(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】部屋構造および施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/92 20060101AFI20230221BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
E04B1/92
E04H1/02
(21)【出願番号】P 2022140424
(22)【出願日】2022-09-04
【審査請求日】2022-09-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507414465
【氏名又は名称】中川 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100129001
【氏名又は名称】林 崇朗
(72)【発明者】
【氏名】中川 信男
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-292525(JP,A)
【文献】特開2005-016129(JP,A)
【文献】特開2001-060789(JP,A)
【文献】特開2003-110280(JP,A)
【文献】特開2010-040640(JP,A)
【文献】特開2002-180636(JP,A)
【文献】特開2004-104067(JP,A)
【文献】特開2001-280032(JP,A)
【文献】特開2001-298296(JP,A)
【文献】特開平06-021682(JP,A)
【文献】特開平07-259291(JP,A)
【文献】特開2002-076687(JP,A)
【文献】特開2012-164773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/92
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の生活空間を区画する部屋を形成する部屋構造であって、
前記部屋の下方を区画する床、または、前記部屋の上方を区画する天井を構成し、前記部屋の内外を区画する第1の境界構造と、
前記部屋の側方を区画する壁を構成し、前記第1の境界構造に
直交して隣接し、前記部屋の内外を区画する第2の境界構造と
を備え、
前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、
平面的に広がる基層と、
前記基層の上に設けられ、炭素繊維を含有する炭素繊維シートと、
前記炭素繊維シートの上に設けられ、前記部屋内に露出する仕上層と
を有し、
前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートは、該一方の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から
他方の境界構造の前記基層と前記仕上層との間へと折れ曲がって拡張することによって、
前記他方の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合
い、
前記炭素繊維シートは、厚さ0.4mm~0.7mm、かつ、炭素繊維の含有量75~95質量%の炭素繊維強化熱可塑性樹脂シートである、部屋構造。
【請求項2】
請求項1に記載の部屋構造であって、
前記第1の境界構造における前記炭素繊維シートは、該第1の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から前記第2の境界構造の前記基層と前記仕上層との間へと折れ曲がって拡張することによって、前記第2の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合うとともに、
前記第2の境界構造における前記炭素繊維シートは、該第2の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から前記第1の境界構造の前記基層と前記仕上層との間へと折れ曲がって拡張することによって、前記第1の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合う、部屋構造。
【請求項3】
請求項1に記載の部屋構造であって、
前記第1の境界構造は、前記床を構成し、
前記壁を構成する前記第2の境界構造における前記炭素繊維シートは、
前記床を構成する前記第1の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合うとともに、前記壁の高さ方向に繋ぎ合わされることなく、前記壁の高さ方向の中央より下方に設けられている、部屋構造。
【請求項4】
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の部屋構造であって、
前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、更に、
前記基層と前記炭素繊維シートとの間に設けられ、磁性材料を含有する防磁層、
を有する、部屋構造。
【請求項5】
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の部屋構造であって、
前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、更に、
前記炭素繊維シートと前記仕上層との間に設けられ、磁性材料を含有する防磁層、
を有する、部屋構造。
【請求項6】
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の部屋構造であって、更に、
前記第1の境界構造および前記第2の境界構造における各々の前記炭素繊維シートの少なくとも1箇所に取り付けられ、大地に対して電気的に接続された接地線を、
備える部屋構造。
【請求項7】
請求項6に記載の部屋構造であって、
前記接地線は、他の電化製品から電気的に切り離されている、部屋構造。
【請求項8】
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の部屋構造であって、更に、
前記部屋の外部へ通じる開口部を開閉可能に構成された建具本体と、
前記開口部に嵌め込まれ、前記建具本体を支持する建具枠と
を備え、
前記建具本体の表面には第1の導電性塗膜が形成され、
前記建具枠の表面には第2の導電性塗膜が形成され、
前記第2の導電性塗膜は、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートに接触し、
前記建具本体が閉じた状態において、前記第1の導電性塗膜は前記第2の導電性塗膜に接触する、部屋構造。
【請求項9】
請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の部屋構造であって、更に、
前記部屋の外部へ通じる開口部を覆う導電性織物を、
備え、
前記導電性織物は、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートへと導通可能に構成されている、部屋構造。
【請求項10】
人間の生活空間を区画する部屋を施工する施工方法であって、
前記部屋の下方を区画する床、または、前記部屋の上方を区画する天井を構成し、前記部屋の内外を区画する第1の境界構造を
、製作する工程と、
前記部屋の側方を区画する壁を構成し、前記第1の境界構造に
直交して隣接し、前記部屋の内外を区画する第2の境界構造を、製作する工程と
を備え、
前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、
平面的に広がる基層と、
前記基層の上に設けられ、炭素繊維を含有する炭素繊維シートと、
前記炭素繊維シートの上に設けられ、前記部屋内に露出する仕上層と
を有する構造であり、
前記第1の境界構造および前記第2の境界構造を製作する工程において、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートを、該一方の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から拡張して
他方の境界構造の前記基層と前記仕上層との間へと折り曲げて設けることによって、該一方の境界構造における前記炭素繊維シートを
前記他方の境界構造における前記炭素繊維シートと重ね合わせ
、
前記炭素繊維シートは、厚さ0.4mm~0.7mm、かつ、炭素繊維の含有量75~95質量%の炭素繊維強化熱可塑性樹脂シートである、施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、部屋構造および施工方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
近年、電化製品、送電線、屋内配線、携帯電話、無線LANなどの電磁波が人体に悪影響を及ぼす可能性について指摘されている。特許文献1には、屋内配線からの電磁波伝搬を抑制する屋内塗料材を屋内壁面に塗装することについて開示されている。特許文献2には、屋内配線からの電磁波伝搬を抑制する導電性スパンボンド不織布を壁および床に設けることについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6121603号公報
【文献】特許第5252605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人間が生活する生活空間として、屋内配線だけではなく部屋の外部から伝搬する各種の電磁波を抑制した環境が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する技術は、以下の形態として実現できる。
本明細書に開示する一形態は、人間の生活空間を区画する部屋を形成する部屋構造である。この形態の部屋構造は、 前記部屋の下方を区画する床、または、前記部屋の上方を区画する天井を構成し、前記部屋の内外を区画する第1の境界構造と;前記部屋の側方を区画する壁を構成し、前記第1の境界構造に直交して隣接し、前記部屋の内外を区画する第2の境界構造とを備える。前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、平面的に広がる基層と;前記基層の上に設けられ、炭素繊維を含有する炭素繊維シートと;前記炭素繊維シートの上に設けられ、前記部屋内に露出する仕上層とを有する。前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートは、該一方の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から他方の境界構造の前記基層と前記仕上層との間へと折れ曲がって拡張することによって、前記他方の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合い、前記炭素繊維シートは、厚さ0.4mm~0.7mm、かつ、炭素繊維の含有量75~95質量%の炭素繊維強化熱可塑性樹脂シートである。
【0006】
(1)本明細書に開示する一形態は、人間の生活空間を区画する部屋を形成する部屋構造である。この形態の部屋構造は、前記部屋の内外を区画する第1の境界構造と;前記第1の境界構造に隣接し、前記部屋の内外を区画する第2の境界構造とを備える。前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、平面的に広がる基層と;前記基層の上に設けられ、炭素繊維を含有する炭素繊維シートと;前記炭素繊維シートの上に設けられ、前記部屋内に露出する仕上層とを有する。前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートは、該一方の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から拡張することによって、他方の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合う。
この形態の部屋構造によれば、部屋の外部から第1の境界構造の炭素繊維シートと第2の境界構造の炭素繊維シートとの隙間を通じた電磁波の進入を第1の境界構造および第2の境界構造における各々の炭素繊維シートが重なり合うことによって防止しながら、第1の境界構造および第2の境界構造において部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波(特に、周波数3MHz以上の高周波電磁波)を炭素繊維シートによって遮蔽できる。また、第1の境界構造および第2の境界構造における各々の炭素繊維シートの間を等電位化できるため、第1の境界構造および第2の境界構造において部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波(特に、周波数3MHzより低い低周波電磁波)の抑制効果を向上させることができる。これらの結果、部屋の外部から内部へと進入する電磁波を炭素繊維シートによって効果的に抑制できる。
【0007】
(2)上述した部屋構造において、前記一方の境界構造における前記炭素繊維シートは、該一方の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から前記他方の境界構造へと拡張することによって、前記他方の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合ってもよい。この形態の部屋構造によれば、他方の境界構造へと拡張した一方側の炭素繊維シートを他方側の炭素繊維シートと共に他方側の基層と仕上層との間に挟み込むことができるため、一方側の炭素繊維シートと他方側の炭素繊維シートとが分離することを防止できる。
【0008】
(3)上述した部屋構造において、前記第1の境界構造は、前記部屋の下方を区画する床を構成し、前記第2の境界構造は、前記部屋の側方を区画する壁を構成してもよい。この形態の部屋構造によれば、床および壁を通じて部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波を炭素繊維シートによって抑制できる。
【0009】
(4)上述した部屋構造において、前記第1の境界構造における前記炭素繊維シートは、前記壁の高さ方向に繋ぎ合わされることなく、前記壁の高さ方向の中央より下方に設けられていてもよい。この形態の部屋構造によれば、壁の上下全域に炭素繊維シートを設けた場合と比較してコストを抑制しながら、就寝時に身体を横たえる床付近の空間に伝搬する電磁波を炭素繊維シートによって抑制できる。
【0010】
(5)上述した部屋構造において、前記第1の境界構造は、前記部屋の上方を区画する天井を構成し、前記第2の境界構造は、前記部屋の側方を区画する壁を構成してもよい。この形態の部屋構造によれば、天井および壁を通じて部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波を炭素繊維シートによって抑制できる。
【0011】
(6)上述した部屋構造において、更に、少なくとも表面に導電性を有し、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造を支持するフレームを備えてもよい。前記第1の境界構造および前記第2の境界構造における各々の前記炭素繊維シートは、該各々の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から前記基層または前記仕上層の表面に沿って拡張することによって、前記他方の境界構造における前記炭素繊維シートと重なり合ってもよい。前記フレームは、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造における各々の前記炭素繊維シートが重なり合う部位を覆いながら各々の前記炭素繊維シートに接触する。この形態の部屋構造によれば、第1の境界構造および第2の境界構造における各々の炭素繊維シートが重なり合う部位が分離したとしても、部屋の外部から第1の境界構造の炭素繊維シートと第2の境界構造の炭素繊維シートとの隙間を通じた電磁波の進入をフレームによって防止できる。
【0012】
(7)上述した(6)の部屋構造において、前記第1の境界構造は、前記部屋の下方を区画する床を構成し、前記第2の境界構造は、前記部屋の側方を区画する壁を構成してもよい。この形態の部屋構造によれば、床および壁を通じて部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波を炭素繊維シートおよびフレームによって抑制できる。
【0013】
(8)上述した(6)の部屋構造において、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造は、前記部屋の下方を区画する床を構成してもよい。この形態の部屋構造によれば、床を通じて部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波を炭素繊維シートおよびフレームによって抑制できる。
【0014】
(9)上述した(6)の部屋構造において、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造は、前記部屋の側方を区画する壁を構成してもよい。この形態の部屋構造によれば、壁を通じて部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波を炭素繊維シートおよびフレームによって抑制できる。
【0015】
(10)上述した部屋構造において、前記炭素繊維シートは、厚さ0.4mm~0.7mm、かつ、炭素繊維の含有量75~95質量%の炭素繊維強化熱可塑性樹脂シートであってもよい。この形態の部屋構造によれば、炭素繊維シートの電磁波遮蔽性と施工性との両立を図ることができる。
【0016】
(11)上述した部屋構造において、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、更に、前記基層と前記炭素繊維シートとの間に設けられ、磁性材料を含有する防磁層、を有してもよい。この形態の部屋構造によれば、部屋の外部から内部へと伝搬する低周波電磁波を防磁層によって防止できる。また、電磁波が炭素繊維シートを通過する過程で電磁誘導による渦電流で発生するジール熱に起因する赤外線を、防磁層で遮ることなく部屋の内部に放出できるため、その赤外線の輻射により室内の人間や動物の血行を促進させることができる。
【0017】
(12)上述した部屋構造において、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、更に、前記炭素繊維シートと前記仕上層との間に設けられ、磁性材料を含有する防磁層、を有してもよい。この形態の部屋構造によれば、部屋の外部から内部へと伝搬する低周波電磁波を防磁層によって防止できる。また、電磁波が炭素繊維シートを通過する過程で電磁誘導による渦電流で発生するジール熱に起因する赤外線を、防磁層で遮ることができため、その赤外線の輻射による部屋内部の温度上昇を防止できる。
【0018】
(13)上述した部屋構造において、更に、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造における各々の前記炭素繊維シートの少なくとも1箇所に取り付けられ、大地に対して電気的に接続された接地線を、備えてもよい。この形態の部屋構造によれば、炭素繊維シートによる電磁波(特に、周波数3MHzより低い低周波電磁波)の抑制効果を向上させることができる。
【0019】
(14)上述した部屋構造において、前記接地線は、他の電化製品から電気的に切り離されていてもよい。この形態の部屋構造によれば、他の電化製品から発生した電磁ノイズが接地線を介して部屋の内部に伝搬することを防止できる。
【0020】
(15)上述した部屋構造において、更に、前記部屋の外部へ通じる開口部を開閉可能に構成された建具本体と;前記開口部に嵌め込まれ、前記建具本体を支持する建具枠とを備えてもよい。前記建具本体の表面には第1の導電性塗膜が形成され、前記建具枠の表面には第2の導電性塗膜が形成されている。前記第2の導電性塗膜は、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートに接触する。前記建具本体が閉じた状態において、前記第1の導電性塗膜は前記第2の導電性塗膜に接触する。この形態の部屋構造によれば、開口部を通じて部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波を、第1および第2の導電性塗膜によって抑制できる。
【0021】
(16)上述した部屋構造において、更に、前記部屋の外部へ通じる開口部を覆う導電性織物を、備えてもよい。前記導電性織物は、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートへと導通可能に構成されている。この形態の部屋構造によれば、開口部を通じて部屋の外部から内部へと伝搬する電磁波を、導電性織物によって抑制できる。
【0022】
(17)本明細書に開示する一形態は、人間の生活空間を区画する部屋を施工する施工方法である。この施工方法は、前記部屋の内外を区画する第1の境界構造を製作する工程と;前記第1の境界構造に隣接し、前記部屋の内外を区画する第2の境界構造を、製作する工程とを備える。前記第1の境界構造および前記第2の境界構造の各々は、平面的に広がる基層と;前記基層の上に設けられ、炭素繊維を含有する炭素繊維シートと;前記炭素繊維シートの上に設けられ、前記部屋内に露出する仕上層とを有する構造である。前記第1の境界構造および前記第2の境界構造を製作する工程において、前記第1の境界構造および前記第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における前記炭素繊維シートを、該一方の境界構造における前記基層と前記仕上層との間から拡張して設けることによって、該一方の境界構造における前記炭素繊維シートを他方の境界構造における前記炭素繊維シートと重ね合わせる。この形態の施工方法によれば、部屋の外部から内部へと進入する電磁波を炭素繊維シートによって効果的に抑制できる。
【0023】
本明細書に開示する技術は、部屋構造およびその施工方法とは異なる種々の形態で実現できる。本明細書に開示する技術は、例えば、建築材料およびその製造方法などの形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態における部屋の構造を示す説明図である。
【
図3】他の実施形態における床および壁の詳細構造を示す説明図である。
【
図4】壁および天井の詳細構造を示す説明図である。
【
図5】他の実施形態における壁の詳細構造を示す説明図である。
【
図7】窓およびカーテンの詳細構造を示す説明図である。
【
図8】第2実施形態における部屋の構造を示す説明図である。
【
図9】第3実施形態における部屋の構造を示す説明図である。
【
図10】
図9の反対側から見た部屋の構造を示す説明図である。
【
図11】天井カバーおよびカーテンを外した状態にある部屋の構造を示す説明図である。
【
図12】床パネルと壁パネルとの隣接部の詳細構造を示す説明図である。
【
図13】床パネルと床パネルとの隣接部の詳細構造を示す説明図である。
【
図14】壁パネルと壁パネルとの隣接部、および、壁パネルと壁パネルとの隣接部の詳細構造を示す説明図である。
【
図15】天井カバーおよびカーテンの詳細構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
A.第1実施形態
図1は、第1実施形態における部屋100の構造を示す説明図である。部屋100は、人間の生活空間を区画する建築物の一部である。部屋100は、一般住宅の部屋であってもよいし、オフィスビルの部屋であってもよい。部屋100は、室外から室内へ伝搬する電磁波を抑制可能に構成されている。部屋100は、室外から室内へ伝搬する電磁波を抑制する部屋構造として、床110と、壁120と、天井130と、ドア150と、窓160と、カーテン170とを備える。
図1の例では、紙面手前側の壁120が省略されており、部屋100は、4つの壁120を備える。
【0026】
床110は、部屋100の下方を区画する境界構造である。床110は、4つの壁120に隣接する。
【0027】
壁120は、部屋100の側方を区画する境界構造である。4つの壁120は、床110および天井130に隣接する。1つの壁120は、他の2つの壁120に隣接する。
図1の例では、4つの壁120のうち1つの壁120にはドア150が設けられ、他の1つの壁120には窓160が設けられている。窓160を覆う位置には、カーテン170が設置されている。
【0028】
天井130は、部屋の上方を区画する境界構造である。天井130は、4つの壁120に隣接する。
【0029】
ドア150は、4つの壁120の1つに設けられ、人間が部屋100に出入り可能に構成されている。窓160は、4つの壁120の1つに設けられ、採光および通風可能に構成されている。カーテン170は、部屋100の内側から窓160を覆うことが可能に構成されている。
【0030】
図2は、床110および壁120の詳細構造を示す説明図である。
図2には、鉛直方向に切断した床110および壁120の部分断面が図示されている。床110は、床基層112と、床側炭素繊維シート114と、床仕上層116とを備える。壁120は、壁基層122と、壁側炭素繊維シート124と、壁仕上層126とを備える。
【0031】
床110の床基層112は、水平方向へ平面的に広がる基層である。床基層112は、一般的な部屋の床に用いられる建築材料(例えば、木材、コンクリート、金属、合成樹脂など)で製作可能である。既存の部屋を改修する場合には、床基層112を新たに製作するのではなく、既存の床を床基層112として利用してもよい。
【0032】
床側炭素繊維シート114は、床基層112の上に設けられた炭素繊維シートである。床側炭素繊維シート114は、炭素繊維を含有する。床側炭素繊維シート114は、含有する炭素繊維に起因して電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有する。床側炭素繊維シート114は、アドバンテスト法で周波数1GHzの電磁波を40dB以上遮蔽可能な電磁波遮蔽性を有することが好ましい。
【0033】
床110の床側炭素繊維シート114は、電磁波を遮蔽する観点から、床基層112における部屋100の内側を向いた表面の全面を隙間なく覆うことが好ましい。複数の床側炭素繊維シート114を用いて床基層112を覆う場合には、隣り合う床側炭素繊維シート114同士の隣接部分(例えば、シート縁部から2~3cmの部分)を重ね合わせることが好ましい。床基層112に対する床側炭素繊維シート114の張り付けには、針(ステープル)、接着剤、両面テープなどを利用可能である。
【0034】
本実施形態では、床側炭素繊維シート114は、接着剤(バインダ)に熱可塑性樹脂を用いて炭素繊維を薄板状に成形した炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)シートである。床側炭素繊維シート114に用いられるCFRPシートは、建築材料としての難燃性を確保する観点から、炭素繊維の接着剤に難燃材料(例えば、ポリビニルアルコール)を使用することが好ましい。床側炭素繊維シート114に含まれる炭素繊維の長さは、電磁波遮蔽性の観点から1mm以上であることが好ましい。床側炭素繊維シート114に含まれる炭素繊維は、その繊維方向を二次元方向に向けて配置されている。
【0035】
床側炭素繊維シート114に用いられるCFRPシートは、電磁波遮蔽性と施工性との両立を図る観点から、厚さ0.4mm~0.7mm、かつ、炭素繊維の含有量75~95質量%であることが好ましい。CFRPシートの厚さが0.4mm未満である場合、電磁波遮蔽性を十分に確保できなくなる。CFRPシートの厚さが0.7mmを超える場合、柔軟性不足によって折損しやすいため施工性を十分に確保できなくなる。CFRPシートの炭素繊維含有量が75質量%未満である場合、電磁波遮蔽性を十分に確保できなくなる。CFRPシートの炭素繊維含有量が95質量%を超える場合、炭素繊維同士の接着不足によってシートとしての強度を十分に保持できなくなる。
【0036】
床110の床仕上層116は、床側炭素繊維シート114の上に設けられた仕上層である。床仕上層116は、部屋100の内部に露出している。床仕上層116と床側炭素繊維シート114との間には、隙間が有ってもよいし無くてもよい。床仕上層116は、一般的な部屋の床に用いられる建築材料(例えば、木材、カーペット、タイルなど)で製作可能である。
【0037】
壁120の壁基層122は、鉛直方向へ平面的に広がる基層である。壁基層122は、一般的な部屋の壁に用いられる建築材料(例えば、木材、石膏ボード、コンクリート、金属、合成樹脂など)で製作可能である。既存の部屋を改修する場合には、壁基層122を新たに製作するのではなく、既存の床を壁基層122として利用してもよい。
【0038】
壁120の壁側炭素繊維シート124は、壁基層122の上に設けられた炭素繊維シートである。壁側炭素繊維シート124は、炭素繊維を含有する。壁側炭素繊維シート124は、含有する炭素繊維に起因して電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有する。壁側炭素繊維シート124は、アドバンテスト法で周波数1GHzの電磁波を40dB以上遮蔽可能な電磁波遮蔽性を有することが好ましい。本実施形態では、壁側炭素繊維シート124は、床側炭素繊維シート114と同様のCFRPシートである。
【0039】
壁側炭素繊維シート124は、電磁波を遮蔽する観点から、壁基層122における部屋100の内側を向いた表面の全面を隙間なく覆うことが好ましい。複数の壁側炭素繊維シート124を用いて壁基層122を覆う場合には、隣り合う壁側炭素繊維シート124同士の隣接部分(例えば、シート縁部から2~3cmの部分)を重ね合わせることが好ましい。壁基層122に対する壁側炭素繊維シート124の張り付けには、針(ステープル)、接着剤、両面テープなどを利用可能である。
【0040】
壁120の壁仕上層126は、壁側炭素繊維シート124の上に設けられた仕上層である。壁仕上層126は、部屋100の内部に露出している。壁仕上層126と壁側炭素繊維シート124との間には、隙間が有ってもよいし無くてもよい。壁仕上層126は、一般的な部屋の壁に用いられる建築材料(例えば、木材、石膏ボード、壁紙、漆喰など)で製作可能である。
【0041】
図2に示すように、床側炭素繊維シート114および壁側炭素繊維シート124は、重なり合って相互に接触する接触部OL1を有する。床側炭素繊維シート114および壁側炭素繊維シート124は、床基層112と壁基層122とが隣接する全域に亘って接触部OL1を有することが好ましい。
図2の例では、床側炭素繊維シート114が床基層112と床仕上層116との間から壁120へと拡張し、壁120へと拡張した床側炭素繊維シート114の上に壁側炭素繊維シート124が重なり合っている。これによって、部屋100の外部から床110の床側炭素繊維シート114と壁120の壁側炭素繊維シート124との隙間を通じた電磁波の進入を接触部OL1によって防止しつつ、床側炭素繊維シート114と壁側炭素繊維シート124との間を等電位化できる。また、壁120へと拡張した床側炭素繊維シート114を壁側炭素繊維シート124と共に壁基層122と壁仕上層126との間に挟み込むことができるため、床側炭素繊維シート114と壁側炭素繊維シート124とが分離することを防止できる。
【0042】
他の実施形態では、床側炭素繊維シート114が床基層112と床仕上層116との間から壁120へと拡張し、壁120へと拡張した床側炭素繊維シート114が壁側炭素繊維シート124の上に重なり合っていてもよい。また、壁側炭素繊維シート124が壁基層122と壁仕上層126との間から床110へと拡張し、床110へと拡張した壁側炭素繊維シート124の上または下に壁側炭素繊維シート124が重なり合っていてもよい。
【0043】
図3は、他の実施形態における床110および壁120の詳細構造を示す説明図である。
図3には、
図2と同様に、鉛直方向に切断した床110および壁120の部分断面が図示されている。
図3に示すように、床側炭素繊維シート114が床基層112と床仕上層116との間から壁120へと拡張するとともに、壁側炭素繊維シート124が壁基層122と壁仕上層126との間から床110へと拡張することによって、接触部OL1が床110から壁120に亘って形成されてもよい。
図3の例では、床側炭素繊維シート114の上に壁側炭素繊維シート124が重なり合っているが、壁側炭素繊維シート124の上に床側炭素繊維シート114が重なり合っていてもよい。
図3の実施形態によれば、床側炭素繊維シート114および壁側炭素繊維シート124の一方が折り曲げによって破断した場合であっても、他方の炭素繊維シートによって電磁波を遮蔽できる。
【0044】
また、床110と壁120との間における接触部OL1と同様に、相互に隣接する2つの壁120における各々の壁側炭素繊維シート124が相互に重なり合っていてもよい。これによって、相互に隣接する2つの壁120における各々の壁側炭素繊維シート124の隙間を通じた電磁波の進入を防止しつつ、相互に隣接する2つの壁120における壁側炭素繊維シート124の間を等電位化できる。
【0045】
図4は、壁120および天井130の詳細構造を示す説明図である。
図4には、鉛直方向に切断した壁120および天井130の部分断面が図示されている。天井130は、天井基層132と、天井側炭素繊維シート134と、天井仕上層136とを備える。本実施形態では、天井130は、水平方向に平行な面であるが、他の実施形態では、天井130の少なくとも一部は、水平方向に対して傾斜した面であってもよい。
【0046】
天井130の天井基層132は、水平方向へ平面的に広がる基層である。天井基層132は、一般的な部屋の天井に用いられる建築材料(例えば、木材、コンクリート、金属、合成樹脂など)で製作可能である。既存の部屋を改修する場合には、天井基層132を新たに製作するのではなく、既存の天井を天井基層132として利用してもよい。
【0047】
天井130の天井側炭素繊維シート134は、天井基層132の上に設けられた炭素繊維シートである。天井側炭素繊維シート134は、炭素繊維を含有する。天井側炭素繊維シート134は、含有する炭素繊維に起因して電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有する。天井側炭素繊維シート134は、アドバンテスト法で周波数1GHzの電磁波を40dB以上遮蔽可能な電磁波遮蔽性を有することが好ましい。本実施形態では、天井側炭素繊維シート134は、床側炭素繊維シート114および壁側炭素繊維シート124と同様のCFRPシートである。
【0048】
天井側炭素繊維シート134は、電磁波を遮蔽する観点から、天井基層132における部屋100の内側を向いた表面の全面を隙間なく覆うことが好ましい。複数の天井側炭素繊維シート134を用いて天井基層132を覆う場合には、隣り合う天井側炭素繊維シート134同士の隣接部分(例えば、シート縁部から2~3cmの部分)を重ね合わせることが好ましい。天井基層132に対する天井側炭素繊維シート134の張り付けには、針(ステープル)、接着剤、両面テープなどを利用可能である。
【0049】
天井130の天井仕上層136は、天井側炭素繊維シート134の上に設けられた仕上層である。天井仕上層136は、部屋100の内部に露出している。天井仕上層136と天井側炭素繊維シート134との間には、隙間が有ってもよいし無くてもよい。天井仕上層136は、一般的な部屋の壁に用いられる建築材料(例えば、木材、石膏ボード、壁紙など)で製作可能である。
【0050】
図4に示すように、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134は、重なり合って相互に接触する接触部OL2を有する。壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134は、壁基層122と天井基層132とが隣接する全域に亘って接触部OL2を有することが好ましい。
図4の例では、天井側炭素繊維シート134が天井基層132と天井仕上層136との間から壁120へと拡張し、壁120へと拡張した天井側炭素繊維シート134が壁側炭素繊維シート124の上に重なり合っている。これによって、部屋100の外部から壁120の壁側炭素繊維シート124と天井130の天井側炭素繊維シート134の隙間を通じた電磁波の進入を接触部OL2によって防止しつつ、壁側炭素繊維シート124と天井側炭素繊維シート134の間を等電位化できる。
【0051】
他の実施形態では、天井側炭素繊維シート134が天井基層132と天井仕上層136との間から壁120へと拡張し、壁120へと拡張した天井側炭素繊維シート134の上に壁側炭素繊維シート124が重なり合っていてもよい。また、壁側炭素繊維シート124が壁基層122と壁仕上層126との間から天井130へと拡張し、天井130へと拡張した壁側炭素繊維シート124の上または下に壁側炭素繊維シート124が重なり合っていてもよい。天井側炭素繊維シート134が天井基層132と天井仕上層136との間から壁120へと拡張するとともに、壁側炭素繊維シート124が壁基層122と壁仕上層126との間から天井130へと拡張することによって、接触部OL2が壁120から天井130に亘って形成されてもよい。
【0052】
図2および
図3の例では、壁側炭素繊維シート124には、大地に対して電気的に接続された接地線180が設けられている。接地線180は、導体シート182を介して壁側炭素繊維シート124に接続されている。導体シート182は、導体(例えば、アルミニウム)製のシートである。導体シート182は、両面粘着テープによって壁側炭素繊維シート124に張り付いている。接地線180は、壁基層122を貫通して部屋100の外部へと配線されている。接地線180は、大地に対して直接的に接続されていてもよいし、大地に対して間接的に接続されていてもよい。接地線180が接続された壁側炭素繊維シート124の他、壁側炭素繊維シート124に接触している床側炭素繊維シート114および天井側炭素繊維シート134も接地されるため、床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134による電磁波(特に、周波数3MHzより低い低周波電磁波)の抑制効果を向上させることができる。
【0053】
本実施形態では、接地線180は、他の電化製品から電気的に切り離されている。これによって、他の電化製品から発生した電磁ノイズが接地線180を介して部屋100の内部に伝搬することを防止できる。
【0054】
本実施形態では、接地線180は、部屋100において壁側炭素繊維シート124の1箇所に接続されている。他の実施形態では、接地線180は、部屋100において床側炭素繊維シート114の1箇所に接続されていてもよいし、部屋100において天井側炭素繊維シート134の1箇所に接続されていてもよい。これによって、相互に接触して導通している床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134のいずれか1箇所に接地線180を接続すれば他の炭素繊維シートも接地されるため、複数の接地線180を接続する場合と比較してコストを抑制できる。
【0055】
他の実施形態では、部屋100において床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134における複数個所に、複数の接地線180が接続されていてもよい。これによって、複数の接地線180のいずれかが断線したとしても、他の接地線180によって各炭素繊維シートの接地を確保できる。
【0056】
図5は、他の実施形態における壁120の詳細構造を示す説明図である。
図5(a)および
図5(b)には、それぞれ異なる構造による壁120の部分断面が図示されている。
【0057】
図5(a)の構造では、壁基層122と壁側炭素繊維シート124との間に、磁性材料を含有する防磁層123が設けられている。防磁層123は、磁気を遮蔽可能な防磁材料を含有するシートである。本実施形態では、防磁層123は、コバルト基アモルファス合金製の防磁シートである。他の実施形態では、防磁層123は、パーマロイ、センダストなどの他の防磁材料製の防磁シートであってもよい。防磁層123は、壁基層122と壁側炭素繊維シート124との間の他、床基層112と床側炭素繊維シート114との間、天井基層132と天井側炭素繊維シート134との間に設けられていてもよい。防磁層123は、床110、壁120および天井130の各全域に亘って設けられてもよいし、床110、壁120および天井130のうち磁界強度が比較的に高い領域に対して部分的に設けられていてもよい。
【0058】
図5(a)の構造によれば、部屋100の外部から内部へと伝搬する低周波電磁波を防磁層123によって防止できる。また、電磁波が炭素繊維シートを通過する過程で電磁誘導による渦電流で発生するジール熱に起因する赤外線を、防磁層123で遮られることなく部屋100の内部に放出できるため、その赤外線の輻射により室内の人間や動物の血行を促進させることができる。
【0059】
図5(b)の構造では、壁側炭素繊維シート124と壁仕上層126との間に、磁性材料を含有する防磁層125が設けられている。防磁層125は、磁気を遮蔽可能な材料を含有するシートである。本実施形態では、防磁層125は、コバルト基アモルファス合金製の防磁シートである。他の実施形態では、防磁層125は、パーマロイ、センダストなどの他の防磁材料製の防磁シートであってもよい。防磁層125は、壁側炭素繊維シート124と壁仕上層126との間の他、床側炭素繊維シート114と床仕上層116との間、天井側炭素繊維シート134と天井仕上層136との間に設けられていてもよい。防磁層125は、床110、壁120および天井130の各全域に亘って設けられてもよいし、床110、壁120および天井130のうち磁界強度が比較的に高い領域に対して部分的に設けられていてもよい。
【0060】
図5(b)の構造によれば、部屋100の外部から内部へと伝搬する低周波電磁波を防磁層123によって防止できる。また、電磁波が炭素繊維シートを通過する過程で電磁誘導による渦電流で発生するジール熱に起因する赤外線を、防磁層123で遮ることができため、その赤外線の輻射による室内の温度上昇を防止できる。
【0061】
図6は、ドア150の詳細構造を示す説明図である。
図7には、鉛直方向に切断した壁120およびドア150の部分断面が図示されている。ドア150は、開口部OP11を開閉する建具である。開口部OP11は、壁120の1つに設けられ、部屋100の外部へ通じる。ドア150は、ドア本体151と、ドア枠155とを備える。
【0062】
ドア本体151は、開口部OP11を開閉可能に構成された建具本体である。本実施形態では、ドア本体151は木製である。ドア本体151の表面には導電性塗膜152が形成されている。ドア本体151の導電性塗膜152は、ドア本体151の表面全域に亘って形成されていることが好ましい。ドア枠155は、開口部OP11に嵌め込まれ、ドア本体151を支持する建具枠である。本実施形態では、ドア枠155は木製である。ドア枠155の表面には導電性塗膜157が形成されている。ドア枠155の導電性塗膜157は、ドア枠155の表面全域に亘って形成されていることが好ましい。
【0063】
導電性塗膜152,157は、電磁波遮蔽性を有する電磁波遮蔽塗料を塗布することによって形成されている。本実施形態では、導電性塗膜152,157に用いられる電磁波遮蔽塗料は、黒鉛およびカーボンブラックを分散材に混合した塗料であり、更に炭素繊維を混合してもよい。
【0064】
ドア枠155の導電性塗膜157は、壁側炭素繊維シート124と接触する接触部CP1を有する。他の実施形態では、導電性塗膜157は、床側炭素繊維シート114と接触してもよい。ドア本体151が閉じた状態において、ドア本体151の導電性塗膜152は、ドア枠155の導電性塗膜157に接触する。ドア枠155の導電性塗膜157は、ドア本体151の導電性塗膜152と接触する接触部CP2を有する。
【0065】
図6の構造によれば、開口部OP11を通じて部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波を、導電性塗膜152,157によって抑制できる。また、導電性塗膜152,157と壁側炭素繊維シート124との等電位化を図り、開口部OP11を通じて部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波の抑制効果を向上させることができる。
【0066】
図7は、窓160およびカーテン170の詳細構造を示す説明図である。
図7には、鉛直方向に切断した床110、壁120、天井130、窓160およびカーテン170の部分断面が図示されている。窓160は、開口部OP12を開閉する建具である。開口部OP12は、壁120の1つに設けられ、部屋100の外部へ通じる。窓160は、ガラス162と、ガラス枠164と、窓枠165と、窓額縁166とを備える。
【0067】
ガラス162は、ガラス枠164に嵌め込まれている。ガラス枠164は、ガラス枠164を嵌め込んだアルミニウム製の枠であり、窓枠165をスライド移動することによって開口部OP12を開閉可能に構成された建具本体である。窓枠165は、窓額縁166と共に開口部OP12に嵌め込まれ、ガラス枠164を支持するアルミニウム製の建具枠である。窓額縁166は、窓枠165と共に開口部OP12に嵌め込まれ、窓枠165を支持する木製の建具枠である。窓額縁166の表面には導電性塗膜167が形成されている。導電性塗膜167は、窓額縁166の表面全域に亘って形成されていることが好ましい。窓額縁166の導電性塗膜167は、ドア150の導電性塗膜152,157と同様に、電磁波遮蔽塗料を塗布することによって形成される。窓額縁166の導電性塗膜167は、壁側炭素繊維シート124と接触する接触部CP3を有する。本実施形態では、導電性塗膜167は、窓枠165にも接触している。
【0068】
カーテン170は、窓160全体を室内側から覆うことが可能に構成されている。カーテン170は、カーテン本体171と、レール172と、複数のランナ174と、ウェイト176とを備える。カーテン本体171は、電磁波遮蔽性を有する導電性織物である。カーテン本体171は、窓160全体を室内側から覆う十分な大きさを有する。本実施形態では、カーテン本体171は、銅製の導電糸を織り込んだ導電性織物である。レール172は、窓160の上方において水平方向に延びた軌条である。複数のランナ174は、カーテン本体171を吊り下げた状態でレール172に沿って個別に摺動可能に構成されている。ウェイト176は、カーテン本体171の下端に設けられ、カーテン本体171の揺らぎを防止する。
【0069】
カーテン170のレール172は、カーテン本体171が窓額縁166の導電性塗膜167と接触可能な位置に設けられている。カーテン本体171は、窓額縁166の導電性塗膜167と接触する接触部CP4を有する。
【0070】
図7の構造によれば、開口部OP12(特に、ガラス162)を通じて部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波を、導電性塗膜167およびカーテン170によって抑制できる。また、導電性塗膜167を介してカーテン本体171と壁側炭素繊維シート124との等電位化を図り、開口部OP12を通じて部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波の抑制効果を向上させることができる。
【0071】
部屋100の施工方法について説明する。まず、施工者は、床基層112、壁基層122および天井基層132の各基層を施工する。これら各基層の施工順序は、いずれの基層から施工してもよい。
【0072】
各基層を製作した後、施工者は、床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134の各炭素繊維シートを各基層に張り付ける。これら各炭素繊維シートの施工順序は、いずれの炭素繊維シートから施工してもよい。この工程において、施工者は、床110、壁120および天井130のうち隣接する2つの境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における炭素繊維シートを、その一方の境界構造における基層と仕上層との間から拡張して設けることによって、その一方の境界構造における炭素繊維シートを他方の境界構造における炭素繊維シートと重ね合わせる。また、施工者は、炭素繊維シートの施工に合わせて、接地線180を炭素繊維シートに接続する。
【0073】
各炭素繊維シートを各基層に張り付けた後、施工者は、ドア150および窓160などの建具に導電性塗料を塗布する。これによって、本実施形態では、ドア本体151に導電性塗膜152が形成され、ドア枠155に導電性塗膜157が形成され、窓額縁166に導電性塗膜167が形成される。
【0074】
建具に導電性塗料を塗布した後、施工者は、床仕上層116、壁仕上層126および天井仕上層136の各仕上層を施工する。これら各仕上層の施工順序は、いずれの仕上層から施工してもよい。各仕上層を製作した後、施工者は、カーテン170を設置する。これによって、部屋100が完成する。
【0075】
以上説明した第1実施形態によれば、部屋100の外部から、床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134における各炭素繊維シート同士の隙間を通じた電磁波の進入を各炭素繊維シートが重なり合うことによって防止しながら、床110、壁120および天井130において部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波(特に、周波数3MHz以上の高周波電磁波)を床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134によって遮蔽できる。また、床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134の各炭素繊維シート同士の間を等電位化できるため、床110、壁120および天井130において部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波(特に、周波数3MHzより低い低周波電磁波)の抑制効果を向上させることができる。これらの結果、部屋100の外部から内部へと進入する電磁波を、床側炭素繊維シート114、壁側炭素繊維シート124および天井側炭素繊維シート134によって効果的に抑制できる。
【0076】
また、開口部OP11を通じて部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波を、導電性塗膜152,157によって抑制できる。また、また、開口部OP12を通じて部屋100の外部から内部へと伝搬する電磁波を、導電性塗膜167およびカーテン本体171によって抑制できる。
【0077】
B.第2実施形態
図8は、第2実施形態における部屋102の構造を示す説明図である。部屋102は、壁120における壁側炭素繊維シート124の施工範囲が異なること、ならびに、天井130に天井側炭素繊維シート134が施工されていないこと、が異なる点を除き、第1実施形態の部屋100と同様である。第2実施形態の壁側炭素繊維シート124は、床110から、壁120の高さ方向の中央(
図8の高さH/2)より下方の腰壁部128に亘って設けられている。
図8には、床110、壁120および天井130のうち、炭素繊維シートが設けられている領域にハッチングが施されている。壁側炭素繊維シート124は、コストを抑制する観点から、壁120の高さ方向に繋ぎ合わされていないことが好ましい。本実施形態では、窓額縁166の導電性塗膜167は、窓160の下方において壁側炭素繊維シート124と接触している。
【0078】
以上説明した第2実施形態によれば、壁120の上下全域に壁側炭素繊維シート124を設けた場合と比較してコストを抑制しながら、就寝時に身体を横たえる床110付近の領域に伝搬する電磁波を抑制できる。
【0079】
C.第3実施形態
図9は、第3実施形態における部屋200の構造を示す説明図である。
図10は、
図9の反対側から見た部屋200の構造を示す説明図である。
図11は、天井カバー230およびカーテン260を外した状態にある部屋200の構造を示す説明図である。
【0080】
部屋200は、人間の生活空間を区画する組立式小部屋である。部屋200は、主に屋内に設置して使用される。部屋200は、室外から室内へ伝搬する電磁波を抑制可能に構成されている。部屋200は、室外から室内へ伝搬する電磁波を抑制する部屋構造として、床210と、壁220と、天井カバー230と、フレーム240と、カーテン260とを備える。
【0081】
床210は、部屋200の下方を区画する境界構造である。床110は、3つの床パネル211A,211B,211Cを備える。床パネル211Aおよび床パネル211Bは、同じ平面上に並んで相互に隣接する。床パネル211Bおよび床パネル211Cは、同じ平面上に並んで相互に隣接する。
【0082】
壁220は、部屋200の側方を区画する境界構造である。壁220は、9つの壁パネル221A~221Iを備える。壁パネル221Aおよび壁パネル221Bは、同じ平面上に並んで相互に隣接する。壁パネル221Cおよび壁パネル221Dは、同じ平面上に並んで相互に隣接する。壁パネル221Dおよび壁パネル221Eは、同じ平面上に並んで相互に隣接する。壁パネル221Fおよび壁パネル221Gは、同じ平面上に並んで相互に隣接する。壁パネル221Aおよび壁パネル221Iは、直交して相互に隣接する。壁パネル221Bおよび壁パネル221Cは、直交して相互に隣接する。壁パネル221Eおよび壁パネル221Fは、直交して相互に隣接する。壁パネル221Gおよび壁パネル221Hは、直交して相互に隣接する。壁パネル221Hと壁パネル221Iとの間には、人間が部屋200に出入り可能な開口部OP31が形成されている。
【0083】
フレーム240は、床210および壁220を支持する。フレーム240は、4つの下部フレーム241A~241Dと、2つの下部補助フレーム241Eと、6つの縦フレーム242A~242Fと、4つの外側補助フレーム242Pと、4つの内側補助フレーム242Qと、4つの上部フレーム243A~243Dとを備える。
【0084】
フレーム240の各部材は、少なくとも表面に導電性を有する。本実施形態では、フレーム240の各部材は、アルミニウム製の部材である。他の実施形態では、フレーム240の各部材は、電磁波遮蔽性を有する導電性塗料を塗布した鉄製の部材であってもよい。
【0085】
下部フレーム241Aは、床パネル211Aならびに壁パネル221A,221Bの下部を支持する。下部フレーム241Aは、床パネル211A~211Cならびに壁パネル221C,221D,221Eの下部を支持する。下部フレーム241Cは、床パネル211Cならびに壁パネル221F,221Gの下部を支持する。下部フレーム241Dは、床パネル211A~211Cならびに壁パネル221H,221Iの下部を支持する。
【0086】
床パネル211Aと床パネル211Bとの隣接部、ならびに、床パネル211Bと床パネル211Cとの隣接部には、部屋200の外側に下部補助フレーム241Eが設けられている。
【0087】
縦フレーム242Aは、壁パネル221A,221Iの側方を支持する。縦フレーム242Bは、壁パネル221B,221Cの側方を支持する。縦フレーム242Cは、壁パネル221E,221Fの側方を支持する。縦フレーム242Dは、壁パネル221G,221Hの側方を支持する。縦フレーム242Eは、壁パネル221Hの側方を支持する。縦フレーム242Fは、壁パネル221Iの側方を支持する。
【0088】
壁パネル221Aと壁パネル221Bとの隣接部には、部屋200の外側に外側補助フレーム242Pが設けられ、部屋200の内側に内側補助フレーム242Qが設けられている。壁パネル221Cと壁パネル221Dとの隣接部には、部屋200の外側に外側補助フレーム242Pが設けられ、部屋200の内側に内側補助フレーム242Qが設けられている。壁パネル221Dと壁パネル221Eとの隣接部には、外側に外側補助フレーム242Pが設けられ、内側に内側補助フレーム242Qが設けられている。壁パネル221Fと壁パネル221Gとの隣接部には、部屋200の外側に外側補助フレーム242Pが設けられ、部屋200の内側に内側補助フレーム242Qが設けられている。
【0089】
上部フレーム243Aは、壁パネル221A,221Bの上部を支持する。上部フレーム243Bは、壁パネル221C,221D,221Eの上部を支持する。上部フレーム243Cは、壁パネル221F,221Gの上部を支持する。上部フレーム243Dは、壁パネル221H,221Iの上部を支持する。
【0090】
下部フレーム241D、縦フレーム242E、縦フレーム242Fおよび上部フレーム243Dに囲まれた部位には、部屋の側方から外部へ通じる開口部OP31が形成されている。4つの上部フレーム243A~243Dに囲まれた部位には、部屋の上方から外部へ通じる開口部OP32が形成されている。
【0091】
天井カバー230は、開口部OP32を覆う導電性織物である。天井カバー230は、4つの上部フレーム243A~243Dの外側に嵌り合う形状を成す。天井カバー230は、上部フレーム243A~243Dに接触する。
【0092】
カーテン260は、開口部OP31を覆う導電性織物である。カーテン260は、部屋200の外側から開口部OP1を覆う。カーテン260は、天井カバー230に取り付けられている。カーテン260は、吊り下げた状態で縦フレーム242E,242Fおよび下部フレーム241Dに接触する。
【0093】
図12は、床パネル211Aと壁パネル221Iとの隣接部の詳細構造を示す説明図である。
図12には、鉛直方向に切断した床210および壁220の部分断面が図示されている。ここでは、床パネルと壁パネルとの隣接部の一例として、床パネル211Aと壁パネル221Iとの隣接部の構造について説明するが、床パネルと壁パネルと間における他の隣接部も同様の構造である。
【0094】
床210は、水平方向に敷き詰めた3つの床パネル211A,211B,211Cの上に床仕上層216を敷き詰めた構造を有する。床パネル211A,211B,211Cは、床基層212に床側炭素繊維シート214が予め一体的に接合された部材である。
【0095】
床210の床基層212は、水平方向へ平面的に広がる基層である。床基層212は、一般的な組立式小部屋の床に用いられる建築材料(例えば、木材、石膏ボード、金属、合成樹脂など)で製作可能である。
【0096】
床基層212は、内側面212sと、側端面212tと、外側面212uとを有する。内側面212sは、床仕上層216との間に床側炭素繊維シート214を挟持する表面である。側端面212tは、床基層212の側端における表面である。外側面212uは、内側面212sに対する裏側の表面である。
【0097】
床210の床側炭素繊維シート214は、床基層212の上に設けられた炭素繊維シートである。床側炭素繊維シート214は、炭素繊維を含有する。床側炭素繊維シート214は、含有する炭素繊維に起因して電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有する。床側炭素繊維シート214は、アドバンテスト法で周波数1GHzの電磁波を40dB以上遮蔽可能な電磁波遮蔽性を有することが好ましい。本実施形態では、床側炭素繊維シート214は、第1実施形態の床側炭素繊維シート114と同様のCFRPシートである。
【0098】
床210の床仕上層216は、床側炭素繊維シート214の上に設けられた仕上層である。床仕上層216は、部屋200の内部に露出している。床仕上層216と床側炭素繊維シート214との間には、隙間が有ってもよいし無くてもよい。床仕上層216は、一般的な組立式小部屋の床に用いられる建築材料(例えば、木材、カーペット、タイルなど)で製作可能である。
【0099】
床側炭素繊維シート214は、電磁波を遮蔽する観点から、繋ぎ合わされることなく床基層212における部屋200の内側を向いた内側面212sの全面を隙間なく覆うことが好ましい。床側炭素繊維シート214は、床基層212と床仕上層216との間から側端面212tを介して外側面212uにまで拡張して設けられている。床側炭素繊維シート214は、側端面212tに拡張された側端拡張部214tuと、外側面212uに拡張された外側拡張部214uとを有する。床基層212に対する床側炭素繊維シート214の張り付けには、針(ステープル)、接着剤、両面テープなどを利用可能である。
【0100】
壁220は、9つの壁パネル221A~221Iによって構成される。壁パネル221A~221Iは、壁基層222、壁側炭素繊維シート224および壁仕上層226が予め一体的に接合された部材である。
【0101】
壁220は、9つの壁パネル221A~221Iを鉛直方向に設けた構造を有する。壁パネル221A~221Iは、壁基層222、壁側炭素繊維シート224および壁仕上層226が予め一体的に接合された部材である。
【0102】
壁220の壁基層222は、鉛直方向へ平面的に広がる基層である。壁基層222は、一般的な組立式小部屋の壁に用いられる建築材料(例えば、木材、石膏ボード、金属、合成樹脂など)で製作可能である。
【0103】
壁220の壁側炭素繊維シート224は、壁基層222の上に設けられた炭素繊維シートである。壁側炭素繊維シート224は、炭素繊維を含有する。壁側炭素繊維シート224は、含有する炭素繊維に起因して電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽性を有する。壁側炭素繊維シート224は、アドバンテスト法で周波数1GHzの電磁波を40dB以上遮蔽可能な電磁波遮蔽性を有することが好ましい。本実施形態では、壁側炭素繊維シート224は、床側炭素繊維シート214と同様のCFRPシートである。
【0104】
壁220の壁仕上層226は、壁側炭素繊維シート224の上に設けられた仕上層である。壁仕上層226は、部屋200の内部に露出している。壁仕上層226と壁側炭素繊維シート224との間には、隙間が有ってもよいし無くてもよい。壁仕上層226は、一般的な組立式小部屋の壁に用いられる建築材料(例えば、木材、石膏ボード、壁紙、漆喰など)で製作可能である。
【0105】
壁仕上層226は、内側面226sと、下端面226xと、外側面226uとを有する。内側面226sは、部屋200の内側に露出する側の表面である。下端面226xは、壁仕上層226の下端における表面である。外側面226uは、内側面226sに対する裏側の表面であり、壁基層222との間に壁側炭素繊維シート224を挟持する。
【0106】
壁側炭素繊維シート224は、電磁波を遮蔽する観点から、繋ぎ合わされることなく壁基層222における部屋200の内側を向いた表面の全面を隙間なく覆うことが好ましい。壁側炭素繊維シート224は、壁基層222と壁仕上層226との間から壁仕上層226の下端面226xを介して内側面226sにまで拡張して設けられている。壁側炭素繊維シート224は、下端面226xに拡張された下端拡張部224txと、内側面226sに拡張された内側拡張部224sとを有する。壁基層222および壁仕上層226に対する壁側炭素繊維シート224の張り付けには、針(ステープル)、接着剤、両面テープなどを利用可能である。
【0107】
フレーム240の下部フレーム241Dは、載置床FLの上に載置されている。下部フレーム241Dは、床パネル211Aおよび壁パネル221Iを下方から支持する。
【0108】
床側炭素繊維シート214および壁側炭素繊維シート224は、重なり合って相互に接触する接触部OL31を有する。接触部OL31は、床側炭素繊維シート214の側端拡張部214tuと壁側炭素繊維シート224の内側拡張部224sとが重なり合った部位である。下部フレーム241Dは、接触部OL31を覆いながら、床側炭素繊維シート214の外側拡張部214uおよび壁側炭素繊維シート224の下端拡張部224txに接触する。これによって、床210の床側炭素繊維シート214と壁220の壁側炭素繊維シート224とが重なり合う接触部OL31が分離したとしても、部屋200の外部から床側炭素繊維シート214と壁側炭素繊維シート224との隙間を通じた電磁波の進入を下部フレーム241Dによって防止できる。下部フレーム241A~241Cにおいても同様に、床側炭素繊維シート214と壁側炭素繊維シート224との隙間を通じた電磁波の進入を防止できる。
【0109】
図13は、床パネル211Aと床パネル211Bとの隣接部の詳細構造を示す説明図である。
図13には、鉛直方向に切断した床210の部分断面が図示されている。ここでは、床パネル同士の隣接部の一例として、床パネル211Aと床パネル211Bとの隣接部の構造について説明するが、床パネル211Bと床パネル211Cとの隣接部も同様の構造である。フレーム240の下部補助フレーム241Eは、載置床FLの上に載置されている。下部補助フレーム241Eは、2つの床パネル211A,211Bを下方から支持する。
【0110】
2つの床パネル211A,211Bにおける床側炭素繊維シート214の各々は、重なり合って相互に接触する接触部OL32を有する。接触部OL32は、2つの床パネル211A,211Bにおける床側炭素繊維シート214の側端拡張部214tu同士が重なり合った部位である。下部補助フレーム241Eは、接触部OL32を覆いながら、2つの床パネル211A,211Bにおける床側炭素繊維シート214の外側拡張部214uの各々に接触する。これによって、2つの床パネル211A,211Bにおける床側炭素繊維シート214の各々が重なり合う接触部OL32が分離したとしても、部屋200の外部から床パネル211Aと床パネル211Bとの間の隙間を通じた電磁波の進入を下部補助フレーム241Eによって防止できる。床パネル211Bと床パネル211Cとの隣接部においても同様に、床パネル211Bと床パネル211Cと隙間を通じた電磁波の進入を下部補助フレーム241Eによって防止できる。
【0111】
図14は、壁パネル221Aと壁パネル221Bとの隣接部、および、壁パネル221Aと壁パネル221Iとの隣接部の詳細構造を示す説明図である。
図14には、水平方向に切断した壁220の部分断面図が図示されている。ここでは、壁パネル同士の隣接部の一例として、壁パネル221Aと壁パネル221Bとの隣接部の構造、および、壁パネル221Aと壁パネル221Iとの隣接部の構造について説明するが、他の壁パネル同士の隣接部も同様の構造である。
【0112】
各々の壁パネルにおける壁基層222は、内側面222sと、側端面222tと、外側面222uとを有する。内側面222sは、壁仕上層226との間に壁側炭素繊維シート224を挟持する表面である。側端面222tは、壁基層222の側端における表面である。外側面222uは、内側面222sに対する裏側の表面である。
【0113】
各々の壁パネルにおける壁仕上層226は、内側面226sおよび外側面226uの他、側端面226tを有する。側端面226tは、壁仕上層226の側端における表面である。
【0114】
壁パネル221Aと壁パネル221Bとの隣接部においては、外側補助フレーム242Pが部屋200の外側から壁パネル221Aおよび壁パネル221Bを支持するとともに、内側補助フレーム242Qが部屋200の内側から壁パネル221Aおよび壁パネル221Bを支持する。外側補助フレーム242Pおよび内側補助フレーム242Qは、ボルト248を介して下部フレーム241Aおよび上部フレーム243Aにそれぞれ固定されている。フレーム240の各部材を連結するボルト248は、本実施形態ではアルミニウム製の部材であり、他の実施形態では、電磁波遮蔽性を有する導電性塗料を塗布した鉄製の部材であってもよい。
【0115】
壁パネル221Aと壁パネル221Bとの隣接部においては、壁側炭素繊維シート224は、壁基層222と壁仕上層226との間から壁基層222の側端面222tを介して外側面222uにまで拡張して設けられている。壁側炭素繊維シート224は、側端面222tに拡張された側端拡張部224tuと、外側面222uに拡張された外側拡張部224uとを有する。
【0116】
2つの壁パネル221A,221Bにおける壁側炭素繊維シート224の各々は、重なり合って相互に接触する接触部OL33を有する。接触部OL33は、2つの壁パネル221A,221Bにおける壁側炭素繊維シート224の側端拡張部224tu同士が重なり合った部位である。外側補助フレーム242Pは、接触部OL33を覆いながら、2つの壁パネル221A,221Bにおける壁側炭素繊維シート224の外側拡張部224uの各々に接触する。これによって、2つの壁パネル221A,221Bにおける壁側炭素繊維シート224の各々が重なり合う接触部OL33が分離したとしても、部屋200の外部から壁パネル221Aと壁パネル221Bとの間の隙間を通じた電磁波の進入を外側補助フレーム242Pによって防止できる。2つの壁パネル221C,221Dの隣接部、2つの壁パネル221D,221Eの隣接部、および、2つの壁パネル221F,221Gの隣接部においても同様に、壁側炭素繊維シート224同士の隙間を通じた電磁波の進入を外側補助フレーム242Pによって防止できる。
【0117】
壁パネル221Aと壁パネル221Iとの隣接部においては、縦フレーム242Aが部屋200の外側から壁パネル221Aと壁パネル221Iを支持する。縦フレーム242Aは、一辺に開口部242opが形成された四角柱断面を有する部材である。壁パネル221Iの側端部は、縦フレーム242Aの開口部242opに嵌め込まれている。
【0118】
壁パネル221Aと壁パネル221Iとの隣接部においては、壁パネル221Aの壁側炭素繊維シート224は、壁基層222と壁仕上層226との間から壁基層222の側端面222tを介して外側面222uにまで拡張して設けられている。壁パネル221Aの壁側炭素繊維シート224は、側端面222tに拡張された側端拡張部224tuと、外側面222uに拡張された外側拡張部224uとを有する。
【0119】
壁パネル221Aと壁パネル221Iとの隣接部においては、壁パネル221Iの壁側炭素繊維シート224は、壁基層222と壁仕上層226との間から壁仕上層226の側端面226tを介して外側面226uにまで拡張して設けられている。壁パネル221Iの壁側炭素繊維シート224は、側端面226tに拡張された側端拡張部224tsと、内側面226sに拡張された内側拡張部224sとを有する。
【0120】
2つの壁パネル221A,221Iにおける壁側炭素繊維シート224の各々は、重なり合って相互に接触する接触部OL34を有する。接触部OL34は、壁パネル221A側の壁側炭素繊維シート224の側端拡張部224tuと、壁パネル221I側の壁側炭素繊維シート224の内側拡張部224sとが重なり合った部位である。縦フレーム242Aは、接触部OL34を覆いながら、壁パネル221A側の壁側炭素繊維シート224の外側拡張部224u、および、壁パネル221I側の壁側炭素繊維シート224の内側拡張部224sに接触する。これによって、2つの壁パネル221A,221Iにおける壁側炭素繊維シート224の各々が重なり合う接触部OL34が分離したとしても、部屋200の外部から壁パネル221Aと壁パネル221Iとの間の隙間を通じた電磁波の進入を縦フレーム242Aによって防止できる。2つの壁パネル221B,221Cの隣接部、2つの壁パネル221E,221Fの隣接部、および、2つの壁パネル221G,221Hの隣接部においても同様に、壁側炭素繊維シート224同士の隙間を通じた電磁波の進入を縦フレーム242B~Dによって防止できる。
【0121】
図15は、天井カバー230およびカーテン260の詳細構造を示す説明図である。
図15には、鉛直方向に切断した天井カバー230およびカーテン260の部分断面が図示されている。
【0122】
天井カバー230は、4つの上部フレーム243A~243Dに囲まれた開口部OP32を覆う形状を成す。天井カバー230は、電磁波遮蔽性を有する導電性織物である。本実施形態では、天井カバー230は、銅製の導電糸を織り込んだ導電性織物である。天井カバー230は、4つの上部フレーム243A~243Dに接触する。
【0123】
カーテン260は、下部フレーム241D、縦フレーム242E、縦フレーム242Fおよび上部フレーム243Dに囲まれた開口部OP31を覆う形状を成す。カーテン260は、電磁波遮蔽性を有する導電性織物である。本実施形態では、カーテン260は、銅製の導電糸を織り込んだ導電性織物である。カーテン260は、天井カバー230から吊り下げられている。カーテン260は、吊り下げた状態で縦フレーム242E,242Fおよび下部フレーム241Dに接触する。カーテン260の下端には、カーテン260の揺らぎを防止するためにウェイト261が設けられている。
【0124】
各々の壁パネルにおける壁基層222は、内側面222sおよび外側面222uの他、上端面222yを備える。上端面222yは、壁仕上層226の上端における表面である。各々の壁パネル221A~221Iの上端部においては、壁側炭素繊維シート224は、壁基層222と壁仕上層226との間から壁基層222の上端面222yを介して外側面222uにまで拡張して設けられている。壁側炭素繊維シート224は、上端面222yに拡張された上端拡張部224tyと、外側面222uに拡張された外側拡張部224uとを有する。
【0125】
上部フレーム243A~243Dは、一辺に開口部243opが形成された四角柱断面を有する部材である。壁パネル221A~221Iの側端部は、上部フレーム243A~243Dの開口部243opに嵌め込まれている。上部フレーム243A~243Dは、開口部243opにおいて壁側炭素繊維シート224の外側拡張部224uに接触する。
【0126】
部屋200の施工方法について説明する。まず、施工者は、工場において、フレーム240の各部材、床210および壁220の各部材、ならびに、天井カバー230およびカーテン260を製作する。この工程において、施工者は、床パネル211A,211B,211C、および、壁パネル221A~221Iを製作する。
【0127】
各部材を製作した後、施工者は、部屋200の設置場所に各部材を搬入する。フレーム240を組み立てながら床210および壁220の各部材をフレーム240に組み付ける。床210および壁220の各部材をフレーム240に組付けた後、施工者は、フレーム240に天井カバー230およびカーテン260を取り付ける。これによって、部屋200が完成する。
【0128】
以上説明した第3実施形態によれば、部屋200の外部から、床側炭素繊維シート214および壁側炭素繊維シート224における各炭素繊維シート同士の隙間を通じた電磁波の進入を各炭素繊維シートが重なり合うことによって防止しながら、床210および壁220において部屋200の外部から内部へと伝搬する電磁波(特に、周波数3MHz以上の高周波電磁波)を床側炭素繊維シート214および壁側炭素繊維シート224によって遮蔽できる。また、床側炭素繊維シート214および壁側炭素繊維シート224の各炭素繊維シート同士の間を等電位化できるため、床210および壁220において部屋200の外部から内部へと伝搬する電磁波(特に、周波数3MHzより低い低周波電磁波)の抑制効果を向上させることができる。これらの結果、部屋200の外部から内部へと進入する電磁波を、床側炭素繊維シート214および壁側炭素繊維シート124によって効果的に抑制できる。
【0129】
また、開口部OP31を通じて部屋200の外部から内部へと伝搬する電磁波を、カーテン260によって抑制できる。また、また、開口部OP32を通じて部屋200の外部から内部へと伝搬する電磁波を、天井カバー230によって抑制できる。
【0130】
D.他の実施形態
本明細書に開示する技術は、上述した実施形態、実施例および変形例に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現できる。例えば、上述した実施形態、実施例および変形例における技術的特徴のうち、発明の概要の欄に記載した各形態における技術的特徴に対応するものは、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えおよび組み合わせることができる。また、本明細書中に必須なものとして説明されていない技術的特徴については、適宜、削除できる。
【0131】
上述した実施形態の部屋に使用される導電性塗料は、黒鉛およびカーボンブラックを分散材に混合した塗料の他、酸化鉄を主成分とした磁性体であるフェライト粉末を含有する塗料であってもよいし、電磁波の反射損失量が比較的に高い銀、銅、金、アルミニウムおよびニッケルなどの少なくとも1種類の金属粉末を含有する塗料であってもよい。
【0132】
上述した実施形態の部屋に使用される導電性織物は、電磁波の反射損失量が比較的に高い銀、銅、金、アルミニウムおよびニッケルなどの少なくとも1種類の導電糸を織り込んだ導電性織物であってもよい。また、カーテン170,260および天井カバー230における縫製時の縫目からの電磁波進入を防止するため、電磁波遮蔽性を有する導電糸を使用して天井カバー230を縫製してもよいし、電磁波遮蔽性を有するテープ(例えば、アルミニウム製のテープ)で縫目を覆ってもよいし、縫目に導電性塗料を塗布してもよい。
【0133】
第1実施形態の部屋100におけるドア150および窓160の構造は、部屋100に設置可能な各種の建具に適用できる。第1実施形態のガラス162は、電磁波遮蔽性を有するガラスであってもよいし、電磁波遮蔽性を有するフィルムを貼付したガラスであってもよい。
【0134】
第3実施形態の部屋200において、第1実施形態のドア150をカーテン260に代えて適用してもよい。第3実施形態の部屋200において、床210または壁220と同様の構造を備える天井を、天井カバー230に代えて適用してもよい。第3実施形態の部屋200における床210、壁220およびフレーム240の各部材の個数は、部屋200の大きさに応じて適宜増減してもよい。第3実施形態の部屋200における各パネル同士の隣接構造は、他のパネル同士の隣接構造に適用してもよい。
【符号の説明】
【0135】
100…部屋
102…部屋
110…床
112…床基層
114…床側炭素繊維シート
116…床仕上層
120…壁
122…壁基層
123…防磁層
124…壁側炭素繊維シート
125…防磁層
126…壁仕上層
128…腰壁部
130…天井
132…天井基層
134…天井側炭素繊維シート
136…天井仕上層
150…ドア
151…ドア本体
152…導電性塗膜
155…ドア枠
157…導電性塗膜
160…窓
162…ガラス
164…ガラス枠
165…窓枠
166…窓額縁
167…導電性塗膜
170…カーテン
171…カーテン本体
172…レール
174…ランナ
176…ウェイト
180…接地線
182…導体シート
200…部屋
210…床
211A~C…床パネル
212…床基層
212s…内側面
212t…側端面
212u…外側面
214…床側炭素繊維シート
214tu…側端拡張部
214u…外側拡張部
216…床仕上層
220…壁
221A~I…壁パネル
222…壁基層
222s…内側面
222t…側端面
222u…外側面
222y…上端面
224…壁側炭素繊維シート
224s…内側拡張部
224ts…側端拡張部
224tu…側端拡張部
224tx…下端拡張部
224ty…上端拡張部
224u…外側拡張部
226…壁仕上層
226s…内側面
226t…側端面
226u…外側面
226x…下端面
230…天井カバー
240…フレーム
241~D…下部フレーム
241E…下部補助フレーム
242A~F…縦フレーム
242P…外側補助フレーム
242Q…内側補助フレーム
242op…開口部
243A~D…上部フレーム
243op…開口部
248…ボルト
260…カーテン
261…ウェイト
CP1…接触部
CP2…接触部
CP3…接触部
CP4…接触部
FL…載置床
OL1…接触部
OL2…接触部
OL31…接触部
OL32…接触部
OL33…接触部
OL34…接触部
OP11…開口部
OP12…開口部
OP31…開口部
OP32…開口部
【要約】
【課題】部屋の外部から内部へと進入する電磁波を炭素繊維シートによって効果的に抑制する。
【解決手段】人間の生活空間を区画する部屋を形成する部屋構造は、部屋の内外を区画する第1の境界構造と、記第1の境界構造に隣接し部屋の内外を区画する第2の境界構造とを備える。第1の境界構造および第2の境界構造の各々は、平面的に広がる基層と、基層の上に設けられ炭素繊維を含有する炭素繊維シートと、炭素繊維シートの上に設けられ部屋内に露出する仕上層とを有する。第1の境界構造および第2の境界構造のうち少なくとも一方の境界構造における炭素繊維シートは、一方の境界構造における基層と仕上層との間から拡張することによって、他方の境界構造における炭素繊維シートと重なり合う。
【選択図】
図2