(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】マルチパス光学系における流体サンプルの分離
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20230221BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G01N21/03 B
G01N21/01 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021179428
(22)【出願日】2021-11-02
【審査請求日】2022-03-02
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】アナトリー・エー・コステロフ
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-035926(JP,A)
【文献】特開2006-084342(JP,A)
【文献】特開昭64-023142(JP,A)
【文献】特開2007-248388(JP,A)
【文献】特開2016-33484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチパス光学系であって:
マルチパス光学分析用の流体サンプルを受け入れるための気密封止された光学セルと;
前記光学セルの対向する端部上に配置された2つの対向する楔形光学素子と;
前記光学セルの内部に面する第1の凹状反射面を有するフィールドミラーと;
前記フィールドミラーの前記第1の凹状反射面に面する個別の凹状反射面をそれぞれ有する複数の対物ミラーと;
前記光学セルを通して前記複数の対物ミラーのうちの1つの前記凹状反射面に向けて光を照射する光源と;
前記複数の対物ミラーのうちの他方の前記凹状反射面から反射された光を検出する光検出器と;
を含
み、
2つの対向する楔形光学素子は、前記フィールドミラー及び前記複数の対物ミラーに対して非平行な角度で配置されており、
前記2つの対向する楔形光学素子の各々が、より厚い端部からより薄い端部へテーパされており、前記2つの対向する楔形光学素子のうちの一方のより厚い端部が、前記光学セルにわたって、前記2つの対向する楔形光学素子のうちの他方のより薄い端部と位置合わせされ、
前記2つの対向する楔形光学素子のうちの一方のより厚い端部と、前記2つの対向する楔形光学素子のうちの他方のより薄い端部とが近づき、前記2つの対向する楔形光学素子のうちの一方のより薄い端部と、前記2つの対向する楔形光学素子のうちの他方のより厚い端部とが離れるように、前記2つの対向する楔形光学素子が配向される、マルチパス光学系。
【請求項2】
前記角度は、0°から4°の間である、請求項
1に記載のマルチパス光学系。
【請求項3】
前記2つの楔形光学素子の各々が、0°
超から4°の間の角度でテーパされている、請求項1に記載のマルチパス光学系。
【請求項4】
1つ以上の通路を有する光学セルであって、前記1つ以上の通路が、分析のためにサンプルを前記光学セルの内部に導入し、前記内部から前記サンプルを取り出すために設けられている、光学セルと;
前記光学セルの内部に面する第1の反射面を有する第1のミラーと;
前記第1のミラーの前記第1の反射面に面する1つ以上の対応する追加の反射面を有する1つ以上の追加のミラーと;
前記第1のミラーと前記光学セルの内部との間に位置する楔形光学素子と;
を含
む装置であって、
前記楔形光学素子が、前記第1のミラーに対して非平行な角度で配置され、
前記楔形光学素子が、第1の楔形光学素子であり、前記装置が、前記1つ以上の追加のミラーと前記光学セルの内部との間に位置する第2の楔形光学素子をさらに含み、
前記第2の楔形光学素子が、前記1つ以上の追加のミラーに対して非平行な角度で配置され、
前記第1および第2の楔形光学素子のそれぞれが、より厚い端部からより薄い端部へとテーパされており、前記第1の楔形光学素子のより厚い端部が、前記光学セルにわたって、前記第2の楔形光学素子のより薄い端部と位置合わせされ、前記第1の楔形光学素子のより薄い端部が、前記光学セルにわたって、前記第2の楔形光学素子のより厚い端部と位置合わせされ、
前記第1の楔形光学素子のより厚い端部と、前記第2の楔形光学素子のより薄い端部とが近づき、前記第1の楔形光学素子のより薄い端部と、前記第2の楔形光学素子のより厚い端部とが離れるように、前記第1および第2の楔形光学素子が配向される、装置。
【請求項5】
前記楔形光学素子が、一端で前記光学セルの内部を気密封止する、請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記角度が0°から4°の間である、請求項
4に記載の装置。
【請求項7】
前記楔形光学素子が、0°
超と4°との間の角度でテーパされている、請求項
4に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の楔形光学素子の、前記光学セルに面する表面が、前記1つ以上の追加のミラーに対して第1の角度で配置され、前記第1の楔形光学素子
の、前記第1のミラーに面する表面が、前記第1のミラーに対して第2の角度で配置され、前記第1の角度と前記第2の角度とが実質的に一致する、請求項
4に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の楔形光学素子が、一端で前記光学セルの内部を気密封止する、請求項
4に記載の装置。
【請求項10】
前記楔形光学素子が、少なくとも部分的に反射防止材料で被覆される、請求項
4に記載の装置。
【請求項11】
光源を通電して、光のビームを、第1の楔形光学素子を通して、流体サンプルを含む光学セルの内部に、および対向する第2の楔形光学素子を通して、前記第1の楔形
光学素子とは反対側の前記光学セル上の第1のミラーに向けて照射するステップと;
前記第1の楔形光学素子とは反対側の前記光学セル上の第2のミラーで反射された光の反射ビームを、フォトダイオードで、検出するステップであって、前記光の反射ビームが、前記第2の楔形光学素子と前記光学セルの内部と前記第1の楔形光学素子とを透過する、ステップと;
前記光の反射ビームを分析して、前記流体サンプルの特性を確認するステップと;
複数の開口を含むステンシルを使用して第3のミラーを較正するステップであって、前記第1および第2のミラーで反射された光のビームが到達する前記第3のミラー上の点に前記複数の開口を位置合わせする、ステップと;
を含
み、
前記第1の楔形光学素子が、前記第3のミラーに対して非平行な角度で配置され、
前記第2の楔形光学素子が、前記第1および第2のミラーに対して非平行な角度で配置され、
前記第1および第2の楔形光学素子のそれぞれが、より厚い端部からより薄い端部へとテーパされており、前記第1の楔形光学素子のより厚い端部が、前記光学セルにわたって、前記第2の楔形光学素子のより薄い端部と位置合わせされ、前記第1の楔形光学素子のより薄い端部が、前記光学セルにわたって、前記第2の楔形光学素子のより厚い端部と位置合わせされ、
前記第1の楔形光学素子のより厚い端部と、前記第2の楔形光学素子のより薄い端部とが近づき、前記第1の楔形光学素子のより薄い端部と、前記第2の楔形光学素子のより厚い端部とが離れるように、前記第1および第2の楔形光学素子が配向される、方法。
【請求項12】
前記第1および第2のミラーが、対物ミラーであり、前記第3のミラーが、フィールドミラーである、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 化学流体分析は、レーザ吸収分光法を含む様々なタイプの光吸収分光法を用いて実施することができる。これらの技術の感度は、マルチパス光学セルを使用することによって改善される。マルチパス光学セルでは、レーザなどの光源によって照射された光の光路長を、ミラーを用いて分析サンプル(例えば、ガス)を複数回反射させることにより長くする。マルチパスセルは、いくつか挙げると、Whiteセル、Herriottセル、Cherninセル、Robertセルなどの多数の構成がある。
【背景技術】
【0002】
[0002] 既存のマルチパス光学セルにおいて、ミラーは、様々な理由から分析されるべきサンプルに直接露出される。しかしながら、ミラーおよび/またはミラーの姿勢を分析すべきサンプルに調節するように作動可能な光学機械構成要素などの構成要素を直接露出させることは、様々な課題を提示する可能性がある。多くのサンプルは腐食性であり得、かつ/または高反射率ミラーを損傷し得る極端な温度を有し得る。さらに、多くのサンプル中に含まれる粒子状物質は、これらのミラー上に堆積し、および/またはこれらのミラーを傷つける可能性がある。
【0003】
[0003] ミラー/構成要素とサンプルとの間に光学窓などの従来の保護層を位置づけることは、光ビームを偏向および/または歪ませる可能性があり、および/または複数のパスの間に利用可能な屈折力(optical power)を減少させる光学損失を導入する可能性がある。さらに、マルチパスセル内の追加の表面から反射された光放射は、「干渉縞」と呼ばれる現象(例えば、レーザ吸収分光感度の一次リミッタ)において他のビームと干渉する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004] 屈折力の干渉および/または低減を緩和しながら、ミラーおよび/またはマルチパス光学系の他の光学機械構成要素を、分析中のサンプルから分離するための実施が本明細書に記載される。様々な実施において、光学セルは、光学窓などの1つ以上の光学素子を備えることができる。場合によっては、2つの光学素子を、互いに光学セルの反対側の端部で使用することができる。光学素子は、光の通過を可能にするガラスまたは透明ポリマーなどの材料で構成することができ、場合によっては、反射防止材料で全体的または部分的に被覆することができる。
【0005】
[0005] 前に言及したように、平面光学素子が光学セルを気密封止するために直角に配置された場合、一次ビームと同じ方向に伝搬する複数の望ましくない反射ビームを導入する可能性がある。このような意図しない反射と一次ビームとのオーバーラップは、吸収分光法の感度を制限するベースライン変調(干渉縞)の既知の発生源である。そのような望ましくない効果を回避するために、いくつかの実施では、光学セルを封止する光学素子(本明細書では「窓」と呼ぶこともある)は、楔形であり、さらにシステムの光軸に対して角度をつけてもよい。楔形の傾斜した光学素子の各々は、入射ビームにシフト及び角度偏差を導入する。しかしながら、このような2つの要素の適切な配向は、光学シフトおよび偏差のほぼ完全な相殺をもたらす。相殺は、すべてのビームの平面伝搬に対して最も効率的である。従って、平面に近い光学幾何形状を特徴とするWhiteセル構成は、Herriottセルのような他の構成よりも、いくつかの実施において好ましい場合がある。
【0006】
[0006] 光源は、楔形光学素子の1つを通過し、光学セルの内部を通過し、光学セルの反対側の「対物」ミラーと呼ばれることもある潜在的に複数のミラーのうちの1つに向かう光を照射するために設けられてもよい。光源は、様々な形態をとることができ、様々な種類の光、より一般的には、人間の目に見えても見えなくてもよい電磁放射を照射することができる。場合によっては、光源はコヒーレント光を照射することができ、レーザの形態をとることができる。他の場合には、光源はインコヒーレント光を照射する。インコヒーレント光は、レンズおよび/またはミラーなどの1つ以上の光学素子を使用して、マルチパス光学セルに結合することができる。いずれの場合においても、このコヒーレント光ビーム又は集束光ビームは、対物ミラーから、「フィールド」ミラーと呼ばれることもある別のミラーに向けて反射され、次に、別の対物ミラーに向けて光を反射して戻すことができる。これは複数回繰り返されてもよく、各繰り返しは全体の光路を延長し、従って、マルチパス光学系の精度を延長する。
【0007】
[0007] フォトダイオードなどの光検出器を配置して、光が光学セルを出たときに光を検出することもできる。この検出された光を分析して、光の様々な波長に対するリアクタンス、密度、および/またはサンプル中に含まれる特定の物質の他の属性など、サンプルの様々な異なる特性を決定することができる。検出された光は、マルチパス光学系のミラーから反射されてもよい。例えば、フィールドミラーに近接して配置されたフォトダイオードは、光学セルを通して(対向する楔形光学素子を通してを含む)対物ミラーのうちの1つから反射された光を捕捉することができる。
【0008】
[0008] 本明細書に記載される光ビームおよびミラーは、正確な位置合わせからのわずかな偏差にさえも許容できない場合がある。例えば、対物ミラーから反射された光ビームは、正確な点でフィールドミラーに到達する必要がある場合があり、さもなければ、光ビームは、フィールドミラーから正しい方向に反射されない場合がある。したがって、別の態様では、対物ミラーから反射された光ビームをフィールドミラー上の所望の点に位置合わせするための複数の開口を含むステンシルに関する実施が本明細書に記載される。本開示の選択された態様で構成されるステンシルは、マルチパス光学系に関連する相補的な構造に正確に適合することができるような形状および/またはサイズにすることができる。例えば、マルチパス光学系は、位置合わせレールまたは凹部を含むことができ、ステンシルは、位置合わせレール/凹部内に適合するようなサイズおよび形状の延長部または突出部を含むことができる。一旦そのように位置合わせされると、ステンシルの開口は、対物ミラーから反射された光が入射することになっているフィールドミラー上の位置と位置合わせすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009] 様々な実施において、マルチパス光学系は:マルチパス光学分析用の流体サンプルを受け入れるための気密封止された光学セルと;光学セルの対向する端部に配置された2つの対向する楔形光学素子と;光学セルの内部に面する第1の凹状反射面を有するフィールドミラーと;フィールドミラーの第1の凹状反射面に面する個別の凹状反射面を有する複数の対物ミラーと;光学セルを通して複数の対物ミラーのうちの1つの凹状反射面に向けて光を照射する光源と;複数の対物ミラーのうちの別の凹状反射面から反射された光を検出する光検出器と;を含むことができる。
【0010】
[0010] 様々な実施において、2つの対向する楔形光学素子は、フィールドミラー及び複数の対物ミラーに対して非平行な角度で配置されてもよい。様々な実施では、角度は、1と3の間など、0°と4°の間とすることができる。様々な実施において、楔形光学素子の各々は、0°から4°の間の角度、例えば、0.5°から3°の範囲でテーパされることができる。
【0011】
[0011] 様々な実施において、2つの対向する楔形光学素子の各々は、より厚い端部からより薄い端部へとテーパされる。対向する楔形光学素子の一方のより厚い端部は、光学セルにわたって、対向する楔形光学素子の他方のより薄い端部と位置合わせすることができる。
【0012】
[0012] 他の態様では、装置は、分析のためにサンプルを光学セルの内部に導入し、内部からサンプルを取り出すために設けられた1つ以上の通路を有する光学セルと;光学セルの内部に面する第1の反射面を有する第1のミラーと;第1のミラーの第1の反射面に面する1つ以上の対応する追加の反射面を有する1つ以上の追加のミラーと;第1のミラーと光学セルの内部との間に位置する楔形光学素子と;を含むことができる。
【0013】
[0013] 様々な実施において、楔形光学素子は、光学セルの内部を一端で気密封止することができる。様々な実施において、楔形光学素子は、反射防止材料で少なくとも部分的に被覆される。様々な実施において、楔形光学素子は、第1のミラーに対して非平行な角度で配置されてもよい。様々な実施では、角度は0°から4°の間であり、例えば1°から3°の範囲である。様々な実施では、楔形光学素子は、0°から4°の間の角度、例えば0.5°から3°の範囲でテーパされる。
【0014】
[0014] 様々な実施において、楔形光学素子は、第1の楔形光学素子であってもよく、装置は、1つ以上の追加のミラーと光学セルの内部との間に位置する第2の楔形光学素子をさらに含むことができる。様々な実施では、第2の楔形光学素子は、1つ以上の追加のミラーに対して非平行な角度で配置することができる。様々な実施では、角度は第1の角度であってもよく、第1の楔形光学素子は第1のミラーに対して第2の角度で配置されてもよく、第1の角度と第2の角度は実質的に一致してもよい。
【0015】
[0015] 様々な実施において、第2の楔形光学素子は、光学セルの内部を一端で気密封止することができる。様々な実施では、第1および第2の楔形光学素子のそれぞれは、より厚い端部からより薄い端部へとテーパされてもよい。第1の楔形光学素子のより厚い端部は、光学セルにわたって、第2の楔形光学素子のより薄い端部と位置合わせすることができる。第1の楔形光学素子のより薄い端部は、光学セルにわたって、第2の楔形光学素子のより厚い端部と位置合わせすることができる。
【0016】
[0016] さらに別の態様では、方法は:光源を通電して、光のビームを、第1の楔形光学素子を通して、流体サンプルを含む光学セルの内部に、および対向する第2の楔形光学素子を通して、前記第1の楔形光学素子とは反対側の前記光学セル上の第1のミラーに向けて照射するステップと;前記第1の楔形素子とは反対側の前記光学セル上の第2のミラーで反射された光の反射ビームを、フォトダイオードで、検出するステップであって、前記光の反射ビームが、前記第2の楔形光学素子と前記光学セルの内部と前記第1の楔形光学素子とを透過する、ステップと;前記光の反射ビームを分析して、前記流体サンプルの特性を確認するステップと;を含むことができる。
【0017】
[0017] 様々な実施において、本方法は、複数の開口を含むステンシルを使用して第3のミラーを較正するステップをさらに含むことができる。様々な実施において、第1および第2のミラーは対物ミラーであり、第3のミラーはフィールドミラーである。様々な実施では、較正するステップは、対物ミラーで反射された光ビームが到達するフィールドミラー上の点に複数の開口を位置合わせするステップを含むことができる。
【0018】
[0018] 本明細書でより詳細に説明される前述の概念および追加の概念のすべての組み合わせは、本明細書で開示される主題の一部であると考えられることは理解されるべきである。例えば、本開示の末尾に現れるクレームされた主題の全ての組み合わせは、本明細書に開示された主題の一部であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】[0019] 本開示の選択された態様が様々な実施に従って使用され得る例示的なマルチパス光学系を図式的に示す。
【
図2A】[0020] 様々な実施に従って、マルチパス系の構成要素を位置合わせするために使用され得る例示的なステンシルを示す。
【
図2B】様々な実施に従って、マルチパス系の構成要素を位置合わせするために使用され得る例示的なステンシルを示す。
【
図2C】様々な実施に従って、マルチパス系の構成要素を位置合わせするために使用され得る例示的なステンシルを示す。
【
図2D】様々な実施に従って、マルチパス系の構成要素を位置合わせするために使用され得る例示的なステンシルを示す。
【
図3】[0021] 本明細書に記載される様々な実施に従った例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0022]
図1は、本開示の選択された態様が様々な実施に従って使用され得る例示的なマルチパス光学系100を図式的に示す。
図1に示された構成要素は、一定の縮尺で描かれていない。様々な構成要素のサイズ及び様々な構成要素間の空間的関係(例えば、角度)は、説明のために誇張されている。
【0021】
[0023] マルチパス光学系100は、マルチパス光学分析のための流体サンプル104を受け入れるように構成され、内部106を画定する1つ以上の壁103を含む光学セル102を含む。1つ以上の壁103は、光学セル102の形状に応じて様々な形態をとることができる。例えば、
図1において、光学セル102は、円筒形(
図1の断面に示される)を有することができ、したがって、単一の壁103が存在することができる。光学セル102が他の形状を有する他の実施では、2つ以上の壁103が存在してもよい。
【0022】
[0024] 本明細書中で使用される場合、「流体サンプル」は、液体または気体のいずれの形態であっても、任意の流体を指す。様々な実施において、光学セル102は、例えば、1つ以上の壁103によっておよび/または本明細書に記載される他の要素によって気密封止されてもよく、その結果、流体サンプル104は、選択された位置以外では内部106から逃げることができない。例えば、光学セル102は、流体サンプル104を分析のために光学セル102の内部106に導入するため、および流体サンプル104を内部106から取り出す(例えば、窒素などの不活性ガスでパージする)ために提供される選択された位置である、壁103を通る1つ以上の通路108A、108Bを含むことができる。
図1において、第1の通路108Aは流体サンプル104を内部106に導入するためのものであり、第2の通路108Bは流体サンプル104を内部106から取り出すためのものであるが、これは限定することを意味するものではない。通路108A、108Bは、内部106に出入りする流体の通過を許容および/または防止するように作動可能なバルブなど、様々な形態をとることができる。
【0023】
[0025] マルチパス光学系100はまた、光学セル102の対向する端部に配置された1つ以上の対向する楔形光学素子110A、110Bを含むことができる。各楔形光学素子110は、片側または両側上でテーパされ得る。
図1において、両方の楔形光学素子110A、110Bは、角度βで一方の側にテーパされているが、これは限定することを意味しない。様々な実施では、角度βは、0°から4°の間など、様々な大きさを有することができる。例えば、角度βは、1°~3°又は2°~3°とすることができる。いくつかの実施では、楔形光学素子110A、110Bは、一端又は両端で光学セル102の内部106を気密封止する。いくつかの実施では、楔形光学素子110A、110Bは、屈折率の異なる交互層を有するフィルムなどの反射防止材料で少なくとも部分的に被覆されてもよい。
【0024】
[0026] ロジック101を提供し、光源112および光検出器121と動作可能に結合することができる。ロジック101は、流体サンプル104の1つ以上の特性を確認するために、流体サンプル104を分析するためにメモリ(図示せず)に格納された命令(一時的および/または非一時的)を実行する1つ以上のプロセッサなど、様々な形態をとることができる。例えば、光学セル102の内部106内から反射された光ビームは、レーザ吸収分光法を含む光吸収分光法などの技術を使用してロジック101によって分析することができる。いくつかの実施形態では、ロジック101は、光源112用のレーザまたはLEDドライバおよび光検出器121用の増幅器などのアナログフロントエンドを含むことができる。ロジック101は、特定用途向け集積回路(ASIC)および/またはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)など、他の実施において他の形態をとることができる。
【0025】
[0027] マルチパス光学系100はまた、様々なサイズおよび形状のミラーの様々な配置を含むことができる。ミラーは、光源112によって照射された光を光学セル102の内部106内で複数回反射するために、互いに対して位置決めされてもよい。その結果、流体サンプル104の属性を確認するために流体サンプル104を通過する光の光路が増加し、それによって光吸収に対する感度が増加する。光源112は、
図1に示される発光ダイオード(LED)などの様々な形態をとることができる。光源112は、コヒーレント光またはインコヒーレント光を照射することができる。前者の場合、光源112は、レーザ源または外部レーザ源から照射されるレーザ光を送達する光ファイバの形態をとることができる。各場合において、レンズおよびミラー(図示せず)などの1つ以上の追加の光学素子を提供して、光源112によって照射された光をマルチパス構成に結合することができる。光検出器121は、1つ以上のレンズおよび/またはミラー(図示せず)などの集光光学系を含むことができる。
【0026】
[0028]
図1において、光学セル102は、Whiteセルの形態をとる。したがって、マルチパス光学系100のミラーは、光学セル102の一端で、光学セルの内部に面する第1の凹状反射面116を有するフィールドミラー114を含む。複数(例えば、2つ)の対物ミラー118A、118Bは、光学セル102の対向する端部に配置される。対物ミラー118A、118Bは、フィールドミラー114の第1の凹状反射面116に面する個別の凹状反射面120A、120Bを含むことができる。
図1は、限定することを意味するものではなく、本明細書に記載される実施は、Whiteセルスタイルの光学セルに限定されない。
【0027】
[0029] いくつかの実施では、フィールドミラー114および対物ミラー118A、118Bのそれぞれの曲率半径、およびフィールドミラー114と対物ミラー118A、118Bとの間の距離は、100 mmから1,500 mm、例えば1,000 mmであってもよい。いくつかの実施では、フィールドミラー114は、1.0”など、0.5”と2”の間の直径を有することができる。いくつかの実施例では、対物ミラー118A、118Bは、0.5”など、0.25”と1.0”の間の直径を有することができる。
【0028】
[0030] 光源112は、通電されると(例えば、ロジック101によって)、光学セル102を通して対物ミラー120Bの凹状反射面118Bに向けて光を照射するように、位置決めおよび/または照準を合わせることができる。破線の矢印によって示されるように、この光は、フィールドミラー114と対物ミラー118A、118Bとの間で繰り返し反射される。
図1に示された反射の量は単に例として提供されているだけであり、より多くのまたはより少ない光の反射が起こり得ることに留意されたい。最終的に、光検出器121は、対物ミラー118Aの凹状反射面120Aから反射された光を検出することができる。光検出器121は、フォトダイオードなどの様々な形態の光検出器であってもよい。
【0029】
[0031] 前述したように、平面光学素子が光学セル102の反対側で直角に配置される場合、それらは、光源112によって照射される一次ビームと同じ方向に伝搬する複数の望ましくない反射ビームを導入する可能性がある。従って、様々な実施では、楔形であることに加えて、楔形光学素子110A、110Bは、光学セル102の縦軸113に対してわずかに傾斜してもよい。例えば、
図1において、両方の楔形光学素子110A、110Bは、フィールドミラー114に対して(および対物ミラー118A、118Bに対して)非平行で実質的に一致する角度αで配置される。いくつかの実施では、角度αは、0.5°から4°の間、例えば3°であってもよい。また、いくつかの実施形態では、角度βは、0.5°から3°の間、例えば1.5°であってもよい。
【0030】
[0032] それらのテーパ形状により、楔形光学素子110Aおよび110Bの各々は、より厚い端部122A、122Bからより薄い端部124A、124Bへとテーパされている。様々な実施において、第1の楔形光学素子110Aのより厚い端部122Aは、光学セル102にわたって、第2の楔形光学素子110Bのより薄い端部124Bと位置合わせされてもよい。同様に、第1の楔形光学素子110Aのより薄い端部124Aは、光学セル102にわたって、第2の楔形光学素子のより厚い端部122Bと位置合わせされてもよい。
【0031】
[0033] 互いに対して、またマルチパス光学系100の他の構成要素に対して、楔形光学素子110A、110Bの配向および/またはテーパ付けを行うことにより、そうでなければ生じる光のシフトおよび/または偏差に対する一次補償を確実にすることができる。特に、楔形光学素子110A、110Bは、
図1に示されるように配向された場合、光源112から照射された光の伝搬に最小の摂動を導入する。
【0032】
[0034] 前述したように、流体サンプル104は、フィールドミラー114および対物ミラー118A、118B、および/または、例えば、フィールドミラー114および/または対物ミラー118A、118Bに対して調整を行うように動作可能であり得る他の光学機械構成要素を腐食または損傷する温度、粒子、酸性度などの特性を有することができる。楔形光学素子110Aおよび110Bは、例えば、光学セル102を気密封止することによって、光学セル102の内部106からフィールドミラー114および/または対物ミラー118A、118Bを分離するように配置することができる。従って、楔形光学素子110A、110Bは、フィールドミラー114及び/又は対物ミラー118A、118Bを、さもなければ流体サンプル104への露出から生じる損傷から保護することができる。
【0033】
[0035] 前述したように、ミラー114、118A、118Bなどのマルチパス光学系100の構成要素は、正確な位置合わせからのわずかな偏差さえ許容できない場合がある。例えば、対物ミラーから反射された光ビームは、正確な点でフィールドミラー114に到達する必要がある場合があり、さもなければ、光ビームはフィールドミラー114から適切に反射されない場合がある(例えば、反射された放射が所望の対物ミラー118に戻らない場合や、パスの総数が意図したものと異なる場合がある)。したがって、別の態様では、対物ミラーから反射された光ビームをフィールドミラー上の所望の点に位置合わせするための複数の開口を含むステンシルに関する実施が本明細書に記載される。
【0034】
[0036]
図2A~
図2Cは、複数の視点からの例示的なステンシル230の図を示す。
図2Aはステンシル230の正面の斜視図であり、
図2Bは正面図である。
図2Cは、ステンシル230の背面の斜視図である。ステンシル230は、都合のよい取り扱いのために突起232を含む。ステンシル230の形状、特にその側面は、ステンシル230の複数の開口234(全てがラベル付けされているわけではない)がフィールドミラー114の凹状反射面116上の適切な位置に位置合わせされるように、フィールドミラー114の前方で厳密に定義された位置決めのためにミラーマウント(図示せず)と嵌合するように設計することができる。
【0035】
[0037]
図2A~
図2 Cに示されるようないくつかの実施では、2つの追加の「通過」開口236、238は、フィールドミラー114の位置と位置合わせされていない。代わりに、通過開口236および238のうちの1つを設けて、光源112によって照射された光を、例えば、対物ミラー118の反射面120に向けて通過させることができるようにしてもよい。通過開口236及び238のうちの他方は、対物ミラー118の反射面120から反射された光が光検出器121に通過することを可能にするために設けられてもよい。
【0036】
[0038]
図2Dは、マルチパス光学系100の構成要素を位置合わせするためにステンシル230がどのように使用され得るかの一例を断面で概略的に示す。光源112によって照射された光は、最初に開口236を通過することができる。
図2Dには示されていないが、
図1に示されるように、光ビームは、次に、第1の楔形光学素子110Aおよび光学セル102の内部106を通過することができる。光ビームは、光学セル102の内部106を出て、第2の楔形光学素子110Bを通って、光学セル102の反対側の対物ミラー118Bの反射面120Bに向かう。
【0037】
[0039] 次に、光ビームは、フィールドミラー114の凹状反射面116と対物ミラー118A、118Bの凹状反射面120A、120Bとの間で何回か反射される。最終的に、光ビームは、
図2Dに示されるように、開口238を通過して光検出器121に向かって進むことができる。したがって、フィールドミラー114、対物ミラー118A、118B、および/またはマルチパス光学系100の他の構成要素が適切に位置合わせされることを確実にするために、ステンシル230を
図2Dに示すように配置して、光検出器121が光源112で発する光を検出することを確実にしてもよい。ステンシル230自体は反射性でなくてもよい。その結果、光学セル102の内部106内の反射された光ビームが開口234~238と位置合わせされていない場合には、フィールドミラー114および/または対物ミラー118A、118Bが位置ずれした場合に生じるように、反射された光が光検出器121にほとんどまたは全く到達しないことになる。
【0038】
[0040] Whiteセル構成の様々な実施において、光ビームがミラー114、118A、118Bの間で反射され、流体サンプル104を通過する回数は、4の倍数である。ステンシル230が使用されるいくつかの実施では、パスの数は4nとすることができ、ここで、nは最下段における開口234の数である。
図2A~
図2Bは、最下段における8つの開口234を示す。従って、光源112によって照射された光は、流体サンプルを32回通過する。しかしながら、これは限定することを意味するものではなく、ステンシル230は、流体サンプル104を通る光のパスがより多く又はより少ないことが所望される場合には、他の数の開口234で構成することができる。
【0039】
[0041]
図3は、本開示の選択された態様を実施するための例示的な方法300のフローチャートを示す。他の実施は、
図3に示されるもの以外の追加の動作を含むことができ、
図3のステップを異なる順序で及び/又は並行して実施することができ、及び/又は
図3の動作のうちの1つ以上を省略することができる。
【0040】
[0042] ブロック302において、光源112などの光源は、例えば、ロジック101によって通電されて、光のビームを、第1の楔形光学素子(例えば、118A)を通して、流体サンプル(例えば、104)を含む光学セル(例えば、102)の内部(例えば、106)内に、および対向する第2の楔形光学素子(例えば、118B)を通して、第1の楔形素子から光学セルの反対側の第1のミラー(例えば、118B)に向かって照射し得る。前述したように、この光ビームは、ある回数(例えば、4回の倍数)で流体サンプル104を通して、一方の側のフィールドミラー114および他方の側の対物ミラー118A、118Bなどのミラー間で反射され得る。
【0041】
[0043] ブロック304において、光の反射ビームをフォトダイオード(例えば、121)で検出することができる。ビームは、第1の楔形光学素子から光学セルの反対側にある第2のミラー(例えば、118A)から反射されていてもよい。様々な実施では、光の反射ビームは、フォトダイオードに到達する途中で、第2の楔形光学素子(110B)、光学セル(102)の内部(106)、および第1の楔形光学素子(110A)を通過することができる。
【0042】
[0044] ブロック306において、光の反射ビームを分析して、流体サンプルの特性を確認することができる。例えば、反射された光ビームは、例えば、ロジック101によって、レーザ吸収分光法を含む光吸収分光法などの技術を用いて分析することができる。
【0043】
[0045] いくつかの実施において、方法300は、例えば
図2Dに示されるように、複数の開口(例えば、234)を含むステンシル(例えば、230)を使用して、第3のミラー(例えば、フィールドミラー114)を較正するステップをさらに含むことができる。いくつかのそのような実施において、較正するステップは、複数の開口を、第1および第2のミラー(例えば、118A、118B)で反射された光のビームが到達する第3のミラー(例えば、114)上の点に位置合わせするステップを含むことができる。
【0044】
[0046] いくつかの実施について本明細書で説明し、図示してきたが、機能を実行し、及び/又は結果を得るための様々な他の手段及び/又は構造、及び/又は、本明細書に記載された利点のうちの1つ以上を利用することができ、そのような変形及び/又は修正のそれぞれは、本明細書に記載された実施の範囲内にあると考えられる。より一般的には、本明細書に記載された全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本教示が使用される特定の用途または複数の用途に依存する。当業者は、本明細書中に記載される特定の実施に対する多くの等価物を認識するか、またはルーチンの実験以上のものを用いずに確認することができるであろう。したがって、前述の実施は、例としてのみ提示されており、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、実施は、具体的に記載され、特許請求されたもの以外で実施されてもよいことが理解されるべきである。本開示の実施は、本明細書に記載された個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に向けられる。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の2つ以上の任意の組み合わせは、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本開示の範囲内に含まれる。