(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】懸垂スリット状整流除濁装置を用いた汚濁水の処理方法
(51)【国際特許分類】
E02B 15/00 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
E02B15/00 Z
(21)【出願番号】P 2019062560
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000229162
【氏名又は名称】日本ソリッド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】波多野 倫
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-072937(JP,A)
【文献】特開昭52-152637(JP,A)
【文献】特開昭62-137312(JP,A)
【文献】特開平05-179635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロートに垂下膜を吊下した水流傾斜
膜を、汚濁処理箇所内に、隣接した垂下膜間にスリット状の間隔を有するように連結して懸垂スリット状整流徐濁装置を展張し、かつ垂下膜間のスリット状間隔部を300~600m/hrの流速で汚濁水を通過させることを特徴とする汚濁水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シックナー、クラリファイアー、横流沈殿池、沈砂池、ラグーン、調整池等の各種沈殿池、上下水道の取水口、排水口、埋立沈殿池、余水沈殿池等による汚濁水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シックナー等の汚濁水処理に、本発明で使用する懸垂スリット状整流徐濁装置を展張して処理されていた(特開昭49-72937号公報)。しかしながら、従来は垂下膜の裏面にカルマン過流を生起させ、ここで汚濁水中の汚濁物質を効率的に除去する目的から池内平均流速を24m/hr、垂下膜間のスリット状間隔部を150m/hr以下の流速で汚濁水を通過させていた。
しかしながら当初の計画処理量より増大すると、また新たにシックナー等を設置しなければならず莫大な費用が必要になっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明者は、既設のシックナー等の人工構造物装置によって汚濁水の処理量を増大する方法について種々研究を重ねた結果本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明は、フロートに垂下膜を吊下した水流傾斜膜を汚濁処理箇所内に、隣接した垂下膜間にスリット状の間隔を有するように連結して懸垂スリット状整流徐濁装置を展張し、かつ垂下膜間のスリット状間隔部を300~600m/hrの流速で汚濁水を通過させてなる、汚濁水の処理方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明方法によれば、水流傾斜膜の垂下膜の裏面にカルマン過流が生起すると共に、垂下膜の前面において下降流が生起し、かつ淀み域(境界層)(以下「淀み域」と云う。)を生起し、さらに垂下膜間隔部に逆流現象が生起し、該淀み部において汚濁粒子を圧密して団粒化し干渉沈降させることができる。本発明は、このような現象が生起することによって垂下膜の前面および裏面部において汚濁粒子を効率的に除去することができることから、汚濁水の処理量を増大させても好適に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に本発明方法を図面を参照しながら説明する。
本発明方法に使用する懸垂スリット状整流徐濁装置は、
図1に示すようにフロート1に垂下膜2を吊下した水流傾斜膜3を
図2に示すように水流傾斜膜3を連結することによって構成することができる。
【0008】
本発明方法に用いる水流傾斜膜3としては、例えば特開昭49-72937号公報に開示されているものがいずれも好適に使用することができる。
また懸垂スリット状整流徐濁装置4における隣接する垂下膜間の間隔幅Hは、5~40cm、好ましくは10~15cmが最適である。このように隣接する垂下膜間との間隔幅Hと汚濁水との流速とが相関し合うことによってはじめて前述した本発明の効果が得られるのである。
【0009】
次に本発明方法を
図3に示すように、懸垂スリット状整流徐濁装置4を円形に多重展張したシックナーによる汚濁水の処理方法について説明する。
使用した懸垂スリット状整流徐濁装置4における垂下膜の長さは2mのものを使用し、垂下膜間の間隔幅Hは、10cmとして実施した。
実施例
図3に示すシックナーの給液口5より汚濁水を懸垂スリット状整流徐濁装置4の垂下膜2間を通る流速を600m/hrに調整して供給した(シックナーの時間当りの汚濁水の処理量1000m
3)。
その結果清澄液樋6における清澄水の濁度は40mg/Lであった。
一方比較のために懸垂スリット状整流徐濁装置4の垂下膜2間(間隔幅70cm)を通る流速を150m/hrに調整して供給した(シックナーの時間当りの汚濁水の処理量250m
3)。その結果清澄液樋6における清澄水の濁度は150mg/Lであった。
【符号の説明】
【0010】
1・・・フロート
2・・・垂下膜
3・・・水流傾斜膜
4・・・懸垂スリット状整流除濁装置