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特許7230903交通信号制御装置、交通信号制御方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】交通信号制御装置、交通信号制御方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/08 20060101AFI20230221BHJP
   G08G 1/081 20060101ALI20230221BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20230221BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G08G1/08 A
G08G1/081
G08G1/01 E
G08G1/09 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020502044
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045656
(87)【国際公開番号】W WO2019163261
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2018030896
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】榊原 肇
(72)【発明者】
【氏名】土井 新
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004370(JP,A)
【文献】特開2010-211365(JP,A)
【文献】特開2016-115123(JP,A)
【文献】特開2016-177638(JP,A)
【文献】特開2005-071292(JP,A)
【文献】特開2005-056071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 1/16
B60W 30/14 ~ 30/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御可能な交通信号制御装置であって、
前記対象交差点の流入路を通行中の隊列車両の隊列長と、当該隊列車両の走行予定方路における空きスペース長と、を取得する取得部と、
前記隊列長と前記空きスペース長との比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路に対応する前記下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定する制御部と、を備える交通信号制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記隊列長が前記空きスペース長よりも大きい場合に、
前記下流交差点における前記隊列車両の走行予定方路に対応する信号灯色が通行権なしの灯色であることを条件として、当該走行予定方路に対応する信号灯色を通行権ありの灯色に変化させる請求項1に記載の交通信号制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記隊列長が前記空きスペース長よりも大きい場合に、
前記対象交差点における前記隊列車両の流入方向の信号灯色が通行権なしの灯色であることを条件として、当該流入方向の信号灯色を通行権ありの灯色に変化させる請求項1又は請求項2に記載の交通信号制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記隊列長と前記空きスペース長の比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路における先詰まりの有無を当該隊列車両に通知する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の交通信号制御装置。
【請求項5】
対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御する交通信号制御方法であって、
前記対象交差点の流入路を通行中の隊列車両の隊列長と、当該隊列車両の走行予定方路における空きスペース長と、を取得するステップと、
前記隊列長と前記空きスペース長との比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路に対応する前記下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定するステップと、を含む交通信号制御方法。
【請求項6】
対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御する交通信号制御装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、
前記対象交差点の流入路を通行中の隊列車両の隊列長と、当該隊列車両の走行予定方路における空きスペース長と、を取得する取得部、及び、
前記隊列長と前記空きスペース長との比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路に対応する前記下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定する制御部、として機能させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御可能な交通信号制御装置、交通信号制御方法、及びコンピュータプログラムに関する。
本出願は、2018年2月23日出願の日本出願第2018-030896号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の公共車両が列をなして走行する車両群の先頭車両の位置情報及び車両群の長さを取得する取得部と、取得した情報に基づいて、車両群を構成する公共車両全体に対する優先制御である車両群優先制御を実行可能な制御部と、を備える交通信号制御装置が記載されている。
特許文献1の交通信号制御装置によれば、複数の公共車両で構成される車両群を分断させることなく、当該車両群の交差点通過を優先する優先制御を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-115123号公報
【発明の概要】
【0004】
(1) 本発明の一態様に係る装置は、対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御可能な交通信号制御装置であって、前記対象交差点の流入路を通行中の隊列車両の隊列長と、当該隊列車両の走行予定方路における空きスペース長と、を取得する取得部と、前記隊列長と前記空きスペース長との比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路に対応する前記下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定する制御部と、を備える。
【0005】
(5) 本発明の一態様に係る方法は、対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御する交通信号制御方法であって、前記対象交差点の流入路を通行中の隊列車両の隊列長と、当該隊列車両の走行予定方路における空きスペース長と、を取得するステップと、前記隊列長と前記空きスペース長との比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路に対応する前記下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定するステップと、を含む。
【0006】
(6) 本発明の一態様に係るコンピュータプログラムは、対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御する交通信号制御装置として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータを、前記対象交差点の流入路を通行中の隊列車両の隊列長と、当該隊列車両の走行予定方路における空きスペース長と、を取得する取得部、及び、前記隊列長と前記空きスペース長との比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路に対応する前記下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定する制御部、として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】交通信号制御システムの全体構成を示す道路平面図である。
図2】交通信号制御機の内部構成の一例を示すブロック図である。
図3】中央装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
図4】先詰まり回避制御の一例を示すフローチャートである。
図5】先詰まり回避制御による交通状況の変化の一例を示す説明図である。
図6】先詰まり回避制御による交通状況の変化の別例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示が解決しようとする課題>
隊列して走行する複数の車両(以下、「隊列車両」という。)が交差点を通過した後の走行予定方路に先詰まりがあった場合には、交差点を通過できなくなった隊列車両が交差道路の通行を塞いでしまう可能性がある。特許文献1には、このような先詰まりによる弊害を回避するための制御方法は記載されていない。
本開示は、走行予定方路における先詰まりにより、隊列車両が交差点を通過できなくなるのを未然に回避できる交通信号制御装置等を提供することを目的とする。
【0009】
<本開示の効果>
本開示によれば、走行予定方路における先詰まりにより、隊列車両が交差点を通過できなくなるのを未然に回避することができる。
【0010】
<本発明の実施形態の概要>
以下、本発明の実施形態の概要を列記して説明する。
(1) 本実施形態の交通信号制御装置は、対象交差点と下流交差点の信号灯色を制御可能な交通信号制御装置であって、前記対象交差点の流入路を通行中の隊列車両の隊列長と、当該隊列車両の走行予定方路における空きスペース長と、を取得する取得部と、前記隊列長と前記空きスペース長との比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路に対応する前記下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定する制御部と、を備える。
【0011】
本実施形態の交通信号制御装置によれば、制御部が、隊列長と空きスペース長との比較結果に応じて、隊列車両の走行予定方路に対応する下流交差点の信号灯色を制御するか否かを決定するので、走行予定方路における先詰まりにより、隊列車両が対象交差点を通過できなくなるのを未然に回避することができる。
【0012】
(2) 具体的には、前記制御部は、前記隊列長が前記空きスペース長よりも大きい場合に、前記下流交差点における前記隊列車両の走行予定方路に対応する信号灯色が通行権なしの灯色であることを条件として、当該走行予定方路に対応する信号灯色を通行権ありの灯色に変化させる。
このようにすれば、先詰まりの原因が下流交差点での信号待ちである場合に、当該先詰まりを早期に解消でき、隊列車両が対象交差点を通過できるようになる。
【0013】
(3) 本実施形態の交通信号制御装置において、前記制御部は、前記隊列長が前記空きスペース長よりも大きい場合に、前記対象交差点における前記隊列車両の流入方向の信号灯色が通行権なしの灯色であることを条件として、当該流入方向の信号灯色を通行権ありの灯色に変化させることが好ましい。
このようにすれば、対象交差点の交差道路に存在する他の車両が、走行予定方路に流入して先詰まりを助長するのを防止することができる。
【0014】
(4) 本実施形態の交通信号制御装置において、前記制御部は、前記隊列長と前記空きスペース長の比較結果に応じて、前記隊列車両の走行予定方路における先詰まりの有無を当該隊列車両に通知することが好ましい。
このようにすれば、隊列車両のドライバが、隊列車両が対象交差点を通過する前に走行予定方路における先詰まりの有無を事前に察知できる。このため、隊列車両のドライバが対象交差点の通過可否を適切に判断できるようになる。
【0015】
(5) 本実施形態の交通信号制御方法は、上述の(1)~(4)の交通信号制御装置が実行する制御方法である。
従って、本実施形態の交通信号制御方法は、上述の(1)~(4)の交通信号制御装置と同様の作用効果を奏する。
【0016】
(6) 本実施形態のコンピュータプログラムは、上述の(1)~(4)の交通信号制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
従って、本実施形態のコンピュータプログラムは、上述の(1)~(4)の交通信号制御装置と同様の作用効果を奏する。
【0017】
<本発明の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0018】
本実施形態では、信号灯器の灯色は、日本の法令に準拠している。従って、信号灯器の灯色には、青色(実際には青緑色)、黄色及び赤色が含まれる。
青色は、車両が交差点を直進、左折又は右折できることを示す。黄色は、車両が停止位置を超えて進行してはならない(ただし、停止位置で安全に停止できない場合を除く。)ことを示す。赤色は、車両が停止位置を超えて進行してはならないことを示す。
【0019】
従って、青色は、交差点の流入路を走行中の車両に、当該交差点の通行権があることを示す灯色である。赤色は、交差点の流入路を走行中の車両に、当該交差点の通行権がないことを示す灯色である。黄色は、原則として、通行権がないことを示す灯色であるが、停止位置で安全に停止できない場合は、通行権があることを示す灯色である。
なお、通行権ありの灯色(日本の青色)を緑色と表現する国もあり、原則として通行権なしの灯色(日本の黄色)をオレンジ色又は琥珀色と表現する国もある。
【0020】
〔システムの全体構成)
図1は、本実施形態に係る交通信号制御システムの全体構成を示す道路平面図である。
図1に示すように、本実施形態の交通信号制御システムは、交通信号制御機1、信号灯器2、路側通信機3、中央装置4、及び車両5に搭載された車載装置6などを備える。
【0021】
車両5には、近接した車間距離で隊列を組んで走行する、複数(図1の例では4台)の車両5A~5Dよりなる隊列車両5Pが含まれる。
車両5A~5Dは、例えば、トラック及びバスなどの大型車両よりなるが、タクシーなどの乗用車でもよい。また、隊列車両5Pは、異なる種類の車両5A~5Dの組み合わせであってもよい。
【0022】
後続車両5B~5Cは、CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)により厳密な車間距離で前方車に追従可能である。
本実施形態では、隊列車両5Pの先頭車両5Aが有人車であり、後続車両5B~5Dが無人車である場合を想定する。もっとも、後続車両5B~5Dは有人車でもよい。
【0023】
交通信号制御機1は、交差点Jに設置された複数の信号灯器2と電力線を介して接続されている。交通信号制御機1は、交通管制センターなどに設置された中央装置4と専用の通信回線を介して接続されている。
中央装置4は、自身の管轄エリア内にある複数の交差点Jの交通信号制御機1とローカルエリアネットワークを構成する。従って、中央装置4は、複数の交通信号制御機1と通信可能であり、交通信号制御機1は、他の交差点Jの制御機1と通信可能である。
【0024】
中央装置4は、車両感知器及び画像感知器7(図5及び図6参照)などの路側センサが計測するセンサ情報を所定周期(例えば1分)ごと受信し、受信したセンサ情報に基づいてリンク旅行時間などの交通指標を所定周期(例えば2.5分)ごとに算出する。
中央装置4は、算出した交通指標に基づいて各交差点Jの信号制御パラメータ(スプリット、サイクル長及びオフセット等)を調整する交通感応制御を行うことができる。
【0025】
例えば、中央装置4は、自身の管轄エリアに属する交通信号制御機1に対して、系統区間に含まれる複数の交差点Jのオフセットを調整する系統制御や、系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を実行可能である。
中央装置4は、特定の交差点Jにおける端末感応制御の許否を含む制御種別情報を、管轄エリア内の交通信号制御機に通知することもできる。
【0026】
交通信号制御機1は、中央装置4から受信した制御種別情報に、端末感応制御を許容する識別情報が含まれる場合には、自機が担当する交差点Jについて、PTPS(Public Transportation Priority System)などの所定の端末感応制御を実行する。
交通信号制御機1は、中央装置4から受信した信号制御パラメータに基づいて、信号灯器2の点灯、消灯及び点滅などを制御する。交通信号制御機1は、端末感応制御を実行する場合には、その制御結果に応じて信号灯器2の灯色を切り替えることもできる。
【0027】
交通信号制御機1は、路側通信機3と所定の通信回線で繋がっている。従って、交通信号制御機1は、中央装置4と路側通信機3との通信の中継装置としても機能する。
路側通信機3は、ITS(Intelligent Transport Systems)無線システム、無線LAN、或いはLTE(Long Term Evolution)などの、所定の通信規格に準拠した中・広域の無線通信機である。従って、路側通信機3は、道路を通行中の車両5の車載装置6との無線通信が可能である。
【0028】
路側通信機3は、ダウンリンク情報を車載装置6に無線送信する。路側通信機3は、中央装置4が生成した渋滞情報や、交通信号制御機1が生成した信号情報(信号灯色の切り替え情報)などをダウンリンク情報に含めることができる。
車載装置6は、路側通信機3の通信領域(例えば交差点Jから上流側に約300m以内の領域)に入ると、路側通信機3からダウンリンク情報を受信する。
【0029】
車載装置6は、所定の送信周期(例えば、100m秒)でアップリンク情報を路側通信機3に送信する。アップリンク情報には、車両5の走行軌跡を表すプローブデータなどが含まれる。プローブデータには、車両ID、データ生成時刻、車両位置、車両速度、及び車両方位などが含まれる。
【0030】
路側通信機3は、隊列車両5P向けの提供情報として、隊列車両5Pの走行予定方路における先詰まりの有無に関するメッセージを、ダウンリンク情報に含めることもできる。本実施形態では、中央装置4が先詰まりの有無に関するメッセージを生成する。
隊列車両5Pの車載装置6が送信するプローブデータには、先頭車両5Aの車両ID、車両速度、車両方位、隊列先頭位置(先頭車両5Aの前端位置)、隊列長、走行予定方路、及び設定減速度(定数)などが含まれる。
【0031】
隊列長は、例えば、隊列先頭位置(先頭車両5Aの前端位置)から隊列末端位置(最後尾車両5Dの後端位置)までの長さである。隊列長は、隊列先頭位置から最後尾車両5Dの前端位置までの長さでもよい。
先頭車両5Aの車載装置6は、自車両5Aと車車間通信する後続車両5B~5Dの台数から、隊列車両5Pを構成する車両台数(図例では4台)を特定し、特定した台数、車長及び車間距離に基づいて隊列長を算出する。車載装置6は、算出した隊列長の値をプローブデータに含める。
【0032】
走行予定方路とは、隊列車両5Pが交差点Jの通過後にどの方路に進行するかを表す情報である。走行予定方路は、例えば、交差点Jに繋がる道路リンクの識別情報よりなる。
先頭車両5Aの車載装置6は、自車両のナビゲーション装置(図示せず)が算出した走行予定経路を道路地図データとマップマッチングすることにより、交差点Jを通過後の道路リンクを割り出し、当該道路リンクの識別情報をプローブデータに含める。
【0033】
設定減速度は、ブレーキが効き始めてから安全に停止するまでの減速度の代表値(例えば平均値)である。一般に、車両5は重量が大きいほど停止し難い。
このため、隊列車両5Pの構成車両がトラックなどの運搬車両である場合には、積載量に応じて異なる設定減速度の値を採用してもよい。この場合、例えば、積載量が多いほど設定減速度の値を段階的に小さくすればよい。
【0034】
〔交通信号制御機の構成〕
図2は、交通信号制御機1の内部構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、交通信号制御機1は、制御部101、灯器駆動部102、通信部103、及び記憶部104を備える。
【0035】
制御部101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成され、内部バスを介して灯器駆動部102、通信部103及び記憶部104と接続されている。制御部101はこれらのハードウェア各部の動作を制御する。
【0036】
制御部101は、通常、中央装置4が交通感応制御に基づいて決定した信号制御パラメータに従って信号灯器2の灯色切り替えタイミングを決定する。
制御部101は、中央装置4からの制御種別情報により端末感応制御が許可されている場合には、自装置で行う端末感応制御の結果に従って、信号灯器2の灯色切り替えタイミングを決定することもできる。
【0037】
灯器駆動部102は、半導体リレー(図示省略)を備え、制御部101が決定した信号切り替えタイミングに基づいて、信号灯器2の各信号灯に供給する交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
【0038】
通信部103は、中央装置4や路側通信機3との間で有線通信を行う通信インタフェースである。通信部103は、中央装置4から信号制御パラメータを受信すると、当該パラメータを制御部101に送る。通信部103は、中央装置4から車両向けの提供情報を受信すると、当該提供情報を路側通信機3に送信する。
通信部103は、隊列車両5Pを含む車両5のプローブデータを、路側通信機3からほぼリアルタイム(例えば、0.1~1.0秒周期)で受信する。
【0039】
記憶部104は、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体から構成されている。記憶部104は、通信部103が受信した各種の情報(信号制御パラメータやプローブデータなど)を一時的に記憶する。
記憶部104は、制御部101が端末感応制御などを実現するためのコンピュータプログラムも記憶している。
【0040】
〔中央装置の構成〕
図3は、中央装置4の内部構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、中央装置4は、制御部401、通信部(取得部)402、及び記憶部403を備える。
【0041】
制御部401は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる。制御部401は、交通信号制御機1や路側通信機3から各種の情報を収集、処理(演算)及び記録し、信号制御及び情報提供などを統括的に行う。
制御部401は、内部バスを介して上記のハードウェア各部と繋がっており、これら各部の動作も制御する。
【0042】
通信部402は、通信回線を介してLAN側と接続された通信インタフェースである。通信部402は、交差点Jの信号灯器2の信号制御パラメータを所定周期(例えば、1.0~2.5分)ごとに交通信号制御機1に送信する。
通信部402は、自装置が行う交通感応制御(中央感応制御)に必要な、路側通信機3が取得したプローブデータを交通信号制御機1から受信し、信号制御パラメータや制御種別情報などを交通信号制御機1に送信する。
【0043】
図1の例では、中央装置4の通信部402は、路側通信機3からアップリンク送信されたプローブデータを、交通信号制御機1を介して受信する。もっとも、通信部402は、路側通信機3と直接通信を行うことによりプローブデータを受信してもよい。
通信部402は、隊列車両5Pに対する提供情報を生成するのに必要な情報(隊列長及び走行予定方路など)を取得するための取得部として機能する。
【0044】
記憶部403は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、後述する先詰まり回避制御(図4)を実行するコンピュータプログラムを記憶している。
記憶部403は、階梯(ステップ)ごとの信号灯色及び階梯秒数を含む階梯情報や、交差点Jの位置など、先詰まり回避制御の実行に必要な情報を記憶している。
記憶部403は、制御部401が生成した信号制御パラメータ、路側通信機3から受信したプローブデータなどを一時的に記憶する。
【0045】
制御部401は、上記のコンピュータプログラムを記憶部403から読み出して情報処理を行うことにより、隊列車両5Pが走行予定方路の先詰まりによって交差点J1を通行できなくなるのを防止するための「先詰まり回避制御」を実行する。以下、この制御の内容を説明する。
【0046】
〔先詰まり回避制御〕
図4は、先詰まり回避制御の一例を示すフローチャートである。
図4において、「交差点J1」は、先詰まり回避制御が実行される対象交差点であり、「交差点J2」は、交差点J1の下流側に隣接する下流交差点である。なお、交差点J2は、1つであってもよいし一連の複数の交差点であってもよい。
【0047】
図4に示すように、中央装置4の制御部401は、隊列車両5Pが交差点J1の流入路を通行中であることを条件として(ステップST10)、ステップS11以後の処理を実行する。「通行中」には、隊列車両5Pが交差点J1の手前で停止中の場合も含まれる。
隊列車両5Pが交差点J1の流入路を通行中であるか否かは、例えば、先頭車両5Aの車両位置、車両速度、及び車両方位などから判定することができる。
【0048】
隊列車両5Pが交差点J1の流入路を通行中である場合、制御部401は、隊列車両5Pの走行予定方路の空きスペース長Lfと、隊列車両5Pの隊列長Lpを取得する(ステップST11)。具体的には、制御部401は、隊列車両5Pの走行予定方路と隊列長Lpを、先頭車両5Aが送信元のプローブデータから抽出する。
また、制御部401は、交差点J1の近傍に設置された画像感知器7(図5及び図6)から受信した画像データに基づいて、走行予定方路の空きスペース長Lfを算出する。
【0049】
次に、制御部401は、走行予定方路の空きスペース長Lfが隊列車両5Pの隊列長Lpよりも大きいか否かを判定する(ステップST12)。
ステップST12の判定結果が肯定的である場合は、制御部401は、先詰まりなしを通知する「第1メッセージ」を生成して路側通信機3に送信する(ステップST16)。従って、第1メッセージは路側通信機3によりダウンリンク送信される。
【0050】
第1メッセージを受信した先頭車両5Aの車載装置6は、第1メッセージの内容を車内の表示装置又は音声出力装置などから運転者に報知する。
これにより、先頭車両5Aの運転者は、先詰まりにより交差点J1の通過が阻害される交通状況ではないことを、交差点J1の手前で事前に察知することができる。
【0051】
ステップST12の判定結果が肯定的である場合は、制御部401は、後述のステップST14及びST15を実行せずに処理を終了する。
ステップST12の判定結果が否定的である場合は、制御部401は、先詰まりありを通知する「第2メッセージ」を生成して路側通信機3に送信する(ステップST13)。従って、第2メッセージは路側通信機3によりダウンリンク送信される。
【0052】
第2メッセージを受信した先頭車両5Aの車載装置6は、第2メッセージの内容を車内の表示装置又は音声出力装置などから運転者に報知する。
これにより、先頭車両5Aの運転者は、先詰まりにより交差点J1の通過が阻害される交通状況であることを、交差点J1の手前で事前に察知することができる。
【0053】
ステップST12の判定結果が否定的である場合は、制御部401は、交差点J2が赤信号であることを条件として、交差点J2を青信号に変更する(ステップST14)。具体的には、制御部401は、隊列車両5Pの走行予定方路が流入側となる方向の信号灯色を青にするように、交差点J2の交通信号制御機1に指示する。
これにより、先詰まりの原因が下流側の交差点J2での信号待ちである場合に、当該先詰まりを早期に解消できるようになる。
【0054】
ステップST12の判定結果が否定的である場合は、制御部401は、交差点J1が赤信号であることを条件として、交差点J1を青信号に変更する(ステップST15)。具体的には、制御部401は、隊列車両5Pの流入方向の信号灯色を青にするように、交差点J1の交通信号制御機1に指示する。
これにより、交差点J1の交差道路に存在する他の車両5が、走行予定方路に流入して先詰まりを助長するのを防止することができる。
【0055】
〔交通状況の変化の具体例〕
図5は、先詰まり回避制御による交通状況の変化の一例を示す説明図である。
図5の例では、隊列車両5Pは、対象交差点J1に向かって右側に走行中であり、隊列車両5Pの走行予定方路は、直進方向であるとする。時点t1では、対象交差点J1は「青信号」であり、下流交差点J2は「赤信号」であるとする。
【0056】
図5に示すように、走行予定方路の空きスペースLfが隊列長Lpより短い場合(ステップS20:先詰まりを検知)は、中央装置4の制御部401は、隊列車両5Pに先詰まりありを通知する(ステップS21)。これにより、隊列車両5Pは、青信号であっても対象交差点J1の手前で停止する。
【0057】
先詰まりを検知(ステップS20)すると、中央装置4の制御部401は、下流交差点J2が赤信号から青信号になるように制御する(ステップS22)。従って、下流交差点J2の信号待ちが原因である先詰まりが徐々に解消され始める。
【0058】
時点t1から所定時間経過後の時点t2において、空きスペースLfが隊列長Lpより長くなった場合(ステップS23:空きスペースを検知)は、中央装置4の制御部401は、隊列車両5Pに先詰まりなしを通知する(ステップS24)。
これにより、隊列車両5Pは、時点t2から所定時間経過後の時点t3において、対象交差点J1を通過し、下流交差点J2に向かって走行し始める。
【0059】
図6は、先詰まり回避制御による交通状況の変化の別例を示す説明図である。
図6の例では、隊列車両5Pは、対象交差点J1の停止線で停止中であり、隊列車両5Pの走行予定方路は、直進方向であるとする。時点t1では、対象交差点J1は「赤信号」であり、下流交差点J2は「赤信号」であるとする。
【0060】
図6に示すように、走行予定方路の空きスペースLfが隊列長Lpより短い場合(ステップS30:先詰まりを検知)は、中央装置4の制御部401は、隊列車両5Pに先詰まりありを通知する(ステップS31)。これにより、隊列車両5Pは、時点t1の直後に青信号に変わっても、対象交差点J1の手前で停止し続ける。
【0061】
先詰まりを検知(ステップS30)すると、中央装置4の制御部401は、下流交差点J2が赤信号から青信号になるように制御する(ステップS32)。従って、下流交差点J2の信号待ちが原因である先詰まりが徐々に解消され始める。
【0062】
先詰まりを検知(ステップS30)すると、中央装置4の制御部401は、対象交差点J1についても赤信号から青信号になるように制御する(ステップS33)。
このため、対象交差点J1の交差道路に存在する車両5が、隊列車両5Pの走行予定方路に進入できなくなり、走行予定方路における先詰まりの助長が防止される。
【0063】
時点t1から所定時間経過後の時点t2において、空きスペースLfが隊列長Lpより長くなった場合(ステップS34:空きスペースを検知)は、中央装置4の制御部401は、隊列車両5Pに先詰まりなしを通知する(ステップS35)。
これにより、隊列車両5Pは、時点t2から所定時間経過後の時点t3において、対象交差点J1を通過し、下流交差点J2に向かって走行し始める。
【0064】
〔その他の変形例〕
今回開示した実施形態(変形例を含む。)はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
上述の実施形態では、中央装置4の制御部401が先詰まり回避制御(図4)を実行するが、交通信号制御機1や路側通信機3などのその他の路側装置が、先詰まり回避制御を実行してもよい。
すなわち、先詰まり回避制御を実行する制御装置は、中央装置4,交通信号制御機1及び路側通信機3のうちのいずれであってもよい。
【0066】
上述の実施形態において、交通信号制御機1、中央装置4及び車載装置6は、第5世代移動体通信システム(5G)に則った通信機能を有する装置であってもよい。
この場合、中央装置4をコアサーバよりも低遅延のエッジサーバとすれば、中央装置4と車載装置6との間の通信遅延を短縮できる。このため、中央装置4が、よりリアルタイム性の高い交通信号制御をプローブデータに基づいて実行できるようになる。
【0067】
上述の実施形態では、隊列車両5Pの走行予定方路が直進方向である場合、すなわち、隊列車両5Pの流入路と走行予定方路が同じ方向である場合を例示したが、これに限定されない。
具体的には、隊列車両5Pの走行予定方路は、隊列車両5Pの流入路に対して交差する方向(例えば、左折方向又は右折方向)であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 交通信号制御機(交通信号制御装置)
2 信号灯器
3 路側通信機(交通信号制御装置)
4 中央装置(交通信号制御装置)
5 車両
5A 先頭車両
5B~5D 後続車両
5P 隊列車両
6 車載装置
7 画像感知器
101 制御部
102 灯器駆動部
103 通信部
104 記憶部
401 制御部
402 通信部(取得部)
403 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6