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特許7231262骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/02 20060101AFI20230221BHJP
   A61F 5/01 20060101ALI20230221BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61F5/02 K
A61F5/01 K
A41D13/05 125
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021092629
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2017143939の分割
【原出願日】2017-07-25
(65)【公開番号】P2021151500
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】516145851
【氏名又は名称】岩上 明治
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】岩上 明治
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-024572(JP,A)
【文献】登録実用新案第3115777(JP,U)
【文献】特開2013-005929(JP,A)
【文献】特開2000-308667(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107479(JP,U)
【文献】登録実用新案第3069298(JP,U)
【文献】国際公開第2012/011550(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3161520(JP,U)
【文献】実開昭60-002532(JP,U)
【文献】中国実用新案第206120686(CN,U)
【文献】中国実用新案第202191470(CN,U)
【文献】中国実用新案第201930219(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01 - A61F 5/02
A61H 39/02
A61H 39/04
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨盤のまわりに巻き付けて骨盤を構成する仙骨と腸骨の関節部分の開きや歪みを矯正するために使用する下腹部締付け用の緊締可能な骨盤ベルトと、
断面視略L字状の先端先鋭の上端縁部を押圧機能部とした押圧矯正器具と、を備え、
骨盤ベルトは、押圧矯正器具の押圧機能部で押圧する押圧矯正箇所表示のために外側表面に押圧位置目印をプリント印刷表示して構成し、
押圧矯正器具は、骨盤ベルトの外側表面の押圧位置目印に沿って骨盤ベルト上面から押圧して上下又は左右又は半円弧上に施術操作するように構成したことを特徴とする骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具。
【請求項2】
押圧位置目印は、
骨盤の押圧矯正位置を視認できる人体の骨盤骨格模式図と縦線の組み合わせで構成し、 骨盤骨格模式図は、ベルト本体の長手方向において患者の腰部分に巻き付けた際の重複固定手段による重複端部を考慮した偏心位置、且つ患者の実際の骨盤骨格に一致して患者の骨盤骨格の実体が視認できる腰対応背面部分位置でプリント印刷により表示すると共に、 縦線は、骨盤骨格模式図上で押圧矯正位置をなぞった位置にプリント印刷により表示して構成したことを特徴とする請求項1に記載の骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具。
【請求項3】
押圧矯正器具は、
側縦断面視で略L字状とし且つ正面視で略直線或いは緩いカーブの上端縁部を有した全体略方形状であって、
側縦断面視で略L字状の縦辺部の先端部且つ正面視で全体略方形状の上端縁部で先端先鋭状に形成され、骨盤ベルトの外側から外側表面の押圧位置目印を介して患者の患部に押圧される押圧機能部と、
側縦断面視で略L字状の横辺部且つ正面視で全体略方形状の基端部で最大肉厚に形成され、押圧機能部が患者の患部に押圧された時に把持される押圧グリップ部と、より構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具。
【請求項4】
骨盤の押圧矯正位置をなぞった縦線は、骨盤の骨格模式図における左右半部にそれぞれ5つずつ対称的に配置し、
第1線体は、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の最外側面の略上半部で、且つ大臀筋外側部分上の位置に相応する位置に、
第2線体は、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の中央部略上半部における中臀筋略中央部分と梨状筋外側部分との各部位に跨る位置に相応する位置に、
第3線体は、仙腸関節に近接した梨状筋の体軸側部分、骨盤底筋の外側部分、及び内閉鎖筋の体軸側部分との各部位に跨る位置に相応する位置に、
第4線体は、仙腸関節を構成する仙骨の下半部左右側における骨盤底筋の略左右半部分上の位置に相応する位置に、
第5線体は、仙腸関節を構成する仙骨の最下部に位置する仙骨尖から尾骨に至る側縁部分における骨盤底筋略中央部分上の位置に相応する位置に、
骨盤ベルトの表面にそれぞれ表示して構成したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腰部のぎっくり腰やヘルニアの症状を改善するために整骨技術として用いるための骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腰部のぎっくり腰やヘルニアの症状の原因は、骨盤を構成する正面視で略逆三角形状の仙骨と、その両側面に当接位置して仙骨の側方から裏側へ回り込んだ平面視略半円弧状の腸骨との当接部分、すなわち、仙骨と腸骨の仙腸関節に無用な開きや歪みが生じていることから生じるとされている。
【0003】
従って、この関節部分の矯正、すなわち、関節に付着する靭帯や筋肉を刺激してその緊張や弛緩を図り仙腸関節の歪み等を矯正して腰部のぎっくり腰やヘルニア等の症状を解消できることは医学的に認知されている。
【0004】
この仙骨関節の矯正技術としては、例えば患部を刺激する遠赤外線放出セラミックを所定位置に設けた骨盤矯正ベルト(例えば、特許文献1参照。)や、支持体に吊り下げたコルセットを腰部分に装着して自重負担を軽減して矯正する骨盤矯正器(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0005】
しかしながら、いずれの技術においても骨盤に付着する靭帯や筋肉を刺激して骨盤矯正をするような工夫はなされておらず、結果、施術者がその経験と習得技術によって骨盤構成組織の施術有効位置を探り当て指圧等の徒手療法により骨盤を所定方向に押圧刺激しながら仙腸関節に付着する靭帯や筋肉の緊張弛緩を図って骨盤の異常を矯正する技術が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-56887号
【文献】特開2004-121785号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、かかる施術者の技術による仙腸関節の矯正施術にあっては、当然に施術者の技量の差が施術成果に影響を及ぼすと共に、特に指圧等の徒手療法による施術は骨盤の広範囲にわたって長時間行われるために施術作業の負荷が大きく、患者によっては施術成果にバラつきを生じ画一的な矯正施術を期待できない恐れがあった。
【0008】
そこで、かかる施術作業の負荷を軽減するために所定形状の指圧用具を使用する場合があるが、従来のように直接に指や手掌で骨盤骨格を触りながら矯正有効位置を探り当てて行う徒手療法においては矯正位置の特定がある程度正確になされるため問題はないが、指圧用具を使用する場合は矯正有効位置からずれた個所を不用意に施術してかえって患部の悪化を招き矯正効果を期待できない場合が生じる。
【0009】
この発明では、骨盤に緊締状に巻いたベルト表面の押圧位置目印を有効矯正個所と認識し、矯正効果を最大限に発揮できる押圧用具を用いることにより、施術者の作業負荷を可及的に軽減すると共に、適確な押圧位置に施術することにより適確迅速な仙腸関節の矯正が行える骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、骨盤のまわりに巻き付けて骨盤を構成する仙骨と腸骨の関節部分の開きや歪みを矯正するために使用する下腹部締付け用の緊締可能な骨盤ベルトと、断面視略L字状の先端先鋭の上端縁部を押圧機能部とした押圧矯正器具と、を備え、骨盤ベルトは、押圧矯正器具の押圧機能部で押圧する押圧矯正箇所表示のために外側表面に押圧位置目印をプリント印刷表示して構成し、押圧矯正器具は、骨盤ベルトの外側表面の押圧位置目印に沿って骨盤ベルト上面から押圧して上下又は左右又は半円弧上に施術操作するように構成したことを特徴とする骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具を提供せんとするものである。
【0011】
また、押圧位置目印は、骨盤の押圧矯正位置を視認できる人体の骨盤骨格模式図と縦線の組み合わせで構成し、骨盤骨格模式図は、ベルト本体の長手方向において患者の腰部分に巻き付けた際の重複固定手段による重複端部を考慮した偏心位置、且つ患者の実際の骨盤骨格に一致して患者の骨盤骨格の実体が視認できる腰対応背面部分位置でプリント印刷により表示すると共に、縦線は、骨盤骨格模式図上で押圧矯正位置をなぞった位置にプリント印刷により表示して構成したことを特徴とする
【0012】
また、押圧矯正器具は、側縦断面視で略L字状とし且つ正面視で略直線或いは緩いカーブの上端縁部を有した全体略方形状であって、側縦断面視で略L字状の縦辺部の先端部且つ正面視で全体略方形状の上端縁部で先端先鋭状に形成され、骨盤ベルトの外側から外側表面の押圧位置目印を介して患者の患部に押圧される押圧機能部と、側縦断面視で略L字状の横辺部且つ正面視で全体略方形状の基端部で最大肉厚に形成され、押圧機能部が患者の患部に押圧された時に把持される押圧グリップ部と、より構成したことを特徴とする。
【0013】
また、骨盤の押圧矯正位置をなぞった縦線は、骨盤の骨格模式図における左右半部にそれぞれ5つずつ対称的に配置し、第1線体は、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の最外側面の略上半部で、且つ大臀筋外側部分上の位置に相応する位置に、第2線体は、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の中央部略上半部における中臀筋略中央部分と梨状筋外側部分との各部位に跨る位置に相応する位置に、第3線体は、仙腸関節に近接した梨状筋の体軸側部分、骨盤底筋の外側部分、及び内閉鎖筋の体軸側部分との各部位に跨る位置に相応する位置に、第4線体は、仙腸関節を構成する仙骨の下半部左右側における骨盤底筋の略左右半部分上の位置に相応する位置に、第5線体は、仙腸関節を構成する仙骨の最下部に位置する仙骨尖から尾骨に至る側縁部分における骨盤底筋略中央部分上の位置に相応する位置に、骨盤ベルトの表面にそれぞれ表示して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
発明によれば、骨盤関節の歪みやずれの押圧施療時に最も効果的な押圧位置を骨盤ベルトによって視認することができる効果があり、しかも視認した押圧位置に押圧矯正器具の押圧機能部を当てがい所定の押圧施療を行うことでき少ない労力により適確な骨盤異常の矯正が行える効果がある。
【0016】
すなわち、押圧施療時に可動して安定しにくい仙腸関節の仙骨及び腸骨の当接位置にベルトを緊結して骨盤骨格やこれに付着する筋肉や靭帯などの骨盤組織群を固定状態とすることができ、しかも、押圧矯正器具により押圧施術をするために器具押圧力が骨盤骨格に有効に伝達されて骨盤に無理な応力をかけることなく骨盤を包被した骨盤組織群に刺激と弛緩作用を施し活性化する効果がある。
【0017】
その結果、骨盤組織群が互いにズレた腸骨と仙骨とを筋肉や靭帯の活性化により矯正して互いに適正位置へと導くことにより適正な骨盤の矯正が可能となる効果がある。
【0018】
また、押圧位置目印に押圧矯正器具を当がって押圧施療を行う際に押圧グリップ部を確実に把持しながら押圧位置目印へ押圧力を適確に伝えることができ、しかも押圧機能部は先端先鋭の長手状としているために骨盤の仙腸関節に係る各種の筋肉や靭帯を刺激して関節の異常を機能的に治癒することができることになる。
【0019】
従って、施術者の技量に係りなく患者に対して画一的な施療を施すことができる効果がある。
【0020】
すなわち、骨盤ベルトの表面に表示された押圧位置目印に当接させた押圧矯正器具により適確な押圧施術応力を生起し、矯正押圧が行えることになり、仙腸関節の歪み等の矯正効果を迅速正確に間違いなく奏することができる効果がある。
【0021】
しかも、押圧矯正器具は単なる板状の押圧指圧板と異なり略L字状の押圧グリップ部を形成し、かつ押圧部先端は直線的か緩やかな湾曲状の漸次薄肉状の押圧機能部としているために押圧位置目印、翻っては仙腸関節に係る人体や筋肉等の刺激位置に正確に当てがうことができ、かつ適確なグリップ機能と相俟って施術者の押圧応力を押圧位置目印を介して仙腸関節の矯正有効位置に最大限に及ぼすことができる効果がある。
【0022】
また、骨盤ベルトは、伸縮自在の弾性ベルトにより構成し、端部にベルト本体の重複固定手段を設けることとすれば、骨盤ベルトを骨盤に容易に巻きつけて緊締することができ、押圧矯正器具の矯正機能をより向上し骨盤の仙腸関節異常の治癒効果をより向上することができる効果がある。
【0023】
また、発明によれば、骨盤ベルトの表面に表示した押圧位置目印は、骨盤の押圧矯正位置をなぞった縦線としたことにより、仙腸関節の異常を矯正する位置目印が縦線として表示されているので、押圧矯正器具の長手状の押圧機能部を正確に当てがうことができ施療効果をより向上することができる効果がある。
【0024】
また、骨盤ベルトの表面に表示した押圧位置目印は、骨盤の押圧矯正位置を視認できるように人体の骨盤骨格模式図とすれば、骨盤の仙腸関節及び押圧矯正の位置が実際の人体骨盤骨格の図として視認できることになり、人体の現実的な骨盤骨格組織を認識しながら施療位置を確認することができることになり視認施療と同じような治癒効果を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る骨盤矯正用具の骨盤ベルトの構成を示す説明図である。
図2】本発明に係る骨盤矯正用具の骨盤ベルトの変形例の構成を示す説明図である。
図3】本発明に係る骨盤矯正用具の骨盤ベルトの変形例の構成を示す説明図である。
図4】本発明に係る骨盤矯正用具の押圧矯正器具の構成を示す正面図である。
図5】本発明に係る骨盤矯正用具の押圧矯正器具の構成を示す側面図である。
図6】本発明に係る骨盤矯正用具の押圧矯正器具の使用状態を示す説明図である。
図7】本発明に係る骨盤矯正用具の押圧矯正器具の変形例の構成を示す側面図である。
図8】本発明に係る骨盤矯正用具の押圧矯正器具の変形例の使用状態を示す説明図である。
図9】本発明に係る骨盤矯正用具の使用状態を示す平面図である。
図10】本発明に係る骨盤矯正用具の使用状態を示す側面図である。
図11】本発明に係る骨盤矯正用具の使用状態を示す外観斜視図である。
図12】本発明に係る骨盤矯正用具により施術する骨盤を示す模式的正面図である。
図13】本発明に係る骨盤矯正用具により施術する骨盤を示す模式的平面図である。
図14】本発明に係る骨盤矯正用具の押圧位置目印と施術する骨盤との位置関係を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明は、骨盤を構成する仙骨と腸骨の関節部分の開きや歪みを矯正するために使用する下腹部締付け用の緊締可能な骨盤ベルトと、複数の押圧矯正箇所を表示するために骨盤ベルトの表面に表示した押圧位置目印と、下腹部に締付け装着した骨盤ベルトの押圧位置目印に沿って複数の押圧矯正箇所を骨盤ベルトを介して押圧しながら必要に応じて上下又は左右又は半円弧状に施術操作するための押圧矯正器具との組み合わせよりなり、しかも、押圧矯正器具は基部を押圧グッリプ部とし、先端部を断面略先端先鋭長手状の押圧機能部としたことを特徴とする骨盤ベルトと押圧矯正器具との組み合わせからなる骨盤矯正用具を要旨とし、また、押圧矯正器具は、硬質素材により断面略L字状の肉厚に形成し、略L字状の立上がり辺部は先端縁部を正面視で略直線或いは緩い略湾曲状とし、側面視で先端に向かって漸次肉薄状とした押圧機能部とすると共に、略L字状の横辺部は最肉厚部とし押圧矯正施術時の押圧グリップ部としたことを特徴とし、また、骨盤ベルトは、伸縮自在の弾性ベルトにより構成し、端部にベルト本体の重複固定手段を設けたことを特徴とし、また、骨盤ベルトの表面に表示した押圧位置目印は、骨盤の押圧矯正位置をなぞった縦線としたことを特徴とし、また、骨盤ベルトの表面に表示した押圧位置目印は、骨盤の押圧矯正位置を視認できるように人体の骨盤骨格模式図としたことを特徴とし、また、骨盤ベルトの表面に表示した押圧位置目印の部分の表面は、押圧矯正器具の押圧機能部が滑りにくいようなスリップ防止機能を有することを特徴とした。
【0027】
以下、この発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。なお以下の説明では、まず骨盤矯正用具を構成する骨盤ベルトについて、次いで押圧矯正器具について、最後に本発明の骨盤矯正用具の使用例について説明する。
【0028】
〔1.骨盤ベルト〕
図1は骨盤ベルトの構成を示す説明図、図2及び図3は骨盤ベルトの変形例の構成を示す説明図である。また、図9は骨盤矯正用具の使用状態を示す平面図、図10は骨盤矯正用具の使用状態を示す側面図、図11は骨盤矯正用具の使用状態を示す外観斜視図、図12は骨盤を示す模式的正面図、図13は骨盤を示す模式的平面図、図14は骨盤ベルトの押圧位置目印と骨盤との位置関係を示す正面図である。
【0029】
骨盤ベルト1は、図1(a)及び図1(b)に示すように、一定の幅員で骨盤部分に緊締状態で巻きつけることができる長さを有した帯体に形成している。
【0030】
より具体的には、図1(a)に示すように、骨盤ベルト1は人体Pの下腹部、すなわち腰部と臀部とを包被するように巻きつけて骨盤を締付けることが出来るような弾性素材により構成し、かかる素材の弾性機能により骨盤を腰部表面から締付けるように機能させて、巻きつけた状態で人体Pの腰部分形状を外部に顕出させる。
【0031】
骨盤矯正に係る押圧施術は、基本的には後述する押圧矯正器具2により人体の臀部側、すなわち後方側を押圧するため、図13に示すように、骨盤骨格を構成する左右の腸骨前部が左右に広がってしまい、適切な押圧施術効果を得られない恐れがある。
【0032】
このため、骨盤ベルト1により骨盤患部を巻回締結して仙骨と腸骨とを固定状態とすることにより押圧施療時に左右の腸骨前部が左右可動してしまうことを防止して骨盤骨格に付着する筋肉や人体を的確に押圧矯正することができる効果がある。
【0033】
骨盤ベルト1の素材は、伸縮性、すなわち弾性と可撓性とを有した素材で形成された生地あれば特に限定されることはなく、例えばポリウレタン、ポリエステル、発泡ゴムシート、生ゴムシートなどの合成生地、弾性ゴムが編み込まれれた天然生地であってもよい。なお本実施形態に係る骨盤ベルト1では伸縮性の生ゴムシートを採用している。
【0034】
なお、骨盤ベルト1の厚みは、素材の弾性や可撓性に応じて適宜変更することができ、後述する押圧矯正器具2による過度の押圧力の緩衝機能を有して施術に有効な押圧力を患部に作用させる厚みに形成している。なお本実施形態に係る骨盤ベルト1の厚みは約1.0mm~2.0mmとしている。
【0035】
また、骨盤ベルト1の表面、特に押圧位置目印の部分の表面は、押圧矯正器具の押圧機能部が滑りにくいようなスリップ防止機能を果たすような素材、或いは加工を施している。
【0036】
骨盤ベルト1の表面のスリップ防止機能は、例えば、布製のベルトの場合は太糸の織成からなり表面が一定の凹凸を形成するように構成し、また、スリップ防止加工としては表面粗造加工として微細粒片の物質を付着させておく構成とする。
【0037】
重要なことは、骨盤矯正の押圧矯正器具2で骨盤ベルト1表面から押圧施術を行うものであるためベルト表面での滑動が生起しないようにする必要があり、そのためには上記した方法以外の滑動阻止加工を施すことができる。
【0038】
例えば、骨盤ベルト1の素材として発泡ゴムシートを採用した場合には、押圧矯正器具2で押圧する際に、骨盤ベルト1表面に満遍なく露出する無数の発泡孔を押圧矯正器具2の先端部表面と当接することでスリップ防止として機能させることができると共に骨盤ベルト1内部の無数の発泡を過度な押圧力を緩衝する緩衝材として機能させることができる。
【0039】
また、骨盤ベルト1の形状は、一定の幅員を有して骨盤部分に緊締状態で巻きつけることができる長さと幅員を有する帯状体であれば特に限定されることはない。例えば患者の骨盤部分、すなわち腰部分前後において隆起する臀部や腹部の曲面に合わせた流線形状を幅方向に略凹状に形成することも可能である。なお本実施形態に係る骨盤ベルト1は一般的な成人男性の腰回りに適合すべく長手を約110~130cm、短手を約25~35cmに形成し
ている。
【0040】
ここで、単純に骨盤ベルト1の幅員を説明すると、上縁部は人体の臍部に下縁部は尾骨を被覆する位置までの幅員に形成しておく。
【0041】
このような構成により骨盤ベルト1を患者の腰部分に巻きつけた際に、臀部や腹部への無用な緊締応力により患者に負荷をかけることがない効果があり、更には一定の幅員形状としたために装着時には確実に骨盤位置に適確に装着することができ、その後の押圧矯正施術を確実に行うことができる。
【0042】
また、骨盤ベルト1は、図10に示すように骨盤部分に緊締状態で巻きつけ固定するために端部にはマジックテープ(登録商標)や係合ホック等のベルトの重複固定手段11が設けられている。
【0043】
以上のように構成した骨盤ベルト1の形状については、他の変形例として、図2(a)に示すように身体に密着する短いパンツ状の装着具1aを使用してもよい。
【0044】
すなわち、図2(b)に示すように大腿部から腰にかけて短いパンツ状の装着具1aを着用して同時に尾骨から骨盤にかけて本発明の骨盤ベルト1を重複して緊締することにより、短いパンツ状の装着具1aと骨盤ベルト1との緊締相乗機能と後述するベルト表面の押圧位置目印10によって骨盤矯正治療を効果的に行う。
【0045】
また、骨盤ベルト1の表面には押圧矯正する位置に複数の押圧位置目印10を表示している。
【0046】
すなわち、骨盤ベルト1の表面に表示した押圧位置目印10は、図1(b)及び図11に示すように骨盤骨格における仙腸関節を中心とした施療押圧位置に肉太の所定長さとした縦状の線体として横並列に一定間隔で表示している。
【0047】
押圧位置目印10の表示位置は、帯状の骨盤ベルト1の長手方向において、患者の腰部分に付けた際に端部を重複して重複固定手段11により固定する重複位置を考慮した偏心位置に表示している。より具体的には、図10に示すように、押圧位置目印10は、骨盤ベルト1の重複固定手段11を設ける重複端部を除いた長手方向略中央部に表示している。
【0048】
なお、押圧位置目印10の縦状線体は最も代表的な仙腸関節施術位置として左右半部に5箇所(左右計10箇所)を対称的に表示しているが、必ずしもこの位置だけに限らず、また、表示位置の数も適宜取捨選択することができる。
【0049】
すなわち、患者の性別や年齢層、体格に合わせて適宜仙腸関節施術位置を変更表示することができる。なお、本実施例の説明では左右半部のそれぞれの押圧位置目印10のうち、左右片半部の目印について説明することとした。
【0050】
ここで、本発明の骨盤骨格矯正方法に関して使用する用語は以下のように定義される(
図12及び図13参照)。

(骨に関しての用語)
・仙骨―骨盤を構成する正面視で略逆三角形状の骨
・腸骨―骨盤を構成する骨で、仙骨両側面に当接位置して仙骨の側方から裏側へ
回り込んだ平面視略半円弧状の一対の骨
・尾骨―仙骨の最下部に位置する仙骨尖部分の骨で通常尾てい骨という
・大腿骨―大腿の中軸となっている長く太い棒状の骨
・脊椎―最下端で仙骨と接続し、骨格の体軸をなす骨

(関節に関しての用語)
・仙腸関節―仙骨と腸骨との当接部分 ・股関節―大腿骨上端と腸骨下部外側との
当接部分

(筋肉に関しての用語)
・大臀筋―中臀筋や梨状筋、上下双子筋、内閉鎖金などを被覆するように仙骨及び
尾骨の外側から大腿筋の外側部や大腿骨後方上部まで伸びる筋肉で、最表面側に
位置する筋肉
・中臀筋―腸骨上部外側から大腿骨上部外側の球状突起まで伸びる筋肉
・梨状筋―仙骨最下部内側から大腿骨上部外側の球状突起まで伸びる筋肉
・上双状筋―腸骨下部外側の棘状突起から大腿骨上部の球状突起の付け根まで
伸びる筋肉
・内閉鎖筋―腸骨下部内側面から大腿骨上部の球状突起の付け根まで伸びる筋肉
・下双子筋―腸骨最下部外側から大腿骨上部の球状突起の付け根まで伸びる筋肉
・骨盤底筋―仙骨底部から腸骨底部に向かって骨盤骨格底部を被覆するように
伸びる膜状の筋肉
・大腿方形筋―腸骨下部外側から大腿骨上部外側の球状突起まで伸びる筋肉
【0051】
以下、本実施例では5個所の線体を第1、2、3、4、5線体と称しており、図12乃至図13の骨盤骨格模式図に従い骨盤ベルト1表面の線体の位置及び各線体を目印とした押圧矯正器具2による押圧療法の形態について説明する(なお、ここで説明する方向記載は、人体が起立した場合における左右・上下・傾斜・円弧として記載している)。
【0052】
図14に示すように、第1線体L1は、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の最外側面の略上半部で、且つ大臀筋外側部分上の位置に相応する位置とした。
【0053】
第2線体L2は、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の中央部略上半部における中臀筋略中央部分と梨状筋外側部分との各部位に跨る位置に相応する位置とした。
【0054】
第3線体L3は、仙腸関節に近接した梨状筋の体軸側部分、骨盤底筋の外側部分、及び内閉鎖筋の体軸側部分との各部位に跨る位置に相応する位置とした。
【0055】
第4線体L4は、仙腸関節を構成する仙骨の下半部左右側における骨盤底筋の略左右半部分上の位置に相応する位置とした。
【0056】
第5線体L5は、仙腸関節を構成する仙骨の最下部に位置する仙骨尖から尾骨に至る側縁部分における骨盤底筋略中央部分上の位置に相応する位置とした。
【0057】
ここで、骨盤ベルト1に表示される押圧位置目印10の各縦状線体は骨盤ベルト1表面に断面凹状溝として形成し、しかも凹状溝の底部には漸次肉薄状とした押圧矯正器具2の押圧機能部3が密接に嵌合するようにして押圧機能部3を正確な位置に定置し押圧療法時にずれることが無いようにすると共に押圧矯正器具2の押圧応力が無駄なく骨盤の治療位置に伝達されるように形成している。
【0058】
このようにベルト表面の縦状線体に沿って凹状溝を形成することにより、押圧矯正器具2の押圧機能部3がベルト表面で滑動しないスリップ防止機能を果たすことができ、結果的に押圧刺激を骨盤組織群へ的確に付与することができる効果がある。
【0059】
また、骨盤ベルト1に表示される押圧位置目印10の各縦状線体は、骨盤ベルトにおいて各縦状線体以外の領域よりも大きい可撓性を有した素材で形成してもよい。例えば、骨盤ベルト1において各縦状線体以外の領域を高弾性を有した生ゴムシートで形成すると共に各縦状線体を高可撓性を有した発泡ゴムシートで形成することもできる。
【0060】
また、図3に示すように、骨盤ベルト1の表面に表示した押圧位置目印10は、骨盤の押圧矯正位置を視認できるように図12で示した人体の骨盤骨格模式図としてもよい。
【0061】
具体的には、人体の骨盤骨格模式図を骨盤矯正に対応する骨盤ベルト1表面に表示しておくものであり、骨盤ベルト1を患者の腰部分に巻き付けた際には患者の実際の骨盤骨格とベルト表面の骨盤骨格模式図とが一致して患者の骨盤骨格の実体がベルト表面の骨盤骨格模式図を介して視認できることになる。
【0062】
なお、骨盤ベルト1表面に縦状線体や骨盤骨格模式図などの押圧位置目印10を表示するにあたってはベルト表面にプリント表示するものとする。
【0063】
従って、骨盤を構成する骨を静置して押圧矯正器具2における押圧機能部3の適確な定置及び押圧施術運動が円滑に行われ骨盤矯正治療が効率的に行われる効果がある。
【0064】
また、ベルトの代わりに図2(a)で示したようなスパッツ(短パン)を用いて、布性繊維の素材よりなるスパッツの着用時の骨盤骨格対応部分、例えばスパッツの腰対応背面部分に骨盤骨格の模式図をプリント印刷等の方法により画いておくこととしてもよい。
【0065】
患者は前述の骨盤ベルト1を腰に囲繞する代わりにこのスパッツを着用して骨盤ベルト1の骨格画の代わりにスパッツの上に画いた骨盤骨格図をもとに所定位置の押圧治療を行う。
【0066】
なお、かかる布性繊維を素材としたスパッツを用いる場合は、前述の骨盤ベルト1のゴム素材による緩衝機能がないために、図5に示すように押圧矯正器具2の押圧機能部3にゴムカバー38を被覆して骨盤骨格に直接に器具の押圧機能部3が接触せずにゴムカバー38を介して押圧接触して緩衝機能を果たすことにより構成している。
【0067】
〔2.押圧矯正器具〕
次に本実施形態に係る押圧矯正器具について図面を参照しながら詳説する。図4及び図5は押圧矯正器具の構成を示す正面図及び側面図、図6は押圧矯正器具の使用状態を示す説明図、図7は変形例に係る押圧矯正器具の構成を示す正面図、図8は変形例に係る押圧矯正器具の使用状態を示す説明図である。
【0068】
押圧矯正器具2は、骨盤ベルト1表面の押圧位置目印10に当接させて骨盤骨格を押圧施術をするために使用する。すなわち、骨盤ベルト1を腰部に締付け装着した後に患者を俯き状態に寝かせてベルト表面の押圧位置目印10に相応した押圧矯正箇所を押圧する。
【0069】
押圧矯正器具2は、素材は硬質の樹脂や木製とすると共にその表面は施術時に押圧皮膚面で不用意に滑動しないように、また、施術者が把持する際にグリップしやすいように全体粗造面に加工している。
【0070】
押圧矯正器具2の形状は、図4及び図5に示すように、正面視で全体略方形状とした断面略L字形状としており、押圧機能を果たす上端縁部、すなわち略L字状の立上がり辺部30は、正面視で略直線或いは緩いカーブを有する略湾曲状とし、側面視で先端に向かって漸次肉薄状とし、かかる上端縁部の立上がり辺部30を押圧機能部3としている。
【0071】
すなわち、押圧矯正器具2は、硬質素材により側面視略L字状の肉厚に形成され、略L字状の短辺部分を押圧グリップ部4として機能する横辺部40とすると共に、略L字状の長辺部分を押圧機能部3として機能する立上り辺部30としている。なお、本実施形態において側面視による立上り辺部30の肉厚は約8~30mm、横辺部40の肉厚は5~40mmとなるように形成している。
【0072】
立上り辺部30は、図4に示すように、正面視において、最頂部に位置する略円弧状の押圧上端縁31と、押圧上端縁31の一端から下方に向けて押圧上端縁31よりも低い湾率で湾曲する押圧一端縁32と、押圧上端縁31の他端から押圧上端縁31より高い曲率で湾曲する押圧他端縁33と、押圧一端縁32から緩やかに下方湾曲する一側縁34と、押圧他端縁33から下方急傾斜する略直線状の他側縁35と、を有し、立上り辺部30の上部の押圧上端縁31、押圧一端縁32、押圧他端縁33を押圧施術における押圧機能部3として機能させる。
【0073】
また、図5に示すように、側面視において、略L字状の立上がり辺部30をなす内側長辺36と外側長辺37とは、それぞれ先端に向かって互いに交差するように伸延して立上がり辺部30を漸次肉薄状とすると共に交差部分に相当する立上がり辺部30頂部の押圧上端縁31、押圧一端縁32、押圧他端縁33、すなわち押圧機能部3を緩やかな湾曲面として形成している。
【0074】
押圧機能部3の幅員は、立上がり辺部30を漸次肉薄状に形成することにより骨盤ベルト1上に表示された押圧位置目印10の各線条表示や骨盤骨格模式図の有効矯正箇所の幅員以下の幅員で形成している。なお、本実施形態において側面視による押圧機能部3の肉厚は、約8~15mmとなるように形成している。
【0075】
そして、施術する際には、図6に示すように押圧機能部3の押圧上端縁31を押圧施術箇所に当接して押圧力を付与した場合には、押圧上端縁31の円弧形状に沿った押圧刺激を付与することができる。
【0076】
一方で、押圧一端縁32により押圧した場合にはその緩やかな湾曲形状に沿って押圧上端縁31よりも穏やかな押圧刺激を、また、押圧他端縁33により押圧した場合には押圧上端縁31よりも強めの押圧刺激を付与することができる。
【0077】
また、図5に示すように、略L字状の横辺部40は最肉厚部とし立上がり辺部30の幅員D1の約5分の1~約4分の1の幅員D2とし、略L字状の屈曲部に相当する立上り辺部30との接続基端部42と、同接続基端部42から外方に向かって突出する突出段部41とを有した押圧グリップ部4を形成している。
【0078】
また、略L字状の横辺部40は、突出段部41の上面、すなわち略L字状の内側に相当する略平坦状或いは略円弧状に形成した指掛け段部面40aと、略L字状の横辺部40の接続基端部42と突出段部41との底面、すなわち略L字状の底面に相当する略直線状或いは略円弧状に形成した手掌当接面40cとを有している。
【0079】
なお、本実施形態において側面視による立上がり辺部30の幅員D1は約10~12cmとし、略L字状の横辺部40の幅員D2は約2cm~2.5cmとしている。また、押圧グリップ部4は、正面視における横幅の長さを、図11に示すように両手(両拳)の手指を横並びにして把持できる長さとしており、本実施形においては約18cm~25cmとしている。
【0080】
そして、施術者が押圧矯正器具2を把持する際には、図6に示すように、親指を立上がり辺部30の平坦面に、他の4本の指を略L字状の横辺部40に当てがい押圧グリップ部4を指と手掌で掴むようにしてしっかりとグリップすることができる。
【0081】
すなわち、押圧グリップ部4は、人手で把持する場合に、親指を辺部30の外側長辺37面に、手掌面を略円弧状の手掌当接面40cに、他の4本の指を略円弧状の指掛け段部面40aにあてがい、人手との当接面積が可及的拡大した最も力の入りやすい自然な掌握姿勢に適応したグリップ形状としている。
【0082】
また、横辺部40の突出段部41における指掛け段部面40aは、図7に示すように、側面視において略L字状の内側の鈍角屈曲部から先端に向かって下方傾斜した傾斜グリップ面40bとして形成してもよい。
【0083】
従って、施術者が押圧矯正器具2を把持する際には、図8に示すように傾斜グリップ面40bに沿って他の4本の指の腹を当てがうことにより手掌と押圧グリップ部4との当接面積を可及的拡大することができ、把持した手指を確実に掛止できる押圧グリップ部4とすることができる。
【0084】
また、図6図8乃至図10に示すように、押圧グリップ部4は、略L字状の横辺部40の手掌当接面40cを施術者からの押圧力付与中心となる端面として機能させ、施術者の体重を付加した押圧力F1を立上り辺部30を介して押圧機能部3先端に伝達するのに効果的な押圧施術をすることができる形状としている。
【0085】
より具体的には、骨盤ベルト1上から押圧施術するに際し、押圧グリップ部4の手掌当接面40cの接続基端部42に相当する面は、図10に示すように、施術者の腕部末端の掌底から付与される押圧力F1方向を立上り辺部30の軸芯方向と略同じ方向にするように把持可能としている。
【0086】
また、押圧グリップ部4の手掌当接面40cの突出段部41に相当する面は、施術者の腕部末端の掌底からやや偏心して付与される押圧力F2方向を立上り辺部30の頂部に相当する押圧機能部3方向へ向かうように把持可能としている。
【0087】
すなわち横辺部40は立上り辺部30と一体形成されているため、横辺部40の突出段部41に付与した押圧力F2は、押圧矯正器具2において突出段部41を力点とし、接続基端部42を支点とし、押圧機能部3を作用点として患部へ伝達される。
【0088】
その結果、図10に示すように接続基端部42や突出段部41の手掌当接面40cにそれぞれ付与された押圧力F1、F2は、押圧機能部3に向かって正合成された押圧力F3を生起する。
【0089】
このように押圧矯正器具2は、横辺部40を押圧矯正器具2の操作性や手指による押圧付与効率を向上させた押圧グリップ部4とすると共に、立上り辺部30先端を集中的な押圧力F3を生起できる押圧機能部3としている。
【0090】
そして、このように構成した押圧矯正器具2は、上述のように構成した骨盤ベルト1と組み合わさって骨盤矯正の正確且つ簡易な施療効果を最大限発揮できる。
【0091】
すなわち、押圧位置目印10を表示した骨盤ベルト1を介して押圧矯正器具2により押圧することにより、押圧矯正器具2の押圧機能部3に集中した押圧力F3を骨盤ベルト1により患部に適切な押圧力へと変換して押圧施術箇所に作用させる効果がある。
【0092】
より具体的には、骨盤ベルト1は、その厚みや素材に応じて押圧矯正器具2の押圧機能部3の形状に合わせて撓むことで陥入変形し、過度の押圧力を緩和して患部に有効且つ適正な押圧力へと変換する。
【0093】
一方、押圧矯正器具2は、上述の構成を備えることで骨盤ベルト1を介しても患部の深部にまで作用させるのに充分な押圧力F3を生起できる。
【0094】
特に、骨盤ベルト1におけるスリップ防止機能と押圧矯正器具2の押圧機能とが相乗的に働くことにより押圧力F3を確実に骨盤ベルト1で捉えて患部へ伝達でき、骨盤骨格の正確且つ的確な押圧矯正を行うことができる。
【0095】
このような骨盤ベルト1と押圧矯正器具2との組み合わせからなる相乗機能を有した骨盤矯正用具Aを使用して実際に施療をする際には、図9乃至図11に示すように、押圧矯正器具2の押圧グリップ部4を指と手掌で掴み立上がり辺部30である押圧機能部3を骨盤ベルト1の押圧位置目印10、すなわち、上記した第1線体L1から第5線体L5に順次当てがいながら押圧施療する。
【0096】
施療動作としては、押圧矯正器具2の押圧機能部3により骨盤ベルト1に表示された押圧位置目印10の各線体位置に対して上下、左右、円弧状等の各種の押圧動作を実施する。
【0097】
以下に、図11に示すような各線体位置における押圧動作形態を説明する(なお、ここで説明する方向記載は人体が起立した骨盤状態における方向について記載している)。
【0098】
第1線体L1においては、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の最外側面の略上半部で、かつ大臀筋外側部分上の位置に相応するように線条表示、すなわち第1線体L1を体軸に向かう横方向L1aへ押圧する。
【0099】
第2線体L2においては、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の中央部略上半部における中臀筋略中央部分と梨状筋外側部分との各部位に跨る位置に相応するに第2線体L2を斜め上方向(脊椎最下端位置の方向)L2aに向かって押圧する。
【0100】
第3線体L3においては、仙腸関節に近接した梨状筋の体軸側部分、骨盤底筋の外側部分、及び内閉鎖筋の体軸側部分との各部位に跨る位置に相応するように第3線体L3を下方斜めへ凹状円弧を描く方向(仙骨外側縁に沿う尾骨先端に向かう方向)L3aへ押圧する。
【0101】
第4線体L4においては、仙腸関節を構成する仙骨の下半部左右側における骨盤底筋の略左右半部の上部位置に相応するように第4線体L4を斜め上方(脊椎最下端位置の方向)L4aに向かって体軸方向に押圧する。
【0102】
第5線体L5においては、仙腸関節を構成する仙骨の最下部に位置する仙骨尖から尾骨に至る側縁部分における骨盤底筋略中央部分の上部位置に相応するように第5線体L5を真上方向(脊椎最下端位置の方向)L5aに向かって押し上げるように押圧する。
【0103】
このような押圧動作形態により、段階的に仙腸関節と各種筋肉との相乗作用を促して直接的及び間接的に骨盤骨格の矯正を行うことができる。
【0104】
すなわち、各骨格に対して段階的に付与された押圧力が直接的に骨盤骨格を適正位置へと変位させるだけでなく骨格に付着介在する筋肉を活性化することにより筋肉の伸縮運動を生起させて間接的に骨盤骨格同士を適正位置へと変位させて確実な骨盤骨格の矯正を行うことができる。
【0105】
〔3.骨盤矯正用具を使用して施術する形態〕
以下、本発明の骨盤矯正用具Aを使用して施術する形態について説明する。本発明にかかる骨盤矯正用具Aの骨盤ベルト1と押圧矯正器具2とは上述のように構成されており、骨盤ベルト1と押圧矯正器具2の相乗作用により患者Pに施術を行う。
【0106】
まず、図1に示すように、患者Pの下腹部、すなわち骨盤周りに骨盤ベルト1を巻きつけ緊締した状態で患者Pを俯きに寝かせる。より具体的には、図10に示すように骨盤ベルト1端部に設けた重複固定手段11を患者Pの腹部側で連結し、患者Pの骨盤を骨盤ベルト1により締付ける。
【0107】
ベルトを固定するに際しては骨盤ベルト1表面に表示した押圧位置目印10を骨盤の対応位置に合わせて固定し、患者Pを俯せ状態において骨盤ベルト1に表示された押圧位置目印10が背側に位置して矯正位置の目印となる。
【0108】
なお、骨盤ベルト1に表示された押圧位置目印10と患者Pの骨盤骨格位置との一定の位置合わせは、図10に示すように、患者Pの背骨、すなわち脊椎位置(図中、一点鎖線で示す。)と押圧位置目印10として表示した各種線体の中央位置、又は骨盤骨格模式図の脊椎位置とを互いに重ね合わせることにより行う。
【0109】
その後、触診にて得た患者Pの骨盤骨格位置と押圧位置目印10との微調整を行い、骨盤ベルト1の装着位置を確定させる。
【0110】
次いで、図9乃至図11に示すように骨盤ベルト1に表示された押圧位置目印10、すなわち押圧位置目印10の最外側の第1線体L1から第5線体L5にわたって順次押圧矯正器具2により押圧していく。
【0111】
具体的には、図14に示すように第1線体L1における押圧施療では、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の最外側面の略上半部で、かつ大臀筋外側部分上の位置に相応するように骨盤ベルト1表面に形成された線条表示、すなわち第1線体L1に押圧機能部3を押し当てた状態で体軸に向かう横方向L1aから押圧する。
【0112】
その結果、体軸に向かう横方向L1aの押圧力が腸骨に作用して仙腸関節部分の腸骨を仙骨側に接近させると共に大臀筋やその下側の中臀筋に作用して大臀筋や中臀筋、大腿方形筋を活性化する。
【0113】
特に、第1線体L1の押圧施術では、第1線体L1の略全域L10、すなわち大臀筋の外側中央部を押圧中心とした押圧施術を行い大臀筋外側部分に押圧力を確実に作用させて主に大臀筋の活性化を促す。
【0114】
その結果、活性化した大臀筋が仙骨及び尾骨と大腿骨との間で伸縮することにより股関節を介して仙腸関節部分の腸骨と仙骨とを近接離反させて矯正を図る。
【0115】
次に、第2線体L2における押圧施療では、仙腸関節を構成する左右半部腸骨の中央部略上半部における中臀筋略中央部分と梨状筋外側部分との各部位に跨る位置に相応するように第2線体L2を斜め上方向L2aに向かって押圧する。
【0116】
その結果、斜め上方向L2aの押圧力が仙腸関節部分の腸骨を仙骨側に斜め上方向に接近させると共に腸骨や仙骨を被覆したり腸骨や仙骨に跨る各種筋肉、すなわち中臀筋、上双子筋、梨状筋、下双子筋を活性化する。
【0117】
特に第2線体L2の押圧施術では、第2線体L2の略上半部L20、すなわち中臀筋の略中央部分を押圧中心部として押圧して主に中臀筋の活性化を促す。
【0118】
その結果、活性化した中臀筋が大腿骨と仙骨との間で伸縮することにより股関節を介して仙腸関節部分の腸骨と仙骨とを近接離反させて矯正を図る。
【0119】
次に、仙腸関節に近接した梨状筋の体軸側部分、骨盤底筋の外側部分、及び内閉鎖筋の体軸側部分に跨る位置に相応するように第3線体L3を下方斜めへ円弧を描く方向L3aへ押圧する。
【0120】
その結果、下方斜め円弧方向L3aの押圧力が仙腸関節部分において腸骨を仙骨の外側に沿うに下斜め方向に近接させると共に梨状筋、骨盤底筋、下双子筋、内閉鎖筋を活性化する。
【0121】
特に第3線体L3の押圧施術では、第3線体L3の上半部L30、すなわち梨状筋の体軸側部分を押圧中心部として押圧して主に梨状筋の活性化を促し、活性化した梨状筋が大腿骨と仙骨との間で伸縮することにより股関節を介して仙腸関節部分の腸骨と仙骨とを近接離反させて矯正を図る。
【0122】
次に、第4線体L4では、仙腸関節を構成する仙骨の下半部左右側における骨盤底筋の略左右半部の上部位置に相応するように第4線体L4を斜め上方向L4aに向かって体軸方向に押圧する。
【0123】
その結果、斜め上方向L4aの押圧力が仙腸関節部分において仙骨を腸骨内側に近接させると共に骨盤底筋を活性化する。
【0124】
特に第4線体L4の押圧施術では、第4線体L4の略上半部L40、すなわち骨盤底筋の略左右半部の上部を押圧中心部として押圧して骨盤底筋の活性化を促し、活性化した骨盤底筋が腸骨と仙骨との間で伸縮することにより仙腸関節部分の腸骨と仙骨とを近接離反させて矯正を図る。
【0125】
次に、第5線体L5では、仙腸関節を構成する仙骨の最下部に位置する仙骨尖から尾骨に至る側縁部分における骨盤底筋略中央部分の上部位置に相応するように第5線体L5を真上方向L5aに向かって押し上げるように押圧する。
【0126】
その結果、真上方向L5aの押圧力が仙腸関節部分における仙骨と腸骨と互いの上下位置を適正位置に変位させると共に骨盤底筋を更に活性化する。
【0127】
特に第5線体L5の押圧施術では、第5線体L5の略上半部L50、すなわち骨盤底筋略中央部の上部を押圧中心部として押圧して骨盤底筋の更なる活性化を促し、腸骨と仙骨との間での骨盤底筋の伸縮を活発化させて仙腸関節部分の腸骨と仙骨とを互いに近接離反させることで矯正を図る。
【0128】
このような骨盤矯正用具Aによる各線体の押圧施療においては、特に施術者は押圧グリップ部4を把持し略L字状の横辺部40を確実にかつ強固に5本の指で包みながら線体の目印に沿って押圧施術を行う。
【0129】
このような押圧グリップ部4形状の把持により押圧応力は押圧機能部3から骨盤に付着する人体や筋肉を介して各線体対応の仙腸関節組織に及び最終的に仙腸関節の緩みや無用な拡大を矯正することができる。
【0130】
すなわち、骨盤ベルト1と押圧矯正器具2との組み合わせによる段階的な押圧刺激が、直接的に骨盤を構成する腸骨と仙骨とに作用して腸骨と仙骨とを互いに適正位置へ変位することを助長するだけでなく、腸骨や仙骨に付着する骨盤組織群に作用して骨盤組織群の活性化を促し、活性化した骨盤組織群の伸縮動作に伴う適正位置変位の間接的な骨盤矯正を行うことを可能とし、施療後においても活性化した骨盤組織群による持続的な施療効果を得ることができる。
【0131】
このように本発明に係る骨盤矯正用具によれば、骨盤に緊締状に巻いた骨盤ベルトの表面の押圧位置目印を有効矯正個所と認識し、骨盤ベルトに対応して矯正効果を最大限に発揮できる押圧矯正器具を用いることにより、施術者の作業負荷を可及的に軽減すると共に、適確な押圧位置に施術することにより適確迅速な仙腸関節の矯正を行うことができる。
【符号の説明】
【0132】
A 骨盤矯正用具
1 骨盤ベルト
2 押圧矯正器具
3 押圧機能部
4 押圧グリップ部
P 患者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14