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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】モジュール式回転切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
B23B51/00 T
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020509460
(86)(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 US2017055139
(87)【国際公開番号】W WO2019040090
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】15/681,811
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594027476
【氏名又は名称】ケンナメタル インコ-ポレイテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】フィルホ、ルイ フロタ デ ソウザ
(72)【発明者】
【氏名】イェーガー、ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】シュワーゲル、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ワキンスキ、マヌエル
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0100784(US,A1)
【文献】特開2003-291019(JP,A)
【文献】特表2008-517787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
B23C 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って軸方向に延在する回転工具用の切削ヘッドであって、前記切削ヘッドは、
前方切削部と、
外周面を有する連結ピンであって、ピン前部とピン後部とに分割され、前記ピン前部は、前記ピン後部よりも半径方向内側にあり、前記ピン前部は周方向溝を備え、前記連結ピンは、前記ピン後部に形成されるトルク面と、前記ピン前部に形成される挟持面とを備える、連結ピンと、
前記軸方向に効果的な、軸方向の抜け防止のための停止面と、を備え、
前記挟持面は、前記ピン後部よりも半径方向内側に位置し、前記前方切削部側を下底面、前記ピン後部側を上底面とする円錐台を形成することにより、前記上底面が前記停止面となり、前記前方切削部の方向に半径方向内側に向かってテーパ状である、切削ヘッド。
【請求項2】
前記切削ヘッドは距離dxを規定する一対のトルク面を備え、前記連結ピンの前記ピン後部は直径D1を規定し、
前記距離dxの前記直径D1に対する比は、0.45~0.80の範囲内である、請求項1に記載の切削ヘッド。
【請求項3】
前記連結ピンはピン全長L3を規定し、前記連結ピンの前記ピン後部は直径D1を規定し、および、
前記ピン全長L3の前記直径D1に対する比は、0.30~0.70の範囲内である、請求項1に記載の切削ヘッド。
【請求項4】
前記停止面は、前記回転軸に対して30度~85度の範囲内の第一の傾斜角α1で形成される、請求項1に記載の切削ヘッド。
【請求項5】
前記挟持面は、前記回転軸に対してゼロではない、2.5度~6.0度の範囲内の第二の傾斜角α2で形成される、請求項1に記載の切削ヘッド。
【請求項6】
前記ピン前部は前記軸方向にピン前部長さL1を有し、前記ピン後部は前記軸方向にピン後部長さL2を有し、
第一のピン部の長さL1は、第二のピン部の長さL2と等しい、請求項1に記載の切削ヘッド。
【請求項7】
前記ピン前部はピン前部長さL1を有し、前記ピン後部はピン後部長さL2を有し、
前記ピン前部長さL1は、前記ピン後部長さL2の約0.30倍~約0.50倍異なる、請求項1に記載の切削ヘッド。
【請求項8】
前記連結ピンの前記ピン後部は直径D1を規定し、前記連結ピンの前記ピン前部は最大直径d1を規定し、
前記最大直径d1の前記直径D1に対する比は、0.60~0.95の範囲内である、請求項1に記載の切削ヘッド。
【請求項9】
回転軸に沿って軸方向に延在する回転工具であって、前記回転工具は、
対向する一対の支持構造体であって、各支持構造体は、連結ピン受け部を画定する内周面を有し、前記内周面は前部受け部と後部受け部とに分割され、前記後部受け部は周方向溝を備え、前記前部受け部は挟持面を備え、前記後部受け部は停止面を備え、外径Dを規定する、支持構造体、を備える支持体と、
前記支持体の前記連結ピン受け部内に収容されることができる切削ヘッドであって、前記切削ヘッドは、
切削直径DCを規定する前方切削部と、
外周面を有する連結ピンであって、ピン前部とピン後部とに分割され、前記ピン前部は、前記ピン後部よりも半径方向内側にあり、前記ピン前部は周方向溝を備え、前記ピン後部はトルク面を備え、前記ピン前部は挟持面を備える、連結ピンと、
前記軸方向に効果的な、軸方向の抜け防止のための停止面と、を備える、切削ヘッドと、を備え、
前記支持体の前記挟持面は、前記ピン後部よりも半径方向内側に位置し、前記前方切削部側を下底面、前記ピン後部側を上底面とする円錐台を形成することにより、前記上底面が前記停止面となり、前記前方切削部の方向に半径方向内側に向かってテーパ状である、回転工具。
【請求項10】
前記切削ヘッドは、距離dxを規定する一対のトルク面を備え、前記距離dxの前記支持体の前記外径Dに対する比は0.40~0.65の範囲内である、請求項9に記載の回転工具。
【請求項11】
前記連結ピンはピン全長L3を規定し、前記ピン全長L3の、前記支持体の前記外径Dに対する比は0.30~0.45の範囲内である、請求項9に記載の回転工具。
【請求項12】
前記支持体の前記停止面および前記切削ヘッドは、前記回転軸に対して30度~85度の範囲内の第一の傾斜角α1で形成される、請求項9に記載の回転工具。
【請求項13】
前記支持体の前記挟持面および前記切削ヘッドは、前記回転軸に対して2.5度~6.0度の範囲内の第二の傾斜角α2で形成される、請求項9に記載の回転工具。
【請求項14】
前記ピン前部は前記軸方向にピン前部の長さL1を有し、前記ピン後部は前記軸方向にピン後部長さL2を有し、第一のピン部の長さL1は第二のピン部の長さL2と同じである、請求項9に記載の回転工具。
【請求項15】
前記ピン前部はピン前部長さL1を有し、前記ピン後部はピン後部長さL2を有し、前記ピン前部長さL1は、前記ピン後部長さL2の約0.30~約0.50倍異なる、請求項9に記載の回転工具。
【請求項16】
前記支持体の前記停止面と前記切削ヘッドとの間にギャップが存在し、前記ギャップの距離は、前記支持体の前記外径Dのゼロパーセントより大きく、約1パーセントまでである、請求項9に記載の回転工具。
【請求項17】
前記連結ピンの前記ピン前部は最大直径d1を規定し、前記最大直径d1の、前記支持体の前記外径Dに対する比は0.60~0.80の範囲内である、請求項9に記載の回転工具。
【請求項18】
回転軸に沿って軸方向に延在する回転工具であって、前記回転工具は、
支持体であって、対向する一対の支持構造体であって、各支持構造体は、連結ピン受け部を画定する内周面を有し、前記内周面は前部受け部と後部受け部とに分割され、前記後部受け部は周方向溝を備え、前記前部受け部は挟持面を備え、前記後部受け部は停止面を備え、前記支持体は外径Dを規定する、支持構造体、を備える支持体と、
前記支持体の前記連結ピン受け部内に収容されることができる切削ヘッドであって、前記切削ヘッドは、
切削直径DCを規定する前方切削部と、
外周面を有する連結ピンであって、前記連結ピンは、ピン前部とピン後部とに分割され、前記ピン前部は、前記ピン後部よりも半径方向内側にあり、前記ピン前部は周方向溝を備え、前記ピン後部はトルク面を備え、前記ピン前部は挟持面を備える、連結ピンと、
前記軸方向に効果的な、軸方向の抜け防止のための停止面と;を備える、切削ヘッドと、を備え、
前記支持体の前記挟持面は、前記ピン後部よりも半径方向内側に位置し、前記前方切削部側を下底面、前記ピン後部側を上底面とする円錐台を形成することにより、前記上底面が前記停止面となり、前記前方切削部の方向に半径方向内側に向かってゼロではないテーパ状であり、第二の傾斜角α2は、前記回転軸に対して2.5度~6.0度の範囲内にあり、
前記支持体の前記停止面と前記切削ヘッドとの間にギャップが存在し、前記ギャップの距離は、前記支持体の前記外径Dのゼロパーセントより大きく、約1パーセントまでである、回転工具。
【請求項19】
前記切削ヘッドは、距離dxを規定する一対のトルク面を備え、前記連結ピンの前記ピン後部によって規定される距離dxと、前記支持体の前記外径Dの比は0.30~0.45の範囲内である、請求項18に記載の回転工具。
【請求項20】
前記連結ピンはピン全長L3を規定し、前記ピン全長L3の、前記支持体の前記外径Dに対する比は0.30~0.45の範囲内である、請求項18に記載の回転工具。
【請求項21】
前記連結ピンの前記ピン後部は直径D1を規定し、前記連結ピンの前記ピン前部は最大直径d1を規定し、前記最大直径d1の、前記直径D1に対する比は0.60~0.95の範囲内である、請求項18に記載の回転工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第120条に従って、2017年8月21日に出願された米国特許出願番号第15/681,811号の優先権を主張し、当該出願の全内容はここに引用することにより組み込まれる。
【0002】
本発明は、概ね回転切削工具に関し、具体的には、切削ヘッドおよび切削ヘッドを収容するための支持体を備える、モジュール式回転切削工具、例えばドリルなどに関する。
【背景技術】
【0003】
回転工具の一つのタイプは、二つの連結部品、即ち、支持体および切削ヘッドを備えるモジュール式回転工具である。切削ヘッドは、支持体のポケット構造に交換可能に取り付けられる。残念ながら、これらの設計では、特に不均一または傾斜した面でドリル加工作業中に発生する半径方向および軸方向の力は、ポケット構造の過度の弾性変形または最終的な塑性変形を引き起こす可能性があり、ピーク負荷と破損につながる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、回転切削工具の中心長手方向軸に対して傾斜した挟持面を設けることにより、ポケット構造の過度の応力と変形に関連する問題に対処することに関し、それにより、ドリル加工作業中の支持体内の切削ヘッドの望ましくない動きを防ぐ。本発明によって対処される別の問題は、切削ヘッドの重要な領域の応力の低減にある。
【0005】
本発明の一態様では、回転軸に沿って軸方向に延在する回転工具用の切削ヘッドは、前方切削部と、外周面を有する連結ピンであって、連結ピンは、ピン前部とピン後部とに分割され、ピン前部は周方向溝を有し、連結ピンは、ピン後部に形成されたトルク面と、ピン前部に形成された挟持面とを有する、連結ピンと、軸方向に有効な軸方向の抜け防止のための停止面と、を備え、挟持面は、前方切削部の方向に半径方向内側に向かってにテーパ状である。
【0006】
本発明の別の態様では、一対の対向する支持構造体を備える支持体を有する回転軸に沿って軸方向に延在する回転工具が提供される。各支持構造体は、連結ピン受け部を画定する内周面を有し、内周面は前部受け部と後部受け部とに分割され、後部受け部は周方向溝を備え、前部受け部は挟持面を備え、後部受け部は停止面を備える。回転工具は、支持体の連結ピン受け部に収容されることができる切削ヘッドをさらに備え、切削ヘッドは、前方切削部と;外周面を有する連結ピンであって、連結ピンはピン前部とピン後部とに分割され、ピン前部は周方向溝を有し、ピン後部はトルク面を備え、ピン前部は挟持面を備える、連結ピンと;軸方向に効果的な軸方向の抜け防止のための停止面と;を備え、支持体の挟持面と切削ヘッドは、前方切削部の方向に半径方向内側に向かってテーパ状である。
【0007】
本発明のさらに別の態様では、一対の対向する支持構造体を備える支持体を有し、回転軸に沿って軸方向に延在する回転工具が提供される。各支持構造体は、連結ピン受け部を画定する内周面を有し、内周面は前部受け部と後部受け部とに分割され、後部受け部は周方向溝を備え、前部受け部は挟持面を備え、後部受け部は停止面を備え、切削ヘッドは支持体の連結ピン受け部に収容されることができる。切削ヘッドは、切削直径Dを規定する前方切削部と、外周面を有する連結ピンであって、連結ピンはピン前部とピン後部とに分割され、ピン前部は周方向溝を備え、ピン後部はトルク面を備え、前部ピン部は挟持面を備える、連結ピンと、軸方向に効果的な軸方向の抜け防止のための停止面と、を備え、支持体および切削ヘッドの挟持面は、回転軸に対してゼロではない、2.5度~6.0度の第二の傾斜角α2で、前方切削部の方向に半径方向内側に向かってテーパ状であり、支持体の停止面と切削ヘッドとの間にギャップが存在し、ギャップの距離は、支持体によって規定される直径Dのゼロパーセントより大きく約1パーセントまでである。
【0008】
本発明のこれらおよび他の態様は、本明細書および図面を検討することにより、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の様々な実施形態が例示されているが、示される実施形態は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができると予想される。
【0010】
図1A図1Aは、本発明の実施形態による、支持体および切削ヘッドを備える回転工具の一部の斜視分解立体図である。
図1B図1Bは、切削ヘッドが支持体中に挿入された場合の図1Aによる回転工具の一部の斜視図である。
図2A図2Aは、本発明の一実施形態による切削ヘッドの斜視図である。
図2B図2Bは、図2Aによる切削ヘッドの底面図である。
図2C図2Cは、互いに対して90°回転した図2Aによる切削ヘッドの側面図である。
図2D図2Dは、互いに対して90°回転した図2Aによる切削ヘッドの側面図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態による、図1Aおよび1Bに記載される回転工具について、図2A~2Dによる切削ヘッドを収容するための支持体の斜視図である。
図3B図3Bは、図3Aによる支持体の上面図である。
図3C図3Cは、図3Bの交差線C-Cに沿った断面図である。
図4A図4Aは、本発明の一実施形態による回転工具の拡大上面図である。
図4B図4Bは、図4Aの交差線4B-4Bに沿った断面図である。
図4C図4Cは、図4Bから切り取った、支持体の停止面と切削ヘッドの停止面と間のギャップの拡大図である。
図5図5は、本発明の実施形態の支持体の切削ヘッドおよび連結ピン受け部上の様々な位置におけるギャップ距離対応力のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6図6は、本発明の実施形態の支持体の切削ヘッドおよび連結ピン受け部上の様々な位置における挟持面角対応力のシミュレーションの結果を示すグラフである。
図7図7は、挟持セグメントおよびトルクセグメントの両方が軸方向に対して比較的大きな傾斜角で形成される従来の切削ヘッド上の様々な位置における挟持面角対応力のシミュレーションの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで図1Aおよび1Bを参照すると、本発明の実施形態による回転工具2が示されている。回転工具2は、回転軸6に沿って軸方向に延在する。回転工具2は、通常動作中は回転軸6を中心に回転方向に、周方向8に回転する。
【0012】
例示の実施形態では、回転工具2は、支持体10と、支持体10に交換可能に取り付けることができる切削ヘッド12とを備えるモジュール式回転ドリル切削工具を備える。しかし、本発明は、モジュール式回転ドリル切削工具の用途に限定されない。回転工具はまた、例えば、フライス工具または別の種類の回転工具、例えばリーマー、タップなどであってよい。
【0013】
図1A~2Dを参照すると、切削ヘッド12は、前方切削部13と、前方切削部13から軸方向に離れて延在する(したがって、軸方向後方に)連結ピン14とを有する。切削ヘッド12の前方切削部13は、切削直径DCを画定する(図2Dを参照)。その周囲に、切削ヘッド12は、切削ヘッド12に始まり、支持体10に配置される機能的に適合性のある溝に連続的に合体する、対向する溝16によって中断される外周面15を有する。例示的な実施形態では、溝16は形状が実質的に螺旋状である。しかし、別の実施形態では、溝16は真っ直ぐであってもよいことが理解されよう。
【0014】
以下、本明細書で使用する場合、支持体10上の要素は文字「a」で、切削ヘッド12上の要素は文字「b」で識別される。
【0015】
図3A~3Cを参照すると、支持体10の前側は、溝16によって分断される二つの対向する支持構造体18を有する。図3Bに示すように、支持構造体18は、約45度~約60度の角度範囲にわたって円周方向に延在する。各支持構造体18は、前部接触面22aを備え、これらの面22aは、回転軸6に実質的に垂直な共通の水平面上に配置されている。前部接触面22aは、共通の水平面に対してある角度で形成される平坦または円錐状のいずれかであることができる。
【0016】
図3Aに見られるように、支持構造体18の内周面24aは、切削ヘッド12の連結ピン14を受け入れるための連結ピン受け部20を画定する。連結ピン受け部20は、水平方向に、すなわち回転軸6に垂直に延在するベース25aを備える。センタリング穴26aは、ベース25a内に配置され、回転軸6と実質的に同心である。さらに、好ましい実施形態では、回転工具2は、支持体10内に配置される一つまたは複数の冷却剤チャネル28aを備えてよく、この冷却剤チャネル28aはベース25aを通って出て、切削ヘッド12内に配置される対応する冷却剤チャネル28bと流体連通する。回転工具2はまた、溝16を通って出る冷却剤チャネル28a、28bの一方または両方から延在する補助冷却剤チャネル29(図3B)を備えることができる。
【0017】
連結ピン受け部20は、二つの部分、すなわち前部受け部40aと後部受け部42aに分割される。図3Aに示すように、支持体10の内周面24aは、トルク面30aと挟持面32aとを備える。図3Cに示すように、トルク面30は、中心の回転軸6に実質的に垂直である同じ平面内にはない。図3Aに示すように、後部受け部42aは、そこに形成される周方向溝36を備える。前部受け部40aと後部受け部42aとの間には、停止面38aが形成されている。
【0018】
再び図2A図2Dを参照すると、切削ヘッド12の連結ピン14は、前方切削部13に対して軸方向後方に延在する。連結ピン14は、外周面15から半径方向内側にずれている。支持体10の連結ピン受け部20の内周面24aに対応して、連結ピン14はトルク面30bおよび挟持面32bが形成された外周面24bを有する。支持体の面30a、32aと同様に、切削ヘッド12のトルクおよび挟持面30b、32bは、周方向8に互いに対してずれている。
【0019】
切削ヘッド12はまた、前方切削部13と連結ピン14との間の移行部に形成される二つの水平ヘッド軸受面22bを備える。一実施形態では、ヘッド軸受面22bは、共通の略水平面に配置され、溝16によって分離されている。
【0020】
支持体10の連結ピン受け部20と同様に、切削ヘッド12の連結ピン14は、二つの部分、すなわちピン前部40bとピン後部42bとに分割される。例示の実施形態では、ピン前部40bは、溝16が介在する部分的な周方向溝37を備える。ブレンドR部23bは、周方向溝37とヘッド軸受面22bとの間の移行部として形成される。換言すると、ブレンドR部23bは、ピン前部40bとヘッド軸受面22bとの間に延在する。
【0021】
また、挿入ピン26b(例えば、形状が略円筒形)は、連結ピン14から延在しており、回転軸6に対して同心円状に形成される。挿入ピン26bは任意であり、支持体10に(例えば、図1Aに示すようにセンタリング穴26aに)取り付けられる場合、切削ヘッド12の第一のセンタリング補助として用いるためにのみ形成される。切削ヘッド12は、支持体10に取り付けられる場合、挟持面32aおよび32bによっても中心に置かれることに留意されたい。
【0022】
ここで、切削ヘッド12の図2Bおよび2Cならびに支持体10の図3Bを参照すると、切削ヘッド12の連結ピン14および支持体10の連結ピン受け部20は、略矩形の形状である。つまり、トルク面30a、30bは、矩形の長辺上に形成され、挟持面32a、32bは、トルク面30a、30bから約90度をなしている矩形の短辺上に形成される。
【0023】
例示的な実施形態では、ヘッド12および支持体10のそれぞれにおける上記の「二つの部分」(すなわち、ピン前部40bおよびピン後部42b、ならびに前部受け部40aおよび後部受け部42a)は、二つの機能ゾーンまたは機能面を形成する。例示の実施形態では、ピン前部40bは、ピン後部42bよりも半径方向内側にある。さらに、ピン前部40bは、ピン後部42bに対して軸方向にずれている。挟持面32aおよび32bは前部40a、40b内に形成され、トルク面30a、30bは後部42a、42b内に形成される。換言すると、支持体10の挟持面32aは前部受け部40a内に形成され、支持体10のトルク面30aは後部受け部42a内に形成される。同様に、切削ヘッド12のトルク面30bはピン後部42b内に形成され、切削ヘッド12の挟持面32bはテーパ状のピン前部40b内に形成される。
【0024】
図2Cおよび2Dを参照すると、小さなブレンドR部39bは、停止面38bと周方向溝37との間の移行部として配置されている。連結ピン14は、ピン後部42bの直径D1と、テーパ状のピン前部40bの最小直径d1とを画定する。図3Cに示すように、支持体10は外径Dを有する。一実施形態では、最小直径d1の支持体10の外径Dに対する比は、約0.60~約0.80の範囲内にある。換言すると、0.60≦d1/D≦0.80である。また、最小直径d1のピン後部42bの直径D1に対する比は、約0.60~約0.95であり、換言すると、0.60≦d1/D1≦0.95である。さらに、直径D1の支持体10の外径Dに対する比は、約0.65~約0.95の範囲にある。換言すると、0.65≦D1/D≦0.95である。
【0025】
比d1/Dが0.60未満の場合、連結ピン14がより弱く、また冷却剤穴の利用可能空間がより少なくなり、一方、比が0.80を超える場合、連結ピン14により多くの断面空間を想定する必要があるため、支持体10がより弱くなる可能性があることが分かった。同様の考察が、d1/D1の比に当てはまることが分かった。したがって、比が0.60未満の場合、連結ピン14はより弱くなり、比が0.95より大きい場合、支持体10はより弱くなる。
【0026】
さらに、比d1/D1が0.60未満の場合、連結ピン14が弱くなり、それにより切削ヘッド12の強度を大きく損ない、一方、比が0.95を超える場合、ブレンドR部23bと39bに利用可能な空間を損ない、軸方向の支持のための表面積が不十分になることが分かった。
【0027】
切削ヘッド12のピン前部40bは、ヘッド軸受面22bと停止面38bとの間の距離によって規定される回転軸6に沿った方向にピン前部長さL1を有する。同様に、支持体10の前部受け部40aは、ピン前部40aの軸方向長さL1にほぼ等しい軸方向長さを有する。
【0028】
切削ヘッド12のピン後部42bは、停止面38bとベース面25bとの間の距離によって規定される回転軸6に沿った方向に延在するピン後部長さL2を有する。同様に、支持体10の後部受け部42aは、ピン後部42bの軸方向長さL2にほぼ等しい軸方向長さを有する。
【0029】
一実施形態では、ピン前部の長さL1とピン後部の長さL2はほぼ等しい。別の実施形態では、ピン前部の長さL1とピン後部の長さL2は、好ましくは約30パーセント~50パーセント異なる。換言すると、ピン前部の長さL1は、ピン後部の長さL2の約0.30倍~約0.50倍異なる。図2Cおよび図4Bに示すように、ピン前部の長さL1および後ピン後部の長さL2を組み合わせて、ピン全長L3を定義する。図3Cに示すように、ピン全長L3の支持体10の外径Dに対する比は、約0.30≦L3/D≦0.45の範囲内である。ピン全長L3の直径D1に対する比はまた、0.35≦L3/D1≦0.70の範囲内とすることができる。さらに、トルク面30b間の距離dxの支持体10の直径Dに対する比は、約0.40≦dx/D≦0.65の範囲内である。同様に、トルク面30b間の距離dxの直径D1に対する比は、約0.45≦dx/D1≦0.80と表すことができる。例えば、直径Dが約16mmの支持体を備える回転工具の場合、連結ピン14のトルク面30b間の距離は約6.4mm~約10.4mmの範囲とすることができ、ピン全長L3は約4.8mm~約7.2mmの範囲とすることができる。
【0030】
比dx/Dの値が0.40未満の場合、連結ピン14が弱くなり、一方、比が0.65を超える場合、半径方向で測定したトルク面30a、30bの長さが短くなり、支持体10のトルク面30aの後方の材料の量が大幅に減少するため、支持体が弱くなることが分かった。同様の考察は、dx/D1の比に当てはまることが分かった。したがって、dx/D1の比の値が0.45未満の場合、連結ピン14はより弱くなり、一方、値が0.80を超える場合、トルク面30a、30bは不十分に小さくなり、支持体10はより弱くなる。
【0031】
さらに、比L3/Dが0.30未満の値の場合、トルク伝達のための表面積が小さすぎ、過剰な接触圧力をもたらすことが分かった。また、挟持表面積が減少し、挟持動作およびセンタリング動作が損なわれる可能性がある。比が0.45よりも大きい場合、重大な欠点は、(支持体10の)柔軟性が過剰になり、その結果、あまり効果的に切削ヘッド12を所定の位置に保持できない。同様の考察は、比L3/D1に当てはまることが分かった。したがって、比L3/D1が0.35未満の値の場合、トルクの伝達および挟持のための面積はより小さくなり、比が0.70よりも大きい場合、支持体10の柔軟性は過剰となる。
【0032】
さらに、連結ピン受け部20は、連結ピン受け部長さL4を有する。例示の実施形態では、ピン全長L3と連結ピン受け部の長さL4は実質的に等しく、ヘッド軸受面22bが前部接触面22aに接触し、ピンベース面25bが支持体10のベース25aに接触する。別の実施形態では、ピンベース面25bが支持体10のベース面25aに接触しないように、ピンの全長L3は連結ピン受け部長さL4よりも短い。
【0033】
ここで図4Bおよび4Cを参照すると、停止面38a、38bは、回転軸6に対して第一の傾斜角α1で形成される。第一の傾斜角α1は、好ましくは約45度~約85度の範囲であり、最も好ましくは約60度~約75度の範囲である。例示的な実施形態では、第一の傾斜角α1は約70度である。あるいは、停止面38a、38bは、回転軸6に実質的に垂直な水平方向(すなわち、回転軸6に対して約90°)に延在してもよい。
【0034】
図4Cを参照すると、停止面38aおよび38bは、支持体10の直径Dに応じて、回転軸6を横断する方向に長さ数ミリメートル延在する。一例では、停止面38、38bは、支持体10の直径Dが約16mmの回転ドリル切削工具の場合、約0.5mm~約1.5mm延在する。
【0035】
一実施形態では、回転軸6方向の様々な側面30aおよび30b、32aおよび32bの、隣接する面22aおよび22b、38aおよび38b、25aおよび25bへの移行領域は、丸みを帯びているかまたはテーパ状である。
【0036】
図4Bを参照すると、本発明の一態様では、連結ピン14および連結ピン受け部20は、機械加工作業中に支持体内に切削ヘッド12を確実に保持するのに十分な挟持力を生成する自動ロック機能を備える。具体的には、自動ロック機能は、支持体10の挟持面32aおよび切削ヘッド12の挟持面32bをそれぞれ備え、前方切削部13の方向に、半径方向内側にテーパ状のダブテール設計を有する。例示の実施形態では、挟持面32a、32bは、回転軸6に対してゼロではない第二の傾斜角α2で形成される。換言すると、挟持面32a、32bは、円錐台または円錐部を形成し、その中で母線は第二の傾斜角α2で回転軸6と交差する。第二の傾斜角α2は、好ましくは約2.0度~約6.0度の範囲である。一実施形態では、第二の傾斜角α2は約2.5度~約5.0度の範囲である。例示的な実施形態では、第二の傾斜角α2は約2.85度である。第二の傾斜角α2の目的は、機械加工作業中に回転切削工具2に生じる応力を低減することであり、以下の図5図7でさらに説明する。
【0037】
切削ヘッド12を支持体10に組み立てるために、切削ヘッド12および連結ピン14は、連結ピン受け部20内に軸方向に(すなわち、回転軸6に沿って)挿入される。この位置では、切削ヘッド12は、図1Aおよび図1Bに示される位置に対して約90度回転する。支持体10に最初に挿入される場合、切削ヘッド12の挿入ピン26bは、支持体10に対して切削ヘッド12を位置決めするためのセンタリング機能を提供する。ベース面25a、25bを相互に接触させ、切削ヘッド12全体を連結ピン受け部20内の回転軸6の周りを周方向8とは反対の方向に回転させる。
【0038】
ベース面25a、25bの初期接触と終端位置との間のこの中間位置では、停止面38aおよび38bは、確実な後方への把持力を形成して、切削ヘッド12の軸方向の引き抜きを防止する。挟持面32aおよび32bは、圧力嵌めを形成し、切削ヘッド12を旋回点44(図4B)の周りに旋回させて、切削ヘッド12を支持体10に挟持する。この中間位置では、半径方向の挟持力は、支持構造18の挟持面32aから連結ピン14の挟持面32b上に加えられる。切削ヘッド12を支持体10に対してさらに回転させることができない終端位置では、対応するトルク面30aおよび30bが互いに接触する。作動中、支持体10によって加えられる力は、トルク面30a、30bを介して切削ヘッド12に伝達され、前部接触面22aおよびヘッド軸受面22bを介して伝達される。
【0039】
一実施形態では、図4Cに示すように、ヘッド12と支持体10との間に力を分散させるために、停止面38aと38bとの間にギャップ46が存在する。さらに、ギャップ46により、切削ヘッド12を支持体10に容易に組み付けることができる。ギャップ46は、支持体直径Dのゼロパーセントより大きく、約1パーセントまでの範囲とすることができる。換言すると、0<ギャップ≦0.01Dである。例えば、約16mmの支持体直径Dを有する回転ドリル切削工具の場合、ギャップ46は、0.0mmより大きく約0.16mmまでの範囲とすることができる。テーパ状の挟持面32aおよび32bが合計1:10の勾配(つまり、各辺2.85度または1:20)を有する場合、切削ヘッド12がポケットから押し出されるならば、直径で測定した切削ヘッド12と支持体10の連結ピン受け部20との間の最大のさらなる干渉は、停止面38a、38bが接触するまで、ギャップ46の約10パーセントであり、したがって連結ピン受け部20の位置における過度な応力は防止され、または最小化される。
【0040】
図5は、連結ピン14および連結ピン受け部20の様々な位置での応力の関数として、ギャップ46の距離のシミュレーションの結果を示している。図5では、図3Aに示す支持体10の後部受け部42aの溝36内を走るブレンドR部35aにおける応力は、四角形で表される。図2Cに示す溝37と切削ヘッド12の停止面38bとの間に配置される小さなブレンドR部39bにおける応力は、菱形で表される。図2Aに示す溝37と切削ヘッド12のヘッド軸受面22bとの間に配置されるブレンドR部23bにおける応力は、網掛け三角形で表される。図1Aに示す切削ヘッド12の冷却剤チャネル28bにおける応力は、Xで表される。図3Cに示す溝36と支持体10の停止面38aとの間に配置されるブレンドR部37a(図3Cのように、面でもよい)に位置する応力は、白抜き三角形で表される。すべての値は、ギャップ46の距離mmの関数としてプロットされる。
【0041】
シミュレーションの結果は、ギャップ46の距離が約0.05mmである場合、停止面38aに隣接するブレンドR部37a(図3C)で応力が最小となるという予期しない結果である。ギャップ46の距離が小さくなるにつれて、溝37と切削ヘッド12の停止面38bとの間の小さなブレンドR部39bにおける応力、および支持体10のブレンドR部37aにおける応力が増加し、このことは停止面38bにおける過度な接触力を示している。ギャップ46の距離が大きくなるにつれて、ブレンドR部37aでの応力、およびブレンドR部35aでの応力が増加し、このことは切削ヘッド12が連結ピン受け部20内で過度に移動していることを示し、軸方向の抜け防止が無効であることを示している。
【0042】
上記のように、軸方向の種々の機能ゾーンに分離される機能面、すなわち、トルク面30aおよび30bならびに挟持面32aおよび32b、ならびに前方切削部13に向かって半径方向に内向きのテーパ状の挟持面32a、32bと組み合わせた停止面38aおよび38bの形態の軸方向抜け防止面、を含む本明細書に記載の設計により、切削部12と支持体10との間に非常に信頼性の高い連結が実現される。
【0043】
加えて、挟持面32a、32bのダブテール設計は、ドリル加工作業中に軸方向の力を増加させながら挟持力を増加させる効果を有する。挟持面32aと32bとの間の締まり嵌めにより、ヘッドが取り付けられるとポケット支持体壁18が外側に変形し、面22aが元の位置から外れ、支持体10の外径に近い面22aと22bとの間に僅かな隙間が形成される。機械加工作業中、結果として生じる軸方向の力は、支持体10の内径に近接する領域の面22aと22bとの間で伝達され、支持体壁18にさらなる挟持力を切削ヘッド12に加える点44の周りに曲げモーメントを生成する。結果として、ドリル加工作業中の連結ピン受け部20の変形および応力が最小化され、それにより、支持体10と切削ヘッド12との間の連結が強化される。
【0044】
テーパ状の挟持面32a、32bは、溝36および軸方向の支持体38a、38bとの組み合わせで設計に利点を提供する。挟持面32a、32bの比較的小さなテーパ角度は、横負荷を発生させる条件下でドリル加工する場合に切削ヘッド12に安定性を与え、高い応力と破損の傾向があるヘッドと受け部の重要な領域への過負荷を防ぐ。より具体的には、ヘッドのブレンドR部23bおよび39bと受け部のブレンドR部35aによって画定される移行領域は、ねじり負荷と曲げ負荷の組み合わせによって引き起こされる高い応力を受ける。これらのブレンドR部23bおよび39bは可能な限り大きくすることが望ましいが、挟持面32aと32bとの間に利用可能な空間が小さく、軸方向支持面38bを形成する必要があるため、ブレンドR部39bはより小さくなり、より重要になる。ブレンドR部23bは、ブレンドR部39bより実質的に大きくすることができる。テーパ状の挟持面32a、32bは、負荷のかなりの部分を支え、より小さいブレンドR部39bに過度な応力をかけることを防止する。より高い側面負荷の下でも、軸方向支持面38aおよび38bは、切削ヘッド12がその位置にとどまることを保証し、それにより、安定した信頼性のある連結を提供する。
【0045】
本明細書で広く考えられた設計によれば、テーパが挟持と保持の両方を提供する従来のダブテール設計とは異なって、支持体10の重要な領域への応力は側面負荷下でも最小化され、許容レベルに保たれる。従来のダブテール設計では、切削ヘッドが変位して壁18を外側に押すと、ポケット内の応力が側面負荷の下で非常に増加する。本明細書に記載の別の利点は、ダブテール形状の挟持面32a、32bと溝36の組み合わせはより柔軟な支持構造体18を形成することである。これにより、支持構造体18の弾性変形が機械加工作業中の完全な表面接触を保証するので、連結ピン受け部20の挟持面32aおよび切削ヘッド12の挟持面32bに同じテーパ角を用いることができる。
【0046】
図6は、本発明の挟持面32a、32bのダブテール設計で行われたシミュレーション試験の結果を示す。図6では、図3Aに示す後部受け部42aの溝36内を走るブレンドR部35aにおける応力は、四角形で表される。図2Cに示す溝37と停止面38bとの間に配置される小さなブレンドR部39bにおける応力は、菱形で表される。図2Aに示す溝37とヘッド軸受面22bとの間に配置されるブレンドR部23bにおける応力は、三角形で表される。図1Aに示す切削ヘッド12の冷却剤チャネル28bの内面における応力は、Xで表される。すべての値は、第二の傾斜角、α2度の関数としてプロットされる。
【0047】
図6に示すように、三角形で表される溝37とヘッド軸受面22bとの間に配置されるブレンドR部23bにおける応力は、α2の関数として概ね一定である。さらに、Xで表される切削ヘッド12の冷却剤チャネル28bにおける応力は、第二の傾斜角α2の関数として増加する。
【0048】
図6に関連する)シミュレーション試験の結果は、挟持面32a、32bの第二の傾斜角α2が0.0度から約+5.0度に増加する場合、連結ピン受け部20のブレンドR部35aにおける最大応力は概ね一定であるという予期しない結果を示している。予想されるように、ヘッドの横方向の動きを防ぐダブテール作用により、挟持面32a、32bの第二の傾斜角α2が0.0度から増加するにつれて、連結ピン12の小さなブレンドR部39bにおける応力は連続的に減少する。第二の傾斜角α2を最大化して、ドリル加工作業中の切削ヘッド12の望ましくない動きを防ぐことが望ましいが、第二の傾斜角α2が大きくなり、その結果としてテーパ状のピン前部42bの断面直径d1が小さくなると、冷却剤チャネル28a、28bにかかる応力は限界を超える可能性がある。冷却剤チャネル28a、28bは、例えば研削作業から生成されるのではないため、全体的に粗面を有し、よってより低い応力限界が観察されるに違いない。さらに、約6度より大きい角度の場合、ブレンドR部23bにおける応力は、ブレンド39bにおける応力よりも大きくなる。本明細書で広く考えられるように、第二の傾斜角α2は、約2.5度~約6.0度の範囲内であり、連結ピン受け部20の変形および応力ならびに切削ヘッド12のブレンドR部23bおよび39bにおける応力を最小化する有益な効果を最大化するのに役立ち、可能な限り、ドリル加工作業中の切削ヘッド12の望ましくない動きを防止する。
【0049】
図7は、挟持面およびトルク面の両方が(溝および抜け防止面なしに)連続し、回転軸6に対する傾斜角で配置されている従来の切削ヘッド上の様々な位置における挟持面角対応力のシミュレーションの結果を示すグラフである。傾斜角は2度から20度の範囲である。通常、従来の切削ヘッドの挟持面とトルク面は、10度~20度の傾斜角で形成され、ドリル先端の方向にテーパ状である。
【0050】
図7に見られるように、破損が最も発生しやすい壁と床との間のブレンドの位置でポケットにはるかに高い応力(2000MPa対1500MPa)が発生する。さらに、ダブテールと挟持面との間のインサートコーナーブレンドにおける応力は、挟持面角度の関数として急速に増加し、(本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、)本明細書に広く考えられている回転工具よりも約50%高い。その結果、(図7で説明される)従来の切削ヘッドの設計は、応力の最小化に関して最適化できない。さらに、冷却剤チャネル上の応力は、本明細書で広く予見される回転工具の冷却剤チャネル上の応力と比較して非常に高い(600MPa対400MPa)。
【0051】
本明細書で言及される特許および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
現在、好ましい実施形態を説明したが、本発明は、添付の特許請求の範囲内で別の方法で実施されることができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7