(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】マスク検査装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230221BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20230221BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20230221BHJP
【FI】
H01L21/68 N
G01N21/956 A
G03F1/84
(21)【出願番号】P 2019020040
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】米澤 良
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026404(JP,A)
【文献】実開平03-059830(JP,U)
【文献】特開2009-160685(JP,A)
【文献】特開2016-186570(JP,A)
【文献】特開2011-026111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
G01N 21/956
G03F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤と、
被検査対象のマスクを保持す
る枠状のフレームと、
前記フレームを前記定盤の上面に沿って水平に移動させる移動部と、
前記フレームの側面に設けられた保持部材と、
前記保持部材の先端に設けられたリフレクタと、
前記定盤に設けられた柱と、
前記柱に設けられた光照射部であって、前記リフレクタ
と同じ高さに配置され、前記リフレクタに向け
て水平方向に光を照射する光照射部と、
を備え、
前記保持部材は、水平方向に延設された中空の棒状部材と、前記棒状部材の第1端に設けられ、前記棒状部材を前記フレームに取り付ける第1取付部と、前記棒状部材の前記第1端の反対側の端である第2端に設けられた第2取付部と、を有し、
前記リフレクタは、前記第2取付部に設けられている
ことを特徴とするマスク検査装置。
【請求項2】
前記棒状部材の太さは、前記フレームの厚さ以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のマスク検査装置。
【請求項3】
前記棒状部材は中空丸棒であり、
前記棒状部材の肉厚は、前記棒状部材の直径
の1/40
~1/50である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマスク検査装置。
【請求項4】
前記棒状部材は、繊維強化プラスチックで形成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のマスク検査装置。
【請求項5】
前記棒状部材が含有する繊維の向きは、前記棒状部材の軸に対して傾いている
ことを特徴とする請求項4に記載のマスク検査装置。
【請求項6】
前記移動部は、前記マスクを前記フレームにローディングするローディング位置と、前
記マスクを検査する検査位置との間で前記移動部を水平に移動させ、
前記棒状部材の長さは、前記ローディング位置に前記フレームが位置するときにおける
前記第1取付部と、前記光照射部との水平方向の距離以上である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のマスク検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マスク検査装置におけるフレーム位置検出機構が開示されている。このマスク検査装置では、定盤に柱が設けられており、柱に照射部が設けられており、マスクを保持するフレームの側面から水平方向に突出する保持部材にリフレクタが設けられている。照射部から照射され、リフレクタで反射された光に基づいてフレームの位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスク検査装置では、フレームが移動するため、リフレクタを保持する保持部材をフレームの側面から水平方向に突出させる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載された保持部材は共振周波数が低いため、工場内の各種振動により保持部材が共振してしまう。その結果、リフレクタが振動し、検査時に疑似欠陥が発生してしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、リフレクタの共振を防止し、疑似欠陥の発生を防ぐことができるマスク検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るマスク検査装置は、例えば、定盤と、被検査対象のマスクを保持する略枠状のフレームと、前記フレームを前記定盤の上面に沿って水平に移動させる移動部と、前記フレームの側面に設けられた保持部材と、前記保持部材の先端に設けられたリフレクタと、前記定盤に設けられた柱と、前記柱に設けられた光照射部であって、前記リフレクタと略同じ高さに配置され、前記リフレクタに向けて略水平方向に光を照射する光照射部と、を備え、前記保持部材は、水平方向に延設された中空の棒状部材と、前記棒状部材の第1端に設けられ、前記棒状部材を前記フレームに取り付ける第1取付部と、前記棒状部材の前記第1端の反対側の端である第2端に設けられた第2取付部と、を有し、前記リフレクタは、前記第2取付部に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るマスク検査装置によれば、被検査対象のマスクを略鉛直方向に保持する略枠状のフレームの側面に設けられた保持部材は、水平方向に延設された中空の棒状部材と、棒状部材をフレームに取り付ける第1取付部と、リフレクタが設けられた第2取付部と、を有する。フレームを定盤の上面に沿って水平に移動させるため、中空の棒状部材を水平方向に延設する。定盤に設けられた柱には、リフレクタと略同じ高さに配置され、リフレクタに向けて略水平方向に光を照射する光照射部が設けられている。リフレクタが設けられる保持部材に中空の棒状部材を用いることで、保持部材を軽くしてリフレクタの共振を防止し、これによる疑似欠陥の発生を防ぐことができる。
【0008】
ここで、前記棒状部材の太さは、前記フレームの厚さ以上であってもよい。これにより、棒状部材の曲がりを防止することができる。
【0009】
ここで、前記棒状部材は中空丸棒であり、前記棒状部材の肉厚は、前記棒状部材の直径の略1/40~略1/50であってもよい。これにより、棒状部材を軽く、丈夫にすることができる。
【0010】
ここで、前記棒状部材は、繊維強化プラスチックで形成されていてもよい。これにより、棒状部材を軽量にし、かつ剛性を高くすることができる。
【0011】
ここで、前記棒状部材が含有する繊維の向きは、前記棒状部材の軸に対して傾いていてもよい。これにより、棒状部材の伸縮及びリフレクタの位置変化を防止することができる。
【0012】
ここで、前記移動部は、前記マスクを前記フレームにローディングするローディング位置と、前記マスクを検査する検査位置との間で前記移動部を水平に移動させ、前記棒状部材の長さは、前記ローディング位置に前記フレームが位置するときにおける前記第1取付部と、前記光照射部との水平方向の距離以上であってもよい。これにより、ローディング位置にフレームが位置するとき及びフレームを水平方向に移動させたときにも、リフレクタが照射部と当たらないようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、リフレクタの共振を防止し、疑似欠陥の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態に係るマスク検査装置1の概略を示す斜視図である。
【
図2】マスク検査装置1の概略を示す正面図である。
【
図4】マスク保持部40、特にフレーム41及び回転機構43の概略を示す図である。
【
図5】マスク検査装置1の概略を示す平面図である。
【
図7】保持部材70及びフレーム41への保持部材70の取り付け方を模式的に示す図である。
【
図8】カーボンFRPを用いて棒状部材70aを生成したときの模式図である。
【
図9】変形例に係る棒状部材70a’の模式図である。
【
図10】マスク検査装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図11】メタルマトリックス製の重い保持部材710の一例である。
【
図12】保持部材710の24Hzの振動を示すグラフであり、(A)はフレーム41の上端側に設けた保持部材710におけるリフレクタ取付板710aの振動を示し、(B)はフレーム41の下端側に設けた保持部材710におけるリフレクタ取付板710aの振動を示す。
【
図13】スーパーインバーで形成された直径10mm程度の棒材を3本並べて板状部材で補強した保持部材720の一例である。
【
図14】保持部材720の180Hzの振動を示すグラフであり、(A)はフレーム41の上端側に設けた保持部材720におけるリフレクタ取付板720aの振動を示し、(B)はフレーム41の下端側に設けた保持部材720におけるリフレクタ取付板720aの振動を示す。
【
図15】本実施の形態の保持部材70を用いたときの12.5Hzの振動を示すグラフであり、(A)はフレーム41の上端側に設けた保持部材70における板状部70eの振動を示し、(B)はフレーム41の下端側に設けた保持部材70における板状部70eの振動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明の検査装置は、略鉛直方向に被検査対象のマスクMを保持し、カメラ等を略鉛直方向に移動させてマスクMに形成されたパターンの欠陥を検査するものである。
【0016】
本実施形態において検査対象とされるマスクMは、例えば有機ELや液晶表示装置の表示装置用の基板を製造するために用いられる露光用マスクである。マスクMは、一辺が1m程度の大型な略矩形形状の基板上に、1個または複数個のイメージデバイス用転写パターンが形成されたものである。特に、本実施形態は、高密度のパターンが形成され、高感度の検査が必要な有機ELディスプレイ用のマスクMの検査に適している。
【0017】
図1は、第1の実施の形態に係るマスク検査装置1の概略を示す斜視図である。
図2は、マスク検査装置1の概略を示す正面図である。本明細書においては、定盤10(後に詳述)の長手方向に略沿った方向をx方向と定義し、鉛直方向をy方向とし、x方向及びy方向と直交する方向をz方向と定義する。なお、
図1、2においては、説明のため、一部の構成について図示を省略している。
【0018】
マスク検査装置1は、主として、定盤10と、撮像部20と、柱21と、位置検出部25と、移動部30と、マスク保持部40と、除振台51、52と、を有する。
【0019】
定盤10は、ステージとして構成されており、設置面F上の複数箇所(6箇所)に設置されている除振台51、52の上に支持される。
【0020】
定盤10は、横幅Wが4500mm程度、奥行きDが1200mm程度、厚さTが400mm程度の略直方体形状(厚板状)の石製の部材である。定盤10は、下面10aと、下面10aと平行な上面10eと、を有する。
【0021】
定盤10の上面10eには、上面10eから上方(+y方向)突出するように柱21が設けられている。柱21は、セラミック等により形成される。重心Gを低くするため、柱21は中空とすることが好ましい。
【0022】
定盤10の下面10aには、略立方体形状の凹部10b、10cが形成される。凹部10bは、下面10aの4つの隅のそれぞれに一箇所ずつ形成される。凹部10cは、下面10aの長辺に沿ってそれぞれ一箇所ずつ、合計2箇所形成される。凹部10b、10cの深さD1は、定盤10の強度を保つため、定盤10の厚さTの0.3~0.5倍とする。また、凹部10b、10cの深さD1、すなわち支持面10dの高さは、支持面10dからマスク検査装置1全体の重心Gを見上げる角度θ(
図2参照)が60度以下のできるだけ小さい角度(例えば、略30度)になるように設定される。
【0023】
凹部10bの内部には、設置面F上に載置された除振台51が設けられる。凹部10cの内部には、設置面F上に載置された除振台52が設けられる。除振台51はアクティブ除振台であり、除振台52は重さを支えるパッシブ除振台である。除振台51、52はすでに公知であるため、説明を省略する。
【0024】
除振台51、52の高さは、凹部10b、10cの深さD1より高い。したがって、除振台51、52が支持面10dを支持することで、定盤10が除振台51、52を介して設置面F上に載置される。これにより、支持面10dを基準とした時のマスク検査装置1の重心Gを低くすることができる。
【0025】
定盤10の上面10eには、溝10fが形成される(上面10eは溝10fを含む)。溝10fは、移動部30を移動させる時のガイドである。定盤10の強度を高くするために、溝10fは、平面視(+y方向から見た場合)において、凹部10b、10cと重ならない位置に、定盤10の長手方向(x方向)に沿って形成される。
【0026】
溝10fの深さD2は、定盤10の厚さTに比べて十分に小さい。また、溝10fの深さD2は、最も重心Gが低くなるように、カメラ22a(後に詳述)が上面10eに当接した時のカメラ22の光軸ax(
図2参照)が、移動部30(後に詳述)に支持されたマスクMの下端と一致するように設定される。本実施の形態では、溝10fの深さD2は60mm程度である。したがって、溝10fを形成したとしても、定盤10の剛性を十分に高い状態とすることができる。
【0027】
撮像部20は、主として、柱21に設けられたカメラ22(
図2参照)を有する。カメラ22は、例えばCCDカメラや特殊なCCDカメラであるTDIカメラであり、2個のカメラ22a、22bを有する。カメラ22a、22bは、それぞれ、g線及びe線を平行光に変換する対物レンズと、対物レンズを通過したg線とe線とを分離する光学部材(例えば、偏光ビームスプリッタとダイクロイックフィルタとの機能を併せ持つ部材)と、光学部材で分離されたg線及びe線をそれぞれ結像する2組の結像レンズと、2組の結像レンズで結像されたg線及びe線をそれぞれ画像化する撮像素子と、を有し、透過光と反射光とを同時に画像化する。なお、カメラ22a、22bは、すでに公知の技術を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
【0028】
カメラ22a、22bは、y方向に沿って2個隣接して設けられる。カメラ22と柱21との間にはエアパッド23(
図5参照)を含む移動機構(図示せず)が設けられる。この移動機構には、光軸axがz軸と平行となるようにカメラ22が設けられる。
【0029】
図示しない移動機構が上下方向(y方向)に移動することにより、カメラ22が上下方向(y方向)に移動する。移動機構は、2個のカメラ22a、22bを、カメラ22aが定盤10の上面10eに当接する初期位置と、カメラ22bが柱21の上端近傍の位置する上端位置(
図2の2点鎖線参照)との間を、柱21に沿って移動させる。
【0030】
また、撮像部20は、図示しない透過照明光源と、反射照明光源と、を有する。透過照明光源は、マスクMの背面側(-z側)に設けられ、いわゆるg線(例えば波長が435.84[nm]の光)を照射する。反射照明光源は、マスクMの表面側(+z側)に設けられ、いわゆるe線(例えば波長が546.07[nm]の光)を照射する。カメラ22は、透過照明光源から照射されたg線と、反射照明光源から照射されたe線とを同時に受光し、画像化する。このようにしてカメラ22により得られた画像と、パターン情報(後に詳述)とを比較することで、マスクMの検査が行なわれる。
【0031】
2個のカメラ22a、22bを用いる場合には、マスクMの検査領域の下半分と上半分とをそれぞれカメラ22a、22bで撮像し、それぞれの撮像データとパターン情報とを比較することで、1個のカメラを用いる場合に比べて2倍の能率を得ることができる。したがって、カメラ22が2個のカメラ22a、22bを有することが望ましい。ただし、カメラ22の数は、2個に限らず、1個(カメラ22a、22bの一方)でもよい。
【0032】
位置検出部25は、レーザ干渉変位計(例えばリニア干渉)であり、主として、柱21に設けられた照射部26a、26bと、保持部材70(後に詳述)に設けられたリフレクタ71a、71bと、を有する。
【0033】
照射部26a、26bは、柱21に設けられる。照射部26a、26bへは、光源53(
図1参照)から照射された光が、導光部材54(
図1参照)等を介して導かれる。照射部26a、26bは、それぞれリフレクタ71a、71bと略同じ高さに配置されている。照射部26aは、導かれた光を、リフレクタ71aへ向けて略水平方向へ照射する。また、照射部26bは、導かれた光を、リフレクタ71bへ向けて略水平方向へ照射する。
【0034】
リフレクタ71a、71bは、光を入射方向に戻す(光ビームを折り返す)反射鏡であり、例えば、レトロリフレクタである。リフレクタ71a、71bは、フレーム41(後に詳述)のx方向の位置を検出するのに用いられる。リフレクタ71a、71bは、それぞれ保持部材70の先端に設けられている。また、リフレクタ71aは、フレーム41の下端近傍に設けられ、リフレクタ71bは、フレーム41の上端近傍に設けられる。
【0035】
移動部30は、定盤10に載置されるとともに、マスクMを保持するフレーム41を含むマスク保持部40が載置される。
図3は、移動部30の概略を示す図である。移動部30は、主として、移動部材本体31と、側面エアパッド32、33と、下面エアパッド34(341、342)と、凸部35と、を有する。
【0036】
移動部材本体31は、上方にマスク保持部40が設けられる棒状の部材である。移動部材本体31は、軽量化するため、アルミニウムにより形成される。移動部材本体31の側面には、側面エアパッド32、33が設けられる。側面エアパッド32の先端面は溝10fの側面10gと対向し、側面エアパッド33の先端面は溝10fの側面10hと対向する。
【0037】
側面10gと側面エアパッド32の先端面との間及び側面10hと側面エアパッド33の先端面との間に薄い空気の層が形成され、この空気の層を介して、側面エアパッド32、33が溝10fの側面をおし広げるようにする。定盤10は石製であり溝10fの寸法が変化しないため、側面エアパッド32、33、すなわち移動部30は、溝10fによりガイドされる。
【0038】
移動部材本体31の下側には、下面エアパッド34が設けられる。下面エアパッド34は、平面視(上(+y方向)から見て)略矩形形状の部材であり、移動部材本体31の+x側の端に設けられる下面エアパッド341と、移動部材本体31の-側の端に設けられる下面エアパッド342と、を有する。
【0039】
下面エアパッド341、342の下面側の開口部から底面10iに向けて吐出されると、吐出された空気により、底面10iと下面エアパッド341、342との間に薄い空気の層が形成され、下面エアパッド341、342が溝10fの底面から浮き上がる。
【0040】
移動部材本体31の上側には、凸部35が設けられる。凸部35は、板状の部材であり、内部に第1の軸受439A又は第2の軸受439B(
図3では図示省略、
図4参照)が設けられる。
【0041】
図1、2の説明に戻る。マスク検査装置1は、移動部30を定盤10の溝10f(上面10eでもよい)に沿って移動させる下部リニアモータと、下部リニアモータに追随して駆動される上部リニアモータと、を有する。下部リニアモータの可動子61a(
図2参照)は移動部材本体31に設けられ、上部リニアモータの可動子62a(
図1、2参照)はフレーム41の上側に設けられる。下部リニアモータの固定子(図示せず)は定盤10に設けられ、上部リニアモータの固定子62b(
図2参照)は枠65(
図2参照)に設けられる。
【0042】
可動子62aには、水平方向(x方向)及び垂直方向(y方向)の位置を移動させる移動機構(図示せず)が設けられる。この移動機構は、フレーム41の回転(後に詳述)に伴って可動子62aの水平方向(x方向)の位置が変わることによって、上部リニアモータの位相がずれることを防止する。
【0043】
マスク保持部40は、主として、フレーム41と、マスクMの下辺の高さ方向(y方向)の位置を変更する調整機構42(
図2では図示省略)と、フレーム41を回転させる回転機構43と、を有する。
【0044】
フレーム41は、鉛直に保持されるマスクMの外周を囲むように、略枠状に形成される。本実施の形態では、複数の角棒を組み合わせて略枠状のフレーム41を形成する。フレーム41は、位置検出等の基準となる基準枠である。フレーム41は、マスクMの表面(パターンが形成された面)がxy平面と平行となるようにマスクMを保持する。フレーム41には、マスクMを把持する爪部41a(
図2では図示省略)が複数設けられる。
【0045】
フレーム41の上側には、保持部41fが設けられる。保持部41fは、例えばエアパッドであり、枠65(
図2参照)に設けられた薄板状の板部66(
図2参照)を挟持する。これにより、フレーム41がx軸を中心に傾かないようにフレーム41が支持される。
【0046】
フレーム41の側面には、保持部材70が横方向(x方向)に突出するように設けられている。保持部材70のうちの1つは、フレーム41の上端側の高い位置に設けられ、他の保持部材70は、フレーム41の下端側の低い位置に設けられている。保持部材70については後に詳述する。
【0047】
フレーム41の下方には、調整機構42及び回転機構43が設けられる。調整機構42は、x方向に沿って複数個形成される。調整機構42は、上面がxz平面に対して傾いている第1ブロック42aと、下面がxz平面に対して傾いている第2ブロック42bとを有し、第1ブロック42aと第2ブロック42bとの相対的な位置関係を変えることで高さの調整を行なう。調整機構42はすでに公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0048】
回転機構43は、フレーム41の下側に位置する枠部分の両端近傍に設けられる。
図4は、マスク保持部40、特にフレーム41及び回転機構43の概略を示す図である。
図4では、爪部41a及び調整機構42の図示を省略している。
【0049】
回転機構43は、主として、回転駆動部431と、第1のネジ部材432A及び第2のネジ部材432Bと、第1のナット部材433A及び第2のナット部材433Bと、スプロケット434、434a、435、436と、動力伝達部437(437a、437b)と、第1のピン438A及び第2のピン438Bと、第1の軸受439A及び第2の軸受439Bと、を有する。
【0050】
第1のナット部材433A及び第2のナット部材433Bは、下枠部分41dの両端近傍に設けられており、フレーム41の下側に位置する下枠部分41dの底面部分に埋め込まれている。第1のネジ部材432Aは、第1のナット部材433Aと螺合し、中心軸が第1のピン438A及び第1の軸受439Aの中心軸と略一致する。第2のネジ部材432Bは第2のナット部材433Bと螺合し、中心軸が第2のピン438B及び第2の軸受439Bの中心軸と略一致する。
【0051】
第1のピン438A及び第2のピン438Bは、下に略半球面を持つ棒状の部材であり、下面エアパッド341、342により支持されており、下面エアパッド341、342に対して揺動可能である。移動部材本体31の上面側には、第1のピン438A及び第2のピン438Bと中心軸が略一致する位置に、それぞれ第1の軸受439A及び第2の軸受439Bが設けられる。第1のネジ部材432Aの下端は、第1の軸受439Aに軸支され、第2のネジ部材432Bの下端は、第2の軸受439Bに軸支される。
【0052】
マスク保持部40やマスクMの荷重は、一番剛性の高い第1のピン438A及び第2のピン438Bや下面エアパッド341、342を介して、剛性の高い定盤10で支えられる。また、下面エアパッド341、342は、移動部材本体31の両端近傍に設けられるため、マスク保持部40等の荷重を安定して支えることができる。
【0053】
回転駆動部431は、電動モータ等のアクチュエータであり、出力軸431aを有する。出力軸431aには、スプロケット434が一体化される。また、第1のネジ部材432Aにはスプロケット434a及びスプロケット435が一体化され、第2のネジ部材432Bにはスプロケット436が圧入等により一体化される。スプロケット434とスプロケット434aとは動力伝達部437aにより連結され、スプロケット435とスプロケット436とは動力伝達部437bより連結される。
【0054】
リフレクタ71aと第2のネジ部材432Bとの平面視における距離(x方向の距離)を距離Aとし、リフレクタ71aと第1のネジ部材432Aとの平面視における距離(x方向の距離)を距離Bとすると、スプロケット435の歯数αと、スプロケット436の歯数βとは、歯数α:歯数β=距離A:距離Bの関係を有する。つまり、第1のネジ部材432Aのy方向の移動量と、第2のネジ部材432Bのy方向の移動量との比は、リフレクタ71aからの距離の逆比となる。
【0055】
回転駆動部431を駆動させると、出力軸431a及びスプロケット434が回転し、動力伝達部437aによりスプロケット435が回転すると共に、動力伝達部437bによりスプロケット436が回転する。スプロケット435の回転と共に第1のネジ部材432Aが回転し、スプロケット436の回転と共に第2のネジ部材432Bが回転する。スプロケット436の歯数βはスプロケット435の歯数αより多いため、スプロケット435が圧入等された第1のネジ部材432Aは、スプロケット436が圧入等された第2のネジ部材432Bより多く回転する。したがって、第1のネジ部材432Aのy方向の移動量は、第2のネジ部材432Bのy方向の移動量より大きい。これにより、フレーム41が回転する。
【0056】
特に、本実施の形態では、歯数α:歯数β=距離A:距離Bであるため、リフレクタ71aのx方向の位置Oを基準として、位置Oが動かないようにフレーム41が弧を描くように回転する(
図4矢印参照)。ここで、位置Oは、スプロケット435、436を結ぶ略平行な線と、リフレクタ71aを含む略鉛直方向の線と、が交差する位置である。なお、フレーム41が最大限回転したときの、第1のネジ部材432Aの位置におけるy方向の移動量は±3mm程度である。
【0057】
フレーム41の回転角度をψとすると、リフレクタ71a、71bは高さ方向(y方向)にH1×cosψだけ移動する。しかしながら、角度ψは微小であるため、cosψは略1であり、リフレクタ71a、71bの高さ方向の位置はほとんど変化しない。したがって、リフレクタ71a、71bを用いたフレーム41の位置検出には不具合は生じない。
【0058】
次に、フレーム41の位置検出部25及び保持部材70について説明する。
図1、2に示すように、リフレクタ71aへは照射部26aから光を照射し、リフレクタ71bへは照射部26bから光を照射する。フレーム41の位置検出は、主として照射部26a及びリフレクタ71aを用いて行われる。照射部26b及びリフレクタ71bは、フレーム41の移動中に定盤10の反り等によって発生するピッチングにより誤差を補正するために補助的に用いる。
【0059】
図5は、マスク検査装置1の概略を示す平面図である。フレーム41及び保持部材70は、定盤10の+方向の端近傍のマスクMをフレーム41にローディングするローディング位置(
図5点線参照)と、マスクMを検査する検査位置(
図5実線参照)との間で移動可能に設けられている。ローディング位置は、定盤10の+x端近傍であり、ローディング時に柱21及び撮像部20にマスクMが当たらないようにしている。
【0060】
照射部26a、26bから照射された光が、リフレクタ71a、71bで反射し、照射部26a、26bに戻ることで、位置検出部25が位置測定を行うh。検査処理を行うためには、ローディング位置にフレーム41(マスクM)が位置するときのマスクMの位置測定が必要である。したがって、ローディング位置にフレーム41が位置するときに、リフレクタ71a、71bが柱21、すなわち照射部26a、26bよりも-x方向に位置するように、保持部材70を水平方向に延設する必要がある。そして、保持部材70(ここでは、棒状部材70a(後に詳述))の長さは、ローディング位置(
図5点線参照)にフレーム41が位置するときにおける第1取付部70b(後に詳述)と、照射部26a、26bとの水平方向の距離L1(
図5参照)以上とする必要がある。
【0061】
図6は、位置検出部25の測定原理を示す図である。照射部26a、26bは、主として、光源231と、ビームスプリッタ232と、リフレクタ233と、検出器234と、を有する。光源231から直交2周波の各レーザ光波(周波数f1及び周波数f2の光波)が照射され、波長f1の光はビームスプリッタ232で反射されてリフレクタ233で反射し、波長f2の光はビームスプリッタ232を透過してリフレクタ71a、71bで反射する。これらの光が検出器234に入射する。検出器234で受光した光ビート(メジャー信号)の位相変化量から照射部26a、26bとリフレクタ71a、71bとの距離、すなわちフレーム41及びマスクのx方向の位置が演算される。この演算は、ビームスプリッタ232に入射する前のリファレンス信号(f1-f2)の位相と、メジャー信号の位相とを比較することで行われる。
【0062】
図7は、保持部材70及びフレーム41への保持部材70の取り付け方を模式的に示す図である。保持部材70は、主として、棒状部材70aと、第1取付部70bと、第2取付部70cと、を有する。
【0063】
棒状部材70aは、水平方向に延設された中空の棒状部材である。棒状部材70aの一方の端には、棒状部材70aをフレーム41に取り付ける第1取付部70bが設けられている。第1取付部70bは、フレーム41と同じ材料(例えば、鉄等の金属)で生成される。第1取付部70bは、丸棒状の部材の一部が棒状部材70aの中空部に挿入されて接着されることで、棒状部材70aに固定される。第1取付部70bを棒状部材70aに挿入する量は略20mm程度であればよい。
【0064】
第1取付部70bは、フレーム41に当接する平面部701が形成される。平面部701をフレーム41の裏面に当接させ、フレーム41に形成された孔41cと第1取付部70bに形成されたネジ穴702を介して、フレーム41と第1取付部70bとをキャップスクリュー等によりねじ止めすることで、保持部材70がフレーム41に取り付けられる。
【0065】
棒状部材70aの第1取付部70bが設けられていない方の端には、第2取付部70cが設けられている。第2取付部70cは、棒状部材70aに取り付けられる板状部70dと、板状部70dに取り付けられる板状部70eと、を有する。板状部70d、70eは、棒状部材70aと同じ材料(ここでは、カーボンFRP)を用いて形成されている。
【0066】
板状部70dには丸孔703が形成されている。棒状部材70aが丸孔703に挿入されて接着されることで、板状部70dが棒状部材70aに固定される。板状部70dに孔を空けて板状部70dを挿入することで、板状部70dをできるだけ軽くする。板状部70dと板状部70eと当接させ、板状部70dに形成されたネジ穴704と板状部70eに形成された長孔705を介して、板状部70dと板状部70eとをキャップスクリュー等によりねじ止めすることで、板状部70dと板状部70eとを固定する。
【0067】
リフレクタ71a、71b(
図7では図示省略)は、板状部70eに設けられている。リフレクタ71a、71bは、孔706を覆うように、板状部70eの裏面707に固定される。板状部70eに長孔705が形成されているため、板状部70dと板状部70eとの相対的な位置関係、すなわちフレーム41とリフレクタ71a、71bとの相対的な位置関係が変更可能である。
【0068】
リフレクタ71a、71bとしてコーナーキューブリフレクタを用いるが、コーナーキューブリフレクタは、入射した光と反射した光とがコーナーキューブリフレクタの中心に対して点対称に位置する。したがって、リフレクタ71a、71bの正面に配置された照射部26a、26bからの光をリフレクタ71a、71bで正面に向けて反射させるためには、リフレクタ71a、71bの中心位置を正確に位置決めする必要がある。本実施の形態では、板状部70dと板状部70eとの相対的な位置関係を変更可能とすることで、リフレクタ71a、71bの正確な位置決めが可能である。
【0069】
棒状部材70aの長さは、ローディング位置(
図5点線参照)にフレーム41が位置するときにおける第1取付部70bと、照射部26a、26b(
図3参照)との水平方向の距離L1(
図5参照)以上である。また、棒状部材70aの太さは、フレーム41の厚さt1以上である。棒状部材70aを太くすることで、棒状部材70aの曲がりを防止する。本実施の形態では、棒状部材70aの太さ(直径)は略40mm~略50mmであり、棒状部材70aの長さは略400mm~略500mmである。
【0070】
棒状部材70aの材料について説明する。棒状部材70aには、金属、無機材料(ガラス、セラミックス等)、樹脂材料を用いることができる。また、棒状部材70aには、複合材料を用いることができる。複合材料の例としては、繊維や紙に樹脂を含侵させた材料、繊維や微粒子を樹脂中に分散させた材料が挙げられる。さらに、棒状部材70aには、単独材料や複合材料からなる部品を貼り合わせたものを用いることもできる。
【0071】
金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、チタン、ステンレス合金、インバー(不変鋼)等が挙げられるが、常温付近での熱膨張率が非常に小さい高性能金属材料(スーパーインバー)が最も望ましい。ガラス材料としては、石英ガラス、低膨張ガラス等があげられる。セラミックス材料としては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、シリコンカーバイド(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、低熱膨張セラミックス材料等があげられる。繊維としては、例えば、炭素繊維(カーボンナノチューブ等を含む)、ガラス繊維、酸化アルミニウム繊維、スチール繊維等が挙げられる。微粒子として、例えば、カーボンブラック微粒子、マイカ微粒子等が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、エポキシ樹脂、ポリカーボネート(PC)、セルロース系樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ポリエステル、ポリウレタン、フェノール等が挙げられる。貼り合わせた材料としては、例えば、芯材である金属板(薄板)の片面または両面にゴム、樹脂等(振動を高減衰するものが望ましい)を貼り合わせたものが挙げられる。
【0072】
これらの材料のうち、軽量かつ剛性の高い複合材料、特に繊維強化プラスチックを用いて棒状部材70aを形成することが望ましい。なかでも、熱膨張率が低く寸度安定性がよい炭素繊維強化プラスチック(カーボンFRP)を用いて棒状部材70aを形成することが望ましい。繊維に含侵させる樹脂には、熱硬化性樹脂で剛性が高いエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドを用いることが望ましい。
【0073】
図8は、カーボンFRPを用いて棒状部材70aを生成したときの模式図である。なお、
図8では、棒状部材70aに含まれる繊維の一部を模式的に示している。棒状部材70aは、例えばカーボン繊維を並べたものに樹脂を含浸させたシート状のものを丸棒状の型に複数回巻き、これを高温化(略200℃以上)で硬化(熱重合)させることにより生成する。シート状のものにおける繊維の織り方の例としては、一方向(UD)材、平織り、綾織りが挙げられる。
【0074】
本実施の形態では、棒状部材70aが含有する繊維の向きに特徴がある。本実施の形態では、カーボン繊維の向きは、棒状部材70aの軸に対して傾いている。カーボン繊維の向きは、2通りあり、棒状部材70aの軸axと略直交する方向からみて軸axに対して線対称である。カーボン繊維の棒状部材70aの軸axに対する傾きは、任意の角度を取りうるが、例えば略45度である。このように、繊維の向きを棒状部材70aの軸axに対して傾けることで、棒状部材70aの温度変化による伸縮を防止し、これによりリフレクタ71a、71bの位置変化を防止することができる。
【0075】
棒状部材70aの肉厚tは、棒状部材70aの直径dの略1/100~略1/40である。ここでは、棒状部材70aの直径dは略40mm~略50mmであり、棒状部材70aの肉厚tは略0.5mm~略1mmである。これにより、棒状部材70aの強度が保たれる。
【0076】
なお、
図8に示す棒状部材70aが含有する繊維の向きは一例である。
図9は、変形例に係る棒状部材70a’の模式図である。なお、
図9では、棒状部材70a’に含まれる繊維の一部を模式的に示している。カーボン繊維の向きは、棒状部材70a’の軸axに対して略平行な方向と、棒状部材70a’の軸axに対して略直交する方向との2通りである。ただし、
図8に示すように、カーボン繊維の向きが棒状部材70aの軸axに対して傾けることで、棒状部材70aが圧縮変形しにくくなる。
【0077】
また、棒状部材70aが含有する繊維の向きは2通り以上であってもよい。例えば、棒状部材70a’の軸に対して略平行な方向の繊維及び棒状部材70a’の軸に対して略直交する方向の繊維(
図9参照)と、棒状部材70aの軸に対して傾いている繊維(
図8参照)とを1本の棒状部材が含んでいてもよい。
【0078】
図10は、マスク検査装置1の電気的な構成を示すブロック図である。マスク検査装置1は、CPU(Central Processing Unit)151と、RAM(Random Access Memory)152と、ROM(Read Only Memory)153と、入出力インターフェース(I/F)154と、通信インターフェース(I/F)155と、メディアインターフェース(I/F)156と、を有する。
【0079】
CPU151は、RAM152、ROM153に格納されたプログラムに基づいて動作し、マスク検査装置1の各部の制御を行う制御部151aの機能を有する。RAM152は、揮発性メモリである。ROM153は、各種制御プログラム等が記憶されている不揮発性メモリである。CPU151は、RAM152、ROM153に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。RAM152は、CPU151が実行するプログラム及びCPU151が使用するデータなどを格納する。ROM153は、マスク検査装置1の起動時にCPU151が行うブートプログラムや、マスク検査装置1のハードウェアに依存するプログラムなどを格納する。プログラムは、例えば、記憶媒体143から読み出されて、RAM152を介してマスク検査装置1にインストールされ、CPU151によって実行される。
【0080】
CPU151は、入出力インターフェース154を介して、キーボードやマウス等の入出力装置141を制御する。通信インターフェース155は、ネットワーク142を介して他の機器からデータを受信してCPU151に送信すると共に、CPU151が生成したデータを、ネットワーク142を介して他の機器に送信する。メディアインターフェース156は、記憶媒体143に格納されたプログラム又はデータを読み取り、RAM152に格納する。なお、記憶媒体143は、例えば、ICカード、SDカード、DVD等である。
【0081】
なお、
図10に示すマスク検査装置1の構成は、本実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、例えば一般的な情報処理装置が備える構成を排除するものではない。マスク検査装置1の構成要素は、処理内容に応じてさらに多くの構成要素に分類されてもよいし、1つの構成要素が複数の構成要素の処理を実行してもよい。
【0082】
次に、マスク検査装置1の動作について、
図1を用いて説明する。まず、制御部151aは、フレーム41をローディング位置(
図5参照)に配置させて、爪部41a等を制御してフレーム41にマスクMを保持する。また、制御部151aは、調整機構42によりマスクMの下辺の高さ方向(y方向)の位置を調整する。
【0083】
次に、制御部151aは、移動部30を溝10fに沿って-x方向に移動させ、マスクMをローディング位置から検査位置に移動させる。制御部151aは、光源53等を制御して、照射部26aから光を照射する。また、制御部151aは、照射部26aから照射された光が、リフレクタ71aで反射され、照射部26aで受光するまでの時間についての情報を照射部26aから取得し、これを位置情報(ROM153に格納されている)と比較等することにより、フレーム41のx方向の位置を検出する。制御部151aは、このようにしてフレーム41の位置を検出しながら、フレーム41を予め定められた所定の位置へ移動させる。
【0084】
また、制御部151aは、光源53等を制御して、照射部26bから光を照射する。そして、照射部26aに対して行なう処理と同様にしてフレーム41のx方向の位置を検出する。
【0085】
マスクMが検査位置に移動したら、制御部151aは、撮像部20を制御してマスクMに形成されたパターンを検出する。そして、制御部151aは、パターンの情報を取得し、パターンのうちのx方向に沿ったパターン(以下、パターンxという)が、x方向に対してどの程度傾いているかを検出する。制御部151aは、パターンxの傾きを検出したら、回転情報(ROM153に格納されている)及び位置検出部25での検出結果に基づいて、回転駆動部431を制御してフレーム41を回転させて、パターンのうちの水平方向の成分を略水平とする(傾きを補正)。
【0086】
制御部151aは、フレーム41を回転させたら、フレーム41(マスクM)を再度検査位置に移動させる。そして、制御部151aは、撮像部20によりマスクMの検査を行う。本実施の形態では、透過照明光源からg線を、反射照明光源からe線を同時に照射し、これらをカメラ22a、22bで同時に受光して画像化する。そして、カメラ22aで撮像された画像と、カメラ22bで撮像された画像とのそれぞれをパターン情報(ROM153に格納されている)に基づいて生成された画像と比較することで、パターンの欠陥等を発見する。マスクMの検査方法は、既に公知の技術を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
【0087】
保持部材70は軽量であるため、400Hz以下の周波数では保持部材70が共振しない。工場内の各種振動(マスク検査装置1を覆うエンクロージャーの振動、リニアモータ駆動時の振動、ファンフィルタユニットの圧力振動等)は400Hz以下の周波数がほとんどであるため、検査時に保持部材70が共振せず、リフレクタ71a、71bも振動しない。その結果、検査時に疑似欠陥が発生しにくい。
【0088】
マスクM全面の検査が終了したら、制御部151aは、フレーム41(マスクM)を再度ローディング位置に移動させる。そして、マスクMを交換して、次のマスクMの検査へと移る。
【0089】
本実施の形態によれば、中空の棒状部材70aを用いて保持部材70を作成するため、保持部材70を軽く、丈夫にすることができる。これにより、工場内の各種振動による保持部材70の共振を防ぎ、リフレクタ71a、71bが振動することによって検査時の疑似欠陥が発生しないようにすることができる。
【0090】
例えば、従来使用されていた保持部材、例えば、金属を基材としてセラミックス等の強化材を加えたメタルマトリックス製の重い保持部材や、複数の金属棒材を並べて生成した保持部材を用いる場合には、400Hz以下の周波数では共振してしまう。
図11は、メタルマトリックス製の重い保持部材710の一例であり、
図12は保持部材710の24Hzの振動を示すグラフであり、(A)はフレーム41の上端側(高い位置)に設けた保持部材710におけるリフレクタ取付板710aの振動を示し、(B)はフレーム41の下端側(低い位置)に設けた保持部材710におけるリフレクタ取付板710aの振動を示す。
図12の縦軸は振幅(μm)、横軸は時間(msec)である。フレーム41の上端側に設けた保持部材710のリフレクタ取付板710aは、24Hzという低周波で40~50nmの振幅の振動が発生してしまう。24Hz程度の低周波の振動は、工場内の振動の内でも特に多く存在するため、低周波でのリフレクタの振動は疑似欠陥の発生に大きな影響を及ぼす。
【0091】
また、
図13は、スーパーインバーで形成された直径10mm程度の棒材を3本並べて板状部材で補強した保持部材720の一例であり、
図14は保持部材720の180Hzの振動を示すグラフであり、(A)はフレーム41の上端側に設けた保持部材720におけるリフレクタ取付板720aの振動を示し、(B)はフレーム41の下端側に設けた保持部材720におけるリフレクタ取付板720aの振動を示す。
図14の縦軸は振幅(μm)、横軸は時間(msec)である。フレーム41の上端側に設けた保持部材720のリフレクタ取付板720aは、180Hzで30nm強の振幅の振動が発生してしまう。工場内において、180Hzの振動は、低周波の振動よりは少ないものの、定期的に発生する振動であり、疑似欠陥の原因となる。
【0092】
それに対し、
図15は、本実施の形態の保持部材70を用いたときの12.5Hzの振動を示すグラフであり、(A)はフレーム41の上端側に設けた保持部材70における板状部70eの振動を示し、(B)はフレーム41の下端側に設けた保持部材70における板状部70eの振動を示す。
図15の縦軸は振幅(μm)、横軸は時間(msec)である。この12.5Hzの振動は、移動部30が溝10fに沿って移動するとき等に発生する振動であり、共振による振動ではない。また、12.5Hzの振動の振幅も8nm程度と小さい。つまり、保持部材70を用いた場合には、400Hz以下の周波数で板状部70eが大きく振動することはない。このように、軽くて丈夫な保持部材70を用いることで、保持部材70の共振によるリフレクタ71a、71bの振動を防ぎ、これによる疑似欠陥の発生を防ぐことができる。
【0093】
なお、本実施の形態では、棒状部材70aは中空丸棒であるが、棒状部材70aの端面(断面)形状はこれに限られない。棒状部材は、端面(断面)が略多角形状の棒状部材でもよいし、端面が略楕円形状の棒状部材でもよい。また、棒状部材は、複数の板状部材を、端面が略多角形状になるように組み合わせて結合した棒状部材としてもよい。ただし、強度の観点から、側面につなぎ目が無い中空の管状部材(例えば、中空丸棒や中空角棒)を棒状部材70aとすることが望ましい。また、共振の方向依存性を低減する観点から、棒状部材70aを1本とすることが望ましい。さらに、断面方向の強度の方向依存性がなくなり、剛性が均一になるため、棒状部材70aを中空丸棒とすることが好ましい。
【0094】
また、本実施の形態では、連結部のない1本の棒状部材70aを用いたが、棒状部材70aの形態はこれに限られない。例えば、板状材を曲げて結合等することで中空丸棒としてもよい。また、中空構造の部材を複数用いて棒状部材としてもよい。また、中空の棒材の外周面や中空部にリブ構造のような補強構造を設けたものを棒状部材としてもよい。さらに、中空の棒材の側面に孔等を設けてもよい。
【0095】
また、本実施の形態では、棒状部材70aの両端に第1取付部70b、第2取付部70cを設けたが、第1取付部70b、第2取付部70cの形態は図示した形態に限られない。
【0096】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0097】
本発明は、マスクMを略水平方向に保持し、検査する装置にも適用可能である。ただし、本発明は、略枠状のフレーム41が被検査対象のマスクを略鉛直方向に保持し、保持部材70がフレーム41の高い位置に設けられている場合に特に有効である。
【0098】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略立方体形状とは、厳密に立方体形状の場合に限られない。例えば、定盤10には凹部10b等が形成されているが、定盤10を全体としてみれば略立方体形状である。また、例えば、単に鉛直、一致等と表現する場合において、厳密に鉛直、一致等の場合のみでなく、略鉛直、略一致等の場合を含むものとする。
【0099】
また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0100】
1 :マスク検査装置
10 :定盤
10a :下面
10b、10c:凹部
10d :支持面
10e :上面
10f :溝
10g、10h、10i:側面
20 :撮像部
21 :柱
22、22a、22b:カメラ
23 :エアパッド
25 :位置検出部
26a、26b:照射部
30 :移動部
31 :移動部材本体
32、33:側面エアパッド
34 :下面エアパッド
35 :凸部
40 :マスク保持部
41 :フレーム
41a :爪部
41c :孔
41d :下枠部分
41f :保持部
42 :調整機構
42a :第1ブロック
42b :第2ブロック
43 :回転機構
51、52:除振台
53 :光源
54 :導光部材
61a、62a:可動子
62b :固定子
65 :枠
66 :板部
70 :保持部材
70a、70a’:棒状部材
70b :第1取付部
70c :第2取付部
70d、70e:板状部
71a、71b:リフレクタ
73 :板部
141 :入出力装置
142 :ネットワーク
143 :記憶媒体
151 :CPU
151a :制御部
152 :RAM
153 :ROM
154 :入出力インターフェース
155 :通信インターフェース
156 :メディアインターフェース
231 :光源
232 :ビームスプリッタ
233 :リフレクタ
234 :検出器
341 :下面エアパッド
342 :下面エアパッド
431 :回転駆動部
431a :出力軸
432A :第1のネジ部材
432B :第2のネジ部材
433A :第1のナット部材
433B :第2のナット部材
434、434a、435、436:スプロケット
437、437a、437b:動力伝達部
438A :第1のピン
438B :第2のピン
439A :第1の軸受
439B :第2の軸受
701 :平面部
702 :ネジ穴
703 :丸孔
704 :ネジ穴
705 :長孔
706 :孔
707 :裏面
710、720:保持部材
710a、720a:リフレクタ取付板