(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】プリーツマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230221BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A41D13/11 B
A62B18/02 C
(21)【出願番号】P 2017039048
(22)【出願日】2017-03-02
【審査請求日】2019-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白武 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】竹内 政実
【合議体】
【審判長】藤原 直欣
【審判官】稲葉 大紀
【審判官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3101268(JP,U)
【文献】特開2013-256739(JP,A)
【文献】特開2014-223227(JP,A)
【文献】特開2008-86626(JP,A)
【文献】特開2016-73445(JP,A)
【文献】特開2001-11763(JP,A)
【文献】特開2006-149739(JP,A)
【文献】特開2011-125494(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179917(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11
A62B 18/02
B01D 39/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦帯電不織布からなる濾材を
スパンボンド不織布からなる表面材で挟持積層した基材の一方向にプリーツ線が設けられた本体部(但し、フェイスシールが固定された本体部、および濾材の
見掛け密度が表面材よりも
大きい本体部を除く)と、該プリーツ線の両端部側に各々取り付けられた耳掛け紐とを有するプリーツマスクであって、前記濾材の無荷重下での見掛け密度が0.05g/cm
3以下で有ることを特徴とするプリーツマスク。
【請求項2】
前記基材を構成する濾材は、2つ折りにした屈曲部分の形状回復による濾材高さhが6.4mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のプリーツマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症予防に用いられる衛生用のマスクに関するものであって、特に、装着時の着用者負担が極めて低いプリーツマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会生活の多様化による国内外の往来が活発化し、気候の急激な変化もあいまって、インフルエンザを始めとする種々の感染症対策、或いは花粉などに対するアレルギー対策に対する関心が深まっている。実質的に早期免疫獲得に乏しい感染症の流行が増加する傾向であり、既に感染した患者に留まらず、予防のためのマスク装着習慣が定着しつつある。マスクの形態も多種多様なものが提案されており、鼻や口を覆う面体としてガーゼや不織布が多用され、この面体に顔面の上下方向に展開(以下、展張と称する場合がある)が可能な複数のプリーツを設けて濾過面積を大きくとり、顔面の左右方向にゴム紐などを取り付けたものが知られている。
【0003】
図1は、上述したプリーツマスク(以下、単にマスクと称する場合がある)の基本構造を模式的線図などにより示す説明図であり、図示右側にはマスクの平面を、左側には平面における一点鎖線A―Aで切り欠いた断面を各々示している。また、この断面の一部を切り欠いた拡大断面を下側に示し、拡大断面のみにハッチングを付す。まず、一般的なプリーツマスクには複数の不織布が用いられ、濾過性能を主として担う濾材11と、着用者の肌に直接触れる表面材13a及び表面材13bとを積層して基材15が構成される(下側図参照)。基材15の一例として、濾材には比較的繊維径が細くて見掛け密度が小さく、濾過性能を担うメルトブロー不織布、表面材には比較的繊維径が太く見掛け密度が大きく、エンボスを施した耐摩耗性に優れるスパンボンド不織布が用いられる。このうち、表面材13aと表面材13bとは同一の素材とする場合もあるが、着用者側の表面材13aは濾材の毛羽による皮膚刺激を防ぐ最小限の目付で構成し、相対する側の表面材13bは、濾材15のプレフィルターとして機能するように比較的大きな目付で構成するのが一般的である。このような基材15にはプリーツ加工が施され、右側図の左右方向に複数のプリーツ線17が設けられる。このプリーツ線17は、図示表面に設けたもののみを示してあるが、左側図の模式断面として示すように、所謂、ジグザグ状に加工され、マスクを装着した際、基材15の素材特性に応じたプリーツ線の回復によって、面体の中央部では顔面から離間する方向(表面材13b側)に展張されるようになっており、展張することで、濾過面積を大きく採ることができる。さらに、プリーツ線17の両端部19、並びに、上下端部21a及び上下端部21bは折返し、或いは別途表面材をコの字型に取付け、糸による縫着または超音波や熱によって溶着(以下、単に固定と称する場合がある)する。このようにして本体部23として1枚の面体が構成されるが、面体の展張後の変形防止、及び着用者の鼻に沿わせて漏れ防止のために上下端部21aには、長尺状の金属片または樹脂片からなる鼻金25を配設するのが一般的である。加えて、両端部19には、各々、1本ずつの耳掛け紐27(図示左側は省略)が固定され、プリーツマスクとなる。
【0004】
このようなマスクを使用するには、着用者が本体部23の中央部分の上下端を引っ張って展張し、鼻金を適宜屈曲させてから耳掛け紐27を耳に掛けることで装着される。この際、本体部23の左右方向端部では隣接するプリーツ線同士の距離が変化しないように固定されており、展張後は略半球状の面体となる。このような構成で、基材15は10~40g/m2程度の不織布を組み合わせて圧力損失を抑え、呼吸の容易さを実現することが多く、剛性は比較的小さいのが一般的であり、着用者の装着性の確保が希求されていた。
【0005】
このような面体の展張状態を保つため、例えば実用新案登録第3117500号公報(以下、特許文献1)では、上述したプリーツ線(同文献では単に「プリーツ」と称される)を更に固定し、マスク本体の角部の強度向上を図る技術が提案されている。この公報技術について、前述した
図1を参照し、特徴的な構成成分を加えながら説明する。この特許文献1の技術では、一般的なプリーツマスクにおいて、第1プリーツ押え線(
図1の両端部19相当)と、当該押え線上又はその近傍であって、本体部の上下方向の略中央部分から上下端部21a並びに上下端部21bへ向かう斜め方向に、プリーツ線17を縦断するように、上述の第1プリーツ押え線(両端部19相当)よりも内側に設けられた第2プリーツ押え線29(本体部の左側のみ図示)を設けている。このように、何れも溶着で形成された2つのプリーツ押え線の組合せによって、矩形の本体部の角部近傍に画成される領域Bの形状変化を抑え、装着性が高まるという作用効果が記載されている。さらに、当該技術では、第2プリーツ押え線29が面体の中央部分を中心とする円周の一部と同等な位置に形成されており、面体の立体形状の維持に寄与すると考えられる(同公報
図1、
図4及び
図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3117500号公報([実用新案登録請求の範囲]、[0003]、[0008]~[0009]、[0017]~[0018]、[
図1]、[
図4]及び[
図5]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した背景技術では、プリーツ加工によって設けられたプリーツ線17を第2プリーツ押え線29で固定する構成により、面体の中央部分の立体形状を維持するという副次的効果を開示している。プリーツマスクは、使用する前の本体部面積に較べて、使用時の立体形状でより大きな濾材面積を持たせるべく設計される。しかしながら、前述した特許文献1の技術では、第2プリーツ押え線29が両端部(第1プリーツ押え線)19よりも面体の中央部側に設けられるため、面体を展張しても、第2プリーツ線によって溶着固定されたプリーツ線同士の間隔は拡がらず、濾過面積増加には寄与しない領域を生じるという問題が有る。特に、両端部(第1プリーツ押え線)19と第2プリーツ押え線29との間の領域Bは、プリーツ線を構成する濾材同士の重なりが解消せず、面体の展張後に高圧損な領域となり、実質的に濾過には寄与しない。
【0008】
このように、例示した第2プリーツ線29のような種々の構成成分によって、マスクに必要な加工技術は複雑かつ高度化する傾向があり、低コストで面体の有効濾過面積を大きく採り得る技術は未だ知られていないという問題点があった。本発明は、プリーツマスクの基材を最大限に濾過機能に寄与させる構成を鋭意検討した結果、完成したものである。従って、本出願に係る発明は、プリーツ線を容易に展張し、基材を濾過機能に寄与させることが可能な技術を提供し、安価で優れた濾過機能を実現し得るプリーツマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的の達成を図るため、本発明のプリーツマスクの構成によれば、濾材と表面材とを積層した基材の一方向にプリーツ線が設けられた本体部と、このプリーツ線の両端部側に各々取り付けられた耳掛け紐とを有するプリーツマスクであって、上述した濾材の無荷重下での見掛け密度が0.05g/cm3以下で有ることを特徴としている。
【0010】
また、本発明の実施に当たり、基材を構成する濾材は、2つ折にした屈曲部分の形状回復による濾材高さhが6.4mm以上であることが好ましい。尚、ここに言う「濾材高さh」とは、濾材を屈曲して2つ折りとした状態で板状物によって荷重負荷を与えた後に当該負荷を解除し、マスクのプリーツ線に相当する屈曲部分がループ状に回復する濾材の高さを表している(後段で詳述)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成を適用することにより、従前のプリーツマスクの形状を変更することなく、低コストで基材の濾過面積を有効に発揮させ、装着感に優れたプリーツマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】背景技術を説明するため、従来のプリーツマスクの平面、断面並びに拡大断面により示す説明図である。
【
図2】本発明並びに従前のプリーツマスクの概形を、
図1と同様に示す説明図である。
【
図3】プリーツ回復力の指標である濾材高さhを測定するため、要部断面により示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適形態について、
図2を参照して説明する。尚、同図は
図1との対比を容易とするため、同一の機能を有する構成成分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。本発明では、
図1に示す基材15に代えて、無荷重下で実体顕微鏡によって観察した際の見掛け密度が0.050g/cm
3未満の嵩高い濾材31を従来の表面材13a及び表面材13bで挟持積層した基材33を用いる。この基材33は、従来のプリーツマスクの基本構成と同様に、マスクの本体部35の両端部19、並びに、上下端部21a及び上下端部21bでのみ固定されるため、基材33を構成する各構成成分同士が全面で積層固定する必要はない。このうち、表面材13a、13bは、従来用いられている素材を用いることができ、本発明を適用する場合も任意好適に選択し得るが、所定のエンボスで表面状態を固定し、また、表面材として本体部の各端部を固定し得る素材が好ましい。従って、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂からなる、目付が10~60g/m
2、より好ましくは15~40g/m
2程度のスパンボンド不織布を採用するのが好適である。本体部35の表裏を構成する上で、これら2つの表面材は互いに材質、目付などの条件を同一としても良いが、各々の機能、即ち、濾材31を保護する上で、着用時に外気上流側のプレフィルターとして作用する表面材13bの目付を大きく採り、着用者の顔面に接触する表面材13aは濾材31の毛羽による皮膚刺激を来さない程度の比較的小さな目付に設定するのが好適である。
【0014】
また、濾材31を選択するにあたり、濾過機能を期待する本体部35の大部分には固定手段としての熱が加わらないため、比較的嵩高く、粗い開口によって圧力損失を抑えた帯電不織布を採用するのが好ましい。係る帯電不織布としては、嵩高性を満たす限り、従来知られているコロナ帯電加工による不織布でも良いが、本出願人が特開2000-189732号公報、或いは特開2011-235219号公報に提案している摩擦帯電不織布を用いるのが最も好ましい。このような摩擦帯電不織布を構成する繊維成分として、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマーの中から、帯電列の異なる2種以上の繊維を組合せるのが良い。中でも、上述した従来技術に開示されるとおり、帯電列が比較的隔たったポリオレフィン系繊維とアクリル系繊維とを、重量混合比で30:70~80:20の範囲内とするのが好ましい。さらに、上述した2つの周知文献にも開示されるように、イオウ系添加剤やリン系添加剤を繊維に適宜配合し、摩擦帯電量を増大させても良い。濾材31として、このような摩擦帯電不織布を採用する場合、好ましくは目付30~200g/m2、より好ましくは40~180g/m2とするのが好適である。この濾材31は、本体部35の主たる機能を担う構成成分である。従って、この好適範囲よりも小さな目付とする場合、十分な濾過性能が発揮できず、また、大きな目付とした場合プリーツの折り加工や部材との溶着加工等が困難になる。
【0015】
このように、濾材31の無荷重下での見掛け密度の好適範囲を0.05g/m2以下とすることによって、マスク調製時に形成されたプリーツ線による屈曲で重畳状態にある基材の展張が良好となり、面体としての濾過面積を有効活用することができる。また、本発明の好適態様として、面体を構成する濾材の無荷重時の厚さは1.6mm以上とするのが好適である。このような厚さ、延いては上述した嵩高な濾材構成を選択することによって、濾材に十分なプリーツ回復力を発揮させることができる。従って、この濾材は6.4mm以上の濾材高さhとするのが好ましい。
【0016】
以上、本発明の好適形態について具体例を挙げて説明したが、本発明は、これら具体的な例示にのみ限定されるものではない。例えば、基材の端部に施される固定手段は前述した熱融着に限定されるものではなく、縫製であっても良い。さらに、プリーツ線の形成を始めとするマスク作製上の加工適性を向上させるため、上述の摩擦帯電不織布を構成する繊維を導布に絡合一体化した濾材とする形態を採用しても良い。この導布の組成や目付などは任意好適に選択することができ、例えばポリプロピレン系樹脂からなるスパンボンドを採用することによって、交絡一体化した後の帯電状態を安定に保ちつつ、加工工程の通過性を確保することができる。また、プリーツ線の配置形状は、図示の形態に限定されるものではなく、プリーツ線の数や、プリーツ線同士の間隔など、適宜調整しても良い。これら材質、形状、数値的条件、寸法、並びに、その他の条件は、上述した形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、任意好適な設計の変更または変形を行うことができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例として、具体的な濾材を作製し、その評価方法並びに各濾材の評価結果について詳細に説明する。尚、評価方法については図面を参照して説明するが、その他の説明では各構成成分の符号を省略する。
【0018】
[濾材の準備]
濾材は、実施例に相当する濾材として前述の摩擦帯電不織布、比較例に相当する濾材として周知のメルトブロー不織布を各々準備し、目付などが異なる5種類の不織布を選定した。まず、摩擦帯電不織布として、カード機によって摩擦帯電繊維(市販のポリプロピレン短繊維[繊度2.2デシテックス,繊維長51mm,重量組成比40%]、及び市販のアクリル短繊維[繊度2.2デシテックス,繊維長51mm,重量組成比60%])からなる繊維層(目付は65g/m2)をシート化し、前述した導布となるポリプロピレン樹脂製のスパンボンド不織布(三井化学社製,目付15g/m2)と積層してウエブとした。続いて、この積層ウエブに、針番手40のクロスバーブニードルを針深さ13mm、針密度34本/cm2の条件でニードルパンチ加工を行い、目付が80g/m2の濾材(「TN80」と略記)を得た。さらに、この導布を用いた同様な手法で、目付120g/m2の濾材(「TN120」と略記)並びに目付160g/m2の濾材(「TN160」と略記)を調製し、3種類の濾材を準備した。
また、比較例としてのメルトブロー不織布は、市販のポリプロピレン樹脂を用いて定法により紡糸、堆積してウエブとし、目付25g/m2(「MB25」と略記)並びに目付70g/m2(「MB70」と略記)の2種類を調製した。
【0019】
[濾材高さhの評価方法]
次いで、プリーツ回復力の指標となる「濾材高さh」について、要部断面により示す
図3を参照して説明する。同図は、評価結果を求めるべく所定の操作を行った後の状態を示している。尚、以下の評価は、温度25℃、湿度60RH%の標準状態下で実施した。まず、平坦な上面を有する机などを測定台37とし、測定対象となる濾材を2つ折りにした状態で載置する。この濾材は、まず打ち抜きによって幅25mm×長さ180mmとし、長さ方向に2つ折りして幅25mm×90mmの評価サンプル39とする。この2つ折り屈曲端部がマスクとした際のプリーツ線(
図1並びに
図2参照)に相当する。この2つ折りにした評価サンプルの屈曲端部から20mmの位置に目印となる線を描き、この評価サンプル39上に、140mm角、厚さ4.5mmのガラス板41を載せることによって、評価サンプル39に500gの荷重を加えた。当該サンプルに荷重を負荷したまま60分静置して、厚さを定常状態とする。然る後、評価サンプル39の屈曲端部が20mm露出する上記目印の位置にガラス板41を載置し、上記屈曲端部をループ状に回復させ、測定を実施した。
図3に示すとおり、このループの頂部と測定台37との距離を濾材高さとして採寸した。このような評価手順を行って、3回濾材高さを求め、その平均値を濾材高さhとした。この濾材高さhは、数値が大きいほどプリーツ回復力に優れ、展張し易いことを示している。以下の表1に、無荷重時の厚さ、見掛け密度、並びに、評価結果判断の根拠となる「濾材高さh」などを示す。
【0020】
【0021】
この表1から理解できる様に、本発明を適用した実施例1と、メルトブロー不織布からなる比較例1との比較から、見掛け密度が小さい実施例1ではプリーツ回復力の指標となる濾材高さhが比較例1の約2倍と大幅に高い結果となった。また、実施例1と目付が同等の比較例2であっても、濾材高さhは実施例1の方が約1.5倍高い結果となった。さらに、実施例1に較べて目付の大きい実施例2並びに実施例3では、濾材高さhは増大する傾向にあり、各比較例に較べて高いプリーツ回復力を実現し得ることが理解できる。以上の結果から、本発明に規定した「見掛け密度が0.050以下」の実施例に係る各濾材では、従来周知の一般的な濾材である各比較例に比べて、何れも濾材高さhが高くなる傾向が確認できた。
【0022】
次に上述した濾材のプリーツ回復力の評価結果がマスクに反映されるか否かを確認するため、実施例1、実施例3、比較例1、及び比較例2の各濾材に、同一の表面材を積層した基材を調製し、同様に評価した。この評価に用いた表面材は、以下の構成で目付などが異なる2種類のスパンボンド不織布(「SB1」、並びに「SB2」と略記)を準備した。尚、濾材と表面材とは積層するのみで接着剤等による一体化は施さずに評価を行った。
SB1:ポリプロピレン樹脂からなる目付20g/m
2(三井化学社製)
SB2:芯をポリプロピレン樹脂、鞘をポリエチレン樹脂とした複合繊維からなる目付15g/m
2(シンワ社製)
これら基材高さを検証した評価結果を表2に示すが、表中、2つ折りした際に外側に配置された表面材を識別するため、
図1、
図2で示した符号を付記し、表面材13bが前述ループの外側に配置されていることを明確化している。
【0023】
【0024】
この表2に示すとおり、濾材のみでプリーツ線の回復力を評価した結果と、表面材で当該濾材を挟持構成した基材の結果とは同一の傾向を示し、比較例では何れの実施例基材よりも基材高さが低く、上記回復力に劣ることが確認された。
また、このような各基材でプリーツマスクを作製し、装着感を確認した。その結果、本発明を適用したプリーツマスクではプリーツ線が回復し易いため、表面材に屈曲痕が残ってもマスクの肌への刺激は軽減され、マスクとしての装着感が向上していた。
【符号の説明】
【0025】
11:濾材、13a,13b:表面材、15:基材、17:プリーツ線、19:両端部(第1のプリーツ押え線)、21a,21b:上下端部、23:本体部、25:鼻金、27:耳掛け紐、29:第2のプリーツ押え線、
31:濾材、33:基材、35:本体部、37:測定台、39:評価サンプル、41:ガラス板、
A:本体部の切り欠き部分、B:角部、h:濾材高さh。