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特許7231124金属板用接合剤、プリント配線板用補強部材及びその製造方法、並びに、配線板及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】金属板用接合剤、プリント配線板用補強部材及びその製造方法、並びに、配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/32 20060101AFI20230221BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230221BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230221BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 175/00 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 177/00 20060101ALI20230221BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H05K3/32 B
H05K1/02 D
H05K9/00 R
C09J7/30
C09J201/00
C09J11/04
C09J11/06
C09J175/00
C09J177/00
C09J179/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022560178
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016346
【審査請求日】2022-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岸 大将
(72)【発明者】
【氏名】松尾 玲季
(72)【発明者】
【氏名】西之原 聡
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025280(JP,A)
【文献】特開2010-108971(JP,A)
【文献】特開2008-133411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/32
H05K 1/02
H05K 9/00
C09J 7/30
C09J 201/00
C09J 11/00
C09J 175/00
C09J 177/00
C09J 179/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の金属板用接合剤であって、
前記金属板用接合剤は、導電性成分(A)と、バインダー(B)と、を含有し、
前記バインダー(B)は樹脂を含み、
前記バインダー(B)の含有割合は、前記金属板用接合剤の質量中の10~60質量%であり、
前記金属板用接合剤の一方の表面の展開面積比Sdrは、0.01~5.0である、
金属板用接合剤。
【請求項2】
前記導電性成分(A)は、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)と、を含み、
前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径は、5~20μmであり、
前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径は、5~50μmである、
請求項1に記載の金属板用接合剤。
【請求項3】
前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との合計質量は、前記金属板用接合剤の質量中の40~90質量%である、
請求項2に記載の金属板用接合剤。
【請求項4】
前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との質量比は、80:20~20:80である、
請求項2または3に記載の金属板用接合剤。
【請求項5】
前記バインダー(B)は、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂を含む、
請求項1~4のいずれかに記載の金属板用接合剤。
【請求項6】
前記バインダー(B)は、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂を含む、
請求項1~5のいずれかに記載の金属板用接合剤。
【請求項7】
前記バインダー(B)は、更に、硬化剤(C)を含む、
請求項1~6のいずれかに記載の金属板用接合剤。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の金属板用接合剤の前記展開面積比Sdrが0.01~5.0の表面に金属板が積層する、
プリント配線板用補強部材。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の金属板用接合剤を準備し、展開面積比Sdrが0.01~5.0の表面に金属板を積層する、
プリント配線板用補強部材の製造方法。
【請求項10】
前記金属板用接合剤の準備方法が、下記(1)~(3)のいずれかであり、
下記接合剤組成物が、前記導電性成分(A)と、前記バインダー(B)とを含有し、
前記バインダー(B)が樹脂を含み、
前記バインダー(B)の含有割合が、前記接合剤組成物の不揮発分の質量中の10~60質量%である、
請求項9に記載のプリント配線板用補強部材の製造方法。
(1)剥離性基材上に、前記接合剤組成物を塗工し、得られた塗膜を研磨する。
(2)展開面積比Sdrが0.01~5.0の剥離性基材上に、前記接合剤組成物を塗工して凹凸を転写する。
(3)剥離性基材上に、前記導電性成分(A)が、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)とを含み、前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径が5~20μmであり、前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径が5~50μmである接合剤組成物を塗工し、乾燥する。
【請求項11】
請求項8のプリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板が積層し、前記金属板と前記プリント配線板が接合する、
配線板。
【請求項12】
請求項8のプリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板を積層し、前記金属板と前記プリント配線板とを圧着して接合する、
配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属板用接合剤、プリント配線板用補強部材及びその製造方法、並びに、配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部に搭載されるプリント配線板は、柔軟性を有するが、コネクタ部などは部品間の接続を行う観点から、補強板を配置して変形を抑えることが知られている。従来、補強板としてはエポキシガラス等が用いられてきたが、電磁波ノイズの抑制機能を付与する点から金属板が用いられるようになってきている。プリント配線板と金属板の接続には、樹脂を主成分とする接合剤が使用されている。
【0003】
当該接合剤は、金属板とプリント配線板との間を導通する目的や、弾性率制御等の目的から、フィラーを添加することがある。例えば特許文献1では、導体回路と補強板とを接合剤層を介して接続することが開示されており、前記接合剤層として、導電粒子と接着剤を含む導電性接着材を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-317946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フィラーを含む接合剤は表面に凹凸が発生しやすく、当該接合剤表面上に金属板を配置した場合、接合剤と金属板との接触面積が低下する。この場合、リフロー通過時などに金属板と接合剤との間で浮きが発生し、十分な導通が取れなくなる場合があった。
【0006】
また、接合剤は、高気温下で保存すると含有する硬化剤の反応が進行して接着性が低下することがある。そのため接合剤を冷蔵保管又は冷凍保管することがある。しかしながら、冷蔵または冷凍保管庫から取り出した接合剤は、表面で空気中の水分による結露を生じることがある。結合剤表面水滴(目視不可の微細なものも含む)が存在する状態で貼り付け作業を行うと貼り合わせ不良が生じることがある。したがって、水分が揮発するまで、被着体への貼り付け作業が実施できず、生産効率を低下させる要因となっていた。
【0007】
本開示は、密着性に優れ及び半田リフロー耐性に優れ、水滴が蒸発しやすい表面を備える金属板用接合剤、当該接合剤を備えるプリント配線板用補強部材、及び配線板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る金属板用接合剤は、シート状の金属板用接合剤であって、
前記金属板用接合剤は、導電性成分(A)と、バインダー(B)と、を含有し、
前記バインダー(B)は樹脂を含み、
前記バインダー(B)の含有割合は、前記金属板用接合剤の質量中の10~60質量%であり、
前記金属板用接合剤の一方の表面の展開面積比Sdrは、0.01~5.0である。
【0009】
上記金属板用接合剤の一態様は、前記導電性成分(A)が、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)と、を含み、
前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径は、5~20μmであり、
前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径は、5~50μmである。
【0010】
上記金属板用接合剤の一態様は、前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との合計質量が、前記金属板用接合剤の質量中の40~90質量%である。
【0011】
上記金属板用接合剤の一態様は、前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との質量比が、80:20~20:80である。
【0012】
上記金属板用接合剤の一態様は、前記バインダー(B)が、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂を含む。
【0013】
上記金属板用接合剤の一態様は、前記バインダー(B)が、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂を含む。
【0014】
上記金属板用接合剤の一態様は、前記バインダー(B)が、更に、硬化剤(C)を含む。
【0015】
本開示に係るプリント配線板用補強部材は、上記金属板用接合剤の前記展開面積比Sdrが0.01~5.0の表面に金属板が積層する。
【0016】
本開示に係るプリント配線板用補強部材の製造方法は、上記金属板用接合剤を準備し、展開面積比Sdrが0.01~5.0の表面に金属板を積層する。
【0017】
上記プリント配線板用補強部材の製造方法の一態様は、前記金属板用接合剤の準備方法が、下記(1)~(3)のいずれかであり、
下記接合剤組成物が、前記導電性成分(A)と、前記バインダー(B)とを含有し、
前記バインダー(B)が樹脂を含み、
前記バインダー(B)の含有割合が、前記接合剤組成物の不揮発分の質量中の10~60質量%である。
(1)剥離性基材上に、前記接合剤組成物を塗工し、得られた塗膜を研磨する。
(2)展開面積比Sdrが0.01~5.0の剥離性基材上に、前記接合剤組成物を塗工して凹凸を転写する。
(3)剥離性基材上に、前記導電性成分(A)が、デンドライト状金属粉(A1)と、フレーク状金属粉(A2)とを含み、前記デンドライト状金属粉(A1)のD50粒子径が5~20μmであり、前記フレーク状金属粉(A2)のD50粒子径が5~50μmである接合剤組成物を塗工し、乾燥する。
【0018】
本開示に係る配線板は、上記プリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板が積層し、前記金属板と前記プリント配線板が接合する。
【0019】
本開示に係る配線板の製造方法は、上記プリント配線板用補強部材の前記金属板用接合剤側の面にプリント配線板を積層し、前記金属板と前記プリント配線板とを圧着して接合する。
【発明の効果】
【0020】
本開示により、半田リフロー耐性に優れ、水滴が蒸発しやすい表面を備える金属板用接合剤、当該接合剤を備えるプリント配線板用補強部材、及び配線板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本金属板用接合剤の一例を示す模式的な断面図である。
図1B】本金属板用接合剤の一例を示す模式的な断面図である。
図2】本プリント配線板用補強部材の一例を示す模式的な断面図である。
図3】本配線板の一例を示す模式的な断面図である。
図4A】本配線板の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
図4B】本配線板の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
図4C】本配線板の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
図4D】本配線板の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
図4E】本配線板の製造方法の一例を示す模式的な工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示に係る金属板用接合剤、プリント配線板用補強部材、及び、配線板について順に説明する。なお、数値範囲を示す「~」は特に断りのない限りその下限値及び上限値を含むものとする。また、説明を明確にするため、図面は、適宜、簡略化されている。また、説明のため図面中の各構成は縮尺が大きく異なることがある。特に接合剤表面の凹凸形状は誇張されている。
【0023】
[金属板用接合剤]
図1A図1Bを参照して本開示の金属板用接合剤(以下、本金属板用接合剤ともいう)の構成を説明する。図1Aに示す本金属板用接合剤10は、シート状の金属板用接合剤であって、少なくとも一方の表面1が凹凸を有し、当該表面(界面)の展開面積比Sdrが0.01~5.0であることを特徴とする。以下、界面の展開面積比Sdrが0.01~5.0の表面を単に「表面1」ということがある。本金属板用接合剤10は、例えば、図1Bに示すように剥離性フィルム11上に設けられていてもよい。
【0024】
本金属板用接合剤は、少なくとも一方の面の界面の展開面積比Sdrを0.01~5.0とすることで、金属板との密着性が向上し、半田リフロー後の導電性に優れた接合剤とすることができる。また、展開面積比Sdrが0.01~5.0の表面は水滴が蒸発しやすいことを見いだした。水滴が蒸発しやすいことで、例えば、冷凍保管庫から取り出した際に生じる結露の蒸発待ち時間を短縮することができ、被着体への貼り付け作業待ち時間を短縮することができ(以下、インスタント性ともいう)、作業効率の向上を図ることができる。
【0025】
インスタント性を向上する点からは、展開面積比Sdrは、中でも、0.15~4.0が好ましく、0.3~3.0がより好ましい。また、密着性及び半田リフロー耐性を向上する点からは、展開面積比Sdrは、中でも、0.01~2.0が好ましく、0.1~1.5がより好ましく、0.3~1.0が更に好ましく、0.5~0.75が特に好ましい。
【0026】
また、中でも、展開面積比Sdrが、0.01~2.0の範囲では、金属板への糊残りを抑制することができ、例えば、金属板から接合剤を一旦剥がし、金属板を再利用することが可能となる(以下、再利用性ともいう)。
【0027】
金属板用接合剤は、しばしば人の手により金属板への積層がなされているが、当該工程において接合剤の積層位置を誤って積層する、あるいは積層時にシワを発生させてしまうなどの工程不具合が生じていた。展開面積比Sdrが、0.01~2.0の範囲ではこのような場合に貼直しをすることが可能となり、歩留まり率が向上する。再利用性を向上する点から、展開面積比Sdrは0.1~1.5が好ましく、0.3~1.0がより好ましく、0.5~0.75が更に好ましい。
【0028】
界面の展開面積比Sdr(以下、単にSdrということがある)は、ISO 25178-2:2012において定義されるものであり、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを表す指標である。なお、平坦面のSdrは0(ゼロ)である。
【0029】
本開示において、展開面積比SdrはISO 25178-2:2012に準拠して測定された値を用いるものとする。具体的にはレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK-X100)を用いて測定データを取得し、取得した測定データを解析ソフトウェア(ISO 25178-2:2012表面性状計測モジュール「VK-H1XR」を備えた、解析アプリケーション「VK-H1XA」、ともにキーエンス社製)に取り込み、ISO 25178-2:2012表面性状計測を実行することで算出することができる。
【0030】
本金属板用接合剤は、例えば、後述する接合剤組成物を剥離性基材上に塗工し、乾燥し、更に必要に応じてBステージ硬化することで得ることができる。塗工方法は、公知の方法の中から、接合剤の膜厚等を考慮して適宜選択すればよい。塗工方法の具体例としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、スプレーコート方式、バーコート方式、スピンコート方式、ディップコート方式等が挙げられる。
【0031】
Bステージ硬化とは、接合剤組成物を所定の温度、時間で加熱することにより、含有する硬化剤の硬化反応を部分的に生じさせる方法である。Bステージ硬化を行うことにより、接合剤の接着力を維持しつつ、強度を高めることができる。
【0032】
本金属板用接合剤の表面の展開面積比Sdrの調整方法としては、当該表面のSdrを所望の値とできれば、いずれの方法も用いることができる。具体的には、(1)接合剤表面をバフ研磨など各種研磨法により研磨する方法;(2)展開面積比Sdrが0.01~5.0の剥離基材上に接合剤用組成物を塗工して凹凸を転写する方法;(3)剥離性基材上に特定の金属粉を含む接合剤用組成物を塗工して乾燥することで、表面の展開面積比Sdrが0.01~5.0の塗膜を形成する方法などが挙げられる。製造の容易性などの点から上記(3)の方法によりSdrを調整することが好ましい。
【0033】
本金属板用接合剤の厚みは、用途等に応じて適宜調整すればよい。接着力、半田リフロー耐性などの点からは、平均膜厚が5~200μmが好ましく、10~150μmがより好ましい。
【0034】
本金属板用接合剤を形成するための接合剤組成物は、密着性及び導電性の点から、少なくとも導電性成分(A)とバインダー(B)とを含有するものが好ましく、更に本開示の効果を奏する範囲で他の成分を含有してもよいものである。
【0035】
前記導電性成分(A)は、本金属板用接合剤に導電性を付与するものであり、後述する特定の導電性成分を用いる場合には、更にSdrを特定の範囲に調整する機能を有する。
Sdrを研磨又は転写により調整する場合、導電性成分は、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。導電性成分の具体例としては、導電性微粒子、導電性繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
Sdrを導電性成分(A)により調整する場合には、D50粒子径が5~20μmのデンドライト状金属粉(A1)(単に金属粉(A1)ということがある)と、D50粒子径が5~50μmのフレーク状金属粉(A2)(単に金属粉(A2)ということがある)とを組み合わせることが好ましい。
【0037】
デンドライト状金属粉(A1)を用いることで、金属板用接合剤のSdrを大きくすることができる。デンドライト状とは、複数に枝分かれした樹枝状のような形状を意味する。金属粉(A1)の材質としては、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛または鉄などの導電性金属、及びこれらの合金が挙げられる。また金属粉(A1)は、核となる粒子に導電性金属の被覆層を備える多層構造であってもよい。
【0038】
この場合、核となる粒子は導電性を有していても有していなくてもよく、例えば上記導電性金属のほか、金属酸化物や有機物等であってもよい。金属粉(A1)は導電性等の点から、中でも、銅粒子に銀が被覆した銀コート銅粉が好ましい。銀コート銅粉は、銀の被覆により銅の酸化を抑制しつつ、銀の割合を低減することでコスト上のメリットが得られる。銀コート銅粉中の銀の割合は、銀コート銅粉100質量%中、1~20質量%が好ましい。
【0039】
D50粒子径は、測定対象となる金属粉の粒度分布測定を行い得られた粒度分布曲線の積算50%における粒子径を表す。本開示において粒径はレーザー回折・散乱法により測定された値を用いるものとする。
【0040】
金属粉(A1)のD50粒子径は、5~20μmが好ましく、5.5~15μmがより好ましく、6~10μmがさらに好ましい。金属粉(A1)のD50粒子径が5μm以上であることにより表面の凹凸が大きくなりやすく、展開面積比Sdrを大きくする方向に調整しやすくなる。
【0041】
金属粉(A1)のタップ密度は、導電性の点から0.5~7.0g/cmが好ましい。タップ密度が0.5g/cm以上であれば、接合剤中の金属粉(A1)が接触しやすく導電性が向上する。またタップ密度が7.0g/cm以下であれば、十分な導電性を達成できる。タップ密度はJIS Z 2512「金属粉-タップ密度測定方法」に準拠する方法により測定できる。
【0042】
金属粉(A1)のBET比表面積は、導電性の点から0.5~1.5m/gが好ましい。BET比表面積が0.5m/g以上であれば、接合剤中の金属粉(A1)が接触しやすく導電性が向上する。またBET比表面積が1.5m/g以下であれば、接合剤組成物の粘度の調整がしやすく取り扱い性が向上する。BET比表面積はJIS Z8830「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に基づき測定を行う。
【0043】
本金属板用接合剤は、上記デンドライト状金属粉(A1)とフレーク状金属粉(A2)を組み合わせることが好ましい。フレーク状金属粉(A2)を組み合わせることで、デンドライト状金属粉(A1)のみを用いた場合と比較してSdrの過剰な増大を抑えることができる。即ち、金属粉(A1)と金属粉(A2)とを組み合わせることで、Sdrを所望の範囲に調整しやすくなる。
【0044】
金属粉(A2)の材質としては、前記金属粉(A1)と同様のものが挙げられ、中でもコート銅粉が好ましい。金属粉(A2)において銀コート銅粉中の銀の割合は、銀コート銅粉100質量%中、1~20質量%が好ましい。
【0045】
金属粉(A2)のD50粒子径は、5~50μmが好ましく、5~40μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。金属粉(A2)のD50粒子径が5μm以上であることにより金属粉(A1)と組み合わせた際に、Sdrの過剰な増大が抑えられる。
【0046】
金属粉(A2)のタップ密度は、導電性の点から0.5~7.0g/cmが好ましい。タップ密度が0.5g/cm以上であれば、接合剤中の金属粉(A2)が接触しやすく導電性が向上する。またタップ密度が7.0g/cm以下であれば、導電性は十分である。
【0047】
金属粉(A2)のBET比表面積は、導電性の点から0.1~1.0m/gが好ましい。BET比表面積が0.1m/g以上であれば、接合剤中の金属粉(A2)が接触しやすく導電性が向上する。またBET比表面積が1.0m/g以下であれば、接合剤組成物の粘度の調整がしやすく取り扱い性が向上する。
【0048】
前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との質量比は、得られる本金属板用接合剤の展開面積比Sdrを0.01~5.0に調整しやすい点から、80:20~20:80が好ましい。
【0049】
また、前記デンドライト状金属粉(A1)と、前記フレーク状金属粉(A2)との合計質量が、前記金属板用接合剤の質量中の40~90質量%であることが、Sdrを0.01~5.0に調整しやすく、導電性に優れる点から好ましい。
【0050】
バインダー(B)は、プリント配線板と金属板との接合性の点から、通常樹脂を含み、更に、硬化剤(C)等を含んでいてもよいものである。
【0051】
樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタンウレア樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂が好ましい。イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合は、結合中に含まれる窒素原子の非共有電子対が、被着体と相互作用することによって強固な接着力を実現することができる。
【0052】
また、樹脂がイミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することがより好ましい。樹脂がイミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有することで、被着体への相互作用が多重化し、より強固な密着力を発現することが可能となる。イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される2種以上を有する樹脂とは、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタンウレア樹脂などである。
【0053】
前述の相互作用の多重化は、イミド結合、アミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合よりなる群から選択される1種以上を有する樹脂を2種類以上併用することでも発現可能であるため、これらの樹脂を2種類以上組み合わせることも好ましい。
【0054】
バインダー(B)は、更に硬化剤(C)を含んでいてもよい。硬化剤(C)は前記樹脂との組み合わせにより硬化性を発揮する公知の化合物の中から適宜選択すればよい。硬化剤(C)としては、エポキシ化合物、アジリジン化合物、イソシアネート化合物、酸無水物などが挙げられる。
【0055】
前記バインダー(B)の含有割合は、前記金属板用接合剤の質量中の10~60質量%であることが、金属板及びプリント配線板との密着性に優れる点から好ましい。
【0056】
本金属板用接合剤は、本開示の効果を奏する範囲で更に他の成分を含有してもよい。含有してもよい成分としては、例えば、シランカップリング剤、酸化防止剤、顔料、染料、粘着付与樹脂、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング調整剤、充填剤、難燃剤等が挙げられる。
【0057】
接合剤組成物は、前記金属板用接合体を形成するために用いられる組成物であって、前記金属板用接合剤の各成分の他、塗布性などの観点から溶剤などの揮発成分を含有する。溶剤は、公知の溶剤の中から、上記バインダー成分等に応じて適宜選択することができる。接合用組成物中の各成分の含有割合は、溶剤等の揮発成分を除く不揮発分基準で、前記金属板用接合体と同様となればよい。例えば、接合用組成物中の不揮発分全質量中、導電性成分(A)は40~90質量%が好ましい。また接合用組成物中の不揮発分全質量中、バインダー(B)は10~60質量%が好ましい。
【0058】
[プリント配線板用補強部材]
図2を参照して本開示のプリント配線板用補強部材(以下、本プリント配線板用補強部材ともいう)の構成を説明する。本プリント配線板用補強部材40は、前記金属板用接合剤10の表面1上に金属板20が積層している。本プリント配線板用補強部材40は図2の例に示すように剥離性フィルム11を有していてもよく、当該剥離性フィルム11は使用時に取り除かれる。
【0059】
金属板は、プリント配線板を補強する剛性を有していればよく、更に導電性を備えることが好ましい。金属板の材質としては、例えば、金、銀、銅、鉄や、ステンレスなどの合金が挙げられる。中でも強度、コストおよび化学的安定性の面から、ステンレスが好ましい。金属板の厚みは特に限定されないが、一般的に0.04~1mm程度である。
【0060】
金属板は、防錆や防汚の観点から表面をめっきするなどして被覆処理してもよい。金属板への被覆処理は、例えば、無電解ニッケルめっき、電気ニッケルめっき、亜鉛めっき、クロムめっき等の公知の処理が挙げられる。
【0061】
[配線板]
図3を参照して本開示の配線板(以下、本配線板ともいう)の構成を説明する。本配線板50は、前記プリント配線板用補強部材40の金属板用接合剤10側の面にプリント配線板30が積層し、前記金属板20と前記プリント配線板30が金属板用接合剤10を介して接合する。
【0062】
前記プリント配線板30は、図3の例に示されるように、カバーレイ31、導体層32、基材層33を備える構成などが挙げられる。プリント配線板30は、プリント配線板用補強部材40との電気的接続のためにカバーレイ31がビア34を具備していてもよい。ビア34に金属板用接合剤10が充填されて、導体層32とプリント配線板用補強部材40との間の電気的接続が確保される。
【0063】
[配線板の製造方法]
本配線板の製造方法は、一例として、プリント配線板用の基板と、金属板用接合剤10と、金属板20とを積層し、これを圧着して接合し、次いで基板上に電子部品を実装する方法が挙げられる。図4A~Eを参照して配線板の製造方法の一例を説明する。
【0064】
まず、剥離性フィルム11に接合剤組成物を塗工し、乾燥させて剥離性フィルム付金属板用接合剤10を準備し(図4A参照)、金属板用接合剤10の剥離性フィルム11と接する面と反対面(表面1)と金属板20とを接触させた状態で熱ラミネートを行い、金属板用接合剤10を金属板20に積層させる(図4B参照)。次いで、剥離性フィルム11を剥離し(図4C参照)、露出した金属板用接合剤10をプリント配線板30に接触させた状態で熱ラミネートを行い(図4D参照)、その後、熱プレスなどにより金属板用接合剤10を硬化させ、配線板を得る(図4E参照)。
【0065】
本金属板用接合剤が熱硬化性成分を含む場合には、硬化促進の点から、圧着時に加熱することが好ましい。例えば加熱温度は150~180℃程度とすることができ、圧着は、3~30kg/cm程度の圧力をかけることが好ましい。圧着時間は、通常1分~2時間程度である。
【0066】
本配線板は、プリント配線板が用いられる従来公知のあらゆる製品に適用することができる。具体的には、携帯電話、スマートフォン、ノートPC、デジタルカメラ、液晶ディスプレイ等の電子機器や、自動車、電車、船舶、航空機等の輸送機器にも好適にも散ることができる。
【実施例
【0067】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。配合比に関しては、溶剤以外は固形分換算での値を示す。また、「部」は「質量部」を表す。
【0068】
<金属板用接合剤の作製>
各金属板用接合剤の作製に用いる接合剤組成物の各成分を以下に示す。
【0069】
・バインダー(B)
ポリウレタンウレア樹脂:酸価=11mgKOH/g(トーヨーケム製)
ポリアミドイミド樹脂:酸価=15mgKOH/g(トーヨーケム製)
ポリウレタン樹脂:酸価=12mgKOH/g(トーヨーケム製)
ポリエステル樹脂:酸価=13mgKOH/g(トーヨーケム製)
フェノール樹脂:酸価=10mgKOH/g(トーヨーケム製)
【0070】
・硬化剤(C)
エポキシ化合物:4官能グリシジルアミン化合物:エポキシ当量120g/eq(jER604、三菱化学製)
アジリジン化合物:ケミタイトPZ-33(エポキシ当量=144g/eq、日本触媒製)
【0071】
・金属粉(A)
[A1]デンドライト状金属粉
A1-1:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=7.4μm、核体:樹枝状(三井金属鉱業製)
A1-2:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=3.1μm(三井金属鉱業製)
A1-3:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=5.3μm(福田金属箔粉製)
A1-4:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=18μm(福田金属箔粉製)
A1-5:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=21μm(DOWA製)
[A2]フレーク状金属粉
A2-1:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=11.2μm(三井金属鉱業製)
A2-2:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=4.3μm(三井金属鉱業製)
A2-3:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=6.3μm(福田金属箔粉製)
A2-4:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=18μm(福田金属箔粉製)
A2-5:銀コート銅粒子、D50平均粒子径=21μm(DOWA製)
【0072】
[実施例1]
バインダー(B)としてポリウレタンウレア樹脂を100質量部、導電性物質として[A]デンドライト状金属粉(A1-1)214質量部、フレーク状金属粉(A2-1)71質量部を容器に仕込み、硬化剤としてエポキシ化合物45質量部、アジリジン化合物0.4質量部を加え、不揮発分濃度が45質量%となるようにMEKを加えて混合した。攪拌機により10分間攪拌して接合剤組成物を調製した。
【0073】
次に、上記調製した接合剤組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルム(基材の材質:発泡ポリエチレンテレフタレート、基材の厚み50μm、離型剤:アルキッド系離型剤)の剥離処理された一方の面上に塗工し、120℃の電気オーブンで2分間乾燥することで金属板用接合剤を得た。
【0074】
[実施例3~19]
配合する各成分の種類および配合量を表1~2に記載した通りとした以外は実施例1と同様に操作し、実施例3~19の金属板用接合剤を得た。
【0075】
[実施例20]
バインダー(B)としてポリウレタンウレア樹脂を100質量部、導電性物質として[A]デンドライト状金属粉(A1-1)214質量部、フレーク状金属粉(A2-1)71質量部を容器に仕込み、硬化剤としてエポキシ化合物45質量部、アジリジン化合物0.4質量部を加え、不揮発分濃度が45質量%となるようにMEKを加えて混合した。攪拌機により10分間攪拌して接合剤組成物を調製した。
【0076】
次に、上記調製した接合剤組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように凹凸転写用剥離性フィルム(基材の材質:発泡ポリエチレンテレフタレート、基材の厚み50μm、離型剤:アルキッド系離型剤、Sdr;0.05)の剥離処理された一方の面上に塗工し、120℃の電気オーブンで2分間乾燥した後、接合剤の凹凸転写用剥離性フィルムが接する面と反対面に微粘着剥離フィルムを貼り合わせ、凹凸転写用剥離性フィルムを剥離することで、所望のSdrを有する金属板用接合剤を得た。
【0077】
[実施例21]
配合する各成分の種類および配合量を表2に記載した通りとし、凹凸転写用剥離性フィルムをSdrが1.15のものに変更した以外は実施例20と同様に操作し、実施例19の金属板用接合剤を得た。
【0078】
[実施例22]
バインダー(B)としてポリウレタンウレア樹脂を100質量部、導電性物質として[A]デンドライト状金属粉(A1-1)214質量部、フレーク状金属粉(A2-1)71質量部を容器に仕込み、硬化剤としてエポキシ化合物45質量部、アジリジン化合物0.4質量部を加え、不揮発分濃度が45質量%となるようにMEKを加えて混合した。攪拌機により10分間攪拌して接合剤組成物を調製した。
【0079】
次に、上記調製した接合剤組成物を、ドクターブレードを使用して、乾燥後の厚みが60μmになるように剥離性フィルム(基材の材質:発泡ポリエチレンテレフタレート、基材の厚み50μm、離型剤:アルキッド系離型剤)の剥離処理された一方の面上に塗工し、120℃の電気オーブンで2分間乾燥した後、剥離性フィルムと反対面(表面1)にバフ研磨を行い、Sdrを0.07とすることにより、実施例20の金属板用接合剤を得た。
【0080】
[実施例23~38、比較例1~2]
配合する各成分の種類および配合量を表2~3に記載した通りとした以外は実施例22と同様に操作し、バフ研磨によって表面1のSdrを調整することにより、実施例23~38、比較例1~2の金属板用接合剤を得た。
【0081】
<展開面積比Sdrの測定方法>
金属板用接合剤の表面1の展開面積比Sdrは、以下の方法により測定した。金属板用接合剤の表面1をレーザーマイクロスコープ(キーエンス社製、VK-X100)を使用し、測定データ取得を行った後、取得した測定データを解析ソフトウェア(ISO 25178-2:2012表面性状計測モジュール「VK-H1XR」を備えた、解析アプリケーション「VK-H1XA」、ともにキーエンス社製)に取り込み、ISO 25178-2:2012表面性状計測を実行した。(条件は、S‐フィルター;1μm、L‐フィルター;0.2mm)
【0082】
<評価>
得られた各接合剤(金属板用接合剤)について、接続抵抗値、半田リフロー耐性(外観/抵抗値)、再利用性、インスタント性、接着力を下記方法に従って評価した。その評価結果を表1~3に示す。
【0083】
[接続抵抗値]
各実施例および比較例にて作製した金属板用接合剤(幅25mm、長さ150mm)を用い、その接合剤が露出した面が幅25mm、長さ160mmのSUS板(厚さ0.1mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記金属板用接合剤を上記SUS板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm、1m/minの条件下で、上記金属板用接合剤と上記SUS板とをロールラミネートして金属板用接合剤付SUS板を得た。
【0084】
次に、上記金属板用接合剤付SUS板における金属板用接合剤の剥離性フィルムを剥がして除去した後、打ち抜き加工機(型番:ハンドプレス機QCDタイプ、協栄プリント技研製)を用い、クリアランスが2.5μmの条件で幅5mm、長さ12mmの長方形に打ち抜き、接合剤付SUS板(以下、「接合剤付SUS板」と称する)を得た。次いで、別に作製したプリント配線板を用い、接合剤付SUS板の接合剤が露出した面(接合剤のSUS板と反対の面)をプリント配線板に重ね、ロールラミネーターを用いて130℃、3kgf/cm、1m/minの条件下で、上記接合剤付SUS板と上記プリント配線板とを、プリント配線板の開口部と金属板用接合剤が重なるように貼り付けた。
【0085】
次いで、これらを170℃、2MPa、3分の条件下で熱圧着した後、電気オーブンを用いて160℃、60分間加熱することで評価用試料を得た。なお、上述のプリント配線板は、厚み50μmのポリイミドフィルムの両面それぞれに厚み18μmの銅箔回路が形成され、銅箔回路上には、幅0.4mm、長さ1.2mmの長方形であって開口面積が0.48mmの開口部を10点有する厚み37.5μmの接着剤付き絶縁性カバーフィルムが積層されている。また、プリント配線板が反らないように、ポリイミドフィルムに対して銅箔回路およびカバーフィルムを対称に配置してある。
【0086】
次に、抵抗計 RM3544(日置電機株式会社製)にピン型リード L2103(日置電機株式会社製)を接続し、評価用試料のSUS板と銅箔回路との間の電気抵抗(接続抵抗値)を測定し、この測定値を指標として下記評価基準に従い接続抵抗値を評価した。
A:接続抵抗値が50mΩ未満。(極めて良好である)
B:接続抵抗値が50mΩ以上100mΩ未満。(良好である)
C:接続抵抗値が100mΩ以上300mΩ未満。(実用可能である)
D:接続抵抗値が300mΩ以上。(実用不可能である)
【0087】
[半田リフロー耐性]
接続抵抗値を評価した評価用試料(接合剤付SUS板付きプリント配線板)を用いて半田リフロー耐性(外観/抵抗値)を評価した。評価用試料をマジックレジン(高耐熱特殊ガラスエポキシ材)に貼りつけ、200℃~360℃に加熱したリフロー装置 UNI-5016(ANTOM社製)に0.3M/minの速度で3回通した(半田リフロー)。半田リフロー後の評価用試料の接続抵抗値を半田リフロー前と同様に測定した。結果をa~dで半田リフロー耐性(抵抗値)を段階付けた。
a:接続抵抗値が100mΩ未満。
b:接続抵抗値が100mΩ以上300mΩ未満。
c:接続抵抗値が300mΩ以上1000mΩ未満。
d:接続抵抗値が1000mΩ以上。
【0088】
次に、半田リフロー後の評価用試料を、各フレキシブルプリント基板の開口部の中心を通るように金属カッターを用いて接合剤付SUS板ごとそれぞれ切断した。切断面をサンドペーパー(FUJI STAR 耐水研磨紙 粒度400)を使用して1次研磨し、イオンミリング法(LEOL クロスセクションポリッシャーIB-09010CP)にて加速電圧5.0KV 8時間の条件で2次研磨し、断面観察用のサンプルを得た。露出した断面を20~1000倍の拡大鏡を用いて観察し、各層間に発砲による空域が発生していないか確認し、aまたはdで半田リフロー耐性(外観)を段階付けた。
a:発泡なし。
d:発泡あり。
【0089】
上記の二項目の半田リフロー耐性の結果から、次の指標のとおりに半田リフロー耐性を評価した。
A:接続抵抗値がaで、外観がa。(極めて良好である)
B:接続抵抗値がbで、外観がa。(良好である)
C:接続抵抗値がcで、外観がa。(実用可能である)
D:接続抵抗値および外観の少なくとも一方がd。(実用不可能である)
【0090】
[インスタント性]
各実施例および比較例にて作製した金属板用接合剤を用い、これを幅25mm、長さ100mmの大きさに切断し、冷凍庫(-15℃)に10時間静置し、その後取り出して23℃50%RHの環境に3分間静置した後、その接合剤が露出した面が幅30mm、長さ150mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記金属板用接合剤を上記SUS板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm、0.5m/minの条件下で、上記金属板用接合剤と上記SUS板とをロールラミネートした後、上記接合剤から剥離性フィルムを剥がし、接合剤付SUS板を得た。
【0091】
次に、接合剤付SUS板の接合剤が露出した面に、幅30mm、長さ200mmにカットした無電解金メッキシート(太洋工業株式会社製)の金メッキ面を貼りあわせ、上記と同様の条件でロールラミネートした。次いで、これらを170℃、2MPa、3分の条件下でそれぞれ熱圧着した後、これを電気オーブンを用いて160℃、60分間加熱することで評価用試料を得た。得られた評価用試料の金属板用接合剤が存在する箇所を無電解金メッキシート側から観察し、外観不良(金属板用接合剤上の水滴の蒸発に起因する膨れ)の程度をa~dで結果を段階付けた。(膨れ評価)
a:金属板用接合剤の面積に対し、膨れの面積が5%以上、10%未満。
b:金属板用接合剤の面積に対し、膨れの面積が10%以上、15%未満。
c:金属板用接合剤の面積に対し、膨れの面積が15%以上、20%未満。
d:金属板用接合剤の面積に対し、膨れの面積が5%未満。
【0092】
上記で得られた評価用試料をそれぞれ引張試験機(小型卓上試験機 EZ-TEST、島津製作所製)を用い、SUS板が張り付けられていない部分を引張試験器に取り付け、引っ張り速度50mm/minの条件下で、180°ピール剥離試験における評価用試料の無電解金メッキ面に対する接合剤の接着強度を測定し、a~dで結果を段階付けた(接着強度)。
a:接着強度が6N/cm以上。
b:接着強度が3N/cm以上6N/cm未満。
c:接着強度が1N/cm以上3N/cm未満。
d:接着強度が1N/cm未満。
【0093】
さらにそれぞれの結果を指標として、下記評価基準に従い接着力を評価した。
A:膨れ評価、接着強度ともにa。(非常に優れている)
B:膨れ評価、接着強度のどちらか一方がa且つもう一方がb、もしくは両方がb。(優れている)
C:膨れ評価、接着強度のどちらかがcでdがない。(実用可能である)
D:膨れ評価、接着強度のどちらかまたは両方がd。(実用不可能である)
【0094】
[再利用性]
再利用性は、金属板に積層した接合剤の糊残り面積によって評価した。各実施例および比較例にて作製した金属板用接合剤を用い、これを幅25mm、長さ150mmの大きさに切断し、その接合剤が露出した面が幅25mm、長さ200mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記金属板用接合剤を上記SUS板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm、0.5m/minの条件下で、上記金属板用接合剤と上記SUS板とをロールラミネートした後、上記接合剤から剥離性フィルムを剥がし、接合剤付SUS板を得た。
【0095】
次いで、露出した接合剤を、クロスカットガイドを用いて面積が均等の100区画に分割し、接合剤を覆うように粘着テープ(ニチバン社製「CT1835」)を、粘着テープの端部を残して貼り合せ、粘着テープの端部から300mm/min.の速度で剥離を行い、金属板に残った区画(糊残り区画)数を測定し、以下の基準によって評価を行った。
A:糊残り区画数が0~5個。(極めて良好である)
B:糊残り区画数が6~10個。(良好である)
C:糊残り区画数が11~25個。(良好である)
D:糊残り区画数が26個以上。(実用可能である)
【0096】
[接着力]
各実施例および比較例にて作製した金属板用接合剤を用い、これを幅25mm、長さ100mmの大きさに切断し、その接合剤が露出した面が幅30mm、長さ150mmのSUS板(厚さ0.2mmの市販のSUS304板の表面に厚さ2μmのニッケル層を形成したもの)に接触するように、上記金属板用接合剤を上記SUS板に重ねた。次いで、ロールラミネーターを用い、90℃、3kgf/cm、0.5m/minの条件下で、上記金属板用接合剤と上記SUS板とをロールラミネートした後、上記接合剤から剥離性フィルムを剥がし、接合剤付SUS板を得た。
【0097】
次に、接合剤付SUS板の接合剤が露出した面に、
(1)幅30mm、長さ200mmにカットしたCCL(銅張積層板、片面銅箔、もう一方はポリイミド基材)S’PERFLEX S524-38E21(住友金属鉱産株式会社製)のポリイミド基材面
(2)幅30mm、長さ200mmにカットした無電解金メッキシート(太洋工業株式会社製)の金メッキ面
を各々貼りあわせ、上記と同様の条件でロールラミネートした。次いで、これらを170℃、2MPa、3分の条件下でそれぞれ熱圧着した後、これを電気オーブンを用いて160℃、60分間加熱することで評価用試料を得た。なお、SUS板は、長さ方向中心部に貼り付け基板及びメッキシートの長さ方向両端部から25mmにはSUS板が配置されていない。
【0098】
上記で得られた2種の評価用試料をそれぞれ引張試験機(小型卓上試験機 EZ-TEST、島津製作所製)を用い、SUS板が張り付けられていない部分を引張試験器に取り付け、引っ張り速度50mm/minの条件下で、180°ピール剥離試験における評価用試料のSUS面または無電解金メッキ面に対する接合剤の接着強度を測定し、a~dで結果を段階付けた。
・対SUS面(ポリイミド基材を用いた評価用試料を用いた)
a:接着強度が10N/cm以上。
b:接着強度が7N/cm以上10N/cm未満。
c:接着強度が3N/cm以上7N/cm未満。
d:接着強度が3N/cm未満。
・対無電解金メッキ面
a:接着強度が6N/cm以上。
b:接着強度が3N/cm以上6N/cm未満。
c:接着強度が1N/cm以上3N/cm未満。
d:接着強度が1N/cm未満。
【0099】
さらにそれぞれの結果を指標として、下記評価基準に従い接着力を評価した。
A:対SUS面、対無電解金メッキ面の接着強度が両方ともa。(非常に優れている)
B:対SUS面、対無電解金メッキ面の接着強度のどちらか一方がa且つもう一方がb、もしくは両方がb。(優れている)
C:対SUS面、対無電解金メッキ面の接着強度のどちらかがcでdがない。(良好である)
D:対SUS面、対無電解金メッキ面の接着強度のどちらかまたは両方がd。(実用可能である)
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
表1~3のとおり、展開面積比Sdrが0.01~5.0である実施例1~38の金属板用接合剤はいずれも接続抵抗が低くて密着性が高く、半田リフロー耐性やインスタント性に優れていることが示された。
【0104】
Sdrが0.003の比較例1の金属板用接合剤は、半田リフロー耐性やインスタント性に乏しいことが示された。このことから、金属板用接合剤の表面が平坦に近付くにつれて、半田リフロー耐性が低くなり、また、結露した水滴同士が接触して大きな水滴となって蒸発しにくくなっていると推測される。
【0105】
一方、Sdrが5.0を超える比較例2の金属板用接合剤は、表面に微細凹凸が形成されており、凹部に入り込んだ水滴が蒸発しにくくなっていると推定される。
【0106】
また、展開面積比Sdrが0.01~2.0の実施例1~28の金属板用接合剤は、更に再利用性および接着力に優れることが示された。
【符号の説明】
【0107】
1 (展開面積比Sdrが0.01~5.0の)表面
10 金属板用接合剤
11 剥離性フィルム
20 金属板
30 プリント配線板
31 カバーレイ
32 導体層
33 基材層
34 ビア
40 プリント配線板用補強部材
50 配線板
【要約】
接着力及び半田リフロー耐性に優れ、金属板などから剥がす際に糊残りが抑制される金属板用接合剤、当該接合剤を備えるプリント配線板用補強部材、及び、配線板を提供すること。本開示にかかる金属板用接合剤(10)は、シート状であって、導電性成分(A)とバインダー(B)とを含有し、バインダー(B)は樹脂を含み、バインダー(B)の含有割合は、金属板用接合剤(10)の質量中の10~60質量%であり、金属板用接合剤(10)の一方の表面の展開面積比Sdrが0.01~5.0である。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E