出される吐出流量が最大となるとともに、フロント側圧縮室53からフロント側吐出室19aに吐出される吐出流量も最大となっている。このため、凝縮器には最大の吐出流量の冷媒が吐出される。つまり、枠体63は、吐出流量が最大であるとき、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通面積を最大にする。また、シャッタ65は、吐出流量が最大であるとき、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通面積を最大にする。
【0074】
制御弁15が制御圧室17aを高圧にした図3の状態から、制御弁15が制御圧室17aの圧力をやや下げれば、図2に示すように、第1スプール55及び第2スプール57は後方に移動する。制御圧室17aの圧力低下に伴い、第2スプール57は、当接面65eが後端規制面3hに当接するまで、第2スプール57は後方に移動する。一方、第1スプール55は、制御圧室17aの圧力低下に伴い、第2スプール57とともに後方に移動し、当接面65eが後端規制面3hに当接した後は、第1スプール55は単独で後方に移動する。このため、枠体63は、図10に示す状態から、図11に示すように、当接面63hが前端規制面3gから離間して、枠体63は後方に移動する。このため、リヤ側第1連通路37a~37eがプロフィール63gに重なることにより、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通面積が減少していく。よって、リヤ側圧縮室51に吸入される冷媒の量が減少する。
【0075】
一方、シャッタ65は、制御弁15が制御圧室17aを高圧にした図3の状態から、制御弁15が制御圧室17aの圧力をやや下げれば、図17に示す状態から図18に示すように、当接面65dが前端規制面3iから離間して、シャッタ65が後方に移動する。このため、フロント側第1連通路41a~41eがプロフィール65cに重なることにより、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通面積が減少していく。よって、フロント側圧縮室53に吸入される冷媒の量が減少する。
【0076】
シャッタ65は、さらに制御圧室17aの圧力が下がると、図19に示すように、当接面65eが後端規制面3hに当接するまで後方に移動し、フロント側径路3eの後端に位置する。このため、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通終了タイミングは、第2傾斜部653によって規定される。この場合、フロント側圧縮室53には冷媒が少量吸入される。
【0077】
このため、フロント側圧縮室53からフロント側吐出室19aに吐出される吐出流量はほぼゼロとなっている。リヤ側圧縮室51からリヤ側吐出室17bに吐出される吐出流量は、リヤ側第1連通路37a~37eに対するプロフィール63gの位置に依存し、リヤ側圧縮室51からリヤ側吐出室17bに吐出される吐出流量の最大と最少との間の流量となる。このため、凝縮器には所定の吐出流量の冷媒が吐出される。
【0078】
制御弁15が制御圧室17aの圧力をさらに下げれば、図1に示すように、第1スプール55は第1ばね2の付勢力に屈してさらに後方に移動する。第2スプール57は、第2ばね2の付勢力に屈して当接面65eが後端規制面3hに当接しているので、さらに後方に移動しない。このため、枠体63は、図11の状態から図12に示すように、当接面63iが後端規制面3fに当接し、リヤ側径路3cの後端に位置している。このため、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通終了タイミングは、第2傾斜部633によって規定される。この場合、リヤ側圧縮室51には冷媒が少量吸入される。
【0079】
また、シャッタ65は、図19に示すように、当接面65eが前端規制面3hに当接し、フロント側径路3eの後端に位置してる。このため、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通終了タイミングは、第2傾斜部653によって規定される。この場合、フロント側圧縮室53には冷媒が少量吸入される。
【0080】
このため、この圧縮機は、リヤ側圧縮室51からリヤ側吐出室17bに吐出される吐出流量及びフロント側圧縮室53からフロント側吐出室19aに吐出される吐出流量は少量となり、凝縮器には最少の吐出流量の冷媒だけが吐出される。つまり、枠体63は、吐出流量が最少であるとき、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通面積を最小にする。また、シャッタ65は、吐出流量が最少であるとき、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通面積を最小にする。
【0081】
このように、最少の吐出流量をゼロではなく、少量とすることにより、圧縮機内部で冷媒が内部循環されることにより、圧縮機内の潤滑性が向上する。また、最少の吐出流量の状態から吐出流量を上げる場合に、制御弁15が制御圧室17aの圧力を高めやすくなり、制御性が向上する。また、最少の吐出流量時に、冷媒がリヤ側圧縮室51及びフロント側圧縮室53に流入することにより、冷媒が各圧縮室51、53に流入しない場合に比べて、各圧縮室51、53の吸入行程における圧力の低下量を低減できる。これにより、吸入行程におけるピストン7及びシュー49a、49bにかかる荷重を低減できる。よって、圧縮機の動力を低減できる。また、最少の吐出流量時における各圧縮室51、53と斜板室29との差圧により、斜板室29から各圧縮室51、53への冷媒に含まれるオイルが流入することを低減できる。よって、斜板室29内にオイルを保持しやすくなり、斜板室29内の潤滑性を向上できる。
【0082】
以上、吐出流量が最大の状態から最小の状態に移行するまでの圧縮機の動きを説明した。以下、吐出流量が最小の状態から最大の状態に移行するまでの圧縮機の動きを簡単に説明する。
【0083】
図1の吐出流量が最小の状態から制御弁15が制御圧室17aの圧力を上げると、第1ばね2の付勢力に抗して、第1スプール55が前方側に移動し、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通面積が増加し始める。この間、第2スプール57は移動せず、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通面積は、最小の状態を維持する。さらに制御圧室17aの圧力が上がると、第1スプール55の当接面55gが第2スプール57と当接して図2の状態となり、第1スプール55及び第2スプール57とが一体となって前方側に移動し始める。よって、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通面積がプロフィール63gに応じた連通面積となり、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通面積が増加し始める。そして、制御圧室17aの圧力がさらに大きくなると、第1スプール55及び第2スプール57のいずれも最前方に移動した状態となる。よって、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通面積及びフロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通面積が最大となり、図3の吐出流量が最大の状態となる。
【0084】
こうして、この圧縮機では、第1スプール55が駆動軸3の第1軸路3a内を駆動軸心O方向に移動するとともに、第2スプール57が駆動軸3の第2軸路3b内を駆動軸心O方向に移動する。このため、第1、2スプール55、57には圧縮荷重が直接作用しない。
【0085】
また、枠体63は、リヤ側圧縮室51が吸入行程の際にリヤ側径路3cをリヤ側第1連通路37a~37eと連通させ、リヤ側圧縮室51が圧縮行程又は吐出行程の際にはリヤ側径路3cをリヤ側第1連通路37a~37eと非連通とする。これにより、駆動軸3には、リヤ側第1連通路37a~37eを通じて圧縮荷重が作用する一方、第1スプール55及び枠体63には、圧縮荷重が作用し難くなっている。
【0086】
シャッタ65は、フロント側圧縮室53が吸入行程の際にフロント側径路3eをフロント側第1連通路41a~41eと連通させ、フロント側圧縮室53が圧縮行程又は吐出行程の際にはフロント側径路3eをフロント側第1連通路41a~41eと非連通とする。これにより、駆動軸3には、フロント側第1連通路41a~41eを通じて圧縮荷重が作用する一方、第2スプール57及びシャッタ65には、圧縮荷重が作用し難くなっている。
【0087】
このため、この圧縮機では、第1スプール55、第2スプール57、枠体63及びシャッタ65が駆動軸心O方向に移動し易い。また、この圧縮機では、大きな推力を得るために移動体を必要以上に大型化させなくても足りる。
【0088】
したがって、この圧縮機は、高い制御性を発揮するとともに小型化を実現できる。
【0089】
また、この圧縮機では、図10に示すように、枠体63が第1リム部63cを有するため、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側径路3cとの連通開始タイミングは、第1リム部63cによって規定されている。このため、リヤ側圧縮室51内に残留する高圧の冷媒がリヤ側径路3cに還流し難くなっている。なお、吐出流量が減り、枠体63がやや後方に移動することによって凹部63fがリヤ側第1連通路37a~37eと連通するようになれば、凹部63fによって早期の連通開始タイミングを実現することができる。
【0090】
一方、シャッタ65は、図17に示すように、枠体63のような第1リム部63cを有さないため、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側径路3eとの連通開始タイミングは案内面34aによって規定されている。このため、簡易な形状のシャッタ65を採用できるとともに、駆動軸3への加工も簡易になっている。また、シャッタ65によって最小容量を実現できることから、他の制御を省略できる。このため、圧縮機の製造コストの低廉化を実現できる。また、シャッタ65の駆動軸心O方向の長さを短くできるため、圧縮機の短軸化により、車両等への搭載性を上げることができる。さらに、シャッタ65は、枠体63の第1リム部63cのような強度の弱い部分がなくなるため、耐久性が上がり、かつ高い制御性を発揮することができる。また、第1リム部63cでは、連通開始タイミング近傍となり、圧縮室内に残留する高圧の冷媒による荷重の影響を受けやすくなる。この点、シャッタ65では、第1リム部63cのように圧縮室内に残留する高圧の冷媒による荷重の影響を受け難くなり、さらに耐久性が向上する。
【0091】
さらに、この圧縮機では、図17に示すように、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側径路3eとの連通終了タイミングは、吐出流量が最大であるときには案内面34bによって規定され、図19に示すように、吐出流量が最少であるときにはシャッタ65によって規定されている。このため、シャッタ65の形状が最も簡易になっている。また、駆動軸3の外周面から浅い位置で案内面34a、34bがフロント側径路3eを形成することができるため、駆動軸3のねじりに対する強度が向上し、高い耐久性を発揮することができる。
【0092】
また、この圧縮機は、フロント側蓋体がシャッタ65であり、リヤ側蓋体が枠体63であるため、枠体63は、シャッタ65と比較してやや複雑な形状とはなるが、リヤ側圧縮室51の容量制御を緻密に行うことができる。また、この圧縮機は、第1スプール55と第2スプール57とを採用しているため、リヤ側圧縮室51とフロント側圧縮室53とをそれぞれ緻密に容量制御することができる。
【0093】
さらに、この圧縮機は、シャッタ65の係合片65aが駆動軸3の回転方向の後方側に設けられているため、駆動軸3が係合片65aを回転方向に押し、第2スプール57とシャッタ65との係合が強固になっている。
【0094】
駆動軸3の回転方向の後方側である案内面34bと後方端面65fとが当接する面積が、駆動軸3の回転方向の前方側である案内面34aと前方端面65gとが当接する面積より広くなっているため、駆動軸3がシャッタ65を回転方向に押す際の当接面積を広く確保することができ、シャッタ65の姿勢が安定する。
【0095】
(実施例2)
実施例2の圧縮機は、図20に示すように、単一のスプール58を採用し、スプール58にシャッタ65及び枠体63を係合している。スプール58は、筒部58aと、筒部58aの後端を塞ぐ端部58bと、筒部58aの前端で円筒状に形成されたばね座部58cとからなる。筒部58a内には、内部流路60と、内部流路60を外側に開く内部取入口58d、第1連通窓58e、第2連通窓58fとが形成されている。端部58bの外周面にはシール58gが設けられている。他の構成は実施例1の圧縮機と同様である。
【0096】
この圧縮機では、フロント側圧縮室53及びリヤ側圧縮室51の容量制御を簡易に行うことができる。他の作用効果は実施例1の圧縮機と同様である。
【0097】
(実施例3)
実施例3の圧縮機は、図21に示すように、単一のスプール58を採用し、スプール58にフロント側シャッタ65及びリヤ側シャッタ65を係合している。フロント側シャッタ65及びリヤ側シャッタ65は、実施例1のシャッタ65と同様の構造である。他の構成は実施例1、2の圧縮機と同様である。
【0098】
この圧縮機では、フロント側圧縮室53及びリヤ側圧縮室51の容量制御をより簡易に行うことができる。他の作用効果は実施例1の圧縮機と同様である。
【0099】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0100】
例えば、本発明のピストン式圧縮機は、一方のみにヘッドを有する片頭ピストンを用いた片頭ピストン式圧縮機であってもよい。
【0101】
また、実施例1~3の圧縮機において、吐出流量を最小流量の状態とするときに、プロフィール63gの形状を変更することにより、図22に示すように、リヤ側第1連通路37a~37eとリヤ側第2連通路64との連通面積を略ゼロとし、プロフィール65cの形状を変更することにより、図23に示すように、フロント側第1連通路41a~41eとフロント側第2連通路66との連通面積を略ゼロとなるようにしてもよい。つまり、吐出流量を最小流量の状態とするときに、駆動軸3の回転により、リヤ側第1連通路37a~37eは、リヤ側第2連通路64と重ならず、遮蔽部63bとだけ重なるようにし、フロント側第1連通路41a~41eは、フロント側第2連通路66と重ならず、遮蔽部65bとだけ重なるようにしてもよい。
【0102】
また、実施例1~3の圧縮機において、外部から制御弁15への電流のONとOFFとを切り替えて制御圧力を制御する外部制御を行っても良く、外部からの電流に依らずに制御圧力を制御する内部制御を行っても良い。ここで、外部制御を行う場合であって、制御弁15への電流をOFFにすることによって、制御弁15が弁開度を大きくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が大きくなり、制御圧室17aの制御圧力を低くできる。このため、吐出流量が最少流量の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
【0103】
さらに、実施例1~3の圧縮機において、給気通路47aを経てリヤ側吐出室17bから制御圧室17aに導入される冷媒ガスの流量を制御弁15によって変化させる入れ側制御を行っても良い。この場合には、制御圧室17aを迅速に高圧にすることができ、吐出流量を速やかに増大させることができる。ここで、外部制御を行う場合であって、制御弁15への電流をOFFにすることによって、制御弁15が弁開度を小さくするように構成すると、圧縮機の停止時において、弁開度が小さくなり、制御圧室17aの制御圧力を低くできる。このため、吐出流量が最少流量の状態で圧縮機を起動できることから、起動ショックを低減することができる。
【0104】
また、実施例1~3の圧縮機において、制御弁15に換えて、給気通路47aと抽気通路47bとの両者で開度を調整可能な三方弁を採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は車両の空調装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0106】
35a~35e、39a~39e…シリンダボア(35a~35e…リヤ側シリンダボア、39a~39e…フロント側シリンダボア)
21、23…シリンダブロック(21…リヤ側シリンダブロック、23…フロント側シリンダブロック)
17b、19a…吐出室(17b…リヤ側吐出室、19a…フロント側吐出室)
29…斜板室
33a、33b、19c…軸孔(33a…リヤ側軸孔、33b…フロント側軸孔)
1…ハウジング(17…リヤハウジング、19…フロントハウジング)
3…駆動軸
51、53…圧縮室(51…リヤ側圧縮室、53…フロント側圧縮室)
7…ピストン(7a…リヤ側ヘッド、7b…フロント側ヘッド)
9e、11e…吐出弁(吐出リード弁)
O…駆動軸心
55、57、63、65…移動体(55…第1スプール、57…第2スプール、63…枠体、65…シャッタ)
15…制御弁
37a~37e、41a~41e…第1連通路(37a~37e…リヤ側第1連通路、41a~41e…フロント側第1連通路)
3a、3b…軸路(3a…第1軸路、3b…第2軸路)
3c、3e…径路(3c…リヤ側径路、3e…フロント側径路)
32a、32b、34a、34b…案内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図20
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図22
図23