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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20230221BHJP
   A23L 33/21 20160101ALI20230221BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230221BHJP
【FI】
A23L17/60 B
A23L33/21
A23L33/105
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019057374
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020156356
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼発行者名 公益社団法人 日本農芸化学会 刊行物名 日本農芸化学会2019年度大会プログラム集(オンライン)、掲載頁92、講演番号4B1a01 発行年月日 2019年2月25日 公開 掲載アドレス http://www.jsbba.or.jp/2019/ https://jsbba.bioweb.ne.jp/jsbba2019/index.php?aid=56671&place_num=1 http://www.jsbba.or.jp/2019/wp-content/uploads/file/program/MeetingofJSBBA2019_program.pdf
(73)【特許権者】
【識別番号】591183625
【氏名又は名称】フジッコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508042869
【氏名又は名称】学校法人 大妻学院
(72)【発明者】
【氏名】東条 由花
(72)【発明者】
【氏名】紙谷 年昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 香
(72)【発明者】
【氏名】高谷 直己
(72)【発明者】
【氏名】戸田 登志也
(72)【発明者】
【氏名】青江 誠一郎
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-141011(JP,A)
【文献】特開2009-136182(JP,A)
【文献】人間生活文化研究,No.26,2016年,pp.463-465
【文献】人間生活文化研究,No.24,2014年,pp.101-103
【文献】日本調理科学会誌,2018年,Vol.51, No.5,pp.297-299
【文献】日本栄養・食糧学会誌,2015年,Vol.68, No.3,pp.119-128
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
A23L 33/21
A23L 33/105
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆布を95℃以上で水煮処理し、次いで100℃以上の温度で加熱処理することにより昆布中のアルギン酸を平均分子量10万~100万の範囲で低分子化ることを特徴とする、抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法。
【請求項2】
前記昆布中のアルギン酸の平均分子量が15万~40万の範囲である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記抗肥満機能向上が、体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または肝臓脂質増加抑制機能の少なくともいずれか1つの作用効果を発揮する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
昆布を95℃以上で水煮処理する工程、次いで100℃以上の温度で加熱処理する工程を含み、前記水煮処理および加熱処理により昆布中のアルギン酸を平均分子量10万~100万の範囲で低分子化ることを特徴とする、昆布の抗肥満機能の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆布が有する様々な健康機能性を高めるための抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法に関する。昆布が本来有する体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能を向上させるための抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法に関する。
【0002】
昆布は、うま味成分であるグルタミン酸を多く含むだけでなく、食物繊維、カルシウム、鉄、カリウム、ヨウ素等のミネラルなど様々な健康機能成分を多く含む健康食品であり、その健康機能性について各種研究が行われている。例えば、昆布に多量に含まれているアルギン酸は、過剰摂取しがちな塩分(ナトリウム)の体外への排出や、食物繊維として整腸、便秘改善効果を有することが知られている。
特許文献1には、加圧下での熱処理により低分子化された、GPC法で測定した平均分子量が1万~15万のアルギンを含有することを特徴とする肥満防止および糖尿病予防の効果があるアルギン含有食品が、特許文献2には、海藻に由来する多糖類の加水分解物を含む胆汁酸吸着剤が開示されている。
ところで、昆布に含まれる食物繊維は、昆布全体の食物繊維としてアルギン酸が60%程度を占め、残りの食物繊維としてフコイダン、ラミナラン、及び、セルロースを含んでおり、アルギン酸単体での健康機能性は知られているが、アルギン酸だけでなく他の食物繊維を含んだ昆布全体での健康機能性の詳細については未だ明らかにはなっていない部分が多い。
【0003】
また、昆布は日本食には欠かせない素材であり、出汁昆布や昆布佃煮をはじめとして様々な料理に用いられている。特に、食品工業においては、うま味調味料である昆布だしの原料として多く使用されているが、だし抽出後の昆布は有用な健康機能成分を多く含むにも関わらず、水分を多く含み脱水、乾燥、及び、輸送コストがかかるため、その多くは産業廃棄物として処理され、有効利用されていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2643669号公報
【文献】特開2018-70609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、だし抽出後の昆布残渣を簡易な加工方法によって、昆布が本来有する健康機能性を高めることにより、昆布残渣の健康機能性を高めた抗肥満機能向上用の加工昆布として再生する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、昆布を原料とし、これに含まれるアルギン酸の平均分子量を特定の範囲になるように加熱することにより、だし抽出後の昆布(水煮昆布)と比べて、体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能を向上させる方法を見出し、この方法を用いることにより上記の健康機能性が向上された抗肥満機能向上用の加工昆布を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は次の[1]~[3]の抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法に関する。
[1]昆布を100℃以上の温度で加熱処理することにより昆布中のアルギン酸を平均分子量10万~100万の範囲で低分子化させることを特徴とする、抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法に関する。
[2]前記加熱処理の前に、水煮処理する工程を含むことを特徴とする、[1]に記載する抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法に関する。
[3]昆布を100℃以上の温度で加熱処理する工程を含み、前記加熱処理により昆布中のアルギン酸を平均分子量10万~100万の範囲で低分子化させることを特徴とする、昆布の抗肥満機能の向上方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によれば、簡易な加工方法により、従来だし抽出後に廃棄されていた昆布を、体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能が向上された抗肥満機能向上用の加工昆布にすることができるため、本発明の方法により得られた加工昆布を機能性素材や、加工昆布を用いた調味料や昆布佃煮として提供できる。さらに、廃棄されていた昆布を再利用できるため、産業廃棄物の削減をすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下の記載にされるものではない。
【0010】
本発明の方法は、昆布を100℃以上の温度で加熱処理することにより昆布中のアルギン酸を低分子化させ、その平均分子量を10万~100万の特定の範囲(以下、「特定範囲」という。)となるように加熱条件を適宜調整することにより、だし抽出後の昆布(水煮昆布)と比べて、体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能が向上された抗肥満機能向上用の加工昆布を得ることができる。
【0011】
本発明で使用する昆布は、真昆布、利尻昆布、日高昆布、長昆布、猫足昆布、ラウス昆布などいずれの昆布であってもよく、その種類は特に限定されない。
昆布の使用部位についても、葉昆布、根昆布のいずれの部位であってもよく特に限定されず、昆布の産地についても、北海道、青森県などの国産、中国産、ロシア産などいずれの産地でもよく特に限定されない。
また、昆布は1種単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
【0012】
使用する昆布の状態は、乾燥昆布であってもよく、生昆布、冷凍昆布、塩蔵昆布のいずれであってもよい。
また、昆布は原藻のままでも使用できるが、予め破砕、細断、粉砕してもよい。通常は、昆布だしのエキス抽出した残渣を使用するため破砕された昆布を用いるが、昆布の状態は特に限定されない。
【0013】
本発明の方法は、昆布を100℃以上の温度で加熱処理する工程からなり、必要に応じて、加熱処理の前に昆布を水煮処理することができる。
【0014】
本発明の水煮処理は、必要に応じて行えばよく、昆布を溶液中に水煮処理(浸漬を含む)することにより、昆布に含まれるヨウ素を溶出、除去することができる。水煮処理によりヨウ素を除去することで、ヨウ素過剰摂取による甲状腺機能低下症、甲状腺腫、甲状腺中毒症の発生リスクを低減させることができる。なお、昆布だしのエキス抽出した残渣を用いる場合には、既にヨウ素が除去されているため、水煮処理は不要となる。
【0015】
昆布中に含まれるヨウ素は、冷水および熱水で浸漬処理した場合には、それぞれ20分程度で90%以上のヨウ素が溶出される例が知られており(日本栄養・食糧学会誌,Vol.36,No.1,p21-24,1983年)、水煮処理(浸漬を含む)の温度および時間は、ヨウ素が溶出できる条件で適宜調整すればよい。
水煮処理(浸漬を含む)は、冷水、熱水のいずれに浸漬してもよく、また、水以外の溶媒としてエタノール等のアルコールや含水エタノールを用いてもよい。
なお、水煮処理(浸漬を含む)が100℃以下の熱水で短時間で行われる場合には、加熱による昆布中のアルギン酸の加水分解はほとんどない(少ない)ため、水煮処理(浸漬を含む)中に昆布中のアルギン酸が溶出される量は少ない。
【0016】
本発明の加熱処理は、昆布を100℃以上の温度で加熱処理することにより昆布中のアルギン酸を低分子化させ、その平均分子量が10万~100万である特定範囲となるように加熱条件を適宜調整することにより、目的とする体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能が向上された抗肥満機能向上用の加工昆布を得ることができる。
【0017】
本発明の方法は、加熱処理により昆布中の低分子化されたアルギン酸の溶出を抑えるため、大気中で加熱処理を行う。なお、昆布を水中で加熱処理をした場合には、加熱処理中に低分子化された昆布中のアルギン酸が溶出し、その健康機能性が低下するため、目的とする加工昆布を得ることができない。
【0018】
本発明の加熱処理においては、加熱処理の温度は100~200℃が好ましく、100~180℃がより好ましい。
加熱温度が100℃未満である場合、製造上の合理的な時間で昆布中のアルギン酸を特定範囲まで低分子化することができず、加熱温度が200℃を超える場合は、最終の加工昆布に苦味、焦げ臭が生じるため好ましくない。
【0019】
加熱処理の時間は、加熱温度との関係で、昆布中のアルギン酸が特定範囲となる条件で適宜選択することができる。また、加熱処理の時間は、加熱処理時の大気圧にも影響され、常圧または加圧の条件により適宜選択することができる。
例えば、常圧下においてオーブンを用いて乾熱加熱する場合には、水煮した昆布を130℃90分、150℃30分、180℃15分で加熱処理することで昆布中のアルギン酸を特定範囲に低分子化することができ、また、加圧下においてはオートクレーブを用いて湿熱加熱する場合は、水煮した昆布を111℃30分、121℃15分、130℃15分で加熱処理することで昆布中のアルギン酸を特定範囲に低分子化することができる。
また、加熱処理の手段は、特に限定されず、乾熱加熱による焙煎処理や焼成処理でもよく、また、湿熱加熱による蒸気加圧加熱や過熱水蒸気加熱でもよい。
【0020】
かくして、本発明の方法によって、昆布を原料とし、これに含まれるアルギン酸の平均分子量を特定の範囲になるように加熱処理して低分子化することにより、だし抽出後の昆布(水煮昆布)と比べて、体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能が向上された抗肥満機能向上用の加工昆布の製造方法が完成する。
本発明の方法により得られた加工昆布は、体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能が優れた抗肥満機能が向上された昆布の健康食品として提供することができる。加えて、本発明の方法により、廃棄されていた昆布を再利用できるため、産業廃棄物の削減をすることができる。
【0021】
また、本発明により得られた加工昆布は、砂糖や醤油などの調味料と合わせて煮熟することで昆布佃煮にすることができ、従来の昆布佃煮と比べて健康機能性が向上された昆布佃煮を提供することができる。
さらに、本発明により得られた加工昆布は、粉砕処理することにより、昆布の健康機能性が向上された昆布パウダーを得ることができる。昆布パウダーは、例えば、健康食品としてそのまま使用することができ、また、調味料やパンや麺類などの加工食品に添加することができる。
【実施例
【0022】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
〔昆布粉末の調整〕
乾燥昆布(原藻)(大船産2等マコンブ)を約5cm角に切断し、これを95℃60分間水煮処理して水煮処理昆布を得た。
次に、水煮処理昆布を、加圧湿熱処理する場合はオートクレーブを用いて、また、常圧乾熱処理する場合はオーブンを用いて、各種温度条件で加熱処理して加熱処理昆布を得た。
次に、各種条件で加熱処理した加熱処理昆布を、水分6%となるように60℃で乾燥処理した後、これを粉砕機を用いて粉砕し、篩(メッシュサイズ(#)=500μm)にかけて粒径500μm以下の各種の昆布粉末を得た。
また、乾燥昆布(原藻)と水煮処理昆布を、それぞれ上記同様に乾燥処理した後、粉砕してそれぞれの昆布粉末を得た。
【0024】
〔昆布粉末の分析〕
1.食物繊維量の分析:
下記方法で其々の食物繊維量を測定した。各食物繊維量の結果を表1に示す。
(1)総食物繊維量:
Prosky変法(AOAC公定法991.43)によって求めた。
(2)アルギン酸量:
試料粉末のアルカリ抽出後にカルバゾール硫酸法により測定した。
(3)フコイダン量:
試料粉末からの希塩酸抽出後に塩化セシルピリジニウムを用いて分画し、エタノール添加により生じた沈殿の重量から求めた。
(4)ラミナラン量:
試料粉末の2N硫酸加水分解後にグルコースオキシダーゼ法によって求めた。
(5)セルロース量:
Southgate法に準じた希酸加水分解抽出物の除去後に強酸による加水分解により得られるセルロース画分についてフェノール硫酸法により測定した。
2.多糖の分析:
各種の昆布粉末を1%炭酸ナトリウム(W/V)水溶液に溶解後、一晩撹拌して多糖を抽出した。これをガラスフィルターろ過、中和、透析し、メンブレンフィルター(0.45μm)ろ過して、多糖を精製した。精製後の多糖の分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)法により測定し、プルランを標準として平均分子量を算出した。加圧湿熱処理の結果を表2、常圧乾熱処理の結果を表3に示す。
3.ヨウ素の分析:
各種の昆布粉末を50%水酸化ナトリウム溶液中(W/V)で灰化後、ろ液を蒸留水で定容した。これを中和し、1mol/L次亜塩素酸ナトリウム溶液を加えて煮沸後、ヨウ化カリウム及び3mol/L硫酸を加えてヨウ素を遊離させた。でんぷんを指示薬として0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム標準溶液で滴定し、ヨウ素量を算出した。ヨウ素の分析結果を表4に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1の結果より、水煮処理昆布および加圧湿熱処理昆布(121℃15分,130℃60分)において、それぞれの食物繊維量に差は見られなかった。
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
表2、表3の結果より、水煮処理昆布を加圧湿熱処理した場合、100℃3分~130℃15分の範囲において、昆布粉末中のアルギン酸の平均分子量が10万~100万の特定範囲になることが分かった。また、水煮処理昆布を常圧乾熱処理した場合、130℃15分~180℃15分の範囲において、昆布粉末中のアルギン酸の平均分子量が10万~100万の特定範囲になることが分かった。
【0030】
【表4】
【0031】
表4の結果より、昆布粉末100gに含まれるヨウ素量は、乾燥昆布(57.7mg)に対して、水煮処理昆布(1.7mg)、および121℃15分加圧湿熱処理昆布(2.3mg)は僅かであり、水煮処理によりヨウ素をほとんど除去できることが分かった。
【0032】
実施例1、比較例1~3: 昆布粉末のマウス投与試験
〔実験動物、飼料および飼育条件〕
4週齢の雄性マウス(C57BL/6J:日本チャールスリバー)を用い、7日間の市販固形飼料(AIN-93G:日本クレア)での予備飼育後、市販固形飼料にラード20%添加した試験食(高脂肪食)に、飼料あたり総食物繊維量が5%となるように昆布粉末またはセルロース(対照)を添加したものを10日間自由摂取させた。
なお、動物試験は、昆布粉末添加群3群(水煮処理昆布、加圧湿熱処理昆布(121℃15分、130℃60分))と、セルロース添加群1群の合計4群(1群8匹)で行った。各群のマウスに摂取させた飼料組成を表5に示した。
【0033】
〔体重、腹腔内脂肪、血清脂質濃度、及び肝臓脂質の測定〕
飼育終了後、8時間絶食後にイソフルラン/CO吸引麻酔下で安楽死させ、体重測定した後、血液採取し、腹腔内脂肪(後腹壁脂肪・副睾丸周辺脂肪・腸間膜脂肪)、肝臓を摘出し、重量測定を行った。血清脂質は酵素法、肝臓脂質はFolch法にて抽出後、酵素法で分析した。結果を表6~表9に示す。
【0034】
【表5】
【0035】
【表6】
【0036】
【表7】
【0037】
表6、表7の結果より、飼育期間を通じて全ての群間で摂取量に差はなかった。また、121℃15分加圧湿熱処理した昆布粉末摂取群(実施例1)において、対照のセルロース摂取群(比較例1)と比較して、飼料効率(体重)、腹腔内脂肪総重量が有意に低下することが認められた。一方、水煮処理昆布摂取群(比較例2)、および130℃60分加圧湿熱処理した昆布粉末摂取群(比較例3)では、抑制傾向はみられたものの有意な抑制は認められなかった。
【0038】
【表8】
【0039】
【表9】
【0040】
表8、表9の結果より、血清中の総コレステロール濃度が、121℃15分加圧湿熱処理した昆布粉末摂取群(実施例1)において、対照のセルロース摂取群(比較例1)、水煮処理昆布摂取群(比較例2)、および130℃60分加圧湿熱処理した昆布粉末摂取群(比較例3)と比較して、低下することが認められた。
また、肝臓脂質についても、121℃15分加圧湿熱処理した昆布粉末摂取群(実施例1)において、対照のセルロース摂取群(比較例1)、水煮処理昆布摂取群(比較例2)、および130℃60分加圧湿熱処理した昆布粉末摂取群(比較例3)と比較して、トリグリセリドおよびコレステロールが低下することが認められた。
【0041】
表2、表3の結果より、水煮処理昆布を適宜加熱処理することにより、昆布中のアルギン酸の平均分子量を特定範囲である10万~100万に調整することができ、表6~表9の結果より、特定範囲になるように加熱処理された昆布粉末を摂取することにより、高脂肪食摂取時において、体重、及び、腹腔内脂肪重量を有意に低下し、また、血清脂質濃度、及び、肝臓脂質を低下することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の方法により、昆布の体重増加抑制機能、内臓脂肪蓄積抑制機能、血清脂質増加抑制機能、または、肝臓脂質増加抑制機能を向上させることができ、本発明の方法により得られた加工昆布は、抗肥満機能が向上された健康食品やダイエット食品として提供することができるため有用である。