IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

特許7230936半導体封止用エポキシ樹脂組成物および半導体装置の製造方法
<>
  • 特許-半導体封止用エポキシ樹脂組成物および半導体装置の製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】半導体封止用エポキシ樹脂組成物および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20230221BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20230221BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20230221BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20230221BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230221BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C08L63/00 C
H01L23/30 R
C08G59/62
C08K3/36
C08K3/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021000808
(22)【出願日】2021-01-06
(62)【分割の表示】P 2016087987の分割
【原出願日】2016-04-26
(65)【公開番号】P2021059741
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-02-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆秀
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-307650(JP,A)
【文献】特開2002-080696(JP,A)
【文献】特開2006-233149(JP,A)
【文献】特開2016-044208(JP,A)
【文献】特許第6880567(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01L 23/28-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
充填材と、
難燃剤と、
を含み、
前記エポキシ樹脂が、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂を含み、
前記フェノール樹脂硬化剤が、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、3質量%以上20質量%以下であり、
前記エポキシ樹脂に由来するエポキシ基数をEPとし、前記フェノール樹脂硬化剤に由来するフェノール性水酸基数をOHとしたとき、EP/OHの値が、1.29以上2以下であり、
前記充填材が、無機充填材であって、溶融球状シリカを含み、
前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、
前記充填材の平均粒径が0.5μm以上4.5μm以下であり、
前記難燃剤が水酸化アルミニウムであり、
260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下であり、
当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、4Pa・S以上7Pa・S以下である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下である、請求項1に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
低応力剤をさらに含む、請求項1または2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の形態が、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が125℃以上である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を準備する工程とともに、
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップの封止プロセスとしては、たとえば、以下のものがある。
【0003】
特許文献1には、金型内を減圧下にしつつ圧縮成形することにより、半導体チップを樹脂封止する方法が記載されている。特許文献2には、封止用の成形材料を厚さ3.0mm以下のペレット状又はシート状としたものを用いる方法が記載されている。特許文献3には、顆粒状の樹脂組成物をキャビティに供給し、樹脂組成物を溶融させ、半導体チップを浸漬し、硬化することにより該半導体チップを封止する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-021908号公報
【文献】特開2006-216899号公報
【文献】特開2004-216558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体パッケージの小型化および薄型化に係る要求は、ますます高くなってきている。このような事情に鑑みて、バンプ高さが所定の高さ(数10μm程度)を上回る大きな半田バンプを介して基板上に搭載された半導体チップを封止してなる半導体装置が提案されている。かかる半導体装置によれば、半導体パッケージにおける実装面積を削減できるだけでなく、半導体チップと基板とを離間して配置しているため、両者の熱膨張係数差により生じる応力の影響を低減することができる。しかし、本発明者らは、従来の半導体封止材を用いて作製した上記半導体装置が、電気的接続信頼性という観点において以下のような課題を有していることを見出した。
第1の課題は、従来の半導体封止材を用いて作製した上記半導体装置を加熱した場合に、該半導体装置に僅かな反りが生じ、結果として、電気的接続不良が発生することである。
第2の課題は、従来の半導体封止材を用いて作製した上記半導体装置を加熱した場合に、半田フラッシュが発生し、結果として、電気的接続不良が発生することである。
【0006】
以上を踏まえ、本発明は、電気的接続信頼性に優れた半導体装置を作製するために有用な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いる半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
充填材と、
を含み、
前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、
260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下であり、
当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、4Pa・S以上7Pa・S以下である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物が提供される。
【0008】
さらに、本発明によれば、上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を準備する工程とともに、
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止する工程を含む、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電気的接続信頼性に優れた半導体装置を作製するために有用な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、およびこれを用いる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る半導体装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<半導体封止用エポキシ樹脂組成物>
本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物(以下、本樹脂組成物ともいう。)は、半導体チップまたは上記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いるものである。そして、かかる本樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を含み、充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下である構成を採用したものである。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプを介して基板上に搭載された半導体チップを封止してなる半導体装置の電気的接続信頼性を改善できる。
【0012】
すなわち、本樹脂組成物は、以下の3つの条件をすべて満たす構成を採用したものである。
第1の条件は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、半導体チップまたは上記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、を封止するために用いることを想定していることである。
第2の条件は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含む樹脂組成物において、充填材の含有量が、かかる樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下となるようにされたものである。
第3の条件は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含む樹脂組成物において、260℃で測定した該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下となるようにされたものである。
本発明者らは、上述した3つの条件をすべて満たす構成を備えた本樹脂組成物を用いて半導体装置を作製した場合、得られた半導体装置に反りや半田フラッシュなどの不都合が生じることを抑制できるため、結果として、電気的接続信頼性を改善できることを見出した。
この点については、後述の実施例において、実施例1~6と比較例1~4の比較データを示す。
【0013】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示す図である。
本樹脂組成物は、たとえば、図1に示す半導体装置に備わる封止材40を形成するために使用できる。言い換えれば、本樹脂組成物は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30と、を備える半導体装置の封止材40を形成するために使用できる。また、本樹脂組成物は、半導体チップ30と、バンプ高さが100μm以上である半田バンプとを封止するために使用してもよいし、半導体チップ30を封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために使用してもよい。
ここで、図1には、本実施形態に係る半導体装置として、回路パターンが形成された基板10の一面上に、システムを構成するベアチップ状の能動素子や、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップインダクタ等の受動素子といった複数の素子50を表面実装し、上述した素子50を搭載した領域を封止してパッケージとしているSIP(システムインパッケージ)を例示している。しかし、本実施形態に係る半導体装置は、上述した条件を満たすものであれば、POP(パッケージオンパッケージ)等のどのような形態のパッケージ構造であってもよい。
【0014】
そして、本樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、必須成分として含み、上記充填材の含有量が、当該樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下である配合組成となるように制御した構成を採用するものであるが、好ましくは、78質量%以上92質量%以下であり、さらに好ましくは、79質量%以上91質量%以下である。こうすることで、本樹脂組成物を用いて形成された封止材40の低吸湿性および低熱膨張性を向上させることができるため、結果として、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを備える半導体装置の電気的接続信頼性を向上させることができる。また、充填材の含有量を上記数値範囲内とすることにより、成形時の流動性を向上させることができるため、結果として、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを備える半導体装置への樹脂充填性を良好なものとすることができる。
【0015】
また、本樹脂組成物は、上述した配合組成とすることを前提とした上で、260℃で測定した当該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下となるように制御したものである。こうすることで、半導体チップ30と基板10との熱膨張係数の違いにより生じる応力(界面熱応力)により、封止材40の界面剥離やクラックが生じることを効果的に防ぐことができる。そのため、本樹脂組成物によれば、電気的接続信頼性に優れた半導体装置を歩留りよく作製することができる。なお、従来の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、260℃で測定した樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、1GPaを超えるものがほとんどであった。また、本樹脂組成物に係る上記熱時弾性率は、60MPa以上500MPa以下であるが、好ましくは、70MPa以上480MPa以下であり、さらに好ましくは、100MPa以上450MPa以下である。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を備える半導体装置の電気的接続信頼性に加えて、機械的耐久性をも向上させることができる。なお、260℃で測定した樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率は、JIS K -6911に準じた3点曲げ法により測定することができる。
【0016】
ここで、25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における本樹脂組成物の硬化物の線膨張係数は、好ましくは、20ppm/℃以下であり、より好ましくは、18ppm/℃以下であり、さらに好ましくは、15ppm/℃以下である。こうすることで、本樹脂組成物を封止成形して得られた封止材40の冷却に伴う収縮量(ひずみ)自体を低減することができるため、結果として、当該封止材40と、半導体チップ30および基板10との線膨張係数の違いにより生じる応力による影響を低減し、電気的接続信頼性に優れた半導体パッケージを得ることができる。
【0017】
また、本樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは、120℃以上であり、さらに好ましくは、125℃以上であり、より好ましくは、130℃以上である。これにより、半導体装置の電気的接続信頼性を向上させることができる。一方、上記ガラス転移温度(Tg)の上限値は、たとえば、200℃以下としてもよいし、195℃以下としてもよいし、190℃以下としてもよいし、145℃以下としてもよい。これにより、半導体装置の機械的耐久性を向上させることができる。
【0018】
また、本樹脂組成物の175℃での溶融粘度は、好ましくは、2Pa・S以上10Pa・S以下であり、さらに好ましくは、3Pa・S以上9.5Pa・S以下であり、より好ましくは、4Pa・S以上9Pa・S以下であり、特に好ましくは、5.5Pa・S以上9Pa・S以下であり、最も好ましくは、5.5Pa・S以上7Pa・S以下である。こうすることで、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を基板10上に搭載した半導体装置についても、未充填領域やボイドが生じることなく、本樹脂組成物により封止成形することができる。つまり、本樹脂組成物の175℃での溶融粘度が上記数値範囲内である場合、より一層樹脂充填性を向上させることができる。
【0019】
また、本樹脂組成物は、エポキシ樹脂に由来するエポキシ基数をEPとし、フェノール樹脂硬化剤に由来するフェノール性水酸基数をOHとしたとき、EP/OHの値が、好ましくは、1以上2以下であり、さらに好ましくは、1.1以上1.7以下である。こうすることで、反りが小さく、難燃性、耐湿信頼性および接続信頼性という観点において優れた半導体装置を歩留りよく作製することができる。
また、上記EP/OHの値は、以下の式により算出することができる。
式:EP/OH=(A/B)÷(C/D)
A:樹脂組成物全量に対するエポキシ樹脂の含有量
B:樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基当量
C:樹脂組成物全量に対するフェノール樹脂硬化剤の含有量
D:樹脂組成物中に含まれるフェノール樹脂硬化剤の水酸基当量
【0020】
ここで、本樹脂組成物を用いた半導体装置の封止成形方法としては、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形法等が挙げられる。中でも、本樹脂組成物の充填性を良好にする観点から、トランスファー成形法または圧縮成形法を採用することが好ましい。そのため、本樹脂組成物の形態は、作業性の観点から、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状に加工されたものであることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態に係る半導体装置に備わる封止材40は、本樹脂組成物を用いて、半導体チップ30を封止することにより所望の構造体(半導体パッケージ)を作製してから(一次封止)、上記構造体とともに、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を封止することにより(二次封止)、形成されたものであってもよいし、上述した一次封止を行うことなく、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半導体チップ30とを一括封止することにより形成されたものであってもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物の配合組成について説明する。本実施形態に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、上述した通り、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂硬化剤と、充填材と、を必須成分として含むものである。
【0023】
(エポキシ樹脂)
本実施形態に係るエポキシ樹脂としては、その分子量、分子構造に関係なく、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を使用することが可能である。このようなエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4'-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4'-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4'-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂などのナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂;N,N,N',N'-テトラグリシジルメタキシレンジアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類や、グリシジル(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、金属パターンや導体部との密着性を向上させる観点から、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。これにより、半導体パッケージの低線膨張化を図ることもできる。また、半導体装置における耐リフロー性の向上および反りの抑制を実現することも可能である。
【0024】
エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40と半導体チップ30との密着性の向上に寄与することができる。一方で、エポキシ樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。
【0025】
(フェノール樹脂硬化剤)
本樹脂組成物中には、上述した通り、フェノール樹脂硬化剤が必須成分として含まれている。これにより、当該樹脂組成物の流動性およびハンドリング性を向上させることができる。かかるフェノール樹脂硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。このようなフェノール樹脂硬化剤を配合させることにより、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスを良好なものとすることができる。特に、硬化性の点から、フェノール樹脂硬化剤の水酸基当量は90g/eq以上、250g/eq以下であることが好ましい。
【0026】
また、本樹脂組成物には、エポキシ樹脂と反応して硬化させる硬化剤であれば、後述する重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、縮合型の硬化剤等の硬化剤を、フェノール樹脂硬化剤と併用することができる。
【0027】
上記重付加型の硬化剤の具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドララジド等を含むポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂環族酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の芳香族酸無水物などを含む酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、フェノールポリマー等のポリフェノール化合物;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネート等のイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂等の有機酸類などが挙げられる。
【0028】
上記触媒型の硬化剤の具体例としては、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;BF3錯体等のルイス酸などが挙げられる。
【0029】
上記縮合型の硬化剤の具体例としては、メチロール基含有尿素樹脂のような尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂のようなメラミン樹脂等が挙げられる。
【0030】
本樹脂組成物中にフェノール樹脂硬化剤と上述した他の硬化剤とを併用する場合、フェノール樹脂硬化剤の含有量は、すべての硬化剤に関する合計含有量に対して、好ましくは、20質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは、30質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは、50質量%以上95質量%以下である。こうすることで、耐燃性、耐半田性を保持しつつ、良好な流動性を発現させることができる。
【0031】
また、本樹脂組成物全量に対するすべての硬化剤に関する合計含有量は、好ましくは、0.8質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは、1.5質量%以上8質量%以下である。こうすることで、硬化特性と耐半田性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
(充填材)
本樹脂組成物中には、上述した通り、充填材が必須成分として含まれている。かかる充填材としては、公知の半導体封止材料中に配合されている無機充填材または有機充填材であれば使用可能である。具体的には、上記無機充填材として、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等のシリカ;アルミナ;チタンホワイト;水酸化アルミニウム;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維等が挙げられる。また、かかる有機充填材としては、オルガノシリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等が挙げられる。これらの中でも、特に溶融球状シリカが好ましい。また、粒子形状は限りなく真球状であることが好ましい。また、粒子の大きさの異なるものを混合することにより無機充填量を多くすることができるが、その平均粒径d50は、半導体チップ30周辺領域に対する樹脂充填性を良好なものとする観点から、0.01μm以上150μm以下であることが望ましい。こうすることで、樹脂組成物の流動性が良好な状態となるように制御することができる。
なお、無機充填材の平均粒径d50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(HORIBA社製、LA-500)を用いて測定することが可能である。
【0033】
(その他の成分)
本樹脂組成物は、たとえばシアネート樹脂を含有させてもよい。これにより、当該樹脂組成物の硬化物からなる封止材について、低線膨張化や、弾性率および剛性の向上を図ることができる。また、得られる半導体装置の耐熱性や耐湿性の向上に寄与することも可能である。
シアネート樹脂は、たとえばノボラック型シアネート樹脂;ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂などのビスフェノール型シアネート樹脂;ナフトールアラルキル型フェノール樹脂と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるナフトールアラルキル型シアネート樹脂;ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂;ビフェニルアルキル型シアネート樹脂から選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、封止材の低線膨張化や、弾性率および剛性を向上させる観点からは、ノボラック型シアネート樹脂およびナフトールアラルキル型シアネート樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましく、ノボラック型シアネート樹脂を含むことがとくに好ましい。
【0034】
シアネート樹脂の含有量は、本樹脂組成物全量に対して3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。シアネート樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材のより効果的な低線膨張化、高弾性率化を図ることができる。また、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40と半導体チップ30との密着性の向上に寄与することができる。一方で、シアネート樹脂の含有量は、たとえば本樹脂組成物全量に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。シアネート樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、本樹脂組成物を用いて形成される封止材40の耐熱性や耐湿性の向上を図ることができる。
【0035】
本樹脂組成物には、硬化促進剤を含有させてもよい。この硬化促進剤は、エポキシ基と硬化剤との硬化反応を促進させるものであればよい。具体的には、上記硬化促進剤として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体;トリブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等のアミン系化合物;2-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラ安息香酸ボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイックアシッドボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフトイルオキシボレート、テトラフェニルホスホニウム・テトラナフチルオキシボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート;ベンゾキノンをアダクトしたトリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本樹脂組成物には、上記各成分以外に、必要に応じてカップリング剤、レベリング剤、着色剤、離型剤、低応力剤、感光剤、消泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、およびイオン捕捉剤等から選択される一種または二種以上の添加物を添加してもよい。カップリング剤としては、たとえばエポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランカップリング剤などのシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤などが挙げられる。レベリング剤としては、アクリル系共重合物等が挙げられる。着色剤としては、カーボンブラック等が挙げられる。離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。低応力剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム等が挙げられる。イオン捕捉剤としては、ハイドロタルサイト等が挙げられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0037】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上述した半導体封止用エポキシ樹脂組成物を準備する工程と、準備した半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップ30または上記半導体チップ30を封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、を封止する工程を含むものである。
【0038】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止する半導体チップ30としては、たとえば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。
【0039】
図1は、本実施形態に係る半導体装置の一例を示した図である。
図1に示す半導体装置は、基板10上に半田バンプ20を介して搭載した半導体チップ30と、基板10上に半田バンプ20を介すことなく表面実装した複数の素子50とを、上述した半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化体により形成された封止材40によって封止してなるものである。そして、図1に示す半導体装置において半導体チップ30は、基板10上にバンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を介して電気的に接続されている。
【0040】
本実施形態に係る封止材40は、本樹脂組成物を用いて、半導体チップ30を封止することにより所望の構造体(半導体パッケージ)を作製してから(一次封止)、上記構造体とともに、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20を封止することにより(二次封止)、形成されたものであってもよいし、上述した一次封止を行うことなく、半導体チップ30と、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20とを一括封止することにより形成されたものであってもよい。
【0041】
以下、本樹脂組成物を用いた封止材40の形成方法の一例について、まずは、顆粒状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形することにより封止材40を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0042】
まず、圧縮成形金型の上型と下型の間に、顆粒状の本樹脂組成物が収容された樹脂材料供給容器を設置する。次いで、封止対象物を搭載した基板10を、クランプ、吸着のような固定手段により圧縮成形金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、封止対象物を搭載した側の面が樹脂材料供給容器に対面するように該基板10を圧縮成型金型の上型に固定した場合を例に挙げて説明する。ここで、上記封止対象物としては、以下のものが挙げられる。第1の封止対象物は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半田バンプ20を介して基板10上に搭載されている半導体チップ30である。第2の封止対象物は、上記第1の封止対象物を本樹脂組成物を用いて封止成形することによって得られた構造体と、複数の素子50とを含む半導体パッケージである。第3の封止対象物は、バンプ高さが100μm以上である半田バンプ20と、半田バンプ20を介して基板10上に搭載されている半導体チップ30とともに、複数の素子50を含む半導体パッケージである。
【0043】
次に、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めながら、樹脂材料供給容器の底面を構成するシャッター等の樹脂材料供給機構により、秤量された顆粒状の本樹脂組成物を下型が備える下型キャビティ内へ供給する。これにより、顆粒状の本樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。次いで、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態の本樹脂組成物を上型に固定された基板10に搭載された封止対象物に対して押し当てる。こうすることで、封止対象物と基板10との間の領域を溶融状態の本樹脂組成物で埋めることができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、所定時間をかけて本樹脂組成物を硬化させる。ここで、圧縮成形を行う場合には、金型内を減圧下にしながら樹脂封止を行うことが好ましく、真空条件下で行うとさらに好ましい。これにより、封止対象物と基板10との間の領域については本樹脂組成物の未充填部分を残さずに良好に充填することができる。
【0044】
また、顆粒状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形する場合における成形温度は、特に限定されるわけではないが、50~250℃が好ましく、50~200℃がさらに好ましく、80~180℃が特に好ましい。また、成形圧力は、特に限定されるわけではないが、0.5~12MPaであることが好ましく、1~10MPaが特に好ましい。成形温度および圧力を上記範囲とすることで、溶融状態の樹脂組成物が充填されない部分が発生することと封止対象物が位置ずれしてしまうことの両方を防止することができる。
【0045】
次に、本樹脂組成物を用いて封止材40を形成する方法の一例について、シート状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形することにより封止材40を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0046】
まず、封止対象物を搭載した基板10を、クランプ、吸着のような固定手段により圧縮成形金型の上型と下型の一方に固定する。以下では、封止対象物を搭載した側の面が樹脂材料供給容器に対面するように該基板10を圧縮成型金型の上型に固定した場合を例に挙げて説明する。
【0047】
次に、金型の上型に固定した封止対象物に対応する位置となるように、金型の下型キャビティ内にシート状の本樹脂組成物を配置する。次いで、減圧下、金型の上型と下型の間隔を狭めることにより、シート状の本樹脂組成物は、下型キャビティ内で所定温度に加熱され、溶融状態となる。その後、金型の上型と下型を結合させることにより、溶融状態の本樹脂組成物を上型に固定された基板10に搭載された封止対象物に対して押し当てる。こうすることで、封止対象物と基板10との間の領域を溶融状態の本樹脂組成物で埋めることができる。その後、金型の上型と下型を結合させた状態を保持しながら、所定時間をかけて本樹脂組成物を硬化させる。ここで、圧縮成形を行う場合には、金型内を減圧下にしながら樹脂封止を行うことが好ましく、真空条件下で行うとさらに好ましい。これにより、少なくとも封止対象物と基板10との間の領域については本樹脂組成物の未充填部分を残さずに良好に充填することができる。
【0048】
また、シート状の本樹脂組成物を用いて圧縮成形する場合における成形温度は、特に限定されるわけではないが、50~250℃が好ましく、50~200℃がさらに好ましく、80~180℃が特に好ましい。また、成形圧力は、特に限定されるわけではないが、0.5~12MPaであることが好ましく、1~10MPaが特に好ましい。成形温度および圧力を上記範囲とすることで、溶融状態の樹脂組成物が充填されない部分が発生することと半導体素子が位置ずれしてしまうことの両方を防止することができる。
【0049】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0050】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止するために用いる半導体封止用エポキシ樹脂組成物であって、
エポキシ樹脂と、
フェノール樹脂硬化剤と、
充填材と、
を含み、
前記充填材の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、75質量%以上93質量%以下であり、
260℃で測定した当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率が、60MPa以上500MPa以下である、半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
2. 25℃以上ガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物の線膨張係数が、20ppm/℃以下である、1.に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
3. 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の175℃での溶融粘度が、2Pa・S以上10Pa・S以下である、1.または2.に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
4. 前記エポキシ樹脂に由来するエポキシ基数をEPとし、前記フェノール樹脂硬化剤に由来するフェノール性水酸基数をOHとしたとき、EP/OHの値が、1以上2以下である、1.乃至3.のいずれか一つに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
5. 前記エポキシ樹脂の含有量が、当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の全量に対して、3質量%以上30質量%以下である、1.乃至4.のいずれか一つに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
6. 当該半導体封止用エポキシ樹脂組成物の形態が、粉粒状、顆粒状、タブレット状またはシート状である、1.乃至5.のいずれか一つに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
7. 1.乃至6.のいずれか一つに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を準備する工程とともに、
前記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップまたは前記半導体チップを封止してなる半導体パッケージと、バンプ高さが100μm以上である半田バンプと、を封止する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【実施例
【0051】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
各実施例及び各比較例で用いた原料成分を下記に示した。
【0053】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC3000、エポキシ当量276g/eq、軟化点58℃)
・エポキシ樹脂2:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC3000L、エポキシ当量276g/eq、軟化点53℃)
・エポキシ樹脂3:トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂と4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂の混合物(三菱化学社製、YL6677、エポキシ当量163g/eq、軟化点59℃)
【0054】
(硬化剤)
・硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS、水酸基当量203g/eq、軟化点65℃)
・硬化剤2:トリフェノールメタン型樹脂とフェノールノボラック樹脂との共重合体型フェノール樹脂(エア・ウォーター社製、HE910-20、水酸基当量101g/eq、軟化点88℃)
【0055】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1: 下記式(1)で表される硬化促進剤
【0056】
【化1】
【0057】
・硬化促進剤2:下記式(2)で表される硬化促進剤
【0058】
【化2】
【0059】
(充填材)
・充填材1:溶融球状シリカ(デンカ社製、FB-5SDC、平均粒径d50:4.5μm)
・充填材2:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-E2、平均粒径d50:0.5μm)100重量部をミキサーに投入し、攪拌しながら窒素気流下で、ヘキサメチルジシラザン0.1重量部を噴霧添加して処理した後、γ一グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-403)1重量部を噴霧添加して得た処理粉体。
・充填材3:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-E2、平均粒径d50:0.5μm)100重量部をミキサーに投入し、攪拌しながら窒素気流下で、ヘキサメチルジシラザン0.1重量部を噴霧添加して処理した後、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-573)1重量部を噴霧添加して得た処理粉体。
・充填材4:溶融球状シリカ(アドマテックス社製、SO-E5、平均粒径d50: 1.6μm)
【0060】
(離型剤)
・離型剤1:カルナバワックス(日興ファインプロダクツ社製、ニッコウカルナバ)
・離型剤2:酸化ポリエチレンワックス(クラリアントジャパン社製、リコワックスPED191)
【0061】
(低応力剤)
・低応力剤1:下記式(3)で表わされるシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング社製、FZ-3730)
【0062】
【化3】
【0063】
・低応力剤2:両末端にカルボキシル基を有するブタジエンとアクリロニトリルの共重合体(ピイ・ティ・アイ・ジャパン社製、CTBN1008SP)
・低応力剤3:ブタジエン・アクリロニトリル・2,3-エポキシプロピル=メタクリラート・ジビニルベンゼン重合化合物とタルクの混合物(JSR社製、XER-81P)
【0064】
(難燃剤)
・難燃剤1:水酸化アルミニウム(日本軽金属社製、BE043)
・難燃剤2:水酸化アルミニウム(住友化学社製、CL-303)
【0065】
(カップリング剤)
・カップリング剤1:N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、CF4083)
・カップリング剤2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チッソ社製、GPS-M)
【0066】
(その他)
・シリコーンオイル:カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、F2-211-69)
・着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製、MA600)
・イオン捕捉剤:マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(共和化学社製、DHT-4H)
【0067】
<半導体封止用エポキシ樹脂組成物の調製>
各実施例および比較例について、次のように半導体封止用エポキシ樹脂組成物を調製した。まず、表1に従い配合された各原材料を常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕することにより、粉粒状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を得た。表1中における各成分の詳細は上記のとおりである。また、表1中の単位は、質量%である。
【0068】
<半導体装置の作製>
図1に示す半導体装置を、以下の方法で作製した。
まず、半導体チップ30と、複数の素子50とが電気的に接続するように搭載された基板10を、ストリップ基板として作製した。かかる基板において、上記半導体チップ30は、バンプ高さが100μmの半田バンプ20を介して電気的に接続されており、上記複数の素子50は、半田バンプを介することなく電気的に接続されている。次に、得られたストリップ基板を金型内に配置し、成形機(TOWA社製、PMC1040)を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、30秒の条件で、得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を金型内に注入し封止成形した。次いで、175℃、120秒間硬化処理を行った後、成形機から取りだして、175℃の高温槽にて、4時間のポストキュア処理を施した。その後、ストリップ基板のアライメントに沿って、個片化することで、図1に示す半導体装置を作製した。ただし、比較例2の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いた場合にのみ、封止材40を形成することができず、所望の半導体装置を得ることはできなかった。
【0069】
得られた各半導体封止用エポキシ樹脂組成物および各半導体装置について、下記に示す測定及び評価を行った。
【0070】
・260℃で測定した硬化物の熱時弾性率:硬化物の熱時弾性率は、JIS K -6911に準じて以下の方法で測定した。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製「KTS-15」)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で封止用樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、この試験片をDMA測定装置(セイコーインスツルメンツ社製)を用いた3点曲げ法により、測定温度範囲0℃~300℃,5℃/minで昇温測定し、260℃での硬化物の熱時弾性率を測定した。なお、単位は、MPaである。
【0071】
・ガラス転移温度および線膨張係数:各実施例および各比較例について、得られた封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)、線膨張係数を、以下のように測定した。まず、低圧トランスファー成形機(コータキ精機社製、KTS-15)を用いて金型温度175℃、注入圧力6.9MPa、硬化時間120秒で封止用樹脂組成物を注入成形し、10mm×4mm×4mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業社製、TMA100)を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。この測定結果から、ガラス転移温度(Tg)、25℃以上ガラス転移温度以下における線膨張係数を算出した。結果を表1に示す。なお、線膨張係数の単位は、ppm/℃である。
【0072】
・樹脂組成物の175℃での溶融粘度:各実施例および各比較例の半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関し、高化式フローテスター(島津製作所社製、CFT-500)を用いて、175℃、圧力40kgf/cm、キャピラリー径0.5mmの条件で溶融粘度を測定した。なお、単位は、Pa・sである。
【0073】
・成形後半田フラッシュ:各実施例および各比較例で製造した半導体装置について、自動研磨機(Struers社製、Tegramin-25)を用いて、基板10の封止材40が形成されていない側の面から研磨することで、該半導体装置における半田バンプ20の形状を確認し、半田フラッシュの有無を評価した。なお、本実施例における上記半田フラッシュとは、得られた半導体装置において、半田バンプ20の溶融膨張によって、該半田バンプ20を構成する材料が飛散する現象のことを指す。
【0074】
・ボイドの有無:各実施例および各比較例で製造した半導体装置について、走査型超音波探傷機(SAT)を用いて、封止材40の内部にボイドが存在しているか否か、その有無を評価した。
【0075】
・熱時反り:まず、各実施例および各比較例で製造した半導体装置の25℃でのパッケージ反り量を測定した。次いで、各実施例および各比較例で製造した半導体装置をShadow moire(akrometrix社製)を用いて25℃から260℃へ昇温し、該半導体装置の260℃でのパッケージ反り量を測定した。得られた半導体装置の熱時反りを、以下の基準で評価した。
◎:25℃でのパッケージ反り量と、260℃でのパッケージ反り量とが、いずれも、50μm未満である。
○:25℃でのパッケージ反り量と、260℃でのパッケージ反り量とが、いずれも、100μm未満である。
×:少なくとも、25℃でのパッケージ反り量と260℃でのパッケージ反り量の、いずれか一方が、100μm以上である。
【0076】
・リフロー後半田フラッシュおよびリフロー後バンプ変形:まず、各実施例および各比較例で製造した半導体装置を、30℃、相対湿度60%の条件下で、192時間放置した。次に、かかる半導体装置を、JEDECが規定するリフロー条件に従い、260℃でのIRリフロー処理を実施した。その後、各半導体装置について、自動研磨機(Struers社製、Tegramin-25)を用いて、基板10の封止材40が形成されていない側の面から研磨することで、該半導体装置における半田バンプ20の形状を確認し、リフロー処理後における半田フラッシュの有無および半田バンプの変形の有無を評価した。
【0077】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1に各成分の配合比率と共に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
上記表1からも分かるとおり、各実施例の半導体装置はいずれも、耐リフロー性に優れ、かつ260℃の高温条件下においても反りが発生しにくい、電気的接続信頼性に優れたものであった。
また、実施例1~6と比較例1~4を比較すると分かるように、バンプ高さが100μm以上である半田バンプを介して基板上に搭載された半導体チップを備える半導体装置の電気的接続信頼性を改善するためには、樹脂組成物の全量に対する充填材の含有量と、260℃で測定した該樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率とに係る条件を共に制御した構成を採用することが有用であることが分かった。
【符号の説明】
【0080】
10 基板
20 半田バンプ
30 半導体チップ
40 封止材
50 素子
図1