(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】易接着性ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 7/043 20200101AFI20230221BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230221BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20230221BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20230221BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230221BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230221BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230221BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230221BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20230221BHJP
【FI】
C08J7/043 A CFD
C09D5/00 D
C09D175/06
C09D167/00
C09D7/61
B32B27/36
G02B5/30
G02B1/14
G02B1/11
(21)【出願番号】P 2021184798
(22)【出願日】2021-11-12
(62)【分割の表示】P 2020202543の分割
【原出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2017182329
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田川 理恵
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 友香
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246663(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082130(WO,A1)
【文献】特開2013-039802(JP,A)
【文献】特開2015-176466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/04-7/06
B32B 1/00-43/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C09D 1/00-10/00
G02B 1/10-1/18
G02B 5/00-5/136
C09D 175/06
C09D 167/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂、架橋剤、屈折率1.7以上の金属酸化物粒子(粒子A)、滑剤粒子(粒子B)を含有する塗布層を有し、塗布層固形分全量を100質量%とした場合のポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量(質量%)をa、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量(質量%)をb、これら以外の成分の合計量(質量%)をcとして三角図表に表した時に、a、b、cが直線P1、直線Q1、直線R1、直線S1の4つの直線で囲まれた領域内にあ
り、前記塗布層固形分全量を100質量%とした場合のこれら以外の成分の合計量cが55質量%以下である易接着性ポリエステルフィルム。
ここで直線P1、直線Q1、直線R1、直線S1は以下の通りである。
直線P1:aが10質量%、bが55質量%、cが35質量%の点と、aが10質量%、bが10質量%、cが80質量%の点とを通過する直線
直線Q1:aが10質量%、bが10質量%、cが80質量%の点と、aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点とを通過する直線
直線R1:aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点と、aが50質量%、bが40質量%、cが10質量%の点とを通過する直線
直線S1:aが45質量%、bが45質量%、cが10質量%の点と、aが10質量%、bが55質量%、cが35質量%の点とを通過する直線
【請求項2】
前記屈折率1.7以上の金属酸化物粒子(粒子A)の平均粒径が、5nm以上200nm以下である請求項1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記滑剤粒子(粒子B)の平均粒径が、200nm以上2000nm以下である請求項1又は2に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記塗布層の膜厚が、0.5μm以下である請求項1~3のいずれかに記載の偏光子保護フィルム用の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項5】
易接着性ポリエステルフィルムが、偏光子保護フィルム用である請求項1~4のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、ハードコート層、防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層及び低反射層からなる群より選択される1以上の機能層を有する積層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虹ムラの問題を解消できる低干渉性を確保でき、各種機能層との密着性、耐ブロッキング性、透明性に優れた易接着性ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル、コンピューター、テレビ、液晶表示装置等のディスプレイ、装飾材等の前面には、透明なハードコート層を積層させたハードコートフィルムが使用されている。また、基材の透明プラスティックフィルムとしては、透明なポリエステルフィルムが一般的に用いられ、基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接着性を有する塗布層を設ける場合が多い。
【0003】
前記のハードコートフィルムには、温度、湿度、光に対する耐久性、透明性、耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等が求められている。また、ディスプレイや装飾材などの表面に用いられることが多いため、視認性や意匠性が要求されている。そのため、任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため、ハードコート層の上層に、高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、ディスプレイや装飾材などの用途では、近年、さらなる大画面化(大面積化)及び高精細化が求められ、それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉斑が出やすくなっている。さらに、反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため、反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0005】
さらに、モバイル技術の発展により携帯電話、カーナビゲーションや電子ブックなど携帯機器の屋外領域での使用が拡大している。また、上記携帯機器は薄型化の点から液晶パネルによるディスプレイがほとんどである。このような分野では、例えばタッチパネルを搭載した携帯電話では、ディスプレイの表面保護のためのハードコートフィルムとして、塗布面に接する両界面の反射光による干渉縞やアイコンシートなどハードコートフィルムの裏面に意匠性を施す用途では干渉縞による視認性の欠点がより顕在化しつつある。
【0006】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は、基材のポリエステルフィルムの屈折率(例えば1.62~1.65)とアクリル樹脂等からなるハードコート層の屈折率(例えば1.49)との差が大きいため発生するといわれている。積層間の屈折率差を小さくして干渉斑の発生を防止するため、基材のポリエステルフィルム上に比較的高屈折率の塗布層を設け、ポリエステルフィルムと塗布層との屈折率差、塗布層とハードコート層の屈折率差を小さくする方法が提案されている。
【0007】
従来、光学用易接着性フィルムの分野において、易接着層の屈折率を上げる方法としては、塗布層中に特定の高屈折率微粒子を含ませる方法、塗布層の樹脂の屈折率を上げる方法などが知られている。特に、ナフタレンジカルボン酸を共重合成分としてナフタレンジカルボン酸成分を用いたポリエステル樹脂は基材ポリエステルフィルムとの密着性にも優れ、好適な例として提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、一般的に屈折率の高いポリエステル樹脂はガラス転移温度が高く、樹脂の柔軟性に欠けるためか密着性に劣るという問題や、ポリエステル樹脂を多くした場合には耐ブロッキング性が悪化する場合があった。一方、柔軟性に優れ密着性の高い樹脂としてポリカーボネート成分を有するポリウレタン樹脂を用いる方法が提案されており(たとえば、特許文献2参照)、特許文献1でもポリカーボネート成分を有するポリウレタン樹脂を配合しているものの、ポリウレタン成分を多くすると低干渉性、透明性が悪くなるといった問題があった。このように、従来は、近年の高いレベルの低干渉性に応えながら、ハードコート層との密着性、耐ブロッキング性、透明性の全てを高度なバランスで有する易接着性ポリエステルフィルムは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-246663号公報
【文献】特開2011-168053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、虹ムラを抑制できる低干渉性、各種光学用途において高い次元で求められるハードコート層等との密着性、耐ブロッキング性、透明性のいずれにも優れ、さらには高い滑り
性を有し製造時や液晶表示装置の偏光板製造工程等の後工程でのハンドリング性に優れた易接着性ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、以下の構成よりなる。
1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂、架橋剤、屈折率1.7以上の金属酸化物粒子(粒子A)、滑剤粒子(粒子B)を含有する塗布層を有し、塗布層固形分全量を100質量%とした場合のポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量(質量%)をa、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量(質量%)をb、これら以外の成分の合計量(質量%)をcとして三角図表に表した時に、a、b、cが直線P1、直線Q1、直線R1、直線S1の4つの直線で囲まれた領域内にあり、前記塗布層固形分全量を100質量%とした場合のこれら以外の成分の合計量cが55質量%以下である易接着性ポリエステルフィルム。
ここで直線P1、直線Q1、直線R1、直線S1は以下の通りである。
直線P1:aが10質量%、bが55質量%、cが35質量%の点と、aが10質量%、bが10質量%、cが80質量%の点とを通過する直線
直線Q1:aが10質量%、bが10質量%、cが80質量%の点と、aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点とを通過する直線
直線R1:aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点と、aが50質量%、bが40質量%、cが10質量%の点とを通過する直線
直線S1:aが45質量%、bが45質量%、cが10質量%の点と、aが10質量%、bが55質量%、cが35質量%の点とを通過する直線
2. 屈折率1.7以上の金属酸化物粒子(粒子A)の平均粒径が、5nm以上200nm以下である上記第1に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
3. 前記滑剤粒子(粒子B)の平均粒径が、200nm以上2000nm以下である上記第1又は第2に記載の易接着性ポリエステルフィルム。
4. 塗布層の膜厚が、0.5μm以下である上記第1~第3のいずれかに記載の偏光子保護フィルム用の易接着性ポリエステルフィルム。
5.易接着性ポリエステルフィルムが、偏光子保護フィルム用である上記第1~第4のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルム。
6. 上記第1~第5のいずれかに記載の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、ハードコート層、防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層及び低反射層からなる群より選択される1以上の機能層を有する積層ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、虹ムラを抑制できる低干渉性、透明性、耐ブロッキング性、各種機能層との密着性、滑り性に優れた易接着性ポリエステルフィルムの提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の易接着性ポリエステルフィルムにおける好ましい範囲を示す三角図表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ポリエステルフィルム)
本発明で基材として用いるポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂より構成されるフィルムであり、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの少なくとも1種を構成成分とするポリエステルフィルムが好ましい。また、前記のようなポリエステルに第三成分モノマーが共重合された共重合ポリエステルからなるフィルムであってもよい。これらのポリエステルフィルムの中でも、物性とコストのバランスからポリエチレンテレフタレートフ
ィルムが最も好ましい。
【0014】
また、前記のポリエステルフィルムは、単層であっても複層であってもかまわない。また、本発明の効果を奏する範囲内であれば、これらの各層には、必要に応じて、ポリエステル樹脂中に各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐光剤、ゲル化防止剤、有機湿潤剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0015】
(塗布層)
本発明における易接着性ポリエステルフィルムは、上記のようなポリエステル製の基材フィルム上に易接着性の塗布層が積層されているものである。
本発明における塗布層は、塗布層全量(固形分)を100質量%とした場合のポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量(質量%)をa、ナフタレン骨格を
有するポリエステル樹脂成分の含有量(質量%)をb、これら以外の成分の合計量(質量%)をcとして三角図表として表した時に、a、b、cが直線P1、直線Q1、直線R1、直線S1の4つの直線で囲まれた領域の範囲内であることが好ましい。
【0016】
ここで直線P1、直線Q1、直線R1、直線S1は以下である。
直線P1:aが10質量%、bが55質量%、cが35質量%の点と、aが10質量%、bが10質量%、cが80質量%の点とを通過する直線
直線Q1:aが10質量%、bが10質量%、cが80質量%の点と、aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点とを通過する直線
直線R1:aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点と、aが50質量%、bが40質量%、cが10質量%の点とを通過する直線
直線S1:aが45質量%、bが45質量%、cが10質量%の点と、aが10質量%、bが55質量%、cが35質量%の点とを通過する直線
【0017】
上記範囲にすることにより、低干渉性(干渉縞改善性)、密着性、耐ブロッキング性、透明性のいずれもバランス良く高度なレベルで維持することができる。
【0018】
上記の好ましい範囲を
図1に示す三角図表を用いて簡単に説明する。三角図表の三辺には、ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量a(質量%)、ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量をb(質量%)及びその他の成分c(質量%)の座標軸を各々示している。ここで、三角図表の内部の座標を(a,b,c)の順に書き表すこととすると、三角図表内には5つの座標(10,55,35)、(10,10,80)、(70,10,20)、(50,40,10)及び(45,45,10)が示されている。そして、(10,55,35)と(10,10,80)とを通る直線P1、(10,10.80)と(70,10,20)とを通る直線Q1、(70,10,20)と(50,40,10)とを通る直線R1、及び(45,45,10)と(10.55,35)とを通る直線S1の4本の直線が示され、前記4本の直線で囲まれた内側の範囲が、低干渉性(干渉縞改善性)、密着性、耐ブロッキング性、透明性をバランス良く具備させることができる範囲を示している。
【0019】
さらに、以下に各直線に更に好ましい範囲を述べる。
直線P1の代わりには、直線P2(aが15質量%、bが55質量%、cが30質量%の点と、aが15質量%、bが10質量%、cが75質量%の点とを通過する直線)を採用することが好ましい。
【0020】
直線Q1の代わりには、直線Q2(aが10質量%、bが20質量%、cが70質量%の点と、aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点とを通過する直線)、さ
らには直線Q3(aが20質量%、bが20質量%、cが60質量%の点と、aが70質量%、bが10質量%、cが20質量%の点とを通過する直線)を採用することが好ましい。
【0021】
直線R1の代わりには、直線R2(aが65質量%、bが10質量%、cが25質量%の点と、aが45質量%、bが40質量%、cが15質量%の点とを通過する直線)、さらには直線R3(aが60質量%、bが10質量%、cが30質量%の点と、aが40質量%、bが40質量%、cが20質量%の点とを通過する直線)を採用することが好ましい。
【0022】
直線S1の代わりには、直線S2(aが50質量%、bが40質量%、cが10質量%の点と、aが10質量%、bが50質量%、cが40質量%の点とを通過する直線)、さらには直線S3(aが52質量%、bが38質量%、cが10質量%の点と、aが10質量%、bが48質量%、cが42質量%の点とを通過する直線)、特にはS4(aが55質量%、bが35質量%、cが10質量%の点と、aが10質量%、bが45質量%、cが45質量%の点とを通過する直線)を採用することが好ましい。
【0023】
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量aの下限は好ましくは10質量%であり、より好ましくは13質量%であり、さらに好ましくは15質量%である。ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量aが10質量%以上であると、透明性が損なわれず、密着性が満足されて好ましい。
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量aの上限は好ましくは70質量%であり、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは50質量%であり、特に好ましくは40質量%である。ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量aが70質量%以下であると、屈折率が高く保たれ、低干渉性が得られるので好ましい。
【0024】
ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量bの下限は好ましくは10質量%であり、より好ましくは15質量%であり、さらに好ましくは20質量%である。ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量bが10質量%以上であると密着性が満足されて好ましい。
ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量bの上限は好ましくは55質量%であり、より好ましくは50質量%であり、さらに好ましくは48質量%であり、特に好ましくは45質量%である。ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量bが55質量%以下であると、耐ブロッキング性が発揮されて好ましい。
【0025】
その他の成分の含有量cの下限は好ましくは10質量%であり、より好ましくは20質量%であり、さらに好ましくは25質量%であり、特に好ましくは30質量%である。その他の成分の含有量cが10質量%以上であると、塗布層の屈折率を高くする成分が含まれていれば低干渉性が向上して好ましい。また、結果的にポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂の含有量aが多くなり過ぎず、ブロッキングを防ぐことができるので好ましい。
その他の成分の含有量cの上限は好ましくは80質量%であり、より好ましくは70質量%であり、さらに好ましくは60質量%であり、特に好ましくは55質量%である。その他の成分の含有量cが80質量%以下であると、結果的にポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂成分の含有量a及びナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂成分の含有量bのバランスをとり易く、密着性が保持され、耐ブロッキング性と屈折率(低干渉性)のバランスが取り易く好ましい。
【0026】
(ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂)
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂の構成成分であるジオール成分には、耐熱、耐加水分解性に優れる脂肪族系ポリカーボネートポリオールを含有させることが好ましい。本発明の光学用途においては、黄変防止の点からも脂肪族系ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0027】
脂肪族系ポリカーボネートポリオールとしては、脂肪族系ポリカーボネートジオール、脂肪族系ポリカーボネートトリオールなどが挙げられるが、好適には脂肪族系ポリカーボネートジオールを用いることができる。本発明のウレタン樹脂の構成成分である脂肪族系ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどのジオール類の1種または2種以上と、例えば、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲンなどのカーボネート類とを反応させることにより得られる脂肪族系ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。
【0028】
ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂は赤外分光法による測定される脂肪族系ポリカーボネート成分由来の1460cm-1付近の吸光度(A1460)とウレタン成分由来の1530cm-1付近の吸光度(A1530)の比率(A1460/A1530)が0.40~2.30とすることが好ましい。
前記比率(A1460/A1530)が0.40以上の場合は、強硬なウレタン成分が多くなり過ぎず、塗布層の応力緩和が低下せず耐湿熱性が低下するおそれがなく好ましい。また、前記比率(A1460/A1530)が、2.30以下の場合は、柔軟な脂肪族系ポリカーボネートの脂肪族成分が多くなり過ぎず、塗布層の耐溶剤性が保たれ耐湿熱性が低下するおそれがなく好ましい。
【0029】
前記比率(A1460/A1530)を0.40~2.30の範囲にするため、脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量としては、好ましくは1500~4000であり、より好ましくは2000~3000である。脂肪族系ポリカーボネートジオールの数平均分子量が小さい場合は、相対的にウレタン樹脂を構成する脂肪族系ポリカーボネート成分の比率が小さくなる。
【0030】
本発明におけるウレタン樹脂の構成成分であるポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。前記のポリイソシアネート類は、黄変の問題がなく、高い透明性が要求される光学用として好ましい。また、かかるポリイソシアネート類は、塗膜が強硬になり過ぎず、光硬化型樹脂等の収縮、膨潤による応力を緩和でき、密着性が保持されて好ましい。
【0031】
ウレタン樹脂に水溶性を付与させるためには、ウレタン分子骨格中にスルホン酸(塩)基又はカルボン酸(塩)基を導入(共重合)することができる。スルホン酸(塩)基は強酸性であり、その吸湿性能により耐湿性を維持するのが困難な場合があるので、弱酸性であるカルボン酸(塩)基を導入するのが好適である。また、ポリオキシアルキレン基などのノニオン性基を導入することもできる。
【0032】
ウレタン樹脂にカルボン酸(塩)基を導入するためには、例えば、ポリオール成分として、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸などのカルボン酸基を有するポリオール化合物を共重合成分として導入し、塩形成剤により中和する。塩形成剤の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミンなどのトリアルキルアミン類、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリンなどのN-アルキルモルホリン類、N-ジメチルエタノールアミン、N-ジエチルエタノールアミンなどのN-ジアルキルアルカノールアミン類が挙げられる。これらは単独で使用できるし、2種以上併用することもできる。
【0033】
水溶性を付与するために、カルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物を共重合成分として用いる場合は、ウレタン樹脂中のカルボン酸(塩)基を有するポリオール化合物の組成モル比は、ウレタン樹脂の全ポリオール成分を100モル%としたときに、3~60モル%であることが好ましく、5~40モル%であることが好ましい。前記組成モル比が3モル%以上の場合は、水分散性が良好で好ましい。また、前記組成モル比が60モル%以下の場合は、耐水性が保持されて耐湿熱性が保持されるため好ましい。
【0034】
本発明におけるウレタン樹脂のガラス転移点温度は0℃未満が好ましく、より好ましくは-5℃未満である。ガラス転移点温度が0℃未満の場合は塗布層の応力緩和の点から好適な柔軟性を奏しやすく好ましい。
【0035】
(ナフタレン骨格を有するポリエステル樹脂)
塗布層に含有されるポリエステル樹脂の酸成分として、ナフタレンジカルボン酸由来成分を含有させることにより、屈折率が増加し、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御し易くなる。また、耐湿熱性を向上させることが可能となる。
【0036】
このようなナフタレンジカルボン酸としては、2,6-ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂を構成する全ジカルボン酸成分中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、60モル%以上がよりさらに好ましい。
【0037】
また、本発明の効果を奏する範囲であれば、ポリエステル樹脂中の酸成分としてさらに、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-ナトリウムスルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、等を使用しても良い。これらを共重合させる場合、耐湿熱性、高屈折性の面で、ナフタレンジカルボン酸も含めて芳香族ジカルボン酸成分が70モル%以上、さらには80モル%以上となることが好ましい。特に耐湿熱性、高屈折性を重視する場合は芳香族ジカルボン酸成分を90モル%以上、さらには95モル%以上、特には100%とすることが好ましい。
【0038】
本発明の効果を奏する範囲であれば、ポリエステル樹脂中のジオール成分としてさらに、エチレングリコール、1,3-プロパングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等を使用しても良い。
【0039】
また、塗布層中のポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂の含有量を少なくした場合に塗膜の柔軟性が悪くなり、後加工処理等で塗布層の削れや粒子の脱落が生じる恐れがある。この様な場合は、ポリエステル樹脂に下記式(1)で表されるジカルボン酸成分及び/又は下記式(2)で表されるジール成分と含ませることが好ましい形態の一つで
ある。
(1)HOOC-(CH2)n-COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO-(CH2)n-OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
【0040】
このように、特定の長さの炭素成分を有する酸成分及び/又はジオール成分を含有することで、ポリエステル樹脂に柔軟性を付与し、比較的大きな粒子であっても、保持し易く、塗布層の削れや粒子の脱落を抑制することができる。
式(1)のジカルボン酸成分としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などが上げられる。また、式(2)のジオール成分としてはブタンジオール、へキサンジオール等が上げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂は水、または、水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール、アルキルセルソルブ、ケトン系、エーテル系を50質量%未満含む水溶液)または、有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸エチル等)に対して溶解または分散したものが使用できる。
【0042】
ポリエステル樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。
【0043】
ポリエステル樹脂の数平均分子量は、塗膜強度、水分散容易性などの面から、5000~40000であることが好ましい。さらに好ましくは10000~30000であり、特に好ましくは12000~25000である。
【0044】
なお、ナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステル樹脂は単一のものであっても良く、2種以上のブレンド物であっても良い。2種以上のブレンド物の場合、ポリエステル樹脂成分の合計として上記の組成であることが好ましい。
【0045】
塗布層中に含有されるその他の成分としては、ポリカーボネート骨格を有するポリウレタン樹脂やナフタレンジカルボン酸成分を含むポリエステル樹脂以外のバインダー樹脂、架橋剤、滑剤粒子、塗布層の屈折率を高める金属酸化物粒子、界面活性剤などが挙げられるが、本発明においては、架橋剤、滑剤粒子、塗布層の屈折率を高める金属酸化物粒子が含有されていることが好ましい。塗布液中には溶媒が含まれ、また界面活性剤等を含ませる場合があるが、乾燥、硬化後に残存する溶媒の質量や界面活性剤の固形分の質量は極微量であり、塗布液から計算で各成分の組成求める際には、残存溶媒の質量や界面活性剤の固形分の質量は塗布層全体の固形分質量に必ずしも含めなくてもよく、実施例の組成の記載は前記の計算に基づいている。
【0046】
塗布層中に架橋構造を形成させるために、塗布層は架橋剤が含まれて形成されていてもよい。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。具体的な架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系等が挙げられる。これらの中で、塗液の経時安定性、高温高湿処理下の密着性向上効果からメラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系の架橋剤が好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用することができる。
【0047】
架橋剤を塗布層中に含んで構成されている場合、その架橋剤の含有量は、塗布層の全固形成分中、5質量%以上50質量%以下が好ましい。より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。10質量%以上であれば、塗布層の樹脂の強度が保持され、高温高湿下での密着性が良好であり、40質量%以下であれば、塗布層の樹脂の柔軟性が保持され、常温、高温高湿下での密着性が保持されて好ましい。
【0048】
また、塗布層中に屈折率が1.7以上の高屈折率の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させることが好ましい。このような金属酸化物としては、TiO2(屈折率2.7)、ZnO(屈折率2.0)、Sb2O3(屈折率1.9)、SnO2(屈折率2.1)、ZrO2(屈折率2.4)、Nb2O5(屈折率2.3)、CeO2(屈折率2.2)、Ta2O5(屈折率2.1)、Y2O3(屈折率1.8)、La2O3(屈折率1.9)、In2O3(屈折率2.0)、Cr2O3(屈折率2.5)等、及びこれらの金属原子を含む複合酸化物粒子等が挙げられる。
【0049】
粒子Aの屈折率の下限は好ましくは1.7であり、より好ましくは1.75である。粒子Aの屈折率の上限は好ましくは3.0であり、より好ましくは2.7であり、さらに好ましくは2.5である。上記を範囲にすることにより、低干渉性、透明性、密着性、耐ブロッキング性のバランスを良好に取ることができる。
【0050】
粒子Aとして用いられる複合酸化物粒子はTiO2/ZrO
2
粒子(ジルコニア/チタニア混合粒子)が好ましい。ジルコニア/チタニア混合粒子とは、ジルコニアとチタニアが単一の液体中でそれぞれ単独で分散し、複合体を形成していないような集合状態でジルコニアとチタニアの両者を含む粒子群である。もちろん、塗布層中では液体成分は乾燥工程や硬化工程で殆ど蒸発してなくなっている。このような粒子Aを塗布層が含んでいることで滑り性と透明性のバランス優れ、高い透明性と低干渉性を確保できるものである。液体は後述の所謂インラインコーティング法で塗布層を形成し易くするため、水系の液体であることが好ましい。
【0051】
ジルコニア/チタニア混合粒子にはジルコニア/チタニア以外の他の成分が含まれていても構わず、無機粒子であっても、有機粒子であってもよく、特に限定されるものではないが、シリカ、二酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、タルク、カオリナイト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどのポリエステルに対し不活性な無機粒子が例示される。
【0052】
粒子Aの平均粒径は5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上であり、さらに好ましくは15nm以上であり、特に好ましくは20nm以上である。粒子Aの平均粒径は5nm以上であると、凝集しにくく好ましい。
【0053】
粒子Aの平均粒径は200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下であり、特に好ましくは60nm以下である。粒子Aの平均粒径は200nm以下であると透明性が良好で好ましい。
【0054】
本発明において、塗布層中に滑剤粒子(粒子B)を含有させることが好ましい。
【0055】
粒子Bは、(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられるが、塗布層に適度な滑り性を与えるために、シリカが特に好ましく使用される。
【0056】
粒子Bの平均粒径は200nm以上であることが好ましく、より好ましくは250nm以上であり、さらに好ましくは300nm以上であり、特に好ましくは350nm以上である。粒子Bの平均粒径は200nm以上であると、凝集しにくく、滑り性が確保できて好ましい。
【0057】
粒子Bの平均粒径は2000nm以下であることが好ましく、より好ましくは1500nm以下であり、さらに好ましくは1000nm以下であり、特に好ましくは700nm以下である。粒子Bの平均粒径が2000nm以下であると、透明性が保たれ、また、粒子が脱落することがなく好ましい。
【0058】
粒子A及びBの表面処理を行っても良く、表面処理法としてはプラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とカップリング剤を使用する化学的表面処理があるが、カップリング剤の使用が好ましい。カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。粒子Bがシリカの場合はシランカップリング処理が特に有効である。粒子Bの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いても良いし、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させても良い。もちろん粒子Aに用いてもよい。
【0059】
塗布層中の粒子Aの含有量は2質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。塗布層中の粒子Aの含有量は2質量%以上であると、塗布層の屈折率を高く保つことができ、低干渉性が効果的に得られて好ましい。
【0060】
塗布層中の粒子A含有量は50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以下である。塗布層中の粒子A含有量は50質量%以下であると、造膜性が保たれて好ましい。
【0061】
塗布層中の粒子B含有量は0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。塗布層中の粒子B含有量は0.01質量%以上であると、適度な滑り性が保たれて好ましい。
【0062】
塗布層中の粒子B含有量は2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。塗布層中の粒子B含有量は2質量%以下であると、ヘイズが低く保たれて透明性の点で好ましい。
【0063】
塗布層の膜厚は0.001μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上であり、さらに好ましくは0.02μm以上であり、特に好ましくは0.05μm以上である。塗布層の膜厚が0.001μm以上であると、接着性が良好であり好ましい。
【0064】
塗布層の膜厚は2μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.8μm以下であり、特に好ましくは0.5μm以下である。塗布層の膜厚が2μm以下であると、ブロッキングを生じるおそれがなく好ましい。
【0065】
塗布層には、塗布時のレベリング性の向上、塗布液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコーン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好
ましい。これらの界面活性剤は、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果や密着性を損なわない程度の範囲で塗布層に含有させることが好ましい。
【0066】
塗布層に他の機能性を付与するために、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果や密着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0067】
塗工方法としては、ポリエステル基材フィルム製膜時に同時に塗工する所謂インラインコーティング法、及び、ポリエステル基材フィルムを製膜後、別途コーターで塗工する所謂オフラインコーティング法のいずれも適用できるが、インラインコーティング法が効率的でより好ましい。
【0068】
塗工方法としては塗布液をポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する)フィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられる。これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
【0069】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
【0070】
塗工液の固形分濃度はバインダー樹脂の種類や溶媒の種類などにもよるが、2質量%以上であることが好ましく、4質量%であることがより好ましい。塗工液の固形分濃度は3
5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下である。
【0071】
塗布後の乾燥温度についても、バインダー樹脂の種類、溶媒の種類、架橋剤の有無、固形分濃度などにもよるが、80℃以上であることが好ましく、250℃以下であることが好ましい。
【0072】
塗布層の表面粗さ(Ra)は、塗布層表面の滑り性等と関係があり、0.01nm以上であることが好ましく、より好ましくは0.1nm以上であり、さらに好ましくは0.2nm以上であり、特に好ましくは0.5nm以上である。一方、塗布層の表面粗さ(Ra)の上限については、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下であり、さらに好ましくは80nm以下であり、特に好ましくは50nm以下である。
【0073】
(光学用易接着性ポリエステルフィルムの製造)
本発明における光学用易接着性ポリエステルフィルムは、一般的なポリエステルフィルムの製造方法に従って製造することができる。例えば、ポリエステル樹脂を溶融し、シート状に押出し成形された無配向ポリエステルをガラス転移温度以上の温度において、ロールの速度差を利用して縦方向に延伸した後、テンターにより横方向に延伸し、熱処理を施す方法が挙げられる。
【0074】
本発明におけるポリエステルフィルムは一軸延伸フィルムであっても、二軸延伸フィルムであってもかまわないが、二軸延伸フィルムを液晶パネル前面の保護フィルムとして用いた場合、フィルム面の真上から観察しても虹状の色斑が見られないが、斜め方向から観察した時に虹状の色斑が観察される場合があるので注意が必要である。
【0075】
この現象は、二軸延伸フィルムが、走行方向、幅方向、厚さ方向で異なる屈折率を有する屈折率楕円体からなり、フィルム内部での光の透過方向により面内リタデーションがゼロになる(屈折率楕円体が真円に見える)方向が存在するためである。従って、液晶表示画面を斜め方向の特定の方向から観察すると、面内リタデーションがゼロになる点を生じる場合があり、その点を中心として虹状の色斑が同心円状に生じることとなる。そして、フィルム面の真上(法線方向)から虹状の色斑が見える位置までの角度をθとすると、この角度θは、フィルム面内の複屈折が大きいほど大きくなり、虹状の色斑は見え難くなる。二軸延伸フィルムでは角度θが小さくなる傾向があるため、一軸延伸フィルムのほうが虹状の色斑は見え難くなり好ましい。
【0076】
しかしながら、完全な一軸性(一軸対称)フィルムでは配向方向と直行する方向の機械的強度が著しく低下するので好ましくない。本発明は、実質的に虹状の色斑を生じない範囲、または液晶表示画面に求められる視野角範囲において虹状の色斑を生じない範囲で、二軸性(二軸対象性)を有していることが好ましい。
【0077】
(積層ポリエステルフィルム)
本発明において、主に光学用途に用いられる積層ポリエステルフィルムは、本発明の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂等からなるハードコート層等を設けることにより得られる。
【0078】
本発明における易接着性ポリエステルフィルムの塗布層上に、機能層を設けることも好ましい形態である。機能層とは、写り込み防止やギラツキ抑制、虹ムラ抑制、キズ抑制などを目的として、前述のハードコート層の他、防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層、低反射層および帯電防止層などの機能性を有する層のことをいう。機能層は、当該技術分野において公知の各種のものを使用することができ、その種類は特に制限されない。以下、各機能層について説明する。
【0079】
例えば、ハードコート層の形成には、公知のハードコート層を用いることができ、特に限定されないが、乾燥、熱、化学反応、もしくは電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する樹脂化合物を用いることができる。このような、硬化性樹脂としては、メラミン系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルアルコール系の硬化性樹脂が挙げられるが、高い表面硬度もしくは光学設計を得る点で光硬化性型のアクリル系硬化性樹脂が好ましい。このようなアクリル系硬化性樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート系モノマーやアクリレート系オリゴマーを用いることができ、アクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。これらアクリル系硬化性樹脂に反応希釈剤、光重合開始剤、増感剤などを混合することで、前記光学機能層を形成するためのコート用組成物を得ることができる。
【0080】
上記のハードコート層は、外光を散乱させる防眩機能(アンチグレア機能)を有していてもよい。防眩機能(アンチグレア機能)は、ハードコート層の表面に凹凸を形成することにより得られる。このとき、フィルムのヘイズは、理想的には0~50%であることが好ましく、より好ましくは0~40%、特に好ましくは0~30%である。もちろん、0%は理想的なもので、0.2%以上であっても構わず、0.5%以上であっても構わない。
【0081】
そのため、本発明におけるフィルムの用途は主に光学用フィルムの全般にわたり、プリズムレンズシート、AR(アンチリフレクション)フィルム、ハードコートフィルム、拡散板、破砕防止フィルムなどのLCDやフラットTV、CRTなどの光学用部材のベースフィルム、プラズマディスプレイ用の前面板に部材である近赤外線吸収フィルタ、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスなどの透明導電性フィルム、などに好適に使用することができる。
【0082】
上述のハードコート層形成のための電子線または紫外線により硬化するアクリル樹脂としてより詳しくは、アクリレート系の官能基を有するものであり、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N-ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を含有するものが使用できる。
【0083】
但し、電子線または紫外線硬化型樹脂の場合には、前述の樹脂中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミロキシムエステル、テトラメチルチラウムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
【0084】
また、シリコーン系(シロキサン系)熱硬化性樹脂は、酸または塩基触媒下においてオルガノシラン化合物を単独または2種以上混合して加水分解及び縮合反応させて製造することができる。特に、低反射用の場合においてフルオロシラン化合物を1種以上混合して加水分解及び縮合反応させることが低屈折率性、耐汚染性などの向上においてさらに良い。
【0085】
(積層ポリエステルフィルムの製造)
本発明における積層ポリエステルフィルムの製造方法について、易接着性ポリエステルフィルムを例にして説明するが、当然これに限定されるものではない。
【0086】
前述の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層面に、前記の電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂を塗布する。塗布層が両面に設けられている場合は、少なくとも一方の塗布層面に塗布する。塗布液は特に希釈する必要はないが、塗布液の粘度、濡れ性、塗膜厚等の必要に応じて有機溶剤により希釈しても特に問題はない。塗布層は、前述のフィルムに前記塗布液を塗布後、必要に応じて乾燥させた後、塗布液の硬化条件に合わせて、電子線または紫外線照射及び加熱することにより塗布層を硬化させることにより、ハードコート層を形成する。
【0087】
本発明において、ハードコート層の厚みは、1~15μmであることが好ましい。ハードコート層の厚みが1μm以上であると、ハードコート層としての耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等に対する効果が効率的に発揮されて好ましい。一方、厚みが15μm以下であるとハードコート層のフレキシブル性が保たれて、亀裂等が発生するおそれがなく好ましい。
【0088】
耐傷付き性としては塗工面を黒台紙で磨耗させたとき、目視でキズが目立たないことが好ましい。前記の評価でキズが目立なければ、ガイドロール通過時に傷が付きにくく、ハンドリング性等の観点で好ましい。
【0089】
静摩擦係数(μs)の下限は好ましくは0.3であり、0.3以上であると滑り過ぎる問題がないので、製造工程においてハードクロムメッキのロール等で巻き上げが容易となり。ハンドリング性、耐ブロッキング性が保たれて好ましい。静摩擦係数(μs)の上限は好ましくは0.5であり、0.5以下であると、巻上げ時に接触相手面となるフィルムにキズをつけてしまうおそれがなく好ましい。
【0090】
動摩擦係数(μd)の下限は好ましくは0.4であり、0.4以上であると滑り過ぎる問題がないので、製造工程においてハードクロムメッキのロール等で巻き上げが容易となり。ハンドリング性、耐ブロッキング性が保たれて好ましい。動摩擦係数(μd)の上限は好ましくは0.6であり、0.6以下であると、巻上げ時に接触相手面となるフィルムにキズをつけてしまう恐れがなく好ましい。
【0091】
本発明におけるポリエステルフィルムは光学用易接着性フィルムとして主に用いるため、高い透明性を有することが好ましい。ヘイズの下限は理想的には0%であり、0%に近いほどより好ましい。ヘイズの上限は好ましくは2%であることが好ましく、2%以下であると光線透過率が良好であり、液晶表示装置において鮮明な画像を得ることができて好ましい。ポリエステルフィルムのヘイズは、例えば、後述する方法に従って測定することができる。
【0092】
易接着層性の塗布層とハードコート層との密着性は、後述の測定法による評価によって、下限は好ましくは80%であることが好ましく、上限は好ましくは100%である。80%以上であると、塗布層とハードコート層との密着性が十分保持された状態といえる。
【0093】
後述の方法に従って評価する易接着層とハードコート層との高温高湿条件下における密着性について、下限は好ましくは10%であることが好ましく、高温高湿密着性の上限は好ましくは100%である。10%以上であると、高温高湿条件下において易接着層とハードコート層の密着性が一通り満足され、後加工工程での通過性が一通り満足する。より好ましくは、50%以上である。
【0094】
ハードコートを形成した偏光子保護用ポリエステルフィルムは、後述の評価方法による干渉斑が確認できないことが好ましく、当該評価方法による干渉斑が確認できないものであれば、液晶画像装置の視認性が良好となり好ましい。
【0095】
本発明における易接着性ポリエステルフィルムは、種々の用途に用いることができるが、液晶表示装置に用いられる偏光板の製造工程で好ましく用いられ、偏光板を構成する偏光子の保護フィルムとして特に好ましく用いられるものである。通常、偏光子はポリビニルアルコール製のものが多く、本発明の易接着性ポリエステルフィルムは、偏光子に必要に応じてポリビニルアルコール製やそれに架橋剤等を加えた接着剤を用いて接着される。その際、本発明の易接着性ポリエステルフィルムの塗布層は、偏光子と接着する側の面ではなく、その反対面に向けて用いることがより好ましい。本発明の易接着性ポリエステルフィルムの偏光子と接着される表面には、例えば、国際公開第2012/105607号に記載されるような、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及び架橋剤を含む易接着層が積層されていることが好ましい。
【実施例】
【0096】
次に、実施例、比較例、及び参考例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0097】
(1)平均粒径
〔走査型電子顕微鏡による測定法〕
上記の粒子の平均粒径の測定は下記の方法により行うことができる。粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2~5mmとなるような倍率で、300~500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。本発明における塗布層中に存在する粒子の平均粒径は当該測定方法により測定できる。
【0098】
〔動的光散乱法〕
粒子の平均粒径は、粒子やフィルムの製造時においては動的散乱法により求めることもできる。ゾルを分散媒で希釈し、分散媒のパラメーターを用いてサブミクロン粒子アナライザーN4 PLUS(ベックマン・コールター社製)にて測定し、キュムラント法にて演算することで平均粒子径を得た。動的光散乱法ではゾル中の粒子の平均粒子径が観測され、粒子同士の凝集があるときは、それらの凝集粒子の平均粒子径が観測される。
【0099】
(2)粒子の屈折率
粒子の屈折率測定は下記の方法により行うことができる。無機粒子を150℃で乾燥後、乳鉢で粉砕した粉末を、溶媒1(粒子より低屈折率のもの)に浸漬した後、溶媒2(粒子より高屈折率のもの)を少量ずつ微粒子がほぼ透明になるまで添加した。この液の屈折率をアッベの屈折計(株式会社アタゴ製アッベ屈折率計)を用いて測定した。測定は23℃、D線(波長589nm)で行われた。上記溶媒1と溶媒2は互いに混合可能なものを選定し、屈折率に応じて、例えば1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、2-プロパノール、クロロホルム、四塩化炭素、トルエン、グリセリン等の溶媒が挙げられる。
【0100】
(3)易接着性ポリエステルフィルムのヘイズ
易接着性ポリエステルフィルムのヘイズはJIS K 7136:2000に準拠し
濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
【0101】
(4)密着性
実施例で得られたポリエステルフィルムの易接着層上に、前述のハードコート層の形成の項目で記述したハードコート層を形成した。ハードコートを形成した易接着用ポリエステルフィルムをJIS-K5400-1990の8.5.1の記載に準拠し、ハードコート層と基材フィルムとの密着性を求める。
【0102】
具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープをハードコート積層偏光子保護フィルムのハードコート層面から引き剥がして、ハードコート積層偏光子保護フィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数える。
密着性(%)={1-(剥がれたマス目の数/100)}×100
【0103】
(5)干渉縞改善性(虹彩状色彩)
各実施例で得られた光学用易接着性ポリエステルフィルムの易接着層上にハードコート層を形成した。ハードコートを形成した光学用易接着性ポリエステルフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層面とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工株式会社製、ビニルテープ No21;黒)を貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして、3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として、斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40~60cm、15~45°の角度)で観察した。
【0104】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0105】
(6)耐ブロッキング性
2枚の積層フィルムの塗布面が対向するように重ね合わせ、5kg/cm2の荷重を掛け、これを50℃の雰囲気中で24時間放置した。重ね合わせたフィルムを剥離し、その剥離状態を下記の基準で判定した。
◎:軽く剥離できる
○:剥離時に抵抗があるが、塗布層が相手面に転移はしない。
△:剥離音が発生し、部分的に塗布層が相手面に転移している
×:2枚のフィルムが固着し剥離できないもの、あるいは剥離できても基材フィルムが劈開している
【0106】
(7)ガラス転移温度
JIS K7121-1987に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、DSC6200)を使用して、樹脂サンプル10mgを25~300℃の温度範囲にわたって20℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
【0107】
(8)数平均分子量
樹脂0.03gをテトラヒドロフラン 10ml に溶かし、GPC-LALLS装置低角度光散乱光度計 LS-8000(東ソー株式会社製、テトラヒドロフラン溶媒、リファレンス:ポリスチレン)を用い、カラム温度30℃、流量1ml/分、カラム(昭和電工社製shodex KF-802、804、806)を用い、数平均分子量を測定した。
【0108】
(9)樹脂組成
樹脂を重クロロホルムに溶解し、ヴァリアン社製核磁気共鳴分析計(NMR)ジェミニ-200を用いて、1H-NMR分析を行ってその積分比より各組成のモル%比を決定した。
【0109】
(ポリエステル樹脂の重合)
塗布層用共重合ポリエステル樹脂(B1)~(B3)の重合
攪拌機、温度計、及び部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレー
ブに、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル342.0質量部、ジメチルテレフタレート35.0質量部、ジメチル-5-ナトリウムスルホイソフタレート35.5質量部、エチレングリコール198.6質量部、1,6-ヘキサンジオール118.2質量部、及びテトラーnーブチルチタネート0.4質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。さらに、セバシン酸60.7質量部を加え、エステル化反応を行なった.次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(B1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
共重合ポリエステル樹脂(B1)の組成は表1の通りである。
また、原料を変更して同様にして表1に記載の組成の共重合ポリエステル樹脂(B2)、(B3)を得た。
【0110】
【0111】
(ポリエステル水分散体の製造)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、共重合ポリエステル樹脂(B1)30質量部、エチレングリコール-n-ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水55質量部をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分25質量%の乳白色のポリエステル水分散体(Bw1)を作製した。
同様にして共重合ポリエステル樹脂B2からポリエステル水分散体Bw2を、共重合ポリエステル樹脂B3からポリエステル水分散体Bw3を得た。
【0112】
(ポリウレタン水分散体の製造)
脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とする水溶性ポリウレタン樹脂(A1)の重合
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分37質量%の水溶性ポリウレタン樹脂(A1)を調製した。得られたポリウレタン樹脂のガラス転移点温度は-30℃であった。
【0113】
脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とする水溶性ポリウレタン樹脂(A2)の重合
イソホロンジイソシアネート38.41質量部、ジメチロールプロパン酸
6.95質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール158.99質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部とした以外はA1の重合と同様にして水溶性ポリウレタン樹脂(A2)を調製した。
【0114】
(ブロックポリイソシアネート系架橋剤の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物(旭化成ケミカルズ製、デュラネートTPA)100質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート55質量部、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量750)30質量部を仕込み、窒素雰囲気下、70℃で4時間保持した。その後、反応液温度を50℃に下げ、メチルエチルケトオキシム47質量部を滴下した。反応液の赤外スペクトルを測定し、イソシアネート基の吸収が消失したことを確認し、固形分40質量%のブロックポリイソシアネート水分散液(Cx1)を得た。
【0115】
(オキサゾリン系架橋剤の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコに水性媒体としてのイオン交換水58質量部とイソプロパノール58質量部との混合物、および、重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量部を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2-イソプロペニル-2-オキサゾリン16質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数・9モル、新中村化学製)32質量部、およびメタクリル酸メチル32質量部の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン基を有する水溶性樹脂(Cx2)を得た。
【0116】
(カルボジイミド系架橋剤の重合)
撹拌機、温度計、還流冷却管を備えたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネート168質量部とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(M400、平均分子量400)220質量部を仕込み、120℃で1時間、撹拌し、更に4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート26質量部とカルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-2-フォスフォレン-1-オキシド3.8質量部(全イソシイアネートに対し2質量%)を加え、窒素気流下185℃で更に5時間撹拌した。反応液の赤外スペクトルを測定し、波長2200~2300cm-1の吸収が消失したことを確認した。60℃まで放冷し、イオン交換水を567質量部加え、固形分40質量%のカルボジイミド水溶性樹脂(Cx3)を得た。
【0117】
(エポキシ系架橋剤)
エポキシ系架橋剤として、ナガセケムテックス社製 デナコール(登録商標)EX-521(固形分濃度100%)を使用した(エポキシ系架橋剤(Cx4))。
【0118】
(メラミン系架橋剤)
メラミン系架橋剤として、DIC社製 ベッカミン(登録商標)M-3(固形分濃度60%)を使用した(メラミン系架橋剤(Cx5))。
【0119】
(ジルコニア粒子)
特開2008-290896号公報の実施例8を参照し、以下のように行った。
3リットルのガラス製容器に、純水2283.6gとシュウ酸二水和物403.4gとを投入し、40℃に加熱して10.72質量%シュウ酸水溶液を調製した。この水溶液を
撹拌しながら、オキシ炭酸ジルコニウム粉末(ZrOCO3、AMR International Corp.製、ZrO2に換算して39.76質量%を含有する。)495.8gを徐々に添加し30分間混合した後、90℃で30分の加熱を行った。次いで、25.0質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(多摩化学工業(株)製)1747.2gを1時間かけて徐々に添加した。この時点で混合液はスラリー状であり、ZrO2換算で4.0質量%含有した。このスラリーをステンレス製オートクレーブ容器に移し替え、145℃で5時間の水熱処理を行った。この水熱処理後の生成物は、未解膠物がなく完全にゾル化した。得られたゾルは、ZrO2として4.0質量%含有し、pH6.8、動的光散乱法による平均粒子径は19nmであった。また、ゾルをZrO2濃度2.0質量%に純水で調整して測定した透過率は88%であった。透過型電子顕微鏡により粒子を観察したところ、7nm前後のZrO2一次粒子の凝集粒子がほとんどであった。上記の水熱処理を行って得られたZrO2濃度4.0質量%のジルコニアゾル4000gを限外濾過装置を使用して、純水を徐々に添加しながら洗浄及び濃縮を行って、ZrO2濃度13.1質量%、pH4.9、ZrO2濃度13.1質量%のときの透過率76%のジルコニアゾル953gが得られた。
【0120】
上記の洗浄及び濃縮を行って得られたZrO2濃度13.1質量%のジルコニアゾル300gに20質量%クエン酸水溶液3.93g及び25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液11.0gを添加した後、更に限外濾過装置で濃縮を行ったところ、ZrO2濃度30.5質量%の高濃度のジルコニアゾル(Cpz1)129gが得られた。この得られた高濃度のジルコニアゾルは、pH9.3、動的光散乱法による平均粒子径19nmであった。また、このジルコニアゾルは沈降物がなく、50℃の条件下で1ヶ月以上安定であった。
【0121】
さらに特開2008-290896号公報の実施例2を参照して平均粒径32nmのCpz2を、実施例1を参照して平均粒径48nmのCpz3を得た。
【0122】
(チタニア粒子)
特開2011-132484号公報の実施例1を参照し、以下のように行った。
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジーズ(株)製)をTiO2換算基準で7.75質量%含む四塩化チタン水溶液12.09kgと、アンモニアを15質量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)4.69kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分含有量が10質量%の含水チタン酸ケーキ9.87kgを得た。次に、このケーキに、過酸化水素を35質量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)11.28kgと純水20.00kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらに純水57.52kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO2換算基準で1質量%含む過酸化チタン酸水溶液を98.67kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0123】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液98.67kgに陽イオン交換樹脂(三菱ケミカル(株)製)4.70kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO2換算基準で1質量%含むスズ酸カリウム水溶液12.33kgを撹拌下で徐々に添加
した。次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱した。
【0124】
次に、得られた混合水溶液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV-3010)で濃縮して、固形分含有量が10質量%の、チタン系微粒子(以下、「P-1」という)を含む水分散ゾル(Cpt1)9.90kgを得た。このようにして得られたゾル中に含まれる固形物を上記の方法で測定したところ、ルチル型の結晶構造を有する、チタニウムおよびスズを含む複合酸化物からなるチタン系微粒子(一次粒子)であった。さらに、このチタン系微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO2 87.2質量%、SnO2 11.0質量%、およびK2O 1.8質量%であった。また、該混合水溶液のpHは10.0であった。さらに、前記チタン系微粒子を含む水分散ゾルは透明な乳白色であり、この水分散ゾル中に含まれる前記チタン系微粒子の動的光散乱法による平均粒子径は35nmであり、さらに100nm以上の粒子径を有する粗大粒子の分布頻度は0%であった。さらに、得られたチタン系微粒子の屈折率は2.42であるとみなすことができた。
さらに特開2011-132484号公報の実施例2を参照して平均粒径32nmのCpt2、実施例4を参照して平均粒径42nmのCpt3を得た。
【0125】
(ジルコニア/チタニア混合粒子)
上記で得られたジルコニア粒子(Cpz1)とチタニア粒子(Cpt1)を75/25の質量比率で混合することで固形分濃度13質量%のジルコニア/チタニア混合粒子((Cp1):平均粒径23nm)を作成した。
さらに同様にしてCpz2とCpt2からCp2(平均粒径32nm)を、Cpz3とCpt3からCp3(平均粒径46nm)を得た。
【0126】
(セリア粒子)
特開2011-132107号公報を参照し、以下のように実験を行った。
塩化セリウム(III)七水和物216gを蒸留水10Lに入れて攪拌し、溶解した。さらに攪拌を続けながら温度を93℃に昇温し、1.0%水酸化ナトリウム水溶液5.6kgの全量を一度に加えた。さらに93℃で6時間攪拌した後、25℃に冷却して白色沈殿を得た。
遠心分離機により沈殿物を分離し、得られた沈殿物に蒸留水15Lを加えて攪拌、再分散後、遠心分離機で沈殿物を分離した。この操作を合計3回行って、沈殿物を洗浄した。
得られた沈殿物に蒸留水を加え、pHを9.2に調整して超音波分散機で分散させ、固形分濃度12質量%のセリア粒子分散体(Cp4)を得た。動的光散乱法による平均粒径は34nmであった。
【0127】
(ハードコート層の形成)
後述する実施例で製造したポリエステルフィルムの偏光子と接着する面とは反対側の面に、下記組成のハードコート層形成用塗布液を#10ワイヤーバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cm2の紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層を有する偏光子保護フィルムを得た。
・ハードコート層形成用塗布液
メチルエチルケトン 65.00質量%
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 27.20質量%
(新中村化学製A-DPH)
ポリエチレンジアクリレート 6.80質量%
(新中村化学製A-400)
光重合開始剤 1.00質量%
(チバスペシャリティーケミカルズ社製イルガキュア184)
【0128】
(実施例1)
塗布液原料
・粒子A水分散体:平均粒径23nmのジルコニア/チタニア混合粒子(Cp1)
(ジルコニア/チタニア中のジルコニア量75質量%、固形分濃度13質量%)
・粒子B水分散体:平均粒径450nmのシリカゾル(固形分濃度4質量%)
・ ポリエステル水分散体((Bw1)、固形分濃度25質量%)
・ポリウレタン水分散体((A1),固形分濃度37質量%)
・ブロックイソシアネート系架橋剤((Cx1)、固形分濃度40質量%)
【0129】
(1)易接着層の塗布液調整
下記の組成の塗布液を調整した。
水 36.00質量部
イソプロピルアルコール 30.31質量部
粒子A水分散体 10.99質量部
粒子B水分散体 0.91質量部
ポリエステル水分散体 8.80質量部
ポリウレタン水分散体 3.96質量部
ブロックイソシアネート系架橋剤 5.50質量部
高沸点溶媒(NMP) 3.00質量部
界面活性剤(フッソ系、固形分濃度10質量%) 0.25質量部
【0130】
(2)易接着性ポリエステルフィルムの製造
フィルム原料ポリマーとして、固有粘度(溶媒:フェノール/テトラクロロエタン=60/40)が0.62dl/gで、かつ粒子を実質上含有していないPET樹脂ペレットを、133Paの減圧下、135℃で6時間乾燥した。その後、押し出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出しして、表面温度20℃に保った回転冷却金属ロール上で急冷密着固化させ、未延伸PETシートを得た。
【0131】
この未延伸PETシートを加熱されたロール群及び赤外線ヒーターで100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向に3.5倍延伸して、一軸延伸PETフィルムを得た。
【0132】
次いで、前記塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で15秒間乾燥した。なお、最終延伸後の乾燥後の塗布量が0.12g/m2になるように調整した。引続いてテンターで、150℃で幅方向に4.0倍に延伸し、フィルムの幅方向の長さを固定した状態で、230℃で0.5秒間加熱し、さらに230℃で10秒間3%の幅方向の弛緩処理を行ない、厚さ38μmの光学用易接着性ポリエステルフィルムを得た。塗布層内のポリウレタン樹脂成分、ポリエステル樹脂成分、その他の成分は、表2に記載の通り、各々20質量%、30質量%、50質量%である。
【0133】
(実施例2、3、18、参考例19、実施例20~25、比較例1~7)
塗布層内でのポリウレタン樹脂成分、ポリエステル樹脂成分、その他の成分の比率を表2又は3になるようにした以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0134】
(実施例4~7)
塗布液の架橋剤を変更し、塗布層内の各成分の組成を表2に記載の通りに変更した以外
は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0135】
(実施例8~12)
塗布液の粒子Aの種類を変更し、塗布層内の各成分の組成を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0136】
(実施例13~15)
塗布層の膜厚を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0137】
(実施例16、17)
塗布層中の粒子Bの量を表2の通りに変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0138】
(実施例26、27)
共重合ポリエステル樹脂成分の種類を表3の通りに変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0139】
(実施例28)
ポリウレタン樹脂成分の種類を表3の通りに変更した以外は実施例1と同様にして易接着性ポリエステルフィルムを得た。
【0140】
それぞれの結果を表2および3に示す。また、各実施例、比較例の三角図表上でのプロットを
図1上に示す。
【0141】
【0142】
【0143】
(静摩擦係数、動摩擦係数(μs、μd))
なお、実施例、比較例で得られたポリエステルフィルムの摩擦係数はJIS K7125-1999 プラスチック-フィルムおよびシート摩擦係数試験方法に準拠し、テンシロン(東洋ボールドウィン、RTM-100)を用いて測定したところ、いずれのフィルムも静摩擦係数(μs)で0.35~0.5、動摩擦係数(μd)で0.45~0.6の範囲内であり、巻き上げ性、ハンドリング性において問題のないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明により、虹ムラを抑制できる低干渉性、透明性、耐ブロッキング性、各種機能層との密着性、滑り性に優れ、光学用途、特に偏光子保護フィルム用途において好適に使用できる易接着性ポリエステルフィルムと前記を用いた積層ポリエステルフィルムの提供が可能となった。
【符号の説明】
【0145】
P1 : 座標(10,55,35)と(10,10,80)とを通る直線
Q1 : 座標(10,10,80)と(70,10,20)とを通る直線
R1 : 座標(70,10,20)と(50,40,10)とを通る直線
S1 : 座標(45,45,10)と(10,55,35)とを通る直線
○ : 各実施例又は参考例のプロット
□ : 各比較例のプロット
三角図表内の数値 : 各実施例、参考例又は各比較例の番号