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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】モータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20230221BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H02K11/33 ZHV
H02K5/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020516124
(86)(22)【出願日】2019-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2019013064
(87)【国際公開番号】W WO2019208069
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018084484
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】宮田 陽平
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100611(JP,A)
【文献】特開2017-60225(JP,A)
【文献】特開2004-162618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延びるモータシャフトを有するモータと、
前記モータに電力を供給するインバータと、
前記モータを内部に支持するハウジングと、
前記ハウジングの前記第1方向と直交する第2方向の一方側に固定され、前記インバータを収容するインバータケースと、
前記ハウジングと前記インバータケースとを締結する複数のボルトと、
を備え、
前記複数のボルトは、
前記第1方向に沿って延びる第1ボルトと、
前記第2方向に沿って延びる第2ボルトと、
前記第1方向および前記第2方向の両方と直交する第3方向に沿って延びる第3ボルトと、
前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向の全てと交差する第4方向に延びる第4ボルトと、
を含む、
モータユニット。
【請求項2】
前記第4ボルトは、前記インバータケースの上端部に位置する、
請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
前記第1ボルトおよび前記第2ボルトは前記インバータケースの下端部に位置し、
前記第3ボルトは、前記インバータケースの上端部に位置する、
請求項2に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記第4ボルトは、前記第2方向他方側に向かうに従って下側へ延びる、
請求項2または3に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記インバータケースの上端部に、前記第1方向に間を空けて、2本の前記第4ボルトが配置され、
前記インバータケースの下端部における前記2本の第4ボルトの間の領域に1本の前記第2ボルトが配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記ハウジングは、前記モータを内部に支持し軸方向に延びる筒状のモータ収容部と、
前記モータ収容部から前記モータシャフトの径方向外側に突出する張出部と、を有し、
前記インバータケースは、軸方向に見て、前記張出部の少なくとも一部と重なり、
前記第1ボルトは、前記インバータケースと、前記張出部とを締結し、
前記第2ボルト、前記第3ボルト、および前記第4ボルトは、前記インバータケースの第2方向他方側の端部と、前記モータ収容部とを締結する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記インバータケースは、前記モータの後方に配置され、
前記ハウジングは、ドライブシャフトが通過する車軸通過孔を有し、
側面視において、
前記車軸通過孔は、前記インバータケースと車両前後方向の少なくとも一部が重なり、
前記車軸通過孔は、前記インバータケースの下側に位置する
請求項1から6のいずれか1項に記載のモータユニット。
【請求項8】
前記インバータケースの後端は、前記車軸通過孔の後端よりも後方に位置する、請求項7に記載のモータユニット。
【請求項9】
前記モータは、
モータ軸を中心として回転するロータと、
前記ロータの径方向外側に位置するステータと、を備え、
前記車軸通過孔と前記ステータとは、上下方向の位置が重なる、
請求項7または8に記載のモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットに関する。本出願は、2018年4月25日に提出された日本特許出願第2018-084484号に基づいている。本出願は、当該出願に対して優先権の利益を主張するものである。その内容全体は、参照されることによって本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
インバータケースがハウジングに固定されるモータ駆動ユニットが知られる。例えば、日本国公開公報2011-10383号公報には、インバータケースとハウジングとが締結ピンによって固定されるモータ駆動ユニットが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公開公報2011-10383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなモータ駆動ユニットにおいては、インバータケースがハウジングの鉛直方向上側に配置されるため、モータ駆動ユニットが鉛直方向に大型化する問題があった。これに対して、鉛直方向と直交する水平方向においてハウジングの一方側にインバータケースを固定することが考えられる。しかし、この場合、インバータケースがハウジングによってほぼ片持ち状態で支持されるため、インバータケースとハウジングとの連結部に大きな力が掛かりやすい。そのため、インバータケースとハウジングとが強固に固定される必要がある。
【0005】
本発明は、インバータケースとハウジングとが強固に固定されるモータユニットを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様のモータユニットは、第1方向に沿って延びるモータシャフトを有するモータと、前記モータに電力を供給するインバータと、前記モータを内部に支持するハウジングと、前記ハウジングの前記第1方向と直交する第2方向の一方側に固定され、前記インバータを収容するインバータケースと、前記ハウジングと前記インバータケースとを締結する複数のボルトと、を備える。前記複数のボルトは、前記第1方向に沿って延びる第1ボルトと、前記第2方向に沿って延びる第2ボルトと、前記第1方向および前記第2方向の両方と直交する第3方向に沿って延びる第3ボルトと、前記第1方向、前記第2方向および前記第3方向の全てと交差する第4方向に延びる第4ボルトと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、インバータケースとハウジングとが強固に固定されるモータユニットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のモータユニットの斜視図である。
図2図2は、実施形態のモータユニットにおいてインバータユニットを取り外した状態を示す斜視図である。
図3図3は、インバータユニットを後方から見た斜視図である。
図4図4は、インバータユニットを前方から見た斜視図である。
図5図5は、実施形態のモータユニットの部分側面図である。
図6図6は、実施形態のモータユニットの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータユニットについて説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
以下の説明では、モータユニット1が水平な路面上に位置する車両に搭載された場合の位置関係を基に、重力方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、鉛直方向(すなわち上下方向)を示し、+Z方向が上側(重力方向の反対側)であり、-Z方向が下側(重力方向)である。また、X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であってモータユニット1が搭載される車両の前後方向を示し、+X方向が車両前方であり、-X方向が車両後方である。ただし、+X方向が車両後方であり、-X方向が車両前方となることもありうる。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の幅方向(左右方向)を示し、+Y方向が車両左方であり、-Y方向が車両右方である。但し、+X方向が車両後方となる場合には、+Y方向が車両右方であり、-Y方向が車両左方となることもありうる。
【0011】
以下の説明において特に断りのない限り、モータ2のモータ軸J1に平行な方向(Y軸方向)を単に「軸方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、モータ軸J1を中心とする周方向、すなわち、モータ軸J1の軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、X軸方向と平行な方向を「前後方向」と呼ぶ。X軸方向の正の側を「前側」と呼び、X軸方向の負の側を「後側」と呼ぶ。Y軸方向の正の側を「左側」と呼び、Y軸方向の負の側を「右側」と呼ぶ。
【0012】
本実施形態において、軸方向、すなわち車両の幅方向は、第1方向に相当する。前後方向は、第2方向に相当する。鉛直方向は、第3方向に相当する。左側は、第1方向一方側に相当し、右側は、第1方向他方側に相当する。後側は、第2方向一方側に相当し、前側は、第2方向他方側に相当する。下側は、第3方向一方側に相当し、上側は、第3方向他方側に相当する。
【0013】
以下、図面を基に本発明の例示的な一実施形態に係るモータユニット(電動駆動装置)1について説明する。
図1は、本実施形態のモータユニット1の斜視図である。図2は、本実施形態のモータユニット1においてインバータユニット8を取り外した状態を示す斜視図である。図3は、インバータユニット8を後方から見た斜視図である。図4は、インバータユニット8を前方から見た斜視図である。図5は、本実施形態のモータユニット1の部分側面図である。図6は、本実施形態のモータユニット1の部分正面図である。
【0014】
モータユニット1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0015】
図1に示すように、モータユニット1は、モータ(メインモータ)2と、ギヤ部3と、モータ2およびギヤ部3を収容するハウジング6と、ハウジング6に固定されるインバータユニット8と、を備える。
【0016】
モータ2は、図1および図6に示すように、水平方向に延びるモータ軸J1を中心として回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側に位置するステータ30と、を備える。ハウジング6は、モータ2を内部に収容する。すなわちハウジング6は、モータ2を内部に支持する。
ギヤ部3は、本実施形態の場合、図示しない減速装置および差動装置を有する。モータ2のモータシャフト21は、減速装置に連結される。差動装置は、減速装置に接続される。差動装置は、減速装置を介してモータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達する。減速装置および差動装置はハウジング6に収容される。
【0017】
図2に示すように、ハウジング6は、第1のハウジング部材61と、第2のハウジング部材62と、閉塞部63と、を有する。第2のハウジング部材62は、第1のハウジング部材61の左側(+Y方向)に位置する。閉塞部63は、第1のハウジング部材61に対して右側(-Y方向)に位置する。なお、ハウジング6は、3つ以上の部材で構成されてもよい。
【0018】
第1のハウジング部材61は、モータ2を内部に収容する筒状の周壁部61aと、周壁部61aの軸方向一方側に位置する側板部61bと、有する。第1のハウジング部材61は、周壁部61aの後側の面に第1開口孔61cを有する。すなわち、ハウジング6は、第1開口孔61cを有する。第1開口孔61cは、周壁部61aの後側の壁部を前後方向に貫通し、後側に開口する。第1開口孔61cは、後側から見て、軸方向に長い長円状である。
【0019】
側板部61bは、周壁部61aに対して径方向外側に突出する。側板部61bは、車輪を支持するドライブシャフト(図示略)が通過する第1の車軸通過孔61dを有する。第1の車軸通過孔61dは、側板部61bを軸方向に貫通する。
【0020】
閉塞部63は、第1のハウジング部材61の周壁部61aに固定される。閉塞部63は、筒状の第1のハウジング部材61の右側の開口を塞ぐ。閉塞部63は、閉塞部本体63aと、蓋部材63bと、を有する。閉塞部本体63aには、軸方向に貫通する窓部が設けられる。蓋部材63bは、閉塞部本体63aの窓部を外側から塞ぐ。
【0021】
第2のハウジング部材62は、第1のハウジング部材61の側板部61bに固定される。第2のハウジング部材62の形状は、側板部61b側に開口する凹形状である。第2のハウジング部材62の開口は、側板部61bに覆われる。第2のハウジング部材62と側板部61bの間との空間は、ギヤ部3を収容するギヤ室を構成する。すなわち、第2のハウジング部材62は、減速装置および差動装置を収容する。第2のハウジング部材62には、図示されない第2の車軸通過孔が設けられる。第2の車軸通過孔は、軸方向から見て第1の車軸通過孔61dと重なる。図示しない車両の車軸は、第1の車軸通過孔61dと第2の車軸通過孔を通って第2のハウジング部材62を貫通する。
【0022】
第1のハウジング部材61の周壁部61aと閉塞部63とは、モータ2を収容するモータ室を構成する。すなわち、周壁部61aと閉塞部63とは、図1に示すモータ収容部6aを構成する。
同様に、第1のハウジング部材61の側板部61bと第2のハウジング部材62とは、ギヤ部3を収容するギヤ室を構成する。すなわち、側板部61bと第2のハウジング部材62とは、図1に示すギヤ収容部6bを構成する。
このように、ハウジング6は、モータ2を収容するモータ室を内部に有するモータ収容部6aと、ギヤ部3を収容するギヤ室を内部に有するギヤ収容部6bと、を有する。ギヤ収容部6bは、軸方向から見て、モータ収容部6aの径方向外側に張り出す張出部6cを有する。すなわち、ハウジング6は、モータ収容部6aの径方向外側に張り出す張出部6cを有する。
【0023】
図2に示すように、ハウジング6は、インバータユニット8を固定するボルトが締結される複数の締結部を有する。具体的に、ハウジング6は、第1締結部11、第2締結部12、第3締結部13a、13b、13c、第4締結部14a、14b、および第5締結部15を有する。
【0024】
第1締結部11は、側板部61bの後端部に位置する。第1締結部11は、右側(-Y側)へ開口し軸方向に延びるネジ穴51を有する。第1締結部11の右側を向く面は、ネジ穴51の開口部から軸方向と直交する方向に広がる平坦面とされる。
【0025】
第2締結部12は、周壁部61aの後側の面に位置する。第2締結部12は、第1開口孔61cの下側に位置する。第2締結部12は、後側へ開口し前後方向に延びるネジ穴52を有する。第2締結部12の後側を向く面は、ネジ穴52の開口部から前後方向と直交する方向に広がる平坦面とされる。
【0026】
第3締結部13a、13b、13cは、周壁部61aの後側の上端部に位置する。第3締結部13a、13b、13cは、この順に、左側から右側に軸方向に沿ってほぼ等間隔に配置される。第3締結部13aは、上側へ開口し下方向に延びるネジ穴53aを有する。第3締結部13aの上側を向く面は、ネジ穴53aの開口部から水平方向に広がる平坦面とされる。第3締結部13b、13cは、第3締結部13aと同様に、それぞれネジ穴53b、53cを有する。第3締結部13b、13cの上側を向く面は、それぞれ、ネジ穴53b、53cの開口部から水平方向に広がる平坦面とされる。
【0027】
第4締結部14aは、周壁部61aの左後ろ側の端部に位置する。第4締結部14aは、第3締結部13aの左側に隣接して配置される。第4締結部14aは、後方斜め上側へ開口し前方斜め下方向に延びるネジ穴54aを有する。第4締結部14aの後方斜め上側を向く面は、ネジ穴54aの開口部からネジ穴54aの延びる方向と直交する方向へ広がる平坦面とされる。
【0028】
第4締結部14bは、周壁部61aの右後ろ側の端部に位置する。第4締結部14bは、第3締結部13cの右側に隣接して配置される。第4締結部14bは、後方斜め上側へ開口し前方斜め下方向に延びるネジ穴54bを有する。第4締結部14bの後方斜め上側を向く面は、ネジ穴54bの開口部からネジ穴54bの延びる方向と直交する方向へ広がる平坦面とされる。
【0029】
第5締結部15は、第2のハウジング部材62の後側の面に位置する。第5締結部15は、後側へ開口し前後方向に延びる2つのネジ穴55を有する。第5締結部15の後側を向く面は、2つのネジ穴55の開口部から前後方向と直交する方向に広がる平坦面とされる。
【0030】
インバータユニット8は、モータ2と電気的に接続される。インバータユニット8は、モータ2に供給される電流を制御する。図1に示すように、インバータユニット8は、ハウジング6に固定される。より具体的には、インバータユニット8は、モータ収容部6aの径方向外側を向く外周面に固定される。
【0031】
インバータユニット8は、軸方向から見て、少なくとも一部がギヤ収容部6bの張出部6cに重なる。本実施形態によれば、軸方向から見て、インバータユニット8を張出部6cに重ねて配置することで、モータユニット1の軸方向の投影面積が、インバータユニット8によって大きくなることを抑制できる。これにより、モータユニット1の軸方向の投影面積が大きくなることを抑制して、モータユニット1を小型化できる。
【0032】
図3および図4に示すように、インバータユニット8は、インバータ80と、インバータ80を収容するインバータケース81と、モータ接続端子70と、を有する。すなわち、モータユニット1は、インバータ80と、インバータケース81と、を備える。
【0033】
インバータケース81は、ハウジング6の後側に固定される。インバータケース81は、ボルト締結によってハウジング6に固定される。本実施形態においてインバータケース81は、ハウジング6のうち第1のハウジング部材61と第2のハウジング部材62の両方に固定される。
【0034】
図3に示すように、インバータケース81は、インバータケース本体82と、第1蓋体83aおよび第2蓋体83bと、を有する。インバータケース本体82は、軸方向に長い略直方体状であり、上側に開口する箱状である。
【0035】
インバータケース本体82は、図4に示すように、前側の面の右側部分に、端子支持部82aを有する。本実施形態の場合、端子支持部82aは、インバータケース本体82の前側の側壁を前後方向に貫通する貫通孔である。端子支持部82aに、モータ接続端子70が固定される。モータ接続端子70は、第1蓋体83aの前方に位置する。モータ接続端子70は、インバータケース本体82の前側の面から前方へ突出する。モータ接続端子70は、インバータケース81内のインバータ80から延びる3本のバスバー84を保持する。
【0036】
モータ接続端子70は、図2に示すハウジング6の第1開口孔61cに挿入される。モータ接続端子70に支持されるバスバー84は、ハウジング6の内部においてモータ2と電気的に接続される。モータ接続端子70は、モータ2とインバータ80とを電気的に接続する。
【0037】
インバータケース本体82の前面の左側部分には、電源端子9が接続される。電源端子9は、第2蓋体83bの前方に位置する。電源端子9は、インバータケース本体82の内部において、図示しないバスバーを介してインバータ80と電気的に接続される。
【0038】
インバータケース本体82は、ハウジング6との固定部となる複数の突出部を有する。具体的に、図3から図5に示すように、インバータケース81は、第1突出部91と、第2突出部92と、3箇所の第3突出部93a、93bおよび93cと、2箇所の第4突出部94aおよび94bと、第5突出部95と、を有する。
【0039】
第1突出部91は、インバータケース本体82の下面の後端部に位置する。第1突出部91は、インバータケース本体82の下端から下側へ突出する。第1突出部91は、第1突出部91を軸方向に貫通する貫通孔101を有する。
【0040】
第2突出部92は、図3および図5に示すように、インバータケース本体82の下面の前端部に位置する。第2突出部92は、インバータケース本体82の下端から下側へ突出する。第2突出部92は、第2突出部92を前後方向に貫通する貫通孔102を有する。
【0041】
第3突出部93a、93bおよび93cは、インバータケース本体82の上端部の前端に位置する。第3突出部93a、93bおよび93cは、軸方向に沿って互いに間隔を空けて配置される。第3突出部93a、93bおよび93cは、インバータケース本体82の上端から前側へ突出する。第3突出部93a、93bおよび93cは、それぞれ第3突出部93a、93bおよび93cを上下方向に貫通する貫通孔103a、103bおよび103cを有する。
【0042】
第4突出部94aおよび94bは、インバータケース本体82の上端部の前端に位置する。第4突出部94aは、第3突出部93aの左側に隣接して配置される。第4突出部94bは、第3突出部93cの右側に隣接して配置される。第4突出部94aおよび94bは、それぞれ、インバータケース本体82の上端から前方斜め上側へ突出する。第4突出部94aおよび94bは、第4突出部94aおよび94bをそれぞれ後側から前方斜め下側に向かって貫通する貫通孔104a、104bを有する。
【0043】
第5突出部95は、図4に示すように、インバータケース本体82の下端部左側の前端に位置する。すなわち、第5突出部95は、インバータケース本体82に接続される電源端子9の下側に位置する。第5突出部95は、インバータケース本体82の下端から下側へ突出する。第5突出部95は、第5突出部95を前後方向に貫通する2つの貫通孔105を有する。
【0044】
インバータケース81は、ハウジング6の第1締結部11~第5締結部15にボルト締結される。具体的に、インバータケース81の第1突出部91は、第1締結部11に配置され、第1ボルト41により固定される。第1ボルト41は、貫通孔101に通されてネジ穴51に締め込まれる。第2突出部92は、第2締結部12に配置され、第2ボルト42により固定される。第2ボルト42は、貫通孔102に通されてネジ穴52に締め込まれる。
【0045】
第3突出部93a、93bおよび93cは、それぞれ、第3締結部13a、13bおよび13cに配置され、第3ボルト43a、43bおよび43cにより固定される。第3ボルト43a、43bおよび43cは、それぞれ、貫通孔103a、103bおよび103cに通されてネジ穴53a、53bおよび53cに締め込まれる。
【0046】
第4突出部94aおよび94bは、それぞれ、第4締結部14aおよび14bに配置され、第4ボルト44aおよび44bにより固定される。第4ボルト44aおよび44bは、それぞれ、貫通孔104aおよび104bに通されてネジ穴53aおよび53bに締め込まれる。
【0047】
第5突出部95は、第5締結部15に配置され、図示しない2本の第5ボルトにより固定される。2本の第5ボルトは、それぞれ、貫通孔105に通されてネジ穴55に締め込まれる。第5突出部95と第5締結部15とがボルト締結されることにより、インバータケース81の電源端子9が接続される右側部分が、ハウジング6によって安定に支持される。
【0048】
本実施形態のモータユニット1では、ハウジング6とインバータケース81とを締結する複数のボルトが、左右方向(第1方向)に沿って延びる第1ボルト41と、前後方向(第2方向)に沿って延びる第2ボルト42と、軸方向および前後方向の両方と直交する上下方向(第3方向)に沿って延びる第3ボルト43a、43bおよび43cと、左右方向、前後方向および上下方向の全てと交差する斜め方向(第4方向)に延びる第4ボルト44aおよび44bと、を含む。
【0049】
第4ボルト44a、44bが設けられない場合、すなわち、ハウジング6とインバータケース81とが、互いに直交する三方向の第1ボルト41、第2ボルト42および第3ボルト43a~43cのみにより締結されている場合、動作時の振動などによりインバータケース81に力が掛かったときに、ボルト頭部と座面との摩擦力が主な固定力となる場合がある。
【0050】
一例として、図6に示す側面図において、インバータケース81をハウジング6から後方(-X方向)に引き離す力がモータユニット1に作用する場合を想定する。この場合に、第4ボルト44a、44bが設けられていないと仮定すると、第2ボルト42のみが軸力によりインバータケース81を支持し、第1ボルト41および第3ボルト43a~43cは、ボルト頭部と座面との摩擦力によってインバータケース81を支持する。そのため、インバータケース81に大きな力が掛かると、第1ボルト41および第3ボルト43a~43cのボルト頭部と座面とが滑り、インバータケース81が第2ボルト42を支点にして後方下側に傾く可能性がある。
【0051】
一方、本実施形態では、互いに直交する三方向に対して斜めに延びる第4ボルト44a、44bが設けられる。これにより、例えばインバータケース81をハウジング6から後方に引き離す力がモータユニット1に作用する場合でも、第4ボルト44a、44bは前後方向に対して斜めに延びるため、第4ボルト44a、44bの軸力のうち、水平方向の成分は、インバータケース81とハウジング6とを固定する力として作用する。したがって本実施形態によれば、ハウジング6とインバータケース81とが強固に固定され、ハウジング6の側方に位置するインバータケース81が安定に支持されるモータユニット1が提供される。
【0052】
本実施形態では、第4ボルト44a、44bは、インバータケース81の上端部に位置する。インバータケース81は、ハウジング6のモータ収容部6aに対して、第2ボルト42、第3ボルト43a~43c、および第4ボルト44a、44bによって締結される。すなわち、インバータケース81は、ハウジング6にほぼ片持ち状態で支持される。そのため、インバータケース81には、重力によって、第2ボルト42を支点としてインバータケース81の後端部が下側へ移動する方向の力が作用する。そのため、インバータケース81の上端部のハウジング6との連結部に大きな力が掛かる。そこで、第4ボルト44a、44bをインバータケース81の上端部に配置することで、大きな力が掛かる部位を補強でき、ハウジング6によってインバータケース81をより安定に支持できる。
【0053】
本実施形態では、第1ボルト41および第2ボルト42はインバータケース81の下端部に位置し、第3ボルト43a~43cは、インバータケース81の上端部に位置する。この構成によれば、インバータケース81の上下端部に、軸力の方向が異なるボルトが分散配置されるので、インバータケース81の全体をバランス良く支持できる。また、上下方向に延びる第3ボルト43a~43cの締め込みを、インバータケース81の上側から行えるため、作業を行いやすい。
【0054】
本実施形態では、第4ボルト44a、44bは、モータユニット1の前側に向かうに従って下側へ延びる。この構成によれば、第4ボルト44a、44bを締め込むことにより、インバータケース81がハウジング6に押しつけられるため、インバータケース81が強固に固定される。また、インバータケース81に対して、第2ボルト42を支点に回転する方向に移動する力が加わった場合に、第4ボルト44a、44bはそれらの軸力によりインバータケース81を支持するので、インバータケース81をより安定に支持できる。
【0055】
本実施形態では、インバータケース81の上端部に、左右方向に間を空けて、2本の第4ボルト44a、44bが配置され、インバータケース81の下端部における2本の第4ボルト44a、44bの間の領域に1本の第2ボルト42が配置される。この構成によれば、少ない本数のボルトを用いて、インバータケース81をハウジング6により安定に固定できる。
【0056】
本実施形態では、第1ボルト41は、インバータケース81と、ハウジング6の張出部6cとを締結し、第2ボルト42、第3ボルト43a~43c、および第4ボルト44a、44bは、インバータケース81の前側の端部と、ハウジング6のモータ収容部6aとを締結する。この構成によれば、張出部6cの左右方向を向く側面に第1ボルト41を締め込むことができ、一般的な箱形のインバータケース81を容易に固定できる。インバータ80とモータ2とを電気的に接続するモータ接続端子70が設けられるインバータケース81の前側の端部に、比較的多い数のボルトが配置されるので、モータ接続端子70の周囲を強固に固定できる。
【0057】
第1蓋体83aおよび第2蓋体83bは、インバータケース本体82の上側に取り付けられる。第1蓋体83aは、インバータケース本体82のうち、インバータ80が収容される右側部分の上側の開口を塞ぐ。第2蓋体83bは、インバータケース本体82のうち、インバータ80と電源端子9とを接続するバスバー84が収容される左側部分の上側の開口を塞ぐ。本実施形態では、第2蓋体83bのみを取り外して上記バスバー84と電源端子9との接続が可能である。これにより、端子接続時にインバータ80が露出されることがなく、インバータ80への手指等の接触、および埃等の付着を抑制できる。
【0058】
ところで、図6に示すように、側面視において、インバータケース本体82は、モータ2の後方に配置される。インバータケース本体82と第1の車軸通過孔61dは、車両前後方向の少なくとも一部が重なる。第1の車軸通過孔61dは、インバータケース82本体の下側に位置する。また、インバータケース本体82の後端は、第1の車軸通過孔61dの後端よりも後方に位置している。第1の車軸通過孔61dとステータ30とは、上下方向(X方向)の位置が重なる。このように配置されることで、ドライブシャフト周辺のスペースに効果的に部材を配置することができ、車両において省スペース化を図ることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…モータユニット、2…モータ、6…ハウジング、6a…モータ収容部、6c…張出部、21…モータシャフト、41…第1ボルト、42…第2ボルト、43a~43c…第3ボルト、44a、44b…第4ボルト、80…インバータ、81…インバータケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6