IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大原パラヂウム化学株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】多孔性金属錯体を含む成形品
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20230221BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230221BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20230221BHJP
   B01J 37/00 20060101ALN20230221BHJP
   B01J 31/28 20060101ALN20230221BHJP
   B01J 31/26 20060101ALN20230221BHJP
【FI】
A61L9/014
A01P1/00
B01J20/22 A
B01J37/00 C
B01J37/00 D
B01J31/28 M
B01J31/26 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022025617
(22)【出願日】2022-02-22
【審査請求日】2022-05-26
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391034938
【氏名又は名称】大原パラヂウム化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】上林 ▲祥▼晃
(72)【発明者】
【氏名】今井 和也
(72)【発明者】
【氏名】井手 洋和
(72)【発明者】
【氏名】脇 浩一
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-203084(JP,A)
【文献】特開2015-066512(JP,A)
【文献】国際公開第2015/012373(WO,A1)
【文献】特表2021-515158(JP,A)
【文献】国際公開第2021/148608(WO,A1)
【文献】特表2011-502041(JP,A)
【文献】特開2021-062322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
B01J 21/00-38/74
A61L 9/00- 9/22
A01P 1/00
A01N 25/00-25/34
A01N 59/00-59/26
B01J 2/00
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の非水系接着剤の表面に多孔性金属錯体が被覆されている多孔性金属錯体造粒物であって、平均粒子径が50μm~400μmの範囲内である多孔性金属錯体造粒物を含む集合体が、0.3MPa~500MPaの範囲内の圧力で圧縮成形または押出成形されてなることを特徴とする、成形品。
【請求項2】
多孔性金属錯体と、非水系接着剤と、希釈剤としての多孔性物質(但し、多孔性金属錯体を除く。)とを含む圧縮成形品または押出成形品であって、粒子状の非水系接着剤の表面に、多孔性金属錯体および希釈剤としての多孔性物質(但し、多孔性金属錯体を除く。)が被覆されている多孔性金属錯体造粒物を含む集合体が、0.3MPa~500MPaの範囲内の圧力で圧縮成形または押出成形されてなることを特徴とする、成形品。
【請求項3】
粒子状の非水系接着剤の表面に、多孔性金属錯体および希釈剤としての多孔性物質(但し、多孔性金属錯体を除く。)が被覆されている多孔性金属錯体造粒物を含む集合体が、圧縮成形または押出成形されてなる、請求項1に記載の成形品。
【請求項4】
多孔性物質が、活性炭、ゼオライト、またはシリカゲルであり、非水系接着剤が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、またはポリエステル系樹脂である、請求項2または3に記載の成形品。
【請求項5】
多孔性金属錯体を0.3質量%以上含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項6】
硬度が1N~150Nの範囲内である、請求項1~5のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項7】
アンモニア吸着量が1000ppm以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項8】
多孔性金属錯体、希釈剤、および接着剤を有し、かつ安息角が60度以下であり、嵩密度が0.3g/cm3以上である混合物が圧縮成形されてなる、請求項2~7のいずれか一項に記載の成形品。
【請求項9】
請求項1~8に記載の成形品を含む、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、またはフィルター。
【請求項10】
ピリジンまたはアミン類を消臭するための、請求項に記載の消臭剤またはフィルター。
【請求項11】
多孔性金属錯体と接着剤とを含む組成物に対し、0.3MPa~500MPaの範囲内の圧力で圧縮成形または押出成形を行う工程を含むことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性金属錯体の技術分野に属する。本発明は、主として、空気中の有害物質、有機溶剤、または生活臭などに関わる成分を効率的に分離・回収、または吸着・除去することができる、多孔性金属錯体を含有する成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔性金属錯体は、Porous Coordination Polymer または Metal-Organic Framework(以下、「PCP/MOF」ともいう。)とも呼ばれる、金属イオンと有機配位子との配位結合を利用して人工的に合成された多孔性物質である。金属イオンが有機配位子と架橋することによって、フレームワークが構築され、このフレームワーク内の空隙が分子を取り込む空間として機能する。
【0003】
従来の多孔性物質としては、例えば、ゼオライト、シリカ、活性炭等の天然の無機的なものを挙げることができる。それぞれ、分離、吸蔵、吸着、排出といった細孔機能を有しているが、微細な細孔の制御が困難であり、細孔機能も影響を受ける。一方、PCP/MOFは、分子設計によって様々な多孔性構造のものを合成することができ、非常に複雑な構造のものや、高機能ないし多機能な多孔性物質を構築することができる。そのため、PCP/MOFは、ガス(水素、メタン、CO2等)の吸蔵、分子やイオンの選択貯蔵、異性体分離等の分離、固体触媒(酸化反応、付加反応、水素化反応等)、除放、隔離、輸送、ナノ容器、センサー等幅広い応用が期待されている。
【0004】
ところで、タバコ臭、動物臭、排泄臭等の生活臭は、家庭内や職場内、公共施設といった生活環境に溢れている。臭いによっては社会問題となることもある。高齢化に伴い排泄物の処理が問題となるが、同時に排泄臭の問題も惹起する。タバコ臭や動物臭についても、ヒトによっては耐え難いものがある。その他の生活臭にしても、生活環境において快適に過ごすためには、できれば除去することが望まれる。
【0005】
これら生活臭を除去する手段の一つとして、従来からゼオライト、シリカ、活性炭といった多孔性物質が用いられている。しかし、このような天然の多孔性物質では、比表面積が比較的小さく、十分な消臭効果があるとは言い難い。これに対し、人工の多孔性物質であるPCP/MOFは比表面積が非常に大きく、十分な消臭効果を有するのみならず、抗菌効果や抗ウイルス効果をも有し得る(例えば、特許文献1、2)。
【0006】
このようなPCP/MOFについては、表面点接着造粒法によるPCP/MOF造粒物が提案されている(特許文献3)。特許文献3に記載のPCP/MOF造粒物は、粉体接着剤等の接着剤を用いてPCP/MOFを活性炭等の担体粒子に加熱接着したものである。当該造粒物は、サンドウィッチフィルターに挟み込む等することにより、空気清浄機や車キャビンフィルターの狭着フィルター用充填剤の用途等において、有効に活用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-88499号公報
【文献】特開2022-9369号公報
【文献】特開2021-62322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
表面点接着造粒法によるPCP/MOF造粒物は比表面積が大きく、消臭剤や抗ウイルス剤等としての処理効率が高いが、担体粒子の表面にPCP/MOFが接着された構造であるため、造粒物全体におけるPCP/MOFの含有率が比較的小さい。
本発明は、PCP/MOFを高濃度に含有しながらも、有害物質や生活臭成分等の吸着・除去効果をはじめとするPCP/MOFの上記特徴を良好に維持する新規な成形品を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、PCP/MOFに接着剤等を混合して加圧成形(例えば、打錠成形、押出成形。)することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
【0011】
[1]多孔性金属錯体と接着剤とを含む加圧成形品であって、0.3MPa~500MPaの範囲内の圧力で加圧成形されてなることを特徴とする、成形品。
[2]さらに、希釈剤を含む、上記[1]に記載の成形品。
[3]希釈剤が多孔性物質(但し、多孔性金属錯体を除く。)であって、接着剤が非水系接着剤である、上記[2]に記載の成形品。
[4]粒子状の非水系接着剤の表面に多孔性金属錯体、または多孔性金属錯体および希釈剤が被覆されている多孔性金属錯体造粒物を含む集合体が、圧縮成形または押出成形されてなる、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の成形品。
[5]多孔性物質が、活性炭、ゼオライト、またはシリカゲルであり、非水系接着剤が、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、またはポリエステル系樹脂である、上記[3]または[4]に記載の成形品。
[6]多孔性金属錯体を0.3質量%以上含む、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の成形品。
[7]硬度が1N~150Nの範囲内である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の成形品。
[8]アンモニア吸着量が1000ppm以上である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の成形品。
[9]多孔性金属錯体、希釈剤、および接着剤を有し、かつ安息角が60度以下であり、嵩密度が0.3g/cm以上である混合物が圧縮成形されてなる、上記[2]~[8]のいずれか一項に記載の成形品。
[10]粒子状の非水系接着剤の表面に、多孔性金属錯体、または多孔性金属錯体および希釈剤が被覆されている多孔性金属錯体造粒物であって、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の成形品の原料として用いられる、多孔性金属錯体造粒物。
[11]上記[1]~[9]に記載の成形品、または上記[10]に記載の多孔性金属錯体造粒物、もしくは当該多孔性金属錯体造粒物および希釈剤を含む、消臭剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、またはフィルター。
[12]ピリジンまたはアミン類を消臭するための、上記[11]に記載の消臭剤またはフィルター。
【0012】
[13]多孔性金属錯体と接着剤とを含む組成物に対し、0.3MPa~500MPaの範囲内の圧力で圧縮成形または押出成形を行う工程を含むことを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の成形品の製造方法。
[14]前記組成物が、上記[10]に記載の多孔性金属錯体造粒物である、上記[13]に記載の成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、PCP/MOFを高濃度に含有する成形品を提供することができる。また、本発明によれば、生活臭などを効果的に消臭し、また菌やウイルスを効果的に抑制する機能を長期間維持する成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1 本発明に係る成形品
本発明に係る成形品(以下、「本発明成形品」という。)は、多孔性金属錯体と接着剤とを含む加圧成形品であって、0.3MPa~500MPaないし3kgf/cm~5000kgf/cmの範囲内の圧力で加圧成形されてなることを特徴とする。本発明成形品は、さらに希釈剤を含み得る。
【0015】
ここで「加圧成形品」とは、加圧による圧縮応力または押出応力を用いて一定の形状に成形された成形品をいい、本発明成形品は、圧縮成型品(例として、錠剤成形品)または押出成形品の形態であり得る。
【0016】
1.1 多孔性金属錯体(PCP/MOF)
本発明に係るPCP/MOF(以下、単に「PCP/MOF」ともいう。)は、金属イオンと有機配位子とが交互に配位結合してなり、平均粒径が0.2~50μmの範囲内にある。
PCP/MOFは、上記平均粒径を有すれば特に制限されない。好ましい平均粒径は、0.5~30μmの範囲内であり、さらに好ましくは、0.7~3μmの範囲内である。かかる平均粒径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定装置で測定して得られるピーク値である。
【0017】
また、PCP/MOFは、0.6~1.0nmの範囲内の細孔口径を有することが好ましい。
PCP/MOFの細孔口径は、IUPACの定義によるマイクロポアの領域である0.6~1.0nmの範囲内であるが、0.7~0.9nmの範囲内が好ましい。当該細孔口径(直径)は、ガス/蒸気吸着量測定装置より測定される口径値であって、例えば、マイクロトラック・ベル社のBELSORP-maxにより測定することができる。当該細孔口径が0.6nmより小さくても、1.0nmより大きくても十分な瞬間消臭能は得られ難い。
【0018】
本発明成形品におけるPCP/MOFの含有量に特段の制限はないが、0.3質量%以上であることが適当である。中でも、0.5質量%~90質量%の範囲内であることが好ましい。本発明成形品が圧縮成形品の場合は、20質量%ないし30質量%~70質量%ないし80質量%の範囲内であることが好ましい。
【0019】
1.1.1 金属イオン
PCP/MOFを構成しうる金属イオンとしては、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Sc3+、Y3+、Ti4+、Zr4+、Hf4+、V4+、V3+、V2+、Nb3+、Ta3+、Cr3+、Mo3+、W3+、Mn3+、Mn2+、Re3+、Re2+、Fe3+、Fe2+、Ru3+、Ru2+、Os3+、Os2+、Co3+、Co2+、Rh2+、Rh、Ir2+、Ir、Ni2+、Ni、Pd2+、Pd、Pt2+、Pt、Cu2+、Cu、Ag、Au、Zn2+、Cd2+、Hg2+、Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Si4+、Si2+、Ge4+、Ge2+、Sn4+、Sn2+、Pb4+、Pb2+、As5+、As3+、As、Sb5+、Sb3+、Sb、Bi5+、Bi3+、Biが挙げられる。この中、銅イオン、鉄イオン、または亜鉛イオンが特に好ましい。
【0020】
1.1.2 有機配位子
PCP/MOFを構成しうる有機配位子は、金属イオンと配位可能な複数の官能基ないし原子団を有する芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物を含み、さらに金属イオンと配位可能な1つの官能基を有する芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物を併用してもよい。
【0021】
有機配位子の金属イオンに配位可能な前記官能基ないし原子団は、1つの芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物に対し1~5個、好ましくは2~4個、より好ましくは2~3個含まれる。このような金属イオンに配位可能な官能基ないし原子団としては、グリシジル基、COOH、無水カルボン酸基、CS2H、OH、SH、SO、SO2、SO3H、NO2、-S-、-SS-、Si(OH)3、Ge(OH)3、Sn(OH)3、Si(SH)4、Ge(SH)4、Sn(SH)4、PO3H、AsO3H、AsO4H、P(SH)3、As(SH)3、CH(SH)2、C(SH)3、CH(NH2)2、C(NH2)3、CH(OH)2、C(OH)3、CH(CN)2、C(CN)3、CH(RSH)2、C(RSH)3、CH(RNH2)2、C(RNH2)3、CH(ROH)2、C(ROH)3、CH(RCN)2、C(RCN)3、NH2、NHR、NR2、芳香環を構成するヘテロ原子(式中、RはC1~C5アルキル基またはアリール基を示す)が挙げられる。芳香環を構成するヘテロ原子としては、具体的には、例えば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、トリアジン、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フェナントロリン、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、プリン、ビピリジン、テルピリジンなどの環内窒素原子;フラン、ジオキセタン、オキセタンなどの環内酸素原子;チオフェン、チアゾール、ベンゾチオフェンなどの環内硫黄原子が挙げられる。
【0022】
上記芳香族化合物は、5または6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の化合物を意味し、具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、1,4-ジヒドロナフタレン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ビフェニル、トリフェニル、アセナフチレン、アセナフテン、テトラヒドロナフタレン、ピレン、インダン、インデンおよびフェナントレンが挙げられる。
【0023】
上記脂肪族化合物としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の炭素数1~12の脂肪族化合物が挙げられる。
【0024】
上記脂環式化合物としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンが挙げられる。
【0025】
上記ヘテロ芳香族化合物は、N、OおよびSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む、5または6員の芳香環からなる単環または多環系の化合物を意味し、多環系の場合には少なくとも1つの環がヘテロ芳香環であればよい。具体例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾ[b]チオフェンおよびベンズイミダゾールが挙げられる。
【0026】
上記ヘテロ環式化合物としては、例えば、モルホリン、クロマン、2,3-ジヒドロ-1,4-ジオキサナフタレン、ピロリジン、ピペリジン、メチルピペラジン、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
【0027】
芳香族化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、ヘテロ芳香族化合物、ヘテロ環式化合物は、金属イオンと配位可能な官能基の他に1~5個、好ましくは1~3個、特に1~2個の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメチル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、シアノ、ニトロ、メチレンジオキシ、アセチルアミノ、カルバモイル、アセチル、ホルミルが挙げられる。
【0028】
PCP/MOFは、金属イオンと有機配位子から構成されるが、カウンターイオンを含んでいてもよい。金属イオンをカウンターイオンとする場合、かかる金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、銅、亜鉛、カドミウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、白金、ルテニウム、モリブデン、ジルコニウム、スカンジウムなどのイオンが好ましく、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などのイオンがより好ましい。当該金属イオンは、単一の金属イオンを使用してもよく、2種以上の金属イオンを併用してもよい。
【0029】
PCP/MOFを構成しうる好ましい有機配位子としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フルオレン、インダン、インデン、ピレン、1,4-ジヒドロナフタレン、テトラリン、ビフェニレン、トリフェニレン、アセナフチレン、アセナフテンなどの芳香環に2個、3個または4個のカルボキシル基が結合した化合物(前記リガンドは、F,Cl、Br、Iなどのハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基などのアシルアミノ基、シアノ基、水酸基、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、メトキシ、エトキシなどの直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルコキシ基、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチル、イソブチルなどの直鎖又は分岐を有する炭素数1~4のアルキル基、チオール基(SH)、トリフルオロメチル基、スルホン酸基、カルバモイル基、メチルアミノなどのアルキルアミノ基、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ基などの置換基で1,2または3置換されていてもよい)、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸などの不飽和2価カルボン酸、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、4,4’-ビピリジル、ジアザピレン、ニコチン酸、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジンなどの1または2以上の環内窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子により配位可能な含窒素芳香族化合物(前記置換基により1、2または3置換されていてもよい。)などが挙げられる。配位子が中性の場合、金属イオンを中和するのに必要なカウンターアニオンを有する。このようなカウンターアニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、過塩素酸イオンなどが挙げられる。
【0030】
PCP/MOFは、シート状などの二次元細孔または複数のシートがアキシアル位に配位する二座配位子を構成要素として含む三次元細孔を有するPCP/MOFを包含するが、例えば一次元細孔を有するものであってもよい。
また、PCP/MOFとして、国際公開第2015/129685号に開示されている[Zn44-O)2(BTMB)2] (BTMB= 1,3,5-tris(3-carboxyphenyl)benzene)などの1,3,5-トリス(3-カルボキシフェニル)ベンゼン系のものも使用することができる。
【0031】
本発明で使用しうるPCP/MOFは、例えば以下の文献、総説(Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 2334-2375.;Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 2-14.;Chem. Soc. Rev., 2008, 37, 191-214.;PNAS, 2006, 103, 10186-10191.;Chem.Rev.,2011, 111, 688-764.;Nature, 2003, 423, 705-714.)、特許文献(国際公開第2015/129685号)などに記載されているが、これらに限定されず、公知のPCP/MOFあるいは今後製造され得るPCP/MOFを広く使用することができる。
【0032】
1.2 接着剤
本発明成形品は、PCP/MOF以外に接着剤を含有する。用い得る接着剤に特段の制限はなく、結晶セルロース、可溶化デンプン、合成マイカ、酢酸セルロース、溶剤バインダー、パウダーレジン等、水系または非水系のいずれの接着剤をも用いることができる。
中でも、本発明成形品においては非水系接着剤を好適に用いることができる。
【0033】
当該非水系接着剤としては、非水性で有機溶剤には可溶であり、非水系で用いられるものであって、PCP/MOFをシート基材上に固定化できるものであれば特に制限はなく、例えば、セルロース系、ビニル樹脂系、スチレン樹脂系、エポキシ樹脂系、クロロプレンゴムを始めとするゴム系、シリコン樹脂系、アクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、フェノール樹脂系、ポリアミド樹脂系、イミド樹脂系、メラミン樹脂系、ポリエステル樹脂系、シェラックから適宜選択することができる。中でも、アクリル樹脂系、ポリウレタン樹脂系、ポリアミド樹脂系、ポリエステル樹脂系が好ましい。
【0034】
非水系接着剤の具体例としては、例えば、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールやエチルセルロース、酢ビアクリル共重合体、メタアクリル酸アルキルエステル系共重合体、メタクリル酸ブチル・メタクリル酸エトキシエチル・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム共重合体などを挙げることができる。これら非水系接着剤は、所望により、一種または二種以上を任意に併用することができる。
【0035】
1.3 希釈剤
本発明成形品は、PCP/MOFおよび接着剤の他に希釈剤を含むことができる。本発明成形品に用い得る希釈剤は、吸着剤として機能するものであれば特に制限されず、中でも多孔性物質であることが好ましい。
【0036】
当該多孔性物質としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土などを挙げることができる。活性炭としては、例えば、クラレコール(登録商標、クラレケミカル社製)、CW8200B(フタムラ化学社製)を挙げることができる。活性炭の比表面積としては、500m/g以上が好ましく、1500m/g以上がより好ましい。
【0037】
1.4 添加剤
本発明成形品は、さらに例えば、賦形剤、滑沢剤、流動化剤、導電剤、結合剤といった添加剤を含むことができる。
当該賦形剤としては、例えば、合成マイカ、結晶セルロースが挙げられる。当該滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、六方晶窒化ホウ素(hBN)、黒鉛、二硫化モリブデンが挙げられる。当該流動化剤としては、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。当該導電剤としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、黒鉛粉末が挙げられる。結合剤としては特段の制限はなく、結晶セルロース、可溶化デンプン、合成マイカ、酢酸セルロースが挙げられる。いずれも通常、適当な溶液に拡散させて用いるが、溶液内での拡散の容易性や、溶液内での沈降分離を避けるため、いずれも平均粒子径は600μmを超えない範囲が適当であり、100μm以下が好ましく、30μm~60μmの範囲内がより好ましい。
【0038】
1.5 本発明成形品の形態
本発明成形品は加圧成形品であり、例えば、圧縮成型品(錠剤成形品)、押出成形品の形態であり得る。
【0039】
本発明成形品の硬度に特に制限はないが、1N~150Nの範囲内であることが適当である。中でも、3N~120Nの範囲内であることが好ましい。さらに好ましくは、10N~100Nの範囲であることがより好ましい
【0040】
1.5.1 錠剤成形品
錠剤成形品としての本発明成形品は、PCP/MOFおよび接着剤、さらに必要に応じて他の成分が混合撹拌された組成物(後述する本発明に係る多孔性金属錯体造粒物である場合を含む。)が打錠成形されてなる成形品であり、高濃度な製剤とすることが可能であり、消臭抗菌等の効果を長持ちさせることができる。PCP/MOFの含有量を非常に高いものとすることができるため、本発明成形品をより高性能なものとすることが可能である。
【0041】
当該錠剤成形品は、15MPa~500MPaの範囲内、あるいは150kgf/cm~5000kgf/cmの範囲内の圧力をかけて打錠成形されたものであって、アンモニア吸着量が1000ppm以上であることが好ましい。
【0042】
また、錠剤成形前のPCP/MOFおよび接着剤を含む混合物、またはさらに希釈剤等の他成分が加わった混合物は、安息角が60度以下であって嵩密度が0.3g/cm以上であることが好ましい。安息角の下限としては、特に制限されないが、例えば、30度を挙げることができる。嵩密度の上限としては、特に制限されないが、例えば、0.6g/cmを挙げることができる。
当該錠剤成形品は、例えば、市販されている適当な打錠機を用いて製造することができる。かかる打錠機として、例えば、単発式卓上打錠機、単発式連続打錠機、輪転式連続打錠機、回転式連続打錠機等を挙げることができる。
【0043】
1.5.2 押出成形品
押出成形品としての本発明成形品は、混合撹拌された組成物(後述する本発明に係る多孔性金属錯体造粒物である場合を含む。)が、例えば、棒状に押出され、その混練押出物が適当な寸法に裁断されてなる成形物である。
【0044】
具体的には、例えば、ディスクペレッターに投入された原料混合物が、加圧されながら当該ペレッター内部のディスクダイの孔から押出され成形され、ナイフカッターなどで適当な長さに切断された棒状成形物とすることができる。
【0045】
当該押出成形品は、中空構造や多孔質構造とすることができる。それにより、消臭抗菌等の処理効率をより高めることができる。当該押出成形品においても、PCP/MOFの含有量を比較的高いものとすることができる。
【0046】
当該押出成形品は、0.3MPa~5MPaの範囲内、あるいは3kgf/cm~50kgf/cmの範囲内の圧力をかけて押出成形されたものであって、アンモニア吸着量が1000ppm以上であることが好ましい。
【0047】
1.6 本発明に係る多孔性金属錯体造粒物
本発明に係る多孔性金属錯体造粒物(以下、「本発明造粒物」という。)は、ビーズ状ないし粒子状の非水系接着剤の表面に、PCP/MOF、またはPCP/MOFおよび希釈剤が被覆されている多孔性金属錯体造粒物である。本発明造粒物は、本発明成形品の原料として用いることができる。即ち、本発明造粒物の集合体に対して加圧成形(例えば、打錠成形、押出成形。)を行うことにより、本発明成形品を得ることができる。本発明造粒物を本発明成形品の原料として用いれば、流動性や打錠機の臼への充填性を高めることができ、また、本発明成形品の連続生産性を向上させることができるため、本発明成形品の大量生産に資する。
【0048】
当該非水系接着剤に特に制限はなく、例えば、上記にて列挙した各非水系接着剤を用いることができる。それらの中でも、ポリウレタン樹脂系接着剤が好ましい。それ故、本発明造粒物は、核となる粒子状のポリウレタン樹脂系接着剤に対して、PCP/MOF、またはPCP/MOFおよび希釈剤が被覆された構造を有する造粒物であることが好ましい。
【0049】
当該核となる接着剤粒子のサイズ(寸法)に特に制限はないが、平均粒子径として、100μm以下程度であることが適当である。中でも、25μm~75μmの範囲内であることが好ましく、30μm~50μmの範囲内であることがより好ましい。
本発明造粒物は、圧縮造粒法(ローラーコンパクター法)、ブリケット造粒法(圧縮造粒)などの乾式造粒法や、押出造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法などの湿式造粒法により調製することができる。この中、乾式造粒法により本発明造粒物を調製することが好ましい。
本発明造粒物のサイズ(寸法)は、非水系接着剤の粒子径や被覆するPCP/MOFの量などによって異なるが、平均粒子径として、400μm以下程度であることが適当である。中でも、50μm~100μmの範囲内であることが好ましく、50μm~90μmの範囲内であることがより好ましい。
【0050】
なお、本発明造粒物は、本発明成形品の原料として用いるのみならず、それ自体で吸着・消臭・抗菌・抗ウイルス等の機能を発揮することができるため、そのままの形態で消臭剤や抗菌・抗ウイルス剤等として用いることも可能である。
【0051】
2 本発明成形品の製造方法
本発明成形品を製造する際に用いる原料としては、PCP/MOFおよび接着剤(水性接着剤または非水性接着剤)以外に、例えば、希釈剤、各種添加剤、溶剤(水または有機溶剤)を挙げることができる。この中、少なくともPCP/MOFおよび接着剤を含む固形物や、少なくともPCP/MOF、接着剤および溶剤を含む混合物を原料として用いることができる。
ここで、「接着剤」、「非水性接着剤」、「添加剤」などの用語は前記と同義である。
【0052】
原料のPCP/MOFは、それ自身公知の化合物であり、公知の製造方法(前記文献等に記載の製造方法)で得ることができ、また常法により前記細孔口径のものを調製することができる。PCP/MOFとポリマーとの複合体は、例えば、国際公開第2015/012373号の記載に準じて製造することができる。また、PCP/MOFを含め各種原料、シート基材などは、所望のものを購入することができる。
【0053】
本発明成形品の製造方法(以下、「本発明製造方法」という。)は、PCP/MOFと接着剤とを含む組成物に対し、0.3MPa~500MPaないし3kgf/cm~5000kgf/cmの範囲内の圧力で加圧成形(圧縮成形または押出成形)を行う工程を含むことを特徴とする。当該組成物としては、本発明造粒物を用いることができる。
【0054】
本発明成形品の製造の際に用いられる非水系接着剤は、粒子状ないしビーズ状であることが好ましい。その粒子状の非水系接着剤の表面は、PCP/MOF、またはPCP/MOFおよび希釈剤等で被覆することができる。このようなPCP/MOF等で被覆されたPCP/MOF造粒物ないしPCP/MOF顆粒は、多孔性金属錯体を高濃度で集積させて保有することができると共に、流動性や打錠機の臼への充填性が良く、そのため、多孔性金属錯体を高濃度で含有する本発明成形品の大量生産において好ましく用いることができる。
【0055】
当該粒子のサイズ(寸法)に特段の制限はないが、平均粒子径として、2000μm以下程度であることが適当である。中でも、20μm~100μmの範囲内であることが好ましく、30μm~50μmの範囲内であることがより好ましい。
ここで、接着剤や、希釈剤、その他の添加剤の「粒子径」は、例えば、一定の目開きを有するメッシュ篩いを通過するかしないかによって特定することができる。例えば、80メッシュの篩いを通過し、200メッシュの篩いを通過しない粒子は、75μm~180μmの粒子径を有すると考えることができる。
【0056】
2.1 錠剤成形品の製造方法
錠剤成形品における本発明製造方法は、次の工程1および2を含むものとすることができる:
1.少なくともPCP/MOFおよび接着剤を混合撹拌して原料混合物を調製する工程(混合工程)、
2.工程1(混合工程)にて得られた原料混合物に対して打錠(圧縮成形あるいは錠剤成形)を行い、錠剤成形品の態様の本発明成形品を得る工程(打錠工程)。
【0057】
混合工程においては、適宜の攪拌器や攪拌装置(例えば、プロペラ撹拌器、ニーダー、攪拌羽。)を用いて原料混合物を攪拌することができる。混合攪拌の手順に特に制限はないが、原料としてPCP/MOFおよび接着剤以外のものも用いる場合には、まず、PCP/MOFおよび接着剤以外の原料を均一になるまで攪拌した後、PCP/MOFを投入して均一になるまで攪拌し、更に接着剤を投入して均一になるまで攪拌を行うことが好ましい。
【0058】
また後述するように、当該混合工程は、接着剤粒子およびPCP/MOF、または必要に応じて他の原料を混合攪拌し、原料混合物としての本発明造粒物を調製する工程としてもよい。
【0059】
混合工程において混合攪拌される接着剤は、粉体の態様であることが適当であり、例えば、非水系接着剤、結晶セルロース、可溶化でんぷん、合成マイカ、酢酸セルロース、珪藻土などを挙げることができる。中でも、非水系接着剤(アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等)、結晶セルロースが好ましい。原料混合物には、他に希釈剤、流動化剤、滑沢剤、結合剤等が含まれていてもよい。当該希釈剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土を挙げることができる。また、流動化剤としてはタルク、軽質無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられ、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、六方晶窒化ホウ素(hBN)、黒鉛、二硫化モリブデン等が挙げられる。結合剤としては、例えば、結晶セルロース、可溶化デンプン、合成マイカ、酢酸セルロースが挙げられる。
【0060】
打錠工程において打錠される前の原料混合物は、粉体の態様であることが適当であり、安息角が60度以下の値であることが好ましい。また、嵩密度は0.3g/cm以上の値であることが好ましい。ここで「安息角」は、打錠機のホッパーから粉末シューターまで原料混合物がスムーズに運ばれるかを判断する目安となる指標であり、例えば、50度以下の値であることがより好ましい。また「嵩密度」は、打錠機の粉末シューターから臼(打錠臼)への原料粉末の入りやすさを判断する目安となる指標であり、例えば、0.35g/cm以上の値であることがより好ましい。
【0061】
打錠工程における打錠は、例えば、適宜の打錠機(例えば、単発式卓上打錠機、単発式連続打錠機。)を用いて、15MPa~500MPaの範囲内、あるいは150kgf/cm~5000kgf/cmの範囲内の圧力をかけて行うことが適当である。中でも、30MPa~300MPaの範囲内、あるいは300kgf/cm~3000kgf/cmの範囲内の圧力であることが好ましい。
【0062】
打錠工程にて得られる本発明成形品は、アンモニア吸着量が1000ppm以上であることが好ましい。当該吸着量は、本発明成形品を、例えば、PCP/MOFを0.3質量%以上含有する態様とすることにより実現できる。
【0063】
2.2 押出成形品の製造方法
押出成形品における本発明製造方法は、次の工程1および2を含むものとすることができる:
1.少なくともPCP/MOFおよび接着剤を混合撹拌して原料混合物を調製する工程(混合工程)、
2.工程1(混合工程)にて得られた原料混合物に対して押出成形を行い、押出成形物を得る工程(押出工程)。
ここで、工程2(押出工程)にて得られる上記押出成形物は、押出成形品の態様の本発明成形品であり得る。また、本発明製造方法は、必要に応じて更に次の工程3を含むことができる:
3.工程2(押出工程)にて得られた押出成形物を乾燥させ、押出成形品の態様の本発明成形品を得る工程(乾燥工程)。
【0064】
混合工程においては、適宜の攪拌器や攪拌装置(例えば、プロペラ撹拌器、ニーダー、攪拌羽。)を用いて原料混合物を攪拌することができる。混合攪拌の手順に特に制限はないが、原料としてPCP/MOFおよび接着剤以外のものも用いる場合には、まず、PCP/MOFおよび接着剤以外の原料を均一になるまで攪拌した後、PCP/MOFを投入して均一になるまで攪拌し、更に接着剤を投入して均一になるまで攪拌を行うことが好ましい。
【0065】
また後述するように、当該混合工程は、接着剤粒子およびPCP/MOF、または必要に応じて更に他の原料を混合攪拌し、原料混合物としての本発明造粒物を調製する工程としてもよい。
【0066】
混合工程において混合攪拌される接着剤としては、例えば、溶剤バインダー、合成マイカ、結晶セルロース、パウダーレジン等の水系または非水系の接着剤を挙げることができ、必要に応じて適量の溶剤を含むことができる。原料混合物には、他に希釈剤、賦形剤、滑沢剤、流動化剤、結合剤、導電剤等が含まれていてもよい。当該希釈剤としては、例えば、活性炭(粒子径違いの活性炭、機能性活性炭等)、ゼオライト、シリカゲル、珪藻土を挙げることができる。また、賦形剤としては合成マイカ、結晶セルロース等が挙げられ、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、六方晶窒化ホウ素(hBN)、黒鉛、二硫化モリブデン等が挙げられる。流動化剤としては、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸(シリカ)、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。結合剤としては、例えば、結晶セルロース、可溶化デンプン、合成マイカ、酢酸セルロースが挙げられる。導電剤としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、黒鉛粉末が挙げられる
【0067】
押出工程においては、例えば、適宜の押出成形用装置(ディスクペレッター、スクリュー式混練押出機等)を用いて原料混合物に対し押出造粒を行った上で、適宜のディスクダイ(金型)等を用いて押出造粒物に対して押出成形を行うことが適当である。当該押出成形は、0.3MPa~5MPaの範囲内、あるいは3kgf/cm~50kgf/cmの範囲内の圧力をかけて行うことが適当である。中でも、0.5MPa~3MPaの範囲内、あるいは5kgf/cm~30kgf/cmの範囲内の圧力であることが好ましい。
【0068】
具体的には、押出成形用装置として、例えば、ディスクペレッターを用いることができる。この場合、混合工程を経た原料混合物を、まずディスクペレッターの上部に設置されたホッパーに投入する。原料混合物は自然落下によりホッパーを通過し、ディスクペレッターの造粒室に送り込まれる。
造粒室内の中心部には、鉛直方向を回転軸とする竪形シャフトが設けられており、また、当該シャフトには、ローラーホルダを介して2~5個のローラーが設置されている。各ローラーは、そのローラー軸がシャフトから水平方向に放射状に並ぶような配置で取り付けられている。当該ローラーホルダおよびローラーは、当該シャフトの軸回転に伴い一体となって回転(公転)する。ローラーの下部には、円板状で板厚方向に貫通孔が多数穿孔されたディスクダイが、ローラー面にて接するように配置されている。ただし、当該ディスクダイは竪形シャフトからは独立して造粒室内に固定されており、当該シャフトの軸回転の影響は受けない。したがって、竪形シャフトが軸回転すれば、それに伴いローラーホルダおよびローラーが回転(公転)し、各ローラーは、公転しながらディスクダイとの摩擦で自転することになる。
これにより、造粒室内に投入された原料混合物は、各ローラーとディスクダイとの間に挟まれ、加圧されながらディスクダイの孔から下部に押出成形される。
【0069】
当該加圧された押出成形物は、ディスクダイの裏面で回転するナイフカッターで適当な長さに切断されてペレット状または棒状となり、同軸回転のローリングプレート上に落下・排出される。
【0070】
ディスクダイの有効厚および孔径は、加圧する際の圧力値に応じて適宜選択することができる。例えば、成形圧力が0.3MPa~5MPa程度の範囲内である場合には、ディスクダイの有効厚を9mm~15mmの範囲内、孔径を直径2mm~5mmの範囲内とすることができる。
【0071】
押出成形用装置としては、他に例えば、スクリュー式混錬押出機を用いてもよい。当該混練押出機は、一軸スクリュー押出機であっても、二軸スクリュー押出機であっても、また多軸スクリュー押出機であってもよい。かかる二軸スクリュー押出機は、スクリューの形態が同方向回転完全噛み合い型でも同方向回転不完全噛み合い型でも異方向回転噛み合い型でもよい。二軸スクリュー押出機の場合、複数のスクリューエレメントを備えた2本のスクリューによって材料を混練し、ダイから押し出し排出することができる。この場合、ダイから押し出された棒状の混練押出物は、例えば、カッターや歯車状の2つのローラーの間を通過させることにより裁断し、ペレット状の押出成形品に加工することができる。
【0072】
押出工程または乾燥工程にて得られる本発明成形品は、アンモニア吸着量が1000ppm以上であることが好ましい。当該吸着量は、本発明成形品を、例えば、PCP/MOFを0.3質量%以上含有する態様とすることにより実現できる。
【0073】
2.3 本発明造粒物の製造方法
本発明造粒物の製造方法は、次の工程1を含むものとすることができる:
1.粒子状ないしビーズ状の非水系接着剤の表面を熱溶融させ、当該表面に少なくともPCP/MOFを担持させ、本発明造粒物を得る工程(造粒物調製工程)。
【0074】
工程1(造粒物調製工程)では、粒子状ないしビーズ状の非水系接着剤を用いる。当該非水系接着剤は、適宜の方法により粒子状ないしビーズ状に造粒されたものを用いればよい。当該造粒法としては、例えば、圧縮造粒法(ローラーコンパクター法)、ブリケット造粒法(圧縮造粒)などの乾式造粒法や、押出造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法などの造粒法を挙げることができる。
【0075】
本工程にて用い得る非水系接着剤粒子のサイズ(寸法)に特に制限はないが、平均粒子径として、100μm以下程度であることが適当である。中でも、25μm~75μmの範囲内であることが好ましく、30μm~50μmの範囲内であることがより好ましい。
【0076】
本工程にて得られる本発明造粒物のサイズ(寸法)は、非水系接着剤の粒子径や被覆するPCP/MOFの量などによって異なるが、平均粒子径として、400μm以下程度であることが適当である。中でも、50μm~100μmの範囲内であることが好ましく、50μm~90μmの範囲内であることがより好ましい。
【0077】
上記非水系接着剤に特に制限はないが、融点が70℃~110℃の範囲内であるものが好ましい。そのような非水系接着剤として、例えば、ポリウレタン樹脂系接着剤、ポリアミド系樹脂接着剤、ポリエステル系樹脂接着剤などを挙げることができる。中でも、ポリウレタン樹脂系接着剤が好ましい。例えば、ポリウレタン樹脂を融点程度まで加熱してポリウレタン樹脂表面を溶融させ、当該溶融状態を利用してPCP/MOFをポリウレタン樹脂表面に担持させることにより、PCP/MOFが均一に被覆された本発明造粒物を造粒することができる。工程1(造粒物調製工程)において、ポリウレタン樹脂表面には、さらに希釈剤等の他の成分を担持させてもよい。かかる具体的な造粒方法ないし被覆方法としては、例えば、圧縮造粒法(ローラーコンパクター法)、ブリケット造粒法(圧縮造粒)や、押出造粒法、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法などの造粒法を挙げることができる。
【0078】
本発明造粒物は、本発明成形品の原料として用いることができる。即ち、上記錠剤成形品の製造方法または押出成形品の製造方法における工程1(混合工程)において、原料混合物として本発明造粒物またはそれを含有する混合物とすることができる。中でも、錠剤成形品の製造方法において本発明造粒物を原料として用いることが好ましい。本発明成形品の原料として本発明造粒物を用いることにより、本発明成形品の連続生産性を向上させることができる。
【0079】
非水系接着剤としてポリウレタン樹脂を用いる場合、本発明造粒物におけるウレタン成分の含有量は、20重量%~70重量%の範囲内であることが好ましい。含有量を当該範囲内とすることにより、本発明成形品の連続生産性をより向上させることができる。
【0080】
3 本発明成形品および本発明造粒物の用途
本発明成形品および本発明造粒物は、例えば、次のような生活臭の消臭性に優れる。
(1)介護・看護臭、病院臭:尿臭、排泄臭
(2)一般生活臭-1:生ごみ臭、更衣室臭・ロッカー臭、フィッティングルーム臭、混雑臭(満員電車内臭)、エアコン臭、畳臭、床臭、台所臭、トイレ臭、風呂場臭、下駄箱臭、排水口臭
(3)一般生活臭-2:体臭、汗臭
(4)一般生活臭-3:タバコ臭、焼肉臭
(5)その他の生活臭:堆肥臭、動物臭、ペットの糞尿臭、自動車内部の臭い
【0081】
また、本発明成形品および本発明造粒物は、例えば、次のような菌(真菌も含まれる。)やウイルスに対する抗菌性ないし抗ウイルス性に優れる。
【0082】
<菌>
(1)グラム陰性通性嫌気性桿菌
大腸菌(Escherichia coli)、シゲラ属(Shigella)、サルモネラ属(Salmonella)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、エルシニア属(Yersinia)、コレラ菌(V.cholerae)、腸炎ビブリオ(Vparahaemolyticus)、ヘモフィルス属(Haemophilus)
(2)グラム陰性好気性桿菌
シュードモナス属(Pseudomonas)、レジオネラ属(Legionella)、ボルデテラ属(Bordetella)、ブルセラ属(Brucella)、野兎病菌(Francisella tularensis)
(3)グラム陰性嫌気性桿菌
バクテロイデス属(Bacteroides)
(4)グラム陰性球菌
ナイセリア属(Neisseria)
(5)グラム陽性球菌
ブドウ球菌属(Staphylococcus)、レンサ球菌属(Streptococcus)、腸球菌属(Enterococcus)
(6)グラム陽性有芽胞桿菌
バシラス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)
(7)放線菌と関連微生物群
コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)
(8)マイコプラズマ
マイコプラズマ(Mycoplasma)
(9)スピロヘータとらせん菌
回帰熱ボレリア(Borrelia recurrentis)、ライム病ボレリア(B.burgdoferi)、 梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、カンピロバクター属(Campylobacter)、ヘリコバクター属(Helicobacter)
(10)リケッチア
リケッチア(Rickettsia)
(11)クラミジア
クラミジア(Chlamydia)
【0083】
(12)真菌
クリプトコッカス属(Cryptococcus)、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、ニューモシスチス(Pneumocystis)、白癬菌(Trichophyton)、癜風菌(Malassezia furfur)
【0084】
<ウイルス>
伝染性軟属腫ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、ロタウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、風疹ウイルス、麻疹(はしか)ウイルス、インフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、RSウイルス、肝炎ウイルス、HIV
【0085】
4 加工品等
本発明成形品または本発明造粒物は、例えば、樹脂成形品やフィルターなどの成形品に加工することができる。本発明成形品から製造される成形品も本発明に含めることができる。
上記樹脂成形品とは、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、アミノプラスト樹脂、グリオキザール樹脂、エチレン尿素樹脂およびこれらのブレンド樹脂;天然ゴム、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴムなどからなる、板状物、柱状物、押出成形品などの成形品のことをいう。具体的な樹脂成形品としては、これら樹脂のフィルム、シート、容器を挙げることができる。
フィルム、シート、容器等への成形は、各種のインフレーション装置、プレス、カレンダー、押出成形機、紡糸機、ブロー成形機、射出成形機、真空成形機などにより行うことができる。
【0086】
上記フィルターとしては、例えば、空気清浄機などに用いられる脱臭フィルター、抗菌フィルターを挙げることができる。本発明によればPCP/MOFを高濃度に含有する製剤が製造可能であり、その機能を長持ちさせることができるため、本発明成形品は、空気清浄機用ハニカムフィルターに充填する形で特に好適に使用することができる。
【0087】
本発明成形品または本発明造粒物から製造される成形品は、所望の成形品に応じて、本発明成形品または本発明造粒物を常法に従って加工することにより製造することができる。
【実施例
【0088】
以下に実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0089】
実施例に使用する原料は下記の通りである。
・PCP/MOF
AP002:Cu2+ 1,3,5-Benzenetricarboxykic acid、Atomis社製
AP004:Fe3+ 1,3,5-Benzenetricarboxykic acid、 Atomis社製
AP007:Zn2+ 1,3,5-tris(4-carboxyphenyl)benzene)、 Atomis社製
・接着剤
プラスサイズL-514:溶剤系(エタノール)アクリル樹脂、固形分30%、互応化学工業社製
パールセンU-102A:ポリウレタン樹脂、平均粒子径40μm、東ソー社製
PR F-920P:ポリアミド樹脂、平均粒子径40μm、東京インキ社製
PR G-190P:ポリエステル樹脂、平均粒子径40μm、東京インキ社製
・希釈剤(活性炭)
CW8200B:破砕炭、粒子径75~180μm(8メッシュ-200メッシュ)、フタムラ化学社製
・結合剤(合成マイカ)
ソマシフMEE:片倉コープアグリ社製
・滑沢剤
ステアリン酸マグネシウム:ナカライテスク社製
【0090】
[1 押出成形品の製造]
表1に記載の配合割合において、3Lステンレスビーカーにて、プロペラ攪拌器を用い、PCP/MOFおよび接着剤以外の原料を均一になるまで攪拌した後、PCP/MOFを投入して更に均一になるまで攪拌した。その後、接着剤を投入し均一になるまで攪拌を行った。
得られた原料混合物について、有効厚9mmのディスクダイを装着したディスクペレッター(ダルトン社製、F-5S)用いて押出成形を行い、直径3mm×長さ5mmの成形物を得た。熱風炉乾燥器にて100℃で60分間加熱乾燥処理を行うことにより、押出成形品を得た(実施例1~6、本発明成形物)。
【0091】
ただし、加圧成形圧力0.2MPaの場合には、原料が押し出される際に、圧力が不足し十分に押し固められず、成形されなかったため、押出成形品を得ることができなかった(比較例1および2)。
【0092】
【表1】
【0093】
各サンプルについて、以下の各試験を行った。各試験の結果を表1に示す。
【0094】
<試験例1>アンモニア消臭効果試験
以下の工程を含む検知管法に準じて、本発明成形品による、アンモニアの消臭量を測定し、本発明成形品の消臭効果を検証した。消臭量1000ppm以上を合格とした。
(1)500mL共栓付三角フラスコに本発明成形品等の試料サンプルを入れ、同時に対象ガス(アンモニア)の水溶液を、初期濃度2500ppm(アンモニア)になるように入れ密栓した。
(2)上記試料サンプル等が封入された三角フラスコを、恒温槽(60℃)に15分静置し、対象ガスの水溶液を気化させた。
(3)恒温槽(60℃)から取り出し、三角フラスコを左右に振り、中の空気を撹拌した後、1時間静置した。
(4)測定前にフラスコを左右に振り、中の空気を撹拌した後、検知管にて測定し、下式により対象ガスの消臭率を算出した。
【0095】
アンモニア消臭量(ppm)=初発濃度-検知管測定濃度
【0096】
本発明成形品は、アンモニア消臭量が、1000ppm以上の消臭性能を有し、優れていた。
【0097】
<試験例2>タバコ循環試験
タバコを密閉容器内で燃焼させ、攪拌ファンを用いて容器内の気体を循環させた状態で、本発明成形品の消臭効果を検証した。タバコ循環試験については、初期濃度をそれぞれ35ppm(ピリジン)、100ppm(アミン類)とし、30分後に検知管にて測定を行った以外は上記と同様に測定し、下式により対象ガスの消臭率を算出し、ピリジンが80%以上、アミン類が70%以上を合格値とした。
【0098】
対象ガス消臭率(%)=(初発濃度-検知管測定濃度)/初発濃度×100
【0099】
本発明成形品は、ピリジン、アミン類のいずれに対しても、優れた消臭性を有していた
【0100】
<試験例3>硬度測定方法
硬度計(ポータブルチェッカーPC-30、岡田精工社製)を用いて硬度測定を行った。
【0101】
<試験例4>嵩密度測定方法
以下の手順に従い、嵩密度を測定した。
(1)サンプル2gを50mlのメスシリンダーに入れる。
(2)軽くメスシリンダーをタップして、体積を読み取り、下記計算式にて嵩密度を算出し0.3以上を合格とした。
嵩密度(g/cm)=試料(2g)/読み取った体積(cm
【0102】
<試験例5>安息角測定方法(落下堆積法)
以下の手順に従い、安息角を測定した。
(1)ガラスロート管の先がシャーレの底面から30mm離れた位置にガラスロートを設置する。
(2)試料(20g)をガラスロートに匙でふるいながら投入し、シャーレに堆積させる。
(3)堆積した円錐の母線あるいは斜面が水平面となす角度を分度器にて測定し、その角度が60度以下の場合を合格とした。
【0103】
<試験例6>抗菌性試験
本発明成形品等について、日本産業規格JIS L1902に準拠して抗菌性試験を行った。具体的には、下記方法にて行った。抗菌活性値2.2以上を合格とした。
【0104】
(1)試験素材作成方法
本発明成形品等の試料サンプル1gを寒天2.5gと混合し、生地(綿ニット)に塗付けたものを試験素材とした。寒天としては、蒸留水1L当たり、肉エキス3g、ペプトン5g、粉寒天15gに調整したものを使用した。試験菌としては、黄色ブドウ球菌を用いた。
【0105】
(2)試験方法
滅菌した試験素材に試験菌のブイヨン懸濁液を注入し、密閉容器中にて、37℃×18時間培養し、培養後の生菌数を測定した。植菌後、無加工布菌数に対する抗菌活性値により、菌に対する効果を評価した。
【0106】
抗菌活性値 = (Mb-Ma)-(Mc-Mo) (抗菌活性値 ≧ 2.2、合格)
Ma:標準布の試験菌液接触直後の生菌数
Mb:標準布の18時間培養後の生菌数
Mo:抗菌防臭加工布の試験菌液接種直後の生菌数
Mc:抗菌防臭加工布の18時間培養後の生菌数
(3)試験有効性: Mb - Mo > 1.0
【0107】
表1に示す通り、本発明成形品は、抗菌活性値が2.2以上であり、本発明成形品は抗菌性を有していることが明らかである。
【0108】
<試験例7>抗ウイルス試験方法
下記試験方法にて測定を行い、抗ウイルス活性値が2.0以上を合格とした
JIS L 1922「繊維製品の抗ウイルス性試験方法」を準用
試験ウイルス:A型インフルエンザウイルス
試験サンプル:0.4g
放置条件:25℃、30分
感染価測定法:プラーク測定法
抗ウイルス活性値=(接種直後のウイルス感染価)-(30分後のウイルス感染価)
【0109】
[2 錠剤成形品の製造]
(1)PCP/MOF造粒物の製造(中間体)
表2および3に記載の配合割合において、Cu-PCP/MOFとポリウレタン樹脂を、撹拌羽を設置したビーカーに入れ、均一に撹拌した。更にオイルバスに中にて、90℃まで温度を上げて、90℃にて5時間処理して、ポリウレタン樹脂表面にCu-PCP/MOFを担持させて70~100μmの均一な造粒物(本発明造粒物)を得た。
同様の方法で、ポリウレタン樹脂の代わりにポリアミド樹脂及びポリエステル樹脂でも造粒を行った。
【0110】
(2)錠剤成形品の製造
上記得られた本発明造粒物を冷却後、290gの原料混合物を得た。得られた原料混合物について、打錠機(市橋精機社製、AUTOTAB-500)を用いて打錠成形を行い、錠剤成形品を得た(実施例7~15、本発明成形物)。
【0111】
ただし、PCP/MOFを全く含まない場合、ならびに加圧成形圧力が0.2MPaおよび510MPaの場合には、成形性が不十分であり、錠剤成形品を得ることができなかった(比較例3~5)。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
得られた錠剤成形品に対し、実施例1~6と同様にして消臭効果試験、抗菌性試験、および抗ウイルス性試験を行った結果を、表2および3に示す。本発明成形品は、アンモニア消臭量が1000ppm以上有し、優れていた。また、本発明成形品はいずれも抗菌性が優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明成形品はPCP/MOFを高濃度に含有し、生活臭に対する消臭性に優れ、また細菌やウイルスの増殖を抑える効果を有する。また、当該効果を長持ちさせることができるため、空気清浄機用ハニカムフィルター等の用途として好適に使用でき、衛生技術に関する産業分野等において有用である。
【要約】
【課題】
本発明は、PCP/MOFを高密度に含有しながらも、有害物質や生活臭成分等の吸着・除去効果をはじめとするPCP/MOFの上記特徴を良好に維持する新規な成形品を提供することを主な課題とする。
【解決手段】 本発明として、例えば、多孔性金属錯体と接着剤とを含む成形品であって、0.3MPa~500MPaの範囲内の圧力で加圧成形(例えば、錠剤成形、押出成形。)されてなることを特徴とする成形品や、さらに希釈剤を含む成形品を挙げることができる。
【選択図】なし