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特許7231034アンテナモジュール及びアンテナモジュール付車両ルーフ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】アンテナモジュール及びアンテナモジュール付車両ルーフ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/40 20150101AFI20230221BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20230221BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20230221BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H01Q5/40
H01Q1/22 B
H01Q1/32 Z
H01Q1/52
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021533013
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2020026832
(87)【国際公開番号】W WO2021010274
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019129835
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】竹中 祐司
(72)【発明者】
【氏名】大見 則親
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
(72)【発明者】
【氏名】山岸 傑
(72)【発明者】
【氏名】福永 貴徳
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-091557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0073456(US,A1)
【文献】特開2003-163531(JP,A)
【文献】特開2003-017916(JP,A)
【文献】特開2003-332817(JP,A)
【文献】特開2008-278447(JP,A)
【文献】特開2016-197061(JP,A)
【文献】特開2017-060038(JP,A)
【文献】特開2019-078041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/00-25/04
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナと、
前記第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナと、
を備え、
前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナとを含む互いに異なる周波数帯による3種以上のアンテナが前記基板に設けられ(ループアンテナの内側に他のループアンテナが形成され、当該他のループアンテナの内側にパッチアンテナが形成される場合を除く)、
前記少なくとも1つの第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナよりも前記基板の縁に近い位置に設けられており、
前記少なくとも1つの第2通信用アンテナのうち前記3種以上のアンテナのなかで最も高い周波数帯による前記第2通信用アンテナが、前記基板の縁に対して最も遠い距離となる位置に設けられており、
前記基板の周りに電波の障害物となる囲い部が配設されている、アンテナモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナモジュールであって、
前記第1周波数範囲は2.1GHz以下の周波数帯であり、
前記第2周波数範囲は5.7GHz以上の周波数帯である、アンテナモジュール。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のアンテナモジュールであって、
前記少なくとも1つの第1通信用アンテナのうち最も低い周波数帯による第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナの中で前記基板の縁に対して最も近い距離となる位置に設けられる、アンテナモジュール。
【請求項4】
基板と、
第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナと、
前記第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナと、
を備え、
前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナとを含む互いに異なる周波数帯による3種以上のアンテナが前記基板に設けられ(ループアンテナの内側に他のループアンテナが形成され、当該他のループアンテナの内側にパッチアンテナが形成される場合を除く)、
前記少なくとも1つの第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナよりも前記基板の縁に近い位置に設けられており、
前記少なくとも1つの第2通信用アンテナのうち前記3種以上のアンテナのなかで最も高い周波数帯による前記第2通信用アンテナが、前記基板の縁に対して最も遠い距離となる位置に設けられている、アンテナモジュールと、
少なくとも一部の周波数帯の電波に対して障害となる車両ルーフと
を備え、
前記車両ルーフに開口が形成され、
前記アンテナモジュールが前記開口に嵌め込まれている、アンテナモジュール付車両ルーフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナモジュール及びアンテナモジュール付車両ルーフに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、筐体と、アンテナと、金属パネルと、モジュール基板とを備え、これらが一体化されたルーフモジュールを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-200086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ルーフモジュールの周囲には、電波の障害物が設けられることがある。電波の伝播環境を向上させることが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、アンテナモジュールにおける電波による通信環境を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のアンテナモジュールは、基板と、第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナと、前記第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナと、を備え、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナとは前記基板に設けられ、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナよりも前記基板の縁に近い位置に設けられている、アンテナモジュールである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1はアンテナモジュールが組込まれた車両を示す概略斜視図である。
図2図2はアンテナモジュールを示す斜視図である。
図3図3はアンテナモジュールを示す平面図である。
図4図4はアンテナモジュールにおける電波の伝播状況を示す説明図である。
図5図5は基板上におけるアンテナの配置例を示す説明図である。
図6図6は基板上におけるアンテナの配置1~配置5の例を示す図である。
図7図7は配置1~配置5におけるReturn loss[dB]及び利得Aveのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のアンテナモジュールは、次の通りである。
【0011】
(1)基板と、第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナと、前記第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナと、を備え、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナとは前記基板に設けられ、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナよりも前記基板の縁に近い位置に設けられている、アンテナモジュールである。第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナよりも基板の縁から離れた位置に設けられている。このため、アンテナモジュールの周囲に電波の障害物があったとしても、当該少なくとも1つの第2通信用アンテナからの電波は、当該障害物によって遮蔽され難い。また、第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナよりも基板の縁に近い位置に設けられている。アンテナモジュールの周囲に電波の障害物があったとしても、相対的に低い周波数帯の電波は、回折して伝播し易い。結果、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が向上する。
【0012】
(2)前記第1周波数範囲は2.1GHz以下の周波数帯であり、前記第2周波数範囲は5.7GHz以上の周波数帯であってもよい。これにより、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が向上する。
【0013】
(3)前記基板の周りに電波の障害物となる囲い部が配設されていてもよい。基板の周りに電波の障害物となる囲い部が配設されている場合において、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が効果的に向上する。
【0014】
(4)前記少なくとも1つの第1通信用アンテナのうち最も低い周波数帯による第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナの中で前記基板の縁に対して最も近い距離となる位置に設けられてもよい。最も低い周波数帯による第1通信用アンテナが基板の縁に対して最も近い距離となる位置に設けられても、最も低い周波数帯による第1通信用アンテナからの電波は回折して伝播し易い。
【0015】
(5)前記少なくとも1つの第2通信用アンテナのうち最も高い周波数帯による第2通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナの中で前記基板の縁の縁から最も遠い距離となる位置に設けられてもよい。最も高い周波数帯による第2通信用アンテナは、前記基板の縁の縁から最も遠い距離となる位置に設けられるため、当該最も高い周波数帯による第2通信用アンテナからの電波は、障害物によって遮蔽され難い。
【0016】
(6)前記(1)から(5)の何れか1つのアンテナモジュールと、少なくとも一部の周波数帯の電波に対して障害となる車両ルーフと、を備え、前記車両ルーフに開口が形成され、前記アンテナモジュールが前記開口に嵌め込まれている、アンテナモジュール付車両ルーフとしてもよい。車両ルーフによって、少なくとも一部の周波数帯の電波が、車室内外で遮蔽される。アンテナモジュールは、車両ルーフの開口に嵌め込まれるため、アンテナは、外部との間で良好に通信することができる。この際、ルーフが通信の障害となり得る。しかしながら、第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナよりも基板の縁から離れた位置に設けられている。このため、アンテナモジュールの周囲に車両ルーフがあったとしても、当該少なくとも1つの第2通信用アンテナからの電波は、当該車両ルーフによって遮蔽され難い。また、第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナよりも基板の縁に近い位置に設けられている。アンテナモジュールの周囲に車両ルーフがあったとしても、相対的に低い周波数帯の電波は、回折して伝播し易い。結果、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が向上する。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のアンテナモジュール及びアンテナモジュール付車両ルーフの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
[実施形態]
以下、実施形態に係るアンテナモジュール及びアンテナモジュール付車両ルーフについて説明する。図1はアンテナモジュール20が組込まれた車両10を示す概略斜視図である。図2はアンテナモジュール20を示す斜視図である。図3はアンテナモジュール20を示す平面図である。
【0019】
アンテナモジュール20の組付対象となる車両10は、ボディ12を備える。ボディ12は車両10の外形をなす部分である。ボディ12は、モノコックボディであってもよいし、ラダーフレーム上に搭載されるボディであってもよい。ボディ12は、車両ルーフ部分13を備える。車両ルーフ部分13は、車室の上方に設けられる部分である。車両ルーフ部分13は、ボディ12のうちの他の部分と一体形成されていてもよい。車両ルーフ部分13は、ボディ12のうちの他の部分と別体とされ、当該ボディ12のうちの他の部分に装着される構成であってもよい。
【0020】
車両ルーフ部分13は、金属によって形成されてもよいし、樹脂によって形成されてもよい。ここでは、車両ルーフ部分13は、金属板によって形成されている。この車両ルーフ部分13は、電波を遮蔽する。車両ルーフ部分13は、樹脂製であってもよい。この場合、車両ルーフ部分13には、電波遮蔽層が設けられてもよい。電波遮蔽層は、アルミニウム、鉄等の金属で形成された部分であってもよい。電波遮蔽層は、周知の周波数選択膜(FSS: Frequency Selective Surface)のように、選択的な電波遮蔽性を有する層であってもよい。
【0021】
車両ルーフ部分13が金属で形成されている場合、又は、車両ルーフ部分13に電波遮蔽層が設けられる場合が、少なくとも一部の周波数帯の電波に対して障害となる車両ルーフの一例である。
【0022】
車両ルーフ部分13に開口13aが形成されている。ここでは、車両ルーフ部分13における後ろ寄りに開口13aが形成されている。開口13aは、車幅方向中央に位置している。なお、前後方向とは、車両10に対する前後方向であり、車両10の進行方向が前側であり、後退方向が後ろ側である。また、左右方向は車両10に対して前側を向いた状態を基準とする。左右方向は幅方向でもある。また、上下方向は、車両10に対する上下方向である。開口は、車両10の前側寄りに位置していてもよいし、いずれか一側に偏っていてもよい。
【0023】
アンテナモジュール20は、開口13aに嵌め込まれる。車両ルーフ部分13における開口13aにアンテナモジュール20が嵌め込まれたものは、アンテナモジュール付車両ルーフ70であると把握され得る。
【0024】
アンテナモジュール20は、基板22と、複数種のアンテナ31、32、33、34、35とを備える。
【0025】
基板22は、絶縁板を含む。基板22は、絶縁板を含まない金属板であってもよい。基板22は、絶縁部材と金属部材との複合板であってもよい。基板22の表側(車外側)の面に、複数種のアンテナ31、32、33、34、35が設けられる。絶縁板の裏側(車室側)の面には、金属箔等によってグラウンドとなる導体層が形成される。
【0026】
複数種のアンテナ31、32、33、34、35は互いに異なる周波数帯による通信用アンテナである。ここでの通信は、双方向通信及び片方向通信を含む。アンテナ31、32、33、34、35は、面状のアンテナであってもよいし、立体的な構造を有するアンテナであってもよい。
【0027】
複数種のアンテナ31、32、33、34、35のうち最も高い周波数帯によって通信を行うものは、通信用アンテナ31であるとする。この場合、通信用アンテナ31は、複数種のアンテナ31、32、33、34、35の中で基板22の縁から最も遠い距離D1となる位置に設けられる。
【0028】
複数種のアンテナ31、32、33、34、35のうち最も低い周波数帯によって通信を行うものは、通信用アンテナ35であるとする。この通信用アンテナ35が、複数種のアンテナ31、32、33、34、35の中で基板22の縁から最も近い距離D5となる位置に設けられる。
【0029】
なお、アンテナ31、32、33、34、35と、基板22の縁との距離は、アンテナ31、32、33、34、35の外縁部と基板22の外縁部との最短距離をいう。
【0030】
より具体的な例としては、アンテナ31、32、33、34、35としては、公衆通信回線又は専用通信回線における無線基地局との間で通信を行うアンテナ、車車間通信又は路車間通信のためのアンテナ、GPS信号受信のためのアンテナ等であることが想定される。例えば、アンテナ31は、28GHz帯による通信用アンテナである。アンテナ31は、基板22の中央から一方の短辺に寄った位置に設けられる。アンテナ31と基板22の縁との距離はD1である。アンテナ32は、5.8GHz帯による通信用アンテナである。アンテナ32は、基板22のうち1つの角に近い位置に設けられる。このアンテナ32と基板22の縁との距離はD2である。アンテナ33は、5GHz帯による通信用アンテナである。アンテナ33は、基板22の長辺方向中間部であって一方の長辺に近い位置に設けられる。アンテナ33はダイバーシティ用のアンテナであるため、複数(ここでは2つ)図示されている。このアンテナ33と基板22の縁との距離はD3である。アンテナ34は1.5GHz帯による通信用アンテナである。このアンテナ34は、基板22のうち他の1つの角に近い位置に設けられる。このアンテナ34と基板22の縁との距離はD4である。アンテナ35は、760MHz帯による通信用アンテナである。アンテナ35は、基板22の長辺方向中間部であって他方の長辺に近い位置に設けられる。このアンテナ35と基板22の縁との距離はD5である。
【0031】
上記周波数帯を想定すると、アンテナ31が最も高い周波数帯(28GHz)によって通信を行うための通信用アンテナである。このアンテナ31と基板22の縁との距離D1が、他の距離D2、D3、D4、D5よりも大きい。つまり、最も高い周波数帯用のアンテナ31が、他のアンテナ32、33、34、35よりも基板22の縁から離れて位置している。
【0032】
また、アンテナ35が最も低い周波数帯(760MHz帯)によって通信を行うための通信用アンテナである。このアンテナ35と基板22の縁との距離D5が、他の距離D1、D2、D3、D4よりも小さい。つまり、最も低い周波数帯用のアンテナ35が、他のアンテナ31、32、33,34よりも基板22の縁の近くに位置している。
【0033】
最も高い周波数帯と最も低い周波数帯との間の周波数帯用のアンテナ32、33、34と基板22の縁との距離D2、D3、D4は、上記距離D1よりも小さく、上記距離D5よりも大きい。つまり、中間の周波数帯用のアンテナ32、33、34は、アンテナ31よりも基板22の縁の近くに位置し、アンテナ35よりも基板22の縁から離れて位置している。
【0034】
中間の周波数帯用のアンテナ32、33、34の基板22の縁との距離は、特に限定されない。一例として、アンテナ32、33、34の周波数帯が高くなるのにつれて、アンテナ32、33、34と基板22の縁との距離が大きくなるようにしてもよい。例えば、アンテナ32の周波数帯(5.8GHz帯)は、アンテナ33の周波数帯(5GHz帯)よりも高い。また、アンテナ33の周波数帯(5GHz帯)はアンテナ34の周波数帯(1.5GHz帯)よりも高い。このような場合、アンテナ32と基板22の縁との距離D2は、アンテナ33と基板22の縁との距離D3よりも大きくてもよい。また、アンテナ33と基板22の縁との距離D3は、アンテナ34と基板22の縁との距離D4よりも大きくてもよい。
【0035】
本実施形態では、基板22及びアンテナ31、32、33、34、35は、ケース40内に格納されている。ケース40は、樹脂等によって形成されている。ケース40は扁平な直方体状に形成されている。基板22の周縁部の4つの辺がケース40の周壁の4つの辺に対向した状態で、基板22がケース40内に収納されている。ケース40における下側部分から外周囲に向けて鍔部41が張出している。
【0036】
アンテナモジュール20が車両ルーフ部分13の開口13aに嵌め込まれた状態で、鍔部41が開口13aの縁に対して車室側から接触することができる。これにより、車両ルーフ部分13に対するアンテナモジュール20の位置決めが図られる。この状態で、アンテナモジュール20の外向き面が、車両ルーフ部分13の外向き面と面一となっていてもよいし、あるいは、車両ルーフ部分13の外向き面からから突出してもよい。
【0037】
図4はアンテナモジュール20における電波の伝播状況を概略的に示す説明図である。図4ではアンテナ31、35は図記号として描かれている。基板22上におけるアンテナ31、35の位置は、距離D1、D5が反映されている。また、アンテナモジュール20の周囲に、電波の障害物となる囲い部50が配設されている。囲い部50は、上記したように、車両ルーフ部分13が金属で形成されている場合における車両ルーフ部分13,又は、車両ルーフ部分13に電波遮蔽層が設けられる場合における電波遮蔽層部分であることが想定される。また、アンテナモジュール20の周囲に金属枠が設けられる場合において、当該金属枠が電波の障害物となる囲い部50となることも想定され得る。
【0038】
アンテナモジュール20の周囲に上記囲い部50が設けられると、囲い部50は、アンテナ31、35から又はアンテナ31、35に放射される電波を遮蔽し得る。特に、アンテナ31、35が囲い部50から突出しないで内側に退避した位置にあると、アンテナ31、35から放射される電波は、上方及び斜め上方にはある程度放射されるが、水平方向に近い角度には直接放射され難くなる。
【0039】
本実施形態では、複数種のアンテナ31、32、33、34、35のうち最も低い周波数帯によって通信を行うアンテナ35は、基板22の縁から最も近い距離D5となる位置に設けられる。囲い部50は、基板22の外周りに位置していることから、アンテナ35は、囲い部50に対して比較的近くに位置することになる。低い周波数帯の電波W1は、比較的回折し易い。このため、アンテナ35が囲い部50の近くに設けられたとしても、当該アンテナ35から放射される電波W1は、回折して、伝播され得る。
【0040】
また、複数種のアンテナ31、32、33、34、35のうち最も高い周波数帯によって通信を行うアンテナ31は、基板22の縁から最も遠い距離D1となる位置に設けられる。囲い部50は、基板22の外周りに位置していることから、アンテナ35は、囲い部50に対して比較的遠くに位置することになる。高い周波数帯の電波W2は直進性が高い。しかしながら、アンテナ35は、囲い部50から比較的離れていることから、高い周波数帯の電波W2は、比較的水平に近い角度にも放射される。
【0041】
以上のように構成されたアンテナモジュール20及びアンテナモジュール付車両ルーフ70によると、複数種のアンテナ31、32、33、34、35のうち最も高い周波数帯による通信用アンテナ31は、基板22の縁から最も離れた位置に設けられる。このため、アンテナモジュール20の周囲に電波の障害物(例えば、囲い部50)があったとしても、当該最も高い周波数帯の電波W2は、当該障害物に対して遮蔽され難く、なるべく水平に近い角度で周りに放射され得る。結果、最も高い周波数帯による通信用アンテナ31を介して、良好に通信可能である。また、複数種のアンテナ31、32、33、34、35のうち最も低い周波数帯による通信用アンテナ35は、基板22の縁に最も近い位置に設けられている。アンテナモジュール20の周囲に電波の障害物(例えば、囲い部50)があったとしても、当該最も低い周波数帯の電波W1は、回折して伝播し易い。結果、最も低い周波数帯による通信用アンテナ35を介しても良好に通信可能である。これらにより、アンテナモジュール20における電波による通信環境が向上する。
【0042】
特に、基板22の周りに電波の障害物となる囲い部50が配設されている場合において、アンテナモジュール20における電波による通信環境が効果的に向上する。
【0043】
障害物が車両ルーフ部分13である場合、当該車両ルーフ部分13によって少なくとも一部の周波数帯の電波を、車室内外で遮蔽することができる。この場合、アンテナモジュール20は、車両ルーフ部分13の開口13aに嵌め込まれるため、アンテナ31、32、33、34、35は、外部との間で良好に通信することができる。
【0044】
この場合において、車両ルーフ部分13が電波の障害なり得る。しかしながら、上記したように、最も高い周波数帯による通信用アンテナ31が基板22の縁から最も離れ、最も低い周波数帯による通信用アンテナ35が基板22の縁に対して最も近くに設けられる。このため、アンテナモジュール20における電波による通信環境が向上する。
【0045】
上記実施形態では、最も高い周波数帯による通信用アンテナ31が基板22の縁から最も離れた位置に設けられ、最も低い周波数帯による通信用アンテナ35が基板22の縁に最も近い位置に設けられる例が説明された。
【0046】
しかしながら、上記例に限られず、アンテナモジュール20における電波による通信環境の向上が可能である。
【0047】
例えば、アンテナモジュール20は、基板22と、第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナと、前記第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナと、を備え、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナと前記少なくとも1つの第2通信用アンテナとは前記基板22に設けられ、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナは、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナよりも前記基板22の縁に近い位置に設けられていると把握されてもよい。
【0048】
この場合において、例えば、前記第1周波数範囲は2.1GHz以下の周波数帯であり、前記第2周波数範囲は5.7GHz以上の周波数帯であってもよい。また、第1周波数帯は、200MHz以上2.1GHz以下であってもよい。第2周波数範囲は5.7GHz以上40GHz以下であってもよい。
【0049】
例示されたように、アンテナ31が28GHz帯による通信用アンテナであり、アンテナ32が5.8GHz帯による通信用アンテナであり、アンテナ33が5GHz帯による通信用アンテナであり、アンテナ34が1.5GHz帯による通信用アンテナであり、アンテナ35が760MHz帯による通信用アンテナであるとする。この場合、少なくとも1つの第1通信用アンテナは、アンテナ34及びアンテナ35である。また、少なくとも1つの第2通信用アンテナは、アンテナ31及びアンテナ32である。アンテナ33は、第1通信用アンテナ及び第2通信用アンテナのいずれにも該当しないアンテナである。
【0050】
少なくとも1つの第1通信用アンテナであるアンテナ34、35(縁からの距離はD4、D5)は、少なくとも1つの第2通信用アンテナであるアンテナ31、32(縁からの距離はD1、D2)よりも、基板22の縁に近い位置に設けられている(つまり、D4、D5は、D1、D2よりも小さい)。
【0051】
この場合であっても、第1周波数範囲よりも高い第2周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第2通信用アンテナ31、32は、前記少なくとも1つの第1通信用アンテナ34、35よりも基板22の縁から離れた位置に設けられている。このため、アンテナモジュール20の周囲に電波の障害物があったとしても、当該少なくとも1つの第2通信用アンテナ31、32からの電波は、当該障害物によって遮蔽され難い。また、第1周波数範囲に属する周波数帯による少なくとも1つの第1通信用アンテナ33、34は、前記少なくとも1つの第2通信用アンテナ31、32よりも基板の縁に近い位置に設けられている。アンテナモジュール20の周囲に電波の障害物があったとしても、相対的に低い周波数帯の電波は、回折して伝播し易い。結果、アンテナモジュール20における電波による通信環境が向上する。
【0052】
例えば、無線による自動車の施解錠システム(キーレスシステム等)用のアンテナが315/433MHz用、日本におけるITS(Intelligent Transport Systems)用のアンテナが755MHz~765MHz用、移動通信用(例えばLTE(Long Term Evolution)用)のアンテナが0.8/1.5/1.7/2GHz用、リモートスタート用のアンテナが920MHz用、GNSS(Global Navigation Satellite System、GPS)のアンテナが1.57542GHz用、衛星ラジオ用のアンテナが2.32~2.35GHz用、Bluetooth(商標)又はWi-Fi(商標)用のアンテナが2.4/5GHz、移動通信用(例えば、5G Sub6)のアンテナが3.6~4.1GHz/4.5~4.6GHz(日本国内)、日本のETC(Electronic Toll Collection System)のアンテナが5.8GHz用、アメリカのITS(Intelligent Transport Systems)のアンテナが5.9GHz用、移動通信用(例えば、5G ミリ波)のアンテナが28GHz/26GHz/39GHz用であることが考えられる。これらのうちの複数のアンテナが同一基板に設けられる場合において、複数のアンテナを、第1周波数帯と第2周波数帯とで分けて、上記のように基板22上に配置するとよい。
【0053】
図5に示すように、基板122上における複数のアンテナ131、132、133、134の配置位置を変えて、Return loss[dB]及び利得Aveを求めるシミュレーションを行ってみた。シミュレーション条件は、次の通りである。基板122の周りに、ルーフに相当する電波障害物124が配置されるとした。基板122には、日本のITS用のアンテナ131(760MHz)、移動通信用のアンテナ132(TEL用 800MHz帯)を2つ、アメリカのITS用のアンテナ133(5.9GHz)、移動通信用(5G Sub6)のアンテナ134(3.6~4.1GHz/4.5~4.6GHz(日本国内))を2つ、配置することとした。なお、基板122上には、GPSアンプ基板140も配置されることを考慮した。
【0054】
上記条件下で、アンテナ131、132、133、134の配置位置を変更した配置1、配置2、配置3、配置4、配置5を検討した。それぞれの配置1~5におけるアンテナ131、132、133、134の配置位置を図6に示す。図6において、アンテナ131、132、133、134の中心の位置が、基板22の中心を原点とするXY用座標で示されている。
【0055】
なお、既に例示したように、前記第1周波数範囲は2.1GHz以下の周波数帯であり、前記第2周波数範囲は5.7GHz以上の周波数帯であるとすると、アンテナ131、132が第1アンテナであり、アンテナ133が第2アンテナであり、アンテナ134は、第1アンテナ及び第2アンテナのいずれでもない。図6に示すいずれの配置1~5においても、第1アンテナであるアンテナ131、132は、第2アンテナであるアンテナ133よりも縁の近くにある例を示している。
【0056】
それぞれの配置1~5に対する、Return loss[dB]及び利得Aveのシミュレーション結果が図7に示される。
【0057】
シミュレーション結果から、配置4の場合には、Return loss[dB]及び利得Aveについて、良好な結果が得られていることがわかる。また、図4の場合には、基板122の中心と第1アンテナ131、132との距離と、基板122の中心と第2アンテナ133との距離との差を大きくすることができる。このため、第1アンテナ131、132をなるべく基板122の中心近くに配置し、第2アンテナをなるべく基板122の縁近くに配置するという点で、明確に配置位置を区分けするのにも適していることがわかる。例えば、第1アンテナについては基板の中心とアンテナ中心とが20cm~90cmとなる位置、好ましくは、約20cmとなる位置に設けられてもよい。第2アンテナについては基板の中心とアンテナ中心とが75cm~90cmとなる位置、好ましくは、約70cmとなる位置に設けられてもよい。
【0058】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0059】
なお、本開示は、下記のアンテナモジュールを含む。
【0060】
(1)基板と、前記基板に設けられた複数種のアンテナと、を備え、前記複数種のアンテナは、互いに異なる周波数帯による通信用アンテナであり、前記複数種のアンテナのうち最も高い周波数帯による通信用アンテナは、前記複数種のアンテナの中で前記基板の縁から最も遠い距離となる位置に設けられ、前記複数種のアンテナのうち最も低い周波数帯による通信用アンテナは、前記複数種のアンテナの中で前記基板の縁に対して最も近い距離となる位置に設けられている、アンテナモジュールである。複数種のアンテナのうち最も高い周波数帯による通信用アンテナは、基板の縁から最も離れた位置に設けられている。このため、アンテナモジュールの周囲に電波の障害物があったとしても、当該最も高い周波数帯の電波は、当該障害物によって遮蔽され難い。また、複数種のアンテナのうち最も低い周波数帯による通信用アンテナは、基板の縁に最も近い位置に設けられている。アンテナモジュールの周囲に電波の障害物があったとしても、当該最も低い周波数帯の電波は、回折して伝播し易い。結果、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が向上する。
【0061】
(2)前記基板の周りに電波の障害物となる囲い部が配設されていてもよい。基板の周りに電波の障害物となる囲い部が配設されている場合において、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が効果的に向上する。
【0062】
また、本開示は、下記のアンテナモジュール付車両ルーフを含む。
【0063】
(3)前記アンテナモジュールと、少なくとも一部の周波数帯の電波に対して障害となる車両ルーフと、を備え、前記車両ルーフに開口が形成され、前記アンテナモジュールが前記開口に嵌め込まれている、アンテナモジュール付車両ルーフとしてもよい。車両ルーフによって、少なくとも一部の周波数帯の電波が、車室内外で遮蔽される。アンテナモジュールは、車両ルーフの開口に嵌め込まれるため、アンテナは、外部との間で良好に通信することができる。この際、ルーフが通信の障害となり得る。しかしながら、複数種のアンテナのうち最も高い周波数帯による通信用アンテナは、基板の縁から最も離れた位置に設けられる。このため、当該最も高い周波数帯の電波は、当該車両ルーフに対して干渉し難い。また、複数種のアンテナのうち最も低い周波数帯による通信用アンテナは、基板の縁に最も近い位置に設けられる。当該最も低い周波数帯の電波は、車両ルーフを回折して伝播し易い。このため、アンテナモジュールにおける電波による通信環境が向上する。
【符号の説明】
【0064】
10 車両
12 ボディ
13 車両ルーフ部分
13a 開口
20 アンテナモジュール
22 基板
31、32、33、34、35 アンテナ
40 ケース
41 鍔部
50 囲い部
70 アンテナモジュール付車両ルーフ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7