(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】長尺物検査装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20230221BHJP
【FI】
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2018218002
(22)【出願日】2018-11-21
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慶吾
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特公昭42-022506(JP,B1)
【文献】実開昭53-155682(JP,U)
【文献】特開2005-094935(JP,A)
【文献】特開2012-013509(JP,A)
【文献】特開平05-248509(JP,A)
【文献】特開昭56-020860(JP,A)
【文献】特開2004-081444(JP,A)
【文献】特開平07-244320(JP,A)
【文献】特開平09-318550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/00-1/26
19/00-37/16
49/00
57/00-57/12
H02G 1/00-1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺物に載置される車輪と、
前記車輪によって支持された筐体と、
前記長尺物の劣化に関する情報を取得するセンサと、前記長尺物と対向する位置で前記センサを保持する保持体と、を有するセンサユニットと、
一つのモータと、
前記モータの回転を前記センサユニットに伝達して前記センサユニットを前記長尺物の周りに回転させる第一伝達部、および前記モータの回転を前記車輪に伝達して前記車輪を回転させる第二伝達部を有する伝達機構と、
を備え
、
前記伝達機構は、伝達ギヤと、前記伝達ギヤを移動させるアクチュエータと、を含む切替機構を有し、
前記アクチュエータは、前記第一伝達部および前記第二伝達部の何れか一方と前記モータとを接続する位置、あるいは、前記第一伝達部および前記第二伝達部の両方と前記モータとを接続する位置に前記伝達ギヤを位置付ける
ことを特徴とする長尺物検査装置。
【請求項2】
前記第一伝達部は、前記センサユニットを所定の回転角度の範囲で往復回転させるリンク機構を含む
請求項1に記載の長尺物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動しながら電線を検査する装置がある。特許文献1には、複数本の金属素線を螺旋状に撚り合わせてなる送電線に沿って移動中に、この金属素線の損傷等の異常箇所を検出し撮影するための送電線異常箇所撮影装置であって、送電線をその内周面に通過させてこの送電線の長軸を中心として回動し、内周面及び外周面にそれぞれ内歯及び外歯が刻設される円筒歯車と、円筒歯車に取り付けられ、異常箇所を撮影する撮影手段とを備えた送電線異常箇所撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電線などの長尺物を検査するセンサを長尺物の周りに回転させる手段としてモータを用いることが考えられる。しかしながら、センサを回転させるためにモータを追加した場合、装置の大型化や重量の増加により消費電力の増加を招きやすい。
【0005】
本発明の目的は、消費電力を低減することが可能な長尺物検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の長尺物検査装置は、長尺物に載置される車輪と、前記車輪によって支持された筐体と、前記長尺物の劣化に関する情報を取得するセンサと、前記長尺物と対向する位置で前記センサを保持する保持体と、を有するセンサユニットと、一つのモータと、前記モータの回転を前記センサユニットに伝達して前記センサユニットを前記長尺物の周りに回転させる第一伝達部、および前記モータの回転を前記車輪に伝達して前記車輪を回転させる第二伝達部を有する伝達機構と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る長尺物検査装置は、長尺物に載置される車輪と、車輪によって支持された筐体と、長尺物の劣化に関する情報を取得するセンサと、長尺物と対向する位置でセンサを保持する保持体と、を有するセンサユニットと、一つのモータと、モータの回転をセンサユニットに伝達してセンサユニットを長尺物の周りに回転させる第一伝達部、およびモータの回転を車輪に伝達して車輪を回転させる第二伝達部を有する伝達機構と、を備える。本発明に係る長尺物検査装置によれば、一つのモータによってセンサユニットおよび車輪を回転させることで、消費電力を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電線検査装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る電線検査装置の正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る電線検査装置の内部の構成を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る電線検査装置の内部の構成を示す他の斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るセンサユニットの斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る伝達機構を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第二の位置にある伝達ギヤを示す断面図である。
【
図8】
図8は、第三の位置にある伝達ギヤを示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態のリンク機構を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態のリンク機構の動作を説明する斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態のリンク機構の動作を説明する他の斜視図である。
【
図12】
図12は、実施形態のリンク機構の動作を説明する更に他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る長尺物検査装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図12を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、長尺物検査装置として電線検査装置に関する。
図1は、実施形態に係る電線検査装置の斜視図、
図2は、実施形態に係る電線検査装置の正面図、
図3は、実施形態に係る電線検査装置の内部の構成を示す斜視図、
図4は、実施形態に係る電線検査装置の内部の構成を示す他の斜視図、
図5は、実施形態に係るセンサユニットの斜視図、
図6は、実施形態に係る伝達機構を示す断面図、
図7は、第二の位置にある伝達ギヤを示す断面図、
図8は、第三の位置にある伝達ギヤを示す断面図、
図9は、実施形態のリンク機構を示す斜視図、
図10は、実施形態のリンク機構の動作を説明する斜視図、
図11は、実施形態のリンク機構の動作を説明する他の斜視図、
図12は、実施形態のリンク機構の動作を説明する更に他の斜視図である。
【0011】
図1から
図4に示すように、本実施形態に係る電線検査装置1は、筐体2と、車輪3と、センサユニット4と、モータ5と、伝達機構6と、を有する。電線検査装置1は、検査対象の長尺物である電線100に跨がるようにして電線100に対して設置される。電線検査装置1は、電線100の軸方向に沿って電線100に対して相対移動しながら、電線100を検査する。
【0012】
本明細書の説明において、電線100の軸方向を単に「軸方向X」と称する。本実施形態の電線100は、架空された架空電線である。軸方向Xと直交する断面における筐体2の幅方向を「幅方向Y」と称する。幅方向Yは、例えば、水平方向である。軸方向Xおよび幅方向Yの何れとも直交する方向を「上下方向Z」と称する。上下方向Zは、例えば、鉛直方向である。
【0013】
本実施形態の筐体2の形状は、略直方体形状である。筐体2の長手方向は、軸方向Xである。筐体2は、底壁20、第一側壁21A、上側第二側壁21B、下側第二側壁21C、頂壁22、前壁23A、後壁23B、第一支持壁24A、および第二支持壁24Bを有する。底壁20、第一側壁21A、上側第二側壁21B、下側第二側壁21C、頂壁22、前壁23A、および後壁23Bによって筐体2の外壁が構成されている。
【0014】
底壁20と頂壁22とは上下方向Zにおいて互いに対向している。第一側壁21Aと、上側第二側壁21Bおよび下側第二側壁21Cとは幅方向Yにおいて互いに対向している。上側第二側壁21Bと下側第二側壁21Cとは高さ方向Zにおいて離間している。上側第二側壁21Bと下側第二側壁21Cとの間には、電線100が通過可能な隙間21dが設けられている。前壁23Aと後壁23Bとは軸方向Xにおいて互いに対向している。
【0015】
第一支持壁24Aおよび第二支持壁24Bは、それぞれ軸方向Xと直交する壁部であり、センサユニット4を回転自在に支持している。第一支持壁24Aは、第二支持壁24Bよりも前壁23Aに近い側に配置されている。前壁23A、第一支持壁24A、第二支持壁24B、および後壁23Bには、電線100が通過可能な切り欠き23c,24c,24d,23dが形成されている。切り欠き23c,24d,23dは、隙間21dとつながっている。電線100は、隙間21dを通され、
図1等に示す測定位置まで切り欠き23c,24c,24d,23dによってガイドされて移動する。このように、本実施形態の電線検査装置1は、電線100を切断することなく電線100に対して設置可能である。
【0016】
図3および
図4に示すように、筐体2は、車輪3を介して電線100によって支持される。本実施形態の車輪3は、第一車輪3Aおよび第二車輪3Bを有する。第一車輪3Aは、前壁23Aと第一支持壁24Aとの間に配置されており、第二車輪3Bは、後壁23Bと第二支持壁24Bとの間に配置されている。第一車輪3Aおよび第二車輪3Bは、それぞれ回転体31を有する(
図2参照)。回転体31は、電線100に載置され、電線100によって支持される。回転体31は、円筒形状に形成されており、両端にフランジ状のガイド32が設けられている。
図3等に示すように、第一車輪3Aおよび第二車輪3Bの回転体31は、台部33によって回転自在に支持されている。台部33は、頂壁22に対して固定されており、車輪3の軸方向を幅方向Yと一致させるように車輪3を支持している。
【0017】
図5に示すように、センサユニット4は、センサ40と、センサ40を保持する保持体45とを有する。センサ40は、電線100の劣化に関する情報を取得する。センサ40は、例えば、電線100の絶縁被覆の劣化を検出する。センサ40としては、例えば、電線100の周りの磁界を検出するセンサや、電線100を撮像するカメラが用いられる。センサ40によって取得された情報は、例えば、筐体2の内部に配置された記憶媒体に記憶される。
【0018】
保持体45は、第一フランジ部41A、第二フランジ部41B、および連結壁部42を有する。本実施形態の保持体45は、三つの連結壁部42を有する。第一フランジ部41Aおよび第二フランジ部41Bは、円盤形状の部材である。第一フランジ部41Aと第二フランジ部41Bとは軸方向Xにおいて互いに対向している。連結壁部42は、軸方向Xに沿って延在しており、第一フランジ部41Aと第二フランジ部41Bとを連結している。三つの連結壁部42は、周方向に沿って等間隔で配置されている。各連結壁部42は、センサ40を保持している。電線100に対して電線検査装置1が設置された状態において、各センサ40は電線100の外周面と対向する。
【0019】
第一フランジ部41Aおよび第二フランジ部41Bは、それぞれ四つの軸受43を保持している。軸受43は、支持軸43aおよび回転体43bを有する。第一フランジ部41Aおよび第二フランジ部41Bは、支持軸43aを保持している。つまり、第一フランジ部41Aおよび第二フランジ部41Bは、回転体43bを回転自在に軸支している。支持軸43aと回転体43bとの間には、転動体が介在していてもよい。支持軸43aは、第一フランジ部41Aおよび第二フランジ部41Bからセンサ40とは反対側に向けて突出している。第一フランジ部41Aおよび第二フランジ部41Bにおいて、四つの軸受43は周方向に沿って等間隔で配置されている。
【0020】
第一フランジ部41Aは、切り欠き41cを有し、第二フランジ部41Bは、切り欠き41dを有する。切り欠き41c,41dは、軸方向Xにおいて互いに対向している。切り欠き41c,41dは、フランジ部41A,41Bの外縁部からフランジ部41A,41Bの中心部まで延在している。切り欠き41c,41dは、フランジ部41A,41Bの外縁部において円弧状に湾曲している。また、切り欠き41c,41dは、隣接する二つの軸受43の間を延在している。また、切り欠き41c,41dは、隣接する二つの連結壁42の間を延在している。
【0021】
電線100は、切り欠き41c,41dに沿って測定時の位置まで案内される。ここで、測定時の位置は、
図3等に示すように、第一フランジ部41Aおよび第二フランジ部41Bの中心軸線の位置である。電線100が測定時の位置にある場合、複数のセンサ40および複数の軸受43が電線100の周りに周方向に沿って位置することになる。
【0022】
第一フランジ部41Aには、ピン44が固定されている。ピン44には、後述する第二リンク64が回転自在に連結される。ピン44は、第一フランジ部41Aからセンサ40側に向けて突出している。本実施形態のピン44は、切り欠き41cに隣接して配置されている。
【0023】
図3に示すように、第一支持壁24Aは、軸受43を転動させる軌道24eを有する。軌道24eは、切り欠き24cを囲むように形成されている。軌道24eは、第一仕切り壁24Aの一部を軸方向Xに向けて円弧形状に凹ませて形成されている。より具体的な構成を説明すると、第一仕切り壁24Aには、軸方向視した場合の形状が円弧形状の溝部24fが形成されている。溝部24fの断面形状は、矩形である。軌道24eは、溝部24fにおける半径方向外側の壁面である。第一フランジ部41Aに配置された軸受43の回転体43bは、軌道24eに接しており、軌道24e上を転動する。
【0024】
第二支持壁24Bは、軸受43を転動させる軌道24gを有する。軌道24gは、切り欠き24dを囲むように形成されている。軌道24gは、第二仕切り壁24Bの一部を軸方向Xに向けて円弧形状に凹ませて形成されている。より具体的な構成を説明すると、第二仕切り壁24Bには、軸方向視した場合の形状が円弧形状の溝部24hが形成されている。溝部24hの断面形状は、矩形である。軌道24gは、溝部24hにおける半径方向外側の壁面である。第二フランジ部41Bに配置された軸受43の回転体43bは、軌道24gに接しており、軌道24g上を転動する。
【0025】
このように、センサユニット4は、軸受43を介して軌道24e,24gによって支持されており、電線100および筐体2に対して相対回転自在である。
【0026】
図3および
図4に示すように、モータ5および伝達機構6は、前壁23Aに隣接して配置されている。モータ5には、筐体2の内部に配置されたバッテリ等の電源から電力が供給される。底壁20には、モータ5および伝達機構6を支持する支持部25が設けられている。支持部25は、底壁20から頂壁22に向けて立設された複数の壁部によって、モータ5等を収容する収容空間を形成している。モータ5は、回転軸を幅方向Yと一致させるように支持部25によって支持されている。
【0027】
図6に示すように、伝達機構6は、第一伝達部6A、第二伝達部6B、および切替機構6Cを有する。第一伝達部6Aは、モータ5の回転をセンサユニット4に伝達してセンサユニット4を電線100の周りに回転させる。第一伝達部6Aは、入力ギヤ60、第一中間ギヤ61A、第二中間ギヤ61B、最終ギヤ62、第一リンク63、および第二リンク64を有する。入力ギヤ60、第一中間ギヤ61A、第二中間ギヤ61B、および最終ギヤ62は、支持部25によって回転自在に支持されている。
【0028】
入力ギヤ60は、モータ5の回転軸52と同軸上に配置されている。入力ギヤ60は、第一ギヤ60aおよび第二ギヤ60bを有する。第一ギヤ60aは、モータ5の回転軸52に配置された出力ギヤ51と幅方向Yにおいて対向している。本実施形態の第一ギヤ60aは、出力ギヤ51と同じ径を有し、かつ同じ数のギヤ歯を有している。本実施形態の出力ギヤ51および第一ギヤ60aは、平歯車である。第二ギヤ60bは、傘歯車である。
【0029】
第一中間ギヤ61Aは、第一ギヤ61cおよび第二ギヤ61dを有する。第一ギヤ61cは傘歯車であり、入力ギヤ60の第二ギヤ60bと噛み合っている。第二ギヤ61dは、平歯車である。
【0030】
第二中間ギヤ61Bは、第一ギヤ61eおよび第二ギヤ61fを有する。第一ギヤ61eおよび第二ギヤ61fは、何れも平歯車であり、かつ第一ギヤ61eが第二ギヤ61fよりも大径である。第一ギヤ61eは、第一中間ギヤ61Aの第二ギヤ61dと噛み合っている。
【0031】
最終ギヤ62は、平歯車であり、第二中間ギヤ61Bの第二ギヤ61fと噛み合っている。最終ギヤ62の回転軸62aは、軸方向Xに沿って延在している。また、最終ギヤ62の回転軸62aの一端は、支持部25の外部に突出している。
【0032】
第一リンク63および第二リンク64は、それぞれ細長い板状の部材である。
図4に示すように、第一リンク63は直線状の部材であり、第二リンク64は中間部において屈曲したV字形状の部材である。
図6に示すように、第一リンク63の基端63aは、最終ギヤ62の回転軸62aに対して固定されている。つまり、第一リンク63は、回転軸62aと一体となって回転する。
【0033】
第二リンク64の基端64aは、ピン68Aを介して第一リンク63の先端63aと連結されている。ピン68Aは、第一リンク63と第二リンク64とを相対回転自在に連結している。つまり、第二リンク64は、ピン68Aを回転中心として、第一リンク63に対して相対回転自在である。
図4に示すように、第二リンク64の先端64aは、第一フランジ部41Aのピン44に対して連結されている。ピン44は、第一フランジ部41Aと第二リンク64とを相対回転自在に連結している。つまり、第二リンク64は、ピン44を回転中心として、第一フランジ部41Aに対して相対回転自在である。第二リンク64は、センサユニット4の連結壁部42や電線100との干渉が生じないように中間部において屈曲している。
【0034】
図6に示すように、第二伝達部6Bは、入力ギヤ66およびベルト67を有する。入力ギヤ66は、支持部25によって回転自在に支持されている。幅方向Yにおいて、入力ギヤ66は、出力ギヤ51に対して入力ギヤ60とは反対側に位置している。つまり、二つの入力ギヤ60,66は、出力ギヤ51に対して幅方向Yの互いに異なる側に位置している。
【0035】
入力ギヤ66は、ギヤ66aおよびプーリー66bを有する。ギヤ66aは、平歯車であり、モータ5の出力ギヤ51と平行に配置されている。入力ギヤ66の回転軸の方向は、幅方向Yである。プーリー66bは、歯付プーリーであり、ベルト67を回転駆動する。ベルト67は、無端の歯付ベルトである。
図4に示すように、ベルト67は、入力ギヤ66および第一車輪3Aに掛け回されている。ベルト67は、入力ギヤ66の回転を第一車輪3Aに伝達して第一車輪3Aを回転させる。
【0036】
図6に示すように、切替機構6Cは、伝達ギヤ71と、伝達ギヤ71を移動させるアクチュエータ70と、を有する。伝達ギヤ71は、平歯車であり、モータ5の出力ギヤ51と噛み合っている。アクチュエータ70は、伝達ギヤ71を回転自在に支持するシャフト72を有する。シャフト72は、幅方向Yに沿って延在している。すなわち、シャフト72は、出力ギヤ51、入力ギヤ60、および入力ギヤ66の中心軸線と平行に延在している。アクチュエータ70は、電磁力等によってシャフト72を幅方向Yに沿って進退させる。アクチュエータ70には、筐体2の内部に配置されたバッテリ等の電源から電力が供給される。
【0037】
アクチュエータ70は、伝達ギヤ71を
図6に示す第一の位置、
図7に示す第二の位置、および
図8に示す第三の位置の何れかに位置付ける。
図6に示す第一の位置は、伝達ギヤ71が出力ギヤ51および入力ギヤ60と噛み合い、かつ入力ギヤ66とは噛み合わない位置である。つまり、伝達ギヤ71は、第一の位置においてモータ5と第一伝達部6Aとを接続し、モータ5と第二伝達部6Bとを遮断する。従って、伝達ギヤ71が第一の位置にある場合、電線100に対して筐体2が停止した状態でセンサユニット4が電線100の周りを回転する。
【0038】
図7に示す第二の位置は、伝達ギヤ71が出力ギヤ51、入力ギヤ60、および入力ギヤ66と噛み合う位置である。つまり、伝達ギヤ71は、第二の位置においてモータ5と第一伝達部6Aとを接続し、かつモータ5と第二伝達部6Bとを接続する。従って、伝達ギヤ71が第二の位置にある場合、電線100に対して筐体2が走行している状態でセンサユニット4が電線100の周りを回転する。
【0039】
図8に示す第三の位置は、伝達ギヤ71が出力ギヤ51および入力ギヤ66と噛み合い、かつ入力ギヤ60とは噛み合わない位置である。つまり、伝達ギヤ71は、第三の位置においてモータ5と第二伝達部6Bとを接続し、モータ5と第一伝達部6Aとを遮断する。従って、伝達ギヤ71が第三の位置にある場合、センサユニット4が停止した状態で筐体2が電線100に対して走行する。
【0040】
なお、本実施形態の伝達機構6では、ギヤの噛み合わせをスムーズに行うことができるように、伝達ギヤ71、入力ギヤ60、および入力ギヤ66の端部が面取りされている。
【0041】
このように、本実施形態の電線検査装置1は、一つのモータ5と伝達機構6とによって、走行せずにセンサユニット4を回転させる第一の動作、走行およびセンサユニット4の回転の両方を行う第二の動作、センサユニット4を回転させずに走行を行う第三の動作、を選択的に実行することができる。
【0042】
また、本実施形態の第一伝達部6Aは、センサユニット4を所定の回転角度の範囲で往復回転させるリンク機構6Dを含む。リンク機構6Dは、第一リンク63、第二リンク64、ピン68A、およびピン44を含む。以下に説明するように、リンク機構6Dは、最終ギヤ62の一方向の連続回転をセンサユニット4の往復回転に変換する。
【0043】
モータ5は、例えば、
図9に矢印Y1で示す方向に最終ギヤ62および第一リンク63を回転させる。
図9に示す第一リンク63では、先端63aが下端(下死点)の位置から上方に向けて移動している。従って、第二リンク64が上方に向けて押し上げられ、矢印Y2で示すように第一フランジ部41Aを第一の回転方向(以下、「正転方向」と称する。)に回転させる。
【0044】
第一リンク63が矢印Y1で示す回転方向に更に回転すると、第一リンク63の回転位置は、
図10に示す位置となる。
図10に示す位置は、先端63aが下端の位置から上端の位置へ向かう中間位置である。第二リンク64は、矢印Y3で示すように、第一フランジ部41Aを正転方向に更に回転させる。
【0045】
第一リンク63が矢印Y1で示す回転方向に更に回転すると、第一リンク63の回転位置は、
図11に示す位置となる。
図11に示す第一リンク63では、先端63aが上端(上死点)をわずかに過ぎている。従って、第二リンク64が下方に向けて引き下げられ、矢印Y4で示すように第一フランジ部41Aを第二の回転方向(以下、「逆転方向」と称する。)に回転させる。
【0046】
第一リンク63が矢印Y1で示す回転方向に更に回転すると、第一リンク63の回転位置は、
図12に示す位置となる。
図12に示す位置は、先端63aが上端の位置から下端の位置へ向かう中間位置である。第二リンク64は、矢印Y5で示すように、第一フランジ部41Aを逆転方向に更に回転させる。その後、第一リンク63の先端63aが下端の位置を過ぎることで、第一フランジ部41Aの回転方向が正転方向に変わる。
【0047】
このように、リンク機構6Dは、センサユニット4の回転方向を正転方向から逆転方向へ切り替え、次に回転方向を逆転方向から正転方向へ切り替える動作を繰り返す。その結果、センサユニット4は、センサ40によって電線100の全周を検査することができる。本実施形態のリンク機構6Dは、センサユニット4の回転角度を120°以上とするように構成されている。すなわち、リンク機構6Dは、三つのセンサ40が電線100の全周を検査できるように構成されている。本実施形態の電線検査装置1は、センサユニット4を所定の回転角度で往復回転させることで、センサユニット4につながる配線においてねじれの発生を抑制することができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の電線検査装置1は、筐体2と、車輪3と、センサユニット4と、一つのモータ5と、伝達機構6と、を有する。車輪3は電線100に載置され、筐体2は、車輪3によって支持される。センサユニット4は、電線100の劣化に関する情報を取得するセンサ40と、電線100と対向する位置でセンサ40を保持する保持体45と、を有する。
【0049】
伝達機構6は、第一伝達部6Aおよび第二伝達部6Bを有する。第一伝達部6Aは、モータ5の回転をセンサユニット4に伝達してセンサユニット4を電線100の周りに回転させる。第二伝達部6Bは、モータ5の回転を車輪3に伝達して車輪3を回転させる。本実施形態の電線検査装置1は、一つのモータ5によって、電線100上を走行する走行動作と、センサユニット4を回転させる回転動作とを行うことができる。本実施形態の電線検査装置1は、モータ5の数を最小限とすることで、小型化または軽量化の少なくとも一方により電線検査装置1の消費電力を低減させることができる。
【0050】
また、装置の小型化により、電線100への取付性や持ち運び性が向上する。また、電線検査装置1の部品点数が減ることで、装置の生産効率が向上する。
【0051】
本実施形態の第一伝達部6Aは、センサユニット4を所定の回転角度の範囲で往復回転させるリンク機構を含む。よって、本実施形態の電線検査装置1は、モータ5の回転方向を切り替えることなく、センサユニット4を往復回転させることができる。その結果、モータ5の停止および再回転に伴うエネルギーロスが発生しなくなる。よって、本実施形態の電線検査装置1は、消費電力の低減を実現できる。
【0052】
本実施形態の伝達機構6は、伝達ギヤ71と、伝達ギヤ71を移動させるアクチュエータ70と、を含む切替機構6Cを有する。アクチュエータ70は、伝達ギヤ71を第一の位置、第二の位置、あるいは第三の位置に位置付ける。第一の位置および第三の位置は、第一伝達部6Aおよび第二伝達部6Bの何れか一方とモータ5とを接続する位置である。第二の位置は、第一伝達部6Aおよび第二伝達部6Bの両方とモータ5とを接続する位置である。よって、本実施形態の電線検査装置1は、走行動作およびセンサユニット4の回転動作の両方を行うだけでなく、走行動作および回転動作の何れか一方を行うこともできる。よって、本実施形態の電線検査装置1は、消費電力の低減を実現できる。
【0053】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。伝達機構6の構成は、上記実施形態で例示した構成には限定されない。例えば、伝達機構6は、センサユニット4の回転速度や第一車輪3Aの回転速度を切り替え可能な構成を有していてもよい。一例として、第一伝達部6Aは、変速比が異なる二つの入力ギヤを有していてもよい。この場合、切替機構6Cは、センサユニット4を回転させる際に、第一伝達部6Aの二つの入力ギヤの何れかに伝達ギヤ71を噛み合わせる。他の例として、第二伝達部6Bは、変速比が異なる二つの入力ギヤを有していてもよい。この場合、切替機構6Cは、第一車輪3Aを回転させる際に、第二伝達部6Bの二つの入力ギヤの何れかに伝達ギヤ71を噛み合わせる。
【0054】
リンク機構6Dの構成は、例示した構成には限定されない。リンク機構6Dは、モータ5の一方向の回転をセンサユニット4の往復回転に変換できるように適宜構成されていればよい。
【0055】
センサユニット4におけるセンサ40の個数や配置は、例示した個数や配置には限定されない。センサ40の個数や配置は、例えば、センサユニット4の回転範囲に応じて適宜定められる。電線検査装置1による検査対象の電線100は、所謂架空電線には限定されない。電線検査装置1は、様々な種類の電線100に対して適用可能である。
【0056】
切替機構6Cは、伝達ギヤ71を移動させることに代えて、アクチュエータ70によってモータ5を移動させてもよい。この場合、アクチュエータ70は、モータ5を第一のモータ位置、第二のモータ位置、および第三のモータ位置の何れかに位置付ける。第一のモータ位置は、モータ5の出力ギヤ51が入力ギヤ60と噛み合い、かつ入力ギヤ66とは噛み合わない位置である。第二のモータ位置は、出力ギヤが入力ギヤ60および入力ギヤ66の両方と噛み合う位置である。第三のモータ位置は、出力ギヤ51が入力ギヤ66と噛み合い、かつ入力ギヤ60とは噛み合わない位置である。
【0057】
また、上記実施形態においては、長尺物検査装置として電線100を検査対象とする電線検査装置1としたが、これに限定されず、長尺物を検査対象とするものであればよい。ここで、長尺物とは、上記電線100、ワイヤーなどの棒状長尺物、塩ビ管、鋼管などの筒状長尺物などをいい、好ましくは長手方向における大部分の外周面が接触していない状態、すなわち架空状態であることが好ましい。
【0058】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 電線検査装置
2 筐体
3 車輪
3A:第一車輪、 3B:第二車輪
4 センサユニット
5 モータ
6 伝達機構
6A:第一伝達部、 6B:第二伝達部、 6C:切替機構、 6D:リンク機構
20 底壁
21A 第一側壁
21B 上側第二側壁
21C 下側第二側壁
21d 隙間
22 頂壁
23A 前壁
23B 後壁
24A 第一支持壁
24B 第二支持壁
24c,24d:切り欠き、 24e,24g:軌道、 24f,24h:溝部
25 支持部
31 回転体
32 ガイド
33 台部
40 センサ
41A 第一フランジ部
41B 第二フランジ部
41c,41d 切り欠き
42 連結壁部
43 軸受
43a:支持軸、 43b:回転体
44 ピン
45 保持体
51 出力ギヤ
52 回転軸
60 入力ギヤ
61A 第一中間ギヤ
61B 第二中間ギヤ
62 最終ギヤ
62a 回転軸
63 第一リンク
63a:基端、 63b:先端
64 第二リンク
64a:基端、 64b:先端
66 入力ギヤ
66a:ギヤ、 66b:プーリー
67 ベルト
68A ピン
70 アクチュエータ
71 伝達ギヤ
72 シャフト