(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230221BHJP
C08J 3/215 20060101ALI20230221BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230221BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20230221BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20230221BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20230221BHJP
C01B 32/19 20170101ALN20230221BHJP
C01B 32/21 20170101ALN20230221BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J3/215 CET
C08J3/215 CEZ
C08K3/04
C08K7/00
C08L25/06
C08L77/00
C01B32/19
C01B32/21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021164546
(22)【出願日】2021-10-06
(62)【分割の表示】P 2017504705の分割
【原出願日】2015-07-29
【審査請求日】2021-11-04
(32)【優先日】2014-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510144959
【氏名又は名称】ラトガース,ザ ステート ユニバーシティ オブ ニュー ジャージー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ノスカー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リンチ,ジェニファー
(72)【発明者】
【氏名】カー,ベナード
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ゴードン
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531052(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146213(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0072613(US,A1)
【文献】特表2011-513167(JP,A)
【文献】特開2012-136712(JP,A)
【文献】国際公開第2013/058181(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/062226(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00-13/08
C08J 3/00-3/28
C01B 32/00-32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマーマトリクス内に、複合体の総重量
の35%か
ら50%で、グラファイトマイクロ粒子、単層グラフェンナノ粒子、多層グラフェンナノ粒子、およびこれらの2以上の組み合わせから選択される粒子を実質的に均一な分布で含み、
前記粒子の少なくとも50重量%は、c軸方向に沿って50ナノメートル未満の厚さの、前記熱可塑性ポリマー中で不活性ガス雰囲気または真空下で機械的に剥離された単層および/または多層グラフェンナノ粒子からなり;および
前記熱可塑性ポリマーは、半芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、または高密度ポリエチレンであり、
前記単層および/または多層グラフェンナノ粒子の底面を横切って形成される前記単層および/または多層グラフェンナノ粒子の裂け目を含み、
前記裂け目のエッジは、1または2以上の溶融された前記熱可塑性ポリマーと反応して、熱可塑性ポリマー鎖が前記機械的に剥離された単層および/または多層グラフェンナノ粒子と直接共有結合し、分子間架橋する複合体
を生成する、反応性フリーラジカル結合部位を含む、グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項2】
前記半芳香族ポリアミドは、ポリフタルアミドである、請求項
1に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項3】
前記芳香族ポリアミドは、p-アラミドである、請求項
1に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項4】
前記
剥離されたグラフェンナノ粒子は、剥離されたグラフェンナノ粒子の表面化学を修飾するために他の成分
がドープされた、請求項1~
3のいずれか1項に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項5】
前記グラファイト
マイクロ粒子は、膨張グラファイト
から生成された、請求項1~
4のいずれか1項に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項6】
前記
粒子の表面化学またはナノ構造は、前記グラフェン強化
ポリマー複合体の強度および剛性を増加するために前記ポリマーマトリクスと結合するよう
改質された、請求項1~
5のいずれか1項に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項7】
前記グラフェンナノ粒子の指向性配列
により、ポリマーマトリクス相の1、2または3次元強化
がもたらされた、請求項1~
6のいずれか1項に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項8】
シートのエッジ上に反応性結合部位を有する炭素原子を有する単層または多層グラフェンシートにより分子間架橋されたポリマー鎖を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体から形成される、自動車、航空機、船舶または航空宇宙の部品。
【請求項10】
前記部品はエンジン部品である、請求項
9に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本出願は、2014年6月30日に出願されたUS仮出願番号62/030,799の
優先権を主張する。この出願の内容は、参照により全体に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、良好に結晶化されたグラファイト粒子を含むポリマー複合体をナノ分散され
た単層または多層グラフェン粒子に変換するための高効率な混合法により調製されたグラ
フェン強化ポリマーマトリクス複合体に関し、複合体はさまざまな商業的な用途を有する
。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ポリマー組成物は、例えば金属などの他の材料の使用を伝統的に採用している幅広い分
野でますます使用されている。ポリマーは、多数の所望の物理的性質を所有し、軽量、か
つ安価である。さらに、多くのポリマー材料は、多数の種々の形状および形態に形成する
ことができ、それらが想定する形態において顕著な柔軟性を示し、コーティング、分散物
、押出成形樹脂、ペースト、粉末等として使用されうる。
【0004】
金属と同等の強度特性を有する材料を必要とするポリマー組成物を使用することが望ま
れている様々な用途がある。しかしながら、かなりの数のポリマー材料は、本質的に、多
くのこれらの用途のために十分であるような強さではない。
【0005】
グラフェンは、密に充填された1原子厚さのシートに、原子が六角形のパターンに配置
された純粋な炭素からなる物質である。この構造は、グラファイト、大きいフラーレン、
ナノチューブなどを含む多くの炭素系材料の性質を理解するための基礎である(例えば、
カーボンナノチューブは、一般的に、ナノメートルサイズのシリンダ内に巻き上げたグラ
フェンシートであると考えられている)。グラフェンはsp2結合した炭素原子の単層平
面シートである。シートは有限の大きさであり、他の元素が端部にゼロになることのない
化学量論比で付着できるため、グラフェンは炭素の同位体ではない。
【0006】
ポリマーを強化するために使用される場合、任意の形態のグラフェンは、亀裂伝播を抑
制することによってポリマー靭性を増加させる。グラフェンは、電気および熱伝導性を付
与するために、ポリマーおよび他の組成物に添加されうる。グラフェンの熱伝導率は、電
子デバイスおよびレーザー用の熱管理(例えば、平面放熱)のための理想的な添加剤にな
る。炭素繊維強化ポリマーマトリクスの複合体(CF-PMC)のいくつかの商業的用途
としては、数ある中でも、航空機および航空宇宙システム、自動車システムおよび車両、
エレクトロニクス、政府の防衛/セキュリティ、圧力容器、ならびに反応炉を含む。
【0007】
グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体(G-PMC)を効率的に生成するための低
コストな方法の開発における進歩は、非常に遅いままである。現在、実社会の用途で実行
可能なG-PMCの開発に影響を及ぼす課題のいくつかは、材料の高い費用ならびに大規
模商業生産のために現在使用される化学的および/または機械的操作の非実用性を含む。
よって、増大された特定の剛性および強度、強化された電気/熱伝導性、ならびに光学的
透明性の保持を含む多くの特性の利点を提供する、大規模な商業生産に適したG-PMC
を製造する低コストな方法が望ましい。
【発明の概要】
【0008】
発明の要約
本開示は、熱可塑性ポリマーマトリクス内に分散された良好に結晶化されたグラファイ
ト粒子のin situでの剥離を含むポリマー加工方法によって調製されたグラフェン
強化ポリマーマトリクス複合体(G-PMC)を提供する。グラファイト-ポリマー混合
物の押出しによりグラファイトがせん断されグラフェンシートが剥離し、バルクポリマー
の機械的特性が改善する。
【0009】
本発明の一態様によれば、熱可塑性ポリマーマトリクス内で、複合体の総重量の約10
%から約50%、好ましくは約20%から約40%、より好ましくは約25%から約35
%、もっとも好ましくは約30%から約35%で、グラファイトマイクロ粒子、単層グラ
フェンナノ粒子、多層グラフェンナノ粒子、およびこれらの2以上の組み合わせからなる
群より選択される粒子を実質的に均一な分布で含むグラフェン強化ポリマーマトリクス複
合体であって、前記粒子の少なくとも50重量%は、c軸方向に沿って50ナノメートル
未満の厚さの単層および/または多層グラフェンナノ粒子からなり;および前記熱可塑性
樹脂は、ポリアミド、ABSポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、ポリグリコー
ル酸、およびこれらの2以上の混合物からなる群より選択される、グラフェン強化ポリマ
ーマトリクス複合体である。ひとつの形態においては、熱可塑性ポリマーはポリアミドを
含む。好ましい形態においては、ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド
、芳香族ポリアミドおよびこれらの2以上の組み合わせからなる群より選択される。好ま
しい形態のひとつは、ポリアミドはポリアミド-6,6;ポリアミド-6,9;ポリアミ
ド-6,10;ポリアミド-6,12;ポリアミド-4,6;ポリアミド-6(ナイロン
-6);ポリアミド-11(ナイロン-11);ポリアミド-12(ナイロン-12)お
よび他のナイロンからなる群より選択される脂肪族ポリアミドである。特に好ましい形態
においては、脂肪族ポリアミドは、ポリアミド-6,6である。
【0010】
上記グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体の他の形態において、ポリアミドは半芳
香族ポリアミドである。さらに他の形態においては、ポリアミドは、アラミドとして知ら
れている芳香族ポリアミドである。
【0011】
グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体は最終の複合体に所望の特性を付与する付加
的な成分をさらに含むことができる。ある形態においては、グラファイトは、他の成分を
ドープされて、剥離されたグラフェンナノ粒子の表面化学が修飾されてもよい。分散され
たグラファイトの表面化学またはナノ構造は、ポリマーマトリクスとの結合強度を強化す
るために修飾されて、グラフェン強化複合体の強度および剛性を増加させてもよい。ある
形態においては、グラフェンナノ粒子の指向性配列(directional alig
nment)が用いられ、ポリマーマトリクス相の1、2または3次元の強化が得られる
。ある形態においては、ポリマー鎖は、シートのエッジに反応性結合部位を有する炭素原
子を有する単層または多層グラフェンシートによる分子間架橋である。本発明の他の態様
では、上記グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体は、充填剤、染料、顔料、離型剤、
加工助剤、炭素繊維、導電性を改善する化合物、および熱伝導性を改善する化合物からな
る群より選択される少なくともひとつの添加剤をさらに含む。
【0012】
ひとつの形態においては、グラファイトは膨張グラファイトである。
【0013】
本発明の他の態様は、上記に開示されたグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体から
形成される自動車、航空機、船舶または航空宇宙の部品である。ひとつの形態において、
部品はエンジン部品である。
【0014】
本発明のさらに他の態様は、上記に開示されたグラフェン強化ポリマーマトリクス複合
体であって、
(a)1以上の前記マトリクスポリマーを含む溶融熱可塑性ポリマー相中にグラファイ
トマイクロ粒子を分配すること;および
(b)前記グラファイトの少なくとも50%が剥離されて、前記溶融ポリマー相中にc
軸方向に沿って50ナノメートル未満の厚さの単層および多層グラフェンナノ粒子の分布
が形成されるまで、前記マトリクスポリマーがそれぞれの操作とともに連続して前記グラ
フェンを剥離するように前記溶融ポリマー相にせん断ひずみ操作を連続して供給すること
;
というステップを含む方法によって調製される複合体である。
【0015】
ひとつの形態においては、グラファイト粒子は、グラファイト含有鉱物をミリメートル
サイズの寸法にまで粗砕および粉砕し、ミリメートルサイズの粒子をマイクロサイズの寸
法まで小さくし、グラファイト含有鉱物からマイクロサイズのグラファイト粒子を抽出す
ることにより製造される。ひとつの形態においては、グラファイト粒子は、軸方向溝付き
伸張混合部材(axial fluted extensional mixing e
lements)またはスパイラル溝付き伸長混合部材(spiral fluted
extensional mixing elements)を有する一軸押出機を用い
て、溶融ポリマー相に分配される。ひとつの形態においては、グラファイト含有溶融ポリ
マー相は繰り返し押し出しされてグラファイト材料の剥離を誘発し、熱可塑性ポリマーマ
トリクス内での単層および多層グラフェンナノ粒子の実質的に均一な分散を形成する。
【0016】
ある形態においては、熱可塑性ポリマーは、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテ
ルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンンスルフィド、ポリエーテルイミド
、ポリビニリデンフルオライド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエー
テルまたはオキサイド、ポリアミド、芳香族熱可塑性ポリエステル、芳香族ポリスルホン
、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、熱可塑性エラストマー、ポリエチレン(高密度ポ
リエチレンを含む)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなどの
ようなアクリル、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PG
A)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)、アクリロニトリルブタジエン
スチレン(ABS)共重合体、超高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、
ポリオキシメチレンプラスチック、ポリアリ-ルエーテルケトン、ポリビニルクロライド
およびこれらの2以上の混合物から選択される。
【0017】
特定の形態においては、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリスチレン(PS)、ポ
リフェニレンスルフィド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、アクリロニトリ
ルブタジエンスチレン(ABS)共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸(PLA)
、ポリグリコール酸(PGA)およびポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)
からなる群より選択される。ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、お
よび芳香族ポリアミドを含む。脂肪族ポリアミドは芳香族部分を含まない。あるひとつの
形態においては、脂肪族ポリアミドは、ポリアミド-6,6、ポリアミド-6(ナイロン
-6)、ポリアミド-6,9;ポリアミド-6,10;ポリアミド-6,12;ポリアミ
ド-4,6;ポリアミド-11(ナイロン-11)、ポリアミド-12(ナイロン-12
)および他のナイロンからなる群より選択される。特に好ましい形態においては、脂肪族
ポリアミドはポリアミド-6,6であり、これはヘキサメチレンジアミンおよびアジピン
酸から誘導される。他の用いられうる脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6として知
られるPA-6であり、これはポリカプロラクタムである。半芳香族ポリアミドは脂肪族
および芳香族部分の混合物を含み、たとえば、脂肪族ジアミンおよび芳香族二酸から誘導
することができる。半芳香族ポリアミドは、PA-6Tのようなポリフタルアミドであり
、これはヘキサメチレンジアミンおよびテレフタル酸から誘導される。アラミドとして知
られる芳香族ポリアミドは芳香族部分を含み、たとえば、芳香族ジアミンおよび芳香族二
酸から誘導することができる。芳香族ポリアミドは、p-フェニレンジアミンおよびテレ
フタル酸から誘導されるp-アラミドでありうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本開示のin situでの剥離方法による3分、30分および90分の混合時間においてポリスルホン中で剥離された2%グラファイトの形態分析を示す。
【
図2】
図2は、本開示のin situでの剥離方法による90G-PMCの様々なスケールおよび倍率レベルでの顕微鏡写真を示す。
【
図3】
図3は、(a)10μmスケールおよび1000倍、(b)10μmスケールおよび5000倍、(c)1μmスケールおよび10,000倍、(d)1μmスケールおよび50,000倍、でのSMG-PEEK90の形態を示す。
【
図4】
図4は、様々な押出サイクル後のグラファイトPA-6,6複合体の弾性率を示す。
【
図5】
図5は、様々な押出サイクル後のグラファイトPA-6,6複合体のピーク応力を示す。
【
図6】
図6は、様々な押出サイクル後のグラファイトPA-6,6複合体の衝撃エネルギーを示す。
【
図7】
図7は、様々な押出サイクル後の射出成形グラファイトPA-6,6複合体の衝撃強度を示す。
【
図8】
図8は、サイクル5の後のグラファイトPA-6,6複合体のステップ/エッジ上の接着を示す。
【
図9】
図9は、グラフェンへのPA-6,6の接着/結合を示す。
【
図10】
図10は、サイクル3、複合体のPA-6,6中の35%グラファイトのグラフェン表面上のクラックの存在、およびポリアミドによる表面結晶化の可能な様式を示す。結晶性グラフェンは、このようなFESEM顕微鏡写真において滑らかな表面を有する。
【
図11】
図11は、サイクル1、複合体のPA-6,6中の35%グラファイトの比較的高い加速電圧((a)は5KXで10kV、および(b)30KXで10kV)での透過画像を示す。
【
図12】
図12は、サイクル3、複合体のPA-6,6中の35%グラファイトについて、10KX、5kVで撮像された透過率を示す。
【
図13】
図13は、サイクル1、複合体のPA-6,6中の35%グラファイトについて、5KV(a)、4kV(b)、3kV(c)および2kV(d)で5KXで撮像された透過率を示す。
【
図14】
図14は、G-PA66タイプI試料のSEM顕微鏡写真であり、(a)~(d)ポリマーマトリクス中のグラフェンフレークの良好な分布および(e)透明なグラフェンフレークを示す。
【
図15】
図15は、G-PA66タイプV試料のSEM顕微鏡写真であり、(a)~(d)ポリマーマトリクス中のグラフェンフレークの良好な分布ならびに(e)および(f)透明なグラフェンフレークを示す。
【
図16】
図16は、タイプIのPA66およびG-PA66試料の引張結果のグラフを示す:(a)弾性率、(b)降伏応力および%ひずみ、および(c)破壊応力および%ひずみ。
【
図17】
図17は、タイプVのPA66およびG-PA66試料の引張結果のグラフを示す:(a)弾性率、(b)降伏応力および%ひずみ、および(c)破壊応力および%ひずみ。
【
図18】
図18は、PA66および連続法を用いて調製したG-PA66のノッチ付きアイゾット耐衝撃性を示す。
【
図19】
図19は、異なるスケールでのG-PEEKの形態を示すSEM顕微鏡写真を示す。
【
図20】
図20は、PEEKおよびG-PEEKのタイプI試料の引張結果のグラフを示す:(a)弾性率、(b)降伏応力および%ひずみ、および(c)破壊応力および%ひずみ。
【
図21】
図21は、PEEKおよびG-PEEKのノッチ付きアイゾット耐衝撃性を示す。
【
図22】
図22は、ポリスチレン(PS)と比較したG-PS試料の曲げ弾性率のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい実施形態の詳細な説明
この開示は、記載された特定のシステム、方法論またはプロトコルに制限されず、これ
らは変更になってもよい。本明細書で用いられる用語は、特定のバージョンまたは形態を
説明する目的のためであり、その範囲を制限するものではない。
【0020】
本書で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明
確に指示しない限り複数の参照を含む。特に定義しない限り、本明細書中で使用される全
ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有す
る。本書で言及した全ての刊行物は、参照により組み込まれる。本文書に記載のすべての
サイズは、ほんの一例であり、本発明は、以下に記載の特定のサイズまたは寸法を有する
構造に限定されるものではない。本明細書中のいかなるものも、本明細書に記載された実
施形態が先行発明によるそのような開示よりも先行する権利がないことを認めるものとし
て解釈されるべきではない本明細書で使用される「含む」という語は、「含むが、これら
に限定されない」という意味である。
【0021】
以下の用語は、本出願の目的のために、以下の記載のそれぞれの意味を有するものとす
る:
「グラフェン」という語は、縮合したベンゼン環構造内で密に充填された炭素原子の単
層に与えられた名前を意味する。単独で使用した場合、グラフェンは、純粋で汚染されて
いない形態で、多層グラフェン、グラフェンフレーク、グラフェンプレートレット、およ
び数層の層グラフェンまたは単層グラフェンを意味する。
【0022】
本発明は、良好に結晶化されたグラファイト粒子を含むポリマー複合体をナノ分散した
単層または多層グラフェン粒子へと変換するための高効率な混合方法を提供する。この方
法は、反復的な、高せん断ひずみ速度を与えるバッチミキサーまたは押出機中で混合する
ことによるグラファイト層のin situでの剥離を伴う。両方のプロセスにおいて、
より長い混合時間により、ポリマーマトリクス複合体(PMC)内におけるグラファイト
のグラフェンナノ粒子への剥離が強められる。また、添加剤は、十分なグラフェン/ポリ
マーの結合を促進するために使用してもよく、それによって低密度グラフェン強化ポリマ
ーマトリクス複合体(G-PMC)を得ることができる。この方法は、増大された特定の
剛性および強度、強化された電気/熱伝導率、ならびに光透過性の保持などの改善された
機械的特性を含む多数の特性上の利点を提供するG-PMCを製造するための低コストな
方法である。さらに、これらの特性は、下記参照のように、プロセスの変更よる調整が可
能である。
【0023】
グラフェン強化ポリマーは、軽重量電池用の電極として使用することができる。その他
の用途には、複合体ボート船体、航空機、航空宇宙システム、輸送車両、軽量装甲(車両
または人工装甲)、圧力容器、リアクター・チャンバー、スプレー・コーティング、3次
元印刷用ポリマー粉末、電子デバイスタッチスクリーン用透明電極などを含む。ポリマー
マトリクスに1~2重量%のグラフェンを添加することにより、光透過性を維持しながら
電気伝導性を付与することができ、それによりソーラーパネル、フラットパネルディスプ
レイ、および病院における静電気放電制御を可能にする。
【0024】
バッチ混合プロセスまたは一軸押出の間の繰り返しの混合は、初期のグラファイト粒子
分散を個別のグラフェンナノ粒子の均一なナノ分散に徐々に変換するために使用される。
いくつかの場合では、プロセス中に、不活性ガスまたは真空が使用されてもよい。この方
法は、多くの現在の研究の主要な推進力である「化学的」剥離と区別するために、本明細
書中では「機械的」剥離として記載されている。機械的な方法の利点は、高せん断混合の
間に汚染のないグラフェン-ポリマー界面が形成されることであり、これにより、良好な
界面接着または結合を確保することができる。in situでの剥離の他の利点として
は、グラフェンフレークを作製し取り扱うことを回避することに加えて、それらをポリマ
ーマトリクス相中に均一に分散させる必要性が回避されることもある。優れた混合により
、より細かな複合構造および非常に良好な粒子分布が生成する。
【0025】
in situでのせん断ひずみ操作の数および持続に応じて、本方法は、純粋で汚染
されていない形態の多層グラフェン、グラフェンフレーク、グラフェンプレートレット、
数層グラフェンまたは単層グラフェンを提供する。プレートレットは、ダイヤモンド様の
剛性を有し、ポリマー強化のために使用される。あらゆる形態のグラフェンは、ポリマー
のための強化材として亀裂伝播を阻害することによりポリマー靭性を向上させる。グラフ
ェンは、電気および熱伝導性を提供するために、ポリマーおよび他の組成物への添加剤と
して使用されてもよい。グラフェンはグラフェンの熱伝導性により電子デバイスおよびレ
ーザー用の熱管理のための好ましい添加剤である。
【0026】
グラフェンが形成される出発材料であるグラファイトは、各層内の炭素原子が六方格子
状に配列された層状の平面構造で構成されている。平面層は、「a」および「b」軸と、
「a」および「b」軸によって定義された平面に垂直である「c」軸とを有するものとし
て定義されている。本発明の方法によって製造されたグラフェン粒子は、「c」軸距離で
割られた「a」または「b」軸距離によって定義されるアスペクト比を有する。本発明の
ナノ粒子のアスペクト比は、25:1を超えており、一般的には50:1からの1000
:1の間である。
【0027】
グラフェンは、G-PMCとしてそのまま使用するのに適したグラフェン-ポリマー混
合物として製造することができ、これはその後の製造処理のための従来の手段によってペ
レット化することができる。代替的に、高濃度のグラファイトを最初に使用して、ペレッ
ト化することもでき、そしてその後に補強剤としてポリマー組成物にグラフェンを添加す
るために使用される濃縮形態のグラフェン-ポリマーマスターバッチを提供することがで
きる。さらに別の方法として、グラフェンは、本質的に純粋なグラフェン粒子を提供する
ために、例えば燃焼または選択的溶解によってポリマーから分離されてもよい。
【0028】
これは、本質的に、本発明の方法において、グラファイトに不活性で、グラファイトか
らグラフェンを剥離するのに十分なせん断ひずみを付与することのできる任意のポリマー
が用いられることが理解されるべきである。このようなポリマーの例としては、これらに
限定されないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PE
K)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンンスルフィド(PES)、ポ
リエーテルイミド(PEI)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリスルホン
(PSU)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル、芳香族熱可塑性ポリ
エステル、芳香族ポリスルホン、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、熱可塑性エラスト
マー、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリスチレン
(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)共重合体などのようなアクリル、超高分
子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE/Tefl
on)、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ
乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、
ポリオキシメチレンプラスチック(POM/アセタール)、ポリアリ-ルエーテルケトン
、ポリビニルクロライド(PVC)、およびこれらの混合物などが挙げられる。本発明の
方法に従って、グラファイト表面を濡らすことができるポリマーや、高融点な非晶質ポリ
マーが用いられてもよい。ポリ乳酸(PLA)はキラルまたはラセミ体でありうる。
【0029】
特定の実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェ
ニレンスルフィド、高密度ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS
)ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)
およびポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択される。ポ
リアミドは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、および芳香族ポリアミドを含む。
脂肪族ポリアミドは芳香族部位を含まない。ひとつの実施形態においては、脂肪族ポリア
ミドは、ポリアミド-6,6(ナイロン-6,6)、ポリアミド-6(ナイロン-6)、
ポリアミド-6,9;ポリアミド-6,10;ポリアミド-6,12;ポリアミド-4,
6;ポリアミド-11(ナイロン-11)、ポリアミド-12(ナイロン-12)および
他のナイロンからなる群より選択される。ナイロンは、脂肪族ジアミンおよび脂肪族二酸
から誘導されたよく知られた脂肪族ポリアミド類である。または、ナイロンとしても分類
される他のポリアミドは、カプロラクタムに由来するナイロン-6(PA-6、ポリカプ
ロラクタム)のようにラクタムの開環重合から誘導される。特に好ましい実施形態におい
ては、脂肪族ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とから誘導されるポリ
アミド-6,6である。半芳香族ポリアミドは、脂肪族および芳香族部分の混合物を含み
、たとえば脂肪族ジアミンおよび芳香族二酸から誘導することができる。半芳香族ポリア
ミドは、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とから誘導されるPA-6Tのようなポ
リフタルアミドでありうる。芳香族ポリアミドはアラミドとしても知られ、芳香族部分を
含み、例えば芳香族ジアミンおよび芳香族二酸から誘導することができる。芳香族ポリア
ミドはp-フェニレンジアミンおよびテレフタル酸から誘導されるp-アラミドでありう
る。後者の代表としてはKEVLAR(登録商標)が含まれる。
【0030】
本発明によるグラフェン強化ポリマーは、典型的には約10重量%~約50重量%、好
ましくは約20重量%~約40重量%、より好ましくは約25重量%~約35重量%、最
も好ましくは約30重量%~約35重量%のグラフェンを含む。より典型的には、ポリマ
ーは、約25重量%~約45重量%のグラフェンを含有する。ひとつの好ましい実施形態
は、35重量%のグラフェンを含有する。ポリマーマスターバッチは、典型的には約30
~約60重量%のグラフェン、より典型的には約20~約50重量%のグラフェンを含有
する。
【0031】
良好に結晶化されたグラファイトを比較的高濃度(例えば、約20%)で含むグラファ
イトが豊富な鉱物鉱床の利用可能性は、低コストで実質的に原材料の無尽蔵の源を可能に
する。後述するように、採掘された材料からのグラファイト粒子の抽出は、効率の良い方
法で達成されうる。高純度および例外的な結晶性の合成グラファイト(例えば、熱分解グ
ラファイト)も同じ目的のために使用されてもよい。しかし、この場合、バッチ混合また
は押出混合による剥離プロセスは、グラフェンナノ粒子が比較的広い領域にわたって配向
された積層複合体を生成する。このような積層複合体は、特定の用途に好ましいことがあ
りうる。
【0032】
本発明の目的のために、グラファイトマイクロ粒子は、格子構造のc軸に沿って厚さが
1.0~1000ミクロンの範囲の多層グラファイト結晶からなるグラファイトが少なく
とも50%のグラファイトと定義される。典型的には、グラファイトの75%は厚さが1
00~750ミクロンの範囲の結晶からなる。膨張グラファイトも使用してもよい。膨張
グラファイトは、天然のフレークグラファイト中で結晶格子面を離れさせ、グラファイト
膨張させることによって製造され、例えば、クロム酸の酸性浴中にフレークグラファイト
を浸漬し、次いで濃硫酸中に浸漬することによって製造される。本発明での使用に適した
膨張グラファイトとしては、メッソグラフ(MESOGRAF)のような二層レベルで開
いたエッジを有する膨張グラファイトを含む。
【0033】
ポリマーマトリクス中のグラファイトの機械的剥離は、ポリマーマトリクス内のグラフ
ァイトマイクロ粒子を機械的に多層または単層のグラファンナノ粒子に剥離するための反
復的な高せん断ひずみ操作を与えるポリマー処理技術によって達成することができる。
【0034】
連続したせん断ひずみ操作は、溶融ポリマーを、本質的に同じ時間間隔による、交互に
生じる連続したより高いおよびより低いせん断ひずみ速度へ供することによって定義され
、その結果、せん断ひずみ速度と関連する、パルス状の連続したより高いおよびより低い
せん断力が溶融ポリマー中のグラファイト粒子に加えられる。より高いおよびより低いせ
ん断速度とは、第1のより高いせん断ひずみ速度が第2のより低いせん断速度の少なくと
も2倍の大きさであるとして定義される。第1のせん断速度は100~10,000se
c-1の範囲であろう。少なくとも1,000から10,000,000を超えるより高
いおよびより低いせん断ひずみパルスの交互パルスが、溶融ポリマーに適用され、剥離さ
れたグラフェンナノ粒子を形成する。グラファイト粒子をグラフェン粒子に剥離するのに
必要な交互パルスの数は、このプロセスの開始時の元のグラファイト粒子の大きさに依存
しえる。すなわち、元のグラファイト粒子がより小さい場合、元のグラファイト粒子がよ
り大きい場合に比べて、グラフェンを達成するために必要な交互パルスの数がより少ない
だろう。これは、容易に、過度の実験を行うことなく、本明細書によって導かれる当業者
によって決定することができる。
【0035】
高せん断混合した後、グラフェンフレークは均一に溶融ポリマー中に分散され、ランダ
ムに配向し、高いアスペクト比を有している。グラフェンの配向は、多くの異なる方法に
よって達成することができる。従来の図面、圧延(rolling)、および押出法が、
PMC繊維、フィラメント、リボン、シート、またはあらゆる他の長いアスペクト形状内
のグラフェンを一方向に配列するために用いられてもよい。G-PMCを作製し、特徴づ
けるための方法は、以下を含む4つの主要なステップで構成される;
1.鉱物源から結晶性グラファイト粒子を抽出;
2.高効率の混合/剥離プロセスによる抽出したグラファイト粒子のポリマーマトリク
ス相への組み込みおよびグラファイト含有ポリマーのグラフェン強化ポリマーマトリクス
複合体(G-PMC)への変換;
3.機械的剥離および多層グラフェンとグラフェンナノ粒子との分散の程度を決定する
ための形態解析;ならびに
4.機械的剥離の関数として多層グラフェンまたはグラフェン結晶のサイズを決定する
ためのX線回折分析。
【0036】
高結晶性グラファイトは、後述のように、多段階プロセスによってグラファイト鉱石か
ら抽出してもよい。
【0037】
1.粗砕する(Crushing):鉱山からのグラファイト鉱石の掘削ロッドを万力
の中に置き、粗砕してもよい。
【0038】
2.粉砕する(Grinding):粗砕されたグラファイト鉱石はその後、乳鉢と乳
棒とで粉砕してもよい。
【0039】
3.サイズの減少:粉砕したグラファイト鉱石を、1mmのメッシュサイズの篩に配置
して、サイズを減少させる。スクリーンを通過しない大きな切片は、乳鉢と乳棒とで粉砕
して、再び1mmのメッシュサイズの通過によってサイズを低減する。最終的に、材料の
すべては、1mmのメッシュサイズを通過して、グラファイト鉱石の粉末を得る。
【0040】
4.水による密度分離:1mmのサイズの粉末を、水を充填したカラムに配置し、固形
分の密度がより密な部分と、より薄い部分との間に明確な分離が形成されるまで激しく撹
拌する。グラファイトは、水の密度(1g/cm3で)に近いのに対して、シリコンの密
度はより大きい(2.33g/cm3)。最上部の材料を水といっしょに吸い上げた後、
乾燥する。乾燥した粉末グラファイトは、分離鉱物グラファイト(Separated
Mineral Graphite)(SMG)と呼ばれる。
【0041】
商業的な実用の点においては、非常に大きい粗砕および粉砕機をトン量の混合粉末を製
造するために利用することができ、標準浮遊法によって混合粉末からグラファイト成分を
分離することができる。
【0042】
よって、本発明の一態様では、G-PMCを製造するin situでの剥離方法に関
する。この方法では、マイクロサイズの結晶性グラファイト粒子と均一にブレンドされる
ポリマーは、ポリマーがグラファイト粒子に付着する温度で、バッチ混合または押出し中
に繰り返しの配合-部材処理(compounding-element proces
sing)を受ける。典型的なポリマーは、配合温度で100cpsよりも大きな熱粘度
(heat viscosity)(グラファイトなしで)を有する。配合温度は、ポリ
マーにより変化するであろうし、室温(室温で溶融しているポリマーの場合)~600℃
の範囲とすることができる。典型的な配合温度は180℃~400℃の間の範囲であろう
。
【0043】
一実施形態では、押出配合部材(the extrusion compoundin
g elements)は、軸方向溝付き伸長混合部材(axial fluted e
xtensional mixing elements)またはスパイラル溝付き伸長
混合部材(spiral fluted extensional mixing el
ements)として知られており、これは、米国特許第6,962,431号の配合の
セクションで記載されており、本開示は参照により組み込まれる。配合のセクションでは
、ポリマーとグラファイトとの流入(flow)を引き延ばすよう作用し、続いて材料に
対して繰り返しの折りたたみと伸長とが行われる。これは、優れた分配混合という結果と
なり、順に、グラファイト粒子の個別のグラフェンナノ粒子への漸進的な剥離を引き起こ
す。バッチミキサーはまた、同等の混合部材を備えていてもよい。別の実施形態では、標
準型の射出成形機は、組成物が射出成形されるように材料を混合する目的で、標準スクリ
ューを混合スクリューと交換して改変される。このようなデバイスは、参照によりその開
示全体が本明細書に組み込まれる、米国第2013/0072627号に開示されている
。
【0044】
したがって、各混合パスの効果は、順々にグラフェン層を削ぎ取るものであり、その結
果、元のグラファイト粒子は、非常に多くのグラフェンナノ粒子へと徐々に変換される。
適切な数のこのようなパスの後、最終的な結果は、ポリマーマトリクス相における個々の
グラフェンナノ粒子の均一な分散である。混合時間がより長いこと、または混合部材を通
過するパスの数がより多いことで、グラファイト結晶サイズをより小さくしたり、ポリマ
ーマトリクス相内でのグラファイトのグラフェンナノ粒子への剥離の向上がもたらされる
;しかしながら、せん断操作はポリマーを劣化しうる期間であってはならない。
【0045】
グラフェンナノ粒子の含有量がマルチパス押出時に増加するため、ポリマー/グラフェ
ン界面の数の増加の影響によりポリマーマトリクスの粘度が増加する。複合構造の継続的
な改良を確実にするために、押出パラメータは、複合体のより高い粘度を補償するように
調整される。
【0046】
自動化された押出システムは、米国特許第6,962,431号に記載されているよう
に、複合体材料に混合部材での所望の多くのパスを施すのに有効であり、押出機の入力部
(extruder input)に戻させる流れの再循環ストリームを備えている。グ
ラフェン強化PMCの処理は、直接であることと、グラフェン粒子の取り扱いを伴わない
ので、製造コストが低い。
【0047】
機械的にグラファイトを多層グラフェンおよび/または単層グラフェンに剥離するため
に、処理中にポリマーに生じるせん断ひずみ速度は、グラファイトの2つの層を分離する
のに必要な臨界応力または層間せん断強度(ISS)よりも大きいグラファイト粒子のせ
ん断応力(stress)を生じさせる必要がある。ポリマー内のせん断ひずみ速度はポ
リマーの種類ならびにミキサーの形状、処理温度、および分当たりの回転(RPM)を含
む処理パラメーターによって制御される。
【0048】
特定のポリマーについての必要な処理温度および速度(RPM)は、式1によって示さ
れるように、一定の温度で、
【0049】
【0050】
はRPMに直線的に依存していることで与えられるポリマーレオロジーデータから決定可
能である。ミキサーの形状は、ローター半径r、ローターとバレルとの間のスペースΔr
として表示される。
【0051】
【0052】
3つの異なる温度での特定のポリマーについて回収したポリマーレオロジーデータによ
り、せん断応力の対数 対 せん断ひずみ速度対数のグラフが提供される。グラファイト
のISSは0.2MPa~7GPaの間の範囲であるが、新しい方法は、0.14GPa
でのISSを定量化した。したがって、処理中にポリマーマトリクス内のグラファイトを
機械的に剥離するために、特定のポリマーについて必要となる処理温度、せん断ひずみ速
度、およびRPMは、ポリマー内のせん断ひずみがグラファイトのISSと同等以上にな
るように一定の温度でポリマーについて収集したせん断応力の対数 対 せん断ひずみ速
度の対数のグラフから決定可能である。典型的な処理条件の下では、ポリマーは、粘着テ
ープの粘着面のように挙動するのに十分な表面エネルギーを有し、よって、ポリマー溶融
とグラファイト粒子との間でせん断応力を共有することができる。
【0053】
よって、本発明のひとつの態様は、熱可塑性ポリマーマトリクス内で、複合体の総重量
の約10重量%から約50重量%で、好ましくは約20重量%から約40重量%で、より
好ましくは約25重量%から約35重量%で、もっとも好ましくは約30重量%から約3
5重量%で、グラファイトマイクロ粒子、単層グラフェンナノ粒子、多層グラフェンナノ
粒子、およびこれらの2以上の組み合わせからなる群より選択される粒子を実質的に均一
な分布で含むグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体であって、前記粒子の少なくとも
50重量%は、c軸方向に沿って50ナノメートル未満の厚さの単層および/または多層
グラフェンナノ粒子からなり;および前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド、ポリスチレン、
ポリフェニレンスルフィド、高密度ポリエチレン、ABSポリマー、ポリアクリロニトリ
ル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)お
よびこれらの2以上の混合物からなる群より選択される、グラフェン強化ポリマーマトリ
クス複合体に関する。
【0054】
一実施形態によれば、グラフェン強化マトリクス複合体は、全複合体重量の約1~約4
5%のグラファイトおよびグラフェン粒子の実質的に均一な分布を含む。別の実施形態で
は、グラフェン強化マトリクス複合体は、全複合体重量の約3~約40%のグラファイト
およびグラフェン粒子を含む。別の実施形態では、グラフェン強化マットリクス複合体は
、全複合体重量の約5~約35%のグラファイトおよびグラフェン粒子を含有する。別の
実施形態では、グラフェン強化マトリクス複合体は、全複合体重量の約7~約30%のグ
ラファイトおよびグラフェン粒子を含む。
【0055】
本明細書で定義されるように、「実質的に均一」とは、溶融熱可塑性ポリマー相全体に
良好に分布したグラフェン粒子を意味し、その結果、複合体の個々の分割量(aliqu
ots)は、平均値の約10重量%以内、好ましくは平均値の約5重量%以内、より好ま
しくは平均値の約1重量%以内で、同量のグラフェンを含むことができる。熱可塑性ポリ
マーは、せん断ひずみの下でグラファイトからグラフェンを剥離するのに十分なタイプお
よびグレードのものである。一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリアミドを含む。
好ましい実施形態において、ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、芳
香族ポリアミドおよびこれの2以上の組み合わせから選択される。ひとつの好ましい実施
形態において、ポリアミドは、ポリアミド-6,6;ポリアミド-6,9;ポリアミド-
6,10;ポリアミド-6,12;ポリアミド-4,6;ポリアミド-6(ナイロン-6
);ポリアミド-11(ナイロン-11)、ポリアミド-12(ナイロン-12)および
他のナイロンからなる群より選択される脂肪族ポリアミンである。特に好ましい実施形態
では、脂肪族ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンおよびアジピン酸から誘導されるP
A-6,6またはナイロン-6,6としても知られているポリアミド-6,6である。も
うひとつの有用なポリアミドはPA-6であり、これはポリカプロラクタムであるナイロ
ン-6としても知られている。
【0056】
上記グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体の別の実施形態において、ポリアミドは
半芳香族ポリアミンである。好ましい実施形態では、半芳香族ポリアミドは、ヘキサメチ
レンジアミンおよびテレフタル酸から誘導されるPA-6Tなどのポリフタルアミドであ
る。
【0057】
上記グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体の別の実施形態では、ポリアミドは芳香
族ポリアミドであり、これはアラミドとしても知られている。好ましい実施形態では、芳
香族ポリアミドはp-フェニレンジアミンおよびテレフタル酸から誘導されるKEVLA
R(登録商標)のようなp-アラミドである。
【0058】
上述されたグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体の一実施形態では、グラファイト
は他の元素でドープされて、剥離されたグラフェンナノ粒子の表面化学を改変することが
できる。好ましくは、グラファイトは膨張グラファイトである。特に、そして好ましくは
、分散したグラファイトの表面化学またはナノ構造は、ポリマーマトリクスと結合して、
グラフェン強化複合体の強度および剛性を増加させるように改質されてもよい。一実施形
態では、グラフェンナノ粒子の指向性配列(directional alignmen
t)は、ポリマーマトリクス相の一次元、二次元、または三次元強化をするために用いら
れる。一実施形態では、ポリマー鎖は、シートのエッジに反応性結合部位を有する炭素原
子を有する単層または多層グラフェンシートによって分子間架橋される。
【0059】
本発明の1つの態様において、上記グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体は、充填
剤、染料、顔料、離型剤、加工助剤、炭素繊維、導電性を改善する化合物、および熱伝導
率を向上させる化合物からなる群より選択される少なくともひとつの添加剤をさらに含む
。
【0060】
本発明の別の態様は、上述されたグラフェン強化ポリマーマトリクス複合体から形成さ
れた自動車、航空機、船舶または航空宇宙部品に関する。一実施形態では、部品はエンジ
ン部品である。
【0061】
本発明のさらに別の態様は、以下のステップを含む方法によって調製される、上述のグ
ラフェン強化ポリマーマトリクス複合体に関する:
(a)1以上の前記マトリクスポリマーを含む溶融熱可塑性ポリマー相中にグラファイ
トマイクロ粒子を分配すること;および
(b)前記グラファイトの少なくとも50%が剥離されて、前記溶融ポリマー相中にc
軸方向に沿って50ナノメートル未満の厚さの単層および多層グラフェンナノ粒子の分布
が形成されるまで、前記マトリクスポリマーがそれぞれの操作とともに連続して前記グラ
フェンを剥離するように前記溶融ポリマー相にせん断ひずみ操作を連続して供給すること
。
【0062】
一実施形態においては、グラファイト粒子は、グラファイト含有鉱物をミリメートルサ
イズの寸法にまで粗砕および粉砕し、ミリメートルサイズの粒子をマイクロサイズの寸法
まで小さくし、グラファイト含有鉱物からマイクロサイズのグラファイト粒子を抽出する
ことにより製造される。一実施形態においては、グラファイト粒子は、軸方向溝付き伸張
混合部材(axial fluted extensional mixing ele
ments)またはスパイラル溝付き伸長混合部材(spiral fluted ex
tensional mixing elements)を有する一軸押出機を用いて、
溶融ポリマー相に分配される。一実施形態においては、グラファイト含有溶融ポリマー相
は繰り返し押し出しされてグラファイト材料の剥離を誘発し、熱可塑性ポリマーマトリク
ス内での単層および多層グラフェンナノ粒子の実質的に均一な分散を形成する。
【0063】
別の実施形態において、架橋G-PMCは、1以上の溶融熱可塑性ポリマーを含む溶融
熱可塑性ポリマー相にグラファイトマイクロ粒子を分配させることを含む方法によって形
成される。実施例に例示されるように、溶融ポリマー相がグラフェンを各操作とともに連
続的に剥離するように、グラフェン層の厚さがより低くなるまで一連のせん断ひずみ操作
を溶融ポリマー相に適用して、その後、剥離された多層グラフェンシートの引き裂き(po
int ripping and tearing)が生じ、多層シート上に熱可塑性ポリマーと反応して架橋す
る反応性エッジを生成する。
【0064】
このように、グラフェンは底面を横切って裂けて活性化したグラフェンが形成され、マ
トリクスと架橋するための、または官能化のために他の化学的に不安定な基と結合するた
めの潜在的な部位を提供する。したがって、架橋は、酸素を排除して、好ましくは不活性
雰囲気または真空下で行われ、その結果、反応性エッジは酸化されないかまたは非反応性
になる。グラフェンとマトリクスとの間に共有結合を形成することにより、顕著に複合体
強度が増加する。本発明の方法を受けて架橋するポリマーとしては紫外線(UV)光によ
り分解を受けるポリマーが挙げられる。これは、例えば、ポリスチレンのようなベンゼン
環などの芳香族を含むポリマー、ポリプロピレンなどのような第3級炭素を含むポリマー
、ポリ(アルキレンオキシド)などのような主鎖酸素を含むポリマーを含む。
【0065】
別の実施形態では、架橋G-PMCは粒子に粉砕され、非架橋のホストポリマーとブレ
ンドされて、ホストポリマーの強化剤として使用することができる。非架橋ポリマーは、
2つのポリマー種間の鎖交絡(chain entanglement)のために、架橋ポリマーの特性を得
る。したがって、本発明は、高強度複合体を形成するために他のポリマーとブレンドする
ことができる粒状形態の本発明の架橋ポリマーも含む。一実施形態では、本発明の架橋ポ
リスチレンおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)粒子は、ホストポリマーの強化
剤として使用することができる。本発明による組成物は、約1~約75重量%の本発明の
架橋ポリマー粒子で強化されたホスト熱可塑性ポリマーを含む。一実施形態において、ホ
ストポリマーは、約10~約50重量%架橋ポリマー粒子で強化される。
【0066】
ある実施形態では、熱可塑性ホストポリマーは、芳香族ポリマーである。本明細書で定
義されるように、「芳香族ポリマー」との語は、ポリマー主鎖の一部として、または、必
要に応じてリンカーを介してポリマー主鎖に結合した置換基としてのいずれかで、芳香族
部分を含むポリマーを意味する。リンカーとしては、メチレン、エチレン、およびプロピ
レンなどの直鎖または分岐のアルキレン基、-OCH2-、-CH2O-、-OCH2C
H2-、-CH2CH2O-、-OCH2CH2CH2-、-CH2OCH2-、-OC
H(CH3)-、-SCH2-、-CH2S-、-NRCH2-、-CH2NR-(ここ
で、ヘテロ原子は、酸素、窒素、および硫黄からなる群より選択され、Rは水素および低
級アルキルから選択される)などの直鎖または分岐のヘテロアルキレン基などが挙げられ
る。リンカーとしては、また、-O-、-NR-および-S-などのヘテロ芳香族でありう
る。リンカーが硫黄を含有する場合、硫黄原子は任意に酸化されていてもよい。芳香族部
分は、フェニルなどの単環、およびインドール、ナフチル、アントラセンなどの多環式か
ら選択され、必要に応じて、アミノ、NHR、NR2、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アル
キルチオ、アルコキシ、アルキル、ハロアルキル、CO2R(ここで、Rは上記で定義し
た通りである)およびこれら2種以上の組み合わせで置換されていてもよい。芳香族部分
は、酸素、窒素および硫黄からなる群より選択される1~3個のヘテロ原子を含むヘテロ
アリールでありうり、上述のように必要に応じて置換されていてもよい。芳香族ポリマー
は、好ましくはフェニル基を含み、上述のように必要に応じて、ポリマー主鎖の一部とし
て、または主鎖上の置換基としてのいずれかで置換されていてもよく、後者の場合は、上
述のように必要に応じてリンカーを介していてもよい。ある実施形態においては、必要に
より置換されてよいフェニル基は、必要により置換されてよいフェニレン基としてポリマ
ー主鎖内に含まれる。ある他の実施形態においては、必要により置換されてよいフェニル
基は、上述のように、必要に応じてリンカーを介して結合したポリマー主鎖上の置換基で
ある。
【0067】
熱可塑性ホストポリマーの例としては、これらに限定されないが、ポリエーテルエーテ
ルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフェニレンスルフィド(P
PS)、ポリエチレンスルフィド(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリビニ
リデンフルオライド(PVDF)、ポリスルホン(PSU)、ポリカーボネート(PC)
、ポリフェニレンエーテル、芳香族熱可塑性ポリエステル、芳香族ポリスルホン、熱可塑
性ポリイミド、液晶ポリマー、熱可塑性エラストマー、ポリエチレン、高密度ポリエチレ
ン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(
PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(
ABS)共重合体などのようなアクリル、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポ
リテトラフルオロエチレン(PTFE/テフロン(登録商標))、ポリアミド(PA)、
ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合
体(PLGA)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリオキシメチレンプラスチッ
ク(POM/アセタール)、ポリイミド、ポリアリ-ルエーテルケトン、ポリビニルクロ
ライド(PVC)、アクリル、これらの混合物などが挙げられる。熱可塑性ホストポリマ
ーと架橋ポリマーとが同じポリマー種である場合には、架橋ポリマー粒子は、本質的に、
ポリマー組成物に導入されることが望ましい程度の架橋種の濃縮マスターバッチである。
【0068】
特定の実施形態において、熱可塑性ホストポリマーは、ポリアミド、ポリスチレン、ポ
リフェニレンスルフィド、高密度ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(
ABS)ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(P
GA)およびポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)からなる群より選択され
る。ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、および芳香族ポリアミドを
含む。脂肪族ポリアミドは芳香族部位を含まない。ひとつの実施形態においては、脂肪族
ポリアミドは、ポリアミド-6,6(ナイロン-6,6)、ポリアミド-6(ナイロン-
6)、ポリアミド-6,9;ポリアミド-6,10;ポリアミド-6,12;ポリアミド
-4,6;ポリアミド-11(ナイロン-11)、ポリアミド-12(ナイロン-12)
および他のナイロンからなる群より選択される。ナイロンは、脂肪族ジアミンおよび脂肪
族二酸から誘導されるよく知られた脂肪族ポリアミド類である。または、ナイロンとして
も分類される他のポリアミドは、カプロラクタムに由来するナイロン-6(PA-6、ポ
リカプロラクタム)のようにラクタムの開環重合から誘導される。特に好ましい実施形態
においては、脂肪族ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸とから誘導され
るポリアミド-6,6である。半芳香族ポリアミドは、脂肪族および芳香族部分の混合物
を含み、たとえば脂肪族ジアミンおよび芳香族二酸から誘導することができる。半芳香族
ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とから誘導されるPA-6Tのよ
うなポリフタルアミドでありうる。芳香族ポリアミドはアラミドとしても知られ、芳香族
部分を含み、例えば芳香族ジアミンおよび芳香族二酸から誘導することができる。芳香族
ポリアミドはp-フェニレンジアミンおよびテレフタル酸から誘導されるp-アラミドで
ありうる。後者の代表としてはKEVLAR(登録商標)が含まれる。
【0069】
一実施形態では、G-PMCは、グラファイトマイクロ粒子を溶融熱可塑性ポリマー相
に分配させ、グラファイトの少なくとも50%が剥離されて溶融ポリマー相にc軸方向に
沿って50ナノメートル未満の厚さの単層および多層グラファンナノ粒子の分布が形成さ
れるまで、溶融ポリマー相が連続的にグラファイトを各操作ごとに剥離するように一連の
せん断ひずみ操作を連続的に適用することによって形成される。他の実施形態では、連続
したせん断ひずみ操作は、グラファイトの少なくとも90%が剥離されて、溶融ポリマー
相にc軸に沿って10ナノメートル未満の厚さの単層および多層グラファンナノ粒子の分
布が形成されるまで適用される。他の実施形態では、連続したせん断ひずみ操作は、グラ
ファイトの少なくとも80%が剥離されて、溶融ポリマー相にc軸に沿って10ナノメー
トル未満の厚さの単層および多層グラファンナノ粒子の分布が形成されるまで適用される
。他の実施形態では、連続したせん断ひずみ操作は、グラファイトの少なくとも75%が
剥離されて、溶融ポリマー相にc軸に沿って10ナノメートル未満の厚さの単層および多
層グラファンナノ粒子の分布が形成されるまで適用される。他の実施形態では、連続した
せん断ひずみ操作は、グラファイトの少なくとも70%が剥離されて、溶融ポリマー相に
c軸に沿って10ナノメートル未満の厚さの単層および多層グラファンナノ粒子の分布が
形成されるまで適用される。他の実施形態では、連続したせん断ひずみ操作は、グラファ
イトの少なくとも60%が剥離されて、溶融ポリマー相にc軸に沿って10ナノメートル
未満の厚さの単層および多層グラファンナノ粒子の分布が形成されるまで適用される。
【0070】
他の実施形態では、グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体は、ポリエーテルエーテ
ルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリフェニレンスルフィド(P
PS)、ポリエチレンスルフィド(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリビニ
リデンフルオライド(PVDF)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル
、芳香族熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリイミド、液晶ポリマー、熱可塑性エラスト
マー、ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリスチレン
(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)共重合体などのようなアクリル、超高分
子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE/テフロン
(登録商標))、ポリアミド(PA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA
)、ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)、ポリフェニレンオキサイド(P
PO)、ポリオキシメチレンプラスチック(POM/アセタール)、ポリアリ-ルエーテ
ルケトン、ポリビニルクロライド(PVC)、これらの混合物からなる群より選択される
ポリマーと架橋されたグラファイトから構成される。
【0071】
特定の実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、アクリロニトリルブタジ
エンスチレンABSポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン(PS)、ポリフェ
ニレンスルフィド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリ乳酸(PLA)、
ポリグリコール酸(PGA)およびポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)か
らなる群より選択される。ポリアミドは、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、およ
び芳香族ポリアミドを含む。脂肪族ポリアミドは芳香族部位を含まない。ひとつの実施形
態においては、脂肪族ポリアミドは、ポリアミド-6,6(ナイロン-6,6)、ポリア
ミド-6(ナイロン-6)、ポリアミド-6,9;ポリアミド-6,10;ポリアミド-
6,12;ポリアミド-4,6;ポリアミド-11(ナイロン-11)、ポリアミド-1
2(ナイロン-12)および他のナイロンからなる群より選択される。ナイロンは、脂肪
族ジアミンおよび脂肪族二酸から誘導されるよく知られた脂肪族ポリアミド類である。ま
たは、ナイロンとしても分類される他のポリアミドは、カプロラクタムに由来するナイロ
ン-6(PA-6、ポリカプロラクタム)のようにラクタムの開環重合から誘導される。
特に好ましい実施形態においては、脂肪族ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンとアジ
ピン酸とから誘導されるポリアミド-6,6である。半芳香族ポリアミドは、脂肪族およ
び芳香族部分の混合物を含み、たとえば脂肪族ジアミンおよび芳香族二酸から誘導するこ
とができる。半芳香族ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸とから誘導
されるPA-6Tのようなポリフタルアミドでありうる。芳香族ポリアミドはアラミドと
しても知られ、芳香族部分を含み、例えば芳香族ジアミンおよび芳香族二酸から誘導する
ことができる。芳香族ポリアミドはp-フェニレンジアミンおよびテレフタル酸から誘導
されるp-アラミドでありうる。後者の代表としてはKEVLAR(登録商標)が含まれ
る。
【0072】
他の実施形態において、グラフェン強化ポリマーマトリクス複合体は、ポリアミドと架
橋されたグラファイトを含む。好ましくは、ポリアミドは、脂肪族または半芳香族ポリア
ミドである。より好ましくは、ポリアミドは、ポリアミド-6,6;ポリアミド-6(ナ
イロン-6);ポリアミド-6,9;ポリアミド-6,10;ポリアミド-6,12;ポ
リアミド-4,6;ポリアミド-11(ナイロン-11)、ポリアミド-12(ナイロン
-12)および他のナイロンからなる群より選択される脂肪族ポリアミドであり、特にP
A-6,6(ナイロン-6,6)が好ましい。好ましくは、グラフェン強化ポリマーマト
リクス複合体はin situでのグラフェンの剥離の前に約35%のグラファイトを含
む。このように架橋されたポリアミドは非常に高い比強度特性を有し、自動車、航空、船
舶および航空宇宙用途に適している。したがって、本発明は、本発明の架橋ポリアミドか
ら製造された自動車、航空機、船舶および航空宇宙部品も含み、これは機械的または高温
特性を失うことなく、より重い金属部品を置き換えることができる。例えば、架橋ポリア
ミドは、その高い融点および耐クリープ性のために、ピストン、バルブ、カムシャフト、
ターボチャージャなどのエンジン部品に使用することができる。本発明の架橋ポリアミド
から各ブレードを含むターボチャージャのタービンおよびコンプレッサ部品の回転部分を
形成することは、重量減少が生じるためターボチャージャの遅れを減少させるだろう。他
の利点は、本発明の架橋ポリアミドからジェットエンジンのタービンおよびコンプレッサ
の回転部分を形成することによって得られる。
【実施例】
【0073】
実施例
本発明は以下の実施例によりさらに例示されるが、いかなる点においても限定するもの
として解釈されるべきではない。
【0074】
材料
未処理のグラファイトを地面から抽出し、粉末に粉砕し、浮遊分離して分離鉱物グラフ
ァイト(「SMG」)を得た。
【0075】
実施例1 グラフェン強化ポリスルホン(G-PSU)の調製
一実施形態では、10グラムの容量を有する小規模の伸張ミキサーを使用して、真空下
、332℃(630°F)で、3分間、30分間、および90分間、Udel P-17
00ポリスルホン(PSU)と2%SMGとを混合させた。この方法を以下に述べる。各
時間の長さの後の特性評価のために収集されたサンプルは、3G-PMC、30G-PM
C、90G-PMCと称する。
【0076】
1.9.8グラムのPSUをミキサーに添加し、溶融状態にした。
【0077】
2.0.2グラムのSMGを、溶融PSUに加え、混合した。
【0078】
3.3分の混合時間の後に、3グラムのG-PMCをミキサーの外に押し出し、特性評
価のために回収した。
【0079】
4.PSU中の3グラムの2%SMGをミキサーに加え、混合した。
【0080】
5.混合時間の30分後に、3グラムのG-PMCをミキサーから押し出し、特性評価
のために回収した。
【0081】
6.PSU中の3グラムの2%SMGをミキサーに加え、混合した。
【0082】
7.90分の混合時間の後、3グラムのG-PMCをミキサーの外に押し出し、特性評
価のために回収した。
【0083】
実施例2 形態分析
Oxford EDSを備えるZeiss Sigma電界放出型走査型電子顕微鏡(
FESEM)を用いて、多層グラフェンまたはグラフェンナノ粒子へのグラファイトの機
械的剥離の程度およびこれらの粒子の厚さを決定した。観察中、3kVの加速電圧および
約8.5mmの作動距離を使用した。観察の前に、3G-PMC、30G-PMC、およ
び90G-PMCからの各試料に切り込みを入れ、低温で破砕して、平坦な破断面を作製
し、少なくとも24時間真空下に配置し、金コーティングして、真空下で保存した。
【0084】
形態の結果
3G-PMC、30G-PMC、および90G-PMCの各サンプルの形態は、3つの
異なるスケール(倍率)で
図1に示される。(a-c)における20μmスケールおよび
1,000倍の倍率では、各混合時間でのPSUマトリクス内の多層グラフェンまたはグ
ラフェンの良好な分布を示している。(d-f)における1μmスケールおよび10,0
00倍の倍率、ならびに(g-i)における1μmスケールおよび50,000Xの倍率
では、PSUマトリクス内で機械的に剥離されたグラフェンを示す。(d-i)において
は、グラフェンナノ粒子とポリマーマトリクスとの間の良好な結合だけでなく、多層グラ
フェンまたはグラフェンの極めて小さな折りたたみ(micro-folding)が明
らかである。
【0085】
最も長い時間混合され、最も多く繰り返しのせん断にさらされたサンプルである90G
-PMCサンプルは、優れた機械的剥離および最も小さい結晶サイズを示す。
図2に示す
ように、機械的剥離は90G-PMCサンプルのグラフェンナノ粒子の厚みを8.29n
mまで減少させている。
【0086】
実施例3 X線回折分析(XRD)
3G-PMC、30G-PMC、および90G-PMCの各試料に対するXRD分析は
、4つのステップを含む:(1)試料調製、(2)回折パターンの取得、(3)プロファ
イルフィッティング、および(4)デバイ-シェラー式に従って面外(D)結晶子サイズ
の計算。
【0087】
1.XRD分析用試料は、3G-PMC、30G-PMC、および90G-PMCの各
サンプルの薄膜を230℃で2分の時間にわたって5500psiでプレスすることによ
って調製した。加熱されたプラテンを有するCarver 一軸プレスを用いてプレスを
する前に各サンプルをアルミニウムシート間に配置した。
【0088】
2.プレスされたフィルムの回折パターンを、サンプルチャンバー(Xpert)を備
えたPhilips社のXPERT粉末回折計を用いて4o-70o 2θからの入射ス
リット厚さ0.3mmおよびステップサイズ0.02o 2θで、40kVおよび45m
Aで取得した。
【0089】
3.回折パターンは、ピークフィッティングする前に、バックグラウンド編集またはプ
ロファイル調整なしで、WinPLOTR粉末回折グラフィックツールにアップロードさ
れた。グローバルFWHM、グローバルη(Lorenzの割合)、および線形バックグ
ラウンドを考慮して、疑似フォークト関数(pseudo-Voigt functio
n)を使用し、2θ範囲が26o~27.5oでシングルピークフィッティングを適用し
た。プロファイルのシングルピークフィッティングは、関連するピークの半値幅(FWH
M)を提供する。
【0090】
平均面外結晶子サイズ(D)(しばしばc軸方向に沿うと称され、積層されたグラフェ
ン層の数に比例する)は、デバイ-シェラー式および(002)FWHM値を用いて計算
される。ここで、λはX線の波長、係数K=0.89であり、βはラジアンのFWHMで
あり、θは回折角である。d-間隔(d-spacing)もまた計算される。
【0091】
【0092】
X線回折結果
デバイ-シェラー方程式は、3G-PMC、30G-PMC、および90G-PMCの
X線回折パターンから得られるFWHMおよびd-間隔の結果に適用され、多層グラフェ
ンまたはグラフェンのナノ粒子の結晶の厚さ(D)を提供する。XRDの結果および結晶
の厚さは表1に示される。3G-PMC、30G-PMC、および90G-PMCのサン
プルにおいて、それぞれ、結晶厚さは40nm、31nm、および23nm;FWHMは
0.202°、0.257°、および0.353°;ならびにd-間隔は3.361nm
、3.353nmで、および3.387nmである。FWHMは混合時間とともに増大し
、結晶の厚さは混合時間とともに減少しており、これは、グラファイトの多層グラフェン
またはグラフェンへの機械的剥離が生じ、混合時間がより長いほど強化されることを示し
ている。結晶サイズの減少はFWHMの関数である。
【0093】
【0094】
実施例4 グラフェン改変
ポリマー処理装置中での繰り返しのせん断ひずみ作用の結果として、多層グラフェンま
たはグラフェンへのグラファイトの機械的な剥離は、様々な化学反応が生じる機会を提供
する一次および二次のダングリングボンドを生成する。これはG-PMCの特性向上を得
るために利用されうる。これは、グラフェン酸化物を形成する従来公知の方法と比べて優
位性があることを示しており、ここで、一次および二次ダングリング結合は酸素と共有結
合をし、典型的にはこれらの位置にグラフェン酸化物が減少した後も残ったままである。
【0095】
例えば、ポリマーマトリクスに多層グラフェンまたはグラフェンナノ粒子からこれらの
ダングリングボンドを共有結合的に取り付ける化学反応はG-PMCの優れた機械的特性
を提供するであろう。代替的に、電気伝導性は、グラフェンナノ粒子エッジに適切なバン
ドギャップ材料を化学的に結合することによって、または、金、銀、銅などの導電性金属
と配位することによって強化することができる。そしてグラフェン強化ポリマーは、電気
導電性を提供する、または高めるためにポリマーまたは他の組成物に添加されうる。結合
はまた、触媒担体として作用するグラフェン強化ポリマーとともに触媒を提供するために
、白金やパラジウムなどの金属に配位されてもよい。官能性グラフェンの他の形態は、米
国特許第8,096,353に開示されており、その開示は参照により本明細書に組み込
まれる。
【0096】
ワンポット反応性混合を経由する剥離処理中にin situでの官能化反応が実施さ
れうるので、本発明の方法は特に有利である。
【0097】
ランドキャッスルエクストルージョンシステム社(「ランドキャッスル(Randca
stle)」)の小規模押出ミキサーでの繰り返しのせん断作用を用いて、機械的剥離に
よりPSUで溶融配合された2%グラファイトはG-PMCへうまく変換した。せん断力
を増加させるための機械改良することによって結果を改善することができる;例えば、回
転速度を増加させるためにより大きな直径の混合部材を使用することによって、および/
または混合部材とシリンダ壁との間の間隔を最小化することによって改善できる。
【0098】
実施例5 改良されたランドキャッスルエクストルージョンシステム社の小規模押出ミ
キサー
既存の小バッチミキサーの設計は、より高いせん断速度を提供するように改変されても
よく、それは同様にしてポリマーマトリックス内のグラファイトの機械的剥離の向上を提
供する。
【0099】
【0100】
は式1に従って計算される。ここで、rはツーリング半径(tooling radiu
s)であり、Δrは混合のためのクリアランス(clearance)である。機械の改
良は達成可能な最大せん断速度とともに、表2に列挙する。新たに設計されたミキサーは
現行のミキサーの22倍の最大せん断速度を有しており、これはより短い時間の長さでポ
リマーマトリクス内のグラファイトの機械的剥離の向上を提供するであろう。言い換えれ
ば、結晶サイズDは、より効率的な時間の長さで、より小さな寸法に縮小されうる。
【0101】
【0102】
改良された一軸押出:
ランドキャッスルは、G-PMCを製造するためのポリマーマトリクス中でのグラファ
イトから多層グラフェンまたはグラフェンへの機械的剥離がより良好に可能となりうる押
出機スクリューへの改良を行った。
【0103】
実施例6A グラフェン強化PEEK(G-PEEK)
PEEKは、比重1.3、溶融流れ3g/10分(400°C、2.16kg)、ガラ
ス転移温度150℃、および融点340℃を有する。引張弾性率および強度はそれぞれ3
.5GPaおよび95MPaである。この実施例において、xG-PMCの作製に先立っ
て、SMGとPEEKとは、それぞれ100℃と150℃とで約12時間、乾燥した。
【0104】
この実施例では、10g容量のランドキャッスルマイクロバッチミキサーを用いて、窒
素雰囲気生成装置下、360℃(680°F)、100RPMで、以下のステップに従っ
てSMGをPEEKと混合した:
PEEK_3 コントロールサンプルを作製するために、PEEK10グラムをミキ
サーに加えた。3分の混合時間の後に、ポートを開けてPEEKを押出物として流し出し
、それ以上の材料が流れ出なくなるまで、2.6グラムを押し出した。
【0105】
SMG-PEEK_3 2-98%のSMG-PEEKの重量組成比を作製するため
に、PEEK2.4gとSMG0.2gとをミキサーに添加した。3分の混合時間の後に
、ポートを開けて押出物としてG-PMCを流し出し、それ以上の材料が流れ出なくなる
まで、1.96グラムを押し出した。
【0106】
SMG-PEEK_30 2-98重量%の組成比を維持するために、PEEK1.
92gとSMG0.04gとをミキサーに加えた。30分の混合時間の後に、ポートを開
けて押出物としてG-PMCを流し出し、それ以上の材料が流れ出なくなるまで、0.9
4gを押し出した。
【0107】
SMG-PEEK_90 2-98重量%の組成比を維持するために、PEEK0.
92gとSMG0.02gとをミキサーに添加した。90分の混合時間の後、ポートを開
けて押出物としてG-PMCを流し出したが、材料が流れ出なかった。
【0108】
実験を終了し、ミキサーを開けた。目視観察下では、G-PMCは、標準的な溶融ポリ
マーとは見えず、むしろゴム状、繊維状の形態だった。
【0109】
実施例6B グラフェン強化PEEK(G-PEEK)
この実施例では、100g容量のランドキャッスルマイクロバッチミキサー内で窒素雰
囲気生成装置下360℃(680°F)、30RPMで以下の手順に従ってSMGとPE
EKとを処理した:
PEEK_90 コントロールサンプルを作製するために、PEEK100gをミキ
サーに加えた。90分の混合時間の後、ポートを開けて押出物としてPEEKを流し出し
、それ以上の材料が流れ出なくなるまで、28.5gを押し出した。
【0110】
SMG-PEEK_25 2-98%SMG-PEEKの重量組成比を作製するため
に、PEEK98gとSMG2gとをミキサーに添加した。25分の混合時間の後、ポー
トを開けて押出物としてG-PMCを流し出し、それ以上の材料が流れ出なくなるまで、
5.1gを押し出した。
【0111】
グラフェン強化PEEKの特性評価
特性評価に用いたサンプルを下記表3に示した:
【0112】
【0113】
形態学
Oxford EDSを備えるZeiss Sigma電界放出型走査型電子顕微鏡(
「FESEM」)を用いて、xG-PMCの形態を調べた。観察中、3kVの加速電圧お
よび約8.5mmの作動距離を使用した。観察の前に、検体サンプルに切り込みを入れ、
低温で破砕して、平坦な破断面を作製し、少なくとも24時間真空下に配置し、金コーテ
ィングし、真空下で保存した。
図3に示されるように、SMG-PEEK_90の形態に
ついて、(a)10μmスケールおよび1000倍、(b)10μmスケールおよび50
00倍、(c)1μmスケールおよび10,000倍、および(d)1μmスケールおよ
び50,000倍で示した。
【0114】
熱分析
サンプルの熱的特性は、TA InstrumentsのQ1000示差走査熱量計(
DSC)を用いて調べた。各サンプルについて、10℃/分で0~400℃からの加熱/
冷却/熱サイクルを行った。最初の加熱スキャンのガラス転移温度(Tg)および融点(
Tm)を
図3に示す。TgはPEEK_3の152℃からMG-PEEK_90の154
まで上昇しているが、この増加は顕著ではない。Tmについては、PEEK_3、SMG
-PEEK_3、およびSMG-PEEK_30のサンプルはほぼ338℃で一致してい
るが、SMG-PEEK_90は331.7℃で著しく低下している。デルタHは、PE
EK_3、SMG-PEEK_3、およびSMG-PEEK_30について同様であり、
最初の冷却と再加熱スキャンとの間に変動し、116~140J/gの間の範囲である。
しかし、SMG-PEEK_90のデルタHは、非常に低く、最初の冷却および再加熱ス
キャンについて約100J/gである。SMG-PEEK_90サンプルのPEEKの融
解熱における観察可能な違いは、他のサンプルと比較して、形態において大きな違いがあ
ることを示す。また、SMG-PEEK_90サンプルの最初の冷却および再加熱スキャ
ンの間の一定の融解熱は、グラフェンとPEEKマトリクスとの間の架橋の存在を支持し
ている。
【0115】
平行板レオロジー
平行板モードでTA InstrumentsのAR 2000を用いて、1.0%ひ
ずみおよび360℃での100~0.01Hzからの周波数掃引を行った。サンプルSM
G-PEEK_30、SMG-PEEK_3、およびPEEK_3を試験した。サンプル
SMG-PEEK_30、SMG-PEEK_3、およびPEEK_3のG’およびG’
’とtan δ(tan delta)とを記録した。tan δは、G’’/G’に等
しい。以下に示すように、表4によれば、このレオロジーデータは、サンプルの形態学に
関する情報を提供する。熱硬化性樹脂のゾル/ゲル転移点、または「ゲル化点」は、ta
n δ=1のとき、またはむしろG’=G’’のときに生じる。サンプルSMG-PEE
K_3とPEEK_3については、G’’はG’よりも大きく、液体のような挙動を示す
。対照的に、サンプルSMG-PEEK_30ではG’がG’’より大きく、弾性的また
は固体様の挙動を示す。また、SMG-PEEK_30については、tan δが1未満
で、全周波数範囲にわたってほぼ一定のままであり、これはSMG-PEEK_30があ
る程度の架橋を受けたことを示す。
【0116】
【0117】
溶解
溶媒中に配置された場合に軽くゲル化した熱硬化性樹脂は、溶媒およびポリマー構造に
依存する程度で吸収して膨潤する。元の形状は保存され、膨潤したゲルは可塑性よりも弾
性を示す。熱可塑性ポリマーの架橋は通常、1)過酸化物、2)水により架橋されるグラ
フトされたシラン処理、3)電子ビーム照射、および4)UV光によって行われる。
【0118】
実施例6C 架橋グラフェン強化PEEK(G-PEEK)
この実施例では、ダングリングフリーラジカルをもたらすグラフェンフレークの切断に
よる機械的剥離処理中に架橋はSMGとPEEKとの間で誘導された。SMG-PEEK
XG-PMCにおける架橋の存在を確認するために、ニートPEEK(neat PE
EK)、PEEK_3、PEEK_90、SMG-PEEK_3、SMG-PEEK_3
0、およびSMG-PEEK_90サンプルを硫酸中に配置することによって、以下の手
順に従って溶解法を使用した。
【0119】
各サンプルから10mgの検体サンプルを調製した;
各検体サンプルを、95-98%の硫酸(w/w)(A300S500フィッシャーサ
イエンティフィック)20mLとともに試験管に入れた;
溶液を5分間振とうした;
各試験管は、テフロン(登録商標)テープで蓋をし、シールを形成した;
各サンプルの写真を0時間、24時間、48時間、および72時間で撮影した。
【0120】
目視観察すると、PEEKサンプルは24時間前に硫酸中ですべて溶解し、SMG-P
EEK_90サンプルは72時間後に硫酸中に残存する唯一のものだった。SMG-PE
EK_90サンプルは、熱硬化性樹脂と同様に溶媒中に配置されたときに架橋され、膨潤
した。SMG-PEEK_30サンプルは24時間後に硫酸中に残存していたが、48時
間前に溶解した。他のデータはSMG-PEEK_30が架橋されたことを示しているの
で、SMG-PEEK_30について架橋が誘導されたかを判断するにはさらなる試験が
必要である。
【0121】
実施例7 グラフェン強化ポリアミド-6,6(G-PA66)
材料処理
連続プロセスを用いて、採掘した供給源からの良好に結晶化したグラファイト(45メ
ッシュ)を35重量%でPA66に添加し、277℃で溶融ポリマー中で剥離しG-PA
66を形成した。溶融処理する前に、グラファイトおよびPA66をそれぞれ300℃お
よび85℃で一晩乾燥させた。ニートPA66もコントロールとして処理した。ASTM
D 638タイプIおよびASTM D 256規格に従って引張および衝撃バーがそ
れぞれ製造された。G-PA66のASTM D 638タイプV引張りバーも同様のバ
ッチ処理法を用いて処理され、剥離および混合の向上を付与した。
【0122】
材料の特性評価
PA66およびG-PA66サンプルの微細構造を、Zeiss Sigma電界放出
走査型電子顕微鏡(FESEM)を用いて調べた。試料は低温破壊によって調製された;
1つの破断表面を金(5nm)でスパッタコーティングし、反対側の表面を被覆しなかっ
た。
【0123】
引張特性は、タイプIおよびタイプV試験片についてASTM D638に従って、M
TS QTest/25ユニバーサル試験機を用いて評価した。アイゾット衝撃特性は、
ASTM D256に従って、3.47m/秒の平均衝撃速度を有するInstron
Dynatup POE 2000衝撃試験機を用いて、同じ振り子重量を各試験片に使
用し、切り込みを入れた試験片で測定した。すべての場合において、サンプル当たり少な
くとも10個の試験片が衝撃試験された。
【0124】
形態学
G-PA66タイプIサンプルの形態は、異なるスケール(すなわち倍率)で
図14に
示されている。PA66内のグラフェンフレークの均一な分布は(a)および(b)で明
白であり、グラフェンフレークとPA66マトリクスとの間の良好な接着は(c)および
(d)に示されている。透明なグラフェンフレークは(e)に示されている。G-PA6
6タイプVサンプルの形態は、異なるスケール(すなわち倍率)で
図15に示されている
。ここでもまた、PA66内のグラフェンフレークの良好な分布および接着は、(a)お
よび(b)において明らかである;透明フレークの例を(d)~(f)に示す。
【0125】
引張特性
連続混合プロセスを用いて製造されたタイプIのPA66およびG-PA66の引張試
験のサンプルついて、弾性率、降伏応力および%ひずみ、ならびに破壊応力および%ひず
みを
図16に示す。弾性率は、PA66へのグラフェンの添加に伴い、3.2GPaから
7.9GPaまで増加している。降伏応力および破壊応力はどちらもわずかに減少する。
降伏%ひずみおよび破壊%ひずみは著しく減少する。
【0126】
バッチ式混合プロセスを用いて調製されたタイプVのPA66およびG-PA66引張
試験のサンプルについての同様の結果を
図17に示す。PA66へのグラフェンの添加に
伴い、弾性率が2.4GPaから13.0GPaへと著しく増加している。降伏応力およ
び破壊応力は、グラフェンの添加により約50MPaから60MPaを超えるまでに増加
する。降伏%ひずみおよび破壊%ひずみは著しく減少する。
【0127】
衝撃特性
連続プロセスを用いて調製したPA66およびG-PA66のノッチ付きアイゾット衝
撃試験の結果を
図18に示す。全てのサンプルは衝撃時に完全な破断を受けた。
【0128】
グラフェン補強PEEKとの比較
同じ連続溶融処理法を用いて、溶融ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)内で35
%のグラファイトを剥離してG-PEEK複合体を形成した。ニートPEEKをコントロ
ールとして処理した。グラファイトおよびPEEKをそれぞれ300℃および160℃で
一晩乾燥させ、370~390℃で処理した。ASTM D 638タイプIおよびAS
TM D 256規格に従って引張および衝撃バーがそれぞれ製造された。ASTM D
638およびASTM D 256に従って、それぞれ、PEEKおよびG-PEEK
について引張および衝撃特性を評価した。
【0129】
超低温破砕後のG-PEEKサンプルの微細構造は、
図19において異なるスケール(
すなわち、拡大率)で示されている。PEEK中のグラフェンの良好な分布および配向が
明白である。PEEKおよびG-PEEKについて、対応する引張弾性率、降伏応力およ
び%ひずみおよび破壊応力および%ひずみを
図20に示す。PEEKへのグラフェンの添
加に伴い、弾性率は3.99GPaから18.54GPaに顕著に増加している。降伏応
力は87MPaから101MPaに増加している。破壊応力は101MPaで一定のまま
である。繊維強化複合体に共通するように、降伏%ひずみはわずかに減少し、破壊%ひず
みは著しく減少する。PEEKおよびG-PEEKのノッチ付きアイゾット衝撃の結果を
図21に示す。全てのサンプルは完全に破断した。PEEKへのグラフェンの添加に伴い
、耐衝撃性が385J/mから331J/mにわずかに低下する。
【0130】
実施例8 グラフェン強化ポリスチレン(G-PS)
高純度フレークグラファイトおよびPSは、300℃および70℃でそれぞれ10-1
2時間オーブンで別々に乾燥され、処理前に吸収された水はすべて除去された。グラファ
イト:PSが35:65重量%の比でこれらの成分をドライブレンドし、216℃で溶融
処理し、溶融ポリマー中でグラファイトを上記のように剥離し、グラフェンナノフレーク
強化ポリマー複合体を得た。G-PS複合体からASTMタイプ1サンプルを製造した。
同じ方法を用いて、ニートPSサンプルを比較のために製造した。ASTM D 790
に従ってたわみにおける機械的特性を評価した。PSおよびG-PSの曲げ弾性率を
図2
2に示すが、ニートPSと比較すると、グラフェンナノフレーク強化ポリスチレン(G-
PS)の弾性率の有意な増加が明らかである。
【0131】
好ましい実施形態の前述の実施例および説明は、特許請求の範囲によって定義される本
発明を限定するものではなく、例示として解釈されるべきである。容易に理解されるよう
に、特許請求の範囲に記載された本発明から逸脱することなく、上述した特徴の多くの変
形および組み合わせを利用することができる。そのような変形は、本発明の精神および範
囲からの逸脱とみなされず、そのような変形は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれる
ものとする。