(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】押出し成形機
(51)【国際特許分類】
A22C 7/00 20060101AFI20230221BHJP
A21C 11/20 20060101ALI20230221BHJP
A23K 40/25 20160101ALI20230221BHJP
【FI】
A22C7/00 A
A21C11/20 B
A23K40/25
(21)【出願番号】P 2018042361
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000236746
【氏名又は名称】不二精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】青木 稔
【審査官】八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-055038(JP,A)
【文献】特開2003-333980(JP,A)
【文献】登録実用新案第373371(JP,Z2)
【文献】米国特許出願公開第2004/0121052(US,A1)
【文献】特開2008-011838(JP,A)
【文献】実開平04-016590(JP,U)
【文献】米国特許第03541946(US,A)
【文献】米国特許第03764715(US,A)
【文献】実開昭55-052987(JP,U)
【文献】特開2000-000076(JP,A)
【文献】特開昭55-118378(JP,A)
【文献】中国実用新案第203935885(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0125495(KR,A)
【文献】中国実用新案第201332668(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C5/00-7/00
A22C11/00-11/12
A22C25/00-29/04
A21C1/00-15/04
A23B4/00-A23P30/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品原料を押し出して一定形状に成形するための押出し成形機において、前記食品原料を投入するためのホッパー部と、前記ホッパー部に投入された前記食品原料を受け、前記食品原料を所定の搬送方向に搬送して成形する搬送成形部と、を備え、
前記搬送成形部は、
前記ホッパー部の下方位置に設けられ、前記搬送方向に沿って伸延する搬送ケースと、前記搬送ケース内に前記搬送方向を回転軸の軸方向として回転可能に設けられ、前記回転軸の周廻りに螺旋羽根を有したスクリューと、前記搬送ケースの前記搬送方向の下手側に設けられ、前記食品原料を通過させる型枠孔を有するダイと、を備え、
前記スクリューの回転駆動により搬送され前記型枠孔から押し出される前記食品原料を前記ダイの前記搬送方向の上手側で一時的に貯溜する貯溜部を形成し、
前記搬送ケースは、
前記ホッパー部の下方で水平方向に伸延する中空の筒体であって、
搬送方向下手側の外周縁で、径方向外方に向けて突出する樹脂プレートを有し、前記ホッパー部と連通連設する搬送ケース本体部と、
搬送方向上手側の外周縁で
、径方向外方に向けて突出する掛合プレート部
と、搬送方向上手側の内周縁で、前記搬送ケース本体部の先端を挿嵌させる本体嵌合部と、を有し、前記搬送ケース本体部の先端に着脱可能な搬送ケースノズル部と、で構成し、
前記搬送ケース本体部と前記搬送ケースノズル部とは、
前記搬送ケース本体部の外方で、前記搬送ケース本体部の筒軸に沿って突設されると共に前記搬送ケース本体部の軸方向視で点対称に配設され、先端で締結ナットを螺着可能とした一対の掛合棒と、
前記掛合プレート部の外周側で、切欠き部をなすと共に軸方向視で点対称に鈎状に形成され、前記一対の掛合棒に掛合対応する一対の掛合爪と、により、
前記締結ナットを閉め込むことによって前記樹脂プレートと前記掛合プレートとを密着させるとともに前記搬送ケース本体部の先端を前記本体嵌合部に挿嵌させて互いに連通接続可能に構成したことを特徴とする押出し成形機。
【請求項2】
前記ダイは、前記搬送ケースに着脱可能に設けられたホルダ部材により構成されており、
前記ホルダ部材は、前記型枠孔が形成されたダイ本体部と、
前記貯溜部において前記ダイ本体部とともに食品原料の貯溜空間を形成する筒部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の押出し成形機。
【請求項3】
前記貯溜部は、前記筒部の内壁面の少なくとも一部に、前記搬送方向の下手側から上手側に向けて前記筒部を拡開させるテーパー面を有することを特徴とす
る請求項2に記載の押出し成形機。
【請求項4】
前記型枠孔は、少なくとも2つ以上であって同一直線上に配置するように前記ダイに形成されるとともに、前記テーパー面は、搬送方向の下手側の前記型枠孔から拡開するように筒部の内壁に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の押出し成形機。
【請求項5】
前記スクリューと前記貯溜部との間に、前記搬送ケース内と前記貯溜部との間を仕切るとともに前記搬送ケース内と前記貯溜部とを互いに連通させる複数の連通孔が形成されたスクリーンプレートを介設したことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の押出し成形機。
【請求項6】
前記スクリューの前記搬送方向の下手の位置には、前記スクリーンプレートの板面に摺接するとともに前記スクリューと一体的に回転可能なインナーナイフを設けたことを特徴とする請求項5に記載の押出し成形機。
【請求項7】
前記搬送ケースの内周面には、前記食品原料が係合する係合部が形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の押出し成形機。
【請求項8】
前記スクリューの前記螺旋羽根は、前記搬送方向の上手側のピッチより下手側のピッチを小さくするように形成したことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の押出し成形機。
【請求項9】
前記スクリューの前記回転軸は、前記搬送方向の上手側の直径より下手側の直径を大きくするように形成したことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の押出し成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押出し成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品の保存性や喫食の際の食感性の向上のため、例えば、棒状に成形されたジャーキーやソーセージなどの加工肉食品、うどんやパスタなどの麺食品、ペレット状に成形されたペットフードなど、一定の形状に成形された成形食品が愛用されている。
【0003】
このような成形食品を製造する装置として、搬送ケース内に配置したスクリューとスクリューの先端に近接配置したダイとを備え、ミンチ状又はペースト状の食品原料を成形食品の最終形態に成形するための押出し成形機が提案されている。
【0004】
かかる押出し成形機によれば、食品原料を搬送ケース内で回転するスクリューに巻き込みながら搬送方向の下手位置のダイへ送るとともに、ダイに形成した複数の型枠孔に食品原料を通過させることにより、一定形状に成形した成形食品を製造することができるとしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の押出し成形機は、スクリューとダイとが近接した構造上、軸方向においてスクリュー先端部分のスクリュー羽根面とダイ面との間の距離がスクリューのスクリュー羽根をなす螺旋形に沿って異なるため、その間に存在する食品原料には嵩密度の差が生じており、ダイの型枠孔から成形吐出される食品原料の押出速度や押出量を一定にできないという、いわゆるスクリューの脈動の問題が生じていた。
【0007】
具体的には、ダイ面とダイ面に対向するスクリュー羽根面との間の距離は、搬送方向においてダイを基準として、スクリュー羽根の螺旋形に沿ってスクリュー先端側から基端側に行くほど長くなる。すなわち、スクリュー羽根面は螺旋形状であるため、ダイ面に対向するスクリュー羽根面においては、スクリューの軸回りの周方向の位置により、ダイ面とこれに対向するスクリュー羽根面との間の搬送方向の距離が異なることになる。
【0008】
このため、ダイ面に対向するスクリュー羽根面の部位のうち、ダイ面に比較的近い部位とダイ面との間に存在する食品原料は比較的小さい嵩密度となりスクリューによる押圧力を受けやすくなることで、型枠孔からの押出速度が速くなり、押出量が増大化する。
【0009】
一方で、ダイ面から比較的遠い部位とダイ面との間に存在する食品原料は比較的大きい嵩密度となる分スクリューによる押圧力を不用意に吸収して同押圧力を低下させてしまうため、型枠孔からの押出速度が遅くなり、押出量が低減化する。
【0010】
従って、型枠孔から吐出される食品原料の押出速度や押出量は、ダイに形成された型枠孔と駆動回転するスクリューの先端との位置関係によって大きな差異となって顕れることとなり、結果、成形食品の長さや密度にばらつきを生じさせて成形性を悪化させ、成形食品を安定して連続的に製造できない問題が発生していた。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、ダイに形成された型枠孔と駆動回転するスクリューの先端との位置関係によらず、スクリューによる脈動を可及的抑制し、ダイの型枠孔から食品原料を安定して吐出することができ、成形性の良好な成形食品を安定して連続的に製造できる押出し成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、本発明にかかる押出し成形機は、(1)食品原料を押し出して一定形状に成形するための押出し成形機において、前記食品原料を投入するためのホッパー部と、前記ホッパー部に投入された前記食品原料を受け、前記食品原料を所定の搬送方向に搬送して成形する搬送成形部と、を備え、前記搬送成形部は、前記ホッパー部の下方位置に設けられ、前記搬送方向に沿って伸延する搬送ケースと、前記搬送ケース内に前記搬送方向を回転軸の軸方向として回転可能に設けられ、前記回転軸の周廻りに螺旋羽根を有したスクリューと、前記搬送ケースの前記搬送方向の下手側に設けられ、前記食品原料を通過させる型枠孔を有するダイと、を備え、前記スクリューの回転駆動により搬送され前記型枠孔から押し出される前記食品原料を前記ダイの前記搬送方向の上手側で一時的に貯溜する貯溜部を形成し、前記搬送ケースは、前記ホッパー部の下方で水平方向に伸延する中空の筒体であって、搬送方向下手側の外周縁で、径方向外方に向けて突出する樹脂プレートを有し、前記ホッパー部と連通連設する搬送ケース本体部と、搬送方向上手側の外周縁で、径方向外方に向けて突出する掛合プレート部と、搬送方向上手側の内周縁で、前記搬送ケース本体部の先端を挿嵌させる本体嵌合部と、を有し、前記搬送ケース本体部の先端に着脱可能な搬送ケースノズル部と、で構成し、前記搬送ケース本体部と前記搬送ケースノズル部とは、前記搬送ケース本体部の外方で、前記搬送ケース本体部の筒軸に沿って突設されると共に前記搬送ケース本体部の軸方向視で点対称に配設され、先端で締結ナットを螺着可能とした一対の掛合棒と、前記掛合プレート部の外周側で、切欠き部をなすと共に軸方向視で点対称に鈎状に形成され、前記一対の掛合棒に掛合対応する一対の掛合爪と、により、前記締結ナットを閉め込むことによって前記樹脂プレートと前記掛合プレートとを密着させるとともに前記搬送ケース本体部の先端を前記本体嵌合部に挿嵌させて互いに連通接続可能に構成したことに特徴を有する。
【0013】
また、本発明に係る押出し成形機は、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記ダイは、前記搬送ケースに着脱可能に設けられたホルダ部材により構成されており、前記ホルダ部材は、前記型枠孔が形成されたダイ本体部と、前記貯溜部において前記ダイ本体部とともに食品原料の貯溜空間を形成する筒部と、を有すること。
(3)前記貯溜部は、前記筒部の内壁面の少なくとも一部に、前記搬送方向の下手側から上手側に向けて前記筒部を拡開させるテーパー面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の押出し成形機。
(4)前記型枠孔は、少なくとも2つ以上であって同一直線上に配置するように前記ダイに形成されるとともに、前記テーパー面は、搬送方向の下手側の前記型枠孔から拡開するように前記筒部の内壁に形成されていること。
(5)前記スクリューと前記貯溜部との間に、前記搬送ケース内と前記貯溜部との間を仕切るとともに前記搬送ケース内と前記貯溜部とを互いに連通させる複数の連通孔が形成されたスクリーンプレートを介設したこと。
(6)前記スクリューの前記搬送方向の下手の位置には、前記スクリーンプレートの板面に摺接するとともに前記スクリューと一体的に回転可能なインナーナイフを設けたこと。
(7)前記搬送ケースの内周面には、前記食品原料が係合する係合部が形成されていること。
(8)前記スクリューの前記螺旋羽根は、前記搬送方向の上手側のピッチより下手側のピッチを小さくするように形成したこと。
(9)前記スクリューの前記回転軸は、前記搬送方向の上手側の直径より下手側の直径を大きくするように形成したこと。
【発明の効果】
【0014】
請求項1にかかる発明によれば、食品原料を押し出して一定形状に成形するための押出し成形機において、前記食品原料を投入するためのホッパー部と、前記ホッパー部に投入された前記食品原料を受け、前記食品原料を所定の搬送方向に搬送して成形する搬送成形部と、を備え、前記搬送成形部は、前記ホッパー部の下方位置に設けられ、前記搬送方向に沿って伸延する搬送ケースと、前記搬送ケース内に前記搬送方向を回転軸の軸方向として回転可能に設けられ、前記回転軸の周廻りに螺旋羽根を有したスクリューと、前記搬送ケースの前記搬送方向の下手側に設けられ、前記食品原料を通過させる型枠孔を有するダイと、を備え、前記スクリューの回転駆動により搬送され前記型枠孔から押し出される前記食品原料を前記ダイの前記搬送方向の上手側で一時的に貯溜する貯溜部を形成し、前記搬送ケースは、前記ホッパー部の下方で水平方向に伸延する中空の筒体であって、搬送方向下手側の外周縁で、径方向外方に向けて突出する樹脂プレートを有し、前記ホッパー部と連通連設する搬送ケース本体部と、搬送方向上手側の外周縁で、径方向外方に向けて突出する掛合プレート部と、搬送方向上手側の内周縁で、前記搬送ケース本体部の先端を挿嵌させる本体嵌合部と、を有し、前記搬送ケース本体部の先端に着脱可能な搬送ケースノズル部と、で構成し、前記搬送ケース本体部と前記搬送ケースノズル部とは、前記搬送ケース本体部の外方で、前記搬送ケース本体部の筒軸に沿って突設されると共に前記搬送ケース本体部の軸方向視で点対称に配設され、先端で締結ナットを螺着可能とした一対の掛合棒と、前記掛合プレート部の外周側で、切欠き部をなすと共に軸方向視で点対称に鈎状に形成され、前記一対の掛合棒に掛合対応する一対の掛合爪と、により、前記締結ナットを閉め込むことによって前記樹脂プレートと前記掛合プレートとを密着させるとともに前記搬送ケース本体部の先端を前記本体嵌合部に挿嵌させて互いに連通接続可能に構成したため、ダイの型枠孔と駆動回転するスクリューの先端との位置関係によらず、スクリューによる脈動を可及的抑制し、ダイの型枠孔から食品原料を安定して吐出することができ、成形性の良好な成形食品を安定して連続的に製造できる効果がある。
【0015】
すなわち、ホッパーに投入された食品原料は、スクリューにより撹拌混練作用を受けつつ搬送ケース内部を搬送方向の上手側から下手側に搬送されるとともにダイの手前で貯溜部に押し込まれて同貯溜部を満たすことにより圧縮され、貯溜部の形状に沿った食品原料の塊(以下、食品原料塊と称す。)となる。
【0016】
貯溜部の食品原料塊は、スクリューより貯溜部の搬送方向上手側から絶えず供給される食品原料を介して、ダイ面へ向けて塊ごと一体的に一定の押圧力で押圧されることとなる。
【0017】
換言すれば、貯溜部は、搬送される食品原料を食品原料塊後部へ連なるように食品原料塊に一体化させてダイとスクリュー羽根との間の食品原料の嵩密度差を解消し、スクリューの脈動を吸収して、ダイに対するスクリュー羽根の位相の回転変位により生じていた押圧力の差をなくす。
【0018】
すなわち、貯溜部をスクリューとダイとの間の食品原料の嵩密度差を解消しつつスクリューの脈動を吸収するクリアランス部として機能させるとともにダイ面に負荷される押圧力を型枠孔を通過できる均一な押圧力へと整圧する整圧部として機能させ、食品原料を貯溜部を経てダイの型枠孔へ通過せることにより、ダイの型枠孔から同一量の食品原料を連続的且つ安定して成形吐出することができる。
【0019】
また、請求項2にかかる発明によれば、前記ダイは、前記搬送ケースに着脱可能に設けられたホルダ部材により構成されており、前記ホルダ部材は、前記型枠孔が形成されたダイ本体部と、前記貯溜部において前記ダイ本体部とともに食品原料の貯溜空間を形成する筒部と、を有することとしたため、所望とする成形食品に適合する貯留部やダイ部を有したホルダ部材をユニット化し、同ユニットの選択幅を広げることができ、装置使用後にはホルダ部材を取外して同ホルダ部材や搬送ケース、スクリュー等の各装置部材を洗浄したり交換するなどメンテナンス性を向上することができる。
【0020】
また、請求項3にかかる発明によれば、前記貯溜部は、前記筒部の内壁面の少なくとも一部に、前記搬送方向の下手側から上手側に向けて前記筒部を拡開させるテーパー面を有することとしたため、貯溜部の食品原料塊をテーパー面に沿わせて搬送方向の下手側に移動させることにより、ダイの型枠孔へ向けてスクリューによる押圧力を集中させ、型枠孔の内部通過抵抗に抗した押圧力をより効果的に得ることができる。
【0021】
また、請求項4にかかる発明によれば、前記型枠孔は、少なくとも2つ以上であって同一直線上に配置するように前記ダイに形成されるとともに、前記テーパー面は、搬送方向の下手側の前記型枠孔から拡開するように前記筒部の内壁に形成されていることとしたため、スクリューによる押圧力をより確実にダイの複数の型枠孔へ集中させることができる。
【0022】
また、請求項5にかかる発明によれば、前記スクリューと前記貯溜部との間に、前記搬送ケース内と前記貯溜部との間を仕切るとともに前記搬送ケース内と前記貯溜部とを互いに連通させる複数の連通孔が形成されたスクリーンプレートを介設したため、食品原料の成分や性状の偏りに左右されず、食品原料による型枠孔の詰りを防止するとともに食品原料の各型枠孔内の通過抵抗を均一化でき、成形食品の成形性を向上することができる。
【0023】
食品原料は、例えば水分や油分、タンパク質や繊維質などの成分、また、粘着性、結着性、流動性などの性状を多く有しており、タンパク質が多く粘着性や結着性が比較的強い部分では互いに結着した塊部分(以下、単にダマと称す。)を形成するなど、食品原料において成分や性状の分布に偏りが生じているものもある。
【0024】
従って、このような不均一な成分や性状分布を有した食品原料をスクリーンプレートの連通孔に挿通させることにより、食品原料を裏漉ししてほぐし、食品原料中の成分や性状の分布の偏り解消することができる。
【0025】
また、請求項6にかかる発明によれば、前記スクリューの前記搬送方向の下手の位置には、前記スクリーンプレートの板面に摺接するとともに前記スクリューと一体的に回転可能なインナーナイフを設けたため、スクリューにより搬送された食品原料をインナーナイフにより切断することにより、同原料中の比較的硬質なダマや繊維質成分を切断細分化することができ、貯溜部で性状や成分の分布をより均一化させた食品原料塊を形成し、食品原料による型枠孔の詰りの防止や各型枠孔を通過する食品原料における通過抵抗を均一化をより堅実とし、成形食品の成形性をさらに向上することができる。
【0026】
また、請求項7にかかる発明によれば、前記搬送ケースの内周面には、前記食品原料が係合する係合部を形成したため、スクリューにより搬送される食品原料を回転方向に対して略不動状態にしてスクリューと一体的に回転する共回り現象を防止でき、スクリューによる搬送方向への押圧力を効果的に得ることができる。
【0027】
また、請求項8にかかる発明によれば、前記スクリューの前記螺旋羽根は、前記搬送方向の上手側のピッチより下手側のピッチを小さくするように形成したため、スクリューの上手側で食品原料を受けるスクリューの受け口の幅を広くしてホッパーから供給される食品原料を受け、押込み棒などによらず、搬送ケース内のスクリューに効率良く巻き込みながら下手側に連続搬送することができ、スクリューの下手側で螺旋羽根と食品原料との接触機会を増やしてダイに対する押圧力を高めることができる。
【0028】
また、請求項9にかかる発明によれば、前記スクリューの前記回転軸は、前記搬送方向の上手側の直径より下手側の直径を大きくするように形成したため、スクリューの上手でホッパーからの食品原料を受けるスクリューの受け口の深さを長くし、食品原料を搬送ケース内のスクリューに効率良く巻き込みながら下手側に連続搬送することができ、スクリューの下手で食品原料の嵩密度を低減化してダイに対する押圧力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1の実施形態にかかる押出し成形機の構成を示す外観斜視図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる押出し成形機のホッパー部と搬送成形部とを分離した状態を示す外観斜視図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる押出し成形機の構成を示す側断面図である。
【
図4】第1の実施形態にかかる押出し成形機の搬送成形部の構成を示す分解斜視図である。
【
図5】第1の実施形態にかかる押出し成形機の搬送ケースノズル部の構成を示す説明図である。
【
図6】第1の実施形態にかかる押出し成形機のスクリューの構成を示す外観図である。
【
図7】第1の実施形態にかかる押出し成形機のホルダ部材の構成を示す外観斜視図である。
【
図8】第1の実施形態にかかる押出し成形機のホルダ部材の構成を示す側断面図である。
【
図9】第1の実施形態にかかる押出し成形機のスクリーンプレートの構成を示す外観斜視図である。
【
図10】第1の実施形態にかかる押出し成形機のスクリーンプレートの構成を示す側断面図である。
【
図11】第1の実施形態にかかる押出し成形機の回転軸軸受の構成を示す外観図である。
【
図12】第1の実施形態にかかる押出し成形機のインナーナイフの構成を示す外観図である。
【
図13】第1の実施形態にかかる押出し成形機のインナーナイフの装着過程を示す外観図である。
【
図14】第1の実施形態にかかる押出し成形機の切断部の構成を示す外観斜視図である。
【
図15】第1の実施形態にかかる押出し成形機の回転カッターの構成を示す外観図である。
【
図16】第1の実施形態にかかる押出し成形機の使用状態を示した説明図である。
【
図17】第1の実施形態にかかる押出し成形機の使用状態を示した説明図である。
【
図18】第2の実施形態にかかる押出し成形機のホルダ部材の構成を示す外観図である。
【
図19】第2の実施形態にかかる押出し成形機のホルダ部材の構成を示す側断面図である。
【
図20】第2の実施形態にかかる押出し成形機のホルダ部材の構成を示す平断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明は、食品原料を押し出して一定形状に成形するための押出し成形機において、前記食品原料を投入するためのホッパー部と、前記ホッパー部に投入された前記食品原料を受け、前記食品原料を所定の搬送方向に搬送して成形する搬送成形部と、を備え、前記搬送成形部は、前記ホッパー部の下方位置に設けられ、前記搬送方向に沿って伸延する搬送ケースと、前記搬送ケース内に前記搬送方向を回転軸の軸方向として回転可能に設けられ、前記回転軸の周廻りに螺旋羽根を有したスクリューと、前記搬送ケースの前記搬送方向の下手側に設けられ、前記食品原料を通過させる型枠孔を有するダイと、を備え、前記スクリューの回転駆動により搬送され前記型枠孔から押し出される前記食品原料を前記ダイの前記搬送方向の上手側で一時的に貯溜する貯溜部を形成したことを特徴とする押出し成形機を提供するものである。
【0031】
本機に供する食品原料は、成形食品の最終形態をなすことができる成分や性状を有したものであれば特に限定されることはない。例えば、野菜、肉片やひき肉、野菜、穀粉や肉粉、またはこれらの混合物からなる粉体に水や調味料を加えた生地であってもよい。また、例えば、比較的大きな肉塊、ブロック状にカットされた野菜等の比較的大きな食品原料を本機に使用することもできる。
【0032】
また、本機により製造される成形食品は、特に限定されることはなく、例えば、上述のごとくジャーキーやソーセージなどの加工肉食品、うどんやパスタなどの麺食品、ペレット状に成形されたペットフードの他に、ハンバーグや餃子餡などを成形加工することが出来る。
【0033】
また、特に、本発明によれば、これまで連続的且つ安定して所望とする最終形態に成形することが困難であった食肉原料を加工肉食品形態へ成形加工することができる。
【0034】
すなわち、本装置は、タンパク質や肉筋などの成分を多分に含有し、結着性や粘着性など強い性状を有する食肉原料における成分や性状の分布の偏りを解消できる構成を備え、ダイの型枠孔から同一押出速度且つ同一押出量で食品原料を成形吐出して成型性を安定向上させた成形食品を連続的に製造できるだけでなく、成形食品における成分や性状の分布を均一化して製品としての品質の向上を図ることができる装置であるとも言える。
【0035】
また、ダイの型枠孔の数は、単一又は複数であってもよい。複数の型枠孔である場合であっても、当然に各型枠孔から同時に同一押出速度且つ同一押出量で食品原料を成形吐出できることは勿論である。また、型枠孔50の孔径や長さ、形状は、食品原料の性状や成分、及び所望とする成形食品の形状、適宜変更できる。
【0036】
換言すれば、本発明によれば、ダイを所望とする加工目的、すなわち食品原料を混練撹拌しながら所定量押出し成形する食品成形加工する目的や、食品原料を細かく切ったりすり潰したりする目的に合わせて適宜変更することにより、例えば餃子餡など、混練撹拌しながら所定量押出可能とする加工食品原料用のエクストルーダとして、又は例えばミンチ肉を製造するミンサーとしても選択的に機能させることができる。
【0037】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明にかかる押出し成形機の実施形態を詳説する。
図1は押出し成形機の構成を示す全体外観図、
図2はホッパー部と搬送成型部を分離した状態を示す外観図、
図3は押出し成形機の構成を示す側断面図、
図4は搬送成形部の構成を示す分解斜視図、
図5は搬送ケースノズル部の構成を示す斜視図及び側断面図、
図6はスクリューの構成を示す斜視図及び側面図、
図7及び
図8はダイホルダーの構成を示す斜視図及び側断面図、
図9及び
図10はスクリーンプレートの構成を示す斜視図及び側断面図、
図11は回転軸軸受の構成を示す外観図、
図12及び
図13はインナーナイフの構成を示す斜視図及び装着状態を示す説明図、
図14及び
図15は切断部の構成を示す斜視図及び切断カッターの構成を示す斜視図である。
【0038】
本実施形態にかかる押出し成形機Aは、
図1に示すように食品原料を投入するためのホッパー部1と、ホッパー部1の下方でホッパー部1に投入された食品原料を受け、食品原料を所定の搬送方向に搬送して成形する搬送成形部2と、を備えることを基本構成としている。
【0039】
これらホッパー部1や搬送成形部2は、載置台104上に設置された筐体部100に内蔵された制御部や駆動部と連動するよう筐体部100に連設している。
【0040】
ホッパー部1は、
図3に示すように食品原料が投入される上下開口のホッパー本体10と、ホッパー本体10内に軸架した撹拌パドル体11と、を備えている。
【0041】
ホッパー本体10の周壁は、
図3に示すように内外二重壁により構成したジャケット12を形成しており、同ジャケット12に冷水又は温水などの熱媒体を流通させることによりホッパー部1を冷却又は加温して投入された食品原料の温度変性の防止を可能としている。
【0042】
撹拌パドル体11は、ホッパー本体10内部に軸架されるパドル回転軸14と、パドル回転軸14の周廻りに設けられる撹拌パドル11aと、により構成している。
【0043】
パドル回転軸14は、その一端を筐体部100に内蔵した駆動部101に連結させるとともに他端をパドル回転軸受け15に摺接させている。パドル回転軸14の軸方向は、搬送成形部2が有するスクリュー4の回転軸40の軸方向と同一方向となっている。
【0044】
パドル回転軸受け15の一端には軸受け凸部15aを形成するとともに、パドル回転軸14の他端には軸受け凸部15aに対応する軸凹部14aを形成している。
【0045】
また、ホッパー本体10の一側には、
図1乃至
図3に示すように、筒状の軸受挿入管17がその一端側の開口をホッパー本体10内に臨ませるように設けられている。軸受挿入管17は、ホッパー本体10の一側の壁面に対して垂直状に外方へ向けて突出している。
【0046】
すなわち、パドル回転軸受け15は、軸受挿入管17を介して、ホッパー本体10の一側の壁面部に支持されている。パドル回転軸受け15は、軸受挿入管17に挿入することによりホッパー本体10内に突出させた軸受け凸部15aを軸凹部14aに遊嵌してパドル回転軸14を回転可能に軸支している。
【0047】
撹拌パドル11aは、矩形板状であって、
図3に示すようにパドル回転軸14に対し、軸方向に沿って板面をパドル回転軸14の回転方向に向けるように設けられている。本実施形態では、パドル回転軸14に対して2枚の撹拌パドル11a、11a’が設けられている。
【0048】
2枚の撹拌パドル11a、11a’は、パドル回転軸14の軸方向については、互いに干渉しないように隣り合う位置に設けられており、パドル回転軸14の周方向については、等角度間隔(180°間隔)で設けられている。2枚の撹拌パドル11a、11a’は、ホッパー部1内に収納した食品原料を板面11b、11b’で交互に撹拌しながら下方の矩形状の排出口16に押し込み落下させる。
【0049】
搬送成形部2は、
図3及び
図4に示すように搬送方向に沿って伸延する搬送ケース3と、搬送ケース3内に搬送方向を回転軸40の軸方向として回転可能に設けられるスクリュー4と、搬送ケース3の搬送方向の下手側に設けられ、食品原料を通過させる複数の型枠孔50を有するダイ5と、を備えている。
【0050】
搬送ケース3は、筐体部100一側から水平方向に伸延する中空の筒体であって、ホッパー部1と連通連設する搬送ケース本体部30と、搬送ケース本体部30の先端に着脱可能な搬送ケースノズル部31と、で構成している。
【0051】
搬送ケース本体部30は、搬送ケース3の後半部(搬送方向上手側の部分)に相当する部分であり、筒軸を駆動部103の回転軸と同一軸心上に配置するように一端で筐体部100の一側に固定している。
【0052】
また、搬送ケース本体部30の周壁は、ホッパー部1と同様に、
図3に示すように内外二重壁により構成したジャケット30cを形成している。
【0053】
搬送ケース本体部30の周壁の上部には、
図2及び
図4に示すように矩形状の原料搬入窓30aを切欠き状に形成しており、ホッパー部1を搬送ケース本体部30上部に取付けた際に、
図3に示すように原料搬入窓30aが排出口16に位置して搬送成形部2とホッパー部1とが連通し、ホッパー部1と搬送成形部2の搬送ケース本体部30とが一体化する。
【0054】
また、搬送ケース本体部30の搬送方向下手側の外周縁には、
図3に示すように径方向外方に向けて樹脂プレート30bを突出形成している。
【0055】
搬送ケースノズル部31は、
図3及び
図4に示すように搬送ケース3の前半部(搬送方向下手側の部分)に相当する部分であり、
図5(a)に示すように筒状のノズル本体部31aと、ノズル本体部31aの搬送方向上手側の外周縁で径方向外方に向けて鍔状に突出形成した掛合プレー
ト部32とを有する一体の部材で構成している。
【0056】
掛合プレート部32は、軸方向視で左右方向を長手方向とする略菱形状の外形を有し、その左右両端部には、鈎状の掛合爪32a、32a'が形成されている。左右の掛合爪32a、32a'は、それぞれ掛合プレート部32の本体部分とともに、開口側を互いに上下逆とする切欠き部をなすように、軸方向視で点対称に形成されている。
【0057】
また、搬送ケース本体部30の左右外方には、
図1及び
図2に示すように先端部に掛合受部102a、102a’を有した掛合棒102、102’を筐体部100の外壁から搬送ケース本体部30の筒軸に沿うように突設している。また、掛合受部102a、102a’の先端は、締結ナット102b、102b’を螺着可能としている。
【0058】
このような構成により、搬送ケースノズル部31の掛合爪32a、32a’を掛合棒102、102’に掛合して締結ナット102b、102b’を閉め込むことにより、掛合プレート32と樹脂プレート30bとを密着させて搬送ケース本体部30に搬送ケースノズル部31とを締結すること可能としている。
【0059】
また、搬送ケースノズル部31の搬送方向上手側の内周縁には、搬送ケース本体部30先端を挿嵌する本体嵌合部35を形成している。本体嵌合部35は、搬送ケースノズル部31の上手側の開口端部において内径を拡径させた部分である。
【0060】
また、ノズル本体部31aの周壁には内外二重壁構造としたジャケット33を形成しており、ジャケット12を有するホッパー部1と同様に、熱媒体を流通可能としている。
【0061】
また、搬送ケースノズル部31の搬送方向下手側の端部の内周縁にはホルダ部材51の基端(搬送方向上手側の端部)を挿嵌するための嵌合凹部36を切欠き形成するとともに、同端部の外周には環状継手54の雌ネジ部56と螺着する雄ネジ部37を形成している。
【0062】
また、搬送ケースノズル部31の内周面の前後端部を除いた大部分には、
図5(b)に示すように食品原料が係合するための係合部34を形成している。
【0063】
係合部34は、スクリュー4の螺旋方向とは逆回りの螺旋方向、すなわち側面視でスクリュー4の螺旋形によりなす位相と逆位相となる螺旋形となるように、搬送ケースノズル部31の内周面から径方向内方に向けて突出形成した螺旋突条34aとしている。
【0064】
係合部34の数は、搬送ケースノズル部31内の食品原料が係合できれば特に限定されることはない。本実施形態では内周面に所定間隔を隔てて3つ形成しており、回転方向における食品原料との係合機会を可及的に増やしている。
【0065】
また、係合部34の形状は、例えば回転軸40の軸方向に沿う直線形状、波線形条、又はスポット形状であってもよい。また、係合部34は突形状の他に、溝形状であってもよい。
【0066】
このような構成により、スクリュー4の回転に伴い搬送ケース3の搬送方向の下手側に搬送された食品原料を係合部34に係合させて回転方向に対して略不動状態とし、スクリュー4の回転にともなう食品原料の共回りを防止可能としている。
【0067】
スクリュー4は、
図3、
図6(a)及び
図6(b)に示すように筐体部100に内蔵した駆動部103に取付可能な回転軸40と、回転軸40の周廻りに螺旋状に突出形成した螺旋羽根41と、で構成している。
【0068】
スクリュー4の回転軸40の両端は、一端を駆動部103に着脱可能とした軸基端40aとし、他端を螺旋羽根41の先端よりもやや長めに伸延した軸先端40bとしている。
【0069】
また、軸先端40bの螺旋羽根41先端の近傍位置には、後述するインナーナイフを装着可能とする方形状の嵌合ナット42を外嵌固定している。なお、インナーナイフを装着使用しない態様では、軸先端40bに嵌合ナット42は外嵌されないため、その分螺旋羽根41を軸先端40bに対して伸延形成することもできる。
【0070】
また、スクリュー4の回転軸40は、
図6(a)及び
図6(b)に示すように搬送方向の上手側の直径L1より下手側の直径L2を大きくするように形成している。換言すれば、回転軸40は、直径を搬送方向の上手側から下手側、すなわち軸基端40aから軸先端40bにかけて大きくしている。
【0071】
具体的には、搬送ケース3内にスクリュー4を収納配置した場合に、スクリュー4において、
図6(b)に示すようにホッパー部1の排出口16に位置する部分である後半部4aの回転軸40の直径L1は、スクリュー4の外方全域を搬送ケース3内周壁に囲繞された部分である前半部4bにおける回転軸40の直径L2より小さくなるように形成している。
【0072】
すなわち、搬送ケース3内に設けられたスクリュー4のうち、搬送ケース本体部30の原料搬入窓30aの前端位置を境に、それよりも前側の部分が前半部4b、後側の部分が後半部4aとなり、前半部4bにおける回転軸40の軸部分は、後半部4aにおける回転軸40の軸部分に対して拡径部分となっている。例えば、前半部4bにおける回転軸40の直径L2は、後半部4aにおける回転軸40の直径L1の1.5~2倍程度の大きさである。
【0073】
このように、本実施形態では、スクリュー4の回転軸40の太さに関し、前後2段で前側が後側に対して太くされており、その太さの変り目の部位が、前後方向について原料搬入窓30aの前端位置の近傍の部位とされている。
【0074】
なお、スクリュー4の回転軸40を後側の部分に対して前側の部分を太くする態様としては、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、前後3段以上の段数で段階的に太くする態様や、後側から前側にかけて逆テーパー状に徐々に太くなる態様であってもよい。
【0075】
また、スクリュー4の螺旋羽根41は、搬送方向の上手側のピッチP1より下手側のピッチP2を小さくするように形成している。換言すれば、螺旋羽根41のピッチは、搬送方向の上手側から下手側、すなわち軸基端40aから軸先端40bにかけて小さくなるように形成している。
【0076】
具体的には、上述した回転軸40と同様に、螺旋羽根41において、ホッパー部1の排出口16に位置する部分である後半部4aにおける螺旋羽根41のピッチP1は、スクリュー4の外方全域を搬送ケース3内周壁に囲繞される部分である前半部4bおける螺旋羽根41のピッチP2よりも広くなるように形成している。例えば、前半部4bにおける螺旋羽根41のピッチP2は、後半部4aにおける螺旋羽根41のピッチP1の0.25~0.70倍程度の大きさである。
【0077】
特に本実施形態においては、後半部4aにおける螺旋羽根41の各ピッチP1は等しくし、前半部4bにおける螺旋羽根41の各ピッチP2は搬送方向の上手側から下手側にかけて徐々に小さくなるようにしている。
【0078】
また、スクリュー4の螺旋羽根41において、そのリード角を搬送方向の上手側から下手側(軸基端40aから軸先端40b)にかけて漸次小さくなるように形成することとしてもよい。
【0079】
具体的には、螺旋羽根41において、ホッパー部1の排出口16に位置する部分である後半部4aにおける螺旋羽根41のリード角は、スクリュー4の外方全域を搬送ケース3内周壁に囲繞される部分である前半部4bにおける螺旋羽根41のリード角よりも大きくなるように形成する。例えば、後半部4aにおける螺旋羽根41のリード角は、20°程度であり、前半部4bにおける螺旋羽根41のリード角は、10°程度とすることも一案である。
【0080】
このような構成により、スクリュー4の上手位置でホッパー部1から効果的に食品原料を受けてスクリュー1回転あたりの食品原料のリードを大きくし、スクリュー4の下手位置で食品原料の密度を高めるとともにスクリュー1回転あたりの押圧力を高めることを可能とする。
【0081】
また、スクリュー4において、回転軸40の周廻りに形成される螺旋羽根41の数は、食品原料を搬送方向に沿って巻き込み搬送でき且つダイ5の型枠孔50内の内部通過抵抗に抗した押圧力を生起できれば特に限定されることはない。なお、本実施形態の螺旋羽根41は、メンテナンス性及び経済性の観点から1つとしている。
【0082】
また、搬送成形部2には、
図3に示すようにスクリュー4の回転駆動により搬送されてダイ5の型枠孔50から押し出される食品原料をダイ5の搬送方向の上手側で一時的に貯溜する貯溜部6を形成している。
【0083】
換言すれば、貯溜部6は、搬送方向におけるスクリュー4先端とダイ5との間、すなわち搬送ケース3をスクリュー4よりも搬送方向の下手側に伸延した伸延部と、搬送ケース3先端、すなわち伸延部の先端に配設したダイ5とに囲まれた貯溜空間6aを形成する部分である。
【0084】
特に、本実施形態にかかるダイ5は、
図3、
図7(a)及び
図8に示すように搬送ケース3に着脱可能に設けられたホルダ部材51により構成しており、ホルダ部材51は、ダイプレートとして複数の型枠孔50が形成されたダイ本体部52と、貯溜部6においてダイ本体部52とともに食品原料の貯溜空間6aを形成する筒部60と、で構成している。
【0085】
すなわち、ホルダ部材51は、
図7(a)及び
図7(b)に示すように筒部60とダイ本体部52とをユニット化して内部に貯溜空間6aを形成し、搬送ケース3、すなわち搬送ケースノズル部31に装着されることで、貯溜部6を構成する。ホルダ部材51は、搬送ケースノズル部31に対して着脱可能にして所望とする成型食品の形状や食品原料の成分や性状に応じて適宜選択することを可能としている。
【0086】
ここで本発明に特筆すべき点として、貯溜部6は、搬送される食品原料を貯溜空間6aに貯溜圧縮して食品原料塊を形成することにより、搬送方向におけるスクリュー4とダイ5との間の食品原料の嵩密度の高低差を解消しつつスクリュー4の脈動を吸収するクリアランス機能と、スクリュー4による押圧力をダイ5の複数の型枠孔50を通過できる均一な押圧力へ整圧する整圧機能とを有することが挙げられる。
【0087】
このようなクリアランス機能及び整圧機能を実現する食品原料塊を形成するための貯溜部6は、搬送方向におけるスクリュー4の螺旋羽根41の羽根面とこれに対向するダイ5の板面との間の距離である貯溜空間6aの搬送方向の長さ、すなわち食品原料塊の搬送方向厚みで決定される。
【0088】
なお、貯溜空間6aの搬送方向の長さは、筒部60の筒軸方向の長さと略同じである。具体的には、筒部60のプレート嵌合溝63の搬送方向の下手の溝底部位置で筒部60の径方向に沿う仮想平面とこれに対向するダイ5の板面との間の距離となる。
【0089】
貯溜空間6aの長さは、小さい程スクリュー4による食品原料の押圧力を損なうことなく食品原料の押出速度や押出量を一定にできる一方、大きい程スクリュー4の脈動を吸収することができ、5mm~200mmとすることが好適である。
【0090】
貯溜空間6aの長さが5mmより少ないと、スクリュー4とダイ5との間の食品原料の嵩密度差が解消せずスクリュー4の脈動を抑制できる搬送方向厚みを有した食品原料塊を形成できない。
【0091】
換言すれば、貯溜空間6aの長さが5mmより小さくなると相対的に貯溜空間6aの容積が小さくなり、スクリューの脈動を吸収できる食品原料塊を貯溜部6内に形成できず、複数の型枠孔50から同時且つ同一量の食品原料を安定して成形吐出することができない。
【0092】
一方で、貯溜空間6aの長さが200mmより大きいと、スクリュー4とダイ5との間の食品原料の密度、すなわち食品原料塊の搬送方向厚みが大きくなりすぎて却って押圧力を過度に吸収低下させ、食品原料がダイ5の型枠孔50を通過することができない。
【0093】
換言すれば、貯溜空間6aの長さが200mmより大きくなると相対的に貯溜空間6aの容積が大きくなり、却って貯溜部6に形成される食品原料塊の体積を大きくしすぎてしまい、スクリューの脈動はもとよりダイ5の型枠孔50の通過抵抗に抗した押圧力をも相殺してしまい、生産能力を著しく低下させる。
【0094】
従って、貯溜部6は、貯溜空間6aの搬送方向の長さを5mm~20mmで形成することにより、クリアランス機能と整圧機能を確実に具備することができる。
【0095】
なお、貯溜部6が有する貯溜空間6aの形状は、クリアランス機能と整圧機能を実現できれば特に限定されることはなく、例えば円柱形、角柱形、錘台形のいずれであってもよい。本実施形態の貯溜部6は、貯溜空間6aを筒部60やダイ本体部52によりなす円柱形の空間としている。
【0096】
また、型枠孔50の内壁には、食品原料が壁面に不用意に付着して押出しの際の成形性を悪化させないように食品原料の滑り性を良くするための滑面加工を施している。具体的には型枠孔50の内壁面はテフロン(登録商標)製樹脂にて滑面加工を施している。なお、押出し成形機Aに供する食品原料の性状に合わせて、ダイ本体部52や筒部60の内壁に型枠孔50と同様の滑面加工を施すことも可能である。
【0097】
ダイ本体部52は、所定厚みを有した円盤であって筒部60の搬送方向下手側の端縁にネジを介して着脱可能に構成しており、その板面中央部から放射状に同形同大の複数の型枠孔50を貫通して形成している。
【0098】
ダイ本体部52の外表面における型枠孔50の吐出口53の開口周縁部は、後述する切断部9のカッターが摺接する部分であり、金属加工を施すことにより切断部9による食品原料の摺動切断力を可及的に向上させている。
【0099】
また、筒部60の搬送方向上手側の端縁は、
図7(b)及び
図8に示すように搬送ケースノズル部31の嵌合凹部36に対応する嵌合凸部61を軸方向に向けて突出形成している。
【0100】
また、筒部60の搬送方向上手側の端部外周には、
図7(a)及び
図8に示すように筒部60の径方向外方に向けて接続フランジ62を突出形成しており、
図4に示すように環状継手54の搬送方向下手側の内周縁から径方向内方に突出した継手フランジ55と当接係合することを可能としている。
【0101】
すなわち、搬送ケースノズル部31とホルダ部材51とは、
図3に示すように搬送ケースノズル部31に対して嵌合凹部36に嵌合凸部61を嵌着するとともに搬送ケースノズル部31とホルダ部材51とに外嵌された環状継手54を締め込むことにより締結している。ここで、環状継手54は、雌ネジ部56を搬送ケースノズル部31の外周側に形成された雄ネジ部37に螺合させることで搬送ケースノズル部31に締結される。
【0102】
また、筒部60の搬送方向上手側の端部内壁には、
図7(b)及び
図8に示すように内周縁から筒軸方向に沿った所定長さのプレート嵌合溝63を内周について等間隔に複数(本実施形態では4つ)切欠き状に形成しており、筒部60内部にスクリーンプレート7や回転軸軸受7aを挿嵌可能としている。
【0103】
スクリーンプレート7は、
図4に示すようにスクリュー4と貯溜部6との間に介設され、搬送ケース3内と貯溜部6との間を仕切るとともにその板面には搬送ケース3内と貯溜部6とを互いに連通させる複数の連通孔70を形成している。
【0104】
スクリーンプレート7は、円板状の円板本体部73を有し、円板本体部73の外周廻りには、
図9(a)及び
図9(b)に示すように筒部60のプレート嵌合溝63に嵌着対応する複数の嵌合突片71を外周について等間隔に複数(本実施形態では4つ)突出形成している。
【0105】
また、スクリーンプレート7の円板本体部73には、
図9(b)及び
図10に示すように中央部にスクリュー4の回転軸40を駆動部103とともに回転可能に軸支する軸受溝72を形成するとともに、軸受溝72の周囲に多数の連通孔70を全体的に配置して貫通形成している。
【0106】
このようなスクリーンプレート7の連通孔70は、食品原料を通過させて裏漉しし、食品原料中の成分や性状の分布を均一化を促すメッシュ孔として機能する。
【0107】
連通孔70の孔の直径は、メッシュ孔機能を果たすことができれば特に限定されることはないが、3mm~20mm、より好ましくは5mm~15mmにすることがスクリュー4による押圧力の圧力損失を少なくして好適である。
【0108】
このような構成により、スクリーンプレート7は、ホルダ部材51に内嵌して搬送ケース3に取り付けた状態でスクリュー4の回転軸40を支持するとともに搬送ケース3内と貯溜部6との間を仕切り、食品原料を連通孔70に通過させることにより食品原料の成分や性状の分布の均一化を促し、スクリュー4の回転軸40の軸振れの防止を可能としている。
【0109】
なお、スクリーンプレート7を使用しなくとも安定して押し出成形の可能な食品原料を加工する場合には、
図11に示すように十字型の回転軸軸受7aをホルダ部材51に内嵌する。
【0110】
回転軸軸受7aは、中央部をなす円板状の軸受部74と、軸受部74の外周廻りに等間隔に複数(本実施形態では4つ)突出して十字形状をなし、先端部で筒部60のプレート嵌合溝63に嵌着対応する複数の嵌合アーム75と、を備える。
【0111】
また、軸受部74の中央部には、スクリーンプレート7と同様に、スクリュー4の回転軸40を駆動部103とともに回転可能に軸支する軸受溝76を形成している。
【0112】
また、スクリュー4の搬送方向の下手位置には、
図3及び
図4に示すようにスクリーンプレート7の板面に摺接するとともにスクリュー4と一体的に回転可能なインナーナイフ8を設けている。
【0113】
インナーナイフ8は、
図12(a)及び
図12(b)に示すように十字形状の回転体であって、中央部をなす取付基部80と、同取付基部80を中心に周廻りに所定間隔を隔てて径方向外方に伸延して十字形状をなす4つの刃部81を有する。
【0114】
取付基部80には、
図13に示すようにスクリュー4の回転軸40の軸先端40bに設けた嵌合ナット42にインナーナイフ8を嵌合可能とするように、
図12(a)及び
図12(b)に示すように嵌合ナット42の外形に沿う方形状の取付嵌合孔82を貫通して形成している。
【0115】
刃部81は、
図12(b)に示すように取付基部80から外方に伸延した刃支持アーム83と、同刃支持アーム83の長手方向に沿ってスクリーンプレート7の板面に対向する方向に突出形成した刃本体84と、により構成している。刃部81は、刃支持アーム83及び刃本体84により、略「L」字状の横断面形状をなす。
【0116】
刃本体84は、スクリーンプレート7の板面と対向する面を、刃部81の横断面視で刃部81の外側縁をなす一端縁84aから刃部81の短手方向の略中央部に位置する他端縁84bにかけてスクリーンプレート7の板面から離反するように漸次肉薄状として傾斜する傾斜面84cとし、
図12(b)及び
図13に示すように一端縁84aをスクリーンプレート7の搬送方向上手側の板面に対して稜線Rに沿って線接触する摺接部とするように形成している。
【0117】
このような構成により、インナーナイフ8は、スクリュー4と一体的に回転するとともにスクリーンプレート7の板面に対して摺動し、スクリーンプレート7の搬送方向上手側で連通孔70に進入する食品原料を板面に沿って切断することを可能としている。なお、インナーナイフ8は、肉筋などの繊維質が多い食品原料を加工する場合に繊維質を断ち切るために使用するため、それ以外の食品原料を加工する場合には必ずしも要しない。
【0118】
また、搬送成形部2の搬送方向の下手側外方には、
図14に示すようにダイ5の外表面に摺接してダイ5から吐出される食品原料を所定長さで切断する切断部9が着脱可能に付設される。
【0119】
切断部9は、長さが比較的短い成形食品、例えばペットフードなどのペレット状の成形食品を製造する場合には回転カッター式を採用でき、長さが比較的長い成形食品、例えばジャーキー等の棒状の成形食品を製造する場合にはギロチンカッター式を採用できる。
【0120】
本実施形態にかかる切断部9は、回転カッター式であって、
図14に示すように駆動モータ94aを備え、搬送成形部2に着脱可能な切断筐体90と、搬送成形部2の筒軸と同一軸線上に配置され、駆動モータ94aに基端を接続するとともに先端をダイ5の外表面の中央部に当接して回転する回転駆動軸91と、回転駆動軸91の先端に回転駆動軸91と一体的に回転可能に取り付けられ、ダイ5の外表面に摺接しつつ回転しながら成形食品を切断する回転カッター92と、で構成している。
【0121】
切断筐体90は、搬送ケース3に外嵌固定可能な固定枠部93と、固定枠部93から軸方向に沿って伸延する支持棒93aを介して連設され、駆動モータ94aを付設した箱状の収納部94と、により構成している。
【0122】
固定枠部93は、搬送ケース3においてダイ本体部52よりも後方の部位(例えば環状継手54の配設部位)に取り付けられ、筒状の搬送ケース3に対して矩形鍔状に張り出した態様で設けられている。
【0123】
収納部94は、ダイ5の外表面に対向するようにダイ5の前方の位置に配置され、固定枠部93に対して、搬送ケース3の周囲に平行に配設された4本の支持棒93aにより支持された状態で設けられている。
【0124】
回転駆動軸91は、収納部94から後方に向けて突出し、ダイ5の外表面の中央部に形成された支持部52a(
図8参照)に後端部を当接させた状態で支持されている。回転駆動軸91のダイ5に対する支持部分の近傍には、回転カッター92が設けられている。
【0125】
このように、切断筐体90は、ダイ5から前方に延出した回転駆動軸91及び回転カッター92を含む構成を取り囲むように設けられている。
【0126】
回転カッター92は、
図15(a)及び
図15(b)に示すようにへ字形状の肉厚の金属切片であって、その一端を回転駆動軸91の先端に接続固定するとともに、へ字形状の山側の縁端に沿って刃部95をなしている。
【0127】
具体的には、回転カッター92は、へ字形状をなす長辺側の端部を回転駆動軸91に固定する軸固定部96となし、
図15(b)に示すようにへ字形状における谷側の縁端から山側の縁端にかけて漸次肉薄となるように傾斜面を有した刃部95を形成している。
【0128】
このような構成により、切断部9を搬送成形部2に対して着脱可能とし、ダイ5の外表面に対して刃部95を沿わせた状態で摺動回転する回転カッター92が所定の回転ピッチで回転するに伴いダイ5の複数の型枠孔50から連続的に吐出される食品原料を順次所定長さで切断していくことを可能としている。
【0129】
なお、回転カッター92は、繊維質が多くせん断力が要求される食品原料を切断する場合には本実施形態のようにヘ字形状のものを使用するが、それ以外の食品原料を切断する場合には直線形状で肉薄の金属片で構成する。具体的には、直線形状の金属片の端部を軸固定部刃部とし、金属片の長手を断面視で傾斜させて長手一側縁を刃部とした回転カッターを用いる。
【0130】
また、切断部9としてギロチンカッター式を採用する場合には、同切断部9は、ダイ5の複数の型枠孔50から連続して成形吐出される食品原料を受けて搬送するベルトコンベアと、同ベルトコンベアの搬送方向の上手側位置に備えられ、所望とする成形食品長さを検知する長さ検知センサーと、長さ検知センサーの信号により作動停止し、ダイ5の外表面に上下摺動するギロチンカッターとで構成することも一案である。
【0131】
そして、このような構成を備えた押出し成形機Aによれば、以下のようにして成形食品の製造を行う。
図16及び
図17は、押出し成形機Aの使用状態を示す説明図である。なお、本実施形態にかかる押出し成形機Aに供する食品原料Mは、一例として食肉原料とし、食肉原料は、結着塊としてのダマDや繊維質としての肉筋Fを含有している。
【0132】
ホッパー部1に投入された食品原料Mは、回転する撹拌パドル11a、11a’により混練撹拌作用を受けながらホッパー部1の排出口16に誘導されて、排出口16で露出するスクリュー4の後半部4aに押し込み導入される。
【0133】
スクリュー4の後半部4aに導入された食品原料Mは、スクリュー4の回転に伴い
図16(a)に示すように搬送ケース本体部30内でさらに混練撹拌作用を受けて食品原料M中のダマDを小型化しながら可及的速やかに搬送方向の下手側へと送られる。
【0134】
搬送ケース3内部の食品原料Mは、スクリューの回転に伴い搬送ケースノズル部31へ至り、スクリュー4の前半部4bにより圧縮されて高密度となる。
【0135】
この際、スクリュー4の前半部4bの食品原料の外方には、搬送ケースノズル部31の内周面に形成された係合部34が位置しており、係合部34によって食品原料Mのスクリュー4との共回りが防止される。
【0136】
次いで、搬送方向の下手側の食品原料Mは、
図17(a)に示すようにスクリュー4により押圧されてスクリーンプレート7の連通孔70内へと進入する。
【0137】
具体的には、食品原料M中の肉筋Fはスクリーンプレート7の搬送方向下手側でスクリーンプレート7に摺設回転するインナーナイフ8により切断されて短辺細分化した状態で連通孔70内へ進入する。
【0138】
また、食品原料中のダマDはインナーナイフ8の回転切断作用とともに連通孔70を食品原料Mが通過することにより連通孔70の直径以下にほぐされて細分化される。
【0139】
次いで、スクリーンプレート7の連通孔70を通過した食品原料Mは、ホルダ部材51内の貯溜部6へ至り、一時的に貯溜されて貯溜空間6aの形状に沿った食品原料塊M1となる。具体的には、食品原料Mが貯溜部6の貯溜空間6aを満たして圧縮された状態が食品原料塊M1である。
【0140】
この貯溜部6の食品原料塊M1は、スクリュー4より貯溜部6の搬送方向上手側から絶えず供給される食品原料Mを介して、やがてダイ5面へ向けて一定の押圧力で押圧される。換言すれば、食品原料塊M1は、搬送方向上手側から供給される食品原料Mにより密度を絶えず増やし続けて圧縮塊状となり、圧縮密度限界を超えた段階で搬送方向下流側に押し出されることとなる。
【0141】
この際、貯溜部6の食品原料塊M1は、搬送方向におけるスクリュー4とダイ5との間の食品原料の嵩密度の高低差を解消しつつスクリュー4の脈動をその搬送方向の長さ(厚み)に応じて吸収するとともに、スクリュー4による押圧力をダイ5の複数の型枠孔50に対する均一な押圧力へと整圧する。
【0142】
その結果、ダイ5の複数の型枠孔50から、
図17(b)に示すようにそれぞれ食品原料M2が安定成形されながら同一の押出量で吐出されることとなり、かかる食品原料M2をダイ5の外方に付設した切断部9で切断していくことにより成形食品を得ることができる。
【0143】
このように、押出し成形機Aによれば、食品原料Mの性状に左右されず、スクリュー4による脈動を可及的抑制し、ダイ5の複数の型枠孔50から食品原料M2を同時且つ安定して吐出することができ、成形性の良好な複数の成形食品を安定して同時且つ連続的に製造することができる。
【0144】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明にかかる押出し成形機の第2の実施形態について説明する。
図18、
図19及
図20は押出し成形機のホルダ部材の構成を示す説明図である。なお、以下において、前述の押出し成形機Aと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0145】
本実施形態にかかる押出し成形機は、第1の実施形態にかかる押出し成形機Aと略同様の構成を備えており、ダイの複数の型枠孔から食品原料を成形しながら同一の押出量で吐出可能に構成したものであるが、貯溜部やダイを変形した点において構成を異にしている。
【0146】
すなわち、押出し成形機のホルダ部材57において、ダイ58の複数の型枠孔59は、
図18(a)に示すように同一直線上に配置するとともに、貯溜部64は、
図18(b)及び
図19に示すように筒部65の内壁面の少なくとも一部に、搬送方向の下手側から上手側に向けて拡開するテーパー面66を有するように構成している。
【0147】
換言すれば、型枠孔59は、少なくとも2つ以上であって同一直線上に配置するようにダイ58に形成されるとともに、テーパー面66は、搬送方向の下手側の型枠孔59から拡開するように筒部65の内壁に形成されている。
【0148】
より具体的には、ダイ58をなすダイ部58aの複数の型枠孔59は、
図18(a)に示すようにダイ面を略2等分する仮想中央線C(本実施形態ではダイ58の直径に等しい線)上に所定間隔を隔てて配置するようにダイ58に貫通形成している。
【0149】
かかるダイ58は、同一直線上に配置された複数の型枠孔59を水平に位置にするように搬送成形部2に取付けられる。本実施形態では、仮想中央線Cに沿って等間隔に4個の型枠孔59が形成されている。
【0150】
また、ダイ部58aとともに貯溜部64をなす筒部65の内壁面のうち、上下で対向する面は、
図18(b)及び
図19に示すように筒部65の内径を搬送方向の下手側から上手側にかけて漸次縮小するように搬送方向の下手側から上手側の仮想中央線Cに向けた上下2つのテーパー面66、66’に形成している。上下のテーパー面66、66’は、上下方向について仮想中央線Cの位置を中心として略対称に形成された傾斜状の平面または略平面である。
【0151】
また、筒部65の内壁面のうち、上下テーパー面66、66’の間の左右側で対向する面は、
図20に示すように平断面視で仮想中央線Cの幅(ダイの直径)と略同じ長さとなる間隔を保持するように筒軸に沿って伸延した内周面67、67’に形成している。左右の内周面67、67’は、仮想中央線Cと直交する方向(筒軸)に沿って伸延する略平面または筒部65の外形に沿う湾曲面である。
【0152】
すなわち、筒部65の内周面は、
図19に示すように側断面視で搬送方向の下手側に位置する仮想中央線Cへ向かって筒部65の内径を漸次縮径するテーパー面66、66’と、
図20に示すように平断面視で上下テーパー面66、66’の間の左右側で仮想中央線Cに直交して伸延し筒部65の外形に沿う左右の内周面67、67’とにより構成している。
【0153】
例えば、上下のテーパー面66、66'及び左右の内周面67、67'の4つの面は、筒部65の軸方向視で筒部65の軸心位置を中心とする円周方向について略等しい角度範囲となるように、すなわち各面が略90°の角度範囲を占めるように形成される。
【0154】
このような構成により、ホルダ部材57は、貯溜部64で搬送方向下手側に向けて漸次尖鋭状にした略錘台形状の食品原料塊を形成して、同錘台形状の食品原料塊の搬送方向下手側から負荷されるスクリューの押圧力をテーパー面66、66’に沿って錘台形状をなす尖端部分に集約させることを可能とする。
【0155】
その結果、食品原料塊の搬送方向下手側のダイ58の複数の型枠孔59に対して、食品原料塊の尖端部分に集約されたスクリュー4による押圧力を集中作用させて、比較的粘着性や結着性の強い性状を有した食品原料であっても型枠孔59の内部通過抵抗に抗して食品原料を型枠孔59から成形吐出することを可能とする。なお、本実施形態にかかるホルダ部材57であっても上述のスクリーンプレート7を挿嵌できることは勿論である。
【0156】
以上、説明したように本発明によれば、ダイの型枠孔と駆動回転するスクリューの先端との位置関係によらず、スクリューによる脈動を可及的抑制し、ダイの型枠孔から食品原料を安定して吐出することができ、成形性の良好な成形食品を安定して連続的に製造できる効果がある。
【0157】
すなわち、貯溜部をスクリューとダイとの間の食品原料の嵩密度差を解消しつつスクリューの脈動を吸収するクリアランス部として機能させるとともにダイ面に負荷される押圧力を複数の型枠孔を通過できる均一な押圧力へと整圧する整圧部として機能させ、食品原料を貯溜部を経てダイの複数の型枠孔へ通過せることにより、ダイの複数の型枠孔から同時且つ同一量の食品原料を連続的且つ安定して成形吐出することができる効果がある。また、本装置により製造される成形食品の成分や性状の分布を均一化し、製品としての品質の向上を図ることができる効果がある。
【0158】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはなく、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0159】
A 押出し成形機
1 ホッパー部
2 搬送成形部
3 搬送ケース
4 スクリュー
5 ダイ
6 貯溜部
7 スクリーンプレート
8 インナーナイフ