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特許7231105蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】蓄電デバイス包装材用接着剤、蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/121 20210101AFI20230221BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20230221BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20230221BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20230221BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230221BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230221BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230221BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20230221BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H01M50/121
H01M50/129
H01M50/131
H01M50/105
C09J175/04
C09J175/06
C09J163/00
C09J7/35
B32B7/022
B32B27/00 D
B32B27/26
B32B27/36
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022177759
(22)【出願日】2022-11-07
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022055830
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白石 功貴
(72)【発明者】
【氏名】花木 寛
(72)【発明者】
【氏名】廣嶋 努
(72)【発明者】
【氏名】秋山 崇文
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-22910(JP,A)
【文献】特許第7099593(JP,B1)
【文献】特開2015-82354(JP,A)
【文献】特開2019-156925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/105-50/131
C09J 175/04
C09J 175/06
C09J 163/00
C09J 7/35
B32B 27/00-27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及びエポキシ樹脂(C)を含む蓄電デバイス包装材用接着剤であって、
前記ポリオール化合物(A)がエステル結合を有するポリオールを含み、
該蓄電デバイス包装材用接着剤を80℃2週間の条件で硬化させて得られる硬化膜を、20℃65%RHの環境下、速度6mm/分で2倍の長さに伸長させた時の応力をS1[N/mm]、伸長させた状態で100秒間保持した時の応力をS2[N/mm]とした際、下記式を満たすことを特徴とする蓄電デバイス包装材用接着剤。
式: 10.0≦(S1-S2)/S1×100≦40.0
【請求項2】
前記エステル結合を有するポリオールは、重量平均分子量が50,000~100,000である、請求項1に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項3】
前記エステル結合を有するポリオールは、エステル結合濃度が8.5~10.5[mmol/g]である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が90~1,200[g/eq]である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が90~1,200[g/eq]である、請求項3に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項6】
前記ポリオール化合物(A)が、ポリエステルポリオールを含み、前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が150~1,000[g/eq]であるエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項7】
前記ポリオール化合物(A)が、ポリエステルポリオールを含み、前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が150~1,000[g/eq]であるエポキシ樹脂を含む、請求項3に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項8】
前記ポリオール化合物(A)が、ポリエステルウレタンポリオールを含み、前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が100~450[g/eq]であるエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項9】
前記ポリオール化合物(A)が、ポリエステルウレタンポリオールを含み、前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が100~450[g/eq]であるエポキシ樹脂を含む、請求項3に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項10】
前記硬化膜の120℃における貯蔵弾性率が、1.00×10~9.99×10[Pa]である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項11】
前記硬化膜の120℃における貯蔵弾性率が、1.00×10 ~9.99×10 [Pa]である、請求項3に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項12】
前記硬化膜の120℃における貯蔵弾性率が、1.00×10 ~9.99×10 [Pa]である、請求項6に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項13】
前記硬化膜の120℃における貯蔵弾性率が、1.00×10 ~9.99×10 [Pa]である、請求項8に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤。
【請求項14】
少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されている構成を備えた蓄電デバイス包装材であって、
前記外層側接着剤層が、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物である、蓄電デバイス包装材。
【請求項15】
請求項14に記載の蓄電デバイス包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成している、蓄電デバイス用容器。
【請求項16】
請求項15に記載の蓄電デバイス用容器を備えてなる蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池等の蓄電デバイス用容器を形成するための蓄電デバイス包装材に関し、外観が良好であり、且つ優れた高温雰囲気下における接着強度と成型性と成型物の耐久性とを有する蓄電デバイス包装材用接着剤、該接着剤を用いてなる蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯型パソコン等の電子機器の急速な成長により、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池等の二次電池や電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタ等の蓄電デバイスの需要が増大してきた。これらの中でも、エネルギー密度の高さや軽量さから、小型のリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池の外装体としては、従来、金属製缶が用いられてきたが、軽量化や生産性の観点よりプラスチックフィルムや金属箔等を積層した包装材が主流となりつつある。
【0003】
例えば特許文献1には、所定のウレタン結合濃度を有するポリエステルウレタンポリオールと、ポリイソシアネートとを含有するポリウレタン接着剤を外層側接着剤層に用いた蓄電デバイス用包装材が、高温高湿・長期耐久性試験後においても層間の接着強度が低下せず、優れた成型性を有し、且つ層間の浮き等の外観不良を抑制できることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、所定の数平均分子量を有するポリエステルウレタンポリオールと、ポリイソシアネートとを含み、ウレタン結合の含有率とイソシアネート基の含有率の総和が所定範囲内であるラミネート接着剤が、加工性、成型性、耐湿熱性、外観を向上させることが開示されている。
【0005】
特許文献3には、重量平均分子量が約4万のポエステルウレタンポリオールと、ポリイソシアネートと、特定のエポキシ当量を有するエポキシ樹脂を所定範囲量含むラミネート接着剤が開示され、リチウムイオン電池等の2次電池の外装材等に用いることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2021-99915号公報
【文献】特開2016-196580号公報
【文献】特開2019-156925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、車載や家庭蓄電等用途が拡大すると共に、二次電池の大容量化が求められており、蓄電デバイス用包装材は良好な成型性が求められている。また、車載用途では、耐熱性や耐湿熱性について、良好な屋外長期耐久性が求められており、安全性の面からは、ポリマー型リチウムイオン電池や全固体電池の開発が進んでおり、電解液に含まれる低沸点のカーボネート溶剤が排除されることで、要求される耐熱耐久温度も高くなっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に記載された包装材は、接着剤層に主にポリエステルポリウレタン樹脂を含むが、エポキシ樹脂を含まないために、ポリエステル骨格の加水分解により分子量が減少し、厳しい外部環境に晒され続けた際に、成型物にデラミネーションが発生するという課題がある。
【0009】
特許文献3に記載されたラミネート用接着剤は、ポリオール成分の重量平均分子量が低く柔らかすぎる組成であるため、本願の特徴である式を満たさない。そのため、例えば120℃程度の高温雰囲気下における接着強度に劣るという課題がある。
【0010】
したがって本発明は、高温雰囲気下での接着強度(以下、熱間強度)、特にフィルムと金属箔との間の熱間強度に優れる蓄電デバイス用接着剤を提供することを目的とする。また、高温雰囲気下での良好な接着強度を有し、信頼性に優れた蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器、蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材用接着剤は、ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及びエポキシ樹脂(C)を含む蓄電デバイス包装材用接着剤であって、前記ポリオール化合物(A)がエステル結合を有するポリオールを含み、該蓄電デバイス包装材用接着剤を80℃2週間の条件で硬化させて得られる硬化膜を、20℃65%RHの環境下、速度6mm/分で2倍の長さに伸長させた時の応力をS1[N/mm]、伸長させた状態で100秒間保持した時の応力をS2[N/mm]とした際、下記式を満たすことを特徴とする。
式: 10.0≦(S1-S2)/S1×100≦40.0
【0013】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材用接着剤は、前記エステル結合を有するポリオールが、重量平均分子量が50,000~100,000であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材用接着剤は、前記エステル結合を有するポリオールが、エステル結合濃度が8.5~10.5[mmol/g]であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材用接着剤は、前記エポキシ樹脂(C)が、エポキシ当量が90~1,200[g/eq]であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材用接着剤は、前記ポリオール化合物(A)が、ポリエステルポリオールを含み、前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が150~1,000[g/eq]であるエポキシ樹脂を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材用接着剤は、前記ポリオール化合物(A)が、ポリエステルウレタンポリオールを含み、前記エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が100~450[g/eq]であるエポキシ樹脂を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材用接着剤は、前記硬化膜の120℃における貯蔵弾性率が、1.00×10~9.99×10[Pa]であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス包装材は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、内層側接着剤層及びヒートシール層が順次積層されている構成を備えた蓄電デバイス包装材であって、前記外層側接着剤層が、上記蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物であることを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る蓄電デバイス用容器は、上記蓄電デバイス包装材から形成されてなる蓄電デバイス用容器であって、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成していることを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る蓄電デバイスは、上記蓄電デバイス用容器を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、フィルムと金属箔との高温雰囲気下での接着強度(以下、熱間強度)に優れる蓄電デバイス用接着剤を提供することができる。また、高温雰囲気下での良好な接着強度を有し、高温耐久性、湿熱耐久性、ヒートシール耐性等の信頼性に優れた包装材、蓄電デバイス用容器、蓄電デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<蓄電デバイス包装材用接着剤>
本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤は、ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及びエポキシ樹脂(C)を含み、ポリオール化合物(A)がエステル結合を有するポリオールを含み、蓄電デバイス包装材用接着剤を80℃2週間の条件で硬化させて得られる硬化膜を、20℃65%RHの環境下、速度6mm/分で2倍の長さに伸長させた時の応力をS1[N/mm]、伸長させた状態で100秒間保持した時の応力をS2[N/mm]とした際、下記式を満たすことが重要である。
式: 10.0≦(S1-S2)/S1×100≦40.0
【0024】
上記式は、硬化膜の応力緩和の程度を表す。
一般的にエポキシ樹脂(C)はその剛直な分子構造ゆえに、蓄電デバイス用接着剤に添加することで接着剤の耐熱耐久性を向上させることができる。特に、ポリエステル系接着剤に添加することで、ポリエステルの加水分解を抑制し、耐湿熱性を大幅に向上させることができる。一方で、エポキシ樹脂はその骨格の剛直性ゆえに、接着剤の応力緩和性を低下させてしまう。
しかしながら、上記のように、エステル結合を有するポリオールとポリイソシアネートとエポキシ樹脂を含み、さらに、その硬化膜が上記式を満たす本発明の接着剤は、エポキシ樹脂が含まれるにもかかわらず、応力緩和に優れた塗膜を形成可能であり、優れた高温雰囲気下における接着強度(熱間強度)、及び成型性を発揮する。これにより、該接着剤を用いてなる成型物は、優れた湿熱耐久性、高温耐久性、ヒートシール耐性を発揮する。
【0025】
詳細には、上記式の値が10.0以上であると、応力緩和性に優れ、基材濡れが良好となり、熱間強度、耐湿熱性、耐熱耐久性及び成型性に優れる。上記式の値が40.0以下であると、応力緩和性が過剰になり過ぎず、凝集力が維持され、熱間強度及び成型性に優れる。上記式の値は、好ましくは、10.0以上30.0以下である。
【0026】
また、本発明の接着剤は、該接着剤を80℃2週間で硬化させた硬化膜の120℃における貯蔵弾性率が1.00×10~9.99×10(Pa)であることが好ましい。貯蔵弾性率が上記範囲内であると、接着剤により得られる硬化膜は、高温でも凝集力と基材密着性のバランスを保ち、良好な高温条件下での接着強度を示すため好ましい。より好ましくは、1.00×10~9.99×10(Pa)の範囲である。
貯蔵弾性率は、例えばJIS K 7244-1に準拠した方法で測定することができる。
【0027】
電池包装材料として用いられる接着剤は、良好な成型性が要求され、成型時の基材の伸
びに接着剤硬化膜が追従する必要がある。そして、成型性の観点から少なくとも2倍程度の伸長性が求められ、2倍に伸長できない場合は成型物の割れ等の不良に繋がる。したがって、硬化膜が2倍の長さに伸長できない接着剤は、成型性に著しく劣るものであるので、上記式を満たしていないものとする。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0028】
<ポリオール化合物(A)>
ポリオール化合物(A)は、エステル結合を有するポリオールを含むことを特徴とする。上記エステル結合を有するポリオールは、分子中にエステル結合と水酸基とを各々2つ以上含む化合物であればよい。ポリエステルポリオールを含むことで、凝集力に優れ、優れた接着力を発揮する。
【0029】
[エステル結合を有するポリオール]
エステル結合を有するポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとの反応物;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合したもの;これらの変性物が挙げられる。エステル結合を有するポリオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記多塩基酸は、以下に限定されないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸等の芳香族多塩基酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の脂肪族多塩基酸、若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
上記多価アルコールは、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、若しくはそれらの混合物が挙げられる。
上記多塩基酸成分及び多価アルコール成分は、各々、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
エステル結合を有するポリオールの重量平均分子量は、好ましくは50,000~100,000、より好ましくは55,000~85,000である。重量平均分子量が50,000以上であると、樹脂の伸長性が高まり加工性が向上する。重量平均分子量が100,000以下であると、接着剤の粘度が過度に高くならず、外観不良の発生に伴う成型性の低下を抑制できる。
また、重量平均分子量を55,000~85,000に制御することで、樹脂の伸長性と接着剤溶液の粘度の両立が一層しやすくなり、より好適に使用することができる。
【0033】
エステル結合を有するポリオールのエステル結合濃度は、好ましくは8.5mmol/g~10.5mmol/g、より好ましくは9.0~10.0mmol/gである。エステル結合を有するポリオールのエステル結合濃度が8.5mmol/g以上であると、酢酸エチル等のエステル系溶剤への溶解性に優れるため好ましい。10.5mmol/g以下であると、エステル結合による分子間相互作用による高粘度化や溶剤溶解性の低下が抑
制されるため好ましい。
【0034】
エステル結合を有するポリオールのエステル結合濃度は、以下の式を用いて算出することができる。
式: エステル結合濃度(mmol/g)=多塩基酸成分の仕込みモル量×カルボン酸
官能基数の総和/(全仕込み量×固形収率)×1000
例えば、後述する実施例におけるポリエステル(a)-3を例に挙げると、
オルトフタル酸(官能基数2):231.3g=1.393mol、
テレフタル酸(官能基数2):231.3g=1.393mol、
アジピン酸(官能基数2):174.4g=1.195mol、
全仕込み量1000.0g、収率84.7%
であるから、ポリエステル(a)-3のエステル結合濃度は、
(1.393×2+1.393×2+1.195×2)/(1000.0×0.847)×1000=9.40(mmol/g)
と、算出することができる。
【0035】
なお、エステル結合を有するポリオールが、後述するポリエステルウレタンポリオールである場合、そのエステル結合濃度は、以下の式を用いて算出することができる。
式: エステル結合濃度(mmol/g)=ポリエステルポリオールのポリエステル結
合濃度(mmol/g)×ウレタン樹脂を構成するポリオールとポリイソシアネートとの
合計質量に対するポリエステルポリオールの割合
例えば、後述する実施例におけるウレタン(b)-1に示したポリエステルウレタンポリオールのエステル結合濃度は、
ポリエステル結合濃度=9.40(mmol/g)×(100/(100+2.5))=
9.17(mmol/g)
となる。
【0036】
エステル結合を有するポリオールのガラス転移点は、好ましくは-20℃~40℃であり、より好ましくは-10~20℃である。ガラス転移点が-20℃以上であると、樹脂の凝集力がより高まり、接着性が一層向上する。ガラス転移点が40℃以下であると、ラミネート時の基材への親和性がより高まり、エージング後の接着力が一層向上する。
本明細書において、ガラス転移点は、例えばJIS K 6240に準拠した方法で求めることができる。
【0037】
エステル結合を有するポリオールは、好ましくは多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物(以下、ポリエステルポリオール)、又はその変性物である。該多塩基酸は、多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を50~80モル%含むことが好ましい。芳香族多塩基酸成分が50モル%以上であると芳香環由来の凝集力が高まり成型性が向上し、80モル%以下であると接着性の低下が抑制されるため好ましい。
【0038】
(ポリエステルポリオール)
本明細書におけるポリエステルポリオールは、上述するように、多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物である。
【0039】
ポリエステルポリオールの水酸基価は、好ましくは0.5~20mgKOH/g、より好ましくは3~10mgKOH/gである。水酸基は後述するポリイソシアネート成分(B)との架橋反応に用いられ、架橋反応が進行することで、接着剤が高分子量化し、包装材としての耐熱性を高めることができる。上記水酸基価は、例えば、JIS K 1557-1に準拠した方法で求めることができる。
【0040】
〔変性物:ポリエステルウレタンポリオール〕
ポリエステルポリオールの変性物としては、例えば、上述する多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物であるポリエステルポリオール中の水酸基と、ポリイソシアネートとを、水酸基過剰の条件で反応させてウレタン結合を導入したポリオール(以下、ポリエステルウレタンポリオール)が挙げられる。
【0041】
《ポリイソシアネート》
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、3官能以上のポリイソシアネートの単量体、前記ジイソシアネートから誘導される各種誘導体が挙げられる。
【0042】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-プチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。
【0043】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0044】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートが挙げられる。
【0045】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω、ω’-ジイソシアネート-1,4- ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物が挙げられる。
【0046】
3官能以上のポリイソシアネート単量体としては、例えば、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン等のトリイソシアネート;4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネ-ト等のテトライソシアネート;が挙げられる。
【0047】
前記ジイソシアネートから誘導される各種誘導体としては、前記ジイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロ-ル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール若しくはひまし油等との付加体(アダクト体);前記ジイソシアネートの三量体(トリマー、ヌレート体ともいう);ビウレット体;アロファネート体;炭酸ガスと
前記ジイソシアネートとから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;等を用いることができる。
【0048】
ポリエステルウレタンポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートとしては、中でも、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、又は3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネートが、包装材の成型性や変形成型物のヒートシール耐性の観点から好ましい。
【0049】
ポリイソシアネートと反応させるポリオールは、ポリエステルポリオールの他に、従来公知のその他ポリオールを含んでもよい。このような併用してもよいその他ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオールのほか、上述の[エスエル結合を有するポリオール]の項における多価アルコールを用いることができる。
ポリイソシアネートとの反応性の観点から、その他ポリオールとして好ましくは、1,4-ブタンジオール等の直鎖ジオールである。
【0050】
ポリエステルウレタンポリオールを得る際の、ポリエステルポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートとの反応温度は、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは80~150℃の範囲である。ウレタン化反応において、ポリエステルポリオールを含むポリオール中の水酸基に対する、ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル比(イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数)は、好ましくは0.1~0.9、より好ましくは0.3~0.8の範囲である。
【0051】
エステル結合を有するポリオールが、ポリエステルウレタンポリオールである場合、ウレタン化に用いるポリエステルポリオールの重量平均分子量は、好ましくは10,000~30,000の範囲である。重量平均分子量が10,000以上であると、基材との接着性がより向上し加工性に優れる。重量平均分子量が30,000以下であると、ポリエステルポリオール末端の水酸基濃度が過度に低くならず、ポリイソシアネートとの反応が速やかに進行する。
【0052】
ポリエステルウレタンポリオールの水酸基価は、好ましくは0.5~20mgKOH/g、より好ましくは1~10mgKOH/gの範囲である。ポリエステルウレタンポリオール中の水酸基は後述するポリイソシアネート化合物(B)との架橋反応に用いられ、架橋反応が進行することで、接着剤が高分子量化し、包装材としての耐熱性を高めることができる。上記水酸基価は、例えばJIS K 1557-1に準拠した方法で求めることができる。
【0053】
ポリエステルウレタンポリオールのウレタン結合濃度は、好ましくは0.10~0.90mmol/g、より好ましくは0.10~0.50mmol/gの範囲である。0.10mmol/g以上であると、優れた延伸性を発揮し、より成型性が向上する。0.90mmol/g以下であると、ウレタン結合濃度が過度になりすぎず適正な粘度となるため、より塗工性や外観に優れる。
【0054】
ウレタン結合濃度は、以下の式を用いて算出することができる。
式: ウレタン結合濃度(mmol/g)=(ポリイソシアネートのNCO質量%)×(ポリイソシアネートの質量%)÷42×1000+(ポリイソシアネート内部のウレタン結合数÷ポリイソシアネート分子量)×(ポリイソシアネートの質量%)×1000
【0055】
例えば、後述する実施例におけるウレタン(b)-1のウレタン結合濃度は、トリレンジイソシアネートのNCO質量%が48.2%、添加量は2.5質量%、内部のウレタン
結合数はゼロであることから、ウレタン結合濃度=0.482×(2.5/(100+2.5))/42×1000=0.28mmol/gとなる。
【0056】
〔変性物:酸無水物変性〕
また、ポリエステルポリオールの変性物としては、例えば、上述する多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物であるポリエステルポリオール中の水酸基の一部に、酸無水物を反応させてカルボキシ基を導入したものであってもよい。
【0057】
《酸無水物》
前記酸無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物は、例えば、炭素数2~30のアルキレングリコール又はアルカントリオールを無水トリメリット酸でエステル化反応させてなるエステル化合物が挙げられ、具体的には、エチレングリコールビスアンハイドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンハイドロトリメリテート等を用いることができる。
【0058】
上記エステル結合を有するポリオールは、耐熱耐久性の観点から、多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物であるポリエステルポリオールを含むことが好ましい。また、熱間強度、耐湿熱耐久性の観点から、多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物、及びポリイソシアネートの反応生成物であるポリエステルウレタンポリオールを含むことが好ましい。
【0059】
[その他ポリオール]
ポリオール化合物(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、エステル結合を有するポリオール以外のその他ポリオールを含有してもよい。このようなポリオールは、エステル結合を有しないポリオールであれば特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオールのほか、上述の[エスエル結合を有するポリオール]の項における多価アルコールを用いることができる。
【0060】
<ポリイソシアネート化合物(B)>
ポリイソシアネート化合物(B)は、ポリオール化合物(A)中の水酸基と架橋反応し、接着剤層の分子量を高め、エネルギー弾性を発現する内部凝集力を向上させる役割を担う。また、ポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基は、水と反応し凝集力の高いウレア結合を形成可能であることから、養生中に自己架橋反応させることで接着剤層の凝集力を高めることができる。
また、ポリイソシアネート化合物(B)は、後述する基材表面との相互作用を向上させる働きがあり、特に、コロナ放電処理等の物理処理や有機プライマー等の化学処理がなされた基材を用いた場合、ポリイソシアネート化合物(B)中のイソシアネート基と基材表面の活性水素基とが、化学反応することで、基材との間に強固な相互作用を発現させることができる。
このように、ポリイソシアネート化合物(B)を用いることにより、強固な接着剤層を形成することが可能となり、急激な環境変化に伴う基材の伸縮運動を接着剤層が抑制し、接着強度を高レベルで維持することが可能となる。
【0061】
ポリイソシアネート化合物(B)としては、上述の[変性物:ポリエステルウレタンポリオール]における(ポリイソシアネート)の項に記載したものを用いることができる。
ポリイソシアネート化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、ポリイソシアネート化合物(B)として好ましくは、ジイソシアネートのヌレ
ート体、ジイソシアネートにトリメチロールプロパンが付加したアダクト体、ビウレット型、イソシアネート残基を有するプレポリマー(ジイソシアネートとポリオールから得られる低重合体)、イソシアネート残基を有するウレトジオン体、アロファネート体、若しくはこれらの複合体である。
【0062】
車載向け蓄電デバイス用途においては、優れた高温耐久性、及び高い凝集力と加工性、を両立できる観点から、ポリイソシアネート化合物(B)として好ましくは、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体である。より好ましくは、接着性の観点から、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体である。
【0063】
ポリイソシアネート化合物(B)の含有量は、ポリオール化合物(A)の固形分質量を基準として、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは10.0質量%以上、さらに好ましくは12.0質量%以上である。また好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは50.0質量%以下、さらに好ましくは45.0質量%以下である。
ポリイソシアネート化合物(B)が5.0質量%以上であると、接着剤の硬化物である接着剤層の分子量を効率的に高めることができる。これにより、内部凝集力の立ち上がりが向上し、高い接着性と成型性が得られる。60.0質量%以下であると、架橋反応により生成する極性の高いウレタン結合やウレア結合の量が適切に制御され、接着性と成型物の耐久性とを両立できる。
【0064】
<エポキシ樹脂(C)>
本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤は、さらにエポキシ樹脂(C)を含むことを特徴とする。エポキシ樹脂(C)を含むことで、金属箔等の金属系素材に対する優れた接着強度を発揮する。また、エポキシ樹脂(C)を含むことで、耐湿熱性が一層向上する。
一般的に、接着剤がエステル結合を有すると、高温多湿環境において加水分解で酸が生じ、生じた酸は加水分解の触媒となり分子量の低下が加速する。分子量が低下した結果、凝集力が低下し、デラミネーションを引き起こす。しかしながら、エポキシ樹脂を含むことで、エポキシ樹脂が生じた酸と反応してポリエステルと架橋し、分子量の低下を抑えることができる。その結果、耐湿熱性が向上すると推測される。
【0065】
エポキシ樹脂(C)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジフェニルジアミノメタン型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、多環芳香族型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族骨格エポキシ樹脂、脂環式骨格エポキシ樹脂が挙げられる。
接着性や成型物の耐久性の観点から、エポキシ樹脂(C)として好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂等の多官能型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
これらエポキシ樹脂(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
エポキシ樹脂(C)は、接着性及び成型物の耐久性の観点から、エポキシ当量が90~1,200[g/eq]であることが好ましい。
またエポキシ樹脂(C)の配合量は、接着性及び成型物の耐久性の観点から、ポリオール化合物(A)の固形分質量を基準として、好ましくは1~80質量%である。1質量%以上であると、成型物の耐久性が効果的に向上し、80質量%以下であると、変形成型物のヒートシール耐性の低下が抑制される。
【0067】
本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤は、エポキシ樹脂を用いつつ適切な応力緩和性を有するものであり、上述するポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、エポキシ樹脂(C)の配合組成は、得られる硬化膜が所定の応力緩和率を有してさえいれば特に制限されないが、例えば、耐熱性を重視する場合は、剛直性が高い、即ちエポキシ当量が高いエポキシ樹脂(C)と、柔軟なポリオール化合物(A)とを組み合わせることが好ましい。
具体的には、エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が150~1,000[g/eq]であるエポキシ樹脂を含むことが好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、常温固形のBis-A型エポキシ樹脂を好適に用いることができる。
また、上記柔軟なポリオール化合物(A)は、多塩基酸と多価アルコールとの反応生成物であるポリエステルポリオールを含むことが好ましい。該ポリエステルポリオールはウレタン結合を有していないため、柔軟性に優れる。
上述の、エポキシ当量が150~1,000[g/eq]であるエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(C)の配合量は、基材密着と耐熱性の両立の観点から、柔軟なポリエステルポリオールを含むポリオール化合物(A)の固形分質量を基準として、好ましくは20~85質量%、より好ましくは30~80質量%である。20質量%以上であると、耐熱性が向上し、85質量%以下であると、基材密着性に優れる。
【0068】
一方、エポキシ当量が低いエポキシ樹脂(C)を用いる場合は、やや剛直なポリオール化合物(A)を組み合わせることが好ましい。
具体的には、エポキシ樹脂(C)は、エポキシ当量が100~450[g/eq]、好ましくは150~350[g/eq]であるエポキシ樹脂を含むことが好ましい。このようなエポキシ樹脂としては、常温液状のBis-A型エポキシ樹脂、Bis-A型ノボラックエポキシ樹脂、及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を好適に用いることができる。
また、上記やや剛直なポリオール化合物(A)は、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であるポリエステルウレタンポリオールを含むことが好ましい。該ポリエステルウレタンポリオールはウレタン結合を有するため、ポリエステルポリオールより剛直性を有する。
上述の、エポキシ当量が100~450[g/eq]であるエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂(C)の配合量は、基材密着と耐湿熱性の両立の観点から、やや剛直なポリエステルウレタンポリオールを含むポリオール化合物(A)の固形分質量を基準として、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~35質量%である。5質量%以上であると、耐湿熱性が向上し、40質量%以下であると、基材密着性に優れる。
【0069】
<溶剤>
本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤は、接着剤を基材に塗工する際、塗液を適度な粘度に調整するために、乾燥工程において基材への影響がない範囲内で溶剤を含有してもよい。溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸メトキシエチル等のエステル系化合物;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系化合物;トルエン、キシレン等の芳香族化合物;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族化合物;塩化メチレン、クロロベンゼン、クロロホルム等のハロ
ゲン化炭化水素化合物;エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルブタノール等のアルコール類;水が挙げられる。これら溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0070】
<任意成分>
本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、以下に示すようなその他成分を含有してもよい。その他成分は、ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、エポキシ樹脂(C)のいずれに配合してもよく、これらを混合する際に配合してもよい。これら任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよく、要求性能に応じて適宜選択される。
【0071】
(反応促進剤)
蓄電デバイス包装材用接着剤は、ウレタン化反応を促進するため、さらに反応促進剤を含有することができる。反応促進剤としては、例えば、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレート等金属系触媒;1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン-5、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の3級アミン;トリエタノールアミンのような反応性3級アミンが挙げられる。
【0072】
(リンの酸素酸又はその誘導体)
蓄電デバイス包装材用接着剤は、金属箔等の金属系素材に対する接着強度を向上させるため、リン酸又はリン酸誘導体を含有することができる。リン酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類;メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リン酸の誘導体としては、上記のリン酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール;フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコールが挙げられる。
【0073】
(レベリング剤又は消泡剤)
蓄電デバイス包装材用接着剤は、包装材のラミネート外観を向上させるため、レベリング剤又は消泡剤を含有することができる。レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチンが挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【0074】
(添加剤)
蓄電デバイス包装材用接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、層状無機化合物、安定剤(紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止
剤、着色剤、フィラー、結晶核剤、硬化反応を調整するための触媒等が挙げられる。
【0075】
<蓄電デバイス用包装材>
本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤は、蓄電デバイス用包装材の接着剤層を形成する接着剤として用いることができる。中でも、蓄電デバイス用包装材の外層側接着剤層を形成する外層側接着剤として好適に用いることができる。
本発明の蓄電デバイス包装材は、少なくとも、外層側樹脂フィルム層、外層側接着剤層、金属箔層、及びヒートシール層が、この順に外側から積層されている構成を備えるものであり、外層側接着剤層が上述する蓄電デバイス包装材用接着剤の硬化物であることを特徴とする。
蓄電デバイス用包装材の製造方法は特に制限されず、公知の方法により製造することができる。
例えば、外層側樹脂フィルム層と金属箔層とを、上述の外層側接着剤層を形成する蓄電デバイス包装材用接着剤を用いて積層して、外層側樹脂フィルム層/外層側接着剤層/金属箔層の構成を備える中間積層体を得た後、内層側接着剤を用いて中間積層体の金属箔層面にヒートシール層を積層して製造することができる(以下、製造方法1)。
あるいは、内層側接着剤を用いて金属箔層とヒートシール層とを積層して、金属箔層/内層側接着剤層/ヒートシール層の構成を備える中間積層体を得た後、蓄電デバイス包装材用接着剤を用いて、中間積層体の金属箔層と外層側樹脂フィルム層とを積層して製造することができる(以下、製造方法2)。
【0076】
製造方法1の場合、蓄電デバイス包装材用接着剤を、外層側樹脂フィルム層又は金属箔層のいずれか一方の基材の片面に塗布し、溶剤を揮散させた後、未硬化の外層側接着剤層に他方の基材を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温~100℃未満でエージングし、外層側接着剤層を硬化するのが好ましい。エージング温度が100℃未満であると、外層側樹脂フィルム層の熱収縮が起こらないため、成型に影響を及ぼす破断伸度や破断応力の低下や、フィルムカールによる成型生産性の低下が起こらない。
外層側接着剤の乾燥後塗布量は1~15g/m程度であることが好ましい。
製造方法2の場合も同様に、蓄電デバイス包装材用接着剤は、外層側樹脂フィルム層若しくは中間積層体の金属箔層面のいずれかに塗布すればよい。
【0077】
外層側接着剤層の形成方法としては、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等を用いる方法が挙げられる。
【0078】
[外層側樹脂フィルム層]
外層側樹脂フィルム層は特に制限されないが、ポリアミド又はポリエステルからなる延伸フィルムを用いるのが好ましい。外層側樹脂フィルム層は、カーボンブラックや酸化チタン等の顔料により着色されていてもよい。
また、外層側樹脂フィルム層の非ラミネート面は、傷つき防止や耐電解液性を目的としてコート剤やスリップ剤がコーティングされていてもよく、意匠性を目的として印刷インキがコーティングされていてもよい。また、外層側樹脂フィルム層は、2層以上のフィルムがあらかじめ積層されていてもよい。外層側樹脂フィルム層の厚みは特に制限されないが、好ましくは12~100μmである。
外層側接着剤層の120℃における貯蔵弾性率は、好ましくは1.00×10~9.99×10(Pa)である。1.00×10~9.99×10(Pa)の範囲であると、接着剤塗膜が高温でも凝集力と基材密着性のバランスを保ち、良好な高温条件下での接着強度を示すため好ましい。より好ましくは、1.00×10~9.99×10(Pa)の範囲である。
【0079】
[金属箔層]
金属箔層は特に制限されないが、好ましくはアルミニウム箔層である。金属箔層の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~80μmである。また、金属箔層表面は、リン酸クロメート処理、クロム酸クロメート処理、3価クロム処理、リン酸亜鉛処理、リン酸ジルコニウム処理、酸価ジルコニウム処理、リン酸チタン処理、フッ酸処理、セリウム処理、ハイドロタルサイト処理等による公知の防腐処理が施されていることが好ましい。防腐処理されていることによって、電池の電解液による金属箔表面の腐食劣化を抑制することができる。更に防腐処理表面上に、フェノール樹脂、アミド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、カップリング剤等の公知の有機プライマーを200℃ほどの高温で金属に焼付けて処理していることが好ましい。有機プライマー処理を施すことによって、金属箔と接着剤をより強固に接着させ、金属箔と接着剤間の浮きを更に抑制することができる。
【0080】
[ヒートシール層]
ヒートシール層は特に制限されず、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変成物及びアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムである。ヒートシール層の厚みは特に制限されないが、好ましくは20~150μmである。
【0081】
[内層側接着剤層]
内層側接着剤層を形成する接着剤は特に制限されないが、蓄電デバイスの電解液によって金属箔層とヒートシール層との接着強度が低下しないものが好ましく、本発明の蓄電デバイス包装材用接着剤のほか、公知の接着剤を使用することができる。
内層側接着剤層は、例えば、ポリオレフィン樹脂とポリイソシアネートの組み合わせた接着剤や、ポリオールとポリイソシアネートとを組み合わせた接着剤を、グラビアコーター等を用いて金属箔層に塗布して溶剤を乾燥させ、接着剤層にヒートシール層を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温若しくは加温下でエージングすることで、形成することができる。
あるいは、酸変性ポリプロピレン等の接着剤をTダイ押出し機で金属箔層上に溶融押出しして接着剤層を形成し、前記接着剤層上にヒートシール層を重ね、金属箔層とヒートシール層とを貼り合せることで内層側接着剤層を形成することができる。
外層側接着剤層及び内層側接着剤層の両方がエージングを必要とする場合には、外層側樹脂フィルム層、未硬化の外層側接着剤層、金属箔層、未硬化の内層側接着剤層及びヒートシール層が、この順に外側から積層されている構成を備えた積層体を得た後に、まとめてエージングを行ってもよい。
【0082】
<蓄電デバイス用容器>
本発明の蓄電デバイス用容器は、本発明の蓄電デバイス用包装材を用い、外層側樹脂フィルム層が凸面を構成し、ヒートシール層が凹面を構成するように成型して得ることができる。なお、本発明でいう「凹面」とは、平たい状態の蓄電デバイス用包装材を成型加工して図2に示すようなトレイ状とした場合に、電解液を内部に収容し得る窪みを有する面という意であり、本発明でいう「凸面」とは、前記窪みを有する面の自背面の意である。
【0083】
<蓄電デバイス>
本発明の蓄電デバイスは、前記蓄電デバイス用容器を使用してなるものであり、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが空挙げられる。
一般的な蓄電デバイスは、電極を含む電池要素と該電極から延在するリードと収容する容器とを備え、本発明の蓄電デバイスでは、前記蓄電デバイス用容器が前記収納する容器
に用いられる。前記収納する容器は、蓄電デバイス用包装材から、ヒートシール層が内側となるように形成され、2つの包装材のヒートシール層同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた包装材の周縁部を熱融着して得られてもよいし、1つの包装材を折り返して重ね合わせ、同様に包装材の周縁部を熱融着してもよい。
【実施例
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断りの無い限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0085】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオール溶液)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により酸価(mgKOH/g)を求めた。
酸価(mgKOH/g)=(5.611×a×F)/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0086】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料(ポリエステルポリオールや水酸基含有ウレタン樹脂等)約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、次式により水酸基価(mgKOH/g)を求めた。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.05}/S]+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0087】
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)の測定>
平均分子量及び分子量分布は、ショウデックス(昭和電工(株)製)、カラム:KF-805L、KF-803L、及びKF-802(昭和電工(株)製)、を用いて、カラムの温度を40℃、溶離液としてTHF、流速を0.2ml/分、検出をRI、試料濃度を
0.02質量%、として測定した標準ポリスチレン換算の値を用いた。
【0088】
<ガラス転移点(Tg)>
ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)により測定した。具体的には、測定対象化合物を約2mg、アルミニウムパン上で秤量し、該アルミニウムパンをDSC測定ホルダーにセットし、5℃/分の昇温条件にて得られるチャートの吸熱ピークを読み取り、この時のピーク温度をガラス転移点とした。
【0089】
<ポリエステルポリオールの合成>
(ポリエステル(a)-1)
イソフタル酸126.7部、ジメチルテレフタル酸272.9部、アゼライン酸347.7部、エチレングリコール252.7部を仕込み、170~230℃で10時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量33,000、重量平均分子量76,000、分子量分布2.30、水酸基価3.66mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、ガラス転移点-5℃のポリエステルポリオールを、収率86.4%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-1の組成は、イソフタル酸:ジメチルテレフタル酸:アゼライン酸:エチレングリコール=19:35:46:100(モル%)となる。
これに酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分50%のポリエステル(a)-1溶液を得た。
【0090】
(ポリエステル(a)-2)
イソフタル酸126.8部、ジメチルテレフタル酸273.3部、アゼライン酸348.2部、エチレングリコール251.6部を仕込み、170~230℃で10時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で5時間エステル交換反応を行い、数平均分子量48,000、重量平均分子量120,000、分子量分布2.50、水酸基価2.19mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、ガラス転移点-2℃のポリエステルポリオールを、収率86.0%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-2の組成は、イソフタル酸:ジメチルテレフタル酸:アゼライン酸:エチレングリコール=19:35:46:100(モル%)となる。
これに酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分50%のポリエステル(a)-2溶液を得た。
【0091】
(ポリエステル(a)-3)
オルトフタル酸231.3部、テレフタル酸231.3部、アジピン酸174.4部、エチレングリコール90.7部、ジエチレングリコール66.5部、ネオペンチルグリコール130.4部、2-メチル-1,3-プロパンジオール75.4部を仕込み、170~230℃で6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量9,600、重量平均分子量20,000、分子量分布2.08、水酸基価12.26mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、ガラス転移点-3℃のポリエステルポリオールを、収率84.7%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-3の組成は、オルトフタル酸:テレフタル酸:アジピン酸:エチレングリコール:ジエチレングリコール:ネオペンチルグリコール:2-メチル-1,3-プロパンジオール=35:35:30:35:15:30:20(モル%)となる。
【0092】
(ポリエステル(a)-4)
イソフタル酸289.3部、セバシン酸352.1部、エチレングリコール59.4部、ネオペンチルグリコール299.1部を仕込み、170~230℃で6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量2,600、重量平均分子量5,700、分子量分布2.19、水酸基価43.2mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、ガラス転移点-18℃のポリエステルポリオールを、収率84.7%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-4の組成は、イソフタル酸:セバシン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール=50:50:25:75(モル%)となる。
【0093】
(ポリエステル(a)-5)
オルトフタル酸211.0部、テレフタル酸140.7部、アジピン酸309.3部、エチレングリコール133.3部、ネオペンチルグリコール89.5部、2-メチル-1,3-プロパンジオール116.3部を仕込み、170~230℃で10時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量29,000、重量平均分子量64,000、分子量分布2.21、水酸基価3.94mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/g、ガラス転移点-4℃のポリエステルポリオールを、収率83.7%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-5の組成は、オルトフタル酸:テレフタル酸:アジピン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール:2-メチル-1,3-プロパンジオール=30:20:50:50:20:30(モル%)となる。
【0094】
(ポリエステル(a)-6)
イソフタル酸229.5部、セバシン酸418.9部、エチレングリコール21.8部、ジエチレングリコール74.4部、ネオペンチルグリコール255.4部を仕込み、170~230℃で10時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量27,000、重量平均分子量61,000、分子量分布2.26、水酸基価4.02mgKOH/g、酸価0.4mgKOH/g、ガラス転移点-20℃のポリエステルポリオールを、収率84.1%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-6の組成は、イソフタル酸:セバシン酸:エチレングリコール:ジエチレングリコール:ネオペンチルグリコール=40:60:10:20:70(モル%)となる。
【0095】
(ポリエステル(a)-7)
イソフタル酸305.5部、テレフタル酸122.2部、セバシン酸223.0部、エチレングリコール57.9部、ネオペンチルグリコール291.4部を仕込み、170~230℃で10時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量28,000、重量平均分子量61,000、分子量分布2.18、水酸基価3.88mgKOH/g、酸価0.4mgKOH/g、ガラス転移点-12℃のポリエステルポリオールを、収率83.3%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-7の組成は、イソフタル酸:テレフタル酸:セバシン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール=50:20:30:25:75(モル%)となる。
【0096】
(ポリエステル(a)-8)
オルトフタル酸208.6部、テレフタル酸139.0部、アジピン酸305.7部、エチレングリコール136.3部、ネオペンチルグリコール91.5部、2-メチル-1,3-プロパンジオール118.9部を仕込み、170~230℃で3時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量9,300、重量平均分子量20,000、分子量分布2.15、水酸基価12.9mgKOH/g、酸価0.2mgKOH/g、ガラス転移点-9℃のポリエステルポリオールを、収率83.9%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-8の組成は、フタル酸:テレフタル酸:アジピン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール:2-メチル-1,3-プロパンジオール=30:20:50:50:20:30(モル%)となる。
【0097】
(ポリエステル(a)-9)
イソフタル酸301.8部、テレフタル酸120.7部、セバシン酸220.4部、エチレングリコール59.2部、ネオペンチルグリコール297.8部を仕込み、170~230℃で3時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、テトライソブチルチタネート0.05部を添加し徐々に減圧し、1.3~2.6hPa、230~250℃で3時間エステル交換反応を行い、数平均分子量11,000、重量平均分子量22,000、分子量分布2.00、水酸基価11.1mgKOH/g、酸価0.3mgKOH/g、ガラス転移点-16℃のポリエステルポリオールを、収率83.5%で得た。
過剰の水酸基成分がほぼ均等に留去したと仮定し、多塩基酸成分と多価アルコール成分との合計を200モル%とすると、得られたポリエステル(a)-9の組成は、イソフタル酸:テレフタル酸:セバシン酸:エチレングリコール:ネオペンチルグリコール=50:20:30:25:75(モル%)となる。
【0098】
【表1】
【0099】
表1中の略号は以下の通りである。
表1中の略号は以下の通りである。
PA :オルトフタル酸
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
DMT:ジメチルテレフタル酸
AdA:アジピン酸
SbA:セバシン酸
AzA:アゼライン酸
EG :エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
MPO:2-メチル-1,3-プロパンジオール
DEG:ジエチレングリコール
【0100】
<ポリエステルウレタンポリオールの合成>
(ウレタン(b)-1)
得られたポリエステル(a)-3を100部と、酢酸エチル43部とを4口フラスコに仕込み、85℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを2.5部、ジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル59部を添加し、重量平均分子量74,000、ガラス転移点6℃、水酸基価3.4mgKOH/g、不揮発分50%の、ポリエステルウレタンポリオールの溶液であるウレタン(b)-1溶液を得た。
【0101】
(ウレタン(b)-2)
得られたポリエステル(a)-3を100部と、酢酸エチル43部とを4口フラスコに仕込み、85℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを3.0部、ジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル59部を添加し、重量平均分子量122,000、ガラス転移点11℃、水酸基価1.6mgKOH/g、不揮発分50%の、ポリエステルウレタンポリオールの溶液であるウレタン(b)-2液を得た。
【0102】
(ウレタン(b)-3)
得られたポリエステル(a)-4を100部と、酢酸エチル43部とを4口フラスコに仕込み、85℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを7.3部、ジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル65部を添加し、重量平均分子量41,000、ガラス転移点-9℃、水酸基価7.7mgKOH/g、不揮発分50%の、ポリエステルウレタンポリオールの溶液であるウレタン(b)-3溶液を得た。
【0103】
(ウレタン(b)-4)
得られたポリエステル(a)-8を100部と、酢酸エチル43部とを4口フラスコに仕込み、85℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを2.5部、ジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル59部を添加し、重量平均分子量91,000、ガラス転移点1℃、水酸基価3.0mgKOH/g、不揮発分50%の、ポリエステルウレタンポリオールの溶液であるウレタン(b)-4溶液を得た。
【0104】
(ウレタン(b)-5)
得られたポリエステル(a)-9を100部と、酢酸エチル43部とを4口フラスコに仕込み、85℃に昇温し、溶液が均一になるまで撹拌した。これにトリレンジイソシアネートを2.5部、ジブチル錫ジラウレート0.02部を添加し、4時間反応を行った。反応終了後、酢酸エチル59部を添加し、重量平均分子量87,000、ガラス転移点-8℃、水酸基価3.0mgKOH/g、不揮発分50%の、ポリエステルウレタンポリオールの溶液であるウレタン(b)-5溶液を得た。
【0105】
【表2】
【0106】
表2中の略号は以下の通りである。
TDI:トリレンジイソシアネート
【0107】
<蓄電デバイス用接着剤の製造>
[実施例1]
ポリエステル(a)-1溶液を200部(固形換算で100部)、JER1002(三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量600~700[g/eq])を67部、KBM-403(信越化学工業社製、シランカップリング剤)を1部仕込み、10分撹拌した後に、CAT-RT1(東洋モートン株式会社製、脂肪族系ポリイソシアネート、固形分濃度70%)を14部(固形換算で10部)仕込み、酢酸エチルで希釈して、固形分濃度25%の接着剤を調製した。
【0108】
[実施例2~26、比較例1~7]
表3及び表4に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、接着剤を製造した。
【0109】
<蓄電デバイス用接着剤の評価>
得られた蓄電デバイス用接着剤について、以下の評価を行った。結果を表3及び表4に示す。
【0110】
[硬化膜の応力緩和率]
得られた蓄電デバイス用接着剤を、コロナ未処理の未延伸ポリプロピレンフィルム上に硬化膜の厚みが40μmとなるように塗布し、80℃2週間の条件で硬化させた。硬化膜をフィルム上から剥離し、幅5mm、長さ20mmにカットして測定用サンプルを作製した。
20℃65%RHの環境下において、測定用サンプルの長手方向の両端を治具で掴み、引張試験器を用いて引張速度6mm/分で引張荷重を加えて引き延ばした。測定用サンプルが開始時の2倍の長さまで伸長したところで、引張速度を0.0mm/分に変更し、そのまま100秒間保持した。
2倍の長さに達した時の荷重値(応力S1[N/mm])、伸長させた状態で100秒間保持した時の荷重値(応力S2[N/mm])を測定し、 (S1-S2)/S1×
100の値を算出した。2倍の長さまで伸長せず、応力S1、S2が計測できなかったものは、データなし(-)とした。
【0111】
[硬化膜の貯蔵弾性率]
応力緩和率測定と同様にして硬化膜を得、幅5mm、長さ3cmにカットして測定用サンプルを作成した。測定用サンプルを動的粘弾性測定装置(DVA-200、アイティー計測制御株式会社製)にチャック間距離が2cmとなるように保持し、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で、-50℃から200℃の範囲の貯蔵弾性率を測定し、120℃における貯蔵弾性率の値を得た。
【0112】
[蓄電デバイス包装材1の製造]
厚み40μmのアルミニウム箔の一方の面に、塗布型リン酸クロメート処理剤(日本ペイント株式会社製 サーフコートNR-X)を塗布量0.03g/mで塗布し、230℃で焼き付けを行った。その後、ドライラミネーターを用いて、アルミニウム箔の前記表面処理を施した面に、外層側接着剤層として、得られた蓄電デバイス用接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、厚み25μmの延伸ポリアミドフィルムを積層し中間積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は3g/mとした。
次いで、ドライラミネーターを用いて、得られた中間積層体のアルミニウム箔の他方の面に、後述する内層側接着剤層用接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、厚み25μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し積層体を得た。接着剤の乾燥後塗布量は3g/m
とした。
次いで、60℃5日間のエージングを行い、外層側及び内層側の接着剤層を硬化させて、外層側樹脂フィルム層/外層側接着剤層/金属箔層/内層側接着剤層/ヒートシール層の構成を備える蓄電デバイス用包装材1を得た。
【0113】
(内層側接着剤層用接着剤)
主剤としてAD-502(東洋モートン(株)製 ポリエステルポリオール)、硬化剤としてCAT-10L(東洋モートン(株)製 イソシアネート系硬化剤)を用いて、主剤/硬化剤=100/10(質量比)となるように配合し、酢酸エチルで固形分濃度25%に調整したものを、内層側接着剤層用接着剤として用いた。
【0114】
[蓄電デバイス包装材2の製造]
厚み25μmの延伸ポリアミドフィルムを、厚み25μmの延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムに変更した以外は、蓄電デバイス包装材1と同様にして、蓄電デバイス包装材2を得た。
【0115】
[120℃熱間強度]
蓄電デバイス用包装材1を200mm×15mmの大きさに切断し、引張り試験機を用いてT型剥離試験を行い、延伸ポリアミドフィルムとアルミニウム箔との間の剥離強度(N/15mm巾)を測定した。測定は、120℃の環境下にて、荷重速度50mm/分で行い、3個の試験片の平均値により、以下の基準で評価した。
S:剥離強度の平均値が5.0N以上(非常に良好)
A:剥離強度の平均値が4.0N以上、5.0N未満(良好)
B:剥離強度の平均値が3.0N以上、4.0N未満(使用可能)
C:剥離強度の平均値が3.0N未満(使用不可)
【0116】
[成型物の湿熱耐久性]
蓄電デバイス用包装材1を60×60mmの大きさに切断し、ブランクとした。前記ブランクに対し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて成型高さ5mmにて張り出し1段成型を行い、成型物を得た。成型物は3個作製した。次いで、成型物3個を85℃85%RH雰囲気下の恒温恒湿槽に入れて、500時間後に、恒温恒湿槽から取り出し、浮きが発生していないかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
S:浮きがあるサンプルが0個(非常に良好)
A:浮きがあるサンプルが1個(良好)
B:浮きがあるサンプルが2個(使用可能)
C:浮きがあるサンプルが3個(使用不可)
【0117】
[成型物の高温耐久性]
蓄電デバイス用包装材1を蓄電デバイス用包装材2に変更し、静置の条件を85℃85%RHから150℃に変更した以外は、[成型物の湿熱耐久性]評価と同様にして、浮きが発生していないかを目視で確認し、以下の基準で評価した。
S:浮きがあるサンプルが0個(非常に良好)
A:浮きがあるサンプルが1個(良好)
B:浮きがあるサンプルが2個(使用可能)
C:浮きがあるサンプルが3個(使用不可)
【0118】
[変形成型物のヒートシール耐性]
蓄電デバイス用包装材1を、[成型物の湿熱耐久性]と同様に成型高さ5mmにて張り出し1段成型した。次いで、成型物の張り出し中央を直接窪ませて、張り出しコーナー4
カ所に谷折り皺をつけて変形させた後、フランジ4面を各温度・2kgf・5秒ヒートシールした。各層間の浮きが発生しない最高温度に応じて、次の4段階の評価を行った。
S:210℃で浮き無し(非常に良好)
A:200℃で浮き無し、210℃で浮き有り(良好)
B:190℃で浮き無し、200℃で浮き有り(使用可能)
C:190℃で浮き有り(使用不可)
【0119】
[深絞り成型性]
蓄電デバイス用包装材1の両面にエルカ酸アマイドを0.02g/m塗工した後、60×60mmの大きさに切断し、ブランクとした。前記ブランクに対し、延伸ポリアミドフィルムが外側になるようにして、成型高さフリーのストレート金型にて張り出し1段成型を行い、アルミニウム箔の破断や各層間の浮きが発生しない、最大の成型高さにより、以下の基準で成型性を評価した。
使用した金型のポンチ形状は、一辺29.4mmの正方形、コーナーR1mm、ポンチ肩R1mmである。使用した金型のダイス孔形状は、一片30.0mmの正方形、ダイス孔コーナーR1mm、ダイス孔肩R:1mmであり、ポンチとダイス孔とのクリアランスは0.3mmである。前記クリアランスにより成型高さに応じた傾斜が発生する。成型の高さに応じて、次の4段階の評価を行なった。
S:最大の成型高さが7mm以上(非常に良好)
A:最大の成型高さが6mm以上、7mm未満(良好)
B:最大の成型高さが5mm以上、6mm未満(使用可能)
C:最大の成型高さが5mm未満(使用不可)
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
表3及び表4中の略号は以下の通りである。
EP1:常温固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER-1002、三菱ケミカル社製、エポキシ当量650[g/eq])
EP2:常温液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER-834、三菱ケミカル社製、エポキシ当量250[g/eq])
EP3:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(EOCN-104S、日本化薬社製、エポキシ当量218[g/eq])
EP4:ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(JER-157S70、三菱ケミカル社製、エポキシ当量210[g/eq])
EP5:多官能型エポキシ樹脂(jER-604、三菱ケミカル社製、エポキシ当量120[g/eq]、)
EP6:可撓性エポキシ樹脂(jER-871、三菱ケミカル社製、エポキシ当量430[g/eq])
EP7:常温固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER-1001、三菱ケミカル社製、エポキシ当量475[g/eq])
EP8:脂環式エポキシ樹脂(THI-DE、ENEOS社製、エポキシ当量80[g/eq])
EP9:常温固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER-1004、三菱ケミカル社製、エポキシ当量925[g/eq])
EP10:常温固形ビスフェノールF型エポキシ樹脂(JER-4005P、三菱ケミカル社製、エポキシ当量1075[g/eq])
CAT1:脂肪族系ポリイソシアネート(CAT-RT1 東洋モートン社製、不揮発分濃度70%)
CAT2:芳香族系ポリイソシアネート(CAT-10L 東洋モートン社製、不揮発分濃度52.5%)
SC-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403 信越化学工業社製)
【0123】
表3及び表4の結果によれば、本発明の蓄電デバイス用接着剤は、応力のパラメータが所定の範囲を満たすため、フィルムと金属箔との接着において優れた120℃熱間強度を示した。
また、本発明の蓄電デバイス用接着剤は、成型性及び成型物のヒートシール耐性が良好であり、ポリエステルポリオール及び常温固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂の組み合わせ(実施例1~6)は、成型物の高熱耐久性に優れる傾向にあった。また、ポリエステルウレタンポリオールと、常温液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂との組み合わせ(実施例7、14、15)は、上記以外のエポキシ樹脂との組合せに比べて、120℃熱間強度に優れる傾向にあった。
【要約】
【課題】フィルムと金属箔とを接着するために用いた際に、高温雰囲気下での接着強度(以下、熱間強度)に優れる蓄電デバイス用接着剤の提供。高温雰囲気下での良好な接着強度を有し、信頼性に優れた蓄電デバイス包装材、蓄電デバイス用容器、蓄電デバイスの提供。
【解決手段】上記課題は、ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、及びエポキシ樹脂(C)を含み、ポリオール化合物(A)がエステル結合を有するポリオールを含み、80℃2週間の条件で硬化させて得られる硬化膜を、20℃65%RHの環境下、速度6mm/分で2倍の長さに伸長させた時の応力をS1[N/mm]、伸長させた状態で100秒間保持した時の応力をS2[N/mm]とした際、下記式を満たす蓄電デバイス包装材用接着剤によって解決される。
式: 10.0≦(S1-S2)/S1×100≦40.0
【選択図】なし