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▶ 株式会社SCREENホールディングスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
H01L21/304 651L
H01L21/304 651M
H01L21/304 647A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018139166
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020017613
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 博史
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 学
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-016699(JP,A)
【文献】特開2018-046063(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169018(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質を含む乾燥前処理液を、水平に保持されている前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給工程と、
前記パターンの表面に吸着した前記吸着物質を含む吸着膜が形成される前に、鉛直な回転軸線まわりの前記基板の回転を開始し、水平に保持されている前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を鉛直な前記回転軸線まわりの前記基板の回転によって除去することにより、前記パターンの表面に吸着した前記吸着物質を含み、乾燥によりゲル状に変化した前記吸着膜を前記パターンの表面に沿って形成するスピンオフ工程、を含む液体除去工程と、
前記吸着膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する吸着膜除去工程とを含み、
前記吸着膜除去工程は、前記吸着膜を介して接する倒壊した2つの前記パターンの間から前記吸着膜を除去することにより、倒壊した前記パターンの形状を前記パターンの復元力で復元するパターン復元工程を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記吸着物質は、前記パターンの表面に化学的に吸着する物質である、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記吸着物質は、前記パターンの表面に物理的に吸着する物質である、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記乾燥前処理液供給工程は、前記吸着膜を形成する前に、前記基板の回転を停止させながら、もしくは、前記吸着膜を形成するときの前記基板の回転速度よりも小さい回転速度で前記基板を回転させながら、前記乾燥前処理液を前記パターンの表面に接触させる吸着促進工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記吸着膜の厚みは、前記パターンの高さよりも小さい、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記乾燥前処理液は、前記吸着物質と、前記吸着物質と溶け合う溶媒と、を含む溶液である、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記液体除去工程は、前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を前記基板の回転によって除去しているときに、前記基板の表面に向けて気体を吐出する気体供給工程をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記液体除去工程は、前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を前記基板の回転によって除去しているときに、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を加熱する液体加熱工程をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質を含む乾燥前処理液を、水平に保持されている前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給手段と、
前記パターンの表面に吸着した前記吸着物質を含む吸着膜が形成される前に、鉛直な回転軸線まわりの前記基板の回転を開始し、水平に保持されている前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を鉛直な前記回転軸線まわりの前記基板の回転によって除去することにより、前記パターンの表面に吸着した前記吸着物質を含み、乾燥によりゲル状に変化した前記吸着膜を前記パターンの表面に沿って形成するスピンオフ手段、を含む液体除去手段と、
前記吸着膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する吸着膜除去手段とを含み、
前記吸着膜除去手段は、前記吸着膜を介して接する倒壊した2つの前記パターンの間から前記吸着膜を除去することにより、倒壊した前記パターンの形状を前記パターンの復元力で復元するパターン復元手段を含む、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板に対して必要に応じた処理が行われる。このような処理には、薬液やリンス液などの処理液を基板に供給することが含まれる。処理液が供給された後は、処理液を基板から除去し、基板を乾燥させる。
基板の表面にパターンが形成されている場合、基板を乾燥させるときに、基板に付着している処理液の表面張力に起因する力がパターンに加わり、パターンが倒壊することがある。その対策として、IPA(イソプロピルアルコール)などの表面張力が低い液体を基板に供給したり、パターンに対する液体の接触角を90度に近づける疎水化剤を基板に供給したりする方法が採られる。しかしながら、IPAや疎水化剤を用いたとしても、パターンを倒壊させる倒壊力が零にはならないので、パターンの強度によっては、これらの対策を行ったとしても、十分にパターンの倒壊を防止できない場合がある。
【0003】
近年、パターンの倒壊を防止する技術として昇華乾燥が注目されている。たとえば特許文献1には、昇華乾燥を行う基板処理方法および基板処理装置が開示されている。特許文献1に記載の昇華乾燥では、昇華性物質の融液が基板の表面に供給され、基板上のDIWが昇華性物質の融液に置換される。その後、基板上の昇華性物質の融液が冷却され、昇華性物質の凝固体が形成される。その後、基板上の昇華性物質の凝固体を昇華させる。これにより、昇華性物質の融液が基板から除去され、基板が乾燥する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-142069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、隣り合う2つの凸状パターンの間だけでなく、パターンの上方にも昇華性物質の融液がある状態で、昇華性物質の融液を凝固させる。液体が極めて狭い空間に配置されると、凝固点降下が発生する。半導体ウエハなどの基板では、隣り合う2つのパターンの間隔が狭いので、パターンの間に位置する昇華性物質の凝固点が降下してしまう。したがって、パターンの間に位置する昇華性物質の凝固点は、パターンの上方に位置する昇華性物質の凝固点よりも低い。
【0006】
パターンの間に位置する昇華性物質の凝固点だけが低いと、昇華性物質の融液の表層、つまり、昇華性物質の上面(液面)からパターンの上面までの範囲に位置する液体層が先に凝固し、パターンの間に位置する昇華性物質の融液が凝固せずに液体のまま残る場合がある。この場合、固体(昇華性物質の凝固体)と液体(昇華性物質の融液)の界面がパターンの近傍に形成され、パターンを倒壊させる倒壊力が発生することがある。パターンの微細化によってパターンがさらに脆弱になると、このような弱い倒壊力でも、パターンが倒壊してしまう。
【0007】
また、パターンの間に位置する昇華性物質の融液が凝固していない状態でパターンが倒壊すると、隣り合う2つのパターンの先端部同士が互いに接触する場合がある。この場合、昇華性物質の凝固体を昇華させても、パターンの先端部同士が互いに接触した接着状態が維持され、パターンが垂直状態に戻らないことがある。したがって、昇華乾燥を行ったとしても、パターンの強度によっては、十分にパターンの倒壊を防止できない場合がある。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、昇華乾燥で基板を乾燥させたときに発生するパターンの倒壊を減らし、パターンの倒壊率を低下させることができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質を含む乾燥前処理液を、水平に保持されている前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給工程と、水平に保持されている前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を鉛直な回転軸線まわりの前記基板の回転によって除去することにより、前記パターンの表面に吸着した前記吸着物質を含む吸着膜を前記パターンの表面に沿って形成するスピンオフ工程、を含む液体除去工程と、前記吸着膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する吸着膜除去工程とを含む、基板処理方法を提供する。
【0010】
この構成によれば、吸着物質を含む乾燥前処理液を、水平に保持されている基板の表面に供給する。乾燥前処理液に含まれる吸着物質は、基板に形成されたパターンの表面に吸着する。そして、吸着物質がパターンの表面に吸着した状態で、基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させる。これにより、乾燥前処理液が遠心力で基板の表面から排出され、基板の表面上の乾燥前処理液が減少する。
【0011】
基板をある程度の回転速度で回転させると、殆どの乾燥前処理液が基板の表面から除去されるものの、パターンの表面に吸着した吸着物質は基板に残る。これにより、パターンの表面に吸着した吸着物質を含む吸着膜がパターンの表面に沿って形成される。つまり、隣り合う2つのパターンの間の空間が吸着膜で隙間なく埋められるのではなく、吸着膜の表面が空間を介してパターンの幅方向に互いに向かい合うようにパターンの表面が吸着膜でコーティングされる。
【0012】
その一方で、基板上の乾燥前処理液がある程度まで減ると、乾燥前処理液の上面(液面)が隣り合う2つの凸状パターンの間に移動する。つまり、気体と液体(乾燥前処理液)との界面がパターンの間に移動し、乾燥前処理液の表面張力に起因する倒壊力が吸着膜を介してパターンに加わる。このとき、隣り合う2つのパターンが互いに近づく方向に倒壊したとしても、パターンの表面の少なくとも一部が吸着膜でコーティングされているので、この2つのパターンは、直接的に接するのではなく、吸着膜を介して接する。
【0013】
吸着膜をパターンの表面に形成した後は、吸着膜を気体に変化させる。これにより、吸着膜が基板の表面から除去される。乾燥前処理液を除去するときに、隣り合う2つのパターンが互いに近づく方向に倒壊した場合は、この2つのパターンの間から吸着膜が除去される。パターンが塑性変形や破損していなければ、吸着膜を除去すると、倒壊したパターンは、パターンの復元力で垂直状態に戻る。言い換えると、吸着膜を除去するまでの間にパターンが倒壊しても、吸着膜を除去した後には、パターンが垂直状態に戻る。これにより、パターンの強度が高い場合だけでなく、パターンの強度が低い場合も、最終的なパターンの倒壊率を改善することができる。
【0014】
パターンは、単一の材料で形成された構造物であってもよいし、基板の厚み方向に積層された複数の層を含む構造物であってもよい。パターンの表面は、基板の厚み方向に直交する基板の平面に対して垂直または概ね垂直な側面と、基板の平面と平行または概ね平行な上面とを含む。吸着膜は、たとえば、パターンの表面と平行または概ね平行な表面を有する薄膜である。吸着膜がパターンの表面全域に形成される場合、吸着膜の表面は、パターンの上面と平行または概ね平行な上面と、パターンの側面と平行または概ね平行な側面とを含む。パターンの表面全域ではなく、パターンの表面の一部だけが、吸着膜に覆われてもよい。たとえば、パターンの側面の上端部とパターンの上面とを含むパターンの表面の上端部だけ、もしくは、パターンの上面だけが吸着膜に覆われてもよい。
【0015】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
前記吸着膜除去工程は、前記吸着膜を介して接する倒壊した2つの前記パターンの間から前記吸着膜を除去することにより、倒壊した前記パターンの形状を前記パターンの復元力で復元するパターン復元工程を含む
この構成によれば、前述のように、隣り合う2つのパターンが互いに近づく方向に倒壊したとしても、この2つのパターンは、直接的に接するのではなく、吸着膜を介して接する。したがって、パターンが塑性変形や破損していなければ、吸着膜を除去すると、倒壊したパターンが弾性回復力で回復する。これにより、パターンの強度が低い場合であっても、最終的なパターンの倒壊率を改善することができる。
【0016】
吸着膜を除去する前は、吸着膜の一部が倒壊した2つのパターンの間に介在する。吸着膜を除去した後に倒壊したパターンの形状が元に戻るのであれば、倒壊した2つのパターンの一部が、吸着膜を除去する前に直接的に接していてもよい。このような場合でも、吸着膜を除去すると、2つのパターンを倒壊状態に維持する接着力が弱まるので、パターンが塑性変形や破損していなければ、倒壊したパターンは、パターンの復元力で垂直状態に戻る。
【0017】
前記吸着物質は、前記パターンの表面に化学的に吸着する物質である
前記吸着物質は、前記パターンの表面に物理的に吸着する物質である
前記乾燥前処理液供給工程は、前記吸着膜を形成する前に、前記基板の回転を停止させながら、もしくは、前記吸着膜を形成するときの前記基板の回転速度よりも小さい回転速度で前記基板を回転させながら、前記乾燥前処理液を前記パターンの表面に接触させる吸着促進工程を含む
【0018】
この構成によれば、吸着膜を形成する前に、基板の回転を停止させながら、もしくは、基板の回転速度を小さい値(吸着促進速度)に維持しながら、乾燥前処理液をパターンの表面に接触させる。基板の回転速度が零または小さいので、乾燥前処理液とパターンの表面との界面における乾燥前処理液の流動が緩やかになり、パターンの表面に対する吸着物質の吸着が促進される。これにより、より多くの吸着物質をパターンの表面に吸着させることができる。
【0019】
前記吸着膜の厚みは、前記パターンの高さよりも小さい
この構成によれば、薄い吸着膜がパターンの表面に形成される。つまり、吸着膜の厚みは、パターンの高さよりも小さい。吸着膜が薄いので、吸着膜を短時間で除去でき、吸着膜の除去に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。吸着膜を加熱により除去する場合は、基板の加熱時間を短縮できるので、酸化等の基板の表面の変化を抑えることができる。さらに、吸着膜を気体に変化させたときに、残渣などの不要物が基板上に発生したとしても、吸着膜の体積が小さいので、不要物の発生量が少ない。したがって、不要物を短時間で除去できる。場合によって、不要物を除去しなくてもよい。
【0020】
前記乾燥前処理液は、前記吸着物質と、前記吸着物質と溶け合う溶媒と、を含む溶液である
この構成によれば、吸着物質と溶媒とが均一に溶け合った溶液である乾燥前処理液が基板に供給される。吸着物質の融液を基板に供給する場合、吸着物質の凝固点が室温以上であると、吸着物質を液体に維持するために吸着物質を加熱する必要がある。吸着物質を溶媒に溶かせば、吸着物質の凝固点が室温以上であったとしても、吸着物質と溶媒の混合により生じる凝固点降下により乾燥前処理液の凝固点を室温より低くできれば、乾燥前処理液を室温で液体に維持することができる。したがって、基板の処理に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。
【0021】
前記吸着物質の凝固点が室温以上である場合、前記乾燥前処理液の凝固点は、室温よりも低くてもよい。この場合、室温の前記乾燥前処理液を前記基板の表面に供給してもよい。前記溶媒は、単一物質であってもよいし、2つ以上の物質が溶け合った混合物質であってもよい。いずれの場合も、前記溶媒は、前記吸着物質よりも蒸気圧が高い高蒸気圧物質を含んでいてもよい。
【0022】
前記液体除去工程は、前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を前記基板の回転によって除去しているときに、前記基板の表面に向けて気体を吐出する気体供給工程をさらに含む
この構成によれば、基板の表面上の乾燥前処理液の一部を基板の回転によって除去しているときに、基板の表面に向けて気体を吐出する。基板上の乾燥前処理液は、気体の圧力で基板から排出される。それと同時に、基板上の乾燥前処理液の一部は、気体の供給によって蒸発する。これにより、不要な乾燥前処理液を速やかに基板の表面から除去できる。
【0023】
前記液体除去工程は、前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を前記基板の回転によって除去しているときに、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液を加熱する液体加熱工程をさらに含む
この構成によれば、基板の表面上の乾燥前処理液の一部を基板の回転によって除去しているときに、基板の表面上の乾燥前処理液を加熱する。これにより、乾燥前処理液の温度が上昇し、乾燥前処理液の蒸発が促進される。したがって、不要な乾燥前処理液を速やかに基板の表面から除去できる。
【0024】
前記液体加熱工程は、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液よりも高温の加熱ガスを前記基板の表面および裏面の少なくとも一方に向けて吐出する加熱ガス供給工程と、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液よりも高温の加熱液を前記基板の裏面に向けて吐出する加熱液供給工程と、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液よりも高温の加熱部材を、前記基板から離しながら前記基板の表面側または裏面側に配置する近接加熱工程と、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液よりも高温の加熱部材を前記基板の裏面に接触させる接触加熱工程と、前記基板の表面上の前記乾燥前処理液に光を照射する光照射工程と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。前記光照射工程は、前記基板の表面の全域に同時に光を照射する全体照射工程、または、前記基板の表面内の一部の領域を表す照射領域だけに光を照射しながら前記照射領域を前記基板の表面内で移動させる部分照射工程を含んでいてもよいし、前記全体照射工程および部分照射工程の両方を含んでいてもよい。
【0025】
前記吸着膜除去工程は、前記吸着膜を昇華させる昇華工程と、前記吸着膜の分解(たとえば熱分解や光分解)により前記吸着膜を固体または液体から気体に変化させる分解工程と、前記吸着膜の反応(たとえば酸化反応)により前記吸着膜を固体または液体から気体に変化させる反応工程と、前記吸着膜にプラズマを照射するプラズマ照射工程と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0026】
前記昇華工程は、前記基板を水平に保持しながら鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板回転工程と、不活性ガスや空気などの気体を前記吸着膜に吹き付ける気体供給工程と、前記吸着膜を加熱する加熱工程と、前記吸着膜に接する雰囲気の圧力を低下させる減圧工程と、前記吸着膜に光を照射する光照射工程と、前記吸着膜に超音波振動を与える超音波振動付与工程と、のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。前記分解工程は、前記加熱工程、光照射工程、および超音波振動付与工程の少なくとも一つを含んでいてもよい。前記反応工程は、オゾンガスなどの活性ガスを前記吸着膜に接触させることにより、前記吸着膜を酸化させる酸化工程を含んでいてもよい。
【0027】
本発明の他の実施形態は、基板に形成されたパターンの表面に吸着する吸着物質を含む乾燥前処理液を、水平に保持されている前記基板の表面に供給して、前記パターンの表面に前記吸着物質を吸着させる乾燥前処理液供給手段と、水平に保持されている前記基板の表面上の一部の前記乾燥前処理液を鉛直な回転軸線まわりの前記基板の回転によって除去することにより、前記パターンの表面に吸着した前記吸着物質を含む吸着膜を前記パターンの表面に沿って形成するスピンオフ手段、を含む液体除去手段と、前記吸着膜を気体に変化させることにより前記基板の表面から除去する吸着膜除去手段とを含む、基板処理装置を提供する。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置を上から見た模式図である。
図1B】基板処理装置を側方から見た模式図である。
図2】基板処理装置に備えられたウェット処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図3】基板処理装置に備えられたドライ処理ユニットの内部を水平に見た模式図である。
図4】制御装装置のハードウェアを示すブロック図である。
図5】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例について説明するための工程図である。
図6A図5に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図6B図5に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図6C図5に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図6D図5に示す処理が行われているときの基板の状態を示す模式図である。
図7A】本発明の第2実施形態に係るスピンチャック、遮断部材、およびホットプレートを水平に見た模式図である。
図7B】本発明の第2実施形態に係るスピンチャックおよびホットプレートを上から見た模式図である。
図8A】液体除去工程が行われているときのスピンチャック、遮断部材、およびホットプレートを水平に見た模式図である。
図8B】吸着膜除去工程が行われているときのスピンチャック、遮断部材、およびホットプレートを水平に見た模式図である。
図9】処理例1~処理例5について説明するための表である。
図10】基板上のHFEを乾燥前処理液で置換しているときの基板の状態を示す模式図である。
図11A】パターンの表面の上端部だけに接する吸着膜の断面を示す模式図である。
図11B図11Aに示すパターンが倒壊したときの吸着膜の状態を示す模式図である。
図12A】電磁波発生装置が基板の上面内の一部の領域だけに電磁波を照射している状態を示す模式図である。
図12B】電磁波発生装置が基板の上面の全域に同時に電磁波を照射している状態を示す模式図である。
図12C】活性ガス供給装置が活性ガスを基板に供給している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明において、基板処理装置1内の気圧は、特に断りがない限り、基板処理装置1が設置されるクリーンルーム内の気圧(たとえば1気圧またはその近傍の値)に維持されているものとする。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1を上から見た模式図である。図1Bは、基板処理装置1を側方から見た模式図である。
【0030】
図1Aに示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容するキャリアCを保持するロードポートLPと、ロードポートLP上のキャリアCから搬送された基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、ロードポートLP上のキャリアCと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを備えている。
【0031】
搬送ロボットは、ロードポートLP上のキャリアCに対して基板Wの搬入および搬出を行うインデクサロボットIRと、複数の処理ユニット2に対して基板Wの搬入および搬出を行うセンターロボットCRとを含む。インデクサロボットIRは、ロードポートLPとセンターロボットCRとの間で基板Wを搬送し、センターロボットCRは、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。センターロボットCRは、基板Wを支持するハンドH1を含み、インデクサロボットIRは、基板Wを支持するハンドH2を含む。
【0032】
複数の処理ユニット2は、平面視でセンターロボットCRのまわりに配置された複数のタワーTWを形成している。図1Aは、4つのタワーTWが形成されている例を示している。センターロボットCRは、いずれのタワーTWにもアクセス可能である。図1Bに示すように、各タワーTWは、上下に積層された複数(たとえば3つ)の処理ユニット2を含む。
【0033】
複数の処理ユニット2は、薬液やリンス液などの処理液で基板Wを処理するウェット処理ユニット2wと、処理液を供給せずに基板Wを処理するドライ処理ユニット2dとを含む。ウェット処理ユニット2wおよびドライ処理ユニット2dは、同じタワーTWに含まれていてもよいし、別々のタワーTWに含まれていてもよい。図1Aおよび図1Bは、各タワーTWの最も上の処理ユニット2がドライ処理ユニット2dであり、それ以外の処理ユニット2がウェット処理ユニット2wである例を示している。
【0034】
図2は、基板処理装置1に備えられたウェット処理ユニット2wの内部を水平に見た模式図である。
ウェット処理ユニット2wは、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で1枚の基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに回転させるスピンチャック10と、回転軸線A1まわりにスピンチャック10を取り囲む筒状の処理カップ21とを含む。
【0035】
チャンバー4は、基板Wが通過する搬入搬出口5bが設けられた箱型の隔壁5と、搬入搬出口5bを開閉するシャッター7とを含む。FFU6(ファン・フィルター・ユニット)は、隔壁5の上部に設けられた送風口5aの上に配置されている。FFU6は、クリーンエアー(フィルターによってろ過された空気)を送風口5aからチャンバー4内に常時供給する。チャンバー4内の気体は、処理カップ21の底部に接続された排気ダクト8を通じてチャンバー4から排出される。これにより、クリーンエアーのダウンフローがチャンバー4内に常時形成される。排気ダクト8に排出される排気の流量は、排気ダクト8内に配置された排気バルブ9の開度に応じて変更される。
【0036】
スピンチャック10は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン11と、スピンベース12の中央部から下方に延びるスピン軸13と、スピン軸13を回転させることによりスピンベース12および複数のチャックピン11を回転させるスピンモータ14とを含む。スピンチャック10は、複数のチャックピン11を基板Wの外周面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面12uに吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0037】
処理カップ21は、基板Wから外方に排出された処理液を受け止める複数のガード24と、複数のガード24によって下方に案内された処理液を受け止める複数のカップ23と、複数のガード24および複数のカップ23を取り囲む円筒状の外壁部材22とを含む。図2は、4つのガード24と3つのカップ23とが設けられており、最も外側のカップ23が上から3番目のガード24と一体である例を示している。
【0038】
ガード24は、スピンチャック10を取り囲む円筒部25と、円筒部25の上端部から回転軸線A1に向かって斜め上に延びる円環状の天井部26とを含む。複数の天井部26は、上下に重なっており、複数の円筒部25は、同心円状に配置されている。天井部26の円環状の上端は、平面視で基板Wおよびスピンベース12を取り囲むガード24の上端24uに相当する。複数のカップ23は、それぞれ、複数の円筒部25の下方に配置されている。カップ23は、ガード24によって下方に案内された処理液を受け止める環状の受液溝を形成している。
【0039】
ウェット処理ユニット2wは、複数のガード24を個別に昇降させるガード昇降ユニット27を含む。ガード昇降ユニット27は、上位置から下位置までの任意の位置にガード24を位置させる。図2は、2つのガード24が上位置に配置されており、残り2つのガード24が下位置に配置されている状態を示している。上位置は、ガード24の上端24uがスピンチャック10に保持されている基板Wが配置される保持位置よりも上方に配置される位置である。下位置は、ガード24の上端24uが保持位置よりも下方に配置される位置である。
【0040】
回転している基板Wに処理液を供給するときは、少なくとも一つのガード24が上位置に配置される。この状態で、処理液が基板Wに供給されると、処理液が遠心力で基板Wから振り切られる。振り切られた処理液は、基板Wに水平に対向するガード24の内面に衝突し、このガード24に対応するカップ23に案内される。これにより、基板Wから排出された処理液が処理カップ21に集められる。
【0041】
ウェット処理ユニット2wは、スピンチャック10に保持されている基板Wに向けて処理液を吐出する複数のノズルを含む。複数のノズルは、基板Wの上面に向けて薬液を吐出する薬液ノズル31と、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル35と、基板Wの上面に向けて乾燥前処理液を吐出する乾燥前処理液ノズル39と、基板Wの上面に向けて置換液を吐出する置換液ノズル43とを含む。
【0042】
薬液ノズル31は、チャンバー4内で水平に移動可能なスキャンノズルであってもよいし、チャンバー4の隔壁5に対して固定された固定ノズルであってもよい。リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43についても同様である。図2は、薬液ノズル31、リンス液ノズル35、乾燥前処理液ノズル39、および置換液ノズル43が、スキャンノズルであり、これら4つのノズルにそれぞれ対応する4つのノズル移動ユニットが設けられている例を示している。
【0043】
薬液ノズル31は、薬液ノズル31に薬液を案内する薬液配管32に接続されている。薬液配管32に介装された薬液バルブ33が開かれると、薬液が、薬液ノズル31の吐出口から下方に連続的に吐出される。薬液ノズル31から吐出される薬液は、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。
【0044】
図示はしないが、薬液バルブ33は、薬液が流れる内部流路と内部流路を取り囲む環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、薬液バルブ33を開閉させる。
【0045】
薬液ノズル31は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に薬液ノズル31を移動させるノズル移動ユニット34に接続されている。ノズル移動ユニット34は、薬液ノズル31から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する処理位置と、薬液ノズル31が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で薬液ノズル31を水平に移動させる。
【0046】
リンス液ノズル35は、リンス液ノズル35にリンス液を案内するリンス液配管36に接続されている。リンス液配管36に介装されたリンス液バルブ37が開かれると、リンス液が、リンス液ノズル35の吐出口から下方に連続的に吐出される。リンス液ノズル35から吐出されるリンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:DIW(Deionized Water))である。リンス液は、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0047】
リンス液ノズル35は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方にリンス液ノズル35を移動させるノズル移動ユニット38に接続されている。ノズル移動ユニット38は、リンス液ノズル35から吐出されたリンス液が基板Wの上面に着液する処理位置と、リンス液ノズル35が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間でリンス液ノズル35を水平に移動させる。
【0048】
乾燥前処理液ノズル39は、乾燥前処理液ノズル39に乾燥前処理液を案内する乾燥前処理液配管40に接続されている。乾燥前処理液配管40に介装された乾燥前処理液バルブ41が開かれると、乾燥前処理液が、乾燥前処理液ノズル39の吐出口から下方に連続的に吐出される。同様に、置換液ノズル43は、置換液ノズル43に置換液を案内する置換液配管44に接続されている。置換液配管44に介装された置換液バルブ45が開かれると、置換液が、置換液ノズル43の吐出口から下方に連続的に吐出される。
【0049】
乾燥前処理液は、パターンP1(図6A参照)の表面に吸着する吸着物質と、吸着物質と溶け合う溶解物質とを含む。乾燥前処理液は、吸着物質および溶解物質が均一に溶け合った溶液である。吸着物質は溶質に相当し、溶解物質は溶媒に相当する。乾燥前処理液は、吸着物質の融液であってもよい。
乾燥前処理液の凝固点(1気圧での凝固点。以下同様。)は、吸着物質の凝固点よりも低い。同様に、溶解物質の凝固点は、吸着物質の凝固点よりも低い。乾燥前処理液の凝固点は、室温(23℃またはその近傍の値)よりも低い。基板処理装置1は、室温に維持されたクリーンルーム内に配置されている。したがって、乾燥前処理液を加熱しなくても、乾燥前処理液を液体に維持できる。ただし、乾燥前処理液の凝固点は、室温以上であってもよく、溶解物質の凝固点は、吸着物質の凝固点より高くてもよい。
【0050】
溶解物質は、単一物質であってもよいし、2つ以上の物質が溶け合った混合物質であってもよい。溶解物質の蒸気圧は、吸着物質の蒸気圧よりも高い。したがって、溶解物質は、吸着物質よりも蒸発し易い。溶解物質の蒸気圧は、水の蒸気圧より高くてもよいし、水の蒸気圧以下であってもよい。また、溶解物質の蒸気圧は、吸着物質の蒸気圧以下であってもよい。
【0051】
吸着物質は、パターンP1の表面に化学的に吸着する物質であってもよい。つまり、吸着物質は、吸着物質とパターンP1の表面との化学反応によって、パターンP1の表面に吸着する物質であってもよい。もしくは、吸着物質は、パターンP1の表面に物理的に吸着する物質であってもよい。つまり、吸着物質は、吸着物質とパターンP1の表面との間に発生する電気的引力または分子間力によって、パターンP1の表面に吸着する物質であってもよい。
【0052】
吸着物質は、常温または常圧で液体を経ずに固体から気体に変化する昇華性物質であってもよいし、昇華性物質以外の物質であってもよい。たとえば、吸着物質は、ヨウ素化合物、塩素化合物、または臭化化合物であってもよい。ヨウ素化合物には、ジヨードメタン、ヨードメタン、および1-ヨードプロパンが含まれる。塩素化合物には、ジクロロメタンが含まれる。臭化化合物には、臭化アンモニウムが含まれる。吸着物質は、アクリル樹脂等の熱分解性ポリマーまたは無機化合物であってもよい。吸着物質は、親水基および疎水基の両方を含む両親媒性分子であってもよい。
【0053】
吸着物質と同様に、溶解物質は、昇華性物質であってもよいし、昇華性物質以外の物質であってもよい。乾燥前処理液に含まれる昇華性物質の種類は2つ以上であってもよい。つまり、吸着物質および溶解物質の両方が昇華性物質であり、吸着物質および溶解物質とは種類の異なる昇華性物質が乾燥前処理液に含まれていてもよい。
昇華性物質は、たとえば、2-メチル-2-プロパノール(別名:tert-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール)やシクロヘキサノールなどのアルコール類、フッ化炭化水素化合物、1,3,5-トリオキサン(別名:メタホルムアルデヒド)、しょうのう(別名:カンフル、カンファー)、ナフタレン、ヨウ素、およびシクロヘキサンのいずれかであってもよいし、これら以外の物質であってもよい。
【0054】
溶媒は、たとえば、純水、IPA、HFE(ハイドロフルオロエーテル)、アセトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル、1-エトキシ-2-プロパノール)、およびエチレングリコール、ハイドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon)からなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。もしくは、昇華性物質が溶媒であってもよい。IPAおよびHFEは、水よりも表面張力が低く、水よりも蒸気圧が高い物質である。
【0055】
以下では、溶媒に相当する溶解物質がIPAおよび純水の混合液であり、溶質に相当する吸着物質がヨウ素化合物または塩素化合物である例について説明する。乾燥前処理液に含まれるIPA(純度が99.9wt%以上のIPA)、純水、および吸着物質の質量パーセント濃度は、それぞれ、50wt%未満、50wt%未満、および1wt%未満である。ただし、各成分の濃度はこれに限られない。
【0056】
後述するように、置換液は、リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給され、乾燥前処理液は、置換液の液膜で覆われた基板Wの上面に供給される。置換液は、リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合う液体である。置換液は、たとえば、IPAである。IPAは、水およびフッ化炭化水素化合物の両方と溶け合う液体である。置換液は、IPAおよびHFEの混合液であってもよい。
【0057】
IPAおよびHFEの混合液を基板Wに供給する場合、第1有機溶剤としてのIPAを案内する第1溶剤配管と、第2有機溶剤としてのHFEを案内する第2溶剤配管とを、置換液配管44に接続すればよい。第1溶剤配管に介装された第1溶剤バルブおよび第2溶剤配管に介装された第2溶剤バルブの一方を開くと、IPAまたはHFEが置換液配管44に供給され、第1溶剤バルブおよび第2溶剤バルブの両方を開くと、IPAおよびHFEの混合液が置換液配管44に供給される。置換液ノズル43とは別のノズルにHFEを吐出させてもよい。
【0058】
リンス液の液膜で覆われた基板Wの上面に置換液が供給されると、基板W上の殆どのリンス液は、置換液によって押し流され、基板Wから排出される。残りの微量のリンス液は、置換液に溶け込み、置換液中に拡散する。拡散したリンス液は、置換液とともに基板Wから排出される。したがって、基板W上のリンス液を効率的に置換液に置換できる。同様の理由により、基板W上の置換液を効率的に乾燥前処理液に置換できる。これにより、基板W上の乾燥前処理液に含まれるリンス液を減らすことができる。
【0059】
乾燥前処理液ノズル39は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に乾燥前処理液ノズル39を移動させるノズル移動ユニット42に接続されている。ノズル移動ユニット42は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液が基板Wの上面に着液する処理位置と、乾燥前処理液ノズル39が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で乾燥前処理液ノズル39を水平に移動させる。
【0060】
同様に、置換液ノズル43は、鉛直方向および水平方向の少なくとも一方に置換液ノズル43を移動させるノズル移動ユニット46に接続されている。ノズル移動ユニット46は、置換液ノズル43から吐出された置換液が基板Wの上面に着液する処理位置と、置換液ノズル43が平面視で処理カップ21のまわりに位置する待機位置と、の間で置換液ノズル43を水平に移動させる。
【0061】
ウェット処理ユニット2wは、スピンチャック10の上方に配置された遮断部材51を含む。図2は、遮断部材51が円板状の遮断板である例を示している。遮断部材51は、スピンチャック10の上方に水平に配置された円板部52を含む。遮断部材51は、円板部52の中央部から上方に延びる筒状の支軸53によって水平に支持されている。円板部52の中心線は、基板Wの回転軸線A1上に配置されている。円板部52の下面は、遮断部材51の下面51Lに相当する。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面に対向する対向面である。遮断部材51の下面51Lは、基板Wの上面と平行であり、基板Wの直径以上の外径を有している。
【0062】
遮断部材51は、遮断部材51を鉛直に昇降させる遮断部材昇降ユニット54に接続されている。遮断部材昇降ユニット54は、上位置(図2に示す位置)から下位置までの任意の位置に遮断部材51を位置させる。下位置は、薬液ノズル31などのスキャンノズルが基板Wと遮断部材51との間に進入できない高さまで遮断部材51の下面51Lが基板Wの上面に近接する近接位置である。上位置は、スキャンノズルが遮断部材51と基板Wとの間に進入可能な高さまで遮断部材51が退避した離間位置である。
【0063】
複数のノズルは、遮断部材51の下面51Lの中央部で開口する上中央開口61を介して処理液や処理ガスなどの処理流体を下方に吐出する中心ノズル55を含む。中心ノズル55は、回転軸線A1に沿って上下に延びている。中心ノズル55は、遮断部材51の中央部を上下に貫通する貫通穴内に配置されている。遮断部材51の内周面は、径方向(回転軸線A1に直交する方向)に間隔を空けて中心ノズル55の外周面を取り囲んでいる。中心ノズル55は、遮断部材51とともに昇降する。処理液を吐出する中心ノズル55の吐出口は、遮断部材51の上中央開口61の上方に配置されている。
【0064】
中心ノズル55は、中心ノズル55に不活性ガスを案内する上気体配管56に接続されている。基板処理装置1は、中心ノズル55から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器59を備えていてもよい。上気体配管56に介装された上気体バルブ57が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ58の開度に対応する流量で、不活性ガスが、中心ノズル55の吐出口から下方に連続的に吐出される。中心ノズル55から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0065】
遮断部材51の内周面と中心ノズル55の外周面は、上下に延びる筒状の上気体流路62を形成している。上気体流路62は、不活性ガスを遮断部材51の上中央開口61に導く上気体配管63に接続されている。基板処理装置1は、遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する上温度調節器66を備えていてもよい。上気体配管63に介装された上気体バルブ64が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ65の開度に対応する流量で、不活性ガスが、遮断部材51の上中央開口61から下方に連続的に吐出される。遮断部材51の上中央開口61から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0066】
複数のノズルは、基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する下面ノズル71を含む。下面ノズル71は、スピンベース12の上面12uと基板Wの下面との間に配置されたノズル円板部と、ノズル円板部から下方に延びるノズル筒状部とを含む。下面ノズル71の吐出口は、ノズル円板部の上面中央部で開口している。基板Wがスピンチャック10に保持されているときは、下面ノズル71の吐出口が、基板Wの下面中央部に上下に対向する。
【0067】
下面ノズル71は、加熱流体の一例である温水(室温よりも高温の純水)を下面ノズル71に案内する加熱流体配管72に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、加熱流体配管72に介装された下ヒータ75によって加熱される。加熱流体配管72に介装された加熱流体バルブ73が開かれると、温水の流量を変更する流量調整バルブ74の開度に対応する流量で、温水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、温水が基板Wの下面に供給される。
【0068】
下面ノズル71は、さらに、冷却流体の一例である冷水(室温よりも低温の純水)を下面ノズル71に案内する冷却流体配管76に接続されている。下面ノズル71に供給される純水は、冷却流体配管76に介装されたクーラー79によって冷却される。冷却流体配管76に介装された冷却流体バルブ77が開かれると、冷水の流量を変更する流量調整バルブ78の開度に対応する流量で、冷水が、下面ノズル71の吐出口から上方に連続的に吐出される。これにより、冷水が基板Wの下面に供給される。
【0069】
下面ノズル71の外周面とスピンベース12の内周面は、上下に延びる筒状の下気体流路82を形成している。下気体流路82は、スピンベース12の上面12uの中央部で開口する下中央開口81を含む。下気体流路82は、不活性ガスをスピンベース12の下中央開口81に導く下気体配管83に接続されている。基板処理装置1は、スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスを加熱または冷却する下温度調節器86を備えていてもよい。下気体配管83に介装された下気体バルブ84が開かれると、不活性ガスの流量を変更する流量調整バルブ85の開度に対応する流量で、不活性ガスが、スピンベース12の下中央開口81から上方に連続的に吐出される。
【0070】
スピンベース12の下中央開口81から吐出される不活性ガスは、窒素ガスである。不活性ガスは、ヘリウムガスやアルゴンガスなどの窒素ガス以外のガスであってもよい。基板Wがスピンチャック10に保持されているときに、スピンベース12の下中央開口81が窒素ガスを吐出すると、窒素ガスは、基板Wの下面とスピンベース12の上面12uとの間をあらゆる方向に放射状に流れる。これにより、基板Wとスピンベース12との間の空間が窒素ガスで満たされる。
【0071】
図3は、基板処理装置1に備えられたドライ処理ユニット2dの内部を水平に見た模式図である。
ドライ処理ユニット2dは、内部空間を有する箱型のチャンバー4と、チャンバー4内で基板Wを加熱する加熱ユニット91とを含む。加熱ユニット91は、基板Wを水平に支持しながら加熱するホットプレート92と、ホットプレート92の上方で基板Wを水平に支持する複数のリフトピン97と、複数のリフトピン97を昇降させるリフト昇降ユニット98とを含む。
【0072】
ホットプレート92は、基板Wを加熱する加熱部材の一例である。ホットプレート92は、通電によりジュール熱を発生する発熱体93と、基板Wを水平に支持すると共に、発熱体93を収容するアウターケース94とを含む。発熱体93およびアウターケース94は、基板Wの下方に配置される。発熱体93は、発熱体93に電力を供給する配線(図示せず)に接続されている。発熱体93の温度は、制御装置3によって変更される。制御装置3が発熱体93を発熱させると、基板Wの全体が均一に加熱される。
【0073】
ホットプレート92のアウターケース94は、基板Wの下方に配置される円板状のベース部95と、ベース部95の上面から上方に突出する複数の半球状の突出部96とを含む。ベース部95の上面は、基板Wの下面と平行であり、基板Wの外径以上の外径を有している。複数の突出部96は、ベース部95の上面から上方に離れた位置で基板Wの下面に接触する。複数の突出部96は、基板Wが水平に支持されるように、ベース部95の上面内の複数の位置に配置されている。基板Wは、基板Wの下面がベース部95の上面から上方に離れた状態で水平に支持される。
【0074】
複数のリフトピン97は、ホットプレート92を貫通する複数の貫通穴にそれぞれ挿入されている。リフトピン97は、基板Wの下面に接触する半球状の上端部を含む。複数のリフトピン97の上端部は、同じ高さに配置されている。リフト昇降ユニット98は、複数のリフトピン97の上端部がホットプレート92よりも上方に位置する上位置(図3において二点鎖線で示す位置)と、複数のリフトピン97の上端部がホットプレート92の内部に退避した下位置(図3において実線で示す位置)との間で、複数のリフトピン97を鉛直方向に移動させる。
【0075】
図4は、制御装置3のハードウェアを示すブロック図である。
制御装置3は、コンピュータ本体3aと、コンピュータ本体3aに接続された周辺装置3dとを含む、コンピュータである。コンピュータ本体3aは、各種の命令を実行するCPU3b(central processing unit:中央処理装置)と、情報を記憶する主記憶装置3cとを含む。周辺装置3dは、プログラムP等の情報を記憶する補助記憶装置3eと、リムーバブルメディアMから情報を読み取る読取装置3fと、ホストコンピュータ等の他の装置と通信する通信装置3gとを含む。
【0076】
制御装置3は、入力装置および表示装置に接続されている。入力装置は、ユーザーやメンテナンス担当者などの操作者が基板処理装置1に情報を入力するときに操作される。情報は、表示装置の画面に表示される。入力装置は、キーボード、ポインティングデバイス、およびタッチパネルのいずれかであってもよいし、これら以外の装置であってもよい。入力装置および表示装置を兼ねるタッチパネルディスプレイが基板処理装置1に設けられていてもよい。
【0077】
CPU3bは、補助記憶装置3eに記憶されたプログラムPを実行する。補助記憶装置3e内のプログラムPは、制御装置3に予めインストールされたものであってもよいし、読取装置3fを通じてリムーバブルメディアMから補助記憶装置3eに送られたものであってもよいし、ホストコンピュータなどの外部装置から通信装置3gを通じて補助記憶装置3eに送られたものであってもよい。
【0078】
補助記憶装置3eおよびリムーバブルメディアMは、電力が供給されていなくても記憶を保持する不揮発性メモリーである。補助記憶装置3eは、たとえば、ハードディスクドライブ等の磁気記憶装置である。リムーバブルメディアMは、たとえば、コンパクトディスクなどの光ディスクまたはメモリーカードなどの半導体メモリーである。リムーバブルメディアMは、プログラムPが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体の一例である。リムーバブルメディアMは、一時的ではない有形の記録媒体である。
【0079】
補助記憶装置3eは、複数のレシピを記憶している。レシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順を規定する情報である。複数のレシピは、基板Wの処理内容、処理条件、および処理手順の少なくとも一つにおいて互いに異なる。制御装置3は、ホストコンピュータによって指定されたレシピにしたがって基板Wが処理されるように基板処理装置1を制御する。以下の各工程は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の各工程を実行するようにプログラムされている。
【0080】
次に、基板Wの処理の一例について説明する。
処理される基板Wは、たとえば、シリコンウエハなどの半導体ウエハである。基板Wの表面は、トランジスタやキャパシタ等のデバイスが形成されるデバイス形成面に相当する。基板Wは、パターン形成面である基板Wの表面にパターンP1(図6A参照)が形成された基板Wであってもよいし、基板Wの表面にパターンP1が形成されていない基板Wであってもよい。後者の場合、後述する薬液供給工程でパターンP1が形成されてもよい。
【0081】
図5は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例について説明するための工程図である。図6A図6Dは、図5に示す処理が行われているときの基板Wの状態を示す模式図である。以下では、図2図3、および図5を参照する。図6A図6Dについては適宜参照する。
基板処理装置1によって基板Wが処理されるときは、ウェット処理ユニット2w内に基板Wを搬入する搬入工程(図5のステップS1)が行われる。
【0082】
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、全てのガード24が下位置に位置しており、全てのスキャンノズルが待機位置に位置している状態で、センターロボットCR(図1A参照)が、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をウェット処理ユニット2w内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドH1上の基板Wを複数のチャックピン11の上に置く。その後、複数のチャックピン11が基板Wの外周面に押し付けられ、基板Wが把持される。センターロボットCRは、基板Wをスピンチャック10の上に置いた後、ハンドH1をウェット処理ユニット2wの内部から退避させる。
【0083】
次に、上気体バルブ64および下気体バルブ84が開かれ、遮断部材51の上中央開口61およびスピンベース12の下中央開口81が窒素ガスの吐出を開始する。これにより、基板Wと遮断部材51との間の空間が窒素ガスで満たされる。同様に、基板Wとスピンベース12との間の空間とが窒素ガスで満たされる。その一方で、ガード昇降ユニット27が少なくとも一つのガード24を下位置から上位置に上昇させる。その後、スピンモータ14が駆動され、基板Wの回転が開始される(図5のステップS2)。これにより、基板Wが液体供給速度で回転する。
【0084】
次に、薬液を基板Wの上面に供給し、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜を形成する薬液供給工程(図5のステップS3)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット34が薬液ノズル31を待機位置から処理位置に移動させる。その後、薬液バルブ33が開かれ、薬液ノズル31が薬液の吐出を開始する。薬液バルブ33が開かれてから所定時間が経過すると、薬液バルブ33が閉じられ、薬液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット34が薬液ノズル31を待機位置に移動させる。
【0085】
薬液ノズル31から吐出された薬液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が形成される。薬液ノズル31が薬液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット34は、基板Wの上面に対する薬液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。
【0086】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面に供給して、基板W上の薬液を洗い流すリンス液供給工程(図5のステップS4)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置から処理位置に移動させる。その後、リンス液バルブ37が開かれ、リンス液ノズル35がリンス液の吐出を開始する。純水の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。リンス液バルブ37が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ37が閉じられ、リンス液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット38がリンス液ノズル35を待機位置に移動させる。
【0087】
リンス液ノズル35から吐出された純水は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の薬液は、リンス液ノズル35から吐出された純水に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う純水の液膜が形成される。リンス液ノズル35が純水を吐出しているとき、ノズル移動ユニット38は、基板Wの上面に対する純水の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。
【0088】
次に、リンス液および乾燥前処理液の両方と溶け合う置換液を基板Wの上面に供給し、基板W上の純水を置換液に置換する置換液供給工程(図5のステップS5)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット46が置換液ノズル43を待機位置から処理位置に移動させる。その後、置換液バルブ45が開かれ、置換液ノズル43が置換液の吐出を開始する。置換液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。置換液バルブ45が開かれてから所定時間が経過すると、置換液バルブ45が閉じられ、置換液の吐出が停止される。その後、ノズル移動ユニット46が置換液ノズル43を待機位置に移動させる。
【0089】
置換液ノズル43から吐出された置換液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の純水は、置換液ノズル43から吐出された置換液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う置換液の液膜が形成される。置換液ノズル43が置換液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット46は、基板Wの上面に対する置換液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。
【0090】
次に、乾燥前処理液を基板Wの上面に供給して、乾燥前処理液の液膜を基板W上に形成する乾燥前処理液供給工程(図5のステップS6)が行われる。
具体的には、遮断部材51が上位置に位置しており、少なくとも一つのガード24が上位置に位置している状態で、ノズル移動ユニット42が乾燥前処理液ノズル39を待機位置から処理位置に移動させる。その後、乾燥前処理液バルブ41が開かれ、乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液の吐出を開始する。乾燥前処理液の吐出が開始される前に、ガード昇降ユニット27は、基板Wから排出された液体を受け止めるガード24を切り替えるために、少なくとも一つのガード24を鉛直に移動させてもよい。
【0091】
乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液は、液体供給速度で回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。基板W上の置換液は、乾燥前処理液ノズル39から吐出された乾燥前処理液に置換される。これにより、基板Wの上面全域を覆う乾燥前処理液の液膜が形成される。乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出しているとき、ノズル移動ユニット42は、基板Wの上面に対する乾燥前処理液の着液位置が中央部と外周部とを通るように着液位置を移動させてもよいし、着液位置を中央部で静止させてもよい。
【0092】
図6Aは、乾燥前処理液が供給された基板Wの断面の一例を示している。乾燥前処理液がパターンP1の表面を含む基板Wの上面(基板Wの表面)に接すると、乾燥前処理液に含まれる吸着物質が基板Wの上面に吸着する。同様の現象が基板Wの上面のあらゆる場所で起こり、乾燥前処理液に含まれる吸着物質が基板Wの上面の各部に吸着する。図6Aは、吸着物質の1つの分子が基板Wの上面の各部に吸着し、吸着物質の単分子膜が基板Wの上面に沿って形成された例を示している。この例では、基板Wの上面に吸着している乾燥前処理液と基板Wの上面に吸着していない乾燥前処理液との間に境界があるように描かれているが、実際にはこのような境界は存在しない。
【0093】
乾燥前処理液の液膜を形成した後は、基板Wの上面全域が乾燥前処理液の液膜で覆われた状態を維持しながら、基板Wの上面に対する吸着物質の吸着を促進させる吸着促進工程(図5のステップS7)が行われる。
具体的には、乾燥前処理液ノズル39が乾燥前処理液を吐出している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を低下させる。このとき、スピンモータ14は、基板Wの回転を停止させてもよいし、基板Wを液体供給速度よりも小さい吸着促進速度(たとえば、0を超える20rpm以下の速度)で回転させてもよい。基板Wの回転速度が低下した後、乾燥前処理液バルブ41が閉じられ、乾燥前処理液の吐出が停止される。さらに、ノズル移動ユニット42が乾燥前処理液ノズル39を待機位置に移動させ、遮断部材昇降ユニット54が遮断部材51を上位置から下位置に下降させる。
【0094】
基板Wの回転速度が低下すると、基板W上の乾燥前処理液に加わる遠心力が弱まり、基板Wから排出される乾燥前処理液の流量が減少する。さらに、基板W上の乾燥前処理液に加わる遠心力が小さいので、乾燥前処理液は、乾燥前処理液と基板Wとの間に働く力で基板Wの上面に留まる。そのため、乾燥前処理液の吐出が停止された後も、基板Wの上面全域が乾燥前処理液の液膜で覆われた状態が維持される。基板Wの回転速度が零または小さいので、乾燥前処理液とパターンP1との界面における乾燥前処理液の流動が緩やかになり、パターンP1の表面に対する吸着物質の吸着が促進される。
【0095】
次に、吸着物質を含む吸着膜101(図6B参照)を形成するために、基板Wを液体除去速度で回転させることにより、基板Wの上面上の一部の乾燥前処理液を除去する液体除去工程(図5のステップS8)が行われる。
具体的には、遮断部材51が下位置に位置しており、遮断部材51の上中央開口61が窒素ガスを吐出している状態で、スピンモータ14が基板Wの回転速度を吸着促進速度よりも大きい液体除去速度まで上昇させて、液体除去速度に維持する。液体除去速度は、液体供給速度と等しくてもよいし、異なっていてもよい。基板Wの回転速度が上昇すると、基板Wから排出される乾燥前処理液の流量が増加し、基板Wの上面上の乾燥前処理液が減少する。
【0096】
基板Wが液体除去速度で回転すると、殆どの乾燥前処理液は、基板Wの上面から除去される。しかしながら、パターンP1の表面に吸着した吸着物質は、吸着物質と基板Wとの間に働く力で基板Wに残る。パターンP1の表面を含む基板Wの上面に残った乾燥前処理液の表層は、乾燥により濃縮され、固体状の薄膜に変化する。これにより、図6Bに示すように、パターンP1の表面に吸着した吸着物質を含む吸着膜101がパターンP1の表面に沿って形成される。基板Wの上面に残った乾燥前処理液は、その表層だけが固体に変化してもよいし、その全体が固体に変化してもよい。もしくは、基板Wの上面に残った乾燥前処理液がゲル状に変化してもよい。
【0097】
吸着膜101は、最終的に基板Wから除去される犠牲膜に相当する。吸着膜101は、乾燥前処理液が固化した固化膜であってもよい。図6Bに示す例では、吸着膜101は、パターンP1の側面Psを覆う側面膜101sと、パターンP1の上面Puを覆う上面膜101uと、基板Wの底面(基板Wの平面Ws)を覆う底面膜101bとを含む。側面膜101sの上端部と上面膜101uとは、パターンP1の先端部を覆う先端膜を構成している。吸着膜101の厚みT1は、パターンP1の高さHpよりも小さい。吸着膜101の厚みT1は、パターンP1の幅Wpより小さくてもよいし、隣り合う2つのパターンP1の間隔G1より小さくてもよい。吸着膜101は、吸着物質の単分子膜であってもよい。この場合、吸着膜101の厚みT1は、数ナノメートルもしくは数オングストロームである。
【0098】
図6Bは、隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊した直後の状態を示している。基板W上の乾燥前処理液がある程度まで減ると、乾燥前処理液の上面(液面)が隣り合う2つの凸状パターンP1の間に移動する。つまり、気体と液体(乾燥前処理液)との界面がパターンP1の間に移動し、乾燥前処理液の表面張力に起因する倒壊力が吸着膜101を介してパターンP1に加わる。このとき、隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊したとしても、パターンP1の表面の少なくとも一部が吸着膜101でコーティングされているので、この2つのパターンP1は、直接的に接するのではなく、吸着膜101を介して接する。
【0099】
倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力(弾力)で基板Wの底面(基板Wの平面Ws)に対して垂直な垂直状態に戻ろうとする。その一方で、倒壊した2つのパターンP1の先端部をそれぞれ覆う2つの側面膜101sが互いに接触すると、2つの側面膜101sの間に接着力が発生する。この接着力がパターンP1の復元力より強い場合、倒壊したパターンP1は、垂直状態に戻らずに、基板Wの底面に対して傾いた倒壊状態に維持される。
【0100】
図6Cは、隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊した後にある程度の時間が経過したときの状態を示している。乾燥前処理液を基板Wから除去するとき、基板W上の一部の乾燥前処理液は、気化してあらゆる方向に流れる。倒壊した2つのパターンP1の根本付近で気化した乾燥前処理液は、この2つのパターンP1の先端部の間に介在する吸着膜101に付着する。そのため、図6Cにおいて破線の丸で示すように、倒壊した2つのパターンP1の先端部付近では、他の位置に比べて吸着膜101が厚くなる。
【0101】
なお、吸着物質を含む吸着膜101を形成するために、基板Wの上面上の一部の乾燥前処理液を基板Wの回転によって除去しているときに、基板Wの上面上の乾燥前処理液を加熱してもよい。たとえば、加熱流体バルブ73を開いて、下面ノズル71に温水を吐出させてもよいし、下温度調節器86によって加熱された窒素ガスをスピンベース12の下中央開口81に吐出させてもよい。基板Wの上面上の乾燥前処理液を加熱すれば、吸着膜101の形成に要する時間を短縮できる。
【0102】
吸着膜101が形成された後は、乾燥または実質的に乾燥した基板Wをウェット処理ユニット2wからドライ処理ユニット2dに搬送する搬送工程(図5のステップS10)が行われる。
具体的には、スピンモータ14が止まり、基板Wの回転が停止される(図5のステップS9)。さらに、遮断部材昇降ユニット54が遮断部材51を上位置まで上昇させ、ガード昇降ユニット27が全てのガード24を下位置まで下降させる。さらに、上気体バルブ64および下気体バルブ84が閉じられ、遮断部材51の上中央開口61とスピンベース12の下中央開口81とが窒素ガスの吐出を停止する。その後、センターロボットCRが、ハンドH1をウェット処理ユニット2w内に進入させる。センターロボットCRは、複数のチャックピン11が基板Wの把持を解除した後、スピンチャック10上の基板WをハンドH1で支持する。その後、センターロボットCRは、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をウェット処理ユニット2wの内部から退避させる。これにより、基板Wがウェット処理ユニット2wから搬出される。
【0103】
基板Wがウェット処理ユニット2wから搬出された後は、複数のリフトピン97が上位置に位置している状態で、センターロボットCRが、基板WをハンドH1で支持しながら、ハンドH1をドライ処理ユニット2d内に進入させる。そして、センターロボットCRは、基板Wの表面が上に向けられた状態でハンドH1上の基板Wを複数のリフトピン97の上に置く。その後、リフト昇降ユニット98が複数のリフトピン97を下位置まで下降させる。これにより、複数のリフトピン97上の基板Wがホットプレート92の上に置かれる。センターロボットCRは、基板Wを複数のリフトピン97の上に置いた後、ハンドH1をドライ処理ユニット2dの内部から退避させる。
【0104】
次に、基板W上の吸着膜101を気体に変化させて、基板Wの上面から除去する吸着膜除去工程(図5のステップS11)が行われる。
具体的には、ホットプレート92が基板Wを介して基板W上の吸着膜101を除去温度(たとえば、100℃よりも高い温度)で加熱する。吸着膜101に含まれる吸着物質が昇華性物質である場合、吸着膜101が除去温度で加熱されると、基板W上の吸着膜101は、液体を経ずに気体に変化する。吸着膜101に含まれる吸着物質が昇華性物質以外の物質である場合、吸着膜101が除去温度で加熱されると、基板W上の吸着膜101は、熱分解により気体に変化する。吸着膜101から発生した気体(吸着物質を含む気体)は、排気ダクト8を通じてドライ処理ユニット2dの内部から排出される。これにより、吸着膜101が基板Wの上面から除去される。
【0105】
乾燥前処理液を除去したときにパターンP1が倒壊したとしても、吸着膜101を除去すると、図6Dに示すように、倒壊した2つのパターンP1の先端部の間から吸着膜101がなくなる。これにより、2つのパターンP1を倒壊状態に維持する接着力が弱まる。パターンP1が塑性変形や破損していなければ、倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力(図6D中の黒色の矢印参照)で垂直状態に戻る。したがって、余剰の乾燥前処理液を除去したときにパターンP1が倒壊しても、吸着膜101を除去した後には、パターンP1が垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が低い場合であっても、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。
【0106】
吸着膜101を除去した後は、基板Wをドライ処理ユニット2dから搬出する搬出工程(図5のステップS12)が行われる。
具体的には、リフト昇降ユニット98が複数のリフトピン97を下位置から上位置まで上昇させる。これにより、ホットプレート92上の基板Wが複数のリフトピン97によって持ち上げられ、ホットプレート92から上方に離れる。その後、センターロボットCRが、ハンドH1をドライ処理ユニット2d内に進入させる。この状態で、リフト昇降ユニット98が複数のリフトピン97を下位置まで下降させる。これにより、複数のリフトピン97上の基板WがハンドH1の上に置かれる。センターロボットCRは、基板WがハンドH1の上に置かれた後、ハンドH1をドライ処理ユニット2dの内部から退避させる。これにより、処理済みの基板Wがドライ処理ユニット2dから搬出される。
【0107】
以上のように本実施形態では、吸着物質を含む乾燥前処理液を、水平に保持されている基板Wの表面に供給する。乾燥前処理液に含まれる吸着物質は、基板Wに形成されたパターンP1の表面に吸着する。そして、吸着物質がパターンP1の表面に吸着した状態で、基板Wを水平に保持しながら鉛直な回転軸線A1まわりに回転させる。これにより、乾燥前処理液が遠心力で基板Wの表面から排出され、基板Wの表面上の乾燥前処理液が減少する。
【0108】
基板Wをある程度の回転速度で回転させると、殆どの乾燥前処理液が基板Wの表面から除去されるものの、パターンP1の表面に吸着した吸着物質は基板Wに残る。これにより、パターンP1の表面に吸着した吸着物質を含む吸着膜101がパターンP1の表面に沿って形成される。つまり、隣り合う2つのパターンP1の間の空間が吸着膜101で隙間なく埋められるのではなく、吸着膜101の表面が空間を介してパターンP1の幅方向に互いに向かい合うようにパターンP1の表面が吸着膜101でコーティングされる。
【0109】
その一方で、基板W上の乾燥前処理液がある程度まで減ると、乾燥前処理液の上面(液面)が隣り合う2つの凸状パターンP1の間に移動する。つまり、気体と液体(乾燥前処理液)との界面がパターンP1の間に移動し、乾燥前処理液の表面張力に起因する倒壊力が吸着膜101を介してパターンP1に加わる。このとき、隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊したとしても、パターンP1の表面の少なくとも一部が吸着膜101でコーティングされているので、この2つのパターンP1は、直接的に接するのではなく、吸着膜101を介して接する。
【0110】
吸着膜101をパターンP1の表面に形成した後は、吸着膜101を気体に変化させる。これにより、吸着膜101が基板Wの表面から除去される。乾燥前処理液を除去するときに、隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊した場合は、この2つのパターンP1の間から吸着膜101が除去される。パターンP1が塑性変形や破損していなければ、吸着膜101を除去すると、倒壊したパターンP1は、パターンP1の復元力で垂直状態に戻る。言い換えると、吸着膜101を除去するまでの間にパターンP1が倒壊しても、吸着膜101を除去した後には、パターンP1が垂直状態に戻る。これにより、パターンP1の強度が高い場合だけでなく、パターンP1の強度が低い場合も、最終的なパターンP1の倒壊率を改善することができる。パターンP1が形成されたサンプルを用いて前述の基板Wの処理の一例と同様の処理を行ったところ、パターンP1の倒壊率が実際に改善されたことが確認された。
【0111】
本実施形態では、吸着膜101を形成する前に、基板Wの回転を停止させながら、もしくは、基板Wの回転速度を小さい値(吸着促進速度)に維持しながら、乾燥前処理液をパターンP1の表面に接触させる。基板Wの回転速度が零または小さいので、乾燥前処理液とパターンP1の表面との界面における乾燥前処理液の流動が緩やかになり、パターンP1の表面に対する吸着物質の吸着が促進される。これにより、より多くの吸着物質をパターンP1の表面に吸着させることができる。
【0112】
本実施形態では、薄い吸着膜101がパターンP1の表面に形成される。つまり、吸着膜101の厚みT1(図6B参照)は、パターンP1の高さHp(図6A参照)よりも小さい。吸着膜101が薄いので、吸着膜101を短時間で除去でき、吸着膜101の除去に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。吸着膜101を加熱により除去する場合は、基板Wの加熱時間を短縮できるので、酸化等の基板Wの表面の変化を抑えることができる。さらに、吸着膜101を気体に変化させたときに、残渣などの不要物が基板W上に発生したとしても、吸着膜101の体積が小さいので、不要物の発生量が少ない。したがって、不要物を短時間で除去できる。場合によって、不要物を除去しなくてもよい。
【0113】
本実施形態では、吸着物質と溶媒とが均一に溶け合った溶液である乾燥前処理液が基板Wに供給される。吸着物質の融液を基板Wに供給する場合、吸着物質の凝固点が室温以上であると、吸着物質を液体に維持するために吸着物質を加熱する必要がある。吸着物質を溶媒に溶かせば、吸着物質の凝固点が室温以上であったとしても、吸着物質と溶媒の混合により生じる凝固点降下により乾燥前処理液の凝固点を室温より低くできれば、乾燥前処理液を室温で液体に維持することができる。したがって、基板Wの処理に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。
【0114】
本実施形態では、基板Wの表面上の乾燥前処理液の一部を基板Wの回転によって除去しているときに、気体の一例である窒素ガスを基板Wの表面に向けて吐出する。基板W上の乾燥前処理液は、気体の圧力で基板Wから排出される。それと同時に、基板W上の乾燥前処理液の一部は、気体の供給によって蒸発する。これにより、不要な乾燥前処理液を速やかに基板Wの表面から除去できる。
【0115】
次に、第2実施形態について説明する。
第1実施形態に対する第2実施形態の主要な相違点は、内蔵ヒータ111が遮断部材51に内蔵されており、下面ノズル71の代わりにホットプレート92が設けられていることである。
図7Aは、本発明の第2実施形態に係るスピンチャック10、遮断部材51、およびホットプレート92を水平に見た模式図である。図7Bは、スピンチャック10およびホットプレート92を上から見た模式図である。図7A図7B図8A、および図8Bにおいて、前述の図1図6Dに示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0116】
図7Aに示すように、内蔵ヒータ111は、遮断部材51の円板部52の内部に配置されている。内蔵ヒータ111は、遮断部材51とともに昇降する。基板Wは、内蔵ヒータ111の下方に配置される。内蔵ヒータ111は、たとえば、通電によりジュール熱を発生する発熱体である。内蔵ヒータ111の温度は、制御装置3によって変更される。制御装置3が内蔵ヒータ111を発熱させると、基板Wの全体が均一に加熱される。
【0117】
ホットプレート92は、スピンベース12の上方に配置されている。図7Bに示すように、ホットプレート92の中心線は、基板Wの回転軸線A1上に配置されている。スピンチャック10が回転しても、ホットプレート92は回転しない。ホットプレート92の外径は、基板Wの直径よりも小さい。複数のチャックピン11は、ホットプレート92のまわりに配置されている。基板Wは、ホットプレート92の上方に配置される。
【0118】
図7Aに示すように、ホットプレート92は、ホットプレート92の中央部から下方に延びる支軸113によって水平に支持されている。ホットプレート92は、スピンベース12に対して上下に移動可能である。ホットプレート92は、支軸113を介してプレート昇降ユニット114に接続されている。プレート昇降ユニット114は、上位置(図7Aにおいて実線で示す位置)と下位置(図7Aにおいて二点鎖線で示す位置)との間でホットプレート92を鉛直に昇降させる。上位置は、ホットプレート92が基板Wの下面に接触する接触位置である。下位置は、ホットプレート92が基板Wから離れた状態で基板Wの下面とスピンベース12の上面12uとの間に配置される近接位置である。
【0119】
プレート昇降ユニット114は、上位置から下位置までの任意の位置にホットプレート92を位置させる。基板Wが複数のチャックピン11に支持されており、基板Wの把持が解除されている状態で、ホットプレート92が上位置まで上昇すると、ホットプレート92の複数の突出部96が基板Wに下面に接触し、基板Wがホットプレート92に支持される。その後、基板Wは、ホットプレート92によって持ち上げられ、複数のチャックピン11から上方に離れる。この状態で、ホットプレート92が下位置まで下降すると、ホットプレート92上の基板Wが複数のチャックピン11の上に置かれ、ホットプレート92が基板Wから下方に離れる。これにより、基板Wは、複数のチャックピン11とホットプレート92との間で受け渡される。
【0120】
図8Aは、液体除去工程が行われているときのスピンチャック10、遮断部材51、およびホットプレート92を水平に見た模式図である。
図8Aでは、遮断部材51およびホットプレート92がそれぞれの下位置に配置されている。制御装置3は、液体除去工程(図5のステップS8)において、基板Wの上面上の一部の乾燥前処理液を基板Wの回転によって除去しているときに、内蔵ヒータ111およびホットプレート92の少なくとも一方を発熱させて、基板Wの上面上の乾燥前処理液を加熱してもよい。基板Wの上面上の乾燥前処理液を加熱すれば、吸着膜101の形成に要する時間を短縮できる。
【0121】
図8Bは、吸着膜除去工程が行われているときのスピンチャック10、遮断部材51、およびホットプレート92を水平に見た模式図である。
図8Bでは、遮断部材51が下位置に配置されており、ホットプレート92が上位置に配置されている。ホットプレート92は、ホットプレート92が基板Wに接する上位置ではなく、ホットプレート92が基板Wから離れた下位置に配置されていてもよい。制御装置3は、吸着膜除去工程(図5のステップS11)において、内蔵ヒータ111およびホットプレート92の少なくとも一方を発熱させて、基板W上の吸着膜101を除去温度で加熱してもよい。この場合、基板W上の吸着膜101をウェット処理ユニット2w内で除去できる。さらに、内蔵ヒータ111およびホットプレート92の両方を発熱させれば、吸着膜101の除去に要する時間を短縮できる。
【0122】
なお、内蔵ヒータ111およびホットプレート92に基板W上の吸着膜101を加熱させるのではなく、室温よりも高温の加熱ガスを基板Wの上面に向けて吐出することにより、基板W上の吸着膜101を除去温度で加熱してもよい。たとえば、上温度調節器59(図2参照)によって加熱された窒素ガスを中心ノズル55に吐出させてもよいし、上温度調節器66(図2参照)によって加熱された窒素ガスを遮断部材51の上中央開口61に吐出させてもよい。
【0123】
基板Wの表面上の一部の乾燥前処理液を除去するときに、内蔵ヒータ111、ホットプレート92、および加熱ガスの少なくとも一つを用いて基板W上の乾燥前処理液を加熱すると、吸着膜101の形成と吸着膜101の除去とが同時に進行し得る。この場合、基板Wの表面上の一部の乾燥前処理液を除去した後ではなく、基板Wの表面上の一部の乾燥前処理液を除去しながら、吸着膜101を気体に変化させることができる。
【0124】
基板W上の吸着膜101をウェット処理ユニット2wの中で除去する場合、ドライ処理ユニット2dで除去する場合に比べて、パターンP1が倒壊状態に維持される倒壊持続時間が短縮する。倒壊持続時間が長いと、倒壊したパターンP1の形状が記憶され、形状を元に戻す弾性回復力が弱まる場合がある。ウェット処理ユニット2wで基板W上の吸着膜101を除去すれば、倒壊持続時間を短縮できるので、吸着膜101を除去した後も倒壊状態に維持されるパターンP1を減らすことができる。
【0125】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、吸着促進工程(図5のステップS7)を行わずに、液体除去工程(図5のステップS8)を行ってもよい。
【0126】
純水などの基板W上のリンス液を乾燥前処理液で置換できる場合は、図9の処理例1のように、リンス液の一例である純水を置換液の一例であるIPAで置換する置換液供給工程を行わずに、乾燥前処理液供給工程を行ってもよい。
図9の最上段には5つの工程が示されている。リンス液の一例である純水はDIWと表記されている。スピンオフは、基板Wの回転により一部の乾燥前処理液を除去することを意味している。図9中の丸印は、最上段に示された工程が実行されることを意味しており、図9中の空欄は、最上段に示された工程が実行されないことを意味している。図9の処理例2は、図5に示す基板Wの処理の一例に相当する。
【0127】
図9の処理例3に示すように、乾燥前処理液を供給する前にIPAを基板Wに供給するのではなく、スピンオフの後にIPAを基板Wに供給してもよい。図9の処理例4に示すように、乾燥前処理液を供給する前だけでなく、スピンオフの後も、IPAを基板Wに供給してもよい。スピンオフにより吸着膜101を形成したときに、残渣などの不要物が基板W上に発生する場合がある。このような場合でも、スピンオフの後にIPAを基板Wに供給すれば、基板W上の不要物をIPAで洗い流すことができる。
【0128】
また、図9の処理例5に示すように、IPAを供給した後にHFEを基板Wに供給し、その後、乾燥前処理液を基板Wに供給してもよい。つまり、置換液供給工程は、第1置換液の一例であるIPAを基板Wに供給する第1置換液供給工程と、第2置換液の一例であるHFEを基板Wに供給する第2置換液供給工程とを含んでいてもよい。図示はしないが、図9の処理例5において、スピンオフの後にIPAを基板Wに供給してもよい。
【0129】
第1実施形態では、乾燥前処理液に含まれる吸着物質の濃度が1wt%未満であり、乾燥前処理液の主成分がIPAおよび純水である例について説明した。図9の処理例5では、基板W上の純水がIPAで置換され、その後、基板W上のIPAがHFEで置換される。その後、基板W上のHFEが乾燥前処理液で置換される。HFEの密度は、水の密度よりも大きく、IPAの密度よりも大きい。
【0130】
HFEの密度が乾燥前処理液の密度よりも大きい場合、すなわち、HFEおよび乾燥前処理液の間に比重差がある場合、図10に示すように、HFEの表層だけが乾燥前処理液に置換され、HFEの底層が基板Wに残ることがある。この場合、パターンP1の先端部だけに吸着物質が吸着する。この状態で、スピンオフを実行すると、パターンP1の先端部だけに吸着膜101が形成される。この場合、パターンP1の表面全域を覆う吸着膜101を形成した場合に比べて吸着膜101の体積が小さいので、吸着膜101を短時間で除去でき、吸着膜101の除去に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。
【0131】
図9の処理例1~処理例5において、図9の最上段に示される少なくとも一つの工程と並行して基板Wを加熱してもよい。たとえば、図2に示す加熱流体バルブ73を開いて、下面ノズル71に温水を吐出させてもよい。もしくは、図7Aに示す遮断部材51の内蔵ヒータ111およびホットプレート92の少なくとも一方を発熱させてもよい。基板W上の液体を別の液体で置換するときに基板Wを加熱すれば、液体の置換効率を向上させることができる。
【0132】
図11Aに示されるような、パターンP1の上面Puだけに接する吸着膜101を形成してもよい。図11Aは、隣り合う2つのパターンP1の間の空間で、吸着膜101が下方に凹んでおり、パターンP1に接していない例を示している。このような吸着膜101は、たとえば、第1実施形態で用いられる乾燥前処理液よりも粘性が高い乾燥前処理液を基板Wに供給し、吸着促進工程(図5のステップS7)における基板Wの回転速度(吸着促進速度)を上昇させることで形成される。
【0133】
基板Wの上面にIPAがある状態で基板Wの下面側から基板Wを加熱すると、基板W上のIPAは基板Wを介して加熱される。IPAの沸点以上の温度でIPAを加熱すると、隣り合う2つのパターンP1の間に位置するIPAが蒸発し、隣り合う2つのパターンP1の間の空間の少なくとも一部がIPAの蒸気で満たされる。この状態で乾燥前処理液を基板Wに供給しても、乾燥前処理液に含まれる吸着物質は、パターンP1の上面Puを除くパターンP1の表面に吸着しない。これは、パターンP1の上面Puを除くパターンP1の表面がIPAの蒸気に接しているからである。これにより、パターンP1の上面Puだけに接する吸着膜101が形成される。
【0134】
なお、IPAの液体とIPAの蒸気との界面がパターンP1の上面Puに達していれば、たとえパターンP1の上面Puに吸着膜101が形成されても、パターンP1に対する吸着膜101の吸着強度は弱い。よって、吸着膜101に含まれる吸着物質が熱分解性ポリマーの場合、熱分解に要する除去温度を下げることができ、吸着膜101を短時間で除去できる。これにより、吸着膜101の除去に要するエネルギーの消費量を減らすことができる。
【0135】
図11Aに示されるような吸着膜101を形成した場合、パターンP1の表面のうち上端部だけが確実に吸着膜101に接触するので、パターンP1に生じる応力を小さくできる。つまり、隣り合う2つのパターンP1が互いに近づく方向に倒壊したとしても、図11Bに示すように、吸着膜101の一部が、この2つのパターンP1の間に挟まり、クッションの役割を果たす。したがって、パターンP1の表面が傷つくことを防止できる。
【0136】
図12Aまたは図12Bに示す電磁波発生装置115が、ホットプレート92に代えてもしくは加えて、ドライ処理ユニット2dに設けられてもよい。もしくは、図12Cに示す活性ガス供給装置116が、ホットプレート92に代えてもしくは加えて、ドライ処理ユニット2d(図3参照)に設けられてもよい。電磁波発生装置115および活性ガス供給装置116は、ドライ処理ユニット2dではなく、ウェット処理ユニット2wに設けられてもよい。
【0137】
図12Aおよび図12Bに示す電磁波発生装置115は、基板W上の吸着膜101に電磁波を照射することにより、吸着膜101を気体に変化させる。図12Cに示す活性ガス供給装置116は、オゾンガスやフッ化水素含有ガスなどの活性ガスを吸着膜101に接触させることにより、吸着膜101を気体に変化させる。ホットプレート92を用いて吸着膜101を気体に変化させたときに残渣などの不要物が基板Wに残る場合は、電磁波または活性ガスを用いて、この不要物を熱分解、酸化、または、灰化により除去してもよい。
【0138】
電磁波発生装置115が発する電磁波は、可視光線、赤外線、および紫外線のいずれかであってもよいし、これら以外であってもよい。つまり、電磁波発生装置115は、可視光線および赤外線を発するランプヒータであってもよいし、紫外線を発するUVランプであってもよい。また、電磁波発生装置115は、図12Aに示すように基板Wの上面内の一部の領域を表す照射領域だけに電磁波を照射する部分照射装置115Aであってもよいし、図12Bに示すように基板Wの上面の全域に同時に電磁波を照射する全体照射装置115Bであってもよい。前者の場合、照射領域が基板Wの上面内で移動するように部分照射装置115Aを移動させればよい。
【0139】
遮断部材51は、円板部52に加えて、円板部52の外周部から下方に延びる筒状部を含んでいてもよい。この場合、遮断部材51が下位置に配置されると、スピンチャック10に保持されている基板Wは、円筒部に取り囲まれる。
遮断部材51は、スピンチャック10とともに回転軸線A1まわりに回転してもよい。たとえば、遮断部材51が基板Wに接触しないようにスピンベース12上に置かれてもよい。この場合、遮断部材51がスピンベース12に連結されるので、遮断部材51は、スピンベース12と同じ方向に同じ速度で回転する。
【0140】
遮断部材51が省略されてもよい。ただし、基板Wの下面に純水などの液体を供給する場合は、遮断部材51が設けられることが好ましい。基板Wの外周面を伝って基板Wの下面から基板Wの上面の方に回り込んだ液滴や、処理カップ21から内方に跳ね返った液滴を遮断部材51で遮断でき、基板W上の乾燥前処理液に混入する液体を減らすことができるからである。
【0141】
ウェット処理ユニット2wおよびドライ処理ユニット2dは、同じ基板処理装置ではなく、別々の基板処理装置に設けられていてもよい。つまり、ウェット処理ユニット2wが備えられた基板処理装置1と、ドライ処理ユニット2dが備えられた基板処理装置とが、同じ基板処理システムに設けられており、吸着膜101を除去する前に、基板処理装置1から別の基板処理装置に基板Wを搬送してもよい。
【0142】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
乾燥前処理液ノズル39は、乾燥前処理液供給手段の一例である。スピンモータ14は、スピンオフ手段および液体除去手段の一例である。ホットプレート92および内蔵ヒータ111は、吸着膜除去手段の一例である。制御装置3は、吸着促進手段の一例である。中心ノズル55および遮断部材51の上中央開口61は、気体供給手段および液体除去手段の一例である。下面ノズル71およびスピンベース12の下中央開口81は、液体加熱手段および液体除去手段の一例である。
【符号の説明】
【0143】
1 :基板処理装置
2 :処理ユニット
3 :制御装置
10 :スピンチャック
14 :スピンモータ
39 :乾燥前処理液ノズル
55 :中心ノズル
59 :上温度調節器
61 :遮断部材の上中央開口
66 :上温度調節器
71 :下面ノズル
75 :下ヒータ
79 :クーラー
81 :スピンベースの下中央開口
86 :下温度調節器
92 :ホットプレート
101 :吸着膜
111 :内蔵ヒータ
A1 :回転軸線
Hp :パターンの高さ
P1 :パターン
Ps :パターンの側面
Pu :パターンの上面
T1 :吸着膜の厚み
W :基板
Wp :パターンの幅
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C