(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】水中油型化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/87 20060101AFI20230221BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230221BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230221BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230221BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230221BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230221BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230221BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/06
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/891
A61Q1/00
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019063900
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】品川 直基
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081868(JP,A)
【文献】特開2016-056108(JP,A)
【文献】特開2017-178904(JP,A)
【文献】国際公開第2010/064678(WO,A1)
【文献】特開2014-118383(JP,A)
【文献】特開2008-247866(JP,A)
【文献】特開2015-224212(JP,A)
【文献】特開2019-019129(JP,A)
【文献】特開2019-019077(JP,A)
【文献】特開2005-325088(JP,A)
【文献】特開2009-024012(JP,A)
【文献】特開2016-138099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
ビスステアリルPEG/PPG-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/PEG-400)コポリマー
(B)
アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体
(C)
ヒドロキシエチルセルロース
(D)
動粘度5~30mm
2
/sのメチルポリシロキサン
(E)
ポリオキシエチレンの平均付加モル数が20であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含有し、
前記(A)成分の含有量が0.7~1.7質量%であり、前記(B)成分の含有量が0.05~0.45質量%であり、前記(C)成分の含有量が0.1~0.5質量%であり、前記(D)成分の含有量が0.2~4.5質量%であり、前記(E)成分の含有量が0.04~
0.9質量%であり、pHが4~8である水中油型化粧料組成物。
【請求項2】
前記(D)成分と前記(E)成分の比率(D)/(E)が3~45であることを特徴とする
請求項1に記載の水中油型化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型化粧料組成物に関し、特に、弾力感があり、伸ばしたときにみずみずしく、塗布後のべたつきがなく、乳化安定性があり、低温で伸ばしたときでもみずみずしい感触が得られる水中油型化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料用の乳化組成物は、水溶性物質と油溶性物質から構成されており、みずみずしい使用感を与えやすい水中油型化粧料組成物は需要が大きい。水溶性物質と油溶性物質を乳化させ水中油型化粧料組成物にするためには、一般に、界面活性剤が用いられるが、特定の水溶性増粘剤を用い乳化させる方法も広く用いられている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の水溶性ポリアルキレンオキシド変性物や、特許文献2に記載の疎水変性ポリエーテルウレタンは従来から汎用されているアクリル酸系増粘剤や親水性増粘多糖類にはない独特の弾力を有し、目新しさを与える化粧料用組成物が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献3には、特定の疎水変性ポリエーテルウレタン、シリコーンポリマー、水溶性増粘剤、乳化剤、シリコーン油および水を含有することを特徴とし、べたつきの抑制、乳化安定性および弾力感を有する水中油型化粧料が提案されている。
【0005】
特許文献4には、水溶性ポリアルキレンオキシド変性物および疎水変性ポリエーテルウレタンから選ばれる1種以上、脂肪酸またはその塩、および水を含有することを特徴とし、経時での硬度の上昇が抑えられ保存安定性を有する化粧料が提案されている。
【0006】
特許文献5には、疎水変性ポリエーテルウレタン、アクリル酸およびアクリル酸誘導体から選ばれる1種以上、特定の重量平均分子量の界面活性剤、油性成分および水を含有することを特徴とし、保湿感、硬度の経時安定性および皮膚に伸ばすときのべたつきがなくみずみずしい感触を有する水中油型化粧料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-116941号公報
【文献】特開2000-234085号公報
【文献】特開2013-82663号公報
【文献】特開2016-69336号公報
【文献】特開2018-16584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記水中油型化粧料組成物は、常温では効果を発揮するが、冬場や寒冷地で発生し得る、水中油型化粧料組成物の温度が低い場合では、弾力感が増し、水中油型化粧料組成物を皮膚に伸ばすときにゲルが崩れにくくなり、みずみずしさが損なわれてしまう問題があった。
【0009】
本発明は、水中油型化粧料組成物の弾力感(以下、弾力感という)があり、伸ばしたときにみずみずしく、塗布後のべたつきがなく、乳化安定性があり、低温で伸ばしたときでもみずみずしい感触が得られる水中油型化粧料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、(A)下記一般式(1)で表される化合物、(B)カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1種以上、(C)水溶性セルロース誘導体、(D)シリコーン油、および(E)界面活性剤を含有し、前記(E)成分の含有量が0.04~1.5質量%であり、pHが4~8である水中油型化粧料組成物とすることで、弾力感があり、伸ばしたときにみずみずしく、塗布後のべたつきがなく、乳化安定性があり、低温で伸ばしたときでもみずみずしい感触が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
【化1】
一般式(1)中、R
1は炭素数6~36でm価の飽和炭化水素基を表し、R
2は、メチルジフェニレン基、ヘキサメチレン基、メチルジシクロヘキシレン基、3-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基、ジメチルフェニレン基、またはトリレン基を表し、R
3は水素原子またはメチル基を表す。nは90~900の整数を表し、mは1~5の整数を表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、弾力感があり、伸ばしたときにみずみずしく、塗布後のべたつきがなく、乳化安定性があり、低温で伸ばしたときでもみずみずしい感触が得られる水中油型化粧料組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、(A)下記一般式(1)で表される化合物、(B)カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1種以上、(C)水溶性セルロース誘導体、(D)シリコーン油、および(E)界面活性剤を含有し、前記(E)成分の含有量が0.04~1.5質量%であり、pHが4~8である水中油型化粧料組成物である。
【0014】
【化2】
一般式(1)中、R
1は炭素数6~36でm価の飽和炭化水素基を表し、R
2は、メチルジフェニレン基、ヘキサメチレン基、メチルジシクロヘキシレン基、3-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基、ジメチルフェニレン基、またはトリレン基を表し、R
3は水素原子またはメチル基を表す。nは90~900の整数を表し、mは1~5の整数を表す。
【0015】
本発明は、弾力感を付与する観点から、(A)下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0016】
【0017】
一般式(1)中、R1は炭素数6~36でm価の飽和炭化水素基を表し、R2は、メチルジフェニレン基、ヘキサメチレン基、メチルジシクロヘキシレン基、3-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基、ジメチルフェニレン基、またはトリレン基を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す。nは90~900の整数を表し、mは1~5の整数を表す。
【0018】
一般式(1)は、「H-(O-CHR2CH2)n-OH(ここで、R2およびnは上記の定義と同じ)」で表されるポリアルキレンオキシド化合物、「HO-R1(ここで、R1は上記の定義と同じ)」で表される1価の疎水性アルコールおよび「R2<(NCO)2(ここで、R2は上記の定義と同じ)」で表されるジイソシアネート化合物を原料として反応させることにより得られる。
【0019】
「H-(O-CHR3CH2)n-OH」で表されるポリアルキレンオキシド化合物としては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシド共重合体等が挙げられる。
【0020】
「HO-R1」で表される1価の疎水性アルコールとしては、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0021】
「R2<(NCO)2」で表されるジイソシアネート化合物としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(HMDI)、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1,8-ジメチルベンゾール-2,4-ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。
【0022】
上記した、ポリアルキレンオキシド化合物と1価の疎水性アルコールとジイソシアネート化合物とを反応させる方法としては、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド等の反応溶媒に溶解や分散させて反応させる方法や、固体を粉末状に粉砕または液状に溶融し、均一に混合した後、所定の温度に加熱して反応させる方法等が挙げられる。好ましくは、一般式(1)の合成方法としては、特開2013-116941号公報の段落〔0049〕~〔0051〕に記載された方法がよい。
【0023】
前記(A)成分としては、ビスステアリルPEG/PPG-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/PEG-400)コポリマーが好ましい。
【0024】
ビスステアリルPEG/PPG-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/PEG-400)コポリマーの市販品としては、AQUPEC HU C2002(住友精化社製)が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、好ましくは0.5~2質量%、より好ましくは0.7~1.7質量%、さらに好ましくは0.9~1.4質量%がよい。前記(A)成分が0.5質量%未満の場合、弾力感が付与されない恐れがある。前記(A)成分が2質量%を超える場合、塗布後のべたつきが抑制されない恐れおよび低温で伸ばしたときのみずみずしさが損なわれる恐れがある。
【0026】
本発明における低温は、1~10℃を意味する。
【0027】
本発明は、乳化安定性を付与する観点から、(B)カルボキシビニルポリマーおよびアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体から選ばれる1種以上を含有する。
【0028】
カルボキシビニルポリマーの市販品としては、CARBOPOL ULTREZ 10 POLYMER(Lubrizol Advanced Materials社製)、カーボポール 980(Lubrizol Advanced Materials社製)、AQUPEC HV-505ED(住友精化社製)、NTC-CARBOMER 381(Guangzhou Tinci Materials Technology社製)等が挙げられる。アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体の市販品としては、PEMULEN TR-1(Lubrizol Advanced Materials社製)、PEMULEN TR-2(Lubrizol Advanced Materials社製)、カーボポール ETD2020(Lubrizol Advanced Materials社製)等が挙げられる。
【0029】
本発明に用いられる前記(B)成分のうち、乳化安定性の観点からアクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が好ましい。
【0030】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、好ましくは0.05~0.55質量%、より好ましくは0.05~0.45質量%、さらに好ましくは0.05~0.35質量%がよい。前記(A)成分が0.05質量%未満の場合、乳化安定性が付与できない恐れがある。前記(A)成分が0.55質量%を超える場合、塗布後のべたつきが抑制されない恐れがある。
【0031】
本発明は、低温で伸ばしたときのみずみずしさを付与する観点から、(C)水溶性セルロース誘導体を含有する。
【0032】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えば、非イオン性セルロース誘導体であるヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、陽イオン性セルロース誘導体である塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、陰イオン性セルロース誘導体であるカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。前記(C)成分は1種以上を含有してよい。
【0033】
ヒドロキシエチルセルロースの市販品としては、HEC CFグレード(住友精化社製)、HEC SEグレード(ダイセル社製)等が挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロースの市販品としてはNISSO HPC(日本曹達社製)等が挙げられる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの市販品としては、METOLOSE SHグレード(信越化学工業社製)等が挙げられる。塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースの市販品としては、セルコート(アクゾノーベル社製)、DOCQUAT 10(DOC Japan社製)等が挙げられる。カルボキシメチルセルロースの市販品としては、CMCダイセル(ダイセルファインケム社製)、セロゲン(第一工業製薬社製)、CEKOL(CP KELCO社製)等が挙げられる。
【0034】
本発明に用いられる前記(C)成分のうち、低温で伸ばしたときのみずみずしさの観点から非イオン性セルロース誘導体が好ましく、より好ましくはヒドロキシエチルセルロースがよい。
【0035】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、低温で伸ばしたときのみずみずしさの観点から20℃における2質量%水溶液の粘度が1,000~6,000mPa・s、より好ましくは20℃における2質量%水溶液の粘度が4,000~6,000mPa・sであることがよい。
【0036】
20℃における2質量%水溶液の粘度が1,000~6,000mPa・sである市販品としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースとしては、HEC SE550(ダイセル社製)、HEC SE600(ダイセル社製)、HEC SE850(ダイセル社製)、HEC SE900(ダイセル社製)、ヒドロキシプロピルセルロースとしては、NISSO HPC-H(日本曹達社製)、NISSO HPC-VH(日本曹達社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、METOLOSE 60SH-4000(信越化学工業社製)、METOLOSE 65SH-4000(信越化学工業社製)、METOLOSE 90SH-4000(信越化学工業社製)等が挙げられる。20℃における2質量%水溶液の粘度が4,000~6,000mPa・sである市販品としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースとしては、HEC SE600(ダイセル社製)、HEC SE900(ダイセル社製)、ヒドロキシプロピルセルロースとしては、NISSO HPC-VH(日本曹達社製等)が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられる前記(C)成分の20℃における粘度は、常法にて調製して得られた2質量%水溶液を300mLビーカー(IWAKIブランド:AGC社製)に300g充填し、20℃条件下で24時間静置した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、粘度が50以上200mPa・s未満の場合はM1号ローターを用いて20℃条件下で30rpmで1分間、粘度が200以上~1,000mPa・s未満の場合はM2号ローターを用いて20℃条件下で30rpmで1分間、粘度が1,000以上4,000mPa・s未満の場合はM3号ローターを用いて20℃条件下で30rpmで1分間、粘度が4,000以上10,000mPa・s未満の場合はM4号ローターを用いて20℃条件下で60rpmで1分間回転させた後に測定したものである。
【0038】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、好ましくは0.05~0.6質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%、さらに好ましくは0.2~0.4質量%がよい。前記(C)成分が0.05質量%未満の場合、低温で伸ばしたときのみずみずしさが付与されない恐れがある。前記(C)成分が0.6質量%を超える場合、塗布後のべたつきが抑制されない恐れがある。
【0039】
本発明は、塗布後のべたつきを抑制する観点から、(D)シリコーン油を含有する。
【0040】
本発明で用いられる前記(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルポリシロキサン、環状ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。前記(D)成分は1種以上を含有してよい。
【0041】
ジメチルポリシロキサンの市販品としては、KF-96シリーズ(信越化学工業社製)、SH 200シリーズ(東レ・ダウコーニング社製)、Element14 PDMSシリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。環状ポリシロキサンの市販品としては、KF-995(信越化学工業社製)、SH 245(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。メチルハイドロジェンポリシロキサンの市販品としては、KF-99-P(信越化学工業社製)、SH1107C(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0042】
本発明に用いられる前記(D)成分のうち、乳化安定性の観点からジメチルポリシロキサンが好ましい。
【0043】
本発明で用いられる前記(D)成分としては、特に限定されないが、塗布後のべたつきを抑制する観点および乳化安定性の観点から、動粘度が2~1,000mm2/s、より好ましくは5~350mm2/s、さらに好ましくは5~30mm2/sであることがよい。
【0044】
本発明で用いられる前記(D)成分の含有量は、好ましくは0.12~4.5質量%、より好ましくは0.2~4.5質量%、さらに好ましくは0.9~4.5質量%がよい。前記(D)成分が0.12質量%未満の場合、塗布後のべたつきが抑制されない恐れがある。前記(D)成分が4.5質量%を超える場合、乳化安定性が付与できない恐れがある。
【0045】
本発明は、乳化安定性の観点から、(E)界面活性剤を含有する。
【0046】
本発明で用いられる前記(E)成分としては、特に限定されないが、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。前記(E)成分は1種以上を含有してよい。
【0047】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルグリセリルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド、アルキル脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグルコシド等が挙げられる。
【0048】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、アミドアミン化合物などが挙げられ、対イオンとしては、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲンイオン、硫酸メチルイオン(CH3OSO3-)、硫酸エチルイオン(CH3CH2OSO3-)などが挙げられる。
【0049】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸アルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が挙げられ、対イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来の陽イオンなどが挙げられる。
【0050】
両性界面活性剤としては、例えば、グリシン型両性界面活性剤アミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤スルホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0051】
本発明に用いられる前記(E)成分のうち、伸ばしたときのみずみずしさの観点および低温で伸ばしたときのみずみずしさの観点から非イオン性界面活性剤が好ましく、より好ましくはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、さらに好ましくはポリオキシエチレンの平均付加モル数が20であるモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンがよい。
【0052】
本発明で用いられる前記(E)成分の含有量は、0.04~1.5質量%であり、より好ましくは0.04~1.2質量%であり、さらに好ましくは0.04~0.9質量%がよい。前記(E)成分が0.04質量%未満の場合、乳化安定性が付与できない。前記(E)成分が1.5質量%を超える場合、低温で伸ばしたときのみずみずしさが損なわれる。
【0053】
本発明で用いられる前記(D)成分と前記(E)成分の割合(D)/(E)は塗布後のべたつきを抑制する観点から好ましくは1.2~45、より好ましくは2~45、さらに好ましくは3~45であることがよい。前記(D)/(E)が1.2未満の場合、べたつきが抑制されない恐れがある。前記(D)/(E)が45を超える場合、乳化安定性が付与できない恐れがある。
【0054】
本発明の水中油型化粧料組成物は乳化安定性の観点から、20℃におけるpHは4~8であり、より好ましくは5~7がよい。
【0055】
本発明による20℃条件下におけるpHは、常法にて調製して得られた水中油型化粧料組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で48時間静置し、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、堀場製作所製)にて原液のpHを測定し得られるものである。
【0056】
本発明の水中油型化粧料組成物は前記必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、油性成分、保湿剤、増粘剤、キレート剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、キレート剤、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0057】
本発明による水中油型化粧料組成物の粘度は、特に限定されないが、掌からの垂れ落ちの観点から、好ましくは20℃条件下で20,000~180,000mPa・s、より好ましくは、40,000~150,000mPa・s、さらに好ましくは60,000~120,000mPa・sがよい。
【0058】
本発明による20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られた水中油型化粧料組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃条件下で48時間静置した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、粘度が5,000以上50,000mPa・s未満の場合はM4号ローターを用いて20℃条件下で12rpmで1分間、粘度が50,000以上100,000mPa・s未満の場合はM4号ローターを用いて20℃条件下で6rpmで1分間、粘度が100,000以上200,000mPa・s未満の場合はM4号ローターを用いて20℃条件下で3rpmで2分間、回転させた後に測定したものである。
【0059】
本発明による水中油型化粧料組成物は、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、などの形態で用いられるものとすることができるが、ジャー容器の場合、指で取りやすく、チューブ容器の場合、掌からの垂れ落ち難く、スパウトパウチ容器の場合、掌から垂れ落ち難い観点から、好ましくはゲル状であることがよい。
【0060】
本発明による水中油型化粧料組成物は、特に限定されず、ジャー容器、チューブ容器、パウチ容器等各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0062】
本明細書に示す評価試験において、水中油型化粧料組成物に含まれる成分、およびその含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0063】
本明細書に示す評価試験において、「弾力感」、「伸ばしたときのみずみずしさ」、「塗布後のべたつき」、「乳化安定性」および「低温で伸ばしたときのみずみずしさ」について下記の方法で評価した。
【0064】
「弾力感」
実施例および比較例で得られた各水中油型化粧料組成物の弾力感を、専門のパネラー22名で実使用試験を行い、塗布時に優れた弾力感を感じたか否かを官能にて評価した。実使用試験は、20℃に調節温度された実施例および比較例の水中油型化粧料組成物2gを室温20℃の条件化で顔面全体に20秒で均一に塗布した。
<評価基準>
5:22人中19人以上が優れた弾力感を感じた。
4:22人中16人以上18人以下が優れた弾力感を感じた。
3:22人中12人以上15人以下が優れた弾力感を感じた。
2:22人中8人以上11人以下が優れた弾力感を感じた。
1:22人中7人以下が優れた弾力感を感じた。
【0065】
「伸ばしたときのみずみずしさ」
実施例および比較例で得られた各水中油型化粧料組成物の伸ばしたときのみずみずしさを、専門のパネラー22名で実使用試験を行い、顔に塗布する時にみずみずしさを感じたか否かを官能にて評価した。実使用試験は、20℃に調節温度された実施例および比較例の水中油型化粧料組成物2gを室温20℃の条件化で顔面全体に20秒で均一に塗布した。
<評価基準>
5:22人中19人以上が塗布時にみずみずしさを感じた。
4:22人中16人以上18人以下が塗布時にみずみずしさを感じた。
3:22人中12人以上15人以下が塗布時にみずみずしさを感じた。
2:22人中8人以上11人以下が塗布時にみずみずしさを感じた。
1:22人中7人以下が塗布時にみずみずしさを感じた。
【0066】
「塗布後のべたつき」
実施例および比較例で得られた各水中油型化粧料組成物の塗布後のべたつきを、専門のパネラー22名で実使用試験を行い、塗布後から1分間経過するまでのべたつきについて官能にて評価した。実使用試験は、20℃に調節温度された実施例および比較例の水中油型化粧料組成物2gを室温20℃の条件化で顔面全体に20秒で均一に塗布した。
<評価基準>
5:22人中19人以上が塗布後のべたつきを感じない。
4:22人中16人以上18人以下が塗布後のべたつきを感じない。
3:22人中12人以上15人以下が塗布後のべたつきを感じない。
2:22人中8人以上11人以下が塗布後のべたつきを感じない。
1:22人中7人以下が塗布後のべたつきを感じない。
【0067】
「乳化安定性」
実施例および比較例で得られた各水中油型化粧料組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、50℃の恒温槽に3ヶ月静置後、目視にてその外観を観察し評価した。
<評価基準>
○:変化は見られない
×:表面に油膜または油滴が見られる。
【0068】
「低温で伸ばしたときのみずみずしさ」
実施例および比較例で得られた各水中油型化粧料組成物を低温で伸ばしたときのみずみずしさを、専門のパネラー22名で実使用試験を行い、顔に塗布する時にみずみずしさを感じたか否かを官能にて評価した。実使用試験は、5℃に調節温度された実施例および比較例の水中油型化粧料組成物2gを室温5℃の条件化で顔面全体に20秒で均一に塗布した。
<評価基準>
5:22人中19人以上が「伸ばしたときのみずみずしさ」で評価した結果と比較し、塗布時に同程度のみずみずしさを感じた。
4:22人中16人以上18人以下が「伸ばしたときのみずみずしさ」で評価した結果と比較し、塗布時に同程度のみずみずしさを感じた。
3:22人中12人以上15人以下が「伸ばしたときのみずみずしさ」で評価した結果と比較し、塗布時に同程度のみずみずしさを感じた。
2:22人中8人以上11人以下が「伸ばしたときのみずみずしさ」で評価した結果と比較し、塗布時に同程度のみずみずしさを感じた。
1:22人中7人以下が「伸ばしたときのみずみずしさ」で評価した結果と比較し、塗布時に同程度のみずみずしさを感じた。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
※1:AQUPEC HU C2002(住友精化社製)
※2:アデカノール GT-700(ADEKA社製)
※3:PEMULEN TR-2(Lubrizol Advanced Materials社製)
※4:HEC SE600(ダイセルファインケム社製)
※5:KF-96A-10CS(信越化学工業社製)
※6:ソルボンT-60(東邦化学社製)
※7:KELTROL CG(CP KELCO社製)
※8:KELCOGEL(CP KELCO社製)
【0076】
表1~表6に示す実施例1~34から、弾力感、伸ばしたときのみずみずしさ、塗布後のべたつき、乳化安定性および低温で伸ばしたときのみずみずしさについて良好な結果を得ることが確認された。
【0077】
実施例35を使用して各種試験を行っても、弾力感、伸ばしたときのみずみずしさ、塗布後のべたつき、乳化安定性および低温で伸ばしたときのみずみずしさのいずれの評価も良好であった。
【0079】
[実施例35]
成 分 含有量(質量%)
(A)ビスステアリルPEG/PPG-8/6
(SMDI/PEG-400)コポリマー※1 1.10
(B)アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体※3 0.25
(C)ヒドロキシエチルセルロース※4 0.28
(D)メチルポリシロキサン※9 1.80
(D)メチルポリシロキサン※5 1.80
(E)モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン※6 0.10
エデト酸二ナトリウム 0.10
1,3-ブチレングリコール 12.01
濃グリセリン 5.00
ジプロピレングリコール 4.00
パラオキシ安息香酸メチル 0.15
フェノキシエタノール 0.30
N-ラウロイル-L-グルタミン酸
ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)※10 0.30
トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 0.01
水酸化カリウム 0.09
γ-ドコサラクトン 0.01
モモ核油 0.01
モモ果実エキス 0.01
香料 0.20
赤106 適 量
黄203 適 量
精製水 残 分
合計 100.00
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、弾力感、伸ばしたときのみずみずしさ、塗布後のべたつき、乳化安定性および低温で伸ばしたときのみずみずしさを得ることができる。