(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20230221BHJP
F24H 8/00 20220101ALI20230221BHJP
F24H 1/12 20220101ALI20230221BHJP
【FI】
F24H9/00 B
F24H8/00
F24H1/12 B
(21)【出願番号】P 2019040818
(22)【出願日】2019-03-06
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小田 大志
(72)【発明者】
【氏名】金澤 広輝
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0084725(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0195759(US,A1)
【文献】特開2014-214977(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0077308(KR,A)
【文献】特開2007-232289(JP,A)
【文献】特開2014-047981(JP,A)
【文献】特開2010-007924(JP,A)
【文献】特開2010-032200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 8/00
F24H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナと、一次熱交換器と、二次熱交換器とが上から順に設置され、前記二次熱交換器の下側に、前記二次熱交換器から落下したドレンの排出溝が底面へ下り傾斜状に凹設されたドレン受けが設けられて、前記ドレン受けに、前記二次熱交換器と隣接する排気ダクトが上向きに接続されてなる給湯器であって、
前記ドレン受けの底面に、一端部が前記排出溝に上方から重なり、他端部が前記排気ダクトの下方に位置して、両端部が開口するトンネル状の隙間を形成する導水部材が設けられていることを特徴とする給湯器。
【請求項2】
前記導水部材は、横断面形状が上側に凸となる山形状の板材であることを特徴とする請求項1に記載の給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナと一次熱交換器と二次熱交換器とを上から順に設置してなる逆燃焼式の給湯器に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器では、バーナと、一次熱交換器と、二次熱交換器とを備えてバーナの燃焼排気の顕熱に加えて潜熱も回収可能とした潜熱回収型のものが知られている。このような潜熱回収型の給湯器として、特許文献1には、バーナを備えた燃焼部と、その下方に配置された一次熱交換器と、その下方に配置された二次熱交換器とを備えた逆燃焼式燃焼装置が開示されている。
この逆燃焼式燃焼装置では、二次熱交換器の下方に、二次熱交換器を通過した燃焼排気を集めると共に、二次熱交換器で発生したドレンを底部で受けて外部へ排出する排気集合筒(ドレン受け)が接続されている。この排気集合筒の上面には、複数の穴が配列されて二次熱交換器から流れる燃焼排気の分布を均一化するための排気整流板が設けられている。さらに、排気集合筒の後部には、燃焼装置の後方で上向きに立ち上がり形成され、排気集合筒を通過した燃焼排気を上方へ導いて器具外へ排出する排気ダクトが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の逆燃焼式燃焼装置において、二次熱交換器を通過した下向きの燃焼排気は、排気集合筒内で向きを変えて後方へ進み、排気ダクトの下方に達すると上方へ向きを変えて排気ダクト内を上昇する。このとき、排気集合筒では、燃焼排気が流れる勢いによってドレンの一部が後方へ押し流されて排気集合筒と排気ダクトとの間に貯まりやすくなる。このドレンの貯留により、排気ダクトへの入口が狭くなって燃焼排気の排出が妨げられるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ドレンに影響されることなくドレン受けから排気ダクトへの燃焼排気の排出をスムーズに行うことができる給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バーナと、一次熱交換器と、二次熱交換器とが上から順に設置され、二次熱交換器の下側に、二次熱交換器から落下したドレンの排出溝が底面へ下り傾斜状に凹設されたドレン受けが設けられて、ドレン受けに、二次熱交換器と隣接する排気ダクトが上向きに接続されてなる給湯器であって、
ドレン受けの底面に、一端部が排出溝に上方から重なり、他端部が排気ダクトの下方に位置して、両端部が開口するトンネル状の隙間を形成する導水部材が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、導水部材は、横断面形状が上側に凸となる山形状の板材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、導水部材の採用により、ドレン受けに貯まったドレンを毛細管現象により、隙間を介して排出溝に導くことができる。よって、燃焼排気の通路の閉塞を防止でき、ドレンに影響されることなくドレン受けから排気ダクトへの燃焼排気の排出をスムーズに行うことができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、導水部材を、横断面形状が上側に凸となる山形状の板材としているので、簡単な形状でドレンの誘導が可能となり、導水部材を設けてもコストアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】排気部の説明図で、(A)は側面、(B)は正面、(C)は平面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、給湯器の一例を示す正面図で、フロントカバーを外した状態で示している。
図2は内胴の正面図である。
この給湯器1は、前面を開口した四角箱状の筐体2内に、バーナ4と、一次熱交換器5と、二次熱交換器6とが上から順に設けられる内胴3を収容した逆燃焼式となっている。また、筐体2内には、内胴3の下部から後方へ回り込んで上向きに設けられる排気部7と、内胴3の右側方でバーナ4に連結され、ファンモータ9及び図示しないファンを備えたファンユニット8と、ファンユニット8の下側でファンユニット8に連結され、ガス導入管11から燃料ガスが供給されるガス供給ユニット10とが設けられている。内胴3の下方右側には、電装基板を収容してなるコントローラ12が横向きに設置され、その下方中央には、フロントカバーから露出する表示操作パネル13が設けられている。
【0010】
バーナ4は、燃料ガスと燃焼に必要な全ての燃焼用空気との混合気が燃焼する全一次空気式で、下面を開口して上下方向に所定深さを有する平面視横長矩形状の上ケーシング14を有し、上ケーシング14の上面には、上方へ突出してファンユニット8が接続されるチャンバ15が形成されている。上ケーシング14の下面には、複数の炎孔が形成された図示しない炎孔板が設けられて、炎孔板の表面(下面)で混合気が燃焼可能となっている。
【0011】
一次熱交換器5は、バーナ4が取り付けられる四角筒状の中ケーシング16内の下部に、複数のフィンを左右方向へ所定間隔をおいて並設すると共に、各フィンを貫通する複数の伝熱管を配設してなる。中ケーシング16の右側面の下部に設けた伝熱管の入側端部17には、二次熱交換器6との接続管18が接続され、上部に設けた伝熱管の出側端部19には、出湯管20が接続される。中ケーシング16の上側外周には、略全面に導電パターン22が蛇行状に網羅されてなる帯状の樹脂シート21が巻回されている。
二次熱交換器6は、中ケーシング16と連通する四角筒状の下ケーシング23内に、凹凸を形成した一対の伝熱プレートを互いに接合して内部流路を形成してなるペアプレートを、前後方向へ所定間隔をおいて並設して、ペアプレート間に排気流路を形成し、下ケーシング23の正面側下部に設けた入口24と正面側上部に設けた出口25とを各内部流路に接続してなる。入口24には給水管26が接続され、出口25には接続管18が接続される。
【0012】
排気部7は、
図3,4に示すように、二次熱交換器6の下ケーシング23の下面に取り付けられるドレン受け30と、ドレン受け30の後部に立設される排気ダクト31とを備える。
ドレン受け30は、平面視四角形で有底浅底の箱状で、合成樹脂により形成されている。ドレン受け30の前側及び左右両側には、下ケーシング23を取り付けるフランジ32が周設され、中央部後方寄りには、フランジ32と連続する帯状部33が左右方向に架設されている。フランジ32及び帯状部33には、下ケーシング23を下方からネジ34,34・・(
図1~2)によって取り付けるためのネジボス35,35・・が所定間隔をおいて設けられている。帯状部33の後側には、排気ダクト31を接続するための開口部36(
図8)が設けられて、帯状部33の下側には、
図5,6に示すように、前後に長い四角筒状の3つの排気ガイド37,37・・が、左右方向に所定間隔をおいて複数設置されている。
また、ドレン受け30の底部は、左右両側から右側2つの排気ガイド37,37の間に向けて下り傾斜しており、最深部には、前方へ下り傾斜する排出溝38が形成されて、排出溝38の前端には、前方へ突出する排出筒39が設けられている。この排出筒39には、ドレン排出管40を介して中和器41(
図1)が接続される。
【0013】
そして、ドレン受け30の底部には、導水部材45が設けられている。この導水部材45は、フィルムや金属製の薄板で、
図7~9に示すように、上側に凸となる横断面山形状に折曲されて前後方向に延び、後端が後方へ向けて先細り状となる導水部46と、導水部46の前部で左右両側に延設される一対の固定部47,47とからなる。ここでは排出溝38の後方延長上となる排気ガイド37,37の間に導水部46を配置させて、左右の固定部47,47をドレン受け30の底面に接着又は溶着することで、導水部材45は、左右両端がドレン受け30の底面に当接した状態で固定される。この状態で導水部材45は、導水部46が排気ガイド37,37の間で前後に延び、前端部が排出溝38の後部を上方から覆う一方、後端部が排気ダクト31の下方に位置して、ドレン受け30の底面との間に、前後両端部が開口するトンネル状の隙間48を形成している。
【0014】
一方、フランジ32及び帯状部33で囲まれる前側の開口には、排気整流板50が設けられている。この排気整流板50は、合成樹脂製で、フランジ32の前側及び左右両側で開口の内縁に載置される平面視コ字状の外枠部51と、その外枠部51の内側を塞ぐ板部52とを有する。また、板部52は、前後左右に等間隔に配列された複数の透孔53,53・・を有し、前寄りの中間部に向けて前後から下り傾斜する折れ板状となって、最深の谷部に透孔53の列が左右方向に並設されている。
【0015】
排気ダクト31は、合成樹脂製の横長角筒状で、上端の開口には、筐体2の上面に突出する円筒状の排気筒部56を備えた上カバー55が接合される。また、ダクト下部は、燃焼排気の通路面積が最大となるように形成されて、ダクト下部の上側には、上方へ行くに従って前面が後退する傾斜面となることで通路面積が徐々に絞られる絞り部57が形成されている。絞り部57の上側には、通路面積が最小となる最小部58が形成されている。
さらに、排気ダクト31における絞り部57とダクト上部との左右の側面には、筐体2内へネジ止め固定するための左右一対の固定片59,59がそれぞれ外向きに一体形成され、最小部58の左右の側面には、樹脂シート21をネジ止め固定するための左右一対の支持片60,60が外向きに張り出して一体形成されている。
【0016】
以上の如く構成された給湯器1においては、器具内に通水されると、リモコン等で要求される燃焼量に応じた回転数でコントローラ12がファンモータ9を駆動させてファンユニット8内のファンを回転させる。すると、ファンユニット8では、ファンの回転数に比例した空気が吸い込まれる。同時にガス導入管11からは燃料ガスが供給され、ガス供給ユニット10で調圧された後、ファンユニット8の吸込側に設けたベンチュリーを介して空気と混合されて混合気が生成される。生成された混合気は、バーナ4に供給されて炎孔板の各炎孔から噴出し、図示しない点火電極によって点火されて燃焼する。
バーナ4からの燃焼排気は、一次熱交換器5の中ケーシング16で各フィンの間を通過することで、伝熱管内を流れる水と熱交換し、顕熱が回収される。その後、二次熱交換器6の下ケーシング23内で各ペアプレートの間を通過することで、ペアプレートの内部流路を流れる水と熱交換し、潜熱が回収される。
【0017】
下ケーシング23を通過した燃焼排気は、排気部7の排気整流板50の透孔53を通過して均等にドレン受け30内に進入し、ドレン受け30の後部に移動した後、排気ダクト31内を上昇して排気筒部56から外部に排出される。
このとき、排気ダクト31には絞り部57が形成されているので、燃焼排気が下ケーシング23からドレン受け30、ドレン受け30から排気ダクト31へ方向転換を繰り返して流速を落としても、絞り部57で流速を上げて排気ダクト31内をスムーズに通過できる。
また、二次熱交換器6で発生したドレンは、排気整流板50上に落下して板部52上を流れ、途中の透孔53或いは谷部の透孔53を介してドレン受け30内に落下し、底面の左右の傾斜によって排出溝38に集められて、排出筒39からドレン排出管40及び中和器41を介して器具の外部へ排出される。
【0018】
このとき、ドレン受け30の底面上のドレンが、後方へ流れる燃焼排気によって、排出溝38へ達する前に排気ガイド37より後方に押し流されることがあっても、ドレン受け30の底面の左右の傾斜により、
図8に二点鎖線で示すように、ドレンDは導水部材45の後方に集まる。そして、導水部46の先細り状の後端と接触することで隙間48に入り込む。すると、隙間48内のドレンDは、矢印で示すように毛細管現象によって隙間48を伝って前方へ導かれ、排出溝38の後部に達すると、そのまま排出溝38に流れ込んで排出筒39から外部へ排出されることになる。よって、ドレン受け30の後部にドレンDが多く貯まることがなく、後部を通過する燃焼排気の流路が狭められることがないため、燃焼排気はドレン受け30から排気ダクト31へスムーズに移動できる。
【0019】
このように、上記形態の給湯器1によれば、ドレン受け30の底面に、前端部が排出溝38の後端部に上方から重なり、後端部が排気ダクト31の下方に位置して、両端部が開口するトンネル状の隙間48を形成する導水部材45が設けられているので。ドレン受け30の後部に貯まったドレンを毛細管現象により、隙間48を介して排出溝38に導くことができる。よって、燃焼排気の通路の閉塞を防止でき、ドレンに影響されることなくドレン受け30から排気ダクト31への燃焼排気の排出をスムーズに行うことができる。
特にここでは、導水部材45を、横断面形状が上側に凸となる山形状の板材としているので、簡単な形状でドレンの誘導が可能となり、導水部材45を設けてもコストアップを抑制できる。
【0020】
なお、導水部材の形状は上記形態に限らず、横断面形状は山形状の他、台形状や倒コ字状、上方へ膨らむ円弧形状等、適宜変更可能である。両端部の形状も、例えば後端部を平面視半円状や台形状に形成したり、前端部を先細り状にしたり等して差し支えない。
また、導水部を扁平な筒状としてドレン受けの底面に固定することも可能である。
一方、ドレン受けの形態も、排気ガイドの数や形状の変更は勿論、排気ガイドがないものでも導水部材の採用は可能である。この場合、ドレン受けの底面に複数の導水部材を並設してもよい。
さらに、排出筒がドレン受けの側面に設けられるような底面形状であっても、ドレン受けから排気ダクトへの燃焼排気の通過方向に沿って導水部材を平行に設ければ同じ効果が得られる。
その他、排気ダクトや排気整流板、バーナ、一次熱交換器、二次熱交換器の各形態やファンユニットの配置、コントローラの配置等も上記形態に限らず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0021】
1・・給湯器、2・・筐体、3・・内胴、4・・バーナ、5・・一次熱交換器、6・・二次熱交換器、7・・排気部、8・・ファンユニット、10・・ガス供給ユニット、12・・コントローラ、21・・樹脂シート、23・・下ケーシング、30・・ドレン受け、31・・排気ダクト、37・・排気ガイド、38・・排出溝、45・・導水部材、46・・導水部、47・・固定部、48・・隙間、50・・排気整流板、51・・外枠部、52・・板部、53・・透孔。