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特許7231195樹脂レンズ、樹脂レンズアレイ及び樹脂レンズの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】樹脂レンズ、樹脂レンズアレイ及び樹脂レンズの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20230221BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G02B3/00
G02B3/00 A
G02B3/00 Z
G02B1/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018224708
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020086353
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 智
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-137096(JP,A)
【文献】特開2003-195007(JP,A)
【文献】国際公開第2006/056114(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104020600(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108367515(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨潤前の径がφ0.1mm以上φ10mm以下であり、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、カルボキシメチルセルロース架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物又はこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレン-マレイン酸共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸との架橋体、シリコン系樹脂のいずれかの材質を含む樹脂基材と、
該樹脂基材の全体に吸収され該樹脂基材を膨潤させ、膨潤後もゲル化した前記樹脂基材内に残存する液体とからなり、
外部からの力の作用により変形可能な球形であり、
膨潤後における変形前の径がφ1mm以上φ50mm以下であることを特徴とする樹脂レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂レンズを、該樹脂レンズの位置決め機構を有する所定のアレイ化用トレー上に載置して配列させたことを特徴とする、樹脂レンズアレイ。
【請求項3】
径の異なる複数種類の前記樹脂レンズを前記アレイ化用トレー上に配列させたことを特徴とする、請求項2に記載の樹脂レンズアレイ。
【請求項4】
樹脂基材に液体を吸収させて前記樹脂基材を膨潤させて樹脂レンズとする、請求項1に記載の樹脂レンズの製造方法であって、
所定寸法の有底筒状の膨潤用容器に、該膨潤用容器の内側寸法を、製造予定の樹脂レンズの径で除した値で決まる数の複数の前記樹脂基材を収容する収容工程と、
前記膨潤用容器に収納された複数の前記樹脂基材を前記膨潤用容器内で液体に浸漬させて膨潤させることで樹脂レンズを形成させる膨潤工程と、
を有し、
前記膨潤工程においては、複数の前記樹脂基材が、前記膨潤用容器内で互いに接することで自重で移動不可能な状態となるまで膨潤させることを特徴とする、樹脂レンズの製造
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂により形成される樹脂レンズ、樹脂レンズが配列されることで形成される樹脂レンズアレイ及び、樹脂レンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レンズを樹脂で形成する技術は公知である。レンズを樹脂で形成する場合には、レンズの半製品を注型成型した後、切削・研磨して製品化することが多かった。この製法では、切削時に成形レンズの相当部分を廃棄することになり、同時に添加された高価な添加剤も廃棄されしまい無駄が多かった。また、レンズを一つ一つ切削・研磨するという機械加工を施す必要があり、製品コストを低減するには限界があった。
【0003】
この樹脂レンズに関連する技術としては、例えば、基材レンズを第一モールドとし、該第一モールドの片面側又は両面側に第二モールドを略一定の所定隙間を有するように配するとともに、前記第一・第二モールド間の周面隙間をテーピング又はガスケットでシールしてキャビティを構成し、該キャビティに機能性付与剤を含有させた液状樹脂原料を注入し機能性樹脂層を注型成形して、前記基材レンズと前記機能性樹脂層とを一体化する樹脂レンズの製造方法において、前記機能性樹脂層の形成側面に熱可塑性エラストマーの接着剤層を形成した基材レンズを前記第一モールドとする、ことを特徴とする樹脂レンズの製造方法等が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この技術によれば、製造した樹脂レンズが、機械加工時におけるばかりでなく、耐温水性・耐熱水性試験における密着性も優れており、高温・高湿度条件下における使用耐久性向上も期待できるが、樹脂成型と機械加工とを必要とする樹脂レンズの製造プロセスを改善するものではなかった。
【0005】
また、レンズ面を平面上に配列する樹脂レンズアレイについては、樹脂シートの表面をレンズ面が配列されるように成型してレンズアレイシートにする製法が用いられる場合が多い。しかしながら、上記の場合にはレンズ面はシートの片面のみに形成され、レンズとして機能するレンズ前面とレンズ後面の両方を形成することは困難であった。この樹脂レンズアレイに関する技術としては、遮光性材質からなり複数の貫通穴を有する穴付き板と、前記貫通穴側の面に前記貫通穴に対応する複数の樹脂製凸型レンズを有し、他方の面が平面である樹脂製レンズアレイシートからなり、かつ前記穴付き板とレンズアレイシートが、各レンズと各貫通穴の光軸を一致させて固着されたことを特徴とする樹脂製レンズアレイが公知である(特許文献2参照)。
【0006】
これによれば、透明平面基板と穴付き板とを接着する樹脂層が、穴付き板にあいた貫通穴の開口部に押し出されることで、各レンズが成形されレンズアレイシートとなるので、各レンズと各貫通穴の光軸は完全に一致し、調整の必要がない。しかしながら、この技術においてもレンズ面はシートの片面のみに形成されており、レンズアレイにおいてより高機能のレンズを低コストで形成することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-156067号公報
【文献】特開2004-110069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような状況に鑑みて発明されたものであり、その目的は、より低コストで高性能な樹脂レンズまたは樹脂レンズアレイを実現可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明は、略球形の樹脂基材と、該樹脂基材の全体に吸収され該樹脂基材を膨潤させる液体とからなることを特徴とする樹脂レンズである。
【0010】
すなわち、本発明では、略球形の樹脂基材の全体に液体が吸収され、樹脂基材は膨潤した状態となることでレンズを形成する。ここにおいて、膨潤した樹脂基材において膨潤圧は樹脂基材の外側に向けて均等に作用すると考えられる。よって、樹脂基材の膨潤により得られる樹脂レンズにおいては、膨潤前の樹脂基材と比較して真球度は向上し、表面粗さは減少している。その結果、光学素子として充分に使用可能な形状を有する樹脂レンズを得ることができる。
【0011】
これによれば、樹脂材料を機械加工したり樹脂成型することによって樹脂レンズを形成した場合と比較して、製造コストを低減することができるとともに、光学性能をより高くすることが可能となる。なお、上記の樹脂基材は、光学部品を直接成形可能な高精度な金型と比較して、より精度の低い低コストの金型により樹脂成型が可能である。あるいは、例えば樹脂材料を噴射、溶融、冷却する金型無しの製造法によって製造することも可能である。
【0012】
また、本発明に係る樹脂レンズは、樹脂基材が膨潤して形成されているため非常に柔軟で変形可能となっている。よって、樹脂レンズ自体に荷重を作用させることで変形させ、焦点距離を変化させることが可能である。また、光軸に垂直な方向にも変形可能であるため、樹脂レンズ自体を変形させることで光軸を変化させることも可能である。さらに、撮影対象物とカメラ等の撮影装置の対物レンズの間にバッファとして、本発明に係る樹脂レンズを介在させることで、対物レンズと撮影対象物の間を所望の屈折率の物質で満たし、ワーキングディスタンスを増大させる等の使い方も可能である。
【0013】
また、撮影対象物と撮影装置の対物レンズの間に本発明に係る樹脂レンズをバッファとして介在させた場合には、対物レンズを光軸方向に移動させることで樹脂レンズを変形させ、ズーミングやフォーカシングを行うことが可能である。また、対物レンズを光軸に垂直な方向に移動させることでスキャニングを行うことが可能である。
【0014】
なお、本発明における樹脂基材としては、透明なものを用いてもよいが、対象とする光の波長によっては、有色の樹脂を用いても構わない。また、必ずしも可視光を透過する素材により形成される必要もない。また、本発明における樹脂基材の形状は略球形としているが、ここでいう略球形とは、膨潤することで、レンズとして使用可能な真球度の高い球形となる形状である。したがって、この条件を満たせば、多角形等の立体形状であってもよい。
【0015】
また、本発明は、上記の樹脂レンズを所定のトレー上に配列させることで形成された樹脂レンズアレイであってもよい。
【0016】
これによれば、単に上記の樹脂レンズをトレー上に配列させるだけで、より簡単な構成の樹脂レンズアレイを得ることが可能である。また、従来の樹脂レンズアレイでは、ベースとなる板状の部材の表面に複数のレンズ面が形成されているので、個々のレンズは、前面か後面のいずれかにレンズとして機能するレンズ面を有するのみであり、得られる光学
特性の自由度は低かった。これに対し、本発明の樹脂レンズアレイにおいては、独立した球形のレンズを並べて形成しているため、樹脂レンズアレイの面においてレンズ面の割合をより高くすることができ、また、レンズ前面とレンズ後面の両方の光学特性を有効に使用することが可能となる。その結果、より高い光学性能を有する樹脂レンズアレイを実現することが可能である。
【0017】
また、本発明においては、径の異なる複数種類の前記樹脂レンズを配列させて樹脂レンズアレイを形成してもよい。
【0018】
これによれば、複数の焦点距離を有するマルチフォーカスの樹脂レンズアレイをより容易に実現することが可能である。また、径の異なる各樹脂レンズの配列を変化させることで、樹脂レンズアレイにおける焦点分布を自由に変化させることが可能である。
【0019】
また、本発明は、略球形の樹脂基材の全体に液体を吸収させて前記樹脂基材を膨潤させて樹脂レンズとすることを特徴とする、樹脂レンズの製造方法であってもよい。
【0020】
また、本発明は、複数の前記樹脂基材を所定寸法の容器に収容する収容工程と、
前記容器に収納された前記複数の樹脂基材を前記容器内で液体に浸漬させて膨潤させることで樹脂レンズを形成させる膨潤工程と、
を有し、
前記膨潤工程においては、複数の前記樹脂基材が、前記容器内で互いに接することで自重で移動不可能な状態となるまで膨潤させることを特徴とする、上記の樹脂レンズの製造方法であってもよい。
【0021】
ここで、本発明においては、樹脂基材の全体に液体を吸収させて樹脂基材を膨潤させるが、容器内に樹脂基材を収容させて膨潤させた場合には、当該容器内で各樹脂基材が互いに接し、その接触圧が膨潤圧に抗することで、それ以上の膨潤が規制される。よって、樹脂レンズの大きさを、容器の寸法と収容する樹脂基材の数で制御することが可能である。これにより、樹脂レンズの大きさ及び一回の膨潤工程によって製造される樹脂レンズの数を、より容易に規定することが可能となる。
【0022】
なお、上記した課題を解決する手段は、可能な限り組合せて使用することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、より低コストで高性能な樹脂レンズまたは樹脂レンズアレイを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係る樹脂基材及び樹脂レンズを示す図である。
図2】本発明の実施例1に係る樹脂レンズの使用態様について例示する図である。
図3】本発明の実施例1に係る樹脂レンズの製造方法を示す図である。
図4】本発明の実施例1に係る樹脂レンズの製造方法のプロセスを示すフローチャートである。
図5】本発明の実施例1に係る樹脂レンズアレイの第1及び第2の態様を示す図である。
図6】本発明の実施例1に係る樹脂レンズアレイによる結像状態の例を示す図である。
図7】本発明の実施例1に係る樹脂レンズアレイの第3及び第4の態様を示す図である。
図8】本発明の実施例2に係る樹脂レンズアレイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。以下の実施例に記載されている構成要素は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
<実施例1>
まず、本発明の実施例1について説明する。図1は、本実施例における樹脂基材1a及び樹脂レンズ1の概念図である。樹脂レンズ1は、吸水性樹脂からなる概略球形の樹脂基材1aに、外部から水を全体に吸収させ、膨潤させることにより形成される。樹脂基材1aの素材は、高分子が形作る網目構造の中に多数の水分子を取り込んでゲル状になる性質を有するものであり、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、カルボキシメチルセルロース架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物又はこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体、架橋イソブチレン-マレイン酸共重合体、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸との架橋体等であってもよい。また、シリコン系樹脂を用いても構わない。
【0027】
図1に示すように、樹脂基材1aは概略球形の形状を有するが、形状は必ずしも真球ではない。また、表面粗さも粗く、そのままではレンズとしては使用できない。しかしながら、ある程度吸水して膨潤することで内圧が高まることで、真球度は高まり、表面粗さは平滑化し、レンズとして使用可能な形状にすることが可能である。なお、樹脂基材1aの大きさは、φ0.1mm~10mm程度であってもよい。また、樹脂レンズ1の大きさとしてはφ1mm~50mm程度であってもよい。
【0028】
図2には、本実施例における樹脂レンズ1の使用法の一例として、カメラ付き顕微鏡等の撮影装置で、撮影対象Oを撮影する際に、樹脂レンズ1をバッファとする使用法について示す。この例においては、撮影装置の対物レンズ鏡筒2と撮影対象Oとの間に本実施例における樹脂レンズ1を介在させ、樹脂レンズ1を介して撮影対象Oを撮影する。
【0029】
図2(a)は、上記の状態において、対物レンズ鏡筒2を光軸方向の前後に移動させることで、樹脂レンズ1によるズーム効果や焦点合わせ効果を利用して撮影対象Oを撮影する例について図示している。また、図2(b)には、上記の状態において、対物レンズ鏡筒2を光軸と垂直の方向に移動させることで撮影ポイントをスキャンする例について図示している。また、樹脂レンズ1の屈折率を所望の屈折率となるように素材を選ぶことで、対物レンズと撮影対象Oの間を所望の屈折率の媒体で満たすことが可能となり、例えば、ワーキングディスタンスを所望の距離に調整することが可能である。このように、本実施例における樹脂レンズ1をバッファとして使用することで、撮影の自由度を高めることが可能となる。
【0030】
次に、図3を用いて、本実施例における樹脂レンズ1の製造方法について説明する。本実施例においては、まず、図3の左図に示すように、円筒状の側面と底面を有する容器5に水と樹脂基材1aとを収容する。この工程は本実施例において収容工程に相当する。ここで、容器5には、水を先に収容して後から樹脂基材1aを収容してもよいし、逆に、樹脂基材1aを収容した後に水を収容しても構わない。この状態においては、樹脂基材1aの形状及び大きさのばらつきが大きくなっている。容器5に水と樹脂基材1aとを収容した後に所定時間放置し、樹脂基材1aの全体に水を吸収させ膨潤させる。この工程は本実施例において膨潤工程に相当する。
【0031】
そうすると、容器5内において、樹脂基材1aが膨潤して大きくなる。そして、容器5内に収納し得る限界まで膨潤して樹脂レンズ1となるが、その際、容器5内において樹脂レンズ1どうしが接触して最密に配置されるようになる。そして、樹脂レンズ1が容器5内で最密に配置された状態では、各々の樹脂レンズ1は周囲の樹脂レンズ1または容器5の内壁によって外側から押圧される。その際、樹脂レンズ1の内圧である膨潤圧と、外側からの接触圧とが釣り合う状態でバランスし、樹脂レンズ1のそれ以上の膨潤は規制される。この状態で樹脂レンズ1の形成が完了する。
【0032】
ここで、樹脂レンズ1のサイズは、容器5の内側寸法と樹脂基材1aの数で定まる。よって、容器5の内側寸法と樹脂基材1aの数が決まれば、樹脂レンズ1の膨潤可能な大きさが決まることとなる。なお、図3においては、容器5は上方から見た断面が円形であったが、容器を上方から見た断面形状は、多角形等の他の形状であってもよい。また、容器5においては上面の前面が開口した形態となっているが、上面に蓋を付加し、上下方向についてより強固に膨潤を制限する形態としてもよい。
【0033】
図4には、本実施例における樹脂レンズ1の製造プロセスのフローチャートを示す。本プロセスが実行されると、まず、S101において得られるべき樹脂レンズ1のサイズを決定する。また、S102において、1回の膨潤プロセスにより製造すべき樹脂レンズ1の数を決定する。そうすると、S103において容器5のサイズが決定される。よって、S103ではさらに、適切なサイズ・形状の容器5が選定される。次に、S104及びS105において容器に樹脂基材1aと水とを収容する(S104とS105の順番が異なっても構わない点は当然である。)。
【0034】
そしてS106において樹脂基材1aの全体に水を吸収させ膨潤させる。S106においては、容器5を傾けあるいは、上下逆転しても樹脂レンズ1が容器5内で自重で動かない程度の状況になれば、樹脂レンズ1の完成となる。なお、樹脂基材1aの材質を選定する場合には、S106のプロセスにおいて、樹脂基材1aが膨潤し、樹脂レンズ1が容器5内で最密に配置された状態においても略球形を維持可能な程度のゲル強度を有する材質が選定される。これにより、より安定した球形形状の樹脂レンズ1を製造することができる。上記においてS104及びS105は収容工程、S106は膨潤工程に相当する。
【0035】
以上、説明したとおり、本実施例によれば、吸水性樹脂からなる樹脂基材1aの全体に水を吸収させ膨潤させることで樹脂レンズを製造した。しかしながら、本発明の樹脂レンズはこの態様に限定されない。樹脂基材1aの材質として有機溶剤を吸収して膨潤する樹脂を選定し、この樹脂基材1aに有機溶剤を吸収させることで樹脂レンズ1を製造しても構わない。樹脂基材1aと、吸収させる液体の組合せはこれ以外でも構わない。
【0036】
なお、本実施例において樹脂基材1aに水を吸収させ膨潤させることで製造された樹脂レンズ1は、例えば、水中で使用することで、長期間に亘り使用可能となる。その際に、使用中のさらなる膨潤をより確実に防止する場合には、膨潤による樹脂レンズ1のサイズの拡大を抑制するための枠とともに使用しても構わない。一方、空気中で使用する場合には、乾燥によりサイズが変化することが考えられるので、短期使用とするか、何等かの加湿手段を設けても構わない。
【0037】
また、本実施例においては、吸水性樹脂からなる樹脂基材1aに水のみを吸収させ膨潤させる例について説明したが、界面活性剤等を適宜添加することによって膨潤の程度を調整しても構わない。
【0038】
<実施例2>
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、実施例1において説
明した樹脂レンズをトレー上に配列した樹脂レンズアレイについて説明する。
【0039】
図5には、本実施例における樹脂レンズアレイ10について説明する。本実施例においては、図5(a)に示すように、樹脂レンズ1を透明なトレー7に並べることで、樹脂レンズアレイ10とした。これによれば、単純に樹脂レンズ1をトレー7上に並べるだけで樹脂レンズアレイ10とすることができ、製造コストを大幅に低減し、製造工程を簡略化することが可能となる。また、球形の樹脂レンズ1を並べるだけであるので、より大きなサイズの樹脂レンズアレイ10を製造することが可能である。このように大きなサイズの樹脂レンズアレイ10を製造することで、より大きなサイズの平面(例えば、イメージセンサの受光面)に一括して結像可能な光学系や、対物レンズの移動が不要なスキャニング機構などを実現することが可能となる。
【0040】
また、本実施例における樹脂レンズアレイ10については、図5(b)に示すように、トレー7に並べされた樹脂レンズ1を上から透明なプレート8で押圧することで、樹脂レンズ1のフォーカシングまたはズーミングを行うようにしても構わない。これにより、より自由度の高い撮影や測定を行うことが可能となる。なお、図5に示したように側壁を有し液体の収容機能を有するトレー7を用いた場合には、トレー7内に水を満たした状態で使用しても構わない。図6には、樹脂レンズアレイ10による結像状態の例を示す。図6(a)に示すように、対象物を樹脂レンズ1の個数に応じて多数結像することが可能である。そして、図6(b)に示すように、各々の樹脂レンズ1を上からプレート8で押圧することで焦点距離を変化させ、結像状態を変化させることが可能である。
【0041】
次に、図7には、図5に示したような側壁付きのトレー7ではなく、各樹脂レンズ1を載置可能なレンズ受け部を有したトレーを用いて樹脂レンズアレイを形成した場合について図示する。
【0042】
図7(a)には、略半球形の窪みによるレンズ受け部9aを有するトレー9を用いた場合を示す。このようなトレー9を用いて樹脂レンズアレイ20を形成した場合には、レンズ受け部9aの配置を適宜に調整することで、樹脂レンズアレイ20における樹脂レンズ1の配置を容易に変更することが可能である。また、図7(b)には、樹脂レンズ1が嵌まる円形の穴によるレンズ受け部11aを有するトレー11を用いた場合を示す。このようなトレー11を用いて樹脂レンズアレイ30を形成した場合には、樹脂レンズアレイ30の上下両面に直に樹脂レンズ1のレンズ面を配置することができ、より高い光学性能を発揮することが可能となる。
【0043】
なお、本実施例においては、レンズ受け部の形状として、略半球形の窪みあるいは、円形の穴を例示したが、レンズ受け部の形状は上記に限られない。方形やハニカム形状の窪みや穴であっても構わない。
【0044】
<実施例3>
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例においては、実施例1において説明した樹脂レンズを用いた樹脂レンズアレイであって、種類の異なる樹脂レンズを混在させる例について説明する。
【0045】
図8には、本実施例における樹脂レンズアレイ40について説明する。本実施例においては、2種類の径の樹脂レンズ1x、1yを透明なトレー7に並べることで、樹脂レンズアレイ40とした。これによれば、2つの径の樹脂レンズ1をトレー7上に並べるだけで多焦点の樹脂レンズアレイ40とすることができる。その結果、多焦点の樹脂レンズアレイの製造コストを大幅に低減し、製造工程を簡略化することが可能となる。なお、図8においては、二種類の異なる径の樹脂レンズ1x、1yを交互に並べた例について説明した
が、異なる径の樹脂レンズ1x、1yを所望の分布を持たせてトレー7上に並べることで、樹脂レンズアレイ40上における焦点距離の分布を自由に変化させることができる。
【0046】
また、本実施例においては、複数種類の色の樹脂レンズを透明なトレー7に分布させて並べることで樹脂レンズアレイを形成してもよい。このことで、樹脂レンズアレイに複合色のフィルター機能を持たせることも可能である。この場合も、異なる色の樹脂レンズ1を交互に並べても構わないし、所望の分布を持たせて並べても構わない。
【符号の説明】
【0047】
1・・・樹脂レンズ
1a・・・樹脂基材
2・・・対物レンズ鏡筒
5・・・容器
7、9,11・・・トレー
10、20、30、40・・・樹脂レンズアレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8