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特許7231312水素製造システムの制御装置、及び水素製造システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】水素製造システムの制御装置、及び水素製造システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 15/00 20060101AFI20230221BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230221BHJP
   H02J 3/28 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H02J15/00 G
H02J3/38 120
H02J3/28
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019102962
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020198686
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-01-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2016年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】田丸 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 剛史
(72)【発明者】
【氏名】山根 史之
(72)【発明者】
【氏名】栗田 大史
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-140161(JP,A)
【文献】国際公開第2018/078875(WO,A1)
【文献】特開2002-180281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 15/00
H02J 3/00 - 5/00
G06Q 50/06
C25B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギー発電装置が発電する第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素製造システムの制御装置であって、
前記第1電力の前記水素製造システム内の水素製造装置への目標とする入力電力である第1目標入力電力と、前記水素製造装置の目標とする水素製造量である目標水素製造量、及び第2電力の前記水素製造装置への目標とする入力電力である第2目標入力電力の少なくとも一方と、に対するそれぞれの重みパラメータを定める決定部と、
前記第1電力の入力電力と、前記水素製造量、及び前記第2電力の入力電力の少なくとも一方とを、前記第1目標入力電力、前記目標水素製造量、及び前記第2目標入力電力の内の対応するいずれかに近づくように、それぞれに対応する前記重みパラメータが大きくなるに従い優先的に演算し、少なくとも前記第1電力の前記水素製造システムへの入力電力を示す第1電力入力指示値を演算する演算部と、
前記第1電力入力指示値の情報を含む指令信号を前記水素製造システムに出力する出力部と、
を備え、
前記決定部は、前記水素製造装置の水素製造量に関する物理量の変化に応じて前記重みパラメータを変更する、水素製造システムの制御装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記水素製造システムの実際の前記水素製造量、制御期間内の経過時間、及び前記第1電力における入力電力の積算値の内の少なくともいずれかに応じて、前記重みパラメータを変更する、請求項1に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記目標水素製造量と、前記水素製造システムの実際の水素製造量との誤差の大きさに応じて、前記重みパラメータを変更する、請求項1又は2に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記目標水素製造量よりも前記水素製造システムの実際の水素製造量が少ない場合に、前記第1電力の入力電力よりも前記水素製造量を優先するように前記重みパラメータを決定し、
前記目標水素製造量よりも前記水素製造システムの実際の水素製造量が多い場合に、前記水素製造量よりも前記第1電力の入力電力を優先するように前記重みパラメータを決定する、請求項3に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記第2電力の前記水素製造システムへの入力電力量が設定された需給バランス時間帯に応じて、前記重みパラメータを変更する、請求項1又は2に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記需給バランス時間帯内の前側の時間帯において前記水素製造量よりも前記第1電力の入力電力を優先し、前記需給バランス時間帯内の前記前側よりも後側の時間帯において前記第1電力よりも前記水素製造量を優先する前記重みパラメータを決定する、請求項5に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項7】
前記決定部は、前記需給バランス時間帯の場合に、前記需給バランス時間帯内の開始時から経過時までの前記第1電力の入力電力の積算値が、所定の閾値を越えた後に、前記第1電力の入力電力よりも前記水素製造量をより優先する前記重みパラメータに変更する、請求項5に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項8】
前記決定部は、前記需給バランス時間帯の場合に、前記需給バランス時間帯内の開始時から経過時までの前記第1電力の入力電力の積算値が、所定の閾値に近づくにしたがい前記重みパラメータの内の前記第1電力に関連する重みパラメータを減少させる、請求項5に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項9】
前記水素製造装置の実際の水素製造量と前記目標水素製造量との差分である第1差分値、前記第1電力と前記第1目標入力電力との差分である第2差分値、及び前記水素製造装置への入力電力から前記第1電力の入力電力を減算した値と前記第2目標入力電力との差分である第3差分値、に基づく評価関数を記憶する記憶部を更に備え、
前記決定部は、前記評価関数内の第1差分値に基づく値の第1重み係数、第2差分値に基づく値の第2重み係数、及び第3差分値に基づく値の第3重み係数内の、前記第1重み係数、前記第2重み係数、前記第3重み係数を前記重みパラメータとして決定し、
前記演算部は、前記決定部で決定した前記第1重み係数、前記第2重み係数、及び3重み係数に基づき、前記水素製造装置の水素製造量に相関する水素製造装置入力電力指示値と、前記第1電力入力指示値を前記再生可能エネルギー発電装置の出力電力を調整する前記水素製造システム内のパワーコンディショナへの出力電力指令値とを演算する、請求項1に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項10】
前記評価関数の第3差分値は、前記電力系統への逆潮流を防止する作用を有する、請求項9に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項11】
前記演算部は、前記評価関数を用いて、モデル予測制御又は最適レギュレータ制御により演算処理を行う請求項9又は10に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項12】
前記第2電力の前記水素製造装置への入力電力量が設定された需給バランス時間帯において、
前記評価関数は、前記水素製造装置の受電電力から前記第1電力を減算した電力の積算量と、前記第2電力の設定された入力電力の積算量と、の第4差分値にも基づいており、 前記決定部は、前記第1重み係数、前記第2重み係数、前記第3重み係数、及び前記第4差分値に基づく値の第4重み係数を前記重みパラメータとして決定する、請求項9に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項13】
前記需給バランス時間帯において、
前記決定部は、前記第1重み係数及び前記第3重み係数を0とする、請求項12に記載の水素製造システムの制御装置。
【請求項14】
再生可能エネルギー発電装置が発電する第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素製造システムの制御方法であって、
前記第1電力の前記水素製造システム内の水素製造装置への目標とする入力電力である第1目標入力電力と、前記水素製造システムの目標とする水素製造量である目標水素製造量、及び第2電力の前記水素製造装置への目標とする入力電力である第2目標入力電力の少なくとも一方と、に対するそれぞれの重みパラメータを定める決定工程と、
前記第1電力の入力電力と、前記水素製造量、及び前記第2電力の入力電力の少なくとも一方とを、前記第1目標入力電力、前記目標水素製造量、前記第2目標入力電力に近づくように、それぞれに対応する前記重みパラメータが大きくなるに従い優先的に演算し、少なくとも前記第1電力の前記水素製造システムへの入力電力を示す第1電力入力指示値を演算する演算工程と、
前記第1電力入力指示値の情報を含む指令信号を前記水素製造システムに出力する出力工程と、
を備え、
前記決定工程は、前記水素製造装置の水素製造量に関する物理量の変化に応じて前記重みパラメータを変更する、水素製造システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水素製造システムの制御装置、及び水素製造システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電量の変動が大きい再生可能エネルギー発電装置が発電する発電電力と、電力系統から供給される電力を用いて水素を製造、貯蔵する水素製造システムが知られている。また、電力系統から供給される電力の需給バランスを調整すると共に、水素需要を満す水素量を製造するエネルギー管理システムの開発が進められている。この水素製造システムの制御装置は、エネルギー管理システムからの需給バランスの要請を受け、これを達成するために各機器を適切に制御する必要がある。このように、水素製造システムの制御装置は、再生可能エネルギー発電装置の発電電力の変動への追従や、電力系統の需給バランスの調整が求められることから、より高い制御性能が必要とされる。
【0003】
このような再生可能エネルギー発電装置を有する水素製造システムでは、前提として水素需要を担保する必要がある。一方で、再生可能エネルギー発電装置の発電電力量が大きい場合には余分に水素を製造するといった経済的な運転が求められる。ところが、水素製造量を目標値と一致させることと、再生可能エネルギー発電装置の発電電力で余分に水素を製造することとは相反する目的となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6356643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、相反する目的を達成するように、再生可能エネルギー発電装置における発電電力の利用調整が可能な水素製造システムの制御装置、及び水素製造システムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る水素製造システムの制御装置は、再生可能エネルギー発電装置が発電する第1電力と、電力系統から供給される第2電力とにより水素を製造する水素製造システムの制御装置であって、前記第1電力の前記水素製造システム内の水素製造装置への目標とする入力電力である第1目標入力電力と、前記水素製造システムの目標とする水素製造量である目標水素製造量、及び第2電力の前記水素製造装置への目標とする入力電力である第2目標入力電力の少なくとも一方と、に対するそれぞれの重みパラメータを定める決定部と、前記第1電力の入力電力と、前記水素製造量、及び前記第2電力の入力電力の少なくとも一方とを、前記第1目標入力電力、前記目標水素製造量、及び前記第2目標入力電力の内の対応するいずれかに近づくように、それぞれに対応する前記重みパラメータが大きくなるに従い優先的に演算し、少なくとも前記第1電力の前記水素製造システムへの入力電力を示す第1電力入力指示値を演算する演算部と、前記第1電力入力指示値の情報を含む指令信号を水素製造システムに出力する出力部と、を備え、前記決定部は、前記水素製造装置の水素製造量に関する物理量の変化に応じて前記重みパラメータを変更する。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態によれば、相反する目的を達成するように、再生可能エネルギー発電装置における発電電力の利用調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】水素システムの構成を示すブロック図。
図2】制御装置の構成を示すブロック図。
図3】目標水素製造量をPCS出力電力よりも優先させた場合の図。
図4】重みパラメータq2を水素製造量誤差に応じて変更する例を示す図。
図5】重みパラメータq1、q2の相対的な割合を水素製造量誤差に応じて変更した例を示す図。
図6】制御装置の処理例を示すフローチャート。
図7】第2実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図。
図8】第3実施形態に係る制御装置の構成を示すブロック図。
図9】PV発電電力の積算値と30分PV発電電力量信頼区間の±1σ信頼区間とを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る水素製造システムの制御装置、及び水素製造システムの制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
(第1実施形態)
【0010】
図1は、第1実施形態に係る水素システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る水素システム1は、水素を生成するシステムであり、水素製造システム10と、エネルギー管理システム20と、制御装置30とを備えて構成されている。図1では、更に電力系統Epsが図示されている。この電力系統Epsは、一般に電力会社に管理される。
【0011】
水素製造システム10は、水素製造システム10内の再生可能エネルギー発電装置10aが生成するPV発電電力と、電力系統Epsから供給される受電電力とにより水素を製造する。すなわち、この水素製造システム10は、再生可能エネルギー発電装置10a、パワーコンディショナ(PCS)10b、水素製造装置10c、水素貯蔵装置10dを備える。なお、本実施形態に係るPV発電電力が第1電力に対応し、受電電力が第2電力に対応する。また、水素製造システム10の詳細は後述する。
【0012】
エネルギー管理システム20は、水素製造システム10の運転計画を作成する。運用計画は、例えば1日を30分単位で分割した48コマの計画である。なお、1日を30分単位で分割したときの単位を“コマ”と呼ぶこととする。
【0013】
制御装置30は、エネルギー管理システム20が作成する運転計画に基づき、水素製造システム10を制御する。この制御装置30は、例えば水素製造装置10cとパワーコンディショナ10bとを制御しており、それぞれに対する指示値を出力する。なお、制御装置30の詳細は後述する。
【0014】
水素負荷HRは水素を消費する装置である。水素負荷HRは、例えば燃料電池発電装置や、燃料電池自動車などである。
【0015】
ここで、水素製造システム10の詳細を説明する。図1に示すように、再生可能エネルギー発電装置10aは、自然エネルギー由来の発電設備を有する。この再生可能エネルギー由来の発電設備は、例えば太陽光を用いた太陽光発電装置(PV)である。再生可能エネルギー発電装置10aは、化石燃料などの燃料が不要であるが、その発電量は天候などの環境の影響を受けるため不安定である。なお、再生可能エネルギー発電装置10aは、風力発電設備でもよく、或いはバイオマスやバイオマス由来廃棄物などの新エネルギーを利用した発電設備でもよい。
【0016】
パワーコンディショナ10bは、例えばコンバータを含んで構成される。このコンバータは、再生可能エネルギー発電装置10aが出力したPV発電電力を所定の出力電力に変換する。より具体的には、パワーコンディショナ10bは、制御装置30から入力された出力電力の情報を含む指令信号に従い、PV発電電力の大きさを調整したPCS出力電力を水素製造装置10cに供給する。すなわち、パワーコンディショナ10bが出力するPCS出力電力の大きさはPV発電電力以下に調整される。さらに、再生可能エネルギーの導入が進み、電力系統Eps内の需給バランスが崩れる恐れがあるときは、再生可能エネルギーを売電、すなわち、電力系統Epsへの逆潮流ができないことが考えられる。このため、以下では、パワーコンディショナ10bを制御して再生可能エネルギーを逆潮流させない運転を行うこととする。
【0017】
水素製造装置10cは、電気と水から、水電解により水素を製造する。水素製造装置10cは、例えば、アルカリ性の溶液に電流を流すことにより、水素及び酸素を製造する電気水分解装置である。また、水素製造装置10cは、水素配管を介して、生成した水素を、水素貯蔵装置10dに蓄える。
【0018】
水素貯蔵装置10dは、水素製造装置10cにより製造された水素を蓄える。この水素貯蔵装置10dは、水素製造装置10cと、水素負荷HRと、に配管を介して接続される。また、水素貯蔵装置10dは、配管を介して、水素負荷HRに水素を供給する。
【0019】
図2は、制御装置30の構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御装置30は、インターフェース部30aと、モデル記憶部30bと、パラメータ決定部30cと、指令値演算部30dと、指令値出力部30eと、を有する。インターフェース部30a、パラメータ決定部30c、指令値演算部30d、及び指令値出力部30eの各処理部は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の回路を含むハードウェアにより構成される。
【0020】
インターフェース部30aは、エネルギー管理システム20から計画値として、水素製造装置10cの目標とする水素製造量である水素製造量目標値を目標水素製造量として取得する。上述のように、運転計画は1日を30分単位で分割した48コマとなるため、目標水素製造量も30分単位で変化する。また、インターフェース部30aは、水素製造システム10から現在値として、受電電力、PV発電電力、PCS出力電力、水素製造量を取得する。
【0021】
モデル記憶部30bは、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク等により実現される。このモデル記憶部30bは、制御対象となる水素製造装置10cおよびパワーコンディショナ10bのモデルを記憶する。このモデルは、例えば一次遅れ系やむだ時間などの各装置の動特性を表す。また、モデル記憶部30bは、後述する指令値演算部30dで用いる評価関数を記憶する。さらに、モデル記憶部30bは、再生可能エネルギー発電装置10aの発電予測モデルを記憶する。発電予測モデルは、例えばARモデル(Autoregressive Model:自己回帰モデル)であり、再生可能エネルギー発電装置10aのPV発電電力を予測する。
【0022】
パラメータ決定部30cは、水素製造システム10の制御パラメータを決定する。ここで、制御パラメータとは、例えばモデル記憶部で記憶している評価関数における重みパラメータである。すなわち、このパラメータ決定部30cは、再生可能エネルギー発電装置10aのPV発電電力の水素製造装置10への目標とする入力電力である第1目標入力電力と、水素製造システム10の目標とする水素製造量である目標水素製造量、及び、電力系統Epsから供給される受電電力の水素製造装置10への目標とする入力電力である第2目標入力電力の少なくとも一方と、に対する重みパラメータを定める。また、パラメータ決定部30cは、水素製造装置10の水素製造量に関する物理量に応じて、重みパラメータを変更する。例えば、パラメータ決定部30cは、水素製造装置10の実際の水素製造量、制御期間内の経過時間、及びPV発電電力における水素製造システム10への入力電力の積算値の内の少なくともいずれかに応じて、重みパラメータを変更する。なお、本実施形態に係るパラメータ決定部30cが決定部に対応する。また、パラメータ決定部30cの詳細は後述する。
【0023】
指令値演算部30dは、パラメータ決定部30cにより決定された制御パラメータとモデル記憶部30bに記憶されるモデルを用いて、パワーコンディショナ10bから水素製造装置10への入力電力の指示値であるPCS出力電力指示値(第1電力入力指示値)と、水素製造装置10cへの全体の入力電力の指示値である水素製造装置入力電力指示値を演算する。例えば、指令値演算部30dは、PCS出力電力(第1電力)の入力電力と、水素製造量、及び、第2電力の入力電力の少なくとも一方とを、それぞれに対応する重みパラメータが大きくなるに従い優先的に演算し、少なくともPV発電電力のパワーコンディショナ10bから水素製造システム10への入力電力を示すPCS出力電力指示値を演算する。また、水素製造装置入力電力には、PCS出力電力と受電電力とが含まれる。すなわち、水素製造装置10cへの全体の入力電力は、パワーコンディショナ10bから水素製造装置10への入力電力であるPCS出力電力と、電力系統Epsから供給される受電電力との加算値となる。換言すると、水素製造装置10cへの全体の入力電力からパワーコンディショナ10bから水素製造装置10への入力電力であるPCS出力電力を減算した値が電力系統Epsから供給される受電電力となる。
【0024】
また、水素製造システム10では、水素製造装置入力電力とPCS出力電力を操作して、目標値を満たすように水素製造量を制御し、逆潮流しないように受電電力を制御する必要がある。さらにまた、水素製造システム10では、経済的な運転が求められるために、PV発電電力を利用(PCS出力電力をPV発電電力に近づける)することが求められる。つまり、水素製造システム10は、多入力多出力制御系となる。このため、指令値演算部30dでは、指令値を決定する際に、例えばモデル予測制御や最適レギュレータにより指令値を演算する。なお、本実施形態に係る指令値演算部30dが演算部に対応する。
【0025】
指令値出力部30eは、指令値演算部30dで演算した水素製造装置10cの水素製造量に相関する水素製造装置入力電力指示値を水素製造装置10cに出力し、PCS出力電力指示値をパワーコンディショナ10bに出力する。なお、本実施形態に係る指令値出力部30eが出力部に対応する。
【0026】
ここで、パラメータ決定部30cにおける詳細について説明する。本実施形態では、指令値演算部30dは、例えばモデル予測制御により指令値を演算する。このため、モデル記憶部における評価関数J(k)は、例えば(1)式を用いる。
【数1】
kは現在時刻であり、例えば秒を示す。Nは予測区間であり、例えば30秒である。
【0027】
H(k)は水素製造装置10cの実際の水素製造量であり、SV_H(k)は、水素製造装置10cの目標水素製造量である。また、PV(k)は再生可能エネルギー発電装置10aにおける発電電力の予測値であるPV発電電力であり、PCS(k)はパワーコンディショナ10bにおける出力電力であるPCS出力電力である。さらにまた、EC(k)は水素製造装置入力電力、AUX(k)は水素製造装置入力電力を除いた水素製造システム10への全ての入力電力(以下では、「その他電力」と呼ぶこととする)である。SV_E(k)は逆潮流をしないためにマージンをとった第2電力の受電電力目標値である。また、q1、q2、q3のそれぞれは重み係数であり、パラメータ決定部で決定するそれぞれの重みパラメータに対応する。なお、本実施形態に係るPCS出力電力PCS(k)が第1目標入力電力に対応し、第2電力の受電電力目標値SV_E(k)が第2目標入力電力に対応する。
【0028】
ここで、水素製造量H(k)と水素製造装置入力電力EC(k)には、例えばH(k)=f(EC(k))の関係がある。すなわち、水素製造装置入力電力EC(k)は、水素製造装置10cの水素製造量H(k)に相関する。H(k)=f(EC(k))の関係は、モデルとしてモデル記憶部30bに記憶されている。
【0029】
(1)式の第1項、すなわちq1の項は、水素製造量H(k)を目標水素製造量SV_H(k)と一致させるように作用する項である。第2項、すなわちq2の項は、PCS出力電力PCS(k)をPV発電電力PV(k)と一致させる項である。つまり、再生可能エネルギー発電装置10aのPV発電電力を有効的に用いるように作用する項である。
【0030】
第3項、すなわちq3の項は、逆潮流を防止する項である。例えばPV発電電力PV(k)が増加する場合には、評価関数J(k)は、第2項によりPV発電電力PV(k)とPCS出力電力PCS(k)とを一致させるように作用する。これにより、評価関数J(k)は、第3項のPCS出力電力PCS(k)が増加した変化分に対して、水素製造装置入力電力EC(k)と水素製造量H(k)とを増加せるように作用する。
【0031】
一方で、評価関数J(k)は、水素製造量H(k)が目標水素製造量SV_H(k)より大きくなった場合には、第1項により水素製造量H(k)を減少するように作用する。つまり、第1項と第2項による影響が相反する動作となる。このため、重みパラメータの設定によっては、第1項と第2項とのどちらかの目的を達成できない可能性が生じてしまう。このように、重みパラメータq1、q2、q3の値により、目標水素製造量SV_H(k)、PCS出力電力PCS(k)、第2電力の受電電力目標値SV_E(k)のいずれかが優先的に処理される。
【0032】
図3は、目標水素製造量SV_H(k)をPCS出力電力PCS(k)よりも優先させた場合の図である。縦軸は電力と水素製造量を示し、横軸は経過時間を示している。ここで、重みパラメータq1=1.0、q2=0.1、q3=1.0である。すなわち、重みパラメータq1をq2よりも相対的に優先させた場合である。これにより、水素製造量H(k)と目標水素製造量SV_H(k)と一致させることが、予測値であるPV発電電力PV(k)とPCS出力電力PCS(k)と一致させることよりも優先される。この場合、枠300内に示すように、PV発電電力PV(k)の予測値通りに実際のPV発電電力が増加し、余剰量が発生する。しかし、水素製造量H(k)と目標水素製造量SV_H(k)と一致させることを重視するため、PCS出力電力PCS(k)が増加せず、結果として水素製造装置入力電力EC(k)も増加しない。
【0033】
ここで、PV発電電力PV(k)の余剰量を利用して水素を製造することは、電力系統EPsから電気を購入していないため、目標水素製造量SV_H(k)より多めに製造することは問題ないと考えられる。水素製造量H(k)が目標水素製造量SV_H(k)との誤差が大きくなるとしても、実際のPV発電電力PV(k)が多いときは余剰量を利用して積極的に水素を製造することで、PV発電電力PV(k)が少ないときに電力系統EPsから電気を購入する必要がなくなる。ただし、PV発電電力PV(k)の有効利用を重視してq2を常に大きくすると、PV発電電力PV(k)が少ないときに水素製造量H(k)の目標水素製造量SV_H(k)への追従性能が悪化する。このため、本実施形態では、図4に示すように水素製造量H(k)に応じて、重みパラメータq1と、q2との相対的な割合を変更させる。
【0034】
図4は、重みパラメータq2を水素製造量誤差(H(k+j)-SV_H(k+j))/SV_H(k+j)に応じて変更する例を示す図である。縦軸が重みパラメータq2を示し、横軸が水素製造量誤差(H(k+j)-SV_H(k+j))/SV_H(k+j)を示す。図4に示すように、パラメータ決定部30cは、水素製造量誤差(H(k+j)-SV_H(k+j))/SV_H(k+j)に応じて重みパラメータq2と重みパラメータq1の相対的な割合を変更する。すなわち、このパラメータ決定部30cは、水素製造量誤差がプラスになると重みパラメータq2の値を増加させる。これにより、水素製造量誤差がプラスになると評価関数J(k)の第2項によりPV発電電力PV(k)とPCS出力電力PCS(k)とを一致させる作用がより強く働く。評価関数j(k)において、重みパラメータq2を増加させる代わりに重みパラメータq1を相対的に減少させてもよい。すなわち、重みパラメータq2と重みパラメータq1の比であるq2/q1を増加させると、PV発電電力PV(k)とPCS出力電力PCS(k)とを一致させる作用がより強く働く。
【0035】
図5は、重みパラメータq1と、q2との相対的な割合を水素製造量誤差(H(k+j)-SV_H(k+j))/SV_H(k+j)に応じて変更した例を示す図である。水素製造量誤差(H(k+j)-SV_H(k+j))/SV_H(k+j)がマイナスの範囲で、重みパラメータq1=1.0、q2=0.1、q3=1.0であり、プラスの範囲で、重みパラメータq1=1.0、q2=10.0、q3=1.0である。
【0036】
図4及び図5に示すように、パラメータ決定部30cは、水素製造量H(k)に応じて、重みパラメータq1と、q2との相対的な割合を変更させる。例えば、パラメータ決定部30cは、重みパラメータq2とq1の比率を変更させる。より具体的には、パラメータ決定部30cは、目標水素製造量SV_H(k)よりも水素製造システム10の実際の水素製造量H(k)が少ない場合に、パワーコンディショナ10bにおける出力電力であるPCS出力電力(第1電力の入力電力)よりも水素製造量H(k)を優先するように重みパラメータq1と、q2とを決定し、目標水素製造量SV_H(k)よりも水素製造システム10の実際の水素製造量がH(k)多い場合に、水素製造量H(k)よりもPCS出力電力(第1電力の入力電力)を優先するように重みパラメータを決定する。例えば、パラメータ決定部30cは、水素製造量誤差(H(k+j)-SV_H(k+j))/SV_H(k+j)がマイナス、すなわち水素製造量H(k)が不足しているときは、重みパラメータq2の割合を相対的に小さくする。これにより、水素製造量H(k)が目標水素製造量SV_H(k)と一致することがより重視される。一方で、パラメータ決定部30cは、水素製造量誤差がプラス、すなわち水素製造量H(k)が余剰しているときは、重みパラメータq2の割合を相対的に大きくする。これにより、PV発電電力の有効利用を重視し、水素製造装置入力電力EC(k)をより大きくする。このように、水素製造量H(k)に応じて制御性能に影響する重みパラメータを変更することで、相反する2つの目的を達成することが可能となる。
【0037】
(1)式では、第2項においてPV発電電力PV(k)用いているが、PV発電電力PV(k)の代わりに、(2)式に示すように、現在の実際のPV発電電力PVr(k)を用いてもよい。
【数2】
第2項は、PV発電電力PVr(k)の余剰量がある場合に、PCS出力電力PCS(k)を少なくとも現在のPV発電電力PVr(k)まで一致させるように作用する。(1)式と比べると、再生可能エネルギー発電装置10aのPV有効利用の効果が低下する可能性はあるが、短期の変動を予測するのが難しい再生可能エネルギー発電装置10aのPV発電電力予測が不要となる。
【0038】
図6は、制御装置30の処理例を示すフローチャートである。図6に示すように、先ず、モデル記憶部30bは、指令値演算部30dにおける演算に使用する評価関数と、モデルを記憶する(ステップS100)。これらの評価関数と、モデルは、例えばインターフェース部30aを介して不図示の中央演算処理装置から入力される。
【0039】
次に、インターフェース部30aは、エネルギー管理システム20から48コマ分、すなわち1日分の水素製造目標値として、目標水素製造量を取得する(ステップS102)。続けて、インターフェース部30aは、水素製造システム10から、現在値として、受電電力SV_E(k)、PV発電電力PV(k)、
PCS出力電力PCS(k)、水素製造量H(k)などを取得する(ステップS104)。
【0040】
次に、パラメータ決定部30cは、水素製造量誤差(H(k+j)-SV_H(k+j))/SV_H(k+j)に応じて重みパラメータq2と重みパラメータq1の相対的な割合を決定する(ステップS106)。
【0041】
次に、指令値演算部30dは、パラメータ決定部30cにより決定された重みパラメータq2と重みパラメータq1とモデル記憶部30bに記憶されるモデルを用いて、評価関数J(k)によりPCS出力電力指示値PCS(k)と、水素製造装置10cへの入力電力である水素製造装置入力電力指示値EC(k)を演算する(ステップS108)。
【0042】
次に、指令値出力部30eは、PCS出力電力指示値PCS(k)をパワーコンディショナ10bに、水素製造装置入力電力指示値EC(k)を水素製造装置10cに出力する(ステップS110)。指令値出力部30eは、一コマが終了したか否かを判定し(ステップS112)、終了していない場合(ステップS112のNO)、ステップS104からの処理を繰り返す。一方で終了している場合(ステップS114のYES)、指令値出力部30eは、24コマ終了したか否かを判定し(ステップS114) 終了していない場合(ステップS114のNO)、ステップS102からの処理を繰り返す。一方で終了している場合(ステップS116のYES)、全体処理を終了する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態によれば、パラメータ決定部30cが、目標水素製造量SV_H(k)よりも水素製造装置10の実際の水素製造量H(k)が少ない場合に、PCS出力電力PCS(k)の出力電力よりも水素製造量H(k)を優先するように重みパラメータq1、q2、q3を決定し、目標水素製造量SV_H(k)よりも水素製造装置10の実際の水素製造量H(k)が多い場合に、水素製造量H(k)よりもPCS出力電力PCS(k)の出力電力を優先するように重みパラメータq1、q2、q3決定することとした。これにより、水素製造量H(k)が少ない場合に、水素製造量H(k)を優先するので、水素製造量H(k)を目標水素製造量SV_H(k)に近づけることが可能となり、水素製造量H(k)が多い場合に、PCS出力電力PCS(k)の出力電力を優先するので、再生可能エネルギー発電装置10aの余剰電力を利用可能となる。このように、水素製造量H(k)に応じて重みパラメータを変更することで、相反する2つの目的を達成するように、再生可能エネルギー発電装置におけるPV発電電力PV(k)の利用調整を行うことができる。
【0044】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る制御装置30は、エネルギー管理システム20からの需給バランスの要請として、30分単位の受電電力量を調整するデマンドレスポンス(DR)を受ける点で第1実施形態に係る水素製造システム10の制御装置30と相違する。以下では、第1実施形態と相違する点を説明する。本実施形態では、DRを受ける時間帯を需給バランス時間帯(以下ではDR時間帯と呼ぶ場合がある)、DRでない時間帯を通常時間帯として、それぞれの時間帯における制御装置30の処理例について説明する。
【0045】
図7は、第2実施形態に係る制御装置30の構成を示すブロック図である。図7に示すように、インターフェース部30aは、DR時間帯と受電電力量目標値とをエネルギー管理システム20から更に取得する。モデル記憶部は、更にDR時間帯における評価関数JDR(k)を記憶する。
【0046】
パラメータ決定部30cは、通常時間帯においては実施例1と同様に(1)式で示す評価関数J(k)を使用する。一方で、DR時間帯における評価関数JDR(k)は、例えば(3)~(5)式により表される。DRバランス時間帯では、(5)式に示すように、第2電力の水素製造装置10への入力電力量SV_EDR(k)が設定される。すなわち、SV_EDR(k)はDR時間帯における受電電力である。
【数3】
【数4】
【数5】
【0047】
(3)式において、G(k)は(4)式で示すように、受電電力の積算値である。また、SV_G(k)は(5)式で示すように、受電電力における積算値の目標値である。
【0048】
パラメータ決定部30cは、重みパラメータq1DR,q2DRを決定する。(3)式の第1項、すなわちq1DRの項は、受電電力の積算量G(k)を受電電力の積算量目標値SV_G(k)と一致させるように作用する項である。また、第2項、すなわちq2DRの項は、PCS出力電力PCS(k)をPV発電電力推定値PV(k)と一致させるように作用する項である。すなわち、再生可能エネルギー発電装置10aのPV発電電力PV(k)を有効的に用いるための項となる。
【0049】
ここで、(3)式の第2項ではPV発電電力の予測値PV(k)を利用している。例えば、PV発電電力の予測値PV(k)が増加するとき、実際のPV発電電力が増加しなかった場合は、PV発電電力の予測誤差分の電力を電力系統から受電することとなり、受電電力の積算値G(k)が増加する。
【0050】
また、例えば水素製造装置10cの反応遅れが大きいとき、PV有効利用を重視してPCS出力電力PCS(k)が実際のPV発電電力と一致している場合を考える。このとき、PV発電電力が急激に減少すると、この変化に水素製造装置10cの変化が追いつかない。このため、水素製造装置10cには追加電力が必要となるが、PCS出力電力に追加する電力が無いため、電力を電力系統から受電することとなり、受電電力の積算値G(k)が増加する。
【0051】
このように、DR時間帯においては、受電電力量SV_G(k)の目標値との一致と、PV発電電力PV(k)の有効利用とは、相反する作用が発生する。このため、重みパラメータの設定によって第1項と第2項のどちらかの目的を達成できない可能性がある。
【0052】
本実施形態では、DR時間帯の経過時間に応じて重みパラメータを変更させることで相反する作用を緩和する。例えば、DR時間帯では30分間の受電電力量量G(k)を目標値と一致させればよいため、25分経過前まではq2DRを大きく設定しておき、25分経過後はq2DRを小さくすることで、残り5分において受電電力量G(k)を目標値と一致させることを重視することが可能となる。或いは、25分経過後のq1DRを大きくしてもよい。
【0053】
本実施形態では、通常時間帯は(1)式、DR時間帯は(2)式の評価関数を用いることしたが、これに限るものではない。例えば、通常時間帯とDR時間帯で同じ評価関数を利用して、重みパラメータを変化させてもよい。この場合の評価関数を(6)式に示す。通常時間帯はq1DRを0として、DR時間帯はq1,q3を0として各指令値を演算する。
【数6】
【0054】
以上のように、本実施例の形態によれば、DR時間帯において経過時間に応じてPV発電電力PV(k)に関する重みパラメータq2DRを変更することとした。これにより、受電電力の積算値G(k)をDR時間帯における目標とする受電電力量SV_G(k)と一致させることと、PV発電電力PV(k)の有効利用という2つの相反する目的を達成することが可能となる。このように、DR時間帯において経過時間に応じてPV発電電力PV(k)に関する重みパラメータq2DRを変更することで、相反する2つの目的を達成するように、再生可能エネルギー発電装置におけるPV発電電力PV(k)の利用調整を行うことができる。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る制御装置30は、更に30分PV発電電力量信頼区間の情報を用いて、制御処理する点で、第2実施形態に係る水素製造システム10の制御装置30と相違する。以下では、第2実施形態と相違する点を説明する。
【0056】
図8は、第3実施形態に係る制御装置30の構成を示すブロック図である。図8に示すように、インターフェース部30aは、30分PV発電電力量予測値と、30分PV発電電力量信頼区間とをエネルギー管理システム20から更に取得する。ここで、30分PV発電電力量信頼区間は、例えば、PV発電電力PV(k)の積算値の確率分布を正規分布とした場合の、PV発電電力PV(k)の積算値の平均値から±1σの範囲に対応する。
【0057】
図9は、PV発電電力PV(k)の積算値と30分PV発電電力量信頼区間の±1σ信頼区間を示す図である。縦軸は、PV発電電力PV(k)の積算電力量を示し、横軸は、経過時間を示している。発電量予測値は、30分PV発電電力量予測値に対応している。
【0058】
図9に示すように、パラメータ決定部30cは、PV発電電力PV(k)を積算し、積算電力量が信頼区間の-σの値に対応する閾値TH1に時刻t1で達すると、時刻t1よりも後の第2期間における重みパラメータq2DR((3)式)を時刻t1よりも前の第1期間よりも小さくする。或いは、パラメータ決定部30cは、閾値TH1に積算電力量が近づくに従い、重みパラメータq2DRを徐々に小さくしてもよい。さらに、パラメータ決定部30cは、閾値TH1に時刻t1で積算電力量が達すると、重みパラメータq2DRを0にしてもよい。この場合、受電電力の積算値G(k)を目標値に一致させることが可能となる。そして、時刻t2に達するとDR時間帯が終了する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1電力の水素製造装置10への目標とする入力電力であるPCS出力電力(第1電力の入力電力)に関する重みパラメータq2DRをPV発電電力PV(k)の積算電力量が信頼区間の-σの値に対応する閾値TH1に到達すると、減少させる又は0にすることとした。これにより、PV発電電力PV(k)をほぼ目的値に近い値で使用可能となると共に、受電電力の積算値G(k)をDR時間帯における目標とする受電電力量SV_G(k)にほぼ一致させることも可能となる。このため、受電電力の積算値G(k)をDR時間帯における目標とする受電電力量SV_G(k)への一致と、PV発電電力PV(k)の有効利用という2つの相反する目的を達成することが可能となる。このように、重みパラメータq2DRをPV発電電力PV(k)の積算電力量が信頼区間の-σの値に対応する閾値TH1に到達すると、減少させる又は0にすることで、相反する2つの目的を達成するように、再生可能エネルギー発電装置におけるPV発電電力PV(k)の利用調整を行うことができる。
【0060】
上述した実施形態で説明した水素製造システムの制御装置の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御装置および水素製造システムの少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0061】
また、水素製造システムの制御装置の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0062】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置、方法及びプログラムは、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置、方法及びプログラムの形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
1:水素システム、10:水素製造システム、30:制御装置、10a:再生可能エネルギー発電装置、10c:水素製造装置、30c:パラメータ決定部、30d:指令値演算部、30e:指令値出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9