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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】フルオロメチル誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/62 20060101AFI20230221BHJP
   C07C 49/80 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 45/63 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 31/38 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 67/307 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 49/813 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 49/233 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 201/12 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 205/45 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 233/33 20060101ALI20230221BHJP
   C07C 69/65 20060101ALI20230221BHJP
   C07D 333/16 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C07C29/62
C07C49/80
C07C45/63
C07C31/38
C07C67/307
C07C49/813
C07C49/233
C07C201/12
C07C205/45
C07C49/84
C07C231/12
C07C233/33
C07C69/65
C07D333/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020518359
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2019018748
(87)【国際公開番号】W WO2019216415
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2018092086
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】北村 二雄
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157788(JP,A)
【文献】Science,2016年,353(6294),P.51-54
【文献】Journal of Organic Chemistry,2009年,74(5),P.2197-2199
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 29/
C07C 49/
C07C 45/
C07C 31/
C07C 67/
C07C 201/
C07C 205/
C07C 231/
C07C 233/
C07C 69/
C07D 333/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
は、ハロ及びC1-6アルキルからなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基であり;
は、水素又はC1-6アルキルであり;
は、水素であり;
Lは、単結合、アルカンジイル、-CO-、-CONR-、-NRCO-、又は-O-CO-(これらの式中、Rは、各出現において独立して、水素、又は有機基である。)であり、
は、ヒドロキシ、C1-6アルキル、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基、1個以上の置換基を有していてもよいナフチル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいチオフェニル基であり、
とRとは連結していてもよく、及び
は、フルオロである。
但し、Lが-CO-NR-である場合は、Rは、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基、1個以上の置換基を有していてもよいナフチル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいチオフェニル基であり、
前記Rにおける置換基は、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基からなる群より選択される1個以上の置換基である。]
のフッ素化有機化合物の製造方法であって、
式(2):
【化2】
[式中、波線で示される単結合は、それが結合している二重結合についての立体配置が、E配置若しくはZ配置又はそれらの任意の割合の混合物であることを表す。その他の記号は前記と同意義である。]
のアルケン化合物を、
超原子価ヨード芳香環化合物(1a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(1b)、及び酸化剤(A)の存在下で、
-78~200℃において、
芳香族化合物、アルコール、エーテル、含窒素極性有機化合物、ニトリル、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、フッ素系溶剤、酢酸、ジメチルスルホキシド、スルホラン、水又はこれらの組合せである溶媒の存在下に、
フッ素源[当該フッ素源は、
式:MF(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)である。]
と反応させてフッ素化する工程A;
を含む、
製造方法。
【請求項2】
は、水素である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Lは、-[C(-R4a)(-R4b)]-であり、
4aは、水素、又は有機基であり、
4bは、水素、又は有機基であり、及び
mは1~10の整数である、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
はヒドロキシである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
Lは、-CO-であり、
は、C1-6アルキル、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基、1個以上の置換基を有していてもよいナフチル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいチオフェニル基であり、
前記Rにおける置換基は、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基からなる群より選択される1個以上の置換基である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(1-1):
【化3】
[式中、
Arはハロ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、及びニトロからなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよいC6-14アリール基であり;
は、水素又はC1-6アルキルであり;
は、水素であり;
は、ヒドロキシ、C1-6アルキル、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基、1個以上の置換基を有していてもよいナフチル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいチオフェニル基であり、
前記Rにおける置換基は、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基からなる群より選択される1個以上の置換基であり、
とRとは、連結していてもよく、及び
は、フルオロである。]
のフッ素化有機化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロメチル誘導体の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ジフルオロメチル誘導体の製造には、高価なジフルオロメチル化剤(例:CHFSOCl)が使用されている。
他方、ジフルオロメチル化剤を使用しない、フルオロメチル誘導体の製造方法として、特許文献1には、2-フルオロ-1,3-ジカルボニル化合物の高収率で高選択性の得られる製造方法として、
次式(1):
で表される1,3-ジカルボニル化合物類を、触媒量のヨードベンゼン誘導体存在下、フッ化水素源と酸化剤を反応させ、次式(3):
の化合物を得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-201553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新たなフルオロメチル誘導体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、次の態様を含む。
【0006】
項1.
式(1):
【化1】
[式中、
は、有機基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
Lは、単結合、アルカンジイル、-CO-、-CONR-、-NRCO-、-O-CO-、又は-CO-O-(これらの式中、Rは、各出現において独立して、水素、又は有機基である。)であり、
は、水素、ハロ、ヒドロキシ、又は有機基であり、
とRとは、連結していてもよく、及び
は、水素、又はフルオロである。
但し、Rが水素である場合、Lは-CO-、-CONR-、-NRCO-、-O-CO-、又は-CO-O-である。]
のフッ素化有機化合物の製造方法であって、
式(2):
【化2】
[式中、波線で示される単結合は、それが結合している二重結合についての立体配置が、E配置若しくはZ配置又はそれらの任意の割合の混合物であることを表す。その他の記号は前記と同意義である。]
のアルケン化合物を、
超原子価ヨード芳香環化合物(1a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(1b)、及び酸化剤(A)の存在下で、
フッ素源[当該フッ素源は、
式:MF(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)である。]
と反応させてフッ素化する工程A;
を含む、
製造方法。
項2.
は、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基である、
項1に記載の製造方法。
項3.
は、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基である、
項2に記載の製造方法。
項4.
は、水素である、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5.
は、水素である、項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6.
Lは、-[C(-R4a)(-R4b)]-であり、
4aは、水素、又は有機基であり、
4bは、水素、又は有機基であり、及び
mは1~10の整数である、
項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
項7.
はヒドロキシである、
項6に記載の製造方法。
項8.
Lは、-CO-であり、
は、水素、ハロ、又は有機基である、
項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
項9.
は、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基である、
項8に記載の製造方法。
項10.
Lは、-CO-O-であり、
は、水素又は有機基である、
項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
項11.
は、
1個以上の置換基を有していてもよいC1-10脂肪族炭化水素基、
である項10に記載の製造方法。
項12.
は、フルオロである、項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
項13.
は、水素である、項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
項14.
式(1-1):
【化3】
[式中、
Arは1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、
とRとは、連結していてもよく、及び
は、水素、又はフルオロである。]
のフッ素化有機化合物。
項15.
は、フルオロである、項14に記載のフッ素化有機化合物。
項16.
は、水素である、項14に記載のフッ素化有機化合物。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、新たなフルオロメチル誘導体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn-m」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0009】
本明細書中、「有機化合物」とは、通常の意味に理解され、1個以上の炭素原子及び1個以上の水素原子を有する化合物であることができる。
本明細書中、「有機基」とは、1個以上の炭素原子を含有する基(又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基)を意味する。
【0010】
本明細書中、フッ素化有機化合物は、有機化合物がフッ素化されて生じることができる化合物を意味し、水素原子を含有しなくてもよい。
【0011】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ハロ(基)」の例は、フルオロ(基)、クロロ(基)、ブロモ(基)、及びヨード(基)を包含できる。
【0012】
本明細書中、「芳香環」の例は、芳香族炭素環、及び芳香族複素環を包含する。
本明細書中、「芳香環化合物」とは、1個以上の芳香環を有する化合物を意味する。
【0013】
本明細書中、特に限定の無い限り、「芳香族炭素環」の例は、炭素数6~14の芳香族炭化水素環を包含し、及びその具体例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、及びビフェニルを包含する。
【0014】
本明細書中、特に限定の無い限り、「芳香族複素環」の例は、5又は6員芳香族複素環を包含し、及びその具体例は、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3-オキサジアゾール環、1,2,4-オキサジアゾール環、1,3,4-オキサジアゾール環、フラザン環、1,2,3-チアジアゾール環、1,2,4-チアジアゾール環、1,3,4-チアジアゾール環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、及びトリアジン環を包含する。
【0015】
本明細書中、特に限定の無い限り、前記「芳香族複素環」の更なる例は、前記5又は6員芳香族複素環の1個以上と芳香族炭素環の1個以上との縮合環を包含する。
【0016】
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
アルデヒド基、
O-、
CO-、
SO-、
OCO-、及び
OSO
(これらの式中、Rは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基である)
を包含できる。
【0017】
本明細書中、「有機基」は、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基[当該炭化水素基には、-NR-、=N-、-N=、-O-、-S-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)-、-S(=O)-、-S(=O)-、-S(=O)-NR-、-NR-S(=O)-、-S(=O)-、-S(=O)-NR-、及び-NR-S(=O)-(これらの式中、Rは、独立して、水素原子、又は有機基である。)からなる群より選択される1個以上の部分が挿入されていてもよい。]であることができる。
【0018】
化学分野の常識に基づいて通常理解される通り、このようにヘテロ原子が挿入された炭化水素基の例は、非芳香族複素環基、及びヘテロアリール基を包含できる。
【0019】
本明細書中、「1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」の炭素数は、例えば、1~100、1~80、1~60、1~40、1~30、1~20、又は1~10(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であることができる。
【0020】
本明細書中、
「1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアリール基」、及び
「1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基」
における「置換基」の例は、それぞれ、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基を包含できる。
当該置換基の数は、1個から置換可能な最大個数の範囲内(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)であることができる。
【0021】
本明細書中、「炭化水素基」の例は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、及びこれらの組合せである基を包含できる。
【0022】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキル基」の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル(n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-10アルキル基を包含できる。
【0023】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例:1~3個、1~6個、1~12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
【0024】
当業者が通常理解する通り、接頭語「パーハロゲノ」は全ての水素原子がハロ基に置換されていることを意味する。
当業者が通常理解する通り、接頭語「パーフルオロ」は全ての水素原子がフルオロ基に置換されていることを意味する。
【0025】
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。
【0026】
「パーフルオロアルキル基」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。当該パーフルオロアルキル基の具体例は、トリフルオロメチル基(CF-)、及びペンタフルオロエチル基(C-)を包含する。
【0027】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~20、炭素数1~12、炭素数1~6、炭素数1~4、炭素数1~3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1のフルオロアルキル基であることができる。
【0028】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」として、具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基(CF-)、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基(C-)、テトラフルオロプロピル基(例:HCFCFCH-)、ヘキサフルオロプロピル基(例:(CFCH-)、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基(例:HCFCFCFCFCH-)、トリデカフルオロヘキシル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基(CFCFCFCFCFCFCHCH-)等が挙げられる。
【0029】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルケニル基」の例は、ビニル、1-プロペン-1-イル、2-プロペン-1-イル、イソプロペニル、2-ブテン-1-イル、4-ペンテン-1-イル、及び5-へキセン-1-イル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C10アルケニル基を包含できる。
【0030】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキニル基」の例は、エチニル、1-プロピン-1-イル、2-プロピン-1-イル、4-ペンチン-1-イル、5-へキシン-1-イル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C2-10アルキニル基を包含できる。
【0031】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルキル基」の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等のC3-7シクロアルキル基を包含できる。
【0032】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルケニル基」の例は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等のC3-7シクロアルケニル基を包含できる。
【0033】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルカジエニル基」の例は、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、シクロノナジエニル、シクロデカジエニル等のC4-10シクロアルカジエニル基を包含できる。
本明細書中、特に限定の無い限り、芳香族基は、「アリール基」、及び「ヘテロアリール基」を包含する。
【0034】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」は、C6-18アリール基であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」の例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニル、3-ビフェニル、4-ビフェニル、及び2-アンスリルを包含できる。
【0035】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アラルキル基」の例は、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル、2-ビフェニリルメチル、3-ビフェニリルメチル、及び4-ビフェニリルメチルを包含できる。
【0036】
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、例えば、環構成原子として、炭素原子に加えて酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子を含有する非芳香族複素環基であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、飽和、又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」の例は、テトラヒドロフリル、オキサゾリジニル、イミダゾリニル(例:1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル)、アジリジニル(例:1-アジリジニル、2-アジリジニル)、アゼチジニル(例:1-アゼチジニル、2-アゼチジニル)、ピロリジニル(例:1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル)、ピペリジニル(例:1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル)、アゼパニル(例:1-アゼパニル、2-アゼパニル、3-アゼパニル、4-アゼパニル)、アゾカニル(例:1-アゾカニル、2-アゾカニル、3-アゾカニル、4-アゾカニル)、ピペラジニル(例:1,4-ピペラジン-1-イル、1,4-ピペラジン-2-イル)、ジアゼピニル(例:1,4-ジアゼピン-1-イル、1,4-ジアゼピン-2-イル、1,4-ジアゼピン-5-イル、1,4-ジアゼピン-6-イル)、ジアゾカニル(例:1,4-ジアゾカン-1-イル、1,4-ジアゾカン-2-イル、1,4-ジアゾカン-5-イル、1,4-ジアゾカン-6-イル、1,5-ジアゾカン-1-イル、1,5-ジアゾカン-2-イル、1,5-ジアゾカン-3-イル)、テトラヒドロピラニル(例:テトラヒドロピラン-4-イル)、モルホリニル(例:4-モルホリニル)、チオモルホリニル(例:4-チオモルホリニル)、2-オキサゾリジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、及びジヒドロキノリル等を包含できる。
【0037】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ヘテロアリール基」の例は、単環性芳香族複素環基(例:5又は6員の単環性芳香族複素環基)、及び芳香族縮合複素環基(例:5~18員の芳香族縮合複素環基)を包含できる。
【0038】
本明細書中、特に限定の無い限り、「5又は6員の単環性芳香族複素環基」の例は、ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例:3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル)、テトラゾリル、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、ピラジニル等を包含できる。
【0039】
本明細書中、特に限定の無い限り、「5~18員の芳香族縮合複素環基」の例は、イソインドリル(例:1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル)、インドリル(例:1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、ベンゾ[b]フラニル(例:2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[c]フラニル(例:1-ベンゾ[c]フラニル、4-ベンゾ[c]フラニル、5-ベンゾ[c]フラニル)、ベンゾ[b]チエニル、(例:2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル、4-ベンゾ[b]チエニル、5-ベンゾ[b]チエニル、6-ベンゾ[b]チエニル、7-ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[c]チエニル(例:1-ベンゾ[c]チエニル、4-ベンゾ[c]チエニル、5-ベンゾ[c]チエニル)、インダゾリル(例:1-インダゾリル、2-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(例:1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル)、1,2-ベンゾイソオキサゾリル(例:1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-7-イル)、ベンゾオキサゾリル(例:2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル)、1,2-ベンゾイソチアゾリル(例:1,2-ベンゾイソチアゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-7-イル)、ベンゾチアゾリル(例:2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル)、キノリル(例:2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル)、シンノリニル(例:3-シンノリニル、4-シンノリニル、5-シンノリニル、6-シンノリニル、7-シンノリニル、8-シンノリニル)、フタラジニル(例:1-フタラジニル、4-フタラジニル、5-フタラジニル、6-フタラジニル、7-フタラジニル、8-フタラジニル)、キナゾリニル(例:2-キナゾリニル、4-キナゾリニル、5-キナゾリニル、6-キナゾリニル、7-キナゾリニル、8-キナゾリニル)、キノキサリニル(例:2-キノキサリニル、3-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル、7-キノキサリニル、8-キノキサリニル)、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル(例:ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-4-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イル)、イミダゾ[1,2-a]ピリジル(例:イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-8-イル)等を包含できる。
【0040】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基」、及び
「1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基」
における各「置換基」の例は、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基を包含できる。
当該置換基の数は、1個から置換可能な最大個数の範囲内(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)であることができる。
【0041】
2.フッ素化有機化合物の製造方法
本開示の一態様は、
式(1):
【化4】
[式中、
は、有機基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
Lは、単結合、アルカンジイル、-CO-、-CONR-、-NRCO-、-O-CO-、又は-CO-O-(これらの式中、Rは、各出現において独立して、水素、又は有機基である。)であり、
は、水素、ハロ、ヒドロキシ、又は有機基であり、
とRとは、連結していてもよく:及び
は、水素、又はフルオロである。
但し、Rが水素である場合、Lは-CO-、-CONR-、-NRCO-、-O-CO-、又は-CO-O-である。]
のフッ素化有機化合物の製造方法であって、
式(2):
【化5】
[式中、波線で示される単結合は、それが結合している二重結合についての立体配置が、E配置若しくはZ配置又はそれらの任意の割合の混合物であることを表す。その他の記号は前記と同意義である。]
のアルケン化合物を、
超原子価ヨード芳香環化合物(1a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(1b)、及び酸化剤(A)の存在下で、
フッ素源[当該フッ素源は、
式:MF(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)である。]
と反応させてフッ素化する工程A;
を含む製造方法である。
【0042】
は、好ましくは、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基である。
【0043】
は、より好ましくは、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基
である。
【0044】
は、更に好ましくは、
1個以上の置換基を有していてもよいC6-14芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい5~14員芳香族複素環基
である。
【0045】
は、より更に好ましくは、
ハロ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、及びニトロからなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、3個、4個、5個、又は6個)の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は
ハロ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、及びニトロからなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、3個、4個、5個、又は6個)の置換基を有していてもよい5~14員芳香族複素環基
である。
【0046】
は、好ましくは水素又はC1-6アルキルである。
【0047】
は、好ましくは水素である。
【0048】
とRとが連結するとき、Rの任意の原子(例:末端又は内部の原子)と、Rの任意の原子(例:末端又は内部の原子)とが連結し得る。
とRとが連結するとき、式(1)中のR-C-C-L-Rで表される部分は、1個以上の置換基を有していてもよい環であることができる。
当該環は1個以上の置換基を有していてもよい環であることができる。
当該置換基は、R、L、及び/又はRの構造又は部分構造(例:置換基)に由来し得る。
当該環は、例えば、単環式、2環式、又は3環式であることができる。
当該環は、例えば、5~14員環、5~10員環、6~14員環、6~10員環、又は5~6員環であることができる。
【0049】
一実施態様において、
好ましくは、
Lは、-[C(-R4a)(-R4b)]-であり、
4aは、水素、又は有機基であり、
4bは、水素、又は有機基であり、及び
mは1~10の整数である。
【0050】
より好ましくは、
Lは、-[C(-R4a)(-R4b)]-であり、
4aは、水素、又はC1-6アルキルであり、
4bは、水素、又はC1-6アルキルであり、及び
mは1~6の整数である。
【0051】
更に好ましくは、
Lは、-[C(-R4a)(-R4b)]-であり、
4aは、水素であり、
4bは、水素であり、及び
mは1である。
【0052】
は、より好ましくはC1-10アルコキシ又はヒドロキシである。Rは、更に好ましくはヒドロキシである。
【0053】
別の一実施態様において、
好ましくは、
Lは、-CO-であり、
は、水素、ハロ、又は有機基である。
【0054】
は、好ましくは、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基
である。
【0055】
は、より好ましくはC1-6アルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基、1個以上の置換基を有していてもよいナフチル基、1個以上の置換基を有していてもよいチオフェニル基である。
は、更に好ましくはC1-3アルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0056】
別の一実施態様において、
好ましくは、
Lは、-CO-O-であり、
は、水素又は有機基である。
【0057】
は、好ましくは、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基
である。
【0058】
は、より好ましくはC1-10アルキル基である。
は、更に好ましくはC1-6アルキル基である。
【0059】
は、一実施態様において、好ましくは、フッ素である。
がフッ素である化合物(これをジフルオロ体と称する場合がある。)は、工程Aにおいて、反応温度を高くすること、反応時間を長くすること、もしくはフッ素源量を多くすること、又はこれらの2以上の組み合わせによって、より高い選択率で、製造され得る。
は、別の実施態様において、好ましくは、水素である。
が水素である化合物(これをモノフルオロ体と称する場合がある。)は、工程Aにおいて、反応温度を低くすること、反応時間を短くすること、もしくはフッ素源量を少なくすること、又はこれらの2以上の組み合わせによって、より高い選択率で、製造され得る。
当該ジフルオロ体及び当該モノフルオロ体は、所望により、慣用の精製方法により、分離され得る。
【0060】
本開示の一実施態様において、
好ましくは、
は、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり;
は、水素又はC1-6アルキルであり;
は、水素であり;
Lは、-[C(-R4a)(-R4b)]-であり、
4aは、水素、又は有機基であり、
4bは、水素、又は有機基であり、
mは1~10の整数であり、
は、ヒドロキシであり、及び
は、フッ素、又は水素である。
【0061】
当該実施態様において、
より好ましくは、
は、
ハロ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、及びニトロからなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、3個、4個、5個、又は6個)の置換基を有していてもよいC6-14アリール基、又は
ハロ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、及びニトロからなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、3個、4個、5個、又は6個)の置換基を有していてもよい5~14員芳香族複素環基であり;
は、水素又はC1-6アルキルであり;
は、水素であり;
Lは、-CH-であり;及び
は、ヒドロキシであり;及び
は、フッ素、又は水素である。
【0062】
本開示の別の一実施態様において、
は、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり;
は、水素であり;
は、水素であり;
Lは、-CO-であり、
は、水素、ハロ、又は有機基である。
その好適な一例においては、
は、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基であり;
は、水素であり;
は、水素であり;
Lは、-CO-であり、
は、1個以上の置換基を有していてもよいフェニル基である。
【0063】
本開示の別の一実施態様において、
好ましくは、
は、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり;
は、水素であり;
は、水素であり;
Lは、-CO-であり;及び
は、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基
であり;及び
は、フッ素、又は水素である。
【0064】
本開示の別の一実施態様において、
は、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり;
は、水素であり;
は、水素であり;
Lは、-CO-O-であり、
は、水素又は有機基である。
【0065】
本開示の別の一実施態様において、
好ましくは、
は、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり;
は、水素であり;
は、水素であり;
Lは、-CO-O-であり;及び
は、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基
であり;及び
は、フッ素、又は水素である。
【0066】
工程Aで用いられるフッ素源は、
式:MF(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表される。
Mは、
好適に、H、Li、Na、K、Ca、又はCsであることができ、
より好適に、H、Na、K、又はCaであることができ、及び
更に好適に、Hであることができる。
当該フッ素源は、好適に、フッ化水素源であることができる。
前記フッ素源の例は、
無水フッ化水素酸、フッ化水素酸水溶液(例:濃度10~70重量%のフッ化水素酸水溶液)、フッ化水素酸、有機塩基、及び無機塩基の混合物
を包含する。
当該混合物中、フッ化水素酸及び有機塩基は、具体的には、例えば、
フッ化水素-トリエチルアミン塩[EtN・nHF(n=1~5)]、
フッ化水素-ピリジン塩[Py・nHF(n=1~10)]、及び
フッ化水素-テトラエチルアンモニウムフルオリド塩[EtNF・nHF(n=1~10)]
などの塩であるか、又はこれに由来できる。
当該混合物中、フッ化水素酸及び無機塩基は、具体的には、例えば、
HF-KF(KHF
などであるか、又はこれに由来できる。
当該フッ素源は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0067】
当該フッ化水素源の使用量は、例えば、
基質である有機化合物(2)の1モルに対して、フッ化水素として、
通常0.5~100モルの範囲内
好ましくは1~80モルの範囲内、
より好ましくは2~60モルの範囲内、及び
より更に好ましくは3~50モルの範囲内
であることができる。
【0068】
超原子価ヨード芳香環化合物(1a)
超原子価ヨード芳香環化合物(1a)の具体例は、
ヨードシルベンゼン、2-ヨードシルトルエン、3-ヨードシルトルエン、4-ヨードシルトルエン、2,4,6-トリメチルヨードシルベンゼン、2-エチルヨードシルベンゼン、3-エチルヨードシルベンゼン、4-エチルヨードシルベンゼン、2-ヨードシルアニソール、3-ヨードシルアニソール、4-ヨードシルアニソール、1-クロロ-2-ヨードシルベンゼン、1-クロロ-3-ヨードシルベンゼン、1-クロロ-4-ヨードシルベンゼン、1,2-ジヨードシルベンゼン、1,3-ジヨードシルベンゼン、1,4-ジヨードシルベンゼン、1-ヨードシル-2-ニトロベンゼン、1-ヨードシル-3-ニトロベンゼン、1-ヨードシル-4-ニトロベンゼン、1-ヨードシル-2-シアノベンゼン、1-ヨードシル-3-シアノベンゼン、及び1-ヨードシル-4-シアノベンゼンを包含する。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0069】
超原子価ヨード芳香環化合物(1a)の量は、化合物(2)の1モルに対して、通常0.1~50モルの範囲内、好ましくは0.2~30モルの範囲内であることができる。
【0070】
工程Aにおいて、超原子価ヨード芳香環化合物(1a)は、好適に、酸化剤の不存在下で用いられる。
ここで、酸化剤の不存在下とは、前記有機化合物(1)の1モルに対して、工程Aの反応系における酸化剤の量が0.1モル以下であることを意味することができる。
【0071】
ヨード芳香環化合物(1b)、及び酸化剤(A)
ヨード芳香環化合物(1b)の例は、
ヨードベンゼン、2-ヨードトルエン、3-ヨードトルエン、4-ヨードトルエン,2,4,6-トリメチルヨードベンゼン、2-エチルヨードベンゼン、3-エチルヨードベンゼン、4-エチルヨードベンゼン、2-ヨードアニソール、3-ヨードアニソール、4-ヨードアニソール、1-クロロ-2-ヨードベンゼン、1-クロロ-3-ヨードベンゼン、1-クロロ-4-ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンベン、1,4-ジヨードベンゼン、1-ヨード-2-ニトロベンゼン、1-ヨード-3-ニトロベンゼン、1-ヨード-4-ニトロベンゼン、1-ヨード-2-シアノベンゼン、1-ヨード-3-シアノベンゼン、1-ヨード-4-シアノベンゼン、1-ヨード-4-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)ベンゼン、p-ヨード安息香酸、2-ヨードピリジン、3-ヨードピリジン、4-ヨードピリジン、3-ヨードピラゾール、及び4-ヨードピラゾール
を包含する。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0072】
超原子価ヨード芳香環化合物(1b)の量は、化合物(2)の1モルに対して、通常0.1~50モルの範囲内、好ましくは0.2~30モルの範囲内であることができる。
【0073】
工程Aにおいて、ヨード芳香環化合物(1b)は、酸化剤(A)と共に用いられる。
酸化剤(A)は、好ましくは、例えば、
(i )式:RCOOOM
(当該式中、
は、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、及び
Mは、水素原子、又は金属原子である。)
で表される化合物;
(ii )式:ROOM
(当該式中、
は、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、及び
Mは、水素原子、又は金属原子である。)
で表される化合物;及び
(iii)金属酸化物
からなる群より選択される1種以上であることができる。
前記酸化剤(A)の例は、
メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物、
過マンガン酸、ニクロム酸、酸化タングステン、酸化ルテニウム、酸化アンチモン、酸化オスミウム、及び三酸化硫黄
を包含する。
前記酸化剤(A)の好適な例は、
メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、及び過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物
を包含する。
前記酸化剤(A)のより7好適な例は、m-クロロ過安息香酸を包含する。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0074】
工程Aで用いられる酸化剤の量は、化合物(2)の1モルに対して、通常0.1~40モルの範囲内、好ましくは0.5~30モルの範囲内であることができる。
【0075】
前記超原子価ヨード芳香環化合物(1a)は、好ましくは、
式(p1):
【化6】
[式中、
Arは、芳香環であり、
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH-NRX(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC-C20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH-NRX(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC-C20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、
p2は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH-NRX(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC-C20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH-NRX(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC-C20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
カルボン酸基、
スルホン酸基、ヒドロキシ基、又は
ホスホリルオキシ基
であるか、或いは、
1個のヨウ素原子に結合している2個のRp2が一緒になって、=Oを形成していてもよく、
n1は、0以上の数であり、
n2は、1以上の数であり、及び
n1及びn2の和は、1~11の範囲内である。]
で表される化合物である。
【0076】
前記ヨード芳香環化合物(1b)は、好ましくは、
式(p1’):
【化7】
[式中、
Arは、芳香環であり、
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH-NRX[当該式中、qは1以上の数であり;Rは、各出願において独立して、H、又はC-C20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。]、
基:-(CH-NRX[当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC-C20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。]、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、n1は、0~置換可能な最大数(例:0~5の数)であり、及びn2は、1~6の数である。]
で表される化合物である。
当業者が通常理解する通り、n1についての置換可能な最大数は、n2に対応して変動し得る。
【0077】
構造式(p1)において、Rp1は、好ましくは、各出現において独立して、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、
ハロゲン原子、
カルボン酸基、又は
スルホン酸基
である。
構造式(p1’)において、Rp1は、好ましくは、各出現において独立して、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、
ハロゲン原子、
カルボン酸基、又は
スルホン酸基
である。
これらの置換基としてのフッ素原子の数は、1個から置換可能な最大数までであることができる。その具体例は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、及び9個を包含する。
【0078】
構造式(p1)において、Rp2は、好ましくは、各出現において独立して、ハロゲン原子、酢酸基、トリフルオロ酢酸基、トシル酸基、ヒドロキシ基、ホスホリルオキシ基、トリフルオロメタンスルホン酸基、プロピオン酸基、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸基、パーフルオロプロピオン酸基、パーフルオロ酪酸基、又はメタンスルホン酸基である。
【0079】
本明細書中、用語「酸基」は、有機又は無機の酸の分子から,水素イオンとして電離し得る水素原子を一個除いた残りの原子又は原子団を意味することができる。
具体的に例えば、本明細書中、「カルボン酸基」は「酢酸基」を包含でき、及び「酢酸基」は、-OCOCH(アセチルオキシ基)であることができる。
【0080】
工程Aの反応は、溶媒の存在下又は不存在下で実施できる。
当該溶媒は、非極性溶媒、又は極性溶媒のいずれでもよく、
その具体例は、
当該溶媒は、非極性溶媒、又は極性溶媒のいずれでもよい。
当該溶媒は、芳香族化合物、アルコール、エーテル、含窒素極性有機化合物、ニトリル、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、フッ素系溶剤、又はその他の溶媒、或いはこれらの組合せであることができる。
【0081】
前記溶媒としての芳香族化合物の例は、アニソール、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンを包含し、及びその好適な例は、ベンゼン、及びトルエンを包含する。
【0082】
前記溶媒としてのアルコールの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、及びヘキサントリオールを包含し、及びその好適な例は、メタノール、及びエタノールを包含する。
【0083】
前記溶媒としてのエーテルの例は、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジエチルエーテルを包含し、及びその好適な例は、ジエチルエーテル、及びテトラヒドロフランを包含する。
【0084】
前記溶媒としての含窒素極性有機化合物の例は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、及び1,3―ジメチル-2-イミダゾリジノンを包含し、及びその好適な例は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンを包含する。
【0085】
前記溶媒としてのニトリルの例は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、及びアジポニトリルを包含し、及びその好適な例はアセトニトリルを包含する。
【0086】
前記溶媒としてのハロゲン化炭化水素の例は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びクロロトルエンを包含し、及びその好適な例はジクロロメタン、及びクロロホルムを包含する。
【0087】
前記溶媒としての脂肪族炭化水素の例は、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、及びミネラルスピリットを包含し、及びその好適な例はシクロヘキサン、ヘプタンを包含する。
【0088】
前記フッ素系溶剤の例は、パーフルオロベンゼン、トリフルオロトルエン、ジトリフルオロベンゼン、トリフルオロエタノールを包含し、及びその好適な例は、パーフルオロベンゼン、及びトリフルオロエタノールを包含する。
【0089】
前記その他の溶媒の例は、酢酸、ジメチルスルホキシド、スルホラン、及び水を包含する。
当該溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0090】
溶媒の使用量は、例えば、
本発明の製造方法の基質である有機化合物(1)の1質量部に対して、
通常0~200質量部の範囲内
好ましくは、0~100質量部の範囲内、及び
より好ましくは0~50質量部の範囲内
であることができる。
【0091】
工程Aの温度は、
通常-78~200℃の範囲内
好ましくは、-10~100℃の範囲内、及び
より好ましくは0~100℃の範囲内
であることができる。
【0092】
工程Aの時間は、
通常0.1~72時間の範囲内
好ましくは、0.1~48時間の範囲内、
より好ましくは0.2~24時間の範囲内、及び
更に好ましくは0.5~12時間の範囲内
であることができる。
【0093】
本開示の製造方法によれば、原料転化率は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、及び更に好ましくは30%以上であることができる。
本開示の製造方法によれば、目的化合物の選択率は、好ましくは50%以上、及びより好ましくは60%以上であることができる。
本開示の製造方法によれば、目的化合物の収率は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、及び更に好ましくは30%以上であることができる。
【0094】
2.フッ素化有機化合物
本開示の一態様は、
式(1-1):
【化8】
[式中、
Arは1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
は、水素、ハロ、又は有機基であり;
は、1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、
1個以上の置換基を有していてもよい脂肪族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよい芳香族複素環基であり、及び
は、水素、又はフルオロである。]
のフッ素化有機化合物
である。
【0095】
当該化合物の好適な態様は、前記製造方法について説明した好適な態様から理解され得る。
【0096】
は、一実施態様において好ましくはフルオロである。
は、別の実施態様において、好ましくは水素である。
【実施例
【0097】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例中、用語「収率」は、特に記載の無い限り、単離収率を意味し得る。
【0098】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
TEA:トリエチルアミン
DCM:ジクロロメタン
Ph:フェニル
Ac:アセチル
Py:ピリジン
m-CPBA:メタクロロ過安息香酸
【0099】
実施例1a:
フッ素化反応1
容器中に、PhIO (1.3 eq. )、Py・HF (25 eq. )、及びCH2Cl2を加え、これらを室温で攪拌した。その後、そこに室温で(E)-chalcone ( 1 mmol )とCH2Cl2を加え、及び室温7時間攪拌した。これを炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、CH2Cl2で水層を三回抽出した。得られた有機層をNa2SO4で乾燥させ、及びエバポレーションを行った。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー単離により、目的物の3,3-difluoro-1,2-diphenylpropan-1-oneを収率82%で得た。
【0100】
実施例1b
原料を(E)-chalconeから(E)-4-phenylbut-3-en-2-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で4,4-difluoro-3-phenylbutan-2-oneを収率67%で得た。
【0101】
実施例1c
原料を(E)-chalconeから(E)-4,4-dimethyl-1-phenylpent-1-en-3-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で1,1-difluoro-4,4-dimethyl-2-phenylpentan-3-oneを収率80%で得た。
【0102】
実施例1d
原料を(E)-chalconeから(E)-1-(4-nitrophenyl)-3-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-1-(4-nitrophenyl)-2-phenylpropan-1-oneを収率86%で得た。
【0103】
実施例1e
原料を(E)-chalconeから(E)-1-(4-methoxyphenyl)-3-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-1-(4-methoxyphenyl)-2-phenylpropan-1-oneを収率71%で得た。
【0104】
実施例1f
原料を(E)-chalconeから(E)-1-(naphthalen-2-yl)-3-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-1-(naphthalen-2-yl)-2-phenylpropan-1-oneを収率63%で得た。
【0105】
実施例1g
原料を(E)-chalconeから(E)-3-phenyl-1-(thiophen-2-yl)prop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-2-phenyl-1-(thiophen-2-yl)propan-1-oneを収率80%で得た。
【0106】
実施例1h
原料を(E)-chalconeから3-(4-chlorophenyl)-1-(4-methoxyphenyl)prop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で2-(4-chlorophenyl)-3,3-difluoro-1-(4-methoxyphenyl)propan-1-oneを収率66%で得た。
【0107】
実施例1i
原料を(E)-chalconeから 1-phenylnon-1-en-3-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で1,1-difluoro-2-phenylnonan-3-oneを収率67%で得た。
【0108】
実施例1j
原料を(E)-chalconeから1-(4-chlorophenyl)-3-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で1-(4-chlorophenyl)-3,3-difluoro-2-phenylpropan-1-oneを収率86%で得た。
【0109】
実施例1k
原料を(E)-chalconeからN-(4-cinnamoylphenyl)acetamideに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法でN-(4-(3,3-difluoro-2-phenylpropanoyl)phenyl)acetamideを収率77%で得た。
【0110】
実施例1l
原料を(E)-chalconeから1-phenyl-3-(p-tolyl)prop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-1-phenyl-2-(p-tolyl)propan-1-oneを収率52%で得た。
【0111】
実施例1m
原料を(E)-chalconeから3-(4-chlorophenyl)-1-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で2-(4-chlorophenyl)-3,3-difluoro-1-phenylpropan-1-oneを収率80%で得た。
【0112】
実施例1n
原料を(E)-chalconeから3-(4-fluorophenyl)-1-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-2-(4-fluorophenyl)-1-phenylpropan-1-oneを収率81%で得た。
【0113】
実施例1o
原料を(E)-chalconeから1-(4-chlorophenyl)-3-(p-tolyl)prop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で1-(4-chlorophenyl)-3,3-difluoro-2-(p-tolyl)propan-1-oneを収率58%で得た。
【0114】
実施例1p
原料を(E)-chalconeから1,3-diphenylbut-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-2-methyl-1,2-diphenylpropan-1-oneを収率72%で得た。
【0115】
実施例1q
原料を(E)-chalconeから1-phenyl-3-(p-tolyl)but-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-2-methyl-1-phenyl-2-(p-tolyl)propan-1-oneを収率60%で得た。
【0116】
実施例1r
原料を(E)-chalconeから7-phenyl-8,9-dihydro-5H-benzo[7]annulen-5-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で2-(difluoromethyl)-2-phenyl-3,4-dihydronaphthalen-1(2H)-oneを収率49%で得た。
【0117】
実施例2a
フッ素化反応2
容器中に、4-Iodotolene (20 mol% ) 、mCPBA (1.3 eq.)、及びCH2Cl2を加えた。その後Py・HF (40 eq. )、CH2Cl2を加え、室温で15分攪拌させた。その後室温で(E)-chalcone ( 0.5 mmol )とCH2Cl2を加え、室温で24時間攪拌した。その後、CH2Cl2で水層を三回抽出した。有機層はNa2SO4で乾燥させ、エバポレーションを行った。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離し、目的物の3,3-difluoro-1,2-diphenylpropan-1-oneを収率68%で得た。
【0118】
実施例2b
原料を(E)-chalconeから(E)-4-phenylbut-3-en-2-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で4,4-difluoro-3-phenylbutan-2-oneを収率32%で得た。
【0119】
実施例2c
原料を(E)-chalconeから(E)-4,4-dimethyl-1-phenylpent-1-en-3-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で1,1-difluoro-4,4-dimethyl-2-phenylpentan-3-oneを収率73%で得た。
【0120】
実施例2d
原料を(E)-chalconeから(E)-1-(4-nitrophenyl)-3-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-1-(4-nitrophenyl)-2-phenylpropan-1-oneを収率67%で得た。
【0121】
実施例2e
原料を(E)-chalconeから(E)-1-(4-methoxyphenyl)-3-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-1-(4-methoxyphenyl)-2-phenylpropan-1-oneを収率62%で得た。
【0122】
実施例2f
原料を(E)-chalconeから(E)-1-(naphthalen-2-yl)-3-phenylprop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-1-(naphthalen-2-yl)-2-phenylpropan-1-oneを収率26%で得た。
【0123】
実施例2g
原料を(E)-chalconeから(E)-3-phenyl-1-(thiophen-2-yl)prop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で3,3-difluoro-2-phenyl-1-(thiophen-2-yl)propan-1-oneを収率85%で得た。
【0124】
実施例2h
原料を(E)-chalconeから(E)-3-(4-chlorophenyl)-1-(4-methoxyphenyl)prop-2-en-1-oneに変更した点を除いて、実施例1aと同様の方法で2-(4-chlorophenyl)-3,3-difluoro-1-(4-methoxyphenyl)propan-1-oneを収率56%で得た。
【0125】
実施例3a:
フッ素化反応3
容器中に、PhIO (1.3 eq. )、Py・HF (20 eq. )、及びCH2Cl2を加え、これらを室温で攪拌させた。その後、そこに室温でethyl cinnamate (1mmol)とCH2Cl2を加え、室温7時間攪拌した。これを炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、CH2Cl2で水層を抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、及びエバポレーションを行った。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー単離により、目的物のethyl 3,3-difluoro-2-phenylpropanoateを収率77%で得た。
【0126】
実施例3b
原料をethyl cinnamateからethyl (E)-3-(p-tolyl)acrylateに変更した点を除いて、実施例3aと同様の方法でethyl 3,3-difluoro-2-(p-tolyl)propanoateを収率80%で得た。
【0127】
実施例3c
原料をethyl cinnamateからethyl (E)-3-(o-tolyl)acrylateに変更した点を除いて、実施例3aと同様の方法でethyl 3,3-difluoro-2-(o-tolyl)propanoateを収率85%で得た。
【0128】
実施例3d
原料をethyl cinnamateからethyl (E)-3-(4-fluorophenyl)acrylateに変更した点を除いて、実施例3aと同様の方法でethyl 3,3-difluoro-2-(4-fluorophenyl)propanoateを収率77%で得た。
【0129】
実施例4a:
フッ素化反応4
PhIO (1.4 eq. )、Py・HF (20 eq. )、及びCH2Cl2を、これらを室温で攪拌した。その後室温で(E)-3-phenylprop-2-en-1-ol ( 1 mmol )とCH2Cl2を加え、-45℃で2時間攪拌した。これを炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、CH2Cl2で水層を三回抽出した。得られた有機層をNa2SO4で乾燥させ、及び更にエバポレーションを行った。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー単離により、目的物の3,3-difluoro-2-phenylpropan-1-olを収率52%で得た。
【0130】
実施例4b
原料を(E)-3-phenylprop-2-en-1-olから(E)-3-(o-tolyl)prop-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例4aと同様の方法で3,3-difluoro-2-(o-tolyl)propan-1-olを収率47%で得た。
【0131】
実施例4c
原料を(E)-3-phenylprop-2-en-1-olから(E)-3-(4-fluorophenyl)prop-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例4aと同様の方法で3,3-difluoro-2-(4-fluorophenyl)propan-1-olを収率38%で得た。
【0132】
実施例4d
原料を(E)-3-phenylprop-2-en-1-olから(E)-3-phenylbut-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例4aと同様の方法で3,3-difluoro-2-phenylbutan-1-olを収率54%で得た。
【0133】
実施例5a
容器中に、PhIO (1.4 eq. )、Py・HF (20eq. )、及びCH2Cl2を加え、これらを-45℃で攪拌させた。その後、そこに3-(o-tolyl)prop-2-en-1-ol (1mmol)を加え、-45℃で2時間攪拌した。これを炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した後、CH2Cl2で水層を抽出した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、及びエバポレーションを行った。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー単離により、目的物の3,3-difluoro-2-(o-tolyl)propan-1-olを収率47%で得た。
【0134】
実施例5b
原料を3-(o-tolyl)prop-2-en-1-olから3-(p-tolyl)prop-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例5aと同様の方法で3,3-difluoro-2-(p-tolyl)propan-1-olを収率38%で得た。
【0135】
実施例5c
原料を3-(o-tolyl)prop-2-en-1-olから3-(4-fluorophenyl)prop-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例5aと同様の方法で3,3-difluoro-2-(4-fluorophenyl)propan-1-olを収率38%で得た。
【0136】
実施例5d
原料を3-(o-tolyl)prop-2-en-1-olから3-(4-chlorophenyl)prop-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例5aと同様の方法で2-(4-chlorophenyl)-3,3-difluoropropan-1-olを収率48%で得た。
【0137】
実施例5e
原料を3-(o-tolyl)prop-2-en-1-olから3-(4-bromophenyl)prop-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例5aと同様の方法で2-(4-bromophenyl)-3,3-difluoropropan-1-olを収率33%で得た。
【0138】
実施例5f
原料を3-(o-tolyl)prop-2-en-1-olから3-phenylbut-2-en-1-olに変更した点を除いて、実施例5aと同様の方法で3,3-difluoro-2-phenylbutan-1-olを収率54%で得た。