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特許7231397収穫物アクセスシステムおよび収穫物アクセス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】収穫物アクセスシステムおよび収穫物アクセス方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230221BHJP
   A01F 15/08 20060101ALI20230221BHJP
   A01F 25/13 20060101ALI20230221BHJP
   A01B 69/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A01B69/00 303L
A01F15/08 R
A01F25/13 Z
A01B69/02 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018235616
(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公開番号】P2020096545
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000198330
【氏名又は名称】株式会社IHIアグリテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫛谷 陽一
(72)【発明者】
【氏名】原田 伸也
(72)【発明者】
【氏名】横内 博史
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-030617(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0150584(US,A1)
【文献】特開2017-012134(JP,A)
【文献】実開平06-041406(JP,U)
【文献】特開平07-222508(JP,A)
【文献】特開昭56-045105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01F 15/08
A01F 25/13
A01B 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫物を離散的に放出する第1作業機と、第1作業機が放出した前記収穫物を回収または処理する第2作業機とを含むシステムであって、
第2作業機は、
(1)第1作業機が有するマーキング装置により、その進行軌跡を表す圃場の地表面に付されたマーク、
(2)第1作業機と略同一進行軌跡を有する第1作業機の前に作業した他の作業機が有するマーキング装置により、その進行軌跡を表す圃場の地表面に付されたマーク
のいずれかをマーク検出器で検出し走行制御させる装置を有し、第1作業機が放出した前記収穫物にアクセスするシステム。
【請求項2】
他の作業機が集草機であり、第1作業機がロールベーラであり、第2作業機がラッピングマシンである請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記マークを、往路および復路で分けて、列状となったすべてのマーク(以下、「マーク列」という。)に識別子を対応付けたマーク列情報を生成するマーク列生成手段を第1作業機、第2作業機、他の作業機、ネットワークを含むいずれかの箇所に設け、
前記マーク列情報を取得する手段をマーク列特定装置に設け、
圃場の前記マーク列を検出し、前記マーク列情報と照らし合わせて前記マーク列を特定する前記マーク列特定装置を第2作業機または第2作業機外に設け、
前記マーク列特定装置により特定された前記マーク列情報により、第2作業機の走行制御を行う走行制御装置を有する請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
第2作業機は複数台あり、前記複数台の第2作業機が、どのマーク列に沿って作業するかを予め割り振る機構をさらに備えた請求項3記載のシステム。
【請求項5】
収穫物を離散的に放出する第1作業機は、前記マーク列毎に、前記マーク列上またはマーク列に沿って放出された収穫物数を対応付けて記憶する手段を有し、前記マーク列毎に放出された収穫物数を考慮して、前記複数台の第2作業機が、どのマーク列に沿って作業するかを割り振る機構をさらに備えた請求項4記載のシステム。
【請求項6】
第2作業機は、無人作業機である請求項1~5いずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記収穫物の位置を認識する収穫物位置認識装置を備え、前記収穫物位置認識装置により、第2作業機を収穫物にアクセスすべく走行制御する制御装置を備えた、請求項1~6いずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
収穫物を離散的に放出する第1作業機と、第2作業機により第1作業機が放出した前記収穫物にアクセスする方法であって、
第2作業機は、
(1)第1作業機が有するマーキング装置により進行軌跡を表す圃場の地表面に付されたマーク、
(2)第1作業機と略同一進行軌跡を有する第1作業機の前に作業した他の作業機が有するマーキング装置により進行軌跡を圃場の地表面に付されたマーク
のいずれかをマーク検出器で検出し走行制御することで、
第1作業機が放出した前記収穫物にアクセスする方法。
【請求項9】
他の作業機が集草機であり、第1作業機がロールベーラであり、第2作業機がラッピングマシンである請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記マークを、往路および復路で分けて、列状となったすべてのマーク(以下、「マーク列」という。)に識別子を対応付けたマーク列情報をマーク列生成手段により生成する工程、
次いで、前記マーク列情報をマーク列特定装置が取得する工程、
次いで、前記マーク列特定装置により、圃場の前記マーク列を検出し前記マーク列情報と照らし合わせて、前記マーク列を特定することにより、第2作業機を前記マーク列に沿って走行制御する工程を含む請求項7または8記載の方法。
【請求項11】
第2作業機は複数台あり、予めどのマーク列に沿って作業するかを割り振る工程をさらに含む請求項10記載の方法。
【請求項12】
第1作業機が収穫物を離散的に放出する際に、前記マーク列毎に、前記マーク列上または前記マーク列に沿って放出された収穫物数を対応付けて記憶する工程を有し、前記マーク列毎に放出された収穫物数を考慮して、前記複数台の第2作業機が、どのマーク列に沿って作業するかを割り振る工程をさらに備えた請求項11記載の方法。
【請求項13】
第2作業機は、無人作業機である請求項8~12いずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記収穫物の位置を認識する収穫物位置認識装置により収穫物位置を認識し、第2作業機が前記収穫物へアクセスする工程をさらに備えた、請求項8~13いずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集草機やロールベーラ等により圃場に付された進行軌跡を表すマーク20を用いて、ロールベーラ等の収穫物(ロールベール)を離散的に放出する第1作業機の後に作業を行う、第2作業機(ラッピングマシン)の運行を容易にするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロールベーラや収穫物をコンテナや収穫物収納袋に入れて、離散的に放出する作業機が知られている。
【0003】
牧草の収穫を例にとると、集草機により作られた集草列に沿ってロールベーラが走行し、できあがったロールベールを離散的に圃場に落としてゆく。ロールベーラを無人走行させるために、GPSによりロールベールの位置特定を行うことが、特許文献1[0103]に記載されているが、GPSによる位置特定装置は高価である。また、ロールベーラから放出されたロールベールは転がるためGPS座標とズレが生じる。そして、国土地理院は太陽フレアによる電離層の乱れによって、GPS測位データが乱れることを報告しているように、作業を中断せざるをえないこともあった。しかも、ロールベーラとラッピングマシンの両機にGPSを搭載する必要があり、著しくコストを上昇させていた。
【0004】
ロールベーラに画像認識装置を取り付けロールベールの位置特定することも考えられるが、画像認識装置の視野の範囲でしかロールベールの位置特定ができず、取りこぼしが生じる。また、圃場に高低差があると、死角が生まれ画像認識装置だけでは無人化や自動化は困難であり、圃場全体のロールベールの位置情報を何らかの形で入力する必要があった。
【0005】
また、特許文献2には、室内外において、路上や床面に設けられた誘導ラインを検出し、無人走行する車両が記載されており、誘導ラインを検出して操向制御することは周知の技術であった。しかしながら、収穫作業機が稼働する圃場に、誘導ラインを予め設置しておくことは行われていない。圃場は、牧草に覆われ、誘導ラインの検出は困難であり、タインによって刈草を集草したとしても、誘導ラインがうまく露出するとは限らないし、タインの駆動や耕起により、切れるか消失するため、その都度誘導ラインを設ける必要がある。
【0006】
さらに、収穫作業機の進行軌跡は、例えば、収穫作業機の機種が変われば変化するし、毎年同じ位置を進行するとは限らないから、特許文献2に記載のように毎年使えるような予め誘導ラインを設けることは非現実的であった。その都度手間をかけて、誘導ラインを圃場の地表面に描く専用作業機を使用し誘導ラインを描く前作業が必要となる。誘導ラインを検出して操向制御することが周知技術であろうとも、収穫処理作業機にそのような手間をかけてまで、該周知技術を適用しようなどとは誰も思わなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-12134号公報
【文献】特開2010-282393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、GPS等の精密で高価な収穫物特定装置を使用することなく、ロールベール等の離散的に圃場に放出された収穫物に確実にアクセスするシステムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
収穫物を離散的に放出する第1作業機と、第1作業機が放出した収穫物を回収又は処理する第2作業機とを含むシステムであって、
第2作業機は、
(1)第1作業機が有するマーキング装置により進行軌跡を圃場の地表面に付されたマーク、
(2)第1作業機と略同一進行軌跡を有する第1作業機の前に作業した他の作業機が有するマーキング装置により進行軌跡を圃場の地表面に付されたマーク
のいずれかをマーク検出器で検出し走行制御させる装置を有し、第1作業機が放出した収穫物にアクセスするシステムとすることで、課題の解決を図った。
【0010】
また、収穫物を離散的に放出する第1作業機と、第2作業機により第1作業機が放出した収穫物にアクセスする方法であって、
第2作業機は、
(1)第1作業機が有するマーキング装置5により進行軌跡を表す圃場の地表面に付されたマーク、
(2)第1作業機と略同一進行軌跡を有する第1作業機の前に作業した他の作業機が有するマーキング装置により進行軌跡を圃場の地表面に付されたマーク
のいずれかをマーク検出器で検出し走行制御することで、
第1作業機が放出した収穫物にアクセスする方法とすることで、課題の解決を図った。
【0011】
ここで、マーク列(図10参照)とは、進行軌跡を表す圃場の地表面に付されたマークを、往路および復路で分けて、列状となったマークをいう。そして、マーク列生成手段は、各マーク列と識別子を対応付けたマーク列情報を生成する。これにより、圃場にある多数のマーク列を区別できるようになる。マーク列生成手段は、マーク列情報を、第2作業機またはマーク列特定装置が受け取ることができるなら、どこに設けてもよく、例えば、第1作業機、第2作業機、他の作業機、ネットワーク等のいずれかでもよい。第2作業機またはマーク列特定装置が受け取ったマーク列情報は、第2作業機が作業を開始する際、圃場からの画像等により検出されたマーク列と対応を取るのに使われる。マーク列特定装置は、圃場からの画像等から、実際に圃場に存在する多数のマーク列のうち、どのマーク列で第2作業機が作業を行っているかを特定する機能や作業すべきマーク列を探す機能を有し、その情報は、第2作業機が無人化された場合、走行制御に使われる。
【0012】
第1作業機がそれ自身の進行軌跡を表すマーク20をマーキング装置により圃場の地表面に付して行くという従来にない新規な構成を有し、誘導ラインを圃場に描く専用作業機を使用する必要がなくなった。
【0013】
マークを圃場の地表面に付すマーキング装置を設けた作業機が、本出願前に存在しない以上、本発明のような、マークをマーク検出器で認識して第2作業機を走行制御するという解決手段は誰も思いつくものではなかった。
【発明の効果】
【0014】
従来GPS等の収穫物の位置決定手段を収穫物を離散的に放出するロールベーラ等の作業機に設ければ、対応するラッピングマシン等の作業機にもまた、GPS等の位置決定手段を設ける必要があり、コストがかかっていた。
本発明によれば、収穫物を離散的に放出する第1作業機の進行軌跡を表す圃場の地表面に付されたマークだけで、第2作業機が収穫物にアクセスすることができ、GPS等の精密で高価な電子機器を不要にできる。
【0015】
また、マークを検出するマーク検出器は単純で安価な装置で足り、収穫物は、第1作業機の進行軌跡上またはその周辺に存在するため、圃場に付されたマークに追随して第2作業機が進行すれば、必ず収穫物を発見でき、マークだけで滞りなく収穫物処理作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】集草列11を作成中の集草機(他の作業機)を示す側面図である。
図2】集草列11作成中の集草機(他の作業機)を示す平面図である。
図3】集草列11と集草列11を作った集草機(他の作業機)の進行軌跡を表すマーカーを示す平面図である。
図4】集草列11からロールベール51を作成するロールベーラ50(第1作業機)の作業を示す側面図である。
図5】集草列11からロールベール51を作成するロールベーラ50(第1作業機)の作業を示す平面図である。
図6】マーク20の本数をカウントするフローチャート図である。
図7】根菜類用ハーベスタ(第1作業機)において、コンテナが搭載される昇降荷台61を持ち上げた状態の側面図である。
図8】根菜類用ハーベスタ(第1作業機)において、コンテナが搭載される昇降荷台61を、コンテナを圃場に放置する位置に下ろした斜視図である。
図9A】マーク列認識装置兼収穫物位置認識装置71を設けたラッピングマシン80の側面図である。
図9B】マーク列認識装置兼収穫物位置認識装置71を設けたラッピングマシン80の正面図である。
図9C】マーク列認識装置兼収穫物位置認識装置71を設けたラッピングマシン80の平面図である。
図10】圃場地図とマーク列93を重ね合わせ、マーク列識別子(番号)94を付した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の第1作業機は、収穫物をコンテナ等に入れ圃場に放置する穀類・果菜類・葉菜類・根菜類用ハーベスタ等の収穫物を収穫する作業機や、収穫した穀類を収穫物収納袋等に入れて圃場に放置する収穫作業機(コンバイン)、ロールベーラ等の他の作業機が収穫し圃場に放置した収穫物を処理する作業機を含むが、収穫物を離散的に放出する作業機であればこれに限らない。田植機等の収穫を伴わない移植機は当然含まれない。
【0018】
また、第2作業機とは、収穫物を詰めたコンテナや収穫物収納袋を回収する作用機やラッピングマシン80を含むが、離散的に放出された収穫物にアクセスする作用機であればこれに限らない。
【0019】
(第1の実施態様)
図1図3は、本発明の「第1作業機と略同一進行軌跡を有する第1作業機の前に作業した他の作業機」に相当する集草機を示す。トラクター1に牽引される集草機は、PTO軸からの動力でローター4を駆動し、タイン3の回転により刈草を中央に集め、コンパクトな集草列11を作成する。
【0020】
また、最後尾には、集草機の進行軌跡を表すマーク20を、集草後の圃場の地表面に付すためのマーキング装置5が搭載されている。
【0021】
図2にあるように、集草前の刈草10を集草機が進行しながら集草列11が形成され、本発明の請求項1でいう他の作業機に相当する集草機が有するマーキング装置5により、集草機の進行軌跡を表すマーク20が圃場の表面に付される。この時、マーク20は、図3に示すように圃場に付されることになる。
【0022】
第1作業機であるロールベーラ50は、集草機の進行軌跡に沿って存在する集草列11に沿って進みながら、ロールベール51を放出するから、ロールベール51は必ず集草機の進行軌跡上または近傍に存在することになる。集草機は、ロールベーラ50(第1作業機)と略同一進行軌跡を有する第1作業機の前に作業した他の作業機ということができる。
集草機(他の作業機)にマーキング装置5を設けて、進行軌跡を表すマーク20を圃場の地表面に付し、この集草機が付したマーク20を第2作業機であるラッピングマシン80がマーク検出器を使用して追えば、第1作業機であるロールベーラが離散的に放出したロールベール51を確実に発見できる。
【0023】
圃場の端部で集草機(他の作業機)が旋回するときには、マーク20が付されないように構成できるし、また、旋回しているときにもマーク20が付されるようにも構成できる。
【0024】
マーク20は、図9にあるように、第2作業機に相当するラッピングマシン80に設けられたマーク検出器40(図示せず)により検出できるものであれば、如何なるものでもよく電磁波反射材や電磁波発信機等であってもかまわない。圃場にマーク20が付されることから、無害なものが好ましい。例えば、土壌と区別できる色の着色物質でよい。土壌改良剤である石灰(白色)そのものも使用可能であるが、さらに石灰に着色物質を加えたものでもよい。加えて、生分解性樹脂でできた棒(ペグ)などでもよく、第2作業機が有するマーク検出器40により収穫作業機の進行軌跡が検出できるものであれば材質や構造を問わない。
【0025】
また、マーク20は連続して圃場に付される、すなわち、線状に付されると検出が楽にできて好ましいが、必ずしも連続して圃場に付される必要はなく、進行軌跡を再構成できればマーク20の使用量を節約するために離散的に付されてもよい。
【0026】
第1作業機であるロールベーラ50は、マーク20を検出しながら進めばよく、無人化も可能である。無人化しなくとも、搭乗者の操向作業をアシストでき、作業負担を軽減できる。
【0027】
集草機(他の作業機)が往復する際に示されるマーク20を往路で1本とカウントし、復路で1本とカウントしこれを作業開始時から連続してカウントした数を、記憶するまたは送信する。いくつかの具体例があるが、図6はその一例である。s1で集草作業開始がなされると、s2で作業者はマーキング装置5のスイッチを入れマーキング装置5を始動させる。すると、圃場にマーク20が付され、s3でマーク本数がカウントされる。初期値のnは0に設定されているから、s3においてマーク本数は1本とカウントされる。s4で作業機の旋回が検出されると、作業終了か否かの判断がs5でなされ、作業終了でない(No)であれば、s3に戻りマーク本数のカウントが継続する。s5で作業の終了が判断されるとマーク総本数nが送信される。
また、マーキング装置を有する集草機(他の作業機)またはマーキング装置を有するロールベーラ50(第1作業機)の作業が終了した後、時間をおいてラッピングマシン80(第2作業機)の作業が始まる等の場合にあっては、s6の前記マーク総本数を一旦他の作業機または第1作業機に記憶させておき、後でマーク列特定装置を有する第2作業機へ送信することも可能であるし、他の作業機または第1作業機に記憶されたマーク総本数を呼び出し表示させ、第2作業機の搭乗者がマーク総本数を第2作業機の操作パネルからマーク列特定装置へと入力することも可能である。
【0028】
ロールベーラ50(第1作業機)がマーキング装置を有する場合は、ロールベーラ50(第1作業機)が、上記したようなカウントを行い、s6でマーク総本数nを第2作業機へ送信することとなる。
ロールベーラ50(第1作業機)の作業終了を待たずにラッピングマシン80(第2作業機)が作業を開始する場合は、s4とs5の間に、マーク本数nをラッピングマシン80(第2作業機)に送信するようにしてもよい。
【0029】
マーキング装置を有する集草機(他の作業機)またはマーキング装置を有するロールベーラ50(第1作業機)は、s6で送られたマーク総本数nに基づき、圃場の地表面に付された多数のマーク列93毎に番号などの識別子94(マーク列情報)を付すこともできる。(図10参照)
【0030】
多数あるマーク列のどのマーク列93かを特定できる画像処理装置などのマーク列特定装置を設け、マーク列93の番号を認識できるように構成すれば、第2作業機は、現在どの番号のマーク列93に沿って作業しているのか認識できる。作業開始時に、第2作業機が有するマーク列特定装置が認識しているマーク列93の番号を、作業者が教えさえすれば、当該マーク列を基準に、後は自動的にどの番号のマーク列93かをマーク列特定装置が自動的に判断する。第2作業機は、マーク列93の番号を認識し、各々のマーク列93の始点または終点からマークに沿って走行するように自動操縦される。
【0031】
複数台のラッピングマシン80(第2作業機)を同時に使用する場合、集草機(他の作業機)が付したマーク列93に対し、奇数番号のマーク列93と偶数番号のマーク列93というように予め割り振りをしておけば、ラッピングマシン80を無人化しても複雑な制御装置を必要とすることなく、複数台のラッピングマシン80が分担して作業できる。
集草機(他の作業機)は通例、略等間隔に収穫作業を行うから、その進行軌跡を表すマーク20もまた等間隔に圃場に付されることになる。マーク20の総本数がわかれば、別途取得した現場の圃場地図とマーク列93を重ね合わせて表示させることもできる。
【0032】
図10は、実際に圃場地図とマーク列93を重ね合わせたものを示している。
【0033】
集草列11は、通例中央が盛り上がっているから、ロールベーラ50(第1作業機)をマーク20に沿って直進させるとロールベール51の中央に刈草が集まり中央が盛り上がった紡錘形のロールベール51となる。そこで、マーク20を検出しながら左右にわずかに蛇行するようにロールベーラ50を進行させると、きれいなロールベール51が形成される。
【0034】
(第2の実施態様)
図4および図5に示すように、マーキング装置を有する第1作業機をロールベーラ50とし、第2作業機をラッピングマシン80とした例である。ロールベーラ50の進行軌跡上には必ず、ロールベール51が存在し、図9A図9C記載のラッピングマシン80は、マーク検出器40(図示せず)により、地表面に付されたマークを認識して操向制御され、ロールベーラ50が圃場に付したマーク20を頼りに、ロールベール51を発見できる。
ラッピングマシン80を無人化する場合は、マーク列特定装置に加え、ロールベール51を認識できる画像認識装置などの収穫物位置認識装置をラッピングマシン80に備えれば簡単に無人化できる。ロールベール51は大きく、圃場には他に紛らわしい物体は存在しないので、収穫物位置認識装置により簡単に収穫物の位置を認識できる。
また、第2の実施態様では、支柱上にマーク列特定装置兼収穫物位置認識装置71が設けられており、1つの装置71で、どの番号のマーク列を作業しているのか(図10参照)ラッピングマシン80(第2作業機)は認識しつつ、収穫物位置の認識も行われる。
さらに、コストダウンのため、マーク列特定装置、マーク検出器および収穫物位置認識装置をすべて1つの画像認識装置等で兼用することが可能である。
【0035】
ロールベーラ50(第1作業機)は、図10の1番目のマーク列93にはロールベール51が2個、2番目のマーク列93にはロールベール51が0個等のように、マーク列93毎のロールベール51の個数をマーク列93と対応付けて記憶することができる。この情報をラッピングマシン80(第2作業機)に送信してもよい。マーク検出器40によりマーク列93に沿って走行するラッピングマシン80が、当該マーク列93上のすべてのロールベール51を処理したかを、ロールベーラ50から送信されたロールベール51の個数によって判断すれば、マーク列93の終点まで走行することなく、隣のマーク列93へ作業を移れる。
【0036】
複数台のラッピングマシン80(第2作業機)を使用する場合には、上記第1の実施態様のように、偶数番号または奇数番号のマーク列93のように、予め割り振りすることもできるし、前記マーク列93毎のロールベール51の数を考慮して、割り振ることもできる。
【0037】
(第3の実施態様)
図7および図8は、根菜類用ハーベスタ60(第1作業機)の例である。図7に記載されているように、収穫された根菜類は、コンベヤ62を介して昇降荷台61に載せた収穫物コンテナ(図示せず)に投入される。満杯になると、図8のように昇降荷台61を下ろし、根菜類用ハーベスタ60の機台を前後させて、圃場に収穫物コンテナ(図示せず)を放置する。マーキング装置5には図示していないが、適宜な位置にマーキング装置5を設け、圃場の地表面にその進行軌跡を表すマーク20を付せば、満杯となった収穫物コンテナを回収する作業機(第2作業機)がマーク20を検出しながら操向制御されて、回収作業を行う。また、収穫物はコンテナに代えて、収穫物収納袋に入れられて、圃場に放置されるものであってもよい。
根菜用ハーベスタ60に限らず、穀類用、果菜類用または葉菜類用ハーベスタであってもかまわない。
【0038】
(マークの機能)
第2作業機が有人で操縦されている場合、離散的に放出された収穫物を搭乗者が見つける。このような場合であっても、圃場に付されたマーク20をマーク検出器40で検出して自動操向制御してもよいので搭乗者の負担を軽減できる。このような作業形態を採るときには、何番目のマーク列93に沿って、作業が行われているか第2作業機が知る必要はない。
【0039】
ところが、第2作業機を無人とした場合は、何番目のマーク列93を走行している第2作業機が認識する必要がある。マーキング装置を有する第1作業機またはマーキング装置を有する他の作業機が、圃場を往復する際に、進行軌跡を表すマーク20を往路、復路で分けて本数を作業開始時からカウントし、該カウントを記憶する装置および/または送信する装置を設けることで、多数のマーク列93の位置関係を決めることができる。第2作業機にマーク列93を認識できる画像認識装置等のマーク列特定装置を付ければ、どの位置のマーク列93を作業しているのか無人の第2作業機が判断して走行制御させることができる。
【0040】
必ずしも、地図とマーク列93を重ね合わせる必要はないが、図10のように、圃場の作業領域を示す地図とマーク列93を重ね合わせるときには、未収穫領域91を除いた収穫済み領域90に対してマーク列93は等間隔でかつ直線であると仮定して、マーク列93の本数分だけ等間隔に直線のマーク列93を描くようにすることもできる。
【0041】
地図に、圃場の地表面に付された多数のマーク列93に番号等のマーク識別子94を付すことで、おおおまかな位置の把握が容易になる。
【0042】
マーク検出器40は単純で安価な装置で足り、収穫物は、必ず収穫作業機の進行軌跡上またはその近傍に存在するため、収穫物処理作業機は、マーク20をたどれば必ず収穫物にアクセスできることになる。
【0043】
また、収穫物は前記したように第2作業機の進行軌跡上にまたはその近傍に存在するので、圃場に高低差がある等の事情により曲線を描いて進むことがあったとしても、問題なく使用できる。
【0044】
さらに、第2作業機がコンテナやロールベールを運ぶため一旦作業を中断し移動したとしても、作業中断時のマーク列93の番号を第2作業機が記憶しておけば、確実に作業中断時のマーク列93に復帰でき、作業を確実に再開できる。
【0045】
(第1作業機に設けられた検出器および他の装置)
第1作業機(ロールベーラ等)がマーキング装置5を有さず、他の作業機(集草機等)がマーキング装置5を有する場合、第1作業機(ロールベーラ等)にマーク検出器40を設けることができる。他の作業機の進行軌跡を表すマーク20を図5にあるようなマーク検出器40で検出して操向制御するように構成すれば、第1作業機を自動操向制御できる。
また、第1作業機に、マーク列特定装置を設ければ、どの位置のマーク列で作業しているかを知ることができ、無人化も可能となる。
集草機等の他の作業機にマーキング装置を設ける場合、第1作業機および第2作業機を共に、集草機の走行軌跡を表す圃場の地表面に付したマーク20で操向制御できるから、便利である。
【0046】
(第2作業機に設けられた検出器および他の装置)
第2作業機に設けられた検出器は、マーク20に沿って第2作業機を操向制御するための地表面に付されたマーク20を認識するマーク検出器40であるが、前記したように次の装置を加えることもできる。
(1)ロールベール51、コンテナ、収穫物収納袋等を認識し処理し、それらに第2作業機がアクセスするのに使用される収穫物位置認識装置
(2)画像等でマーク列93を検出し、当該検出されたマーク列93がどの番号等の識別子94(マーク列情報)と対応しているのかを特定するために使用されるマーク列特定装置
【0047】
マーク検出器は、操向制御をするために地表面のマーク20を検出するから、正確な検出を行うために比較的地表面に近いところに設けられることが好ましいが、地表面に近いと正確な検出が期待できるものの、どうしても検出範囲が狭くなるため地表面から離れたところに設けることで、マーク20を見失うことを防ぐこともできる。
【0048】
マーク検出器、マーク列特定装置および収穫物位置認識装置は、別体の装置として設けることもできるが、1つの装置で兼用することも可能である。マーク列特定装置および収穫物位置認識装置を1つの装置で兼用した例が、図9A図9Cに記載のマーク列特定装置兼収穫物位置認識装置71である。
【0049】
マーク列特定装置は、多数のマーク列93を認識するために第2作業機の高い位置に設けることが好ましい。また、収穫物位置認識装置およびマーク列特定装置をドローンに設けて、その情報を第2作業機が受信できるようにしてもよい。
【0050】
収穫物位置認識装置は、第2作業機の前方に向けて設けられ、認識するロールベール51、コンテナ、収穫物収納袋等の収穫物の大きさにより、設ける位置は適宜決められる。
【0051】
マーク検出器がマーク20を見失った場合、マーク列特定装置により、マーク検出器によるマーク検出の復帰をアシストするように制御することが好ましい。
【0052】
(地図)
地図は、マーキング装置を有する他の作業機またはマーキング装置を有する第1作業機が行ってもよいが、図6のs6で、マーク総本数が送信されたマーク総本数データを受信する第2作業機が行ってもよいし、該データをネットワークに接続し、ネットワーク上でまたはネットワークに接続した別途の装置で地図を作成し、第2作業機等へ送っても構わない。
【符号の説明】
【0053】
1 トラクター
3 タイン
4 ローター
5 マーキング装置
10 集草前の刈草
11 集草列
20 進行軌跡を表すマーク
40 マーク検出器
50 ロールベーラ
51 ロールベール
60 根菜類用ハーベスタ
61 昇降荷台
62 コンベヤ
71 マーク列特定装置兼収穫物位置認識装置
80 ラッピングマシン
90 収穫済み領域
91 未収穫領域
93 マーク列
94 マーク列識別子(番号)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10