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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】ロボット顕微手術アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/37 20160101AFI20230221BHJP
【FI】
A61B34/37
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020505548
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 IB2018052591
(87)【国際公開番号】W WO2018189722
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】102017000041991
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519367692
【氏名又は名称】メディカル マイクロインスツルメンツ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】プリスコ,ジュゼッペ マリア
【審査官】永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06676684(US,B1)
【文献】米国特許第06840938(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレーブマニピュレータ(3)と、前記スレーブマニピュレータ(3)に接続可能で、且つジョイントサブアセンブリ(5)を含む手術器具(70)とを備えるロボット手術アセンブリ(1)であって、前記ジョイントサブアセンブリ(5)は、少なくとも第1のリンク(6)と、第2のリンク(7)と、第3のリンク(8)とを含み、
前記第1のリンク(6)および前記第2のリンク(7)は、前記第1のリンク(6)と前記第2のリンク(7)との間に自由度を与える第1のジョイント(14)に接続され、
前記第2のリンク(7)および前記第3のリンク(8)は、前記第2のリンク(7)と前記第3のリンク(8)との間に自由度を与える第2のジョイント(17)に接続され、
前記手術器具(70)は、自由度を動かすための少なくとも1つの腱(19)を含み、
前記腱(19)は、前記第3のリンク(8)に固定された腱遠位部(27)を含み、
前記第1のリンク(6)と前記第2のリンク(7)のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの腱接触面(18)を含み、前記腱(19)は、前記少なくとも1つの腱接触面(18)上を、前記少なくとも1つの腱接触面(18)と接触したまま、腱滑り面(66)を画定する前記少なくとも1つの腱接触面(18)と局所相対運動を有して滑り、前記少なくとも1つの腱接触面(18)上に1つ以上の滑り経路(65)を画定し、
前記第1のリンク(6)および前記第2のリンク(7)のすべての腱滑り面(66)のすべての滑り経路(65)の合計は、総巻き付け角(α+β)を画定し、
記総巻き付け角(α+β)は120度以上である、
ロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記腱は、ポリマー材料製である、請求項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項3】
前記腱(19)は、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンまたはUHMWPE、Kevlar(登録商標)、Vectran(登録商標)、Zylon(登録商標)、ポリベンゾビスオキサゾール、炭素繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である、請求項1または2に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの腱接触面(18)は、鋼、鋼合金、炭化物、チタン、液体金属、セラミックス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である、請求項1~のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項5】
前記腱(19)は超高分子量ポリエチレン製であり、前記少なくとも1つの腱接触面(18)は鋼製である、請求項1~のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項6】
前記腱接触面(18)と前記腱(19)との間の乾燥滑り摩擦が、0.1以下の摩擦係数を有する、および/または、
前記摩擦係数は0.1未満である、請求項1~のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項7】
前記腱(19)は、0.5ミリメートル以下の直径を有し、好ましくは、0.005ミリメートル~0.5ミリメートルの間に含まれる直径を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項8】
前記腱(19)は、少なくとも1つのアクチュエータ(25)に接続されるのに適した腱近位部(26)と、前記第3のリンク(8)に固定された腱遠位部(27)と、前記腱近位部(26)と前記腱遠位部(27)との間に延在する腱中間部(28)とを含み、前記腱中間部(28)は、少なくとも1つの腱滑り面(66)を画定する前記少なくとも1つの腱接触面(18)上を滑る、請求項1~のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項9】
前記腱(19)および前記腱接触面(18)は、局所相対運動の結果として局所摩擦力を交換する、請求項1~のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【請求項10】
前記腱遠位部(27)は、前記第3のリンク(8)の腱接触面(18)上を滑らない、請求項1~のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
【0002】
本発明の目的は、ロボット手術アセンブリである。
【0003】
特に、本発明は、ロボット顕微手術アセンブリに関する。
【0004】
本発明は、マスターツールマニピュレータと手術器具とを含むタイプのロボット顕微手術アセンブリに関する。
【0005】
本発明はまた、スレーブアセンブリならびに手術器具に関する。
【背景技術】
【0006】
背景技術
【0007】
末端に手術器具を有する多ジョイントロボットアームを含む手術または顕微手術用のロボットアセンブリは、当分野で知られている。例えば、US-7155316は、MRIベースの画像収集システムと、各々が(例えば、US-7155316の図7に示されるような)直接的な重力負荷を回避するための鉛直軸を有する3つの回転ジョイントを有し、各々が把持のための運動の内部自由度を備えたそれぞれのエンドエフェクタに接続されている2つのマルチジョイントアームとを含む、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴映像法)ガイダンスのもとで脳顕微手術を実行するロボットアセンブリを開示している。
【0008】
また、組織の緊張や吻合縫合などの主要な手術プーリミティブの実行には、人間の手が手首と肘で接合されるのと同様の方法で、手術器具の先端を大きな空間円錐方向に向け、器具をその長手方向軸の周りに回転させ(ロール)、例えば、針把持器具の先端で組織を通して針を導く能力が必要である。
【0009】
手術器具の小型化を簡素化するために、WO-2010-009221は、ケーブルのトルクを作動させるために3自由度に関連する作動腱の終端の数を6から4に減らし、ヨーリンクで終端を迎えたケーブルがピッチリンクに印加するトルクを作動用に利用する有利な機会を示しており(引用文献2の図4-Aを参照)、多くのギアを含む運動機構のおかげで、そのような目的のために、そのようなケーブルを選択的に引っ張ったり解放したりすることを必要とする。さらに、記載されている駆動システムは、作動腱の各端部がウィンチに取り付けられていることを必要とし、ウィンチは腱を選択的に巻き上げて引っ張りを引き起こす。駆動システムのロストモーションはジョイントでの角度の遊びに変換されるため、ロストモーションが発生することで有名なウィンチおよび歯部などの機械的側面の存在により、小型の関節接合の駆動は困難になり、関節接合装置が小さくなるにつれて、機械的側面は増加する。駆動システムは、摩擦および摩耗をさらに制限するために作動ケーブルに低い予荷重を維持するのにも適していない。
【0010】
さらに、腱の終端について説明した解決策は、いくつかのセクションで腱をトラップすることを意図した曲がりくねった経路を含む。そのような解決策は、スチールケーブルや、他の方法で必要とされるよりも大きな直径のケーブルなど、そのようなトラッピングに耐えるのに十分な耐性のあるケーブルの使用を必要とする。
【0011】
構造部材またはリンクに接触する同じ腱の中間部分よりも近位に延びる近位部分など、腱の近位部分の近位張力、および構造部材に接触する腱の中間部分の張力は、腱が引っ張られているときはいつでも、キャプスタン方程式に関係している。腱の引っ張りを正と定義すると、構造部材またはリンクを横切った後の腱の張力は、腱と構造部材の表面との間の滑り摩擦の結果として、腱材料と構造部材材料の間の滑り摩擦係数と、腱と構造部材の間の巻き付け角との積に指数関数的に関連する因子によって減少する。
【0012】
キャプスタン方程式は、総巻き付け角に沿って積分できる微分形式にも当てはまる。したがって、構造部材との接触の結果としての腱方向の全体的な変化を巻き付け角に対して使用することによって、巻き付け面の任意の形状にも当てはまる。キャプスタン方程式では説明されない大きな追加の滑り摩擦が、腱と構造部材間の鋭い点接触に存在するため、摩擦を最小限に抑えるために避ける必要がある。
【0013】
多くの手首の設計は、WO-2014-151952およびUS-6676684のように、アイドルプーリを利用して腱をリンクの周りにルーティングすることにより、腱の滑り摩擦を完全に回避する。それらの小型化は、アイドルプーリの最小実現可能直径によって制限される。
【0014】
具体的には、引用文献4は、リンクに回転可能に接続されたアイドルプーリ(68参照)の周りを包むリンクを作動させるための作動ケーブルを示している。したがって、作動ケーブルはそれぞれのプーリの表面上を滑るのを避け、むしろプーリは転がり、それぞれの作動ケーブルはプーリ表面に対して局所的に静止している。さらに、遠位リンクは、遠位リンクを移動させるために、その周りに作動ケーブルが巻かれてしっかりと固定された丸みを帯びた終端面(58.6参照)を含む。
【0015】
US-6840938は、3リンク手首アセンブリと、第1のリンクおよび第2のリンクに回転可能に接続されたアイドルプーリでルーティングされ、それぞれのプーリの表面への滑りを回避する第3のリンクで終端を迎えたヨーケーブルを示しており、むしろプーリは転がり、それぞれの作動ケーブルはプーリ表面に対して局所的に静止している。言い換えれば、ヨーケーブルは、滑り接触面で第1のリンクと第2のリンクに接触することを避ける。
【0016】
他の同様の例がUS-2002-120252に示されており、作動ケーブルが固定され、それぞれのリンクに回転可能に接続されたプーリに巻き付けられてリンクに動きを伝達し、作動ケーブルの終端が移動するリンクにしっかりと固定され、ケーブルの終端がリンクに対して静止していることを必要としている。
【0017】
手首サブアセンブリを小型化するための努力の中で、多くの手首の設計は、例えばUS-2015-0127045、WO-03-001986、WO-2010-009221、US-2017-0020615(図5B)、およびUS-2016-0051274に記載されるように、中間リンクの構造体に接触し、それらの上を滑ってより遠位のリンクを移動させる腱を有する。
【0018】
そのような場合はすべて、設計者は、リンクの構造体への腱の巻き付け角または包み角を最小限に抑えることで、滑り摩擦を最小限に抑えていることを確認している。具体的には、このようなすべての設計では、腱はリンクの構造体を貫通する長手方向の孔またはチャネルに沿ってルーティングされる。その結果、上記の設計では、手首が真っ直ぐな構成のとき、腱は中間リンクの構造体上でほぼゼロの巻き付け角を有し、一方、手首が90度近くに曲げられたとき、最も遠位のリンクに取り付けられた腱の総巻き付け角は、90度近くである。
【0019】
リンクの構造体に孔またはガイドチャネルを製作し、腱を孔またはガイドチャネルに入れるという避けられない要件は、そのような設計の小型化に対する厳しい制限を表す。腱が手首サブアセンブリの近くに留まるように拘束する際のこのような孔の重要な役割に注意する必要がある。実際、手首サブアセンブリが異なる構成をとると、腱は孔の表面の異なる面によって拘束され、それらは必ず完全に腱を取り囲む必要がある。言い換えれば、言及されたすべての文献において、孔を通る腱のルーティングは、設計の重要な構成である。
【0020】
US-2003-0135204に記載されているような多くの手首の設計は、両方のアイドルプーリの使用と、中間リンクの構造体内の孔またはガイドチャネルの使用を避けている。設計は、腱が最も遠位のリンクに到達するように誘導するために腱が上を滑る円筒形の突出部を採用している。構造リンク上のこのような腱の巻き付け角は、依然として最小に保たれ、これは、手首がまっすぐな構成のとき、図面から約10度と推定できる。実際、このような腱は、円筒形の突出部によってリンクの中心に向かって偏向される。この設計では依然として、ベースリンクの構造体内の穴を使用して、遠位リンクが(ヨー運動で)曲げられたときに、腱がリンク部材の直径内に留まるように拘束する。本体のベース(第1の)リンクの構造体内に穴を開けることは、小型化の制限要因のままである。
【0021】
したがって、使用中の抵抗または信頼性を損なうことなく極度の小型化に適する特性を備えた医療器具用の腱または作動ケーブルを提供する必要性が感じられる。
【0022】
さらに、既知の解決策に関して摩擦の点で改善された性能で、器具の少なくとも一部上をスライドするのに適した医療器具用の腱を提供する必要性が感じられる。
【0023】
さらに、腱の経路を偏向させることができ、その抵抗を減少させる解決策を含まずに、その終点で印加される引張荷重下でのみ動作することを意図したスレーブ手術器具用の腱を提供する必要性が感じられる。
【0024】
腱と該腱が滑る表面との間の摩擦を減らす必要性が感じられ、同時にロボット手術用の手術器具を小型化する必要性が強く感じられる。
【発明の概要】
【0025】
解決手段
【0026】
本明細書に記載される本発明の範囲は、上記のような既知の解決策の限界を克服し、最新技術に関して言及された必要性に対する解決策を提供することである。
【0027】
この範囲およびその他の範囲は、請求項1に記載のロボット手術アセンブリによって達成される。
【0028】
いくつかの好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0029】
図面
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照する、例として与えられ、限定することを意図しない好ましい実施形態の以下に報告される説明から明らかになるであろう。
【0031】
図1】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリの斜視図であり、スケッチは患者と外科医を描いている。
【0032】
図2】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリの斜視図であり、スケッチは患者を描いている。
【0033】
図3A】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリのブロック図である。
【0034】
図3B】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリのブロック図である。
【0035】
図3C】一実施形態に係る、ロボット手術アセンブリのブロック図である。
【0036】
図4】一実施形態に係る、手術器具に接続されたスレーブマニピュレータの一部の斜視図である。
【0037】
図5】一実施形態に係る、手術器具に接続されたスレーブマニピュレータの一部の平面図である。
【0038】
図6】一実施形態に係る、手術器具から切断されたスレーブマニピュレータの一部の斜視図である。
【0039】
図7】一実施形態に係る、スレーブマニピュレータの一部と手術器具の断面を描いたスケッチである。
【0040】
図8】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図であり、いくつかの部品は、明瞭さを追求するために切断されている。
【0041】
図9】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図である。
【0042】
図10】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図である。
【0043】
図11】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの一部の斜視図である。
【0044】
図12】一実施形態に係る、リンクの斜視図である。
【0045】
図13A】一実施形態に係る、リンクの斜視図である。
【0046】
図13B】一実施形態に係る、リンクの斜視図である。
【0047】
図14】一実施形態に係る、リンクの斜視図である。
【0048】
図15】一実施形態に係る、リンクの斜視図である。
【0049】
図16】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図であり、腱は示されていない。
【0050】
図17】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの一部の平面図のスケッチであり、腱が示されている。
【0051】
図18】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図である。
【0052】
図19】一実施形態に係るジョイントサブアセンブリの斜視図であり、二重接続ジョイントが示されている。
【0053】
図20】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図である。
【0054】
図21図20に示したジョイントサブアセンブリの分解図であり、明瞭さを追求するために、腱およびピンは示されていない。
【0055】
図22】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリのジョイントの斜視図である。
【0056】
図23】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリのジョイントの斜視図である。
【0057】
図24】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図である。
【0058】
図25図24に示されたジョイントサブアセンブリの一部の斜視図であり、明瞭さを追求するために腱は示されていない。
【0059】
図26】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図である。
【0060】
図27】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの3つの構成を示すジョイントサブアセンブリの平面図である。
【0061】
図28】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの3つの構成を示すジョイントサブアセンブリの平面図である。
【0062】
図29】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの3つの構成を示すジョイントサブアセンブリの平面図である。
【0063】
図30-32】いくつかの実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの斜視図である。
【0064】
図33】一実施形態に係る、リンクおよび腱の一部の斜視図である。
【0065】
図34図33の矢印XXXIVで示された視点から描かれた、図33に示されたリンクおよび腱の斜視図である。
【0066】
図35】一実施形態に係るリンクの斜視図である。
【0067】
図36-37】いくつかの実施形態に係る、明瞭さを追求するための透明部分および少なくとも1つの腱を有するジョイントサブアセンブリを示す平面図である。
【0068】
図38-39】いくつかの実施形態に係る、明瞭さを追求するための透明部分および1つの腱を有するジョイントサブアセンブリを示す平面図である。
【0069】
図40-41】いくつかの実施形態に係る、明瞭さを追求するための透明部分および少なくとも1つの腱を有するジョイントサブアセンブリを示す平面図である。
【0070】
図42】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの構成を示す平面図のスケッチであり、腱は総巻き付け角を示す。
【0071】
図43】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの構成を示す平面図のスケッチであり、腱は総巻き付け角を示す。
【0072】
図44】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの構成を示す平面図のスケッチであり、腱は総巻き付け角を示す。
【0073】
図45】一実施形態に係る、ジョイントサブアセンブリの構成を示す平面図のスケッチであり、腱は総巻き付け角を示す。
【0074】
図46】一実施形態に係る、リンクの断面を示すスケッチであり、腱は、局所的な巻き付け角を表す。
【0075】
図47】一実施形態に係る、リンクの断面を示すスケッチであり、腱は、局所的な巻き付け角を表す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
いくつかの好ましい実施形態の詳細な説明
【0077】
一般的な一実施形態によれば、ロボット手術アセンブリ1は、スレーブマニピュレータ3と、スレーブマニピュレータ3に接続可能な手術器具70とを含む。
【0078】
手術器具70は、ジョイントサブアセンブリ5を含む。
【0079】
ジョイントサブアセンブリ5は、少なくとも第1のリンク6と、第2のリンク7と、第3のリンク8とを含む。
【0080】
一実施形態によれば、ロボット顕微手術アセンブリ1は、手動コマンドを検出するのに適した少なくとも1つのマスターツール2と、少なくとも1つのスレーブマニピュレータ3と、少なくとも1つの手術器具70と、手動コマンドに関する情報を含む少なくとも1つの第1のコマンド信号59を受信し、第2のコマンド信号60をスレーブマニピュレータ3内の少なくとも1つのアクチュエータ25に送信して、手術器具70を制御するように構成された少なくとも1つの制御ユニット4とを含む。
【0081】
一実施形態によれば、手術器具70は、スレーブ手術器具70である。一実施形態によれば、手術器具70、医療器具70である。
【0082】
手術器具70は、少なくとも第1のリンク6と、第2のリンク7と、第3のリンク8とを含むジョイントサブアセンブリ5を含む。
【0083】
第1のリンク6および第2のリンク7は、第1のリンク6と第2のリンク7との間に自由度を提供する第1のジョイント14に接続される。
【0084】
第2のリンク7および第3のリンク8は、第2のリンク7と第3のリンク8との間に自由度を提供する第2のジョイント17に接続される。
【0085】
手術器具70は、自由度を動かすための少なくとも1つの腱19を含む。
【0086】
少なくとも1つの腱19は、少なくとも第2のリンク7に対して第3のリンク8を動かすのに適している。一実施形態によれば、手術器具70は、自由度を動かすための少なくとも一対の腱19、20を含む。一実施形態によれば、一対の腱19、20は、少なくとも第2のリンク7に対して第3のリンク8を動かすのに適している。
【0087】
好ましい一実施形態によれば、腱19は、少なくとも1つのアクチュエータ25に接続されるのに適した腱近位部26であって、そのアクチュエータは、好ましくはジョイントサブアセンブリ5には配置されない、腱近位部26と、第3のリンク8に固定される腱遠位部分27と、腱近位部26と腱遠位部分27との間に延在する腱中間部28とを含む。例えば、少なくとも1つのアクチュエータ25は、ジョイントサブアセンブリ5に対して上流に配置されたスレーブマニピュレータ3のアクチュエータコンパートメント69部分に配置される。
【0088】
第1のリンク6と第2のリンク7のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの腱接触面18を含み、腱19、好ましくは腱中間部28は、少なくとも1つの腱接触面18と接触したまま少なくとも1つの腱接触面18上を滑り、少なくとも1つの腱接触面18上に1つ以上の滑り経路65を画定する。このように、少なくとも1つの腱接触面18は腱滑り面66である。
【0089】
好ましい一実施形態によれば、第1のリンク6および第2のリンク7のいずれかの少なくとも1つの腱滑り面66は、鋭いエッジのない表面形状を有する滑らかな表面である。
【0090】
好ましい一実施形態によれば、第1のリンク6および第2のリンク7のいずれかの少なくとも1つの腱接触面18は、鋭いエッジのない表面形状を有する滑らかな表面である。
【0091】
好ましい一実施形態によれば、第1のリンク6および第2のリンク7のいずれかの少なくとも1つの腱接触面18は、腱19が、少なくとも1つの腱接触面18と接触したまま、少なくとも1つの腱滑り面66との局所相対運動を有して滑る、滑る腱滑り面66である。言い換えれば、一実施形態によれば、腱中間部が滑る少なくとも1つの腱接触面18は、腱滑り面66である。言い換えれば、一実施形態によれば、ジョイント装置の構成が第1の構成から第2の構成に変化するとき、腱と少なくとも1つの腱接触面18との間で局所的な相対的な滑り動作が起こる。言い換えれば、一実施形態によれば、ジョイント装置の動作中に、腱と少なくとも1つの腱接触面18との間に局所的な滑り摩擦力が生成される。
【0092】
一実施形態によれば、「滑る(slides)」という用語と「滑り(sliding)」という用語は両方とも、局所的な相対的な滑り動作との接触を指す。一実施形態によれば、「滑る(slides)」という用語と「滑り(sliding)」という用語は両方とも、局所的な滑り摩擦力を生成する接触を指す。一実施形態によれば、「滑る(slides)」という用語と「滑り(sliding)」という用語は両方とも、腱とアイドルプーリとの間の接触、および腱と、腱が終わり、巻かれている表面との間の接触などの局所的な相対滑り動作なしの接触を指すことを避ける。
【0093】
好ましい一実施形態によれば、第1のリンク6および第2のリンク7のうちのいずれかの少なくとも1つの腱接触面18は腱滑り面66であり、腱19は少なくとも1つの腱滑り面66と接触したまま少なくとも1つの腱滑り面66上を滑る。言い換えれば、一実施形態によれば、腱中間部が滑る少なくとも1つの腱接触面18は、腱滑り面66である。一実施形態によれば、第3のリンク8は、少なくとも1つの腱接触面18を含み、腱は、第3のリンク8の腱接触面18に接触しており、その上を滑るのを回避する。一実施形態によれば、腱遠位部27は、腱接触面18上での滑りには適していない。
【0094】
一実施形態によれば、滑り経路65は、実質的に支配的な長手延長部を有する。一実施形態によれば、滑り経路65は、腱19が腱滑り面66上に画定する痕跡である。好ましい一実施形態によれば、1つ以上の滑り経路65の各々は連続経路である。一実施形態によれば、腱19および腱滑り面66は、局所的な相対運動の結果として局所的な摩擦力を交換する。一実施形態によれば、腱は、少なくとも1つの腱接触面18上を、その長手延在部T-Tまたは腱長手経路T-Tの方向に沿って、またはそれらに平行に滑る。一実施形態によれば、腱は、少なくとも1つの腱接触面18上を、腱長手経路T-Tを横断する方向に滑ることを回避する。一実施形態によれば、腱長手経路T-Tは、時間にわたって静止している。一実施形態によれば、1つ以上の滑り経路65は、腱長手経路T-Tの一部と一致するか、またはそれに平行である。
【0095】
一実施形態によれば、滑り経路65は、初期滑り経路端部の直前の初期腱経路方向を特徴とする近位または初期滑り経路端部と、最終滑り経路端部の直後の最終腱経路方向を特徴とする遠位または最終滑り経路端部とを含む。一実施形態によれば、腱中間部28は、第1のリンク6および第2のリンク7のうちの少なくとも1つによって偏向される。一実施形態によれば、腱中間部28は、第1のリンク6および第2のリンク7のうちの少なくとも1つによって、初期腱経路方向から最終腱経路方向へと偏向される。一実施形態によれば、腱中間部は、第1のリンク6および第2のリンク7のうちの少なくとも1つによって、腱偏向角だけ偏向される。一実施形態によれば、腱偏向角は、初期腱経路方向と最終腱経路方向との間の角度として測定される。一実施形態によれば、腱中間部は、第1のリンク6および第2のリンク7のうちの少なくとも1つによって、1つ以上の腱偏向角だけ偏向される。一実施形態によれば、総偏向角は、すべての腱偏向角の合計である。一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5の少なくとも1つの構成では、総偏向角α+βは120度以上である。一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリの直線構成は、それらのジョイント動作範囲の中心にリンク2および3を有する。一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5の直線構成において、総偏向角α+βは90度以上である。
【0096】
好ましい一実施形態によれば、総腱偏向角α+βは、総巻き付け角α+βである。
【0097】
好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの腱長手経路T-Tは、初期滑り経路端部で第1のリンク6および第2のリンク7のいずれかの少なくとも1つの腱滑り面66に接している。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの腱長手経路T-Tは、最終滑り経路端部で第1のリンク6および第2のリンク7のいずれかの少なくとも1つの腱滑り面66に接している。好ましい一実施形態によれば、すべてのジョイントアセンブリ構成に対して、少なくとも1つの腱長手経路T-Tは、角度のない(角張っていない)滑らかな連続曲線である。
【0098】
有利には、第1のリンク6および第2のリンク7のすべての腱滑り面66のすべての滑り経路65の合計は、総巻き付け角α+βを画定する。
【0099】
好ましい一実施形態によれば、すべての腱滑り面66のすべての滑り経路65の合計は、総巻き付け角α+βを画定する。
【0100】
一実施形態によれば、すべての腱滑り面66のすべての滑り経路65の合計は、総巻き付け角α+βの範囲に及ぶ。一実施形態によれば、すべての腱滑り面66のすべての滑り経路65の合計は、総巻き付け角α+βによって覆われる。
【0101】
一実施形態によれば、第1のリンク7と第2のリンク8との間の1つのリンクの腱滑り面66の1つの滑り経路は、局所巻き付け角αまたはβを画定する。一実施形態によれば、すべての局所巻き付け角の合計は、総巻き付け角α+βを画定する。一実施形態によれば、第1のリンク7と第2のリンク8との間の1つのリンクの腱滑り面66の1つの滑り経路65は、第1の局所巻き付け角αを画定する。一実施形態によれば、第1のリンク7と第2のリンク8との間の1つのリンクの腱接触面18の1つの滑り経路65は、第2の局所巻き付け角βを画定する。
【0102】
一実施形態によれば、巻き付け角および総巻き付け角は、腱と、第1のリンク7と第2のリンク8との間の少なくとも1つのリンクとの間に局所的な滑り摩擦力を生成する接触を指す。一実施形態によれば、巻き付け角および総巻き付け角は、腱と、第1のリンク7および巻き付け角とともに増加する第2のリンク8との間の少なくとも1つのリンクとの間に局所滑り摩擦力を生成する接触を指す。
【0103】
有利には、ジョイントサブアセンブリ5の少なくとも1つの構成では、総巻き付け角α+βは120度以上である。
【0104】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5がその直線構成にあるとき、総巻き付け角(α+β)は90度以上である。
【0105】
一実施形態によれば、「構成」という用語は、ジョイントサブアセンブリ5の空間的な幾何学的配置を示す。一実施形態によれば、「構成」という用語は、ジョイントサブアセンブリ5を形成するリンク6、7、8の相対的な空間的配置および配向を示す。一実施形態によれば、「直線構成」という用語は、ジョイントサブアセンブリ5によって形成される運動学的連鎖が、実質的に展開され、および/またはその最大伸びまで伸びることを示す。
【0106】
一実施形態によれば、第1のリンク6と第2のリンク7のうちの一方は、少なくとも2つの2つの腱接触面18を含み、腱19、好ましくは腱中間部28は、少なくとも2つの腱滑り面66の両方と接触したまま少なくとも2つの腱接触面18上を滑り、少なくとも2つの腱接触面18上に1つ以上の滑り経路65を画定する。
【0107】
一実施形態によれば、第1のリンク7は、少なくとも1つの腱接触面18を含み、腱19、好ましくは腱中間部28は、少なくとも1つの腱滑り面66と接触したまま少なくとも1つの腱接触面18上を滑り、少なくとも1つの腱滑り面66上に1つ以上滑り経路65を画定し、第2のリンク8は、少なくとも1つの別の腱接触面18を含み、腱19、好ましくは腱中間部28は、少なくとも1つの別の腱滑り面66と接触したまま少なくとも1つの別の腱接触面18上を滑り、少なくとも1つの別の腱滑り面66上に1つ以上滑り経路65を画定する。
【0108】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、腱滑り面66である少なくとも2つの腱接触面18を含み、腱19、好ましくは腱中間部28は、少なくとも2つの腱滑り面66の両方と接触したまま少なくとも2つの腱滑り面66上を滑り、少なくとも2つの腱滑り面66上に1つ以上の滑り経路65を画定する。
【0109】
一実施形態によれば、第3のリンク8は、腱19、好ましくは腱遠位部27が滑るのに適さない少なくとも1つの腱接触面18を含む。
【0110】
一実施形態によれば、局所巻き付け角の各々は、腱滑り面66に対する角度として定義される。一実施形態によれば、総巻き付け角α+βは、局所巻き付け角のすべての合計として定義される。
【0111】
一実施形態によれば、局所巻き付け角の各々は、腱長手経路T-Tに沿って向けられ、腱滑り面66上に接触経路65を画定する腱の部分に画定される腱に対する2つの直交線によって形成される角度として定義される。
【0112】
一実施形態によれば、局所巻き付け角の各々は、2つの腱長手経路T-T方向によって形成され、腱滑り面66上に接触経路65を画定する腱の部分に画定される角度として定義される。
【0113】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱滑り面66は、腱長手経路T-Tに沿って腱接触面18を画定する、近位接触面境界67および遠位接触面境界68を含み、近位接触面境界67は、遠位接触面境界68に対して近位に配置される。一実施形態によれば、局所巻き付け角の各々は、近位接触面境界67の直前に評価される腱長手経路T-Tと、遠位接触面境界68の直後に評価される腱長手経路T-Tとの直交線によって形成される角度として定義される。
【0114】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱接触面18は、腱長手経路T-Tに沿って腱滑り面66を画定する、近位接触面境界67および遠位接触面境界68を含み、近位接触面境界67は、遠位接触面境界68に対して近位に配置される。一実施形態によれば、局所巻き付け角の各々は、近位接触面境界67の直前に評価される腱長手経路T-Tと、遠位接触面境界68の直後に評価される腱長手経路T-Tとによって形成される角度として定義される。
【0115】
一実施形態によれば、各局所巻き付け角αまたはβは、たとえ面が不連続であるか、または鋭い点を有していても、接触を維持しながら腱が滑る面上に定義される。
【0116】
一実施形態によれば、各局所巻き付け角αまたはβは、1つの腱滑り面66に対する接触円の中心を基準にして測定される。
【0117】
一実施形態によれば、リンクの1つの腱滑り面18のすべての接触点は、局所巻き付け角αまたはβを画定するようにリンクの一部を包含する。
【0118】
一実施形態によれば、総巻き付け角α+βは、60度~300度の間に含まれる。
【0119】
一実施形態によれば、総巻き付け角α+βは、90度~270度の間に含まれる。
【0120】
一実施形態によれば、各リンク6、7、8はリンク妨害部(link encumber)を有する。一実施形態によれば、少なくとも1つの腱接触面18は、リンクのリンク妨害部を少なくとも部分的に画定する。
【0121】
一実施形態によれば、腱接触面18は円筒形である。一実施形態によれば、腱滑り面66は、円筒面の一部である。
【0122】
好ましい一実施形態によれば、腱はポリマー材料でできている。
【0123】
一実施形態によれば、腱は、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンまたはUHMWPE、Kevlar(登録商標)、Vectran(登録商標)、Zylon(登録商標)、ポリベンゾビスオキサゾール、炭素繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である。
【0124】
好ましい一実施形態によれば、腱中間部28はポリマー材料製である。このようにして、腱中間部28に、より少ない摩擦、寿命にわたるより少ない摩耗、したがってより少ない維持費を提供することが可能であり、他の材料の腱に対してより小さい直径を有する腱中間部28を実現することが可能である。
【0125】
一実施形態によれば、腱中間部28は、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンまたはUHMWPE、Kevlar(登録商標)、Vectran(登録商標)、Zylon(登録商標)、ポリベンゾビスオキサゾール、炭素繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である。
【0126】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱接触面18は、鋼、セラミックス、炭化物、チタン、液体金属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である。
【0127】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱滑り面66は、鋼、セラミックス、炭化物、チタン、液体金属、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である。
【0128】
好ましい一実施形態によれば、腱中間部28は超高分子量ポリエチレン製であり、少なくとも1つの腱滑り面66は鋼合金製である。好ましい一実施形態によれば、腱は超高分子量ポリエチレン製であり、少なくとも1つの腱滑り面66は鋼製である。このようにして、0.04~0.08の範囲の摩擦係数を得ることができる。このようにして、腱中間部28の静止摩擦が回避される。
【0129】
一実施形態によれば、腱滑り面66と腱中間部28との間の乾燥滑り摩擦は、0.1以下の摩擦係数を有する。例えば、そのような腱滑り面66にわたるそのような腱中間部28の乾燥滑り摩擦は、ほぼ0.5に等しい摩擦係数をもたらす金属腱滑り面上を滑る金属腱中間部によって画定される乾燥滑り摩擦よりも5倍超小さい。
【0130】
好ましい一実施形態によれば、摩擦係数は0.1未満である。
【0131】
一実施形態によれば、総巻き付け角は、ほぼ360度に等しい。巻き付け角にわたって腱滑り面上を滑る腱の総摩擦は、腱張力に摩擦係数と巻き付け角との間の積の指数を乗じたものに比例することは注目に値する。したがって、摩擦係数の減少により、比例して大きな巻き付け角を使用することができる。より大きな巻線ケーブルを使用できることにより、リンク構造体上に腱を配置する可能性が広がり、小型化が困難な腱ガイド要素の使用を回避する。
【0132】
一実施形態によれば、リンク6、7、8の妨害部は、8mm以下、好ましくは5mm以下の、好ましくは、2ミリメートル~5ミリメートルの範囲の大きさのジョイントサブアセンブリ5の長手延長部を横断する方向に最大延長部を有する。
【0133】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、全体として、2ミリメートル~5ミリメートルの範囲の直径を有する円筒形の容積に適合する。
【0134】
好ましい一実施形態によれば、腱中間部28は、0.5ミリメートル以下の直径を有し、好ましくは、0.005ミリメートル~0.5ミリメートルの間に含まれる直径を有する。
【0135】
一実施形態によれば、腱は略円形の断面を有する。一実施形態によれば、腱の直径は、腱の異なる部分で可変である。一実施形態によれば、腱の機械的特性は、腱の異なる部分で可変である。一実施形態によれば、腱は、異なる特性を有する腱の部分をジョイントすることにより得られる。一実施形態によれば、腱は、シャフト中空コアの内部を走る直線部分の補強ロッド要素に接続される。一実施形態によれば、腱は、異なる特性を有する腱の部分をジョイントすることにより得られる。
【0136】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱滑り面66は、鋼、セラミックス、チタン、炭化物、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される材料製である。一実施形態によれば、構造体リンクの少なくとも1つは、マイクロ射出成形によって製造される。一実施形態によれば、構造体リンクのうちの少なくとも1つは、当該技術分野で公知の最良の最終寸法公差のために液体金属のマイクロ射出成形により製造され、部品は最大寸法が5mm未満であり、貫通孔はない。一実施形態によれば、構造体リンクの少なくとも1つは、特に弾力性と脆弱点の欠如という最高の機械的性能のために液体金属のマイクロ射出成形によって製造される。
【0137】
好ましい一実施形態によれば、腱中間部28は超高分子量ポリエチレン製であり、少なくとも1つの腱滑り面66は鋼製である。好ましい一実施形態によれば、腱は超高分子量ポリエチレン製であり、少なくとも1つの腱滑り面66は鋼製である。このようにして、0.04以下の摩擦係数を得ることが可能である。このようにして、腱中間部28の摩擦が回避される。
【0138】
一実施形態によれば、腱滑り面66と腱中間部28との間の乾燥滑り摩擦は、0.1以下の摩擦係数を有する。一実施形態によれば、腱滑り面66と腱19との間の乾燥滑り摩擦は、0.1以下の摩擦係数を有する。
【0139】
好ましい一実施形態によれば、摩擦係数は0.1未満である。
【0140】
一実施形態によれば、総巻き付け角は、ほぼ360度に等しい。例えば、そのような腱接触面18上のそのような腱中間部28の乾燥滑り摩擦は、ほぼ0.5の摩擦係数を有する、金属腱滑り面上を滑り、90度の総巻き付け角を有する金属腱中間部により画定される乾燥滑り摩擦より小さい。
【0141】
一実施形態によれば、リンク6、7、8の妨害部は、8mm以下、好ましくは5mm以下、好ましくは2ミリメートル~5ミリメートルの範囲に含まれるジョイントサブアセンブリ5の長手延長部を横断する方向に最大延長部を有する。
【0142】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、全体として、2ミリメートル~5ミリメートルの範囲の直径を有する円筒形の容積に適合する。
【0143】
好ましい一実施形態によれば、腱19、好ましくは、腱中間部28は、0.5ミリメートル以下の直径を有し、好ましくは、0.005ミリメートルから0.5ミリメートルの間に含まれる直径を有する。
【0144】
一実施形態によれば、腱は略円形の断面を有する。一実施形態によれば、腱の直径は、腱の異なる部分で可変である。一実施形態によれば、腱の機械的特性は、腱の異なる部分で可変である。一実施形態によれば、腱は、異なる特性を有する腱の部分をジョイントすることにより得られる。
【0145】
一実施形態によれば、制御ユニット4は、第2のコマンド信号を少なくとも1つのアクチュエータ25に送信するのに適したアクチュエータ駆動ユニット58に接続されている。一実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニット4はCPUを含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニット4は、少なくとも1つのプロセッサユニットを含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの制御ユニット4は、例えば、少なくとも1つのアクチュエータ25によって提供される変位および/または加えられる力などの動きを検出するのに適した検出システムによって取得された情報に基づいてフィードバック制御回路を提供する。一実施形態によれば、マスターツール2は、外科医30によって取り扱われるように設計されている。一実施形態によれば、手術器具70の少なくとも一部は、患者29の解剖学的構造上で操作するように設計されている。
【0146】
一実施形態によれば、手術器具70は、少なくとも1つのジョイントサブアセンブリ5を含む。
【0147】
一実施形態によれば、「ジョイントサブアセンブリ」という用語は、手術器具70のエンドエフェクタの位置を支持するおよび/または手術器具70のエンドエフェクタの位置を配向するおよび/または手術器具70のエンドエフェクタの位置を配置するおよび/または手術器具70のエンドエフェクタの位置に影響を与えるのに適したジョイントによって次々に接続された一連のリンクを指す。一実施形態によれば、機能的観点から、ジョイントサブアセンブリは、ロボットまたはメカトロニクス構造の手首関節、肘関節または肩関節であり得る。
【0148】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5はリンクを含む。
【0149】
好ましい一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、少なくとも第1のリンク6、第2のリンク7、および第3のリンク8を含む。このように、ジョイントサブアセンブリ5は、少なくとも3つのリンク6、7、8を含む。
【0150】
一実施形態によれば、第1のリンク6は第1のリンク構造体9から形成され、第1のリンク構造体9は単一部品である。
【0151】
好ましい一実施形態によれば、用語「単一部品」は、動作状態にあるとき、1つのリンク構造体内で任意の自由度が回避されることを示す。一実施形態によれば、用語「単一部品」は、リンク構造体が、1つのリンク構造体内の任意の自由度を回避するように互いにジョイントされた2つ以上の部品を含むことができることを示す。
【0152】
一実施形態によれば、用語「単一部品」は、動作状態にあるとき、2つ以上の部品の相対的な空間的配向が堅くロックされるように互いにジョイントされた2つ以上の部品を含むことができることも示す。
【0153】
一実施形態によれば、用語「単一部品」はまた、リンク構造体がモノブロックであることを示す。
【0154】
一実施形態によれば、第2のリンク7は第2のリンク構造体10から形成され、第2のリンク構造体10は単一部品である。
【0155】
一実施形態によれば、第3のリンク8は、第3のリンク構造体11から形成され、第3のリンク構造体11は単一部品である。
【0156】
一実施形態によれば、各リンクはリンク構造体で形成される。
【0157】
一実施形態によれば、第1のリンク構造体9は、第1ジョイント近位部を形成する第1のリンク遠位部12を含み、第2のリンク構造体10は、第1ジョイント遠位部を形成する第2のリンク近位部13を含む。一実施形態によれば、第1のリンク構造体9の第1のリンク遠位部12は、クレビスジョイントを形成するのに適した方法で、2つのクレビスプロングを含む。一実施形態によれば、第2のリンク近位部13は、クレビスジョイントを形成するのに適した方法で、2つのクレビスプロングを含む。
【0158】
一実施形態によれば、第1のリンク遠位部12および第2のリンク近位部13は協働して、第1のリンク6と第2のリンク7との間に1自由度を提供する第1のジョイント14を少なくとも部分的に形成する。好ましい一実施形態によれば、第1のリンク6と第2のリンク7との間の1自由度は、第1のジョイント軸X-Xの周りの回転並進自由度であり、好ましくは、回転並進自由度は、第1のジョイント軸X-Xの周りの回転自由度である。
【0159】
一実施形態によれば、第2のリンク構造体10は、第2ジョイント近位部を形成する第2のリンク遠位部15をさらに含み、第3のリンク構造体11は、第2ジョイント遠位部を形成する第3のリンク近位部16を含む。一実施形態によれば、第2のリンク遠位部15は、クレビスジョイントを形成するのに適した方法で、2つのクレビスプロングを含む。一実施形態によれば、第3のリンク近位部16は、クレビスジョイントを形成するのに適した方法で、2つのクレビスプロングを含む。
【0160】
一実施形態によれば、第2のリンク遠位部15と第3のリンク近位部16は協働して、第2のリンク7と第3のリンク8との間に1自由度を提供する第2のジョイント17を少なくとも部分的に形成する。好ましい一実施形態によれば、第2のリンク7と第3のリンク8との間の1自由度は、第2のジョイント軸Y-Yの周りの回転並進自由度であり、好ましくは、回転並進自由度は、第2のジョイント軸Y-Yの周りの回転自由度である。
【0161】
一実施形態によれば、第1のジョイント14および第2のジョイント17はそれぞれ、1自由度を提供するのに適している。
【0162】
一実施形態によれば、第1のジョイント14は、第1のジョイント軸X-X周りの相対回転を除く全方向において第1のリンク6と第2のリンク7との間の相対運動をロックするのに適している。一実施形態によれば、第2のジョイント17は、第2のジョイント軸Y-Yの周りの相対回転を除く全方向において第2のリンク7と第3のリンク8との間の相対運動をロックするのに適している。
【0163】
一実施形態によれば、第1のリンク構造体9、第2のリンク構造体10、および第3のリンク構造体11は、運動学的連鎖を形成する。一実施形態によれば、第1のリンク構造体9、第2のリンク構造体10、および第3のリンク構造体11は、直列に直接接続されて運動学的連鎖を形成する。
【0164】
一実施形態によれば、第1のリンク6は、第2のリンク7に対して隣接するリンクであり、運動学的連鎖内に介在するリンクはない。一実施形態によれば、第2のリンク7は、第1のリンク6と第3のリンク8の両方に対して隣接するリンクである。一実施形態によれば、第3のリンク8は、第2のリンク7に対して隣接するリンクである。一実施形態によれば、第1のリンク構造体9は、第2のリンク構造体10に対して隣接するリンク構造体である。一実施形態によれば、第2のリンク構造体10は、第1のリンク構造体9と第3のリンク構造体11の両方に対して隣接するリンク構造体である。一実施形態によれば、第3のリンク構造体11は、第2のリンク構造体10に対して隣接するリンク構造体である。
【0165】
一実施形態によれば、運動学的連鎖は、運動学的連鎖の2つ以上の分岐を含むことができる。一実施形態によれば、2つ以上の分岐は、1つのジョイント、例えば第2のジョイント17から延在する。一実施形態によれば、運動学的連鎖の2つ以上の分岐は、少なくとも1つのリンクを共有する。一実施形態によれば、運動学的連鎖の2つ以上の分岐は、ジョイントサブアセンブリの3つのリンクのうちの少なくとも2つのリンクを共有する。
【0166】
一実施形態によれば、第1のジョイント14および第2のジョイント17の各々は、運動学的連鎖内のリンクに、運動学的連鎖内の隣接するリンクに対するジョイント軸周りの回転自由度を提供するように適合された機械的手段を指す。一実施形態によれば、ジョイント軸X-X、Y-Yの各々は、2つの隣接するリンクが、2つの隣接するリンクによって共有される共通ジョイント軸であり、その結果、共通ジョイント軸の周りで一方を他方に対して回転させることができる。一実施形態によれば、第1のジョイント14は第1のジョイント軸X-Xを画定し、第1のジョイント軸X-Xは、第1のリンク6および第2のリンク7の両方によって共有される共通ジョイント軸であり、その結果、2つの隣接するリンクは、共通のジョイント軸の周りに一方を他方に対して回転させることができる。一実施形態によれば、第2のジョイント17は第2のジョイント軸Y-Yを画定し、第2のジョイント軸Y-Yは、第2のリンク7および第3のリンク8の両方によって共有される共通ジョイント軸であり、その結果、2つの隣接するリンクは、共通のジョイント軸の周りに一方を他方に対して回転させることができる。
【0167】
一実施形態によれば、少なくとも3つのリンク6、7、8によって形成される運動学的連鎖は、2自由度を有する。
一実施形態によれば、少なくとも3つのリンク6、7、8によって形成される運動学的連鎖は、正確に2自由度を有する。言い換えれば、一実施形態によれば、少なくとも3つのリンク6、7、8によって形成される運動学的連鎖の自由度の総数は2である。一実施形態によれば、第1のリンク6、第2のリンク7、および第3のリンク8によって形成される運動学的連鎖は、正確に2自由度を有する。言い換えると、一実施形態によれば、第1のリンク6、第2のリンク7、および第3のリンク8によって形成される運動学的連鎖の自由度の総数は2である。
【0168】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、アクチュエータを含むことを回避する。一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、運動学的連鎖内にアクチュエータを含むことを回避する。一実施形態によれば、リンク間にアクチュエータは設けられない。
【0169】
一実施形態によれば、第1のリンク構造体9、第2のリンク構造体10、および第3のリンク構造体11のうち少なくとも2つは、少なくとも1つの腱滑り面66を含み、少なくとも1つの腱滑り面66が孔面であることを回避する。言い換えれば、少なくとも1つの腱接触面18は、リンク構造体9または10または11の貫通孔を画定することを回避する。一実施形態によれば、少なくとも1つの腱滑り面66に対する法線または直交線は、少なくとも1つの腱滑り面1866を含む構造体との交差を回避する。一実施形態によれば、腱滑り面66は、それ自体に面することを回避する。一実施形態によれば、腱接触面18は、腱中間面28を、腱滑り面66を含むリンク構造体から離れるように付勢する。
【0170】
一実施形態によれば、腱接触面18は、180度以下の角度にわたって腱の1つを包含する。一実施形態によれば、腱接触面18は、リンク構造体9、10、11のうちの1つの外面である。一実施形態によれば、腱接触面18は、リンク構造体9、10、11のうちの1つの妨害部を少なくとも部分的に画定する。一実施形態によれば、各腱は、第1の長手側部と第2の長手側部とを含み、第1の長手側部と第2の長手側部のうちの一方は、リンクの少なくとも1つと接触している。言い換えれば、第1の長手側部が所与のリンクと接触しているとき、第1の長手側部は、所与のリンクから離れて面している。一実施形態によれば、第1の長手側部および第2の反対側の長手側部の各々は、互いに分離したままで、実質的に180°の角度で腱を覆う。
【0171】
一実施形態によれば、手術器具70は、腱19、20、21、22、23、24、31、32を含む。一実施形態によれば、腱は、牽引のみで動作するのに適した作動ケーブルとして作用する。
【0172】
一実施形態によれば、手術器具70は少なくとも3つの腱を含む。少なくとも3つの腱の各腱は、少なくとも1つのアクチュエータ25に接続された腱近位部26と、第2のリンク7または第3のリンク8に固定された腱遠位部27と、腱近位部26と腱遠位部27との間に延在する腱中間部28とを含む。
【0173】
一実施形態によれば、手術器具70は、少なくとも4つの腱を含むようにさらなる腱を含み、少なくとも4つの腱のそれぞれの少なくとも1つの中間部28は、少なくとも1つの腱滑り面66においてのみジョイントサブアセンブリ5と接触する。
【0174】
一実施形態によれば、一対の腱は、同じリンクに固定されたそれらの腱遠位部27を有する。言い換えれば、一対の腱は、拮抗腱として機能するように、同じリンクに固定されている。一実施形態によれば、一対の腱は、拮抗腱として機能するように、それらの腱遠位部27を共有する。一実施形態によれば、拮抗腱として機能する一対の腱は、単一部品である。一実施形態によれば、腱19、20、21、22、23、24、31、32は、拮抗腱として機能するのに適した第1の一対の腱19、20を含む。一実施形態によれば、腱19、20、21、22、23、24、31、32は、拮抗腱として機能するのに適した第2の一対の腱21、22を含む。
【0175】
一実施形態によれば、一対の腱は、1つの腱として機能するように、同じリンクに固定されたそれらの腱遠位部27を有する。言い換えると、一対の腱は、1つの腱として平行に機能するように、同じリンクに固定されている。一実施形態によれば、一対の腱は、1つの腱として平行に機能するように、それらの腱遠位部27を共有する。一実施形態によれば、1つの腱として機能する一対の腱は、単一部品である。一実施形態によれば、腱19、20、21、22、23、24、31、32は、1つの腱として機能するのに適した第1の一対の腱19、20を含む。一実施形態によれば、腱19、20、21、22、23、24、31、32は、1つの腱として機能するのに適した第2の一対の腱21、22を含む。一実施形態によれば、腱19、20、21、22、23、24、31、32は、拮抗腱として機能するのに適した第3の一対の腱23、24を含む。一実施形態によれば、腱19、20、21、22、23、24、31、32は、拮抗腱として機能するのに適した第4の一対の腱31、32を含む。
【0176】
一実施形態によれば、第2のリンク7と第3のリンク8のうちの少なくとも一方は、腱遠位部27を受け入れるのに適した少なくとも1つの腱固定部49を含む。一実施形態によれば、第2のリンク7と第3のリンク8のうちの少なくとも一方は、拮抗腱として機能する2つの腱の腱遠位部27を受け入れるのに適した2つの腱固定部49を含む。例えば、図35に示すように、腱19および20は、1つの腱として平行に機能する。
【0177】
一実施形態によれば、各腱の腱中間部28は、もっぱら、第1のリンク構造体9、第2のリンク構造体10、および第3のリンク構造体11のうちの少なくとも2つの、少なくとも1つの腱滑り面66でジョイントサブアセンブリ5に接触する。これにより、腱を配置するための追加部品の必要性が回避され、部品数とアセンブリの困難性が最小限に抑えられる。これはまた、ジョイントアセンブリとのさらなる接触からの腱の不必要な摩擦および摩耗を回避する。
【0178】
好ましい一実施形態によれば、これにより、各腱の腱中間部28がジョイントサブアセンブリ5の他の部分と接触することが回避される。一実施形態によれば、各腱の腱中間部28は、少なくとも1つの腱滑り面66のみにおいてジョイントサブアセンブリと接触する。
【0179】
有利には、手術器具70の特徴のおかげで、ジョイントサブアセンブリ5の寸法を小型化することが可能である。
【0180】
一実施形態によれば、第1のリンク構造体9、第2のリンク構造体10、および第3のリンク構造体11のそれぞれは、少なくとも1つの腱接触面18を含む。
【0181】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱滑り面66は溝面である。言い換えれば、一実施形態によれば、腱滑り面は、少なくとも1つのリンクに形成された溝を少なくとも部分的に画定する。
【0182】
一実施形態によれば、リンク構造体の少なくとも1つのリンク構造体は、プーリ、例えばアイドルプーリ、すなわちリンクに回転可能に接続されたプーリなど、リンク構造体に対して別個の部品の付属部に接続することができるが、付属部は、腱中間部28のいずれか1つに接触面を提供することを避ける。
【0183】
一実施形態によれば、第1のリンク遠位部12および第2のリンク近位部13は、幾何学的結合で協働して、第1のジョイント14を形成する。一実施形態によれば、第2のリンク遠位部15および第3のリンク近位部16は、幾何学的結合で協働して、第2のジョイント17を形成する。
【0184】
一実施形態によれば、第1のジョイント14と第2のジョイント17のうちの少なくとも一方は、旋回ジョイント(車軸関節)である。一実施形態によれば、旋回ジョイントは、ジョイント軸X-XまたはY-Yに機械的旋回を提供する回転ジョイントである。
【0185】
一実施形態によれば、第1のジョイント14と第2のジョイント17のうちの少なくとも一方は、転がりジョイントである。一実施形態によれば、転がりジョイントは、転がり運動が固定ジョイント軸X-XまたはY-Yの周りで起こるように、それぞれの転がり面上で、リンクのリンク構造体と隣接リンクのリンク構造体との間の転がり接触を提供する。
【0186】
一実施形態によれば、第1のジョイント14と第2のジョイント17のうちの少なくとも一方はピンジョイントである。
【0187】
一実施形態によれば、ピンジョイントは、少なくとも1つのピン33と、少なくとも1つのピン33を受領するのに適した少なくとも1つのピン座34とを含む。一実施形態によれば、ピン33は、一般的な長手延在部として。
【0188】
一実施形態によれば、少なくとも1つのピン33は、少なくとも1つのピン33を受領する少なくとも1つのピン座34よりも小さい直径であり、その結果、クリアランスがピン33とピン座34の結合をもたらす。
【0189】
一実施形態によれば、ピン座34は、リンク構造体9、10、11のうちの少なくとも1つによって画定された貫通孔である。
【0190】
一実施形態によれば、ピン座34は、リンク構造体9、10、11のうちの少なくとも1つによって画定された空洞である。
【0191】
一実施形態によれば、ピン座34は、少なくとも1つのピン33よりも狭い空洞口40を有する空洞であり、空洞口40は、ピン33を受領するのに適していない。このような空洞は、ピン33がピン33の長手延在部と交差する方向にピン座34を出るのを防ぐ。
【0192】
一実施形態によれば、ピン座34は、ピン座34に面するピン座境界35によって画定される。好ましくは、ピン座境界35は、ピン座34に受領されたピン33に面するのに適している。
【0193】
一実施形態によれば、第1のリンク構造体9の第1のリンク遠位部12、第2のリンク構造体10の第2のリンク近位部13、第2のリンク構造体10の第2のリンク遠位部15、および第3のリンク構造体11の第3のリンク近位部16のうち少なくとも1つは、ピン33を受領するためのピン座34を画定するピン座境界35を含む。
【0194】
一実施形態によれば、ピン座境界35は略円形である。一実施形態によれば、ピン座境界35は円周の弧を含む。一実施形態によれば、ピン座境界35は放物面形状を描く。一実施形態によれば、ピン座境界35は、ピン33と協働してカム従動子機構を形成するのに適したカム形状を描く。
【0195】
一実施形態によれば、第1のジョイント14と第2のジョイント17のうちの少なくとも一方はカムジョイントである。
【0196】
一実施形態によれば、第1のジョイント14と第2のジョイント17のうちの少なくとも一方は、クレビスジョイントである。一実施形態によれば、クレビスジョイントは、隣接するリンクのリンク構造体の一部、好ましくは隣接するリンクのリンク構造体の円筒状の嵌合部、を包含するリンクのリンク構造体の2つのクレビスプロング50によって形成される。
【0197】
一実施形態によれば、ピン33は、第1のリンク6および第2のリンク7に対して別個の部品で実現され、第1のリンク遠位部12および第2のリンク近位部13によって画定された少なくとも2つのピン座34にそれぞれ接続され、第1のジョイント14を形成する。
【0198】
一実施形態によれば、ピン33は、第2のリンク7および第3のリンク8に対して別個の部品で実現され、第2のリンク遠位部15および第3のリンク近位部16によって画定された少なくとも2つのピン座34にそれぞれ接続され、第2のジョイント17を形成する。
【0199】
一実施形態によれば、ピン33は、リンク6または7または8と一体である。
【0200】
一実施形態によれば、ピン33は、リンク構造体9または10または11と一体である。
【0201】
一実施形態によれば、少なくとも1つのピン33は、第1のリンク構造体9と一体であり、第1のリンク遠位部12から片持ち状に突出する。一実施形態によれば、少なくとも1つのピン33は、第2のリンク構造体10と一体であり、第2のリンク近位部13から片持ち状に突出する。一実施形態によれば、少なくとも1つのピン33は、第2のリンク構造体10と一体であり、第2のリンク遠位部15から片持ち状に突出する。一実施形態によれば、少なくとも1つのピン33は、第3のリンク構造体11と一体であり、第3のリンク近位部16から片持ち状に突出する。
【0202】
例えば図19に示されている一実施形態によれば、第1のジョイントと第2のジョイントのうちの少なくとも一方は、二重接続ジョイント36である。そのような二重接続ジョイント36のおかげで、2つの隣接するリンク間に1自由度を提供することが可能であり、詳細は、先行技術特許文献のUS-5710870に記載されている。一実施形態によれば、二重接続ジョイント36は、リンク構造体のうちの2つに接続された少なくとも1つのヒンジ支柱37を含む。好ましい一実施形態によれば、二重接続ジョイント36は、2つの対向するヒンジ支柱37を含む。
【0203】
一実施形態によれば、二重接続ジョイント36は、一対のヒンジ支柱37を介して互いに取り付けられたリンクおよび隣接するリンクによって形成される。一実施形態によれば、リンクおよび隣接リンクは、第1の旋回軸および第2の旋回軸を中心に旋回し、拘束構成要素は、リンクおよび隣接リンクを互いに対して回転するように拘束する。例えば、拘束構成要素は、互いに噛み合う固定された平歯車、または適切に配置された作動ケーブルであり得る。一実施形態によれば、拘束構成要素は、少なくとも1つのヒンジ支柱37である。
【0204】
一実施形態によれば、例えば図24および図25に示すように、第1のジョイント14と第2のジョイント17のうちの少なくとも一方は、互いに噛み合う対向ジョイント部によって形成される。一実施形態によれば、第1のリンク遠位部分12は少なくとも1つのジョイント近位溝38を画定し、第1のリンク遠位部分13は、少なくとも1つのジョイント遠位歯39を含み、ジョイント遠位歯39は、ジョイント近位溝38と協働して第1のジョイント14を形成する。一実施形態によれば、第2のリンク遠位部分15は少なくとも1つのジョイント近位溝38を画定し、第2のリンク遠位部分16は、少なくとも1つのジョイント遠位歯39を含み、ジョイント遠位歯39は、ジョイント近位溝38と協働して第2のジョイント17を形成する。一実施形態によれば、ジョイント近位溝38およびジョイント遠位歯39の両方は、ジョイント軸に略平行に延在する。
【0205】
一実施形態によれば、リンクの少なくとも1つ、好ましくは第3のリンク8は、末端要素42を受領するのに適したCホルダ部分41を含む。例えば、端子要素42は、レーザファイバ、灌注チューブ、吸引チューブ、または組織検知プローブであり得る。
【0206】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、手術器具70のエンドエフェクタの少なくとも一部を形成する。
【0207】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は手首サブアセンブリであり、第1のジョイント14は第2のジョイント17に略直交する。一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は手首サブアセンブリであり、第1のジョイント軸X-Xは第2のジョイント軸Y-Yに略直交する。
【0208】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は肘サブアセンブリであり、第1のジョイント14は第2のジョイント17と略平行である。一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は肘サブアセンブリであり、第1のジョイント軸X-Xは第2のジョイント軸Y-Yに略平行である。
【0209】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、別の第3のリンク構造体44から形成される別の第3のリンク43を含み、別の第3のリンク構造体44は単一部品である。
【0210】
一実施形態によれば、別の第3のリンク43の別の第3のリンク構造体44は、別の第3のリンク接合部45を含み、別の第3のリンク接合部45は、第2のリンク7の第2のリンク構造体10の第2のリンク遠位部分15と協働して、第2のリンク7と別の第3のリンク43との間に1自由度を提供する第2のジョイント17の一部を形成する。このようにして、第2のジョイント17は、第2のリンク7と第3のリンク8との間の1自由度を、第2のリンクと第3のリンク43との間に1自由度を、および結果として第3のリンク8と別の第3のリンク43との間に1自由度を提供する。
【0211】
一実施形態によれば、第3のリンク8は運動学的連鎖の第1の分岐を形成し、別の第3のリンク43は運動学的連鎖の第2の分岐を形成し、第1の分岐と第2の分岐は第2のジョイント17で接続される。このように、運動学的連鎖は分岐運動学的連鎖である。
【0212】
一実施形態によれば、第3のリンク8および別の第3のリンク43は、手術器具70の器具先端部46を形成する。一実施形態によれば、器具先端部46は、把持の内部自由度を有する。一実施形態によれば、器具先端部46は、第2のリンク7に対して少なくとも1つのヨー(yaw)自由度を有する。
【0213】
一実施形態によれば、ジョイントサブアセンブリ5は、少なくとも1つの追加のリンク47を含む。一実施形態によれば、少なくとも1つの追加のリンク47は、追加のリンク構造体48から形成される。一実施形態によれば、追加のリンク構造体48は、追加のジョイントを形成する隣接するリンクに接続される。例えば、追加のリンク構造体48は、第3のリンク構造体11の一部と追加のジョイントを形成することができる。一実施形態によれば、追加のリンク構造体48は、隣接するさらに追加のリンク構造体に接続されてジョイントを形成する。
【0214】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱接触面18は、複数の直線によって形成された罫線面である。一実施形態によれば、各腱接触面18は、複数の直線によって形成される罫線面である。一実施形態によれば、複数の直線はすべて、ジョイント軸X-XまたはY-Yに平行である。好ましくは、複数の直線はすべて、少なくとも1つの腱接触面18の近くに位置するジョイント軸X-XまたはY-Yに平行である。
【0215】
一実施形態によれば、少なくとも1つの腱接触面18は凸面である。
【0216】
一実施形態によれば、第1の構造体9、第2の構造体10、および第3の構造体11のうちの少なくとも1つのリンク構造体は、2つ以上の腱接触面18を含む。
【0217】
一実施形態によれば、2つ以上の腱接触面18はすべて、その延長部と共に1つの凸状容積を画定する凸状面である。一実施形態によれば、「凸状容積」という文言は、凸状容積内部に選択された一対の点があると仮定したとき、それらの間のより短い直線結合が全体として凸状容積内にあることを意味する。これにより、腱を案内するためにプーリに溝またはチャネルを設けることが回避され、リンク構造体およびジョイントサブアセンブリ5の寸法をさらに小型化することができる。一実施形態によれば、リンクの少なくとも1つのリンク構造体の複数の腱接触面18はすべて、その延長部と共にリンク構造体のリンク凸殻を画定する。一実施形態によれば、リンク凸殻は、リンクの1つを包む膜内に含まれる体積として定義される。
【0218】
一実施形態によれば、手術器具70は、シャフト51を含む。
【0219】
好ましい一実施形態によれば、第1のリンク6は、シャフト51に直接接続される。
【0220】
一実施形態によれば、手術器具70は、スレーブマニピュレータ3の一部に取り外し可能に接続されるのに適した少なくとも1つのフレーム52を含む。一実施形態によれば、手術器具70は、スレーブマニピュレータ3のアクチュエータコンパートメントに取り外し可能に接続されるのに適した少なくとも1つのフレーム52を含み、アクチュエータコンパートメントは、モータコンパートメント69またはモータボックス69を画定する少なくとも1つのアクチュエータ25を収容する。一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ25は、スレーブマニピュレータ3の一部内に収容されている。
【0221】
一実施形態によれば、手術器具70は、スレーブマニピュレータ3に取り外し可能に接続されている。
【0222】
一実施形態によれば、手術器具70は、スレーブマニピュレータ3に可逆的に接続されている。
【0223】
一実施形態によれば、シャフト51は、フレーム52とジョイントアセンブリ5との間に延在する。
【0224】
一実施形態によれば、シャフト51は剛体シャフトである。一実施形態によれば、シャフト51は、腱の通過を可能にする中空コアを有する。
【0225】
一実施形態によれば、シャフト51は可撓性シャフトである。一実施形態によれば、シャフト51は、腱の少なくとも1つを案内するチャネルを含む。
【0226】
一実施形態によれば、シャフト51は、フレーム52に近位で接続され、ジョイントサブアセンブリ5の第1のリンク6に遠位で接続され、管状要素接続部61を形成する。一実施形態によれば、管状要素接続部61は剛結合であり、シャフト51と第1のリンク6との間に任意の自由度を提供することを回避する。一実施形態によれば、管状要素接続部61は、管状要素ピン座63、好ましくは穴に挿入された少なくとも2つの管状要素ピン62を含む。好ましくは、管状要素ピン座63は、剛結合を提供するために、少なくとも2つある。一実施形態によれば、シャフトは、第1のリンク6に遠位に接続され、結合ははんだを含む。
【0227】
一実施形態によれば、シャフト51は、シャフト51の長手延在軸に略一致する長手シャフト軸r-rを画定する。一実施形態によれば、シャフト51は、長手シャフト軸r-rの周りの回転(ロール)のさらなる自由度をジョイントサブアセンブリ5に提供するように、長手シャフト軸r-rの周りに回転して、ジョイントサブアセンブリにロール運動を提供するのに適している。
【0228】
一実施形態によれば、第1のリンク構造体9、第2のリンク構造体10、および第3のリンク構造体11は、それぞれ通過ペイロード孔を含み、すべての通過ペイロード孔は、1つのペイロード要素64を受領するのに適するように、好ましくは、運動学的連鎖にほぼ沿って延在するように互いにほぼ整列している。一実施形態によれば、ペイロード要素64は、灌注チューブ、レーザファイバ、焼灼ワイヤ、一対の焼灼ワイヤ、曲げ検知要素のうちの1つであり、ペイロード要素64が腱である、および/または作動ケーブルとして機能することを回避する。
【0229】
一実施形態によれば、腱遠位部分27はボスを含む。一実施形態によれば、腱遠位部分27はループを含む。一実施形態によれば、腱遠位部分27は結び目を含む。一実施形態によれば、腱遠位部27は、ジョイントサブアセンブリ5の一部に接着される部分を含む。一実施形態によれば、腱遠位部分27は、リンク6、7、8の一部の周りに複数回巻き付けられる部分を含む。一実施形態によれば、部分は、腱の直径に略等しい曲率半径で巻き付けられる。
【0230】
一実施形態によれば、腱近位部26は、フレーム52の一部に接着されている。一実施形態によれば、腱は、接着面を最大にするように、その第1の腱近位部26の周りでストランドに解かれる。
【0231】
一実施形態によれば、腱の少なくとも1つ、好ましくは腱の各腱は、もっぱら、腱近位部26および腱遠位部分27に印加される引張負荷の下で機能するのに適しており、腱が挟まれるか、チャネル内で横方向に誘導されるか、またはシースを含むことを回避する。
【0232】
一実施形態によれば、腱の少なくとも1つ、好ましくは腱の各腱は、腱の引張破壊強度の少なくとも半分に等しい大きさの少なくとも2つの負荷を含む負荷サイクルで予め伸長されるのに適している。
【0233】
一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3は、手術器具70に3つのデカルト自由度を提供するのに適した少なくとも1つのマイクロマニピュレータを含む。
【0234】
一実施形態によれば、少なくとも1つのアクチュエータ25は、少なくとも押圧要素53を含み、手術器具70は、その近位フレーム52に、腱に接続された少なくとも1つのプランジャ54を含み、手術器具70が、スレーブマニピュレータ3に接続されるときはいつでも、押圧要素53は、プランジャ54を押して、プランジャ54がプランジャ54に接続された腱の腱近位部26を偏向させることを決定し、腱の腱遠位部分に接続されたリンクの動きを得るのに適している。
【0235】
一実施形態によれば、スレーブマニピュレータ3と手術器具70との間に無菌バリア55が挿入される。一実施形態によれば、無菌バリア55は、スレーブマニピュレータ3の少なくとも1つの押圧要素53と手術器具70の少なくとも1つのプランジャ54との間に挿入される。一実施形態によれば、少なくとも1つのプランジャは、プランジャに接続された腱近位部26に対してプランジャを付勢するのに適した弾性要素56に接続される。一実施形態によれば、プランジャ54は、腱近位部26に接触する腱接触部分57を含む。一実施形態によれば、プランジャ54の腱接触部分57は、ガイドプーリを含む。一実施形態によれば、腱近位部26は、複数のプーリによって案内される。
【0236】
一般的な一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれか1つに記載の手術器具70が提供される。
【0237】
一般的な一実施形態によれば、前述の実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つのスレーブマニピュレータ3と、前述の実施形態のいずれか1つに記載の少なくとも1つの手術器具70とを含むスレーブアセンブリが提供される。
【0238】
個別にまたは組み合わせて提供される上記の構成により、適用可能な場合、特定の実施形態では、上記で開示された時には対照的なニーズを満たし、前述の利点を得ることが可能であり、特に:
【0239】
スレーブ手術器具の小型化が提供される。
【0240】
アイドルプーリを使用せず、3つのリンクの構造体のいずれかを貫通する孔またはガイドチャネルを使用せずに、ジョイントサブアセンブリの横径が5mm未満の極端な小型化を実現できる。
【0241】
腱は、中間リンクの構造体上を滑ってより遠位のリンクを作動させ、すでにジョイントサブアセンブリ、例えば、手首サブアセンブリが直線構成になっているときに、中間リンク構造体の周りを90度だけ包むことが達成される。これは生成される滑り摩擦の増加に起因することが従来技術によって教示されているが、上記のいくつかの実施形態では、90度包むことにより、遠位リンクが曲がったときに腱がリンクの直径内に留まるように腱を拘束するために、腱に孔またはチャネルを通過させるのではなく、リンクの外面上で腱を滑らせることができる。
【0242】
腱は、リンクの外面上に平衡状態に置かれ、張力と表面摩擦力に起因する最小エネルギー経路を見つけ、急激な曲げを完全に回避する。このようにして、鋼よりも強く、腱材料または外面材料用の金属基材、例えば、鋼に対してはるかに低い摩擦を有することが知られているポリエチレン、UHMWPEなどのポリマー製の腱の使用が可能になる。鋼製の腱または他のポリマー製の腱とは異なり、ポリエチレンまたはUHMWPE製のポリマー腱は、鋭いエッジまたは側壁を滑ることによって引き起こされる摩耗に苦しむ。したがって、リンクの外面上に腱を配置し、それらを外面に平衡に置く設計により、ポリマー腱が外面上で平らになり、その摩耗を最小限に抑えることができる。
【0243】
腱とリンクとの間の合計摩擦は、増加するのではなく大幅に減少され得る、なぜなら、摩擦係数が、鋼に対する鋼ケーブルの0.5から、鋼合金に対するポリエチレンの0.04~0.08まで減少することにより、キャプスタン方程式におけるより大きな巻き付け角または包み角度(約1.5ラジアンに等しい90度)の増加が効果的に相殺されるためである。
【0244】
当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、付随するニーズを満たすために、上記の実施形態に対して多くの変更および適応を行ってもよく、または要素を機能的に均等な要素に置き換えてもよい。
(発明の開示)
(項目1)
スレーブマニピュレータ(3)と、前記スレーブマニピュレータ(3)に接続可能で、且つジョイントサブアセンブリ(5)を含む手術器具(70)とを備えるロボット手術アセンブリ(1)であって、前記ジョイントサブアセンブリ(5)は、少なくとも第1のリンク(6)と、第2のリンク(7)と、第3のリンク(8)とを含み、
前記第1のリンク(6)および前記第2のリンク(7)は、前記第1のリンク(6)と前記第2のリンク(7)との間に自由度を与える第1のジョイント(14)に接続され、
前記第2のリンク(7)および前記第3のリンク(8)は、前記第2のリンク(7)と前記第3のリンク(8)との間に自由度を与える第2のジョイント(17)に接続され、
前記手術器具(70)は、自由度を動かすための少なくとも1つの腱(19)を含み、
前記腱(19)は、前記第3のリンク(8)に固定された腱遠位部(27)を含み、
前記第1のリンク(6)と前記第2のリンク(7)のうちの少なくとも一方は、少なくとも1つの腱接触面(18)を含み、前記腱(19)は、前記少なくとも1つの腱接触面(18)上を、前記少なくとも1つの腱接触面(18)と接触したまま、腱滑り面(66)を画定する前記少なくとも1つの腱接触面(18)と局所相対運動を有して滑り、前記少なくとも1つの腱接触面(18)上に1つ以上の滑り経路(65)を画定し、
前記第1のリンク(6)および前記第2のリンク(7)のすべての腱滑り面(66)のすべての滑り経路(65)の合計は、総巻き付け角(α+β)を画定し、
前記ジョイントサブアセンブリ(5)の少なくとも1つの構成では、前記総巻き付け角(α+β)は120度以上である、
ロボット手術アセンブリ(1)。
(項目2)
前記総巻き付け角(α+β)は、60度~300度の間に含まれる、項目1に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目3)
前記ジョイントサブアセンブリ(5)がその直線構成にあるとき、前記総巻き付け角(α+β)は90度以上である、項目1または2に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目4)
前記総巻き付け角(α+β)は、90度~270度の間に含まれる、項目1~3のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目5)
前記腱は、ポリマー材料製である、項目1~4のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目6)
前記腱(19)は、ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンまたはUHMWPE、Kevlar(登録商標)、Vectran(登録商標)、Zylon(登録商標)、ポリベンゾビスオキサゾール、炭素繊維、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である、項目1~5のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目7)
前記少なくとも1つの腱接触面(18)は、鋼、鋼合金、炭化物、チタン、液体金属、セラミックス、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料製である、項目1~6のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目8)
前記腱(19)は超高分子量ポリエチレン製であり、前記少なくとも1つの腱接触面(18)は鋼製である、項目1~7のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目9)
前記腱接触面(18)と前記腱(19)との間の乾燥滑り摩擦が、0.1以下の摩擦係数を有する、および/または、
前記摩擦係数は0.1未満である、項目1~8のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目10)
前記リンク(6、7、8)の妨害部が、前記ジョイントサブアセンブリ(5)の長手延長部に対して横断方向に、8ミリメートル以下、好ましくは5ミリメートル以下の、好ましくは2ミリメートル~5ミリメートルの範囲に含まれる最大延長部を有する、項目1~9のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目11)
前記腱(19)は、0.5ミリメートル以下の直径を有し、好ましくは、0.005ミリメートル~0.5ミリメートルの間に含まれる直径を有する、項目1~10のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目12)
前記腱(19)は、少なくとも1つのアクチュエータ(25)に接続されるのに適した腱近位部(26)と、前記第3のリンク(8)に固定された腱遠位部(27)と、前記腱近位部(26)と前記腱遠位部(27)との間に延在する腱中間部(28)とを含み、前記腱中間部(28)は、少なくとも1つの腱滑り面(66)を画定する前記少なくとも1つの腱接触面(18)上を滑る、項目1~11のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目13)
前記腱(19)および前記腱接触面(18)は、局所相対運動の結果として局所摩擦力を交換する、項目1~12のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
(項目14)
前記腱遠位部(27)は、腱接触面(18)上を滑るのに適していない、項目1~13のいずれか一項に記載のロボット手術アセンブリ(1)。
【符号の説明】
【0245】
1 ロボット顕微手術アセンブリ
2 マスターツール
3 スレーブまたはスレーブマニピュレータ
4 制御ユニット
5 ジョイントサブアセンブリ
6 第1のリンク
7 第2のリンク
8 第3のリンク
9 第1のリンク構造体または第1のリンクの構造体
10 第2のリンク構造体または第2のリンクの構造体
11 第3のリンク構造体または第3のリンクの構造体
12 第1のリンク構造体の第1のリンク遠位部
13 第2のリンク構造体の第2のリンク近位部
14 第1のジョイント
15 第2のリンク構造体の第2のリンク遠位部
16 第3のリンク構造体の第3のリンク近位部
17 第2のジョイント
18 腱接触面
19,20,21,22,23,24,30,31 腱
25 アクチュエータ
26 腱近位部
27 腱遠位部
28 腱中間部
29 患者
30 外科医
33 ピン
34 ピン座
35 ピン座境界
36 二重接続ジョイント
37 ヒンジストラット
38 ジョイント近位溝部
39 ジョイント遠位歯
40 空洞口
41 cホルダ部分
42 端子要素
43 別の第3のリンク
44 別の第3のリンク構造体
45 別の第3のリンクジョイント部
46 器具先端部
47 追加リンク
48 追加リンク構造体
49 腱固定部
50 クレビスプロング
51 シャフト
52 フレーム
53 押圧要素
54 プランジャ
55 無菌バリア
56 弾性要素
57 プランジャの腱接触部
58 アクチュエータ駆動ユニット
59 第1のコマンド信号
60 第2のコマンド信号
61 管状要素接続部
62 管状要素ピン
63 管状要素ピン座
64 ペイロード要素
65 滑り経路
66 腱滑り面
67 近位接触面境界
68 遠位接触面境界
69 モータボックスまたはモータコンパートメント
70 医療器具または手術器具または器具
X-X 第1のジョイント軸
Y-Y 第2のジョイント軸
r-r シャフトの長手方向
T-T 腱長手経路
α 局所巻き付け角または第1の局所巻き付け角
β 局所巻き付け角または第2の局所巻き付け角
α+β 総巻き付け角
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
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図10
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図13A
図13B
図14
図15
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