IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社井内屋種苗園の特許一覧

<>
  • 特許-コンテナ苗木の施肥装置 図1
  • 特許-コンテナ苗木の施肥装置 図2
  • 特許-コンテナ苗木の施肥装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】コンテナ苗木の施肥装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
A01C15/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021177054
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2021-10-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年9月1日に株式会社井内屋種苗園内のハウス(和歌山県海南市阪井1553番地)において林野庁近畿中国森林管理局奈良森林管理署及び和歌山森林管理署による苗木生産現場の視察があり、苗の施肥装置について説明、公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】321010391
【氏名又は名称】株式会社井内屋種苗園
(74)【代理人】
【識別番号】100202175
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 静男
(72)【発明者】
【氏名】谷関 俊男
(72)【発明者】
【氏名】井内 優
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3165467(JP,U)
【文献】実公昭47-027688(JP,Y1)
【文献】実公昭12-016936(JP,Y1)
【文献】実開平07-034611(JP,U)
【文献】特開2011-147383(JP,A)
【文献】特開2008-161078(JP,A)
【文献】実公昭35-018036(JP,Y1)
【文献】実公昭28-006610(JP,Y1)
【文献】登録実用新案第057967(JP,Z1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 3/00 - 3/08
A01C 7/00 - 9/08
A01C 15/00 - 23/04
A01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施肥穴を等間隔に配置した施肥列を下面に2列備える細長い長方形の第1の施肥板と、前記第1の施肥板と平行に設けられ、前記第1の施肥板の前記施肥列と同数同間隔の施肥穴を備える施肥列を下面に更に2列備える細長い長方形の第2の施肥板と、前記第1及び前記第2の施肥板を支持する台板と、前記台板上に設けられるハンドルとからなるコンテナ苗木の施肥装置であって、
前記第1及び前記第2の施肥板は、それぞれ細長い長方形の上層板及び細長い長方形の下層板で構成され、前記第1及び前記第2の施肥板における各下層板は、前記台板に固定され、かつ、前記施肥列をそれぞれ2列ずつ備えており、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板は、前記ハンドルに固定され、かつ、各下層板に設けられた2列の前記施肥列に対応する位置に、前記施肥穴の2倍の数の肥料貯留穴を配置した肥料貯留列をそれぞれ2列ずつ備えており、
前記台板上で前記ハンドルを前後方向にスライドさせることで、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板が各下層板に対して前後方向にスライド可能となっており、各上層板が前方向にスライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の半数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が後方向にスライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の残りの半数が各下層板に設けられた施肥穴と連通することを特徴とするコンテナ苗木の施肥装置。
【請求項2】
複数の施肥穴を等間隔に配置した施肥列を下面に2列備える細長い長方形の第1の施肥板と、前記第1の施肥板と平行に設けられ、前記第1の施肥板の前記施肥列と同数同間隔の施肥穴を備える施肥列を下面に更に2列備える細長い長方形の第2の施肥板と、前記第1及び前記第2の施肥板を支持する台板と、前記台板上に設けられるハンドルとからなるコンテナ苗木の施肥装置であって、
前記第1及び前記第2の施肥板は、それぞれ細長い長方形の上層板及び細長い長方形の下層板で構成され、前記第1及び前記第2の施肥板における各下層板は、前記台板に固定され、かつ、前記施肥列をそれぞれ2列ずつ備えており、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板は、前記ハンドルに固定され、かつ、各下層板に設けられた2列の前記施肥列に対応する位置に、前記施肥穴の4倍の数の肥料貯留穴を配置した肥料貯留列をそれぞれ2列ずつ備えており、
前記台板上で前記ハンドルを前後方向にスライドさせることで、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板が各下層板に対して前後方向にスライド可能となっており、各上層板が前方向に一段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が前方向に二段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の別の1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が後方向に一段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の更に別の1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が後方向に二段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の残りの1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通することを特徴とするコンテナ苗木の施肥装置。
【請求項3】
前記第1及び前記第2の施肥板は、コンテナの大きさ、育成孔の数に応じて、台板から取り外して別の第1及び第2の施肥板に交換可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコンテナ苗木の施肥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ苗木の施肥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の森林面積は約2,505万ヘクタールで、日本の国土の67パーセントと国土の3分の2が森林である。そのうち、人工林の面積は1,020万ヘクタールで、森林面積全体の約4割である。スギ444万ヘクタール(44パーセント)、ヒノキ260万ヘクタール(25パーセント)で、人工林の約7割はスギ、ヒノキである。これらの森林は木材資源であると同時に、国土の保全や地球温暖化の防止、水源のかん養等の多様な公益的機能を発揮している。
【0003】
平成30年度の山行苗木生産量は総数60百万本で、すぎ21百万本、ひのき6百万本、あかまつ・くろまつ3百万本、からまつ15百万本、その他15百万本で、このうちコンテナ苗は総数14百万本で、すぎ7百万本、ひのき2百万本、あかまつ・くろまつ2百万本、からまつ2百万本、その他1百万本である(非特許文献1)。
コンテナ苗の生産方式は、実生苗とさし木苗に大別される。実生苗では、コンテナに直接播種する方式(直播苗)と育成した稚苗をコンテナに移植する方式(移植苗)がある。
【0004】
コンテナ(マルチ・キャビティ・コンテナ)苗は、ビニールハウスでの育苗により、加温調整することで、従来の苗木よりも育苗期間を短縮することができる。東北地方では、スギ裸苗の育成に3年かかるが、コンテナ苗では2年に短縮されている。また裸苗に比べ、小面積で多くの苗木を生産できる。1平方メートルあたり裸苗は30~50本、コンテナ苗は100~300本である。
【0005】
コンテナ苗の培地は、基本材料は椰子殻繊維等細粒物、元肥、必要に応じて保水性や通気性を調整するための排水材等(パーライト、バーミキュライト、鹿沼土など)を使用する。
培地に混合した元肥は、種類によって肥効期間や成分含有量が様々であり、そしてコンテナ栽培は灌水量が多いので肥料成分の溶出が早いこと、苗木の育成時期によって要求する成分に差があることなどから、追肥を必要とすることが多い。このため、一般的には薄目の液肥、ペレット肥料、顆粒状、丸薬状の置き肥を施用する。液肥は散水や噴霧によって広範囲に簡単に行えるが、灌水によって短期間に流亡してしまうので、緩効性の置き肥や粒状肥料を使用することが望ましい。追肥は最初に培地へ混合した中微量元素(窒素・リン酸・カリの3要素の他、カルシウム・マグネシウム・鉄・亜鉛など)を含む配合肥料を用いる場合や、例えば、スギ苗木は、生育期前半は窒素多め、後半はカリウムを多めに施肥する。生育期後半に窒素が過多になると寒さや乾燥に弱い軟弱な苗木となる。マツは夏~秋に窒素を多量に吸収する。
【0006】
従来、コンテナ苗に粒状肥料など追肥する場合は、苗木一本ごとに粒状肥料を手やスプーンですくい、育成孔(キャビティ)ごとに撒いていくか、丸薬状の肥料を育成孔の培地に手で埋め込んでいた。
先行技術として、液肥を直接農作物の表面に付着させると、その表面が変色してしまうこと(いわゆる肥料焼)があるので、培地に水分検知器、給水管を配置し、液肥混合タンクから液肥を、給水管を通して培地に自動で供給される(特許文献1)という特許がある。この場合に、配管、システム等の設備に費用がかかる。
【0007】
従来から、苗木の上から肥料を散布すると、葉、枝が邪魔になり、根元に効率よく届かない。苗の植わっている培地に施肥するには、手やスプーンで肥料をすくい、育成孔(キャビティ)ごとに置いていくか、丸薬状の肥料を育成孔の培地に手で埋め込んでいた。この施肥作業は長時間かかり、重労働である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平06―062688
【非特許文献】
【0009】
【文献】林野庁ホームページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、コンテナ苗木に追肥をする場合は、苗木一本ごとに粒状肥料を手やスプーンですくい、育成孔(キャビティ)ごとに撒いていくか、丸薬状の肥料を育成孔の培地に手で埋め込んでいた。すなわちコンテナ苗木の施肥作業は多くの人手を要し、重労働であり、非効率で長時間労働である。
そして、特許文献1の方法は、自動で液肥を施肥できるが、装置の費用が高く、零細な生産者には導入が難しい。
コンテナ苗木の施肥には緩効性肥料を効率よく均等に、簡単な操作で施肥できる廉価な装置であることが求められている。
【0011】
本発明は従来から問題であった点を解決するためになされたものである。すなわち、コンテナ苗木に、手作業ではあるが、簡単な操作で、育成孔8×5個のコンテナ苗木では、二回の操作でコンテナ苗木1枚に施肥できる装置を発明した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
複数の施肥穴を等間隔に配置した施肥列を下面に2列備える細長い長方形の第1の施肥板と、前記第1の施肥板と平行に設けられ、前記第1の施肥板の前記施肥列と同数同間隔の施肥穴を備える施肥列を下面に更に2列備える細長い長方形の第2の施肥板と、前記第1及び前記第2の施肥板を支持する台板と、前記台板上に設けられるハンドルとからなるコンテナ苗木の施肥装置であって、
前記第1及び前記第2の施肥板は、それぞれ細長い長方形の上層板及び細長い長方形の下層板で構成され、前記第1及び前記第2の施肥板における各下層板は、前記台板に固定され、かつ、前記施肥列をそれぞれ2列ずつ備えており、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板は、前記ハンドルに固定され、かつ、各下層板に設けられた2列の前記施肥列に対応する位置に、前記施肥穴の2倍の数の肥料貯留穴を配置した肥料貯留列をそれぞれ2列ずつ備えており、
前記台板上で前記ハンドルを前後方向にスライドさせることで、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板が各下層板に対して前後方向にスライド可能となっており、各上層板が前方向にスライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の半数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が後方向にスライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の残りの半数が各下層板に設けられた施肥穴と連通することを特徴とするコンテナ苗木の施肥装置である。
育成孔8×5個のコンテナ苗木では、平行に並んだ細長い長方形の板二列A、B、台板とハンドルからなるコンテナ苗木の施肥装置において、二列の板A、Bは両方とも細長い長方形の板は二層になっており、上層の細長い長方形の板は下層の細長い長方形の板の上を前後に移動してスライドでき、下層の細長い長方形の板には貫通した穴が間隔を開け二列に縦に等間隔に片方の列に5穴、もう一方の列に5穴開いており、上層の細長い長方形の板には貫通した穴が間隔を開け二列に縦に等間隔に片方の列に10穴、もう一方の列に10穴開いており、板二列A、Bの下層の細長い長方形の板は手元の台板に固定され、台板の上に設けたハンドルは板二列A、Bの上層の細長い長方形の板と連動しており、台板の上に設けたハンドルを中間位置から手前に一定距離引くと上層の板の5穴と下層の板の5穴が重なり上層の板の5穴に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗の育成孔に入る。また上層の細長い長方形の板を動かすため台板の上に設けたハンドルを中間位置から向こう側に一定距離押すと上層の板の5穴と下層の板の5穴が重なり上層の板の5穴に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗木の育成孔に入る施肥装置である。なお、コンテナの苗木群に細長い長方形の板を挿入して施肥するので、この板の先端は凸状になっている。
肥料の充填は、細長い長方形の板二列を十分な量の粒状肥料が入った箱に突っ込むか、あるいは細長い長方形の板二列の上から粒状肥料を撒いて、上層の細長い長方形の板の穴に充填する。次に、板二列A、Bの板を少し傾けるか、又は装置を軽く叩いて振動させると、余分な肥料は下の肥料の入った箱に落ちる。上層の細長い長方形の板の二列の穴と穴の間は平面ではなくやや凸になっており、余分な肥料は速やかに下の肥料の入った箱に落ちる。
【0013】
コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板Aを差し入れ、3列と4列の間に細長い長方形の板Bを差し入れて、最初に手前にハンドルを引くと、上層の板の5穴と下層の板の5穴が重なり、上層の板の5穴に入った肥料が苗の植わった育成孔に落ちる。この操作で、上記1列から4列の育成孔に肥料が入る。次に、本装置の細長い長方形の板Aをコンテナ苗の5列と6列の間に、細長い長方形の板Bを7列と8列の間に差し込み、ハンドルを向こう側に押すと、上層の板の残りの5穴と下層の板の5穴とが重なり上層の板の残りの5穴の肥料が育成孔に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの5列から8列の4列の育成孔に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗1枚の施肥ができる。肥料の量は上層の板の厚みで決まるので、その厚みを調整し肥料量を増減する。多量に必要ならば二回操作して施肥する。
通常、粒状の配合肥料を追肥として本装置を用いて施肥する。
【0014】
複数の施肥穴を等間隔に配置した施肥列を下面に2列備える細長い長方形の第1の施肥板と、前記第1の施肥板と平行に設けられ、前記第1の施肥板の前記施肥列と同数同間隔の施肥穴を備える施肥列を下面に更に2列備える細長い長方形の第2の施肥板と、前記第1及び前記第2の施肥板を支持する台板と、前記台板上に設けられるハンドルとからなるコンテナ苗木の施肥装置であって、
前記第1及び前記第2の施肥板は、それぞれ細長い長方形の上層板及び細長い長方形の下層板で構成され、前記第1及び前記第2の施肥板における各下層板は、前記台板に固定され、かつ、前記施肥列をそれぞれ2列ずつ備えており、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板は、前記ハンドルに固定され、かつ、各下層板に設けられた2列の前記施肥列に対応する位置に、前記施肥穴の4倍の数の肥料貯留穴を配置した肥料貯留列をそれぞれ2列ずつ備えており、
前記台板上で前記ハンドルを前後方向にスライドさせることで、前記第1及び前記第2の施肥板における各上層板が各下層板に対して前後方向にスライド可能となっており、各上層板が前方向に一段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が前方向に二段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の別の1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が後方向に一段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の更に別の1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通し、各上層板が後方向に二段階スライドしたときに各上層板に設けられた肥料貯留穴の残りの1/4の数が各下層板に設けられた施肥穴と連通することを特徴とするコンテナ苗木の施肥装置である。
育成孔8×5個のコンテナ苗木では、平行に並んだ細長い長方形の板二列A、B、台板とハンドルからなるコンテナ苗木の施肥装置において、二列の板A、Bは両方とも細長い長方形の板は二層になっており、上層の細長い長方形の板は下層の細長い長方形の板の上を前後に移動しスライドでき、下層の細長い長方形の板には貫通した穴が間隔を開け二列に縦に等間隔に片方の列に5穴、もう一方の列に5穴開いており、上層の細長い長方形の板には貫通した穴が間隔を開け二列に縦に片方の列に20穴、もう一方の列に20穴開いており、上層の板の穴は下層の板の各々の穴の手前に2穴、向こう側に2穴開いている。板二列A、Bの下層の細長い長方形の板は手元の台板に固定され、台板の上に設けたハンドルは板二列A、Bの上層の細長い長方形の板と連動しており、台板の上に設けたハンドルを中間位置から手前に一定距離、2段階に引くと上層の板の5穴と下層の板の5穴が重なり上層の板の5穴に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗木の育成孔に入る。また上層の細長い長方形の板を動かすため台板の上に設けたハンドルを中間位置から向こう側に一定距離、2段階に、押すと上層の板の5穴と下層の板の5穴が重なり上層の板の5穴に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗木の育成孔に入る施肥装置である。
【0015】
上層の板の二列に20穴ずつ、下層の板の二列に5穴ずつの上記施肥装置を育成孔8×5個のコンテナ苗に用いる場合、コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板Aを、3列と4列の間に細長い長方形の板Bを差し入れて、最初に手前にハンドルを1段階引くと、上層の5穴と下層の5穴が重なり、上層の5穴に入った肥料が苗の植わった育成孔に落ちる。この操作で、上記1列から4列の育成孔に肥料が入る。次に、本装置の細長い長方形の板Aをコンテナ苗の5列と6列の間に、細長い長方形の板Bを7列と8列の間に差し込み、ハンドルを手前側に2段階目に引くと、上層の残りの5穴と下層の5穴とが重なり上層の残りの5穴の肥料が育成孔に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの5列から8列の4列の育成孔に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗1枚の施肥ができる。
次に、コンテナ苗2枚目に移り、コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板Aを、3列と4列の間に細長い長方形の板Bを差し入れて、向こう側にハンドルを1段階押すと、上層の5穴と下層の5穴が重なり、上層の5穴に入った肥料が苗の植わった育成孔に落ちる。この操作で、上記1列から4列の育成孔に肥料が入る。次に、本装置の細長い長方形の板Aをコンテナ苗の5列と6列の間に、細長い長方形の板Bを7列と8列の間に差し込み、ハンドルを向こう側に2段階目に押すと、上層の残りの5穴と下層の5穴とが重なり上層の残りの5穴の肥料が育成孔に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの5列から8列の4列の育成孔に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗2枚目の施肥ができる。
【0016】
第1及び第2の施肥板は、コンテナの大きさ、育成孔の数に応じて、台板から取り外して別の第1及び第2の施肥板に交換可能であることを特徴とするコンテナ苗木の施肥装置である。
そして、育成孔が8×5個のコンテナ苗用の上記施肥装置の細長い長方形の板二列A、Bを台板から外し、コンテナの大きさ、育成孔の数に応じて、長さ、穴の数を合わせた細長い長方形の板二列A、Bを台板に取り替える事ができる施肥装置である。
例えば、6×4個の育成孔のコンテナ苗においては、細長い長方形の板Aの下層の板には間隔を開けた2列に4穴ずつの貫通孔を開け、上層の板には間隔を開けた2列に8穴ずつあるいは16穴ずつの貫通孔を開ける。細長い長方形の板Bには、下層の板に1列に4穴の貫通孔を開け、上層の板には、1列に8穴あるいは16穴の貫通孔を開ける。操作は上記と同様に行う。
【0017】
すなわち、コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板Aを、3列と4列の間に細長い長方形の板Bを差し入れて、最初に手前にハンドルを引くと、上層の4穴と下層の4穴が重なり、上層の4穴に入った肥料が苗の植わった育成孔に落ちる。この操作で、上記1列から3列の育成孔に肥料が入る。次に、本装置の細長い長方形の板Aをコンテナ苗の4列と5列の間に、コンテナ苗の6列と別のコンテナ苗の1列の間に細長い長方形の板Bを差し込み、ハンドルを向こう側に押すと、上層の残りの4穴と下層の4穴とが重なり上層の残りの4穴の肥料が育成孔に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの4列から5列の2列の、またコンテナ苗の6列の1列の育成孔に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗1枚の施肥ができる。
上層の板の16穴の場合も同様に、手前に2段階に引きコンテナ苗1枚に施肥し、更に向こう側に2段階に押すと、別のコンテナ苗1枚に施肥できる。
育成孔数が多く、コンテナの大きい場合は、その大きさ、数に合わし、細長い長方形の板A、細長い長方形の板Bを作成し差し替える。
育成孔の容量が150ミリリットルと300ミリリットルがあるが、細長い長方形の板A、細長い長方形の板Bの穴の数、間隔等を変える。
【0018】
本発明の種苗の施肥装置の材質は、アルミニウム、ステンレス、スチール(鋼)等の金属製、合成樹脂製、繊維強化プラスチック(FRP)製、木材製等がある。また、台板は木材製、細長い長方形の板はアルミニウムとプラスチックを混合して作成しても良い。
【0019】
上記の種苗の施肥装置はスギ、ヒノキ、アカマツ、クロマツ、カラマツ、ウバメガシのコンテナ苗に用いることができる。
これらの樹種はよく植林に使用される。もちろん、これらの樹種以外の植林、緑化に用いられる針葉樹、広葉樹の育苗にも本施肥装置は使用できる。
広葉樹については、クスノキ、シラカシ、クヌギ、コナラ、ケヤキ、ヤマザクラ、エンコウカエデ、ヨグソミネバリ、トチノキ、ミズナラ等の育苗がある。
また、野菜の苗の施肥にも用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の施肥装置は、育成孔8×5個のコンテナ苗用の場合は、二回の操作でコンテナ苗一枚に施肥することができる。このように簡単な操作で、均等に短時間で施肥でき、従来の重労働、長時間労働の労働状態を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】育成孔8×5個のコンテナ苗木用の施肥装置の概略斜視図である。分かり易いように育成孔空のコンテナの上に本施肥装置を置いて位置関係を示している。
図2】育成孔8×5個のコンテナ苗木用の施肥装置の機構を示す断面図である。この場合も、分かり易いように育成孔空のコンテナの上に本施肥装置を置いている。実際は育成孔には培地が入り、苗木が植わっている。
図3】本発明のコンテナ苗木の施肥装置の使用状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例を以下に示す。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明装置の1実施例の育成孔8×5個のコンテナ苗用の施肥装置の概略斜視図である。分かり易いように育成孔空のコンテナの上に本施肥装置を置いて位置関係を示している。
平行に並んだ細長い長方形の板二列A(2)、B(3)、台板とハンドルからなるコンテナ苗木の施肥装置において、二列の板A(2)、B(3)は両方とも、二層になっており、上層の細長い長方形の板は下層の細長い長方形の板の上を前後に移動してスライドでき、下層の細長い長方形の板には貫通した穴(6)が間隔を開け二列に縦に等間隔に片方の列に5穴、もう一方の列に5穴開いており、上層の細長い長方形の板には貫通した穴(5)が間隔を開け二列に縦に等間隔に片方の列に10穴、もう一方の列に10穴開いており、板二列A(2)、B(3)の下層の細長い長方形の板は手元の台板(1)に固定され、台板(1)の上に設けたハンドル(4)は板二列A(2)、B(3)の上層の細長い長方形の板と連動しており、台板(1)の上に設けたハンドル(4)を中間位置から手前に一定距離引くと上層の板の5穴(5)と下層の板の5穴(6)が重なり上層の板の5穴(5)に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗の育成孔(7)に入る。また上層の細長い長方形の板を動かすため台板(1)の上に設けたハンドル(4)を中間位置から向こう側に一定距離押すと上層の板の5穴(5)と下層の板の5穴(6)が重なり上層の板の5穴(5)に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗の育成孔(7)に入るコンテナ苗木の施肥装置である。
【0024】
図2は、育成孔8×5個のコンテナ苗用の施肥装置の機構を示す断面図である。分かり易いように、育成孔(7)は空のものを描いているが、実際は培地に苗が植わっている。コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板A(2)を、3列と4列の間に細長い長方形の板B(3)を差し入れて、最初に手前にハンドル(4)を引くと真ん中の図のように、上層の5穴(5)と下層の5穴(6)が重なり、上層の5穴(5)に入った肥料が苗の植わった育成孔(7)に落ちる。この操作で、上記1列から4列の育成孔(7)に肥料が入る。次に、本装置の細長い長方形の板A(2)をコンテナ苗の5列と6列の間に、細長い長方形の板B(3)を7列と8列の間に差し込み、図2の下の図のように、ハンドル(4)を向こう側に押すと、上層の残りの5穴(5)と下層の5穴(6)とが重なり上層の残りの5穴(5)の肥料が育成孔(7)に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの5列から8列の4列の育成孔(7)に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗1枚の施肥ができる。
【0025】
図3は、コンテナ苗に施肥を実施している本施肥装置の概略斜視図である。
和歌山県では、スギのコンテナ苗の育苗は、コンテナで1年~2年間育てる。高さ35センチメートル以上、幹直径5ミリメートル以上になると出荷される。
【実施例2】
【0026】
平行に並んだ細長い長方形の板二列A(2)、B(3)、台板とハンドルからなるコンテナ苗木の施肥装置において、二列の板A(2)、B(3)は両方とも、二層になっており、上層の細長い長方形の板は下層の細長い長方形の板の上を前後に移動しスライドでき、下層の細長い長方形の板には貫通した穴(6)が間隔を開け二列に縦に等間隔に片方の列に5穴、もう一方の列に5穴開いており、上層の細長い長方形の板には貫通した穴(5)が間隔を開け二列に縦に片方の列に20穴、もう一方の列に20穴開いており、上層の板の穴は下層の板の各々の穴の手前に2穴、向こう側に2穴開いている。板二列A(2)、B(3)の下層の細長い長方形の板は手元の台板(1)に固定され、台板(1)の上に設けたハンドル(4)は板二列A(2)、B(3)の上層の細長い長方形の板と連動しており、台板(1)の上に設けたハンドル(4)を中間位置から手前に一定距離、2段階に、引くと上層の板の5穴(5)と下層の板の5穴(6)が重なり上層の板の5穴(5)に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗の育成孔(7)に入る。また上層の細長い長方形の板を動かすため台板(1)の上に設けたハンドル(4)を中間位置から向こう側に一定距離、2段階に、押すと上層の板の5穴(5)と下層の板の5穴(6)が重なり上層の板の5穴(5)に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗の育成孔(7)に入るコンテナ苗木の施肥装置である。
【0027】
上層の板の二列に20穴ずつ、下層の板の二列に5穴ずつの上記施肥装置を育成孔8×5個のコンテナ苗に用いる場合、コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板A(2)を、3列と4列の間に細長い長方形の板B(3)を差し入れて、最初に手前にハンドル(4)を1段階引くと、上層の板の5穴(5)と下層の板の5穴(6)が重なり、上層の5穴(5)に入った肥料が苗の植わった育成孔(7)に落ちる。この操作で、上記1列から4列の育成孔に肥料が入る。次に、本装置の細長い長方形の板A(2)をコンテナ苗の5列と6列の間に、細長い長方形の板B(3)を7列と8列の間に差し込み、ハンドル(4)を手前側に2段階目に引くと、上層の板の残りの5穴(5)と下層の板の5穴(6)とが重なり上層の板の残りの5穴(5)の肥料が育成孔(7)に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの5列から8列の4列の育成孔に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗1枚の施肥ができる。
次に、コンテナ苗2枚目に移り、コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板A(2)を、3列と4列の間に細長い長方形の板B(3)を差し入れて、最初に向こう側にハンドルを1段階押すと、上層の板の5穴(5)と下層の板の5穴(6)が重なり、上層の板の5穴(5)に入った肥料が苗の植わった育成孔(7)に落ちる。この操作で、上記1列から4列の育成孔(7)に肥料が入る。次に、本施肥装置をコンテナ苗の5列と6列の間に細長い長方形の板A(2)を、7列と8列の間に細長い長方形の板B(3)を差し込み、ハンドル(4)を向こう側に2段階目に押すと、上層の板の残りの5穴(5)と下層の板の5穴(6)とが重なり上層の板の残りの5穴(5)の肥料が育成孔(7)に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの5列から8列の4列の育成孔(7)に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗2枚目の施肥ができる。
【実施例3】
【0028】
平行に並んだ細長い長方形の板二列A(2)、B(3)、台板とハンドルからなるコンテナ苗木の施肥装置において、コンテナの大きさ、育成孔(7)の数に応じて、細長い長方形の板A(2)、B(3)二列を台板(1)から外し、長さ、穴の数を合わせた細長い長方形の板A(2)、B(3)二列を台板(1)に取り換える事ができるコンテナ苗木の施肥装置である。
例えば、6×4個の育成孔(7)のコンテナ苗においては、細長い長方形の板の下層の板には2列に片方の列に4穴、もう一方の列に4穴の貫通孔を開け、板A(2)の上層の板には、2列に8穴ずつあるいは2列に16穴ずつの貫通孔を開ける。板B(3)の上層の板には、1列に8穴あるいは1列に16穴の貫通孔を開ける。操作は上記と同様に行う。
すなわち、コンテナ苗1列と2列の間に本施肥装置の細長い長方形の板A(2)を、3列と4列の間に細長い長方形の板B(3)を差し入れて、最初に手前にハンドル(4)を引くと、上層の板の4穴(5)と下層の板の4穴(6)が重なり、上層の板の4穴(5)に入った肥料が苗の植わった育成孔(7)に落ちる。この操作で、上記1列から3列の育成孔(7)に肥料が入る。次に、本装置の細長い長方形の板A(2)をコンテナ苗の4列と5列の間に、コンテナ苗の6列と隣のコンテナ苗の1列の間に細長い長方形の板B(3)を差し込み、ハンドルを向こう側に押すと、上層の板の残りの4穴(5)と下層の板の4穴(6)とが重なり上層の板の残りの4穴(5)の肥料が育成孔(7)に落ちる。この操作でコンテナ苗の残りの4列から6列の3列の育成孔(7)に肥料が入り、上記2回の操作でコンテナ苗1枚の施肥ができる。
上層の板の16穴の場合も同様に、2段階に引きコンテナ苗1枚に施肥し、更に2段階に押すと、更に別のコンテナ苗1枚に施肥できる。
林野庁が開発したコンテナは、6×4個の300ミリリットル育成孔24個で大きさは30センチメートル×45センチメートル及び8×5個の150ミリリットル育成孔40個で大きさは30センチメートル×45センチメートルである。これらに合わせて本施肥装置は細長い長方形の板二列を替える。
【実施例4】
【0029】
コンテナ苗木がスギ、ヒノキ、アカマツ、クロマツ、カラマツ、ウバメガシのいずれかであるコンテナ苗木の施肥装置である。
これらの樹種はよく植林に使用される。もちろん、これらの樹種以外の植林、緑化に用いる針葉樹、広葉樹の育苗にも本施肥装置は使用できる。
広葉樹については、クスノキ、シラカシ、クヌギ、コナラ、ケヤキ、ヤマザクラ、エンコウカエデ、ヨグソミネバリ、トチノキ、ミズナラ等の種苗がある。
そして、種子の発芽率が高ければ、コンテナへ直接播種が可能である。発芽率の低い樹種の種子などは、苗畑やハウスで育苗した幼苗や毛苗をコンテナへ移植する。また苗床トレイや、多穴の育苗用トレイに播種して育てた幼苗(プラグ苗)を移植する方法も行われている。


【0030】
以上、台板(1)、細長い長方形の板A(2)、細長い長方形の板B(3)、上層の板を動かすハンドル(4)、上層の板の肥料を入れる穴(5)、下層の板の肥料を落とす穴(6)を備える装置であるが、各部に少しずつ改良を加えて使い易くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上述したように、この発明に係る種苗の施肥装置は廉価で、軽く、操作が簡単であり、均等に容易にコンテナ苗に施肥することができる。従って、施肥時間の短縮ができ、労働状態が改善される。
【符号の説明】
【0032】
1 台板
2 細長い長方形の板A
3 細長い長方形の板B
4 上層の板を動かすハンドル
5 上層の板の肥料を入れる穴
6 下層の板の肥料を落とす穴
7 コンテナの育成孔
【要約】
【課題】 コンテナ苗の施肥は、育成孔に一個ずつスプーンで肥料を入れていた。重労働で長時間要した。
【解決手段】 細長い長方形の板二条を備え、細長い長方形の板は二層になっており上層の板は下層の板の上を前後に移動でき、下層の板には貫通した穴が間隔を開け二列に縦に片方の列に5穴、もう一方の列に5穴開いており、上層の板には貫通した穴が間隔を開け二列に縦に片方の列に10穴、もう一方の列に10穴開いており、下層の板は手元の台板に固定され、台板の上に設けたハンドルは上層の板と連動しており、ハンドルを手前に一定距離引くと上層の板の5穴と下層の板の5穴が重なり上層の板の5穴に入っていた肥料が下に落ち、コンテナ苗の育成孔に入る。ハンドルを向こう側に一定距離押すと上層の5穴と下層の5穴が重なり上層の5穴に入っていた肥料が下に落ち、育成孔に入る種苗の施肥装置で、短時間に簡単な操作で苗木一本毎に均等に施肥できる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3