(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】発光モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02212 20210101AFI20230221BHJP
【FI】
H01S5/02212
(21)【出願番号】P 2019183909
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】右田 真樹
【審査官】高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073943(JP,A)
【文献】特開2003-207696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0207458(US,A1)
【文献】特許第5427325(JP,B2)
【文献】特開2018-170454(JP,A)
【文献】特開2018-017989(JP,A)
【文献】国際公開第2019/166575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ素子を基板の上面に実装する工程と、
レンズを有するキャップを、前記基板の上面側において、前記レンズにより前記レーザ素子の出射光がコリメート光になるように位置合わせする工程と、
前記位置合わせする工程の後、前記キャップと前記基板との間の距離に対応する厚さのスペーサを前記基板の上面と前記キャップとの間に挿入し、前記スペーサと前記基板とを接合し、前記スペーサと前記キャップとを接合する工程と、を有する発光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記スペーサを接合する工程は、厚さの異なる複数のスペーサのうち前記キャップと前記基板との間の距離に対応する厚さのスペーサを選択して接合する工程である請求項1に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記複数のスペーサの厚さの違いは5μm以下である請求項2に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記スペーサの前記基板と対向する面および前記キャップと対向する面にはそれぞれ突起が設けられ、
前記スペーサと前記基板、および前記スペーサと前記キャップとはプロジェクション溶接により接合される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記レーザ素子は中赤外光を出射する量子カスケードレーザ素子である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記基板の上面に冷却器を搭載する工程を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記基板、前記スペーサおよび前記キャップは鉄ニッケル合金、鉄ニッケルクロム合金、ステンレスおよび鉄の少なくとも1つを含む請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記レンズはゲルマニウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、シリコン、フッ化カルシウム、カルコゲナイドガラスの少なくとも1つを含む請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の発光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光モジュールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光素子を筐体内に内蔵した発光モジュールが知られている(例えば特許文献1~3など)。発光素子を気密封止し、発光素子から出射される光をレンズによってコリメート光とし、外部に出射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-111237号公報
【文献】米国特許出願公開第2009/0262768号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0222403号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光をコリメート光とするためにレンズと発光素子との位置合わせを行う。しかし、気密封止したパッケージから光を取り出す出射窓とレンズとを別部品とすると、モジュールのコストが増加してしまう。また、レンズの位置を精度良く調整することは困難であった。そこで、低コストかつ位置合わせの信頼性を高めることが可能な発光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る発光モジュールの製造方法は、レーザ素子を基板の上面に実装する工程と、レンズを有するキャップを、前記基板の上面側において、前記レンズにより前記レーザ素子の出射光がコリメート光になるように位置合わせする工程と、前記位置合わせする工程の後、前記キャップと前記基板との間の距離に対応する厚さのスペーサを前記基板の上面と前記キャップとの間に挿入し、前記スペーサと前記基板とを接合し、前記スペーサと前記キャップとを接合する工程と、を有する。
【0006】
本発明に係る発光モジュールは、基板と、前記基板の上面に実装されるレーザ素子と、前記基板の上面に接合されるスペーサと、前記レーザ素子の出射光をコリメート光にするレンズを有し、前記レンズと前記レーザ素子とが対向するように前記スペーサの上面に接合され、前記レーザ素子を封止するキャップと、を具備する。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、低コストかつ位置合わせの信頼性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は実施例1に係る発光モジュールを例示する断面図であり、
図1(b)は発光モジュールを例示する斜視図である。
【
図2】
図2は発光モジュールを例示する斜視図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は発光モジュールの製造方法を例示する断面図である。
【
図5】
図5(a)および
図5(b)は発光モジュールの製造方法を例示する断面図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は発光モジュールの製造方法を例示する断面図である。
【
図7】
図7は発光モジュールの製造方法を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
本願発明の一形態は、(1)レーザ素子を基板の上面に実装する工程と、レンズを有するキャップを、前記基板の上面側において、前記レンズにより前記レーザ素子の出射光がコリメート光になるように位置合わせする工程と、前記位置合わせする工程の後、前記キャップと前記基板との間の距離に対応する厚さのスペーサを前記基板の上面と前記キャップとの間に挿入し、前記スペーサと前記基板とを接合し、前記スペーサと前記キャップとを接合する工程と、を有する発光モジュールの製造方法である。キャップにレンズが設けられているため、発光モジュールの低コスト化が可能である。適切な厚さのスペーサをステムとキャップとに接合することで、レンズの位置合わせの信頼性を高めることができる。
(2)前記スペーサを接合する工程は、厚さの異なる複数のスペーサのうち前記キャップと前記基板との間の距離に対応する厚さのスペーサを選択して接合する工程でもよい。適切な厚さのスペーサをステムとキャップとに接合することで、レンズの位置合わせの信頼性を高めることができる。
(3)前記複数のスペーサの厚さの違いは5μm以下でもよい。複数のスペーサから適切な厚さのスペーサを選択することで、レンズの位置合わせの信頼性を高めることができる。
(4)前記スペーサの前記基板と対向する面および前記キャップと対向する面にはそれぞれ突起が設けられ、前記スペーサと前記基板、および前記スペーサと前記キャップとはプロジェクション溶接により接合されてもよい。プロジェクション溶接によりレーザ素子などの気密封止が可能である。
(5)前記レーザ素子は中赤外光を出射する量子カスケードレーザ素子でもよい。レンズによってレーザ素子の出射光をコリメート光とすることができる。
(6)前記基板の上面に冷却器を搭載する工程を有してもよい。封止された空間内にてレーザ素子を冷却することができる。
(7)前記基板、前記スペーサおよび前記キャップは鉄ニッケル合金、鉄ニッケルクロム合金、ステンレスおよび鉄の少なくとも1つを含んでもよい。基板、スペーサおよびキャップの放熱性が向上する。
(8)前記レンズはゲルマニウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、シリコン、フッ化カルシウム、カルコゲナイドガラスの少なくとも1つを含んでもよい。出射光に対するレンズの吸収率が低いため、出射光の損失を抑制することができる。
(9)基板と、前記基板の上面に実装されるレーザ素子と、前記基板の上面に接合されるスペーサと、前記レーザ素子の出射光をコリメート光にするレンズを有し、前記レンズと前記レーザ素子とが対向するように前記スペーサの上面に接合され、前記レーザ素子を封止するキャップと、を具備する発光モジュールである。キャップにレンズが設けられているため、発光モジュールの低コスト化が可能である。適切な厚さのスペーサをステムとキャップとの間に挿入することで、レンズの位置合わせの信頼性を高めることができる。
【0011】
[本願発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る発光モジュールおよびその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【実施例1】
【0012】
図1(a)は実施例1に係る発光モジュール100を例示する断面図であり、
図1(b)は発光モジュール100を例示する斜視図である。
図2は発光モジュール100を例示する斜視図であり、キャップ12を取り外した状態を示している。
【0013】
図1(a)から
図2に示すように、発光モジュール100はキャン(CAN)型のパッケージであり、ステム10、キャップ12、レーザ素子26およびスペーサ30を有する。ステム10は例えば直径15mmの円形の基板である。XY平面はステム10の面が広がる面である。Z軸方向はステム10、スペーサ30およびキャップ12が重なる方向である。
【0014】
図1(b)および
図2に示すように、ステム10の上面に冷却器20が搭載され、冷却器20の上にはヒートシンク22が搭載されている。ヒートシンク22の表面にはサブマウント24が取り付けられ、サブマウント24の表面にはレーザ素子26およびサーミスタ28が取り付けられている。
【0015】
冷却器20は例えばペルチェ素子を有し、レーザ素子26を冷却する。ヒートシンク22およびサブマウント24は例えば銅(Cu)、窒化アルミニウム(AlN)など熱伝導率の高い材料で形成され、レーザ素子26の熱をステム10に放熱する。サブマウント24にはレーザ素子26およびサーミスタ28に接続される配線が形成されている。レーザ素子26は例えば量子カスケードレーザ(QCL:Quantum Cascade Laser)である。
【0016】
ステム10の上面にスペーサ30を接合し、スペーサ30の上面にキャップ12を接合することで、レーザ素子26などが気密封止される。ステム10の底面からは例えば8本のリードピン14が延伸する。リードピン14は冷却器20、レーザ素子26、およびサーミスタ28などと電気的に接続され、レーザ素子26への電流の入力、冷却器20の駆動、サーミスタ28による温度測定などに用いられる。
【0017】
キャップ12は一方の底面が開口した円筒型の部材であり、ステム10と対向する面にレンズ13を有する。レンズ13は例えばゲルマニウム(Ge)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)、シリコン(Si)、フッ化カルシウム(CaF2)、カルコゲナイドガラスなどで形成されたコリメートレンズであり、レーザ素子26の出射光をコリメート光とする。レンズ13の直径Φは例えば10mmである。レンズ13の最も厚い部分において、レンズ13の厚さT1は6mmであり、レンズ13とレーザ素子26との間の距離D1は例えば3.2mmである。Z軸方向におけるキャップ12の厚さT3は例えば12mmであり、厚さの公差は±0.05mmである。
【0018】
スペーサ30はリング状の部材であり、ステム10とキャップ12との間に設けられる。
図2に示すように、スペーサ30の上面および下面には突起32が設けられている。スペーサ30をステム10およびキャップ12に接合すると、突起32はつぶれる。厚さT2の異なる複数のスペーサ30から1つを選び、接合することで発光モジュール100を製造する。製造方法は後述する。
【0019】
ステム10、キャップ12およびスペーサ30は例えば鉄-ニッケル(Fe-Ni)合金、鉄-ニッケル-コバルト(Fe-Ni-Co)合金、ステンレス、または鉄など金属の母材に、ニッケル(Ni)、またはNi-金(Au)合金などのメッキを施したものである。ステム10、キャップ12およびスペーサ30は例えば同一の材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
【0020】
リードピン14からレーザ素子26に電圧を印加することで、レーザ素子26は波長4~11μm程度の中赤外領域のレーザ光を出射する。レーザ素子26はQCLであり、通信用のレーザ光源などに比べ、駆動には高電流を使用する。このため消費電力が大きくなり、例えば1~3W程度である。レーザ素子26の消費電力に起因して熱が発生する。冷却のために、レーザ素子26とともに冷却器20を気密封止する。
【0021】
図3は光強度を例示する図である。横軸はレーザ素子26を基準とする光の出射角を表し、縦軸はレーザ素子26からの光強度を表す。実線はFFPHを表し、縦軸はFFPVを表す(FFP:Far Field Pattern)。レーザ素子26と正対する方向である出射角0°において光強度は約1であり、出射角が広がると光強度は減衰する。レーザ素子26はQCLであり、他のレーザ素子に比べて放射角が大きい。出射角の絶対値が40~50程度で光強度が1/e
2に減衰する。出射光のロスを抑制するため、レンズ13の直径を10mm程度に大きくし、レンズ13が出射光を多く取り込むことが好ましい。
【0022】
発光モジュール100は例えばガスの分析などに用いられる。レーザ素子26が出射するレーザ光はレンズ13を透過することでコリメート光になり、Z軸方向を伝搬する。レーザ光を、ガスを封入したセルなどを通過させ、サーモパイルなどの受光装置で受光する。こうして得られるスペクトルからガス中の成分分析を行う。感度の向上のため、発光モジュール100から例えば数十mの距離まで良質なコリメート光を出射することが好ましい。良質なコリメート光を得るためには、レーザ素子26とレンズ13との位置合わせが重要である。
【0023】
位置合わせとは、ステム10の広がる方向(X軸方向およびY軸方向)における位置の調整と、高さ方向(Z軸方向)におけるレーザ素子26とレンズ13との間の距離の調整を含む。実施例1では、複数のスペーサ30のうち適切な厚さのスペーサ30を接合することで高さ方向の位置合わせを正確に行う。
【0024】
(製造方法)
図4(a)から
図7は発光モジュール100の製造方法を例示する断面図である。
図4(a)に示すように、ステム10の上面に冷却器20、ヒートシンク22、サブマウント24、レーザ素子26およびサーミスタ28を実装する。例えば、サブマウント24、レーザ素子26およびサーミスタ28が搭載されたヒートシンク22を冷却器20に搭載し、冷却器20を半田などでステム10に固定する。冷却器20、レーザ素子26およびサーミスタ28はワイヤボンディングによりリードピン14と電気的に接続する。レンズ13を有するキャップ12を適切な位置に取り付けることで、レーザ素子26とレンズ13との調芯を行う。
【0025】
図4(b)に示すように、キャップ12をツール40で把持しステム10に近づける。
図5(a)に示すように、キャップ12をステム10の上面に接触させる。
図5(b)に示すように、レーザ素子26から光を出射させ、レンズ13を透過した光を受光装置50で受光する。受光装置50により光の形状をモニタしながら、光がコリメート光になるように、ツール40によりキャップ12のXY平面内の位置およびZ軸方向の位置(高さ)を調整する。記憶装置52は、コリメート光が得られるキャップ12の位置を記憶する。光がコリメート光になる際のステム10の上面とキャップ12の底面との距離をD2とする。
【0026】
図6(a)に示すように、複数のスペーサをあらかじめ準備しておく。3つのスペーサ30a~30cの厚さは互いに異なる。スペーサ30aの厚さT2aはスペーサ30bの厚さT2bより大きい。スペーサ30cの厚さT2cはスペーサ30aの厚さT2aより大きい。複数のスペーサから、
図5(b)の距離D2と同じ厚さを有するものを選択する。この例ではスペーサ30aの厚さT2aが距離D2に等しいものとする。なお、
図6(a)に示すスペーサは3つであるが、スペーサは3つ以下でもよいし3つ以上でもよい。厚さの異なるスペーサを多く準備することが好ましい。例えば、複数のスペーサ30の厚さは5μm間隔で異なる。複数のスペーサ30のうち最大の厚さは400μmであり、最小の厚さは100μmである。
【0027】
図6(b)に示すように、ツール40によりキャップ12をZ軸方向において上昇させる。厚さT2aを有するスペーサ30aをステム10とキャップ12との間に挿入する。記憶装置52に記憶された位置にキャップ12を配置する。
図7に示すようにスペーサ30aの下面の突起32はステム10に接触し、上面の突起32はキャップ12に接触する。ステム10に電極42を接触させる。ツール40からキャップ12にステム10側への圧力をかけ、かつツール40と電極42との間に電流を流す。これによりステム10とスペーサ30a、およびキャップ12とスペーサ30aとのプロジェクション溶接を行う。ステム10、スペーサ30およびキャップ12それぞれの表面のメッキ層が溶融して、接合される。これにより
図1(a)に示すような発光モジュール100が形成される。
【0028】
実施例1によれば、レーザ素子26はステム10に実装され、キャップ12およびスペーサ30により気密封止される。キャップ12とレンズ13とが一体であるため、部品点数の増加およびコストを抑制することができる。
【0029】
図5(b)に示すように光がコリメート光になるようにキャップ12の位置合わせをし、複数のスペーサ30のうち距離D2に対応する厚さを有するスペーサ30aを選択し、ステム10およびキャップ12に接合する。キャップ12を最適な位置で固定することで、位置合わせの信頼性を高めることができる。レンズ13を通してレーザ素子26の光をコリメート光とし、発光モジュール100の外部に出射することができる。
【0030】
例えば5μmごとに厚さの異なる複数のスペーサ30から1つを選択して接合する。適切な厚さのスペーサ30を接合することができ、レンズ13の位置を精度よく定めることができる。厚さの違いは5μm以上でもよいし、5μm以下でもよい。例えば厚さの違いを4μm以下、3μm以下などと小さくすることで、より精密な位置合わせが可能となる。
【0031】
スペーサ30の厚さおよび寸法の公差などに関わらず、レンズ13とレーザ素子26とを離間させる。具体的には、レンズ13とレーザ素子26との間の距離D1は0.5mm以上とする。
【0032】
レーザ素子26は例えば波長4~11μmの中赤外光を出射する量子カスケードレーザである。発光モジュール100は分析用の素子であり、レンズ13によってコリメートされた中赤外帯域の光を出射する。スペーサ30を用いたキャップ12の位置合わせによって、コリメート光を遠方まで出射することができ、分析の精度が向上する。スペーサ30を用いてレンズ13付きのキャップ12の位置合わせを精度高く行うことで、発光モジュール100から数十m先にコリメート光を出射することができる。レーザ素子26は中赤外光以外の光を出射してもよいし、量子カスケードレーザ以外の発光素子でもよい。発光モジュール100は分析以外の用途に用いられてもよい。
【0033】
スペーサ30は上面および下面に突起32を有する。プロジェクション溶接によってスペーサ30をステム10およびキャップ12に接合し、レーザ素子26などを気密封止することができる。レーザ素子26とともに冷却器20を気密封止することで、封止された空間内を冷却し、温度の上昇を抑制することができる。レーザ素子26としてQCLを用いると消費電力が大きくなり発生する熱が増加する。冷却のために冷却器20を設けることが有効である。
【0034】
ステム10、スペーサ30およびキャップ12は、例えばFe-Ni合金、Fe-Ni-Co合金、ステンレスおよび鉄など金属で形成された母材、並びにNiおよびAuなどのメッキ層で形成される。ステム10、スペーサ30およびキャップ12が金属で形成されるため放熱性が向上する。レーザ素子26および冷却器20などが搭載されるステム10は高い放熱性を有することが特に好ましい。ステム10、スペーサ30およびキャップ12の材料は同じでもよいし、異なってもよい。これらが互いに同じ材料で形成されることで、これらの熱膨張係数が同程度になる。したがって温度変化による接合の劣化が抑制され、気密封止は維持される。
【0035】
レンズ13は例えば中赤外光などレーザ素子26の出射光に対する吸収率が低い材料で形成され、例えばGe、ZnSe、ZnS、Si、CaF2、カルコゲナイドガラスなどで形成されたコリメートレンズである。レンズ13付きのキャップ12の位置合わせを正確に行うことで、良質なコリメート光が得られる。レンズ13は他の材料で形成されてもよい。
【0036】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 ステム
12 キャップ
13 レンズ
14 リードピン
20 冷却器
22 ヒートシンク
24 サブマウント
26 レーザ素子
28 サーミスタ
30、30a~30c スペーサ
32 突起
40 ツール
42 電極
50 受光装置
52 記憶装置
100 発光モジュール