(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】制動装置付きスライド錠
(51)【国際特許分類】
E05B 13/00 20060101AFI20230221BHJP
E05C 1/10 20060101ALI20230221BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20230221BHJP
E05B 13/08 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
E05B13/00 A
E05C1/10
E05B65/06 C
E05B65/06 Z
E05B13/08 Z
(21)【出願番号】P 2019067452
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2018225499
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【氏名又は名称】小林 正英
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-299749(JP,A)
【文献】特開2010-203095(JP,A)
【文献】特開2000-129982(JP,A)
【文献】実開平03-111775(JP,U)
【文献】実開昭62-016657(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 13/00
E05C 1/10
E05B 65/06
E05B 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉及び袖パネルのいずれか一方に設置されるベースと、当該ベースに沿ってスライドするラッチを備えたスライド錠において、
前記ベースに装備された制動体と、前記ラッチに装備された制動受け体を備え、
前記制動体はプッシャーと、当該プッシャーによって動作する作動体と、当該作動体と連動するストップ体を備え、
前記制動受け体は前記ストップ体が嵌入する受け凹部を備え、
前記ストップ体は前記受け凹部に嵌入する方向及び当該受け凹部から脱出する方向に移動できるように前記作動体に設けられ、
前記ラッチが施錠位置にある状態で前記プッシャーが制動方向に移動すると、当該プッシャーの移動によって前記作動体が移動し、その作動体の移動に連動して前記ストップ体が前記受け凹部内に嵌入して、前記ラッチのスライドが規制され、
前記ストップ体によって前記ラッチのスライドが規制された状態で、前記作動体が前記制動方向と反対方向に移動すると、当該作動体の移動に連動して、前記ストップ体が前記受け凹部から脱出して、前記ラッチのスライドの規制が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項2】
扉及び袖パネルのいずれか一方に設置されるベースと、当該ベースに沿ってスライドするラッチと、扉及び袖パネルの他方に設置されるストライクを備えたスライド錠において、
前記ストライクに装備された制動体と、前記ラッチに装備された制動受け体を備え、
前記制動体はプッシャーと、当該プッシャーによって動作する作動体と、当該作動体と連動するストップ体を備え、
前記制動受け体は前記ストップ体が嵌入する受け凹部を備え、
前記ストップ体は前記受け凹部に嵌入する方向及び当該受け凹部から脱出する方向に移動できるように前記作動体に設けられ、
前記ラッチが施錠位置にある状態で前記プッシャーが制動方向に移動すると、当該プッシャーの移動によって前記作動体が移動し、その作動体の移動に連動して前記ストップ体が前記受け凹部内に嵌入して、前記ラッチのスライドが規制され、
前記ストップ体によって前記ラッチのスライドが規制された状態で、前記作動体が前記制動方向と反対方向に移動すると、当該作動体の移動に連動して、前記ストップ体が前記受け凹部から脱出して、前記ラッチのスライドの規制が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の制動装置付きスライド錠において、
制動体は作動体と連動する解除ピースを備え、
前記制動体が設けられたベース又はストライクに、前記解除ピースが出入りするピース出入り口が設けられ、
ラッチが施錠位置にある状態でプッシャーが制動方向に移動すると、当該プッシャーの移動に伴って前記作動体が移動し、その作動体の移動に連動して前記解除ピースが前記ピース出入り口からベース又はストライク外に突出し、
前記ピース出入り口から突出した解除ピースをベース又はストライク内に押し込むと、前記作動体が前記制動方向と反対方向に移動し、当該作動体の移動に連動して、前記ストップ体が前記受け凹部から脱出して、前記ラッチの規制が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項4】
扉及び袖パネルのいずれか一方に設置されるベースと、当該ベースに沿ってスライドするラッチを備えたスライド錠において、
前記ベースに装備された制動体と、前記ラッチに装備された制動受け体を備え、
前記制動体はストップ体操作具と、当該ストップ体操作具と連動するストップ体を備え、
前記制動受け体は前記ストップ体が嵌入する受け凹部を備え、
前記ストップ体は前記受け凹部に嵌入する方向及び当該受け凹部から脱出する方向に移動できるように前記ストップ体操作具に設けられ、
前記ラッチが施錠位置にある状態で前記ストップ体操作具が制動方向に移動すると、当該ストップ体操作具の移動に連動して前記ストップ体が前記受け凹部内に嵌入して、前記ラッチのスライドが規制され、
前記ストップ体によって前記ラッチのスライドが規制された状態で、前記ストップ体操作具が前記制動方向と反対方向に移動すると、当該ストップ体操作具の移動に連動して、前記ストップ体が前記受け凹部から脱出して、前記ラッチのスライドの規制が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項5】
扉及び袖パネルのいずれか一方に設置されるベースと、当該ベースに沿ってスライドするラッチと、扉及び袖パネルの他方に設置されるストライクを備えたスライド錠において、
前記ストライクに装備された制動体と、前記ラッチに装備された制動受け体を備え、
前記制動体はストップ体操作具と、当該ストップ体操作具と連動するストップ体
と、当該ストップ体操作具と連動する解除ピースを備え、
前記制動受け体は前記ストップ体が嵌入する受け凹部を備え、
前記ストップ体は前記受け凹部に嵌入する方向及び当該受け凹部から脱出する方向に移動できるように前記ストップ体操作具に設けられ、
前記制動体が設けられたストライクに、前記解除ピースが出入りするピース出入り口が設けられ、
前記ラッチが施錠位置にある状態で前記ストップ体操作具が制動方向に移動すると、当該ストップ体操作具の移動に連動して前記ストップ体が前記受け凹部内に嵌入して、前記ラッチのスライドが規制され
るとともに、
当該ストップ体操作具の移動に連動して前記解除ピースが前記ピース出入り口から前記ストライク外に突出し、
前記ストップ体によって前記ラッチのスライドが規制された状態で、
前記ピース出入り口から突出した解除ピースを前記ストライク内に押し込むと、前記ストップ体操作具が前記制動方向と反対方向に移動
し、当該ストップ体操作具の移動に連動して、前記ストップ体が前記受け凹部から脱出して、前記ラッチのスライドの規制が解除さ
れる、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項6】
請求項
4記載の制動装置付きスライド錠において、
制動体はストップ体操作具と連動する解除ピースを備え、
前記制動体が設けられたベー
スに、前記解除ピースが出入りするピース出入り口が設けられ、
ラッチが施錠位置にある状態で前記ストップ体操作具が制動方向に移動すると、当該ストップ体操作具の移動に連動して前記解除ピースが前記ピース出入り口からベース
外に突出し、
前記ピース出入り口から突出した解除ピースをベース
内に押し込むと、前記ストップ体操作具が前記制動方向と反対方向に移動し、当該ストップ体操作具の移動に連動して、前記ストップ体が前記受け凹部から脱出して、前記ラッチの規制が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項7】
扉及び袖パネルのいずれか一方に設置されるベースと、当該ベースに沿ってスライドするラッチを備えたスライド錠において、
前記ラッチに装備された制動体と、前記ベースに設けられた制動受け体を備え、
前記制動体はストップ体操作具と、当該ストップ体操作具と連動するストップ体を備え、
前記制動受け体は前記ストップ体が嵌入する受け凹部を備え、
前記制動受け体は前記ベースの一部として設けられ、
前記ストップ体は前記受け凹部に嵌入する方向及び当該受け凹部から脱出する方向に移動できるように前記ストップ体操作具に設けられ、
前記制動受け体に、ストップ体をベース方向、ストライク方向、又はラッチ方向に押し戻す戻し突起が設けられ、
前記ラッチが施錠位置にある状態で前記ストップ体操作具が制動方向に移動すると、当該ストップ体操作具の移動に連動して前記ストップ体が前記受け凹部内に嵌入して、前記ラッチのスライドが規制され、
前記ストップ体によって前記ラッチのスライドが規制された状態で、前記ストップ体操作具が前記制動方向と反対方向に移動すると、当該ストップ体操作具の移動に連動して、前記ストップ体が前記受け凹部から脱出して、前記ラッチのスライドの規制が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項8】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の制動装置付きスライド錠において、
制動受け体に、ストップ体をベース方向、ストライク方向、又はラッチ方向に押し戻す戻し突起が設けられた、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項9】
請求項8記載の制動装置付きスライド錠において、
戻し突起は、施錠位置にあるラッチを解錠方向にスライドさせたときにストップ体に当接する第一戻し部と、解錠位置にあるラッチを施錠方向にスライドさせたときにストップ体に当接する第二戻し部を備えた、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の制動装置付きスライド錠において、
制動体は対向配置された二つの解除ピースを備え、
前記二つの解除ピースのうちいずれか一方の解除ピースに磁石が設けられ、又はいずれか一方の解除ピースが磁石で構成され、
他方の解除ピースに磁石若しくは磁性体が設けられ、又は他方の解除ピースが磁石若しくは磁性体で構成され、
両解除ピースが互いに吸着し合う向きで対向して配置された、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の制動装置付きスライド錠において、
作動体又はストップ体操作具に第一係止部が設けられ、
前記作動体若しくはストップ体操作具が収容されるベース内又は前記作動体若しくはストップ体操作具を押さえる裏蓋に前記第一係止部に係止する第二係止部が設けられ、
前記第一係止部と第二係止部が係止すると、前記作動体又はストップ体操作具がその係止位置で固定され、
前記第一係止部と第二係止部の係止が解除されると、前記作動体又はストップ体操作具の固定が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の制動装置付きスライド錠において、
作動体又はストップ体操作具に第一吸着体が設けられ、
ストップ体又は前記作動体若しくはストップ体操作具に隣接する部材に前記第一吸着体に吸着する第二吸着体が設けられ、
前記第一吸着体と第二吸着体が吸着すると、前記作動体又はストップ体操作具がその吸着位置で固定され、
前記第一吸着体と第二吸着体の吸着が解除されると、前記作動体又はストップ体操作具の固定が解除される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の制動装置付きスライド錠において、
制動体は作動体又はストップ体操作具と、対向配置された二つの解除ピースを備え、
前記作動体又はストップ体操作具は装備空間に装備され、
前記作動体又はストップ体操作具に第一係止突起又は第一係止凹部が設けられ、
前記装備空間を構成する壁面に、前記第一係止突起に係止する第二係止凹部又は前記第一係止凹部に係止する第二係止突起が設けられ、
前記両解除ピースの双方が装備空間内に押し込まれると、作動体又はストップ体操作具が両解除ピースで押されて前記装備空間の外に突出し、
前記両解除ピースの一方のみが装備空間内に押し込まれると、当該解除ピースによって作動体又はストップ体操作具が押されて、前記第一係止突起が前記第二係止凹部に係止し、又は第一係止凹部が第二係止突起に係止して、前記作動体又はストップ体操作具の外方向への移動が規制される、
ことを特徴とする制動装置付きスライド錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライド錠に関し、より詳しくは、スライド錠の不用意な解錠を防止する制動装置を備えた制動装置付きスライド錠に関する。
【背景技術】
【0002】
不特定の人々が利用する施設にはトイレが設置されている。トイレに設置された各個室の扉や袖パネルには錠が設けられ、使用時に外から扉を開けられることがないように錠を掛けられるようにしてある。個室によっては、子連れの人(以下「保護者」という)が用を足す際に子供を座らせておくためのシートが設置されていることがあり、このようなシートが設けられた個室では、子供をシートに座らせておくことによって、保護者が安心して用を足すことができるというメリットがある。
【0003】
ところが、この種のシートは保護者の目が届きやすい扉の近傍に設置されていることが多く、シートに座った子供が錠をいじっているうちに、誤って解錠されてしまうことがある。このような不用意な解錠を防止するため、本件出願人は、施錠状態にあるロックレバーの一端に被せるスライドロック(制動装置)を備えた打掛錠(制動装置付き打掛錠)を開発した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1記載の発明によれば、打掛錠の不用意な解錠を防止することができるが、当該発明はあくまでも打掛錠であり、その制動装置も打掛錠用のものであるため、当該発明の制動装置をそのままスライド錠に適用することはできない。また、スライド錠の不用意な解錠を効果的に防止する手段は知られていないのが現状であり、その提案が望まれている。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、スライド錠の不用意な解錠を防止できる制動装置付きスライド錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の制動装置付きスライド錠の一つは、ベースに装備された制動体と、前記ラッチに装備された制動受け体を備えている。制動体はプッシャーと作動体とストップ体を備えている。制動受け体はストップ体が嵌入する受け凹部を備えている。ストップ体は受け凹部に嵌入する方向及び受け凹部から脱出する方向に移動できるように作動体に設けられている。この制動装置付きスライド錠では、ラッチが施錠位置にある状態でプッシャーが制動方向に移動すると、プッシャーの移動によって作動体が移動し、その作動体の移動に連動してストップ体が受け凹部内に嵌入してラッチのスライドが規制される。また、ストップ体によってラッチのスライドが規制された状態で、作動体が制動方向と反対方向に移動すると、その作動体の移動に連動してストップ体が受け凹部から脱出し、ラッチの規制が解除される。制動体は、ベースに代えてスライド錠のストライクに設けることもできる。
【0008】
本発明の制動装置付きスライド錠の他の一つは、ベースに装備された制動体と、前記ラッチに装備された制動受け体を備えている。制動体はストップ体操作具とストップ体操作具と連動するストップ体を備えている。制動受け体はストップ体が嵌入する受け凹部を備えている。ストップ体は受け凹部に嵌入する方向及び受け凹部から脱出する方向に移動できるようにストップ体操作具に設けられている。この制動装置付きスライド錠では、ラッチが施錠位置にある状態でストップ体操作具が制動方向に移動すると、ストップ体操作具の移動に連動してストップ体が受け凹部内に嵌入してラッチのスライドが規制される。また、ストップ体によってラッチのスライドが規制された状態で、ストップ体操作具が制動方向と反対方向に移動すると、そのストップ体操作具の移動に連動してストップ体が受け凹部から脱出し、ラッチの規制が解除される。制動体は、ベースに代えてスライド錠のストライクに設けることもできる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の制動装置付きスライド錠は、ラッチのスライドを規制する制動装置を備えているため、スライド錠の不用意な解錠を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】制動装置付きスライド錠の使用状態を示すものであって、(a)はラッチが解錠位置にある場合の正面図、(b)はラッチが施錠位置にある状態の正面図。
【
図2】(a)は
図1(a)のV-V矢視図、(b)は
図1(b)のW-W矢視図。
【
図3】本発明の制動装置付きスライド錠の一例を示す斜視図。
【
図4】(a)(b)は
図3に示す制動装置付きスライド錠のベース及び制動体の構造説明図。
【
図5】(a)(b)は
図3に示す制動装置付きスライド錠のラッチ及び制動受け体の構造説明図。
【
図6】
図3に示す制動装置付きスライド錠の制動操作の手順説明図であって、(a)はラッチを施錠位置にスライドさせた状態を示すもの、(b)はプッシャーを押し込んだ状態を示すもの、(c)は押し込んだプッシャーを離した状態を示すもの。
【
図7】
図3に示す制動装置付きスライド錠の制動体の動作説明図であって、(a)はプッシャーを押し込む前の状態を示すもの、(b)はプッシャーを押し込んだ状態を示すもの、(c)は押し込んだプッシャーを離した状態を示すもの。
【
図8】
図3に示す制動装置付きスライド錠のストップ体の動作説明図であって、(a)はプッシャーを押し込む前の状態を示すもの、(b)はプッシャーを押し込んだ状態を示すもの、(c)は押し込んだプッシャーを離した状態を示すもの。
【
図9】
図3に示す制動装置付きスライド錠のストップ体の動作説明図であって、(a)はストップ体が受け凹部に入る前の状態を示すもの、(b)はストップ体が受け凹部に入った状態を示すもの。
【
図10】
図3に示す制動装置付きスライド錠の解除ピースの動作説明図であって、(a)はプッシャーを押し込む前の状態を示すもの、(b)はプッシャーを押し込んだ状態を示すもの、(c)は押し込んだプッシャーを離した状態を示すもの。
【
図11】ラッチの操作によって規制を解除する場合の手順説明図であって、(a)はラッチが施錠位置にある状態を示すもの、(b)は戻し突起の第一斜面がストップ体に当接するまでラッチを解錠方向にスライドさせた状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図12】ラッチの操作によって規制を解除する場合のストップ体の動作説明図であって、(a)はラッチが施錠位置にある状態を示すもの、(b)は戻し突起の第一斜面がストップ体に当接するまでラッチを解錠方向にスライドさせた状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図13】ラッチの操作によって規制を解除する場合の解除ピースの動作説明図であって、(a)はラッチが施錠位置にある状態を示すもの、(b)は戻し突起の第一斜面がストップ体に当接するまでラッチを解錠方向にスライドさせた状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図14】解除ピースの操作によって規制を解除する場合の手順説明図であって、(a)は解除ピースがピース出入り口から外側に突出した状態を示すもの、(b)は解除ピースをベース本体の装備空間内に押し込んだ状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図15】解除ピースの操作によって規制を解除する場合のストップ体の動作説明図であって、(a)は解除ピースがピース出入り口から外側に突出した状態を示すもの、(b)は解除ピースをベース本体の装備空間内に押し込んだ状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図16】解除ピースの操作によって規制を解除する場合の解除ピースの動作説明図であって、(a)は解除ピースがピース出入り口から外側に突出した状態を示すもの、(b)は解除ピースをベース本体の装備空間内に押し込んだ状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図17】ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の手順及び解除ピースの動作説明図であって、(a)はストップ体が誤動作した状態を示すもの、(b)は戻し突起の第二斜面がストップ体に当接するまでラッチを施錠方向にスライドさせた状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図18】ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合のストップ体の動作説明図であって、(a)はストップ体が誤動作した状態を示すもの、(b)は戻し突起の第二斜面がストップ体に当接するまでラッチを施錠方向にスライドさせた状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図19】(a)(b)は本発明の制動装置付きスライド錠の第二の実施形態のベース及び制動体の構造説明図。
【
図20】(a)(b)は本発明の制動装置付きスライド錠の第三の実施形態のベース及び制動体の構造説明図。
【
図21】制動装置付きスライド錠の使用状態を示すものであって、(a)はラッチが解錠位置にある場合の正面図、(b)はラッチが施錠位置にある状態の正面図。
【
図23】(a)(b)は
図21(a)(b)に示す制動装置付きスライド錠のベースの構造説明図。
【
図24】(a)(b)は
図21(a)(b)に示す制動装置付きスライド錠のラッチ及び制動受け体の構造説明図。
【
図25】(a)(b)は
図21(a)(b)に示す制動装置付きスライド錠のストライク及び制動体の構造説明図。
【
図26】
図21(a)(b)に示す制動装置付きスライド錠の操作説明図であって、(a)はラッチを施錠位置にスライドさせる前の状態を示すもの、(b)はラッチがストライクの係止孔に挿入された状態を示すもの、(c)はプッシャーを押し込んだ状態を示すもの。
【
図27】ラッチの操作によって規制を解除する場合のストップ体の動作説明図であって、(a)はラッチが施錠位置にある状態を示すもの、(b)は戻し突起の第一斜面がストップ体に当接するまでラッチを解錠方向にスライドさせた状態を示すもの、(c)はラッチを解錠位置までスライドさせた状態を示すもの。
【
図28】ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の手順説明図であって、(a)はストップ体が誤動作した状態を示すもの、(b)は戻し突起の第二斜面がストップ体に当接するまでラッチを施錠方向にスライドさせた状態を示すもの、(c)はストップ体の誤動作が解除された状態を示すもの。
【
図29】(a)は本発明の制動装置付きスライド錠の第五の実施形態の構造説明図、(b)は(a)の受け体本体の拡大断面図。
【
図30】(a)は
図29(a)に示す制動装置付きスライド錠の分解側面図、(b)は(a)の受け体本体の拡大断面図。
【
図31】(a)~(c)は
図29(a)に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ストップ体操作具の操作によってラッチのスライドを規制する場合の説明図。
【
図32】(a)~(c)は
図29(a)に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作説明図。
【
図33】(a)~(c)は
図29(a)に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作説明図。
【
図34】(a)は本発明の制動装置付きスライド錠の第六の実施形態の構造説明図、(b)は(a)のストップ体操作具の拡大断面図。
【
図35】(a)~(c)は
図34(a)に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ストップ体操作具の操作によってラッチのスライドを規制する場合の動作説明図。
【
図36】(a)~(e)は
図34(a)に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作説明図。
【
図37】(a)~(c)は
図34(a)に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作説明図。
【
図38】本発明の制動装置付きスライド錠の第七の実施形態の構造説明図。
【
図40】(a)~(c)は
図38に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ストップ体操作具の操作によってラッチのスライドを規制する場合の動作説明図。
【
図41】(a)~(c)は
図38に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作説明図。
【
図42】(a)~(c)は
図38に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作説明図。
【
図43】本発明の制動装置付きスライド錠の第一の改良例の構造説明図。
【
図44】
図43に示す制動装置付きスライド錠を他の角度から見た場合の構造説明図。
【
図45】(a)~(c)は
図43に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、マグネットを用いて操作感を出す場合のストップ体操作具と解除ピースの動作説明図。
【
図46】(a)~(c)は
図43に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、マグネットを用いて操作感を出す場合のストップ体操作具の動作説明図。
【
図47】(a)~(c)は
図43に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ストップ体操作具の嵌合溝が裏蓋の突起を乗り越える前にストップ体操作具から手を離した場合の動作説明図。
【
図48】本発明の制動装置付きスライド錠の第二の改良例の構造説明図。
【
図49】
図48に示す制動装置付きスライド錠を他の角度から見た場合の構造説明図。
【
図50】
図48に示す制動装置付きスライド錠をさらに別の角度から見た場合の構造説明図。
【
図51】(a)~(c)は
図48に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、スプリングを用いて操作感を出す場合のストップ体操作具と解除ピースの動作説明図。
【
図52】(a)~(c)は
図48に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、スプリングを用いて操作感を出す場合のストップ体操作具の動作説明図。
【
図53】(a)~(c)は
図48に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、ストップ体操作具の操作具側係止部がベース内係止部を乗り越える前にストップ体操作具から手を離した場合の動作説明図。
【
図54】本発明の制動装置付きスライド錠の第三の改良例の構造説明図。
【
図55】
図54に示す制動装置付きスライド錠を他の角度から見た場合の構造説明図。
【
図56】(a)~(c)は
図54に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、マグネットを用いて操作感を出す場合のストップ体操作具と解除ピースの動作説明図。
【
図57】(a)~(c)は
図54に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、マグネットを用いて操作感を出す場合のストップ体操作具の動作説明図。
【
図58】本発明の制動装置付きスライド錠の第四の改良例の構造説明図。
【
図59】
図58に示す制動装置付きスライド錠を他の角度から見た場合の構造説明図。
【
図60】(a)~(c)は
図58に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、両解除ピースを同時に押した場合の動作説明図。
【
図61】(a)~(c)は
図58に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、一方の解除ピースのみを押した場合の動作説明図。
【
図62】(a)~(c)はベース側受け凹部と鍔部の角度を
図58に示す制動装置付きスライド錠よりも緩やかにした場合の動作説明図であって、片方の解除ピースを押した場合の動作説明図。
【
図63】(a)(b)はベース側受け凹部と鍔部の角度を
図58に示す制動装置付きスライド錠よりも急にした場合の動作説明図であって、片方の解除ピースを押した場合の動作説明図。
【
図64】(a)~(c)はストップ体操作具に操作具側凹部を設け、装備空間を構成する上下の内壁に係止突起を設けた場合の動作説明図であって、両解除ピースを同時に押した場合の動作説明図。両解除ピースを同時に押した場合の動作説明図。
【
図65】(a)~(c)は
図64に示す制動装置付きスライド錠の動作説明図であって、片方の解除ピースを押した場合の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の制動装置付きスライド錠の実施形態について説明する。本発明の制動装置付きスライド錠は、扉Aや袖パネルBに取付けて使用するものである。ここでは、
図1(a)(b)及び
図2(a)(b)に示すように、扉Aにベース10及びラッチ30を取り付け、袖パネルBにストライク50を取り付けた場合を一例として説明する。なお、本願では、特に断りがない限り、制動装置付きスライド錠を扉A及び袖パネルBに取付けた状態(
図1(a)(b)の状態)を基準に、上下、左右、前後と表現する。
【0012】
(実施形態1)
本発明の制動装置付きスライド錠の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。この実施形態は、制動体20がベース10に設けられた場合の例である。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、
図1(a)~(c)乃至
図3に示すように、扉Aに設置するベース10と、ベース10に装備される制動体20と、ベース10に沿ってスライドするラッチ30と、ラッチ30に装備される制動受け体40と、袖パネルB(
図1(a)(b))に設置されたストライク50を備えている。この実施形態では、制動体20と制動受け体40が制動装置に相当する。
【0013】
図4(a)(b)に示すように、前記ベース10は、ベース本体11とラッチガイド12を備えている。ベース本体11は扉Aや袖パネルBに固定する部分、ラッチガイド12はラッチ30をガイドする部分である。この実施形態では、ベース本体11の長手方向一端側に、制動体20を装備するための装備空間11aが設けられている。ベース本体11の上下両面には、後述する解除ピース25の一部が出入りするピース出入り口11bが開口されている。ベース本体11の上面には、後述するストップ体24が挿通する挿通孔11cが開口されている。ラッチガイド12は、ベース本体11の上側に突出した凸ブロック12aを備えている。凸ブロック12aはベース本体11の長手方向に間隔をあけて二つ設けられている。それぞれの凸ブロック12aの根元側には、後述するラッチ30の係止片31bが係止する係止溝12bが設けられている。
【0014】
前記ベース本体11の装備空間11aには、制動体20が設けられている。この実施形態の制動体20は、プッシャー21と、作動体22と、付勢スプリング23と、ストップ体24と、解除ピース25と、止めピン26と、裏蓋27を備えている。
【0015】
前記プッシャー21は、押し部21aと連結部21bを備えている。押し部21aは操作時に指で押す部分、連結部21bは作動体22との連結時に作動体22の嵌合凹部22aに嵌合する部分である。押し部21aの内面には二つの凹部21cが設けられている。それぞれの凹部21cには付勢スプリング23がセットされている。連結部21bは間隔をあけて対向する二つの突片21dを備えている。両突片21dの先端は山形状である。両突片21dには貫通孔21eが設けられ、その貫通孔21eにストップ体24が配置されている。
【0016】
前記作動体22は、嵌合凹部22aと載置部22bを備えている。嵌合凹部22aはプッシャー21の連結部21bが嵌合する部分、載置部22bは解除ピース25が載置される部分である。嵌合凹部22aには、連結部21bが嵌合されている。嵌合凹部22aは、対向する二つ側壁22cと、両側壁22cの先端側の傾斜面22dを備えている。嵌合凹部22aの両側壁22cには斜めのガイド孔22eが設けられている。前記載置部22bには、ハ字状のガイド突条22fが設けられている。ガイド突条22fは解除ピース25が嵌合する部分である。載置部22bのうち、ガイド突条22fの両外側には、ガイド突条22fよりも低いガイド凹部22gが設けられている。
【0017】
前記ストップ体24は、円柱状(細長のピン状)の胴体部24aとその胴体部24aの先端側の当接面24bを備えている。当接面24bは円錐状に形成されている。胴体部24aの長手方向中央付近には、前記止めピン26を挿通するためのピン孔24cが設けられている。ピン孔24cは胴体部24aの長さ方向に交差する向きに設けられている。
【0018】
前記ストップ体24は、作動体22の嵌合凹部22aに嵌合した連結部21bの貫通孔21e内に配置されている。貫通孔21e内に配置されたストップ体24は、両ガイド孔22eに挿通された止めピン26によって、プッシャー21及び作動体22と連結されている。具体的には、止めピン26が嵌合凹部22aの一方の側壁22cのガイド孔22e-ストップ体24のピン孔24c-嵌合凹部22aの他方の側壁22cのガイド孔22eに挿通されることで、ストップ体24がプッシャー21及び作動体22と連結されている。止めピン26の長手方向両端は、両ガイド孔22eよりも外側に突出しており、ガイド孔22eに沿って移動するようにしてある。止めピン26がガイド孔22eに沿って移動すると、その移動に伴ってストップ体24が前後(図中上下)に進退する。ストップ体24は後述する受け凹部41cに嵌入する位置と当該受け凹部41cから脱出した位置との間で進退するようにしてある。
【0019】
前記解除ピース25は、ピース本体25a、ピース本体25aの底面側に設けられた凹陥部25b、凹陥部25bの両外側に設けられたガイド凸部25c及びピース本体25aの一端側に設けられた押圧部25d、ピース本体25aに設けられた係止段差部25eを備えている。凹陥部25bは載置部22bのガイド突条22fに嵌合する部分、ガイド凸部25cは載置部22bのガイド凹部22gに嵌合する部分、押圧部25dは解除ピース25の操作時に指で押す部分、係止段差部25eはピース出入り口11bの周縁に係止して解除ピース25がベース本体11外に抜け落ちるの防止する部分である。解除ピース25は、このガイド突条22fに沿って往復移動する。この実施形態では、解除ピース25が二つ設けられている。一つはベース10上側のピース出入り口11bから、他の一つはベース10下側のピース出入り口11bから突出可能な位置に設けられている。解除ピース25は二つより多くすることも少なくすることもできる。
【0020】
前記裏蓋27は、装備空間11a内に収容されたプッシャー21、作動体22、付勢スプリング23、ストップ体24、解除ピース25、止めピン26等を押さえるための部材である。この実施形態の裏蓋27は方形状の平板である。裏蓋27は、装備空間11aの周壁部に圧入されてベース本体11に固定される。裏蓋27にはストップ体24の下端側が収まる収まり穴27aが設けられている。
【0021】
前記ラッチ30は、
図5(a)(b)に示すように、ラッチ本体31を備えている。ラッチ本体31はベース11のラッチガイド12に沿ってスライドし、扉Aを施錠又は解錠するものである。ラッチ本体31の裏面には、ラッチガイド12に嵌合するガイド溝31aが設けられている。ガイド溝31aは、ラッチ本体31の裏面側の係止片31bの間に設けられている。係止片31bはラッチガイド12の係止溝12bに係止する部分である。ラッチ本体31の長手方向一端側(施錠方向後方側)には制動受け体40を装備する装備空間32が設けられている。制動受け体40は、ラッチ本体31の長手方向一端側の開口部33から装備空間32内に装備できるようにしてある。ラッチ本体31の長手方向他端側は閉塞されている。
【0022】
前記ラッチ本体31の装備空間32には、制動受け体40が設けられている。この実施形態の制動受け体40は、受け体本体41と、抜止め部42と、付勢スプリング43と、保持具44と、止め具45を備えている。この実施形態では、抜止め部42が二つ、付勢スプリング43が各抜止め部42に二つずつ(合計四つ)設けられている。
【0023】
前記受け体本体41は、基体部41aと基体部41aの端部に設けられた鍔部41bを備えている。基体部41aはラッチ本体31の装備空間32に挿入される部分、鍔部41bはラッチ本体31の開口部33の周縁に係止する部分である。基体部41aの裏面側には、凹陥状に窪んだ受け凹部41cが設けられている。受け凹部41cは、ラッチ30側に進出したストップ体24(
図4(a)(b))が嵌入する部分である。基体部41aの裏面側には、受け凹部41cに連通する連通路41dが設けられている。連通路41dはラッチ30のガイド溝31aに連通している。
【0024】
前記基体部41aには戻し突起41eが設けられている。戻し突起41eは、ラッチ30側に進出したストップ体24を初期位置に押し戻す部分である。戻し突起41eは連通路41dを構成する内壁41hの間に、裏面向きに設けられている。この実施形態の戻し突起41eは、第一斜面(第一戻し部)41f及び第二斜面(第二戻し部)41gを備えた山形状である。戻し突起41eの第一斜面41fは基体部41aの先端面(鍔部41bと反対側の端面)41iよりも内側に収まる位置に設けられ、第二斜面41gは当該基体部41aの先端面41iよりも外側に突出する位置に設けられている。
【0025】
前記基体部41aの裏面側には、二つのガイド片41jが突設されている。両ガイド片41jは連通路41dの周縁に設けられている。両ガイド片41jは互いに対向するようにしてある。
【0026】
前記基体部41aの上下面には、セット孔41kが設けられている。両セット孔41kは抜止め部42が配置される部分である。両セット孔41kは受け凹部41c、連通路41d及びラッチ30のガイド溝31aと連通している。
【0027】
前記抜止め部42は、胴体部42aと胴体部42aの先端に突設された係止部42bを備えている。胴体部42aは受け凹部41cに挿入される部分、係止部42bは受け凹部41cに嵌入したストップ体24が連通路41d及びガイド溝31aに抜けるのを防止する部分である。胴体部42aの係止部42bと反対側の端面には、間隔をあけて二つの凹部42cが設けられている。各凹部42cには、抜止め部42を内向きに付勢する付勢スプリング43がセットされている。
【0028】
前記保持具44は側面保持部44aと裏面保持部44bを備えている。側面保持部44aは受け体本体41の側面を保持する部分、裏面保持部44bは受け体本体41の裏面を保持する部分である。側面保持部44aには止め具45を挿通するための止め具孔44cが二つ設けられている。側面保持部44aは、抜止め部42の係止部42bに宛がわれ、止め具孔44cにねじ込まれた二つの止め具45によって受け体本体41に固定されている。
【0029】
前記裏面保持部44bは、二つの係合突起44dと両係合突起44d間の切欠き部44eを備えている。係合突起44dはラッチ30の嵌合切欠き部31cに係合する部分、切欠き部44eはストップ体24が収まる部分である。切欠き部44eは受け凹部41cと重ならない位置に設けてある。具体的には、両係合突起44dが、基体部41aの両ガイド片41jの外側に位置するようにしてある。
【0030】
前記ストライク50は、施錠方向にスライドされたラッチ30を係止する部材である。この実施形態のストライク50は、扉Aや袖パネルBに固定する固定片50aと、ラッチ30が挿通するラッチ孔が形成された係止片50bを備えたL字状の部材である。この実施形態のストライク50には既存のものを用いることができる。スライド錠の中にはストライク50が不要なものもある。ストライク50は本願発明の必須の構成要件ではない。
【0031】
(実施形態1の動作)
次に、この実施形態の制動装置付きスライド錠の動作について説明する。ここでは、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作1-1)、ラッチ30の操作によって規制を解除する際の動作(動作1-2)、解除ピース25の操作によって規制を解除する際の動作(動作1-3)、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作1-4)、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作1-5)について説明する。なお、本願においてストップ体24の誤動作とは、ラッチ30が解錠位置にあるときに、ストップ体24が嵌入方向に進出している状態をいう。
【0032】
[動作1-1:ラッチのスライドを規制する際の動作]
はじめに、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作1-1)について説明する。
図6(a)~(c)に示すように、この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30が施錠位置にある状態でプッシャー21をベース本体11内に押し込むことによって、ラッチ30のスライドを規制することができる。
【0033】
すなわち、プッシャー21をベース本体11内に押し込むと、作動体22が前進し(
図7(a)(b)、
図8(a)(b)及び
図10(a)(b))、その動きに伴って止めピン26がガイド孔22e内をラッチ30側に移動する(
図7(a)(b)及び
図8(a)(b))。止めピン26がガイド孔22e内をラッチ30側に移動すると、その動きに伴ってストップ体24がラッチ30に近づく方向(受け凹部41cに嵌入する方向)に進出し、受け凹部41cに到達する(
図8(b)(c)及び
図9(a)(b))。受け凹部41cに到達したストップ体24は、抜止め部42の係止部42bによって連通路41d及びガイド溝31aへの抜けが防止され、その結果、ラッチ30のスライドが規制される。
【0034】
このとき、プッシャー21のベース本体11内への押し込みによって作動体22が前進する(
図7(a)(b)、
図8(a)(b)及び
図10(a)(b))と、作動体22の載置部22bに嵌合する解除ピース25が押されてその一部がピース出入り口11bから突出する(
図7(a)~(c)及び
図10(a)~(c))。
【0035】
[動作1-2:ラッチの操作によって規制を解除する際の動作]
次に、ラッチ30の操作によって規制を解除する場合の動作(動作1-2)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を解錠方向に強めにスライドさせることによってその規制を解除することができる。
【0036】
すなわち、施錠位置にあるラッチ30を解錠方向にスライドさせる(
図11(a)(b)及び
図12(a)(b))と、抜止め部42の係止部42bがストップ体24に当接する(
図11(a)及び
図12(a))。この状態でラッチ30をさらに解錠方向に強くスライドさせると、付勢スプリング43の付勢力に抗って抜止め部42が外側に押され、それら両抜止め部42がストップ体24の外側を通過する(
図11(b)及び
図12(b))。両抜止め部42がストップ体24の外側を通過すると、戻し突起41eの第一斜面41fがストップ体24に当接する。第一斜面41fに当接したストップ体24は、その第一斜面41fに押されてラッチ30から離れる方向(受け凹部41cから離脱する方向)に後退する(
図11(c)及び
図12(c))。第一斜面41fに押されたストップ体24が戻し突起41eに干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される。
【0037】
このとき、施錠状態にあるラッチ30をスライドさせることによって、ストップ体24が後退すると(
図11(c)及び
図12(c))、当該ストップ体24を支持する止めピン26にベース10方向の力が働き、止めピン26を支持する作動体22にプッシャー21方向の力が働く。作動体22にプッシャー21方向の力が働くと、作動体22の載置部22bに嵌合する解除ピース25はベース本体11の装備空間11a内に引き戻され、初期位置に復帰する(
図11(c)及び
図13(c))。
【0038】
[動作1-3:解除ピースの操作によって規制を解除する際の動作]
次に、解除ピース25の操作によって規制を解除する場合の動作(動作1-3)について説明する。この実施形態では、ベース本体11のピース出入り口11bから外側に突出する解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し戻すことによってラッチ30の規制を解除することができる。
【0039】
すなわち、ベース本体11のピース出入り口11bから外側に突出する解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し戻すと(
図14(a)(b)及び
図16(a)(b))、解除ピース25が嵌合した作動体22にプッシャー21方向の力が働き、作動体22に係止された止めピン26にベース10方向の力が働く。止めピン26にベース10方向の力が働くと、止めピン26が挿通されたストップ体24にベース10方向への力が働き、ストップ体24が戻し突起41eと干渉しない位置まで後退してストップ体24による規制が解除される(
図15(a)~(c))。
【0040】
[動作1-4:ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作1-4)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を施錠方向にスライドさせることによってストップ体24の誤動作を解除することができる。
【0041】
すなわち、ラッチ30を施錠方向にスライドさせると(
図17(a)(b)及び
図18(a)(b))、戻し突起41eの第二斜面41gがストップ体24の当接面24bに当接する(
図17(b)及び
図18(b))。戻し突起41eの第二斜面41gがストップ体24の当接面24bに当接した状態でラッチ30をさらに施錠方向にスライドさせると、ストップ体24が第二斜面41gに押されてラッチ30から離れる方向に移動する(
図17(b)(c)及び
図18(b)(c))。ストップ体24が第二斜面41gと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24の誤動作が解除される。
【0042】
このとき、解錠状態にあるラッチ30をスライドさせることによって、ストップ体24が後退すると、当該ストップ体24を支持する止めピン26にベース10方向の力が働き(
図18(a)(b))、止めピン26を支持する作動体22にプッシャー21方向の力が働く。作動体22にプッシャー21方向の力が働くと、作動体22の載置部22bに嵌合する解除ピース25がベース本体11の装備空間11a内に引き戻され、、初期位置に復帰する(
図17(b)(c))。
【0043】
[動作1-5:解除ピースの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
最後に、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作1-5)について説明する。この実施形態では、解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し込むことによって、ストップ体24の誤動作を解除することができる。この操作を行った場合のストップ体24及び解除ピース25の動作は前記動作1-3と同様である。
【0044】
(実施形態2)
本発明の制動装置付きスライド錠の第二の実施形態について、
図19(a)(b)を参照して説明する。実施形態1と同様、この実施形態は、制動体20がベース10に設けられた場合の例である。
【0045】
この実施形態の制動装置付きスライド錠の基本的な構造は、実施形態1の制動装置付きスライド錠と同様である。異なるのは、実施形態1では別体であったプッシャー21と作動体22を一体にした(作動体22の機能を備えたプッシャーとした)ことである。実施形態1の作動体22と別体のプッシャー21と区別するため、作動体22の機能を備えたプッシャーのことをストップ体操作具121という。以下では、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、実施形態1と共通する事項については、その説明を省略する。省略した構成の詳細は実施形態1で述べたとおりである。
【0046】
この実施形態のストップ体操作具121は、押し部121aと胴体部121bと載置部121cを備えている。押し部121aは実施形態1の押し部21aに、胴体部121bは実施形態1の突片21d及び側壁22cに、載置部121cは実施形態1の載置部22bに相当する部分である。
【0047】
前記胴体部121bの両側壁121dには、ガイド孔121eが設けられている。ガイド孔121eは止めピン26を挿入するための部分であり、実施形態1のガイド孔22eに相当する部分である。胴体部121bの前面121f及び裏面121gには、貫通孔121hが設けられている。貫通孔121hはストップ体24を配置する部分であり、実施形態1の貫通孔21eに相当する部分である。両側壁121dの先方側には、傾斜面121iが設けられている。傾斜面121iは実施形態1の傾斜面22dに相当する部分である。
【0048】
前記載置部121cには、ハ字状のガイド突条121jが設けられている。ガイド突条121jは解除ピース25が嵌合する部分であり、実施形態1のガイド突条22fに相当する部分である。載置部121cのうち、ガイド突条121jの両外側には、ガイド突条121jよりも低いガイド凹部121kが設けられている。ガイド凹部121kは実施形態1のガイド凹部22gに相当する部分である。なお、この実施形態では、実施形態1の付勢スプリング23及び付勢スプリング23をセットする凹部21cは設けられていない。
【0049】
(実施形態2の動作)
次に、この実施形態の制動装置付きスライド錠の動作について説明する。ここでは、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作2-1)、ラッチ30の操作によって規制を解除する際の動作(動作2-2)、解除ピース25の操作によって規制を解除する際の動作(動作2-3)、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作2-4)、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作2-5)について説明する。
【0050】
[動作2-1:ラッチのスライドを規制する際の動作]
はじめに、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作2-1)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠も、実施形態1と同様の手順(
図6(a)~(c)の手順)でラッチ30のスライドを規制することができる。
【0051】
すなわち、ストップ体操作具121をベース11内に押し込むと、その動きに伴って止めピン26がガイド孔121e内をラッチ30側(前面側)に移動する。止めピン26がガイド孔121e内をラッチ30側に移動すると、その動きに伴ってストップ体24がラッチ30に近づく方向に進出し、受け凹部41cに到達する。受け凹部41cに到達したストップ体24は、抜止め部42の係止部42bによって連通路41d及びガイド溝31aへの抜けが防止され、その結果、ラッチ30のスライドが規制される。
【0052】
このとき、ストップ体操作具121をベース11内に押し込むと、ストップ体操作具121の載置部121cに嵌合する解除ピース25が押されてその一部がピース出入り口11bから突出する。
【0053】
[動作2-2:ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によって規制を解除する場合の動作(動作2-2)について説明する。実施形態1と同様、この実施形態の制動装置付きスライド錠も、ラッチ30を解錠方向に強めにスライドさせることによってその規制を解除することができる。この操作を行った場合、ストップ体24は実施形態1の動作1-2と同様の動作をする。
【0054】
また、施錠状態にあるラッチ30をスライドさせることによって、ストップ体24が後退すると、当該ストップ体24を支持する止めピン26にベース10方向の力が働く。止めピン26にベース10方向の力が働くと、止めピン26を支持するストップ体操作具121に外向きの力が働き、ストップ体操作具121の載置部121cに嵌合する解除ピース25がベース本体11の装備空間11a内に引き戻され、初期位置に復帰する。
【0055】
[動作2-3:解除ピースの操作によって規制を解除する場合の動作]
次に、解除ピース25の操作によって、規制を解除する場合の動作(動作2-3)について説明する。実施形態1と同様、この実施形態の制動装置付きスライド錠も、解除ピース25を操作することによってラッチ30の規制を解除することができる。
【0056】
すなわち、ベース本体11のピース出入り口11bから外側に突出する解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し戻すと、解除ピース25が嵌合したストップ体操作具121に外向きの力が働く。ストップ体操作具121に外向きの力が働くと、ストップ体操作具121に係止された止めピン26にベース10方向の力が働く。止めピン26にベース10方向の力が働くと、止めピン26が挿通されたストップ体24にベース10方向の力が働き、ストップ体24が戻し突起41eと干渉しない位置まで後退してストップ体24による規制が解除される。
【0057】
[動作2-4:ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作2-4)について説明する。実施形態1と同様、この実施形態の制動装置付きスライド錠も、ラッチ30を解錠方向にスライドさせることによってその誤規制を解除することができる。この操作を行った場合、ストップ体24は実施形態1の動作1-4と同様の動作をする。
【0058】
また、解錠状態にあるラッチ30をスライドさせることによって、ストップ体24が後退すると、ストップ体24を支持する止めピン26にベース10方向の力が働く。止めピン26にベース10方向の力が働くと、止めピン26を支持するストップ体操作具121に外向きの力が働く。ストップ体操作具121に外向きの力が働くと、ストップ体操作具121の載置部121cに嵌合する解除ピース25がベース本体11の装備空間11a内に引き戻され、初期位置に復帰する。
【0059】
[動作2-5:解除ピースの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
最後に、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作2-5)について説明する。この実施形態では、解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し込むことによって、ストップ体24の誤動作を解除することができる。この操作を行った場合のストップ体24及び解除ピース25の動作は前記動作2-3と同様である。
【0060】
(実施形態3)
本発明の制動装置付きスライド錠の第三の実施形態について、
図20(a)(b)を参照して説明する。実施形態1及び2と同様、この実施形態も、制動体20がベース10に設けられた場合の例である。
【0061】
この実施形態の制動装置付きスライド錠の基本的な構造は、実施形態2の制動装置付きスライド錠と同様である。異なるのは、実施形態2に設けられていた解除ピース25を省略したことである。以下では、実施形態2と異なる部分を中心に説明し、実施形態2と共通する事項については、その説明を省略する。省略した構成の詳細は実施形態1及び2で述べたとおりである。
【0062】
この実施形態のストップ体操作具121は、押し部121aと胴体部121bを備えている。実施形態2と異なり、この実施形態では解除ピース25が省略されているため、解除ピース25を載置する載置部121cに相当する構成を備えていない。また、ベース本体11は、解除ピース25が突出するピース出入り口11bに相当する構成を備えていない。
【0063】
(実施形態3の動作)
次に、この実施形態の制動装置付きスライド錠の動作について説明する。ここでは、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作3-1)、ラッチ30の操作によって規制を解除する際の動作(動作3-2)、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作3-3)について説明する。なお、この実施形態の制動装置付きスライド錠は、解除ピース25を備えていないため、解除ピース25の操作によって規制を解除したり、ストップ体24の誤動作を解除したりすることはできない。
【0064】
[動作3-1:ラッチのスライドを規制する際の動作]
はじめに、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作3-1)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠も、実施形態1と同様の手順でラッチ30のスライドを規制することができる。前記操作を行った場合のストップ体24の動作は、前記実施形態2の動作2-1と同様である。
【0065】
[動作3-2:ラッチの操作によって規制を解除する際の動作]
次に、ラッチ30の操作によって規制を解除する場合の動作(動作3-2)について説明する。実施形態1及び2と同様、この実施形態の制動装置付きスライド錠も、ラッチ30を解錠方向に強めにスライドさせることによってその規制を解除することができる。この操作を行った場合のストップ体24の動作は、実施形態1の動作1-2及び実施形態2の動作2-2と同様である。
【0066】
[動作3-3:ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する際の動作]
最後に、ラッチ30の操作によって、ストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作3-3)について説明する。実施形態1及び2と同様、この実施形態の制動装置付きスライド錠も、ラッチ30を解錠方向にスライドさせることによってストップ体の誤動作を解除することができる。この操作を行った場合のストップ体24の動作は、実施形態1の動作1-4及び実施形態2の動作2-4と同様である。
【0067】
(実施形態4)
本発明の制動装置付きスライド錠の第四の実施形態について、
図21(a)(b)乃至
図28(a)(b)を参照して説明する。実施形態1~3とは異なり、この実施形態は、制動体20がストライク50に設けられた場合の例である。
【0068】
この実施形態の制動装置付きスライド錠は、
図21(a)(b)及び
図22(a)(b)に示すように、扉Aに設置されたベース10と、ベース10に沿ってスライドするラッチ30と、ラッチ30に装備された制動受け体40と、袖パネルBに設置されたストライク50と、ストライク50に装備された制動体20を備えている。
【0069】
図23(a)(b)に示すように、前記ベース10は、ベース本体11とラッチガイド12を備えている。ベース本体11は扉Aや袖パネルBに固定する部分、ラッチガイド12はラッチ30をガイドする部分である。ラッチガイド12は、ベース本体11の上側に突出した凸ブロック12aを備えている。凸ブロック12aはベース本体11の長手方向に間隔をあけて二つ設けられている。それぞれの凸ブロック12aの根元側には、後述するラッチ30の係止片31bが係止する係止溝12bが設けられている。
【0070】
前記ラッチ30は、
図24(a)(b)に示すように、ラッチ本体31を備えている。ラッチ本体31はベース11のラッチガイド12に沿ってスライドし、扉Aを施錠又は解錠するものである。この実施形態のラッチ本体31の基本的な構造は、実施形態1~3のラッチ本体31と同様である。異なるのは、実施形態1~3のラッチ本体31とは左右が反対であることである。ラッチ30の構造の詳細については、実施形態1において説明済みであるため、ここではその説明を省略する。
【0071】
前記ラッチ本体31の装備空間32には、制動受け体40が設けられている。この実施形態の制動受け体40は、
図24(a)(b)に示すように、受け体本体41と、抜止め部42と、付勢スプリング43と、保持具44と、止め具45を備えている。
【0072】
実施形態1と同様、前記受け体本体41は、基体部41aと基体部41aの端部に設けられた鍔部41bを備えている。基体部41aはラッチ本体31の装備空間32に挿入される部分、鍔部41bはラッチ本体31の開口部33の周縁に係止する部分である。基体部41aの裏面側には、凹陥状に窪んだ受け凹部41cが設けられている。受け凹部41cは、ラッチ30側に進出したストップ体24(
図4(a)(b))が嵌入する部分である。基体部41aの裏面側には、受け凹部41cに連通する連通路41dが設けられている。この実施形態の連通路41dは、基体部41aの裏面側から一方の側面(後述する保持具44の側面保持部44aが宛がわれる面)にかけて形成されている。連通路41dはラッチ30のガイド溝31aに連通している。
【0073】
前記基体部41aには戻し突起41e(
図24(b)、
図26(a)~(c))が設けられている。戻し突起41eは、ラッチ30側に進出したストップ体24を初期位置に押し戻す部分である。戻し突起41eは連通路41dを構成する内壁41hの間に、裏面向きに設けられている。この実施形態の戻し突起41eは、第一斜面41f及び第二斜面41gを備えた山形状である。第一斜面41f及び第二斜面41gは基体部41aの両端面よりも内側に収まる位置に設けられている。
【0074】
前記基体部41aの裏面側には、二つのガイド片41jが突設されている。両ガイド片41jは連通路41dの周縁に設けられている。両ガイド片41jは互いに対向するようにしてある。
【0075】
前記基体部41aの上下面には、セット孔41kが設けられている。両セット孔41kは抜止め部42が配置される部分である。両セット孔41kは受け凹部41c、連通路41d及びラッチ30のガイド溝31aと連通している。
【0076】
前記抜止め部42は、胴体部42aと胴体部42aの先端に突設された係止部42bを備えている。胴体部42aは受け凹部41cに挿入される部分、係止部42bは受け凹部41cに嵌入したストップ体24が連通路41d及びガイド溝31aに抜けるのを防止する部分である。胴体部42aの係止部42bと反対側の端面には、間隔をあけて二つの凹部42cが設けられている。各凹部42cには、抜止め部42を内向きに付勢する付勢スプリング43がセットされている。
【0077】
前記保持具44は側面保持部44aと裏面保持部44bを備えている。側面保持部44aは受け体本体41の側面を保持する部分、裏面保持部44bは受け体本体41の裏面を保持する部分である。側面保持部44aには止め具45を挿通するための止め具孔44cが二つ設けられている。側面保持部44aは、抜止め部42の係止部42bに宛がわれ、止め具孔44cにねじ込まれた二つの止め具45によって受け体本体41に固定されている。
【0078】
前記裏面保持部44bは、二つの係合突起44dと両係合突起44d間の切欠き部44eを備えている。係合突起44dはラッチ30の嵌合切欠き部31cに係合する部分、切欠き部44eはストップ体24が収まる部分である。この実施形態の切欠き部44eは裏面保持部44bのみならず、裏面保持部44bから側面保持部44aにかけて形成されている。切欠き部44eは受け凹部41c及び連通路41dと重ならない位置に設けてある。具体的には、両係合突起44dが、基体部41aの両ガイド片41jの外側に位置するようにしてある。
【0079】
前記ストライク50は、施錠方向にスライドされたラッチ30を係止する部材である。この実施形態のストライク50は、
図25(a)(b)に示すように、門型形状の基体部51と、基体部51の端部に上下方向に突設された止め片52を備えている。基体部51はラッチ30を係止する部分、止め片52は袖パネルBに宛がってねじ止めされる部分である。基体部51には、ラッチ30が進入する係止孔53と、ストップ体操作具121、ストップ体24、止めピン26及び裏蓋27が収まる装備空間54が設けられている。係止孔53はラッチ30のスライド方向に貫通するように設けられている。係止孔53と装備空間54の間の仕切り壁55には、ストップ体24が挿通する挿通孔55a(
図26(a)、
図27(c)、
図28(a))が設けられている。それぞれの止め片52には、ストライク50の固定に用いる止め具(図示しない)を挿通する貫通孔52aが設けられている。
【0080】
前記ストップ体操作具121の構造は実施形態3の場合と同様である。ストップ体操作具121の基本構造については実施形態3で説明済みであるため、ここではその説明を省略する。
【0081】
前記ストップ体24、止めピン26及び裏蓋27の基本的な構造は実施形態1の場合と同様である。これらの具体的な構造については実施形態1及び3において説明済みであるため、ここではその説明を省略する。
【0082】
(実施形態4の動作)
次に、この実施形態の制動装置付きスライド錠の動作について説明する。ここでは、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作4-1)、ラッチ30の操作によって規制を解除する際の動作(動作4-2)、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作4-3)について説明する。なお、この実施形態の制動装置付きスライド錠は、解除ピース25を備えていないため、解除ピース25の操作によってラッチ30の規制や誤規制を解除することはできない。
【0083】
[動作4-1:ラッチのスライドを規制する際の動作]
はじめに、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作4-1)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30が施錠位置にある状態でストップ体操作具121をストライク50内に押し込むことによって、ラッチ30のスライドを規制することができる。
【0084】
すなわち、解錠位置にあるラッチ30(
図26(a))を施錠方向にスライドさせた状態(
図26(b))でストップ体操作具121をストライク50の基体部51内に押し込むと、その動きに伴って止めピン26がガイド孔22e内をラッチ30側に移動する。止めピン26がガイド孔22e内をラッチ30側に移動すると、その動きに伴ってストップ体24がラッチ30側に進出し、受け凹部41cに到達する(
図26(b)(c))。受け凹部41cに到達したストップ体24は、抜止め部42の係止部42bによって連通路41d及びガイド溝31aへの抜けが防止され、その結果、ラッチ30のスライドが規制される。
【0085】
[動作4-2:ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によって規制を解除する場合の動作(動作4-2)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を解錠方向に強めにスライドさせることによってその規制を解除することができる。
【0086】
すなわち、施錠位置にあるラッチ30(
図27(a))を解錠方向にスライドさせると、抜止め部42の係止部42bがストップ体24に当接する(
図27(b))。係止部42bがストップ体24に当接した状態でラッチ30をさらに解錠方向にスライドさせると、付勢スプリング43の付勢力に抗って抜止め部42が外側に押され、両抜止め部42がストップ体24を乗り越えてストップ体24の外側を通過する。両抜止め部42がストップ体24の外側を通過すると、戻し突起41eの第一斜面41fがストップ体24に当接する。第一斜面41fに当接したストップ体24は、その第一斜面41fに押されてラッチ30から離れる方向に後退する(
図27(c))。ストップ体24が戻し突起41eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される。
【0087】
[動作4-3:ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作4-3)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を解錠方向にスライドさせることによってストップ体24の誤動作を解除することができる。
【0088】
すなわち、解錠位置にあるラッチ30(
図28(a))を施錠方向にスライドさせると、戻し突起41eの第二斜面41gがストップ体24の当接面24bに当接する(
図28(b))。戻し突起41eの第二斜面41gがストップ体24の当接面24bに当接した状態でラッチ30をさらに施錠方向にスライドさせると、ストップ体24がラッチ30から離れる方向に移動する(
図28(c))。ストップ体24が第二斜面41gに押されて、戻し突起41eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される。
【0089】
(実施形態5)
本発明の制動装置付きスライド錠の第五の実施形態について、
図29(a)(b)乃至
図33(a)~(c)を参照して説明する。この実施形態は、付勢スプリング43で内向きに付勢された抜止め部42を省略し、戻し突起41eによって受け凹部42cに嵌入されたストップ体24の抜けを規制するようにした場合の例である。以下では、前記各実施形態と異なる部分を中心に説明し、前記各実施形態と共通する事項については、同一の符号を付してその説明を省略する。省略した構成の詳細は前記各実施形態で述べたとおりである。
【0090】
図29(a)に示すように、この実施形態の制動装置付きスライド錠の制動受け体40は、受け体本体41と、保持具44と、止め具45を備えている。受け体本体41は、基体部41aと基体部41aの端部に設けられた鍔部41bを備えている。基体部41aはラッチ本体31の装備空間32に挿入される部分、鍔部41bはラッチ本体31の開口部33の周縁に係止する部分である。
【0091】
図29(b)に示すように、基体部41aの裏面側には、凹陥状に窪んだ受け凹部41cが設けられている。受け凹部41cは、ラッチ30側に進出したストップ体24が嵌入する部分である。基体部41aの裏面側には、受け凹部41cに連通する連通路41dが設けられている。連通路41dはラッチ30のガイド溝31aに連通している。
【0092】
図30(a)(b)に示すように、前記基体部41aには戻し突起41eが設けられている。この実施形態の戻し突起41eは、ラッチ30側に進出したストップ体24を初期位置に押し戻す部分であるとともに、ラッチ30のスライドを規制する部分でもある。戻し突起41eは連通路41dを構成する内壁41h(
図29(b))の間に、裏面向きに設けられている。この実施形態の戻し突起41eは、第一斜面41f及び第二斜面41gを備えた山形状である。第一斜面41f及び第二斜面41gは基体部41aの両端面よりも内側に収まる位置に設けられている。
【0093】
この実施形態では、第一斜面41fの勾配を第二斜面41gの勾配よりもきつくして、勾配差を持たせてある。第一斜面41fと第二斜面41gの勾配は、最適な角度を検証の上設定することができる。第一斜面41fと第二斜面41gの勾配は同じ角度とすることもできる。
【0094】
この実施形態のストップ体24の当接面24bは山形状であり、規制時に第一斜面41fと対向するストップ体第一斜面24dと、誤動作解除時に第二斜面41gと対向するストップ体第二斜面24eを備えている。ストップ体第一斜面24dは第一斜面41fと同じ勾配としてあり、ストップ体第二斜面24eは第二斜面41gと同じ勾配としてある。ストップ体第一斜面24d及びストップ体第二斜面24eの勾配は、第一斜面41f及び第二斜面41gに応じて設定することができる。
【0095】
なお、前記実施形態1~4と異なり、この実施形態では、裏蓋27の上面に突起(第二係止部)27bが、ストップ体操作具121の底面に当該突起27bが嵌合する嵌合溝(第一係止部)121rが設けられている。また、それぞれの解除ピース25には吸着体としてマグネット25fが埋設されている。これらについては、後記改良例1において詳細に説明する。
【0096】
(実施形態5の動作)
次に、この実施形態の制動装置付きスライド錠の動作について説明する。ここでは、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作5-1)、ラッチ30の操作によって規制を解除する際の動作(動作5-2)、解除ピース25の操作によって規制を解除する際の動作(動作5-3)、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作5-4)、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作5-5)について説明する。
【0097】
[動作5-1:ラッチのスライドを規制する際の動作]
はじめに、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作5-1)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30が施錠位置にある状態でストップ体操作具121をベース本体11内に押し込むことによって、ラッチ30のスライドを規制することができる。
【0098】
すなわち、解錠位置にあるラッチ30を施錠方向にスライドさせた状態(
図31(a))でストップ体操作具121をベース本体11内に押し込むと、その動きに伴って止めピン26がガイド孔121e内をラッチ30側に移動する(
図31(b))。止めピン26がガイド孔121e内をラッチ30側に移動すると、その動きに伴ってストップ体24が受け凹部41cに進入して、ラッチ30のスライドが規制される(
図31(c))。
【0099】
[動作5-2:ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によって規制を解除する場合の動作(動作5-2)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を解錠方向に強めにスライドさせることによってその規制を解除することができる。
【0100】
すなわち、施錠位置にあるラッチ30(
図32(a))を解錠方向(
図32(a)~(c)の左方向)にスライドさせると、ストップ体24が第一斜面41fで押されて、ストップ体24がラッチ30から離れる方向に移動する(
図32(b))。ストップ体24がさらに同方向に移動して戻し突起41eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される(
図32(c))。
【0101】
[動作5-3:解除ピースの操作によって規制を解除する際の動作]
次に、解除ピース25の操作によって規制を解除する場合の動作(動作5-3)について説明する。この実施形態では、ベース本体11のピース出入り口11bから外側に突出する解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し戻すことによってラッチ30の規制を解除することができる。
【0102】
すなわち、ベース本体11のピース出入り口11bから外側に突出する解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し戻すと、解除ピース25が嵌合したストップ体操作具121に外向きの力が働き、ストップ体操作具121に係止された止めピン26にベース10方向の力が働く。止めピン26にベース10方向の力が働くと、止めピン26が挿通されたストップ体24にベース10方向の力が働き、ストップ体24が戻し突起41eと干渉しない位置まで後退してストップ体24による規制が解除される。
【0103】
[動作5-4:ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作5-4)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を施錠方向にスライドさせることによってストップ体24の誤動作を解除することができる。
【0104】
すなわち、戻し突起41eの第二斜面41gとストップ体24のストップ体第二斜面24eが当接した状態(
図33(a))でラッチ30を施錠方向(
図33(a)~(c)の右方向)にスライドさせると、ストップ体24がラッチ30から離れる方向に移動する(
図33(b))。ストップ体24が第二斜面41gに押されて、戻し突起41eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24の誤動作が解除される(
図33(c))。
【0105】
[動作5-5:解除ピースの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
最後に、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作5-5)について説明する。この実施形態では、解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し込むことによって、ストップ体24の誤動作を解除することができる。この操作を行った場合のストップ体24の動作は前記動作5-4と同様である。
【0106】
(実施形態6)
本発明の制動装置付きスライド錠の第六の実施形態について、
図34(a)(b)乃至
図37(a)~(c)を参照して説明する。この実施形態の基本的な構成は実施形態5の制動装置付きスライド錠と同様である。異なるのは、止めピン26を用いることなく、ストップ体24を進退するようにしたことである。以下では、前記各実施形態と異なる部分を中心に説明し、前記各実施形態と共通する事項については同一の符号を付してその説明を省略する。省略した構成の詳細は前記各実施形態で述べたとおりである。
【0107】
図34(a)(b)に示すように、この実施形態のストップ体24は、角柱状の胴体部24aと、その胴体部24aの先端側に設けられた当接面24bと、胴体部24aの後端側に設けられたガイド突起24hを備えている。ガイド突起24hのストップ体操作具121に対向する位置には、当接傾斜面24iが設けられている。なお、この実施形態では、前記各実施形態の止めピン26に相当する部材はないため、胴体部24aにピン孔24cは設けられていない。
【0108】
図34(a)(b)に示すように、この実施形態のストップ体操作具121は、押し部121aと胴体部121bを備えている。胴体部121aの前面121f及び裏面121gには、ストップ体24が配置されるストップ体配置凹部121vが設けられている。ストップ体配置凹部121vは他の実施形態の貫通孔121hに相当する部分である。
【0109】
図34(b)に示すように、ストップ体配置凹部121vを構成する周壁には、斜め傾斜のガイド傾斜面121pが設けられている。ストップ体配置凹部121v内に配置されたストップ体24は、その当接傾斜面24iがガイド傾斜面121pに当接し、当該ガイド傾斜面121pに沿って進退するようにしてある。
【0110】
なお、前記実施形態1~5と異なり、この実施形態も、裏蓋27の上面に突起(第二係止部)27bが、ストップ体操作具121の底面に当該突起27bが嵌合する嵌合溝(第一係止部)121rが設けられている。また、それぞれの解除ピース25には吸着体としてマグネット25fが埋設されている。これらについては、後記改良例1において詳細に説明する。
【0111】
(実施形態6の動作)
次に、この実施形態の制動装置付きスライド錠の動作について説明する。ここでは、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作6-1)、ラッチ30の操作によって規制を解除する際の動作(動作6-2)、解除ピース25の操作によって規制を解除する際の動作(動作6-3)、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作6-4)、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作6-5)について説明する。なお、この実施形態の解除ピース25はストップ体操作具121を元の位置に復帰させるために用いるものであるため、解除ピース25の操作だけでは規制の解除や誤動作の解除はできず、規制や誤動作の解除のためには、解除ピース25の操作後に、ラッチ30を解錠方向にスライドさせる必要がある。
【0112】
[動作6-1:ラッチのスライドを規制する際の動作]
はじめに、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作6-1)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30が施錠位置にある状態でストップ体操作具121をベース本体11内に押し込むことによって、ラッチ30のスライドを規制することができる。
【0113】
すなわち、解錠位置にあるラッチ30を施錠方向にスライドさせた状態(
図35(a))でストップ体操作具121をベース本体11内に押し込むと、ストップ体操作具121のガイド傾斜面121pによってストップ体24がラッチ30側に進出し(
図35(b))、そのストップ体24がラッチ30側の受け凹部41cに嵌入することで、ラッチ30のスライドが規制される(
図35(c))。
【0114】
[動作6-2:ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によって規制を解除する場合の動作(動作6-2)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を解錠方向に強めにスライドさせることによってその規制を解除することができる。
【0115】
すなわち、施錠位置にあるラッチ30を解錠方向にスライドさせると、ストップ体24が第一斜面41fで押されて、ラッチ30から離れる方向に移動する。ストップ体24がさらに同方向に移動して戻し突起41eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される。
【0116】
[動作6-3:解除ピースの操作によって規制を解除する際の動作]
次に、解除ピース25の操作によって規制を解除する場合の動作(動作6-3)について説明する。この実施形態では、ベース本体11のピース出入り口11bから外側に突出する解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し戻すことによってラッチ30の規制を解除することができる。ただし、この実施形態では解除ピース25の操作だけでは規制を解除することはできず、解除ピース25の操作後にラッチ30を解錠方向にスライドさせる必要がある。
【0117】
すなわち、ベース本体11のピース出入り口11bから外側に突出する解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し戻すと、解除ピース25が嵌合したストップ体操作具121に外向きの力が働く(
図36(a)(b))。両解除ピース25を一番奥まで押し戻すと、ストップ体操作具121が裏蓋27の突起27bを乗り越えて初期位置に復帰する(
図36(c))。
【0118】
前記
図36(c)の状態で、ラッチ30を解錠方向(
図36(a)~(e)の左方向)にスライドさせて、戻し突起41eの第一斜面41fによってストップ体24をベース10側に後退させ(
図36(d))、ラッチ30を解錠方向へ更にスライドさせて、ストップ体24を戻し突起41eと干渉しない位置まで後退させることで、ストップ体24を元の位置に復帰させて規制を解除することができる(
図36(e))。
【0119】
[動作6-4:ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作6-4)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を施錠方向にスライドさせることによってストップ体24の誤動作を解除することができる。
【0120】
すなわち、戻し突起41eの第二斜面41gとストップ体24のストップ体第二斜面24eが当接した状態(
図37(a))でラッチ30を施錠方向(
図37(a)~(c)の右方向)にスライドさせると、ストップ体24がラッチ30から離れる方向に移動する(
図37(b))。ストップ体24が第二斜面41gに押されて、戻し突起41eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される(
図37(c))。
【0121】
[動作6-5:解除ピースの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
最後に、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作6-5)について説明する。この実施形態では、解除ピース25をベース本体11の装備空間11a内に押し込むことによって、ストップ体24の誤動作を解除したのち、ラッチ30を解錠方向にスライドさせて、ストップ体24を戻し突起41eと干渉しない位置まで後退させることによって、ストップ体24の誤動作を解除することができる。この操作を行った場合のストップ体操作具121及びストップ体24の動作は前記動作6-4と同様である。ただし、この実施形態では解除ピース25の操作だけでは誤動作を解除することはできず、解除ピース25の操作後にラッチ30を解錠方向にスライドさせる必要がある。
【0122】
(実施形態7)
本発明の制動装置付きスライド錠の第七の実施形態について、
図38乃至
図42(a)~(c)を参照して説明する。この実施形態は、ベース10に制動受け体40が、ラッチ30に制動体20が設けられた場合の例である。この実施形態の制動受け体40はベース10の一部として構成されている。以下では、前記各実施形態と異なる部分を中心に説明し、前記各実施形態と共通する事項についてはその説明を省略する。省略した構成の詳細は前記各実施形態で述べたとおりである。
【0123】
図38に示すように、この実施形態のベース10には、前記各実施形態の受け凹部41cに相当する受け凹部(以下「ベース側受け凹部」という)11dが設けられている。ベース側受け凹部11dはベース本体11の前面側の端部に設けられている。
【0124】
この実施形態のベース側受け凹部11dには、前記各実施形態の戻し突起41eに相当するベース側係止突起11eが設けられている。
図38及び
図39に示すように、ベース側係止突起11eは、前記各実施形態の第一斜面41fに相当するベース側第一斜面11fと、前記各実施形態の第二斜面41gに相当するベース側第二斜面11gを備えている。
【0125】
図39に示すように、この実施形態では、ベース側第一斜面11fの勾配をベース側第二斜面11gの勾配よりもきつくして、勾配差を持たせてある。ベース側第一斜面11fとベース側第二斜面11gの勾配は、最適な角度を検証の上設定することができる。ベース側第一斜面11fとベース側第二斜面11gの勾配は同じ角度とすることもできる。
【0126】
図38及び
図39に示すように、この実施形態の制動体20は、ストップ体操作具121と、ストップ体24と、解除ピース25と、止めピン26と、裏蓋27と、収容体28を備えている。ストップ体操作具121、ストップ体24、解除ピース25及び止めピン26は、収容体28内に収容され、それら部材は、収容体28の裏面に取り付けられた裏蓋27で抑えられている。裏蓋27は止め具29で収容体28に固定されている。
【0127】
この実施形態のストップ体操作具121は、押し部121aと胴体部121bを備えている。前記胴体部121bの両側壁121dには、ガイド孔121eが設けられている。ガイド孔121eは止めピン26を挿入するための部分である。
【0128】
胴体部121bの前面121f及び裏面121gには、貫通孔121hが設けられている。貫通孔121hはストップ体24を配置する部分である。両側壁121dの先方側には、傾斜面121iが設けられている。傾斜面121iには傾斜面スリット121mが設けられている。
【0129】
前記ストップ体24は、柱状(細長のピン状)の胴体部24aとその胴体部24aの先端側の当接面24bを備えている。当接面24bはベース10側の端部に設けられている。
図39に示すように、この実施形態の当接面24bは山形状であり、規制解除時にベース側第一斜面11fと対向するストップ体第一斜面24dと、誤動作解除時にベース側第二斜面11gと対向するストップ体第二斜面24eを備えている。
【0130】
ストップ体第一斜面24dは第一斜面41fと同じ勾配としてあり、ストップ体第二斜面24eは第二斜面41gと同じ勾配としてある。ストップ体第一斜面24d及びストップ体第二斜面24eの勾配は、第一斜面41f及び第二斜面41gに応じて設定することができる。
【0131】
前記裏蓋27は、収容体28の裏面側の開口部を閉塞する部材である。この実施形態の裏蓋27には、ストップ体24が通過可能な収まり穴27aが設けられている。この実施形態の収まり穴27aは肉厚方向に貫通する貫通孔である。
【0132】
図38に示すように、前記収容体28は、収容体本体28aと、収容体本体28aの内側に形成された装備空間28bを備えている。収容体本体28aには、ストップ体操作具121が出入りする操作具用開口部28cと、解除ピース25が出入りするピース用開口部28dが設けられている。装備空間28bには、ストップ体操作具121、ストップ体24、解除ピース25及び止めピン26が収容され、それら各部材は収容体本体28aの裏面側に取り付けられた裏蓋27で保持されている。装備空間28bに収容されたストップ体操作具121は操作具用開口部28cから、解除ピース25はピース用開口部28dから出入りできるようにしてある。
【0133】
図38及び
図39に示すように、この実施形態のラッチ30には、他の実施形態のピース出入り口11bに相当する開口31dが設けられている。開口31dはラッチ30の上下面に一つずつ設けられている。各開口31dは、収容体28のピース用開口部28dと連通する位置に設けられている。
【0134】
なお、前記実施形態5と同様、この実施形態では、裏蓋27の上面に突起27bが、ストップ体操作具121の底面に当該突起27bが嵌合する嵌合溝121rが設けられている。また、それぞれの解除ピース25には吸着体としてマグネット25fが埋設されている。これらについては、後記改良例1において詳細に説明する。
【0135】
(実施形態7の動作)
次に、この実施形態の制動装置付きスライド錠の動作について説明する。ここでは、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作7-1)、ラッチ30の操作によって規制を解除する際の動作(動作7-2)、解除ピース25の操作によって規制を解除する際の動作(動作7-3)、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作7-4)、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する際の動作(動作7-5)について説明する。
【0136】
[動作7-1:ラッチのスライドを規制する際の動作]
はじめに、ラッチ30のスライドを規制する際の動作(動作7-1)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30が施錠位置にある状態でストップ体操作具121をラッチ本体31内に押し込むことによって、ラッチ30のスライドを規制することができる。
【0137】
すなわち、解錠位置にあるラッチ30を施錠方向にスライドさせた状態(
図40(a))でストップ体操作具121をラッチ本体31内に押し込むと、その動きに伴って止めピン26がガイド孔121e内をベース10側に移動し(
図40(b))、その動きに伴ってストップ体24が受け凹部11dに進入して、ラッチ30のスライドが規制される(
図40(c))。
【0138】
[動作7-2:ラッチの操作によって規制を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によって規制を解除する場合の動作(動作7-2)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を解錠方向に強めにスライドさせることによってその規制を解除することができる。
【0139】
すなわち、施錠位置にあるラッチ30(
図41(a))を解錠方向(
図41(a)~(c)の左方向)にスライドさせると、ストップ体24がベース側第一斜面11fで押されて、ストップ体24がベース10から離れる方向に移動する(
図41(b))。ストップ体24がさらに同方向に移動してベース側係止突起11eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される(
図41(c))。
【0140】
[動作7-3:解除ピースの操作によって規制を解除する際の動作]
次に、解除ピース25の操作によって規制を解除する場合の動作(動作7-3)について説明する。この実施形態では、収容体本体28aのピース用開口部28dから外側に突出する解除ピース25を収容体28(収容体本体28a)の装備空間28b内に押し戻すことによってラッチ30の規制を解除することができる。
【0141】
すなわち、収容体本体28aのピース用開口部28dから外側に突出する解除ピース25を収容体本体28aの装備空間28b内に押し戻すと、解除ピース25によってストップ体操作具121に外向きの力が働く。ストップ体操作具121に外向きの力が働くと、ストップ体操作具121に係止された止めピン26にラッチ30方向の力が働く。止めピン26にラッチ30方向の力が働くと、止めピン26が挿通されたストップ体24にラッチ30方向の力が働き、ストップ体24がベース側係止突起11eと干渉しない位置まで後退してストップ体24による規制が解除される。
【0142】
[動作7-4:ラッチの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
次に、ラッチ30の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作7-4)について説明する。この実施形態の制動装置付きスライド錠は、ラッチ30を施錠方向にスライドさせることによってストップ体24の誤動作を解除することができる。
【0143】
すなわち、ベース側係止突起11eのベース側第二斜面11gとストップ体24のストップ体第二斜面24eが当接した状態(
図42(a))でラッチ30を施錠方向(
図42(a)~(c)の右方向)にスライドさせると、ストップ体24がベース10から離れる方向に移動する(
図42(b))。ストップ体24がベース側第二斜面11gに押されて、ベース側係止突起11eと干渉しない位置まで後退すると、ストップ体24による規制が解除される(
図42(c))。
【0144】
[動作7-5:解除ピースの操作によってストップ体の誤動作を解除する場合の動作]
最後に、解除ピース25の操作によってストップ体24の誤動作を解除する場合の動作(動作7-5)について説明する。この実施形態では、解除ピース25を収容体本体28aの装備空間28b内に押し込むことによって、ストップ体24の誤動作を解除することができる。この操作を行った場合のストップ体24の動作は前記動作7-4と同様である。
【0145】
(その他の実施形態)
前記実施形態4の制動体20は解除ピース25を備えていないものであるが、ストライク50に装備される制動体20は、実施形態1及び2のような解除ピース25を備えたものであってもよい。この場合、ストライク50の基体部51には、実施形態1及び2のピース出入り口11b及び挿通孔11cに相当する構成を設ける。ストップ体操作具121としては、実施形態2と同様のものを用いることができる。
【0146】
前記実施形態4では、制動体20がストップ体操作具121を備えたものである場合を一例としているが、制動体20は、実施形態1のようなプッシャー21と作動体22を備えたものとすることもできる。この場合、プッシャー21と作動体22は実施形態1と同様のものを用いることができる。この場合の動作は、実施形態1の場合と同様である。
【0147】
前記各実施形態の構成は、適宜他の実施形態の構成として採用することができる。
【0148】
(改良例1)
前記実施形態1及び2のような解除ピース25を備えた制動装置付きスライド錠では、マグネットを用いて、プッシャー21やストップ体操作具121の操作感を出すこともできる。ここでいう「操作感」とは、プッシャー21やストップ体操作具121が規制位置にあるか否かを明確に判別できるようにすることを意味する。
図43乃至
図47(a)~(c)にマグネットを用いてストップ体操作具121の操作感を出す場合の一例を示す。なお、説明済みの事項については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0149】
図43乃至
図47(a)~(c)に示す改良例では、裏蓋27の上面に突起27bが、ストップ体操作具121の底面に当該突起27bが嵌合する嵌合溝121rが設けられている。
【0150】
また、それぞれの解除ピース25には吸着体としてマグネット25fが埋設されている。両解除ピース25のマグネット25fは、互いに吸着する向きで設けられている。なお、双方にマグネット25fを埋設する代わり、一方にマグネット、他方に磁性体を埋設することもできる。場合によっては、解除ピース25をマグネット或いは磁性体で構成することもできる。いずれの場合も、両解除ピース25が互いに吸着するように設計する。
【0151】
図45(a)及び
図46(a)に示すように、この改良例では、ストップ体操作具121を押す前は、両解除ピース25がそれぞれに埋設されたマグネット25fによって吸着しており、ストップ体操作具121は両解除ピース25の手前に位置している。
【0152】
図45(a)及び
図46(a)の状態でストップ体操作具121を押し込むと、ストップ体操作具121の先端側の傾斜面121iによって両解除ピース25の隙間が押し広げられ、それらの先端側がピース出入り口11bから外に押し出される(
図45(b))。
【0153】
図45(b)及び
図46(b)の状態からストップ体操作具121をさらに押し込むと、裏蓋27の上面の突起27bがストップ体操作具121の裏面の嵌合溝121rに嵌合する(
図46(c))。この嵌合により、ストップ体操作具121はその場所で保持される。このとき、両解除ピース25はストップ体操作具121の傾斜面121iに押されて外側に突出する(
図45(c))。
【0154】
反対に、突起27bが嵌合溝121rに嵌合した状態で、両解除ピース25を内向きに押し戻すと、ストップ体操作具121が外向きに押し出されて突起27bが嵌合溝121rの係止が解除され、ストップ体操作具121が初期位置に復帰する。
【0155】
図47(a)~(c)に示すように、この改良例では、裏蓋27の上面の突起27bがストップ体操作具121の裏面の嵌合溝121rに嵌合する前にストップ体操作具121の押込みを解除する(ストップ体操作具121から手を離す)と、両解除ピース25がマグネット25fの吸着力によって互いに接近する方向に復帰し、その復帰に伴って、ストップ体操作具121が元の位置まで押し戻される。
【0156】
なお、プッシャー21と作動体22が別体の実施形態1の場合、裏蓋27の突起27bが嵌合する嵌合溝121rを作動体22の裏面側に設ければよい。
【0157】
(改良例2)
前記改良例1では、マグネットを用いてプッシャー21やストップ体操作具121の操作感を出す場合を一例としているが、マグネットに変えてスプリングを用いて、プッシャー21やストップ体操作具121の操作感を出すこともできる。
図48乃至
図53(a)~(c)に、スプリングを用いてストップ体操作具121の操作感を出す場合の一例を示す。なお、説明済みの事項については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0158】
図48乃至
図53(a)~(c)に示すように、この改良例におけるストップ体操作具121は、前記実施形態2のストップ体操作具121と同様、押し部121aと胴体部121bと載置部121cを備えている。
【0159】
図50に示すように、前記押し部121aには、操作具側凹部121qが二つ設けられている。各操作具側凹部121qには、スプリング121sがそれぞれ一本ずつセットされている。両スプリング121sは長手方向外向きに付勢されている。両スプリング121sは、その先端がベース本体11に設けられた突き当て面11hに突き当たるようにしてある。
【0160】
前記胴体部121bの両側壁121dには、止めピン26を挿入するためのガイド孔121eが設けられている。胴体部121bの前面121f及び裏面121gには、ストップ体24を配置する貫通孔121hが設けられている。両側壁121dの先方側には、傾斜面121iが設けられている。
【0161】
図50に示すように、前記載置部121cには、解除ピース25が嵌合するハ字状のガイド突条121jが設けられている。載置部121cのうち、ガイド突条121jの両外側には、ガイド突条121jよりも低いガイド凹部121kが設けられている。両ガイド凹部121kの間には、弾性変形する操作具側係止部(第一係止部)121wが設けられている。
【0162】
図49に示すように、この改良例におけるベース10の内面には、操作具側係止部121wが係止するベース内係止部(第二係止部)11jが設けられている。操作具側係止部121w及びベース内係止部11jは後述する係止凹部又は係止突起に相当する部分である。
【0163】
図51(a)及び
図52(a)に示すように、この改良例では、押す前のストップ体操作具121は、両スプリング121sによって外向きに押し出されている。
【0164】
図51(a)及び
図52(a)の状態で、ストップ体操作具121を両スプリング121sに抗して押し込むと、両解除ピース25の隙間が押し広げられ、それらの先端側がピース出入り口11bから外に押し出される(
図51(b))。
【0165】
図51(b)及び
図52(b)の状態からストップ体操作具121をさらに押し込むと、ストップ体操作具121の操作具側係止部121wがベース10内のベース内係止部11jに嵌合する。この嵌合により、ストップ体操作具121はその場所で保持される(
図51(c)及び
図52(c))。このとき、両解除ピース25はストップ体操作具121の傾斜面121iに押されて外側に突出する(
図51(c))。
【0166】
反対に、ストップ体操作具121の操作具側係止部121wがベース10内のベース内係止部11jに嵌合した状態で、両解除ピース25を内向きに押し戻すと、ストップ体操作具121が外向きに押し出されて操作具側係止部121wとベース内係止部11jの係止が解除され、ストップ体操作具121が初期位置に復帰する。
【0167】
図53(a)~(c)に示すように、この改良例では、ストップ体操作具121の操作具側係止部121wがベース10内のベース内係止部11jに嵌合する前にストップ体操作具121の押込みを解除する(ストップ体操作具121から手を離す)と、両スプリング121sの復元力によって、ストップ体操作具121が元の位置まで押し戻される。
【0168】
なお、プッシャー21と作動体22が別体の実施形態1の場合、裏蓋27の突起27bが嵌合する嵌合溝121rを作動体22の裏面側に設ければよい。
【0169】
(改良例3)
前記改良例1及び2では、裏蓋27の上面に設けられた突起27bと、ストップ体操作具121の底面に設けられた嵌合溝121rの嵌合とその解除によって、プッシャー21やストップ体操作具121の操作感が出るようにしているが、突起(第二係止部)27bと嵌合溝(第一係止部)121rを設ける代わりに、ストップ体操作具121に押し部側吸着体(第一吸着体)121tを、ストップ体24にストップ体側吸着体(第二吸着体)24gを設け、両吸着体の吸着力を利用して、プッシャー21やストップ体操作具121の操作感が出るようにすることもできる。
【0170】
図54乃至
図57(a)~(c)に、ストップ体操作具121及びストップ体24に設けた吸着体の吸着力を利用して、ストップ体操作具121の操作感を出す場合の一例を示す。なお、説明済みの事項については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0171】
この改良例では、ストップ体操作具121の押し部121a内に第一吸着体121tが、ストップ体24の押し部121aと対向する面に第二吸着体24gが設けられている。また、両解除ピース25には、改良例1及び2と同様のマグネット25fが設けられている。
【0172】
この改良例では、第一吸着体121tとして円盤状のマグネットを、第二吸着体24gとして板状のマグネットを用いているが、第一吸着体121t及び第二吸着体24gは一方を磁性体とすることもできる。第二吸着体24gは、第一吸着体121tと隣り合う部分、より具体的には、第一吸着体121tと吸着する部分であれば、ストップ体24以外に設けることもできる。例えば、突き当て面11hなどのベース本体11に設けることができる。
【0173】
図55に示すように、この改良例のストップ体操作具121の貫通孔121hを構成する周壁には、斜め傾斜のガイド傾斜面121pが設けられている。
【0174】
図54及び
図55に示すように、この実施形態のストップ体24は、角柱状の胴体部24aと、その胴体部24aの先端側に設けられた当接面24bと、胴体部24aの上下面に突設されたガイド突起24hを備えている。ガイド突起24hのガイド傾斜面121pに対向する位置には、当接傾斜面24iが設けられている。なお、この改良例では、前記各実施形態の止めピン26に相当する部材はないため、胴体部24aにピン孔24cは設けられていない。
【0175】
貫通孔121h内に配置されたストップ体24は、その当接傾斜面24iがガイド傾斜面121pに当接し、当該ガイド傾斜面121pに沿って進退するようにしてある。
【0176】
図56(a)及び
図57(a)に示すように、この改良例では、ストップ体操作具121を押す前は、両解除ピース25がそれぞれに埋設されたマグネット25fによって吸着しており、ストップ体操作具121は両解除ピース25の手前に位置している。
【0177】
図56(a)及び
図57(a)の状態でストップ体操作具121を押し込むと、ストップ体操作具121の先端側の傾斜面121iによって両解除ピース25の隙間が押し広げられ、それらの先端側がピース出入り口11bから外に押し出される(
図56(b))。
【0178】
図56(b)及び
図57(b)の状態からストップ体操作具121をさらに押し込むと、第一吸着体121tと第二吸着体24gが吸着する。この吸着により、ストップ体操作具121はその場所で保持される。このとき、両解除ピース25はストップ体操作具121の傾斜面121iに押されて外側に突出する(
図56(c))。
【0179】
反対に、第一吸着体121tと第二吸着体24gが吸着した状態で、両解除ピース25を内向きに押し戻すと、ストップ体操作具121が外向きに押し出されて第一吸着体121tと第二吸着体24gの吸着が解除され、ストップ体操作具121が初期位置に復帰する。
【0180】
なお、この実施形態の傾斜面121iは、先端側の半分と後端側側の半分の傾斜を異なる角度としてあり、先端側の半分と後端側の半分の間には角部が突き出している。先端側の面と後端側の面を変えることによって、操作力を変えることができる。
【0181】
(改良例4)
前記各実施形態のうち解除ピース25を備えた制動装置付きスライド錠では、二つの解除ピース25のいずれか一方を押し込むだけで規制を解除することができるが、二つの解除ピース25の一方が押し込まれただけでは制動の解除ができない或いは困難であり、双方が押された場合に制動が解除できるようにすることもできる。
【0182】
図58乃至
図63(a)(b)に、解除ピース25のいずれか一方のみでは解除ができない或いは困難であり、双方が押し込まれた場合に解除ができるようにした場合の一例を示す。なお、説明済みの事項については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0183】
図58乃至
図63(a)(b)に示す例では、裏蓋27の上面に突起27bが、ストップ体操作具121の底面に当該突起27bが嵌合する嵌合溝121rが設けられている。それぞれの解除ピース25にはマグネット25fが埋設されている。両解除ピース25のマグネット25fは、互いに吸着する向きで設けられている。
【0184】
ストップ体操作具121の両側壁121dと傾斜面121iが連続する部分には係止突起(第一係止突起)121nが設けられている。装備空間11aを構成する上下の内壁には第一係止突起121nが係止する係止凹部(第一係止凹部)11kが設けられている。改良例1と同様、双方にマグネット25fを埋設する代わりに、一方にマグネットを埋設し、他方に磁性体を埋設することもできる。また、解除ピース25をマグネット或いは磁性体で構成することもできる。改良例1と同様、いずれの場合も両解除ピース25が互いに吸着するように設計する。
【0185】
この改良例では、ストップ体操作具121が押し込まれて両解除ピース25がピース出入り口11bから突出した状態(
図61(a))で、両解除ピース25を内向きに押し込むと、当該両解除ピース25によってストップ体操作具121が外向きに押され、ストップ体操作具121が裏蓋27の突起27bを乗り越えて初期位置に復帰して制動が解除される(
図60(a)~(c))。
【0186】
一方、ストップ体操作具121が押し込まれて両解除ピース25がピース出入り口11bから突出した状態(
図61(a))で、一方の解除ピース25(
図61(a)~(c)では上側の解除ピース25)だけを内向きに押し込むと、当該解除ピース25によってストップ体操作具121が傾き、当該ストップ体操作具121の押込み方向先方側の第一係止突起121nが同先方側の第一係止凹部11kに係止してストップ体操作具121がその場にとどまる。この結果、解除ピース25がピース出入り口11bから突出した状態が維持され、規制を解除することができない(
図61(b))。
【0187】
ただし、前記
図61(b)の状態で、内向きに押し込んだ解除ピース25をさらに内向きに押し込み、第一係止凹部11kに係止した第一係止突起121nが当該第一係止凹部11kを乗り越えると、規制が解除される(
図61(c))。
【0188】
なお、ストップ体操作具121の戻り方向先方側の面(以下「戻り先方面」という)及びこれと当接する凹部の面(以下「凹部先方面」という)の角度は、
図61(a)~(c)の角度よりも緩やかにすることも、急にすることもできる。
【0189】
図62(a)~(c)は戻り先方面及び凹部先方面を
図61(a)~(c)の場合よりも緩やかにした場合の一例を示すもの、
図63(a)(b)は戻り先方面及び凹部先方面を
図61(a)~(c)の場合よりも急にした(略直角にした)場合の一例を示すものである。
【0190】
いずれの場合も、
図62(a)の状態或いは
図63(a)の状態から片側の解除ピース25を内向きに押し込むと、第一係止突起121nが第一係止凹部11kに係止してストップ体操作具121がその場にとどまり、解除ピース25がピース出入り口11bから突出した状態が維持されて、規制を解除することができない(
図62(b)及び
図63(b))。
【0191】
図62(a)~(c)の例では、
図62(b)の状態から、内向きに押し込んだ解除ピース25をさらに内向きに押し込むことで、第一係止凹部11kに係止した第一係止突起121nが当該第一係止凹部11kを乗り越え、規制を解除することができる(
図62(c))。
【0192】
これに対し、
図63(a)(b)の例では、
図63(b)の状態から、内向きに押し込んだ解除ピース25をさらに内向きに押し込んでも、戻り先方面が凹部先方面を乗り込えることができず、ストップ体操作具121がその場にとどまって、規制が解除されることはない。
【0193】
なお、この改良例では、ストップ体操作具121に第一係止突起121nが設けられ、装備空間11aを構成する上下の内壁に第一係止凹部11kが設けられた場合を一例としているが、
図64(a)~(c)乃至
図65(a)~(c)に示すように、ストップ体操作具121に第一係止凹部11kに相当する係止凹部(第二係止凹部)121uを設け、装備空間11aを構成する上下の内壁に第一係止突起121nに相当する係止突起(第二係止突起)11iを設けることもできる。この場合も、第二係止凹部121uと第二係止突起11iの角度は、所望強度を得られるように緩急をつけることができる。
【0194】
前記各実施形態及び各改良例は一例であり、本発明の制動装置付きスライド錠は、前記各実施形態及び各改良例に記載した形態に限定されるものではない。また、前記各実施形態及び各改良例に記載の構成は、他の実施形態や改良例に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明の制動装置付きスライド錠は、トイレブースや更衣室といった施錠が必要な個室用の錠として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0196】
10 ベース
11 ベース本体
11a 装備空間
11b ピース出入り口
11c 挿通孔
11d 受け凹部(ベース側受け凹部)
11e ベース側係止突起
11f ベース側第一斜面
11g ベース側第二斜面
11h 突き当て面
11i 係止突起(第二係止突起)
11j ベース内係止部(第二係止部)
11k 係止凹部(第一係止凹部)
12 ラッチガイド
12a 凸ブロック
12b 係止溝
20 制動体
21 プッシャー
21a 押し部
21b 連結部
21c 凹部
21d 突片
21e 貫通孔
22 作動体
22a 嵌合凹部
22b 載置部
22c 側壁
22d 傾斜面
22e ガイド孔
22f ガイド突条
22g ガイド凹部
23 付勢スプリング
24 ストップ体
24a 胴体部
24b 当接面
24c ピン孔
24d ストップ体第一斜面
24e ストップ体第二斜面
24g ストップ体側吸着体(第二吸着体)
24h ガイド突起
24i 当接傾斜面
25 解除ピース
25a ピース本体
25b 凹陥部
25c ガイド凸部
25d 押圧部
25e 係止段差部
25f マグネット
26 止めピン
27 裏蓋
27a 収まり穴
27b 突起(第二係止部)
28 収容体
28a 収容体本体
28b 装備空間
28c 操作具用開口部
28d ピース用開口部
29 止め具
30 ラッチ
31 ラッチ本体
31a ガイド溝
31b 係止片
31c 嵌合切欠き部
31d 開口
32 装備空間
33 開口部
40 制動受け体
41 受け体本体
41a 基体部
41b 鍔部
41c 受け凹部
41d 連通路
41e 戻し突起
41f 第一斜面(第一戻し部)
41g 第二斜面(第二戻し部)
41h 内壁
41i 先端面
41j ガイド片
41k セット孔
42 抜止め部
42a 胴体部
42b 係止部
42c 受け凹部
43 付勢スプリング
44 保持具
44a 側面保持部
44b 裏面保持部
44c 止め具孔
44d 係合突起
44e 切欠き部
45 止め具
50 ストライク
50a 固定片
50b 係止片
51 基体部
52 止め片
52a 貫通孔
53 係止孔
54 装備空間
55 仕切り壁
55a 挿通孔
121 ストップ体操作具
121a 押し部
121b 胴体部
121c 載置部
121d 側壁
121e ガイド孔
121f 前面
121g 裏面
121h 貫通孔
121i 傾斜面
121j ガイド突条
121k ガイド凹部
121m 傾斜面スリット
121n 係止突起(第一係止突起)
121p ガイド傾斜面
121q 操作具側凹部
121r 嵌合溝(第一係止部)
121s スプリング
121t 押し部側吸着体(第一吸着体)
121u 係止凹部(第二係止凹部)
121v ストップ体配置凹部
121w 操作具側係止部(第一係止部)
A 扉
B 袖パネル