(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/00 20060101AFI20230221BHJP
B61D 29/00 20060101ALI20230221BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20230221BHJP
B61D 17/18 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B61D17/00 B
B61D29/00
B61D37/00 F
B61D17/18
(21)【出願番号】P 2018198523
(22)【出願日】2018-10-22
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】谷口 宏次
(72)【発明者】
【氏名】横川 浩大
(72)【発明者】
【氏名】松本 大
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴洋
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-018067(JP,U)
【文献】特開2007-137405(JP,A)
【文献】特開2013-189107(JP,A)
【文献】特開2012-013828(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0118626(KR,A)
【文献】特開2010-083213(JP,A)
【文献】特開2013-023020(JP,A)
【文献】特開平11-263221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
B61D 29/00
B61D 37/00
B61D 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上部の壁部との間にスペースを形成する内装カバーと、
前記スペースに配置された照明用光源及び車両用機器と、
前記壁部に設けられた荷棚と、を備え、
前記内装カバーは、前記壁部に対して開閉可能であり、
閉状態の前記内装カバーは、前記車両上部の壁部との間に前記照明用光源からの照明光を通す開口部を形成し、
開状態の前記内装カバーは、前記スペース内の前記車両用機器に対する点検口を形成
し、
前記内装カバーは、
当該内装カバーに締結されている部分と前記荷棚の基端部分に締結されている部分とによって構成されているヒンジを介して前記壁部に対して回動自在に取り付けられており、
前記ヒンジは、
前記開状態と前記閉状態との双方において、前記ヒンジの軸部が前記荷棚の基端部分に締結されている部分よりも下方に位置するように、前記スペース内のみに位置している、鉄道車両。
【請求項2】
前記内装カバーの先端部は、開状態において前記ヒンジよりも下方に位置する、請求項
1に記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記内装カバーは、前記壁部に対して着脱自在となっている、請求項
1又は
2に記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記ヒンジは、抜きヒンジである、請求項
3に記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記内装カバーは、線状又は帯状の吊部材によって車両上部の壁部に連結されて
おり、
前記吊部材の一端は、前記内装カバーのうち前記スペースを形成する面に固定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記照明用光源が配置される第1スペースと前記車両用機器が配置される第2スペースとを仕切る仕切部材をさらに備え、
前記吊部材の一端は、前記仕切部材に固定されている、請求項
5に記載の鉄道車両。
【請求項7】
開状態において前記内装カバーは、前記荷棚と当接し、
前記内装カバーにおける前記荷棚との当接部分には、エンボス加工が施されている、請求項1~
6のいずれか一項に記載の鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、側構体と内装パネルとの間のスペースを活用し、種々の設備が配置されている。例えば特許文献1に記載の鉄道車両構体では、屋根構体に対して固定されたヒンジを支点として開閉自在の蓋部が設けられており、蓋部を開いてアクセスできるスペースに車両の行先表示装置が配置されている。また、鉄道車両の車室内には、例えば特許文献2のように、車室内を照らす照明装置が配置されている場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-189107号公報
【文献】特開2006-103731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道車両の車室内装の美観を維持するためには、上述したような車両用の各種設備を少ない部品点数で施工する必要がある。また、美観の維持と共に機能性の確保も重要となる。
【0005】
本発明は、部品点数の増加を抑制しつつ、車室内装の美観の維持及び機能性の確保が図られる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る鉄道車両は、車両上部の壁部との間にスペースを形成する内装カバーと、スペースに配置された照明用光源及び車両用機器と、を備え、内装カバーは、壁部に対して開閉可能であり、閉状態の内装カバーは、車両上部の壁部との間に照明用光源からの照明光を通す開口部を形成し、開状態の内装カバーは、スペース内の車両用機器に対する点検口を形成する。
【0007】
この鉄道車両では閉状態の内装カバーは、車両上部の壁部との間に照明用光源からの照明光を通す開口部を形成し、開状態の内装カバーは、スペース内の車両用機器に対する点検口を形成する。すなわち、内装カバーは、点検口の蓋として機能しつつ、車室内の間接照明のカバーとしても機能する。このため、内装カバーと間接照明とを構成する部品点数の増加を抑制することができる。したがって、車室内装の美観の維持と共に機能性の確保を実現できる。
【0008】
内装カバーは、ヒンジを介して壁部に対して回動自在に取り付けられていてもよい。この場合、内装カバーがヒンジで支持されているため、簡易な構成で内装カバーの開閉を容易に行うことができる。
【0009】
内装カバーの先端部は、開状態においてヒンジよりも下方に位置してもよい。この場合、状態において、間接照明の点検を容易に行うことができると共に、点検口から車両用機器へ容易にアクセスすることができる。
【0010】
内装カバーは、壁部に対して着脱自在となっていてもよい。この場合、内装カバーを取り外すことで点検口から車両用機器へ容易にアクセスすることができる。
【0011】
ヒンジは、抜きヒンジであってもよい。この場合、内装カバーを取り外すことで点検口から車両用機器へ容易にアクセスすることができる。
【0012】
ヒンジは、上記スペース内に位置していてもよい。この場合、車室側からヒンジが見えないため、車室内装の美観を維持することができる。
【0013】
内装カバーは、線状又は帯状の吊部材によって車両上部の壁部に連結されていてもよい。この場合、内装カバーの落下を防止することができる。
【0014】
壁部に設けられた荷棚を更に備え、開状態において内装カバーは、荷棚と当接し、内装カバーにおける荷棚との当接部分には、エンボス加工が施されていてもよい。この場合、内装カバーに荷棚が当接することによるキズ及び凹みの発生を抑制できる。キズ及び凹みが発生したとしても、当該キズ及び凹みを目立ちにくくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品点数の増加を抑制しつつ、車室内装の美観の維持及び機能性の確保が図られる鉄道車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る鉄道車両の概略側面図である。
【
図7】
図6に示したヒンジ部分の部分拡大図である。
【
図8】
図6に示したヒンジ部分の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、鉄道車両の一例を示す概略側面図である。鉄道車両1は、台枠2と、一対の側構体3と、屋根構体4と、一対の妻構体5とを備えている。これらの各構体が相互に接合されることにより、鉄道車両1は、乗客を収容する空間を内部に有する箱型形状をなしている。
【0019】
台枠2は、車両の床部を構成する構造体として鉄道車両1の底部に配置されている。台枠2の下側には、鉄道車両1を支持する一対の台車(図示しない)が設置されている。側構体3及び妻構体5は、車両の側壁及び妻壁を構成する構体として、台枠2の左右の縁部及び前後の縁部を囲むように立設されている。
【0020】
側構体3には、鉄道車両1の長手方向において両端側に、乗客らが乗り降りするための複数のドア部6が設けられている。ドア部6,6間には、複数の窓部7が設けられている。ドア部6は、デッキスペース(図示しない)に通じている。デッキスペースは、後述する貫通部8及び車室12に通じている。
【0021】
妻構体5には、乗客らが車両間を行き来するための貫通部8が設けられている。屋根構体4は、車両の屋根部を構成する構体として鉄道車両の構体の上部に空間に蓋をするように配置されている。車両の屋根構体4には、上部に車内の温度を調整するためのエアコンディショナー及びパンタグラフ(図示しない)などが設置されている。
【0022】
次に、
図2を参照して、鉄道車両1の内部の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示した鉄道車両1を妻構体5に平行な面で切断した概略断面図である。
【0023】
鉄道車両1では、一対の側構体3、屋根構体4、及び一対の妻構体5が、鉄道車両1の内部の壁部9を形成している。鉄道車両1は、壁部9を覆う内装パネル10、並びに、内部において台枠2を覆う床構造11を有している。内装パネル10及び床構造11は、鉄道車両1の内部に車室12を形成している。内装パネル10は、車室12内の壁(天井、側壁、及び妻壁)を構成する。内装パネル10は、一対の腰パネル13、一対の側パネル14、一対の内妻仕切パネル15、一対の内妻仕切パネル16、一対の側天井パネル17、及び中央天井パネル18を含んでいる。一対の腰パネル13、一対の側パネル14、及び、一対の側天井パネル17の一部は、一対の側構体3を覆っている。一対の側天井パネル17の一部、及び中央天井パネル18は、屋根構体4を覆っている。
【0024】
一対の腰パネル13は、鉄道車両1の幅方向において互いに対向している。各腰パネル13は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において湾曲しており、側構体3に沿って、鉄道車両1の長手方向に延在している。各腰パネル13は、窓部7よりも下部に配置されており、後述する荷棚31の下方で車室12の側壁を構成する。各腰パネル13は、窓部7側から鉄道車両1の幅方向に延在するテーブル13aを形成している。各側パネル14は、鉄道車両1の幅方向において互いに対向しており、複数の窓部7の間及び窓部7よりも上部に配置されており、後述する荷棚31の下方で車室12の側壁を構成する。
【0025】
一対の内妻仕切パネル15,16は、鉄道車両1の前方と後方の双方において妻構体5と平行に配置されており、デッキスペースと車室12とを仕切っている。内妻仕切パネル15と内妻仕切パネル16は、鉄道車両1の幅方向に並んで配置されている。鉄道車両1の幅方向における幅は、内妻仕切パネル15よりも内妻仕切パネル16の方が大きい。内妻仕切パネル15と内妻仕切パネル16との間には、貫通部8に通じるドア部19が内妻仕切パネル15,16と平行に設けられている。一対の内妻仕切パネル15,16及びドア部19は、車室12の妻壁を構成する。
【0026】
一対の側天井パネル17は、鉄道車両1の幅方向において互いに対向している。各側天井パネル17は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において側構体3及び屋根構体4に沿って湾曲しており、側構体3及び屋根構体4に沿って鉄道車両1の長手方向に延在している。各側天井パネル17は、後述する荷棚31の上方で車室12の天井及び側壁を構成する。中央天井パネル18は、一対の側天井パネル17の間に配置されている。中央天井パネル18は、屋根構体4に沿って、鉄道車両1の長手方向に延在している。中央天井パネル18は、後述する荷棚31の上方で車室12の天井を構成する。
【0027】
鉄道車両1は、車室12の床に設けられた複数の座席20を有している。複数の座席20は例えば2つ又は3つの座席20を1セットとしており、複数のセットが車室12の側壁に沿って鉄道車両1の長手方向に配列されている。1セットの座席20は、車室12の側壁から鉄道車両1の幅方向に並んで配置されている。車室12の幅方向における一方側の1セットの座席20と、他方側の1セットの座席20との間には、通路が配置されている。鉄道車両1の長手方向から見た場合に、一方側の1セットの座席20は、内妻仕切パネル15と重なる位置に配置されており、他方側の1セットの座席20は、内妻仕切パネル16と重なる位置に配置されている。
【0028】
各座席20は、座部21と、背ズリ部22と、肘掛部23と、脚部24とを有している。各座席20において座部21及び背ズリ部22は、座席20に座った乗客が鉄道車両1の長手方向を向くように配置されている。1セットの座席20は、複数の肘掛部23を有している。複数の肘掛部23は、天井側から見て、車室12の側壁と座部21との間、2つの座部21の間、及び車室12の通路と座部21との間に配置されている。脚部24は、車室の床と座部21とを連結し、座部21を支持している。
【0029】
鉄道車両1は、車室12の上部に荷物収納部30を備えている。荷物収納部30は、複数の座席20よりも車室12の天井側に設けられている。荷物収納部30は、車室12の天井及び側壁を構成する側天井パネル17と、壁部9に設けられた荷棚31とを含んで構成されている。
【0030】
荷棚31は、車室12の側壁から鉄道車両1の幅方向に突出して、鉄道車両1の長手方向に延在している。荷棚31は、車室12の天井側に位置して荷物を載置する載置面32と、車室12の床側に位置する底面33とを有する。載置面32は、荷物のずれや落下を防止するため、例えば車室12の側壁側から中央側に向かって僅かに昇り傾斜となっている。荷棚31の高さ方向の幅は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において、側壁側から先端側に向かって徐々に狭まっている。
【0031】
荷棚31(載置面32)の先端部分31aには、例えばステンレス等によって形成された荷ずれ防止部材34が荷棚31の延在方向に沿って設けられている。荷ずれ防止部材34は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において、載置面32から屋根構体4側に起伏した山が僅かな間隔をもって2つ並んだ形状を有している。荷ずれ防止部材34は、載置面32に載置した荷物が荷棚31の先端部分31aからずれ落ちることを防止する。
【0032】
次に、鉄道車両1の荷物収納部30及びその周辺の構成について説明する。
【0033】
図3は、荷物収納部30及びその周辺を車室12側から見た図である。
図4は、荷物収納部30及びその周辺の妻構体5と平行な断面で切断した断面図である。側天井パネル17は、鉄道車両1の幅方向に平行かつ長手方向に垂直な断面において、側構体3及び屋根構体4に沿って湾曲している複数の内装カバー35を含んでいる。
【0034】
複数の内装カバー35は、鉄道車両1の長手方向において互いに隣接して配列されている。各内装カバー35は、壁部9に対して開閉可能である。具体的には、各内装カバー35は、鉄道車両1の長手方向において離間して設けられた2つのヒンジ36を介して、壁部9に対して回動自在に取り付けられている。すなわち、各内装カバー35は、ヒンジ36を支点として開閉自在である。
【0035】
複数の内装カバー35は、閉状態において、鉄道車両1の上部の壁部9との間にスペースS1,S2を形成する(
図4参照)。複数の内装カバー35は、側構体3及び屋根構体4との間にスペースS1を形成し、屋根構体4との間にスペースS2を形成している。各内装カバー35は、スペースS2を形成する部分に屋根構体4に平行な平面を有している。本実施形態では、当該平面と中央天井パネル18との間に、スペースS2が形成されている。
【0036】
スペースS1とスペースS2とは、屋根構体4に締結部材で締結された仕切板37によって仕切られている。仕切板37は、鉄道車両1の長手方向に延在している。締結部材には、ボルト及びナット、並びに、ビス等が用いられる。以下、「締結部材」は、ボルト及びナット又はビスを意味する。各内装カバー35は、閉状態において、不図示のラッチによって仕切板37に着脱可能に係合している。
【0037】
スペースS1には、種々の車両用機器50が配置されている。本実施形態では、スペースS1に、車両用機器50として、鉄道車両1の行き先等を外部に表示するための行先表示装置51と配線52と照明用光源54の一部とが配置されている。スペースS2には、車室12内を照らす照明用光源54の一部が配置されている。
【0038】
行先表示装置51は、本体部51aと、本体部51aから突出している行先表示部51bとを有する。本体部51aは、行先表示部51bに表示される情報を制御する部位である。本体部51aは、側構体3に締結部材で締結されており、側構体3に沿ってスペースS1内に配置されている。行先表示部51bは、側構体3を貫通して設けられており、
図1に示されているように鉄道車両1の外側に、行き先を表示する表示面が露出している。
【0039】
配線52は、屋根構体4に締結部材で締結された配線支持部53によって支持されている。配線支持部53は、屋根構体4に仕切板37を締結する締結部材と同じ締結部材で、屋根構体4に締結されている。配線52は、鉄道車両1の長手方向に延在し、各種電子機器に接続されている。
【0040】
照明用光源54は、仕切板37に締結されている。本実施形態では、
図3に示されているように、複数の照明用光源54が鉄道車両1の長手方向に並んで配置されている。照明用光源54は、仕切板37を貫通しており、スペースS1内に配置された電源部54aと、スペースS2内に配置された発光部54bとを有する。電源部54aは、発光部54bに電力を供給する部位である。発光部54bは、LEDであり、電源部54aから供給された電力によって発光する。
【0041】
各内装カバー35は、線状又は帯状の吊部材60によって鉄道車両1の上部の壁部に連結されている。吊部材60の一端は内装カバー35に固定されており、吊部材60の他端は仕切板37に固定されている。吊部材60の一端から他端までの長さを仕切板37から荷棚31の先端部分31aまでの最短距離よりも短くすることで、開状態において内装カバー35と荷棚31との当接が防止されるように構成されてもよい。
【0042】
図5は、
図4に示したヒンジ36及びその周辺の部分拡大図である。
図5に示されているように、ヒンジ36は、スペースS1内に位置している。ヒンジ36の軸部36aは、側構体3に沿って鉄道車両1の長手方向に延在している。閉状態において、内装カバー35は、中央天井パネル18(鉄道車両1の上部の壁部)との間に照明用光源54からの照明光を通す開口部αを形成している。すなわち、閉状態において、車室12とスペースS2とは開口部αで連通する。
【0043】
各内装カバー35は、発光部54bが乗客に直接的に視認されることを防止する目隠部55を有している。目隠部55は、閉状態において屋根構体4側に突出しており、鉄道車両1の長手方向に延在している。開口部αは、目隠部55と中央天井パネル18とによって形成されている。
【0044】
開状態において、各内装カバー35は、スペースS1内の車両用機器50に対する点検口βを形成している。閉状態において、各内装カバー35は、点検口βを塞ぎ、車室12とスペースS1とを仕切る。開状態において、車室12とスペースS1とは、点検口βで連通する。すなわち、開状態では、車室12から点検口βを通して車両用機器50にアクセス可能である。本実施形態では、開状態において、各内装カバー35の先端部35aは、ヒンジ36よりも下方に位置する。
【0045】
本実施形態では、開状態において、各内装カバー35は、荷棚31の先端部分31aに設けられた荷ずれ防止部材34と当接する。少なくとも、内装カバー35における荷棚31との当接部分には、エンボス加工が施されている。本実施形態では、各内装カバー35の車室12側に位置する面35bの全面にエンボス加工が施されている。エンボス形状は、矩形、円形、多角形等の種々の形状を採り得る。
【0046】
各内装カバー35は、壁部9に対して着脱自在となっている。本実施形態では、ヒンジ36は抜きヒンジであり、各内装カバーはヒンジ36を介して壁部9に対して回動自在かつ着脱自在に取り付けられている。少なくとも、行先表示装置51を覆う内装カバー35が、壁部9に対して着脱自在となっていればよい。
図6は、行先表示装置51を覆う内装カバー35が取り外された状態を示している。内装カバー35が取り外された場合、点検口βは、荷棚31の基端部分と仕切板37によって画成される。
【0047】
図7及び
図8は、抜きヒンジであるヒンジ36の構造を詳細に示している。
図7は、閉状態を示しており、
図8は内装カバー35を取り外した状態を示している。ヒンジ36は、内装カバー35に締結部材によって締結されている摺動部材39と、荷棚31の基端部分に締結部材によって締結されたガイド部材38とを含む。ガイド部材38は、ヒンジ36の軸部36aを有し、摺動部材39は、軸部36aが嵌合する軸受部36bを有する。ガイド部材38に軸受部36bが形成され、摺動部材39に軸部36aが形成されていてもよい。上述したように、軸部36aは、側構体3に沿って鉄道車両1の長手方向に延在している。軸受部36bが軸部36aから抜けることで、摺動部材39がガイド部材38から取り外される。
【0048】
ガイド部材38は、軸部36aに加えて、摺動部材39がガイド部材38から取り外される際に摺動部材39をガイドするガイド面38aを有する。
図5及び
図7に示されているように、ガイド面38aは、鉄道車両1の長手方向から見て軸部36aが嵌合されている軸受部36bを取り囲むように湾曲しており、軸部36aが延在している方向と平行に延在している。この構成により、摺動部材39の軸受部36bがガイド部材38の軸部36aから抜かれる際に、摺動部材39の軸受部36bの外面がガイド部材38のガイド面38aを摺動する。
【0049】
本実施形態では、ガイド部材38は、軸部36aを形成する部分と、ガイド面38aを形成する部分とが別体で構成されているが、これらは一体に構成されてもよい。軸部36aを形成する部分と、ガイド面38aを形成する部分とは、鉄道車両1の幅方向から見て、鉄道車両1の長手方向に並んで配置されている。軸部36aは、ガイド面38a側とは反対側で片持ち支持され、側構体3に沿って鉄道車両1の長手方向においてガイド面38a側に延在している。軸部36a及びガイド面38aは、ガイド部材38が荷棚31の基端部分に締結された部分から下方に延在した部分に配置されている。ガイド部材38は、ガイド面38aから側構体3側へ斜め上方に更に延在しており、途中で屈曲して屋根構体4側へ上方に延在している。
【0050】
摺動部材39は、閉状態において、内装カバー35に締結された部分から側構体3側へ斜め下方に延在し、途中で略直角に屈曲して軸部36a側へ斜め下方に延在し、先端に軸受部36bを形成している。このような構成により、摺動部材39と別部材との接触によって、内装カバー35の開閉及び軸受部36bのガイド面38aへの移動(方向Bへの移動)が阻害されることが防止されている。
【0051】
内装カバー35が閉状態から開状態に移行する際、摺動部材39は、車室12側方向(方向A)に移動する。閉状態では、内装カバー35が隣接する内装カバー35等と接触しているため、内装カバー35が鉄道車両1の長手方向(方向B)に移動できないようになっている。一方、開状態では、内装カバー35の方向Bへの移動は阻害されない。内装カバー35が方向Bへ移動することで、軸部36aに嵌合していた摺動部材39の軸受部36bがガイド面38aに沿って摺動する。この移動によって、軸受部36bが軸部36aから抜ける。その結果、軸部36aと軸受部36bとの係合が解除され、
図8に示されているように内装カバー35が取り外される。
【0052】
以上説明したように、鉄道車両1では、閉状態の内装カバー35は、車両上部の壁部9との間に照明用光源54からの照明光を通す開口部αを形成し、開状態の内装カバー35は、スペースS1内の車両用機器50に対する点検口βを形成する。すなわち、内装カバー35は、点検口βの蓋として機能しつつ、車室12内の間接照明のカバーとしても機能する。このため、内装カバー35と間接照明とを構成する部品点数の増加を抑制することができる。したがって、車室内装の美観の維持と共に機能性の確保を実現できる。
【0053】
内装カバー35は、ヒンジ36を介して壁部に対して回動自在に取り付けられていてもよい。この場合、内装カバー35がヒンジ36で支持されているため、簡易な構成で内装カバー35の開閉を容易に行うことができる。
【0054】
内装カバー35の先端部35aは、開状態においてヒンジ36よりも下方に位置してもよい。この場合、開状態において、間接照明の点検を容易に行うことができると共に、点検口βから車両用機器50へ容易にアクセスすることができる。
【0055】
内装カバー35は、壁部9に対して着脱自在となっていてもよい。この場合、内装カバー35を取り外すことで点検口βから車両用機器50へ容易にアクセスすることができる。
【0056】
ヒンジ36は、抜きヒンジであってもよい。この場合、内装カバー35を取り外すことで点検口βから車両用機器50へ容易にアクセスすることができる。
【0057】
ヒンジ36は、上記スペースS1内に位置していてもよい。この場合、車室12側からヒンジ36が見えないため、車室内装の美観を維持することができる。
【0058】
内装カバー35は、線状又は帯状の吊部材60によって車両上部の壁部9に連結されていてもよい。この場合、内装カバー35の落下を防止することができる。
【0059】
壁部9に設けられた荷棚を更に備え、開状態において内装カバー35は、荷棚31と当接し、内装カバー35における荷棚31との当接部分には、エンボス加工が施されていてもよい。この場合、内装カバー35に荷棚31が当接することによるキズ及び凹みの発生を抑制できる。キズ及び凹みが発生したとしても、当該キズ及び凹みを目立ちにくくすることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…鉄道車両、9…壁部、31…荷棚、35…内装カバー、36…ヒンジ、60…吊部材、50…車両用機器、54…照明用光源、α…開口部、β…点検口、S1,S2…スペース。