(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】加飾用シート
(51)【国際特許分類】
B44F 3/00 20060101AFI20230221BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20230221BHJP
B29C 45/56 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B44F3/00
B29C45/14
B29C45/56
(21)【出願番号】P 2018240178
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 州平
(72)【発明者】
【氏名】土屋 英里香
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 憲宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正己
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-150891(JP,A)
【文献】特開2011-218587(JP,A)
【文献】特開2004-314611(JP,A)
【文献】特開2005-225050(JP,A)
【文献】特開平05-084770(JP,A)
【文献】中国実用新案第201604458(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2009/0155482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44F 3/00
B29C 45/14
B29C 45/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂素材を用いて一体成形された、シート状基部と、該シート状基部の表側の面から突出する立体加飾部とを含んで構成される加飾用シートであって、
前記シート状基部と前記立体加飾部とは、同一の合成樹脂素材を用いて形成されており、
前記立体加飾部は中実の立体形状を有しており、前記シート状基部における、前記立体加飾部が突出する部分以外の領域に、一又は複数の貫通穴が開口形成されており、前記立体加飾部は、突出方向先端部の、前記シート状基部の表側の面からの高さが、前記シート状基部の厚さ以上の高さとなって
おり、
射出成形によって前記シート状基部と前記立体加飾部とが一体成形された成形品となっており、
少なくとも1箇所の前記貫通穴は、成形時にゲートを閉塞するゲートカットを行った際に前記シート状基部に形成されたものとなっている加飾用シート。
【請求項2】
前記貫通穴のうち少なくとも一つは、0.2~4cm
2の開口面積を有している請求項1記載の加飾用シート。
【請求項3】
前記貫通穴は、非円形の開口形状を有している請求項1又は2記載の加飾用シート。
【請求項4】
前記シート状基部と前記立体加飾部とは、透明又は半透明の同一の合成樹脂素材を用いて形成されている請求項1~3のいずれか1項記載の加飾用シート。
【請求項5】
少なくとも1箇所の前記貫通穴は、成形後にゲートを打抜くことによって形成されたものとなっている請求項
1~4のいずれか1項記載の加飾用シート。
【請求項6】
成形時にゲートを閉塞するゲートカットを行った際に形成された前記貫通穴、又は成形後にゲートを打抜くことによって形成された前記貫通穴は、前記シート状基部の中央部分に形成されている請求項
1~5のいずれか1項記載の加飾用シート。
【請求項7】
成形時にゲートを閉塞するゲートカットを行った際に形成された前記貫通穴、又は成形後にゲートを打抜くことによって形成された前記貫通穴は、前記シート状基部の中央部分以外の領域に形成されている請求項
1~5のいずれか1項記載の加飾用シート。
【請求項8】
前記シート状基部は、0.2~0.8mmの厚さを備えている請求項
1~7のいずれか1項記載の加飾用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾用シートに関し、特に、一体成形されたシート状基部と立体加飾部とを含んで構成される加飾用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば化粧品や日用品の分野では、これらの商品の品質や性能が優れていることの他に、これらの商品が店頭や家庭内等に置かれた際に、装飾性や意匠性に優れていて、良好な商品イメージを喚起できるようになっていることが好ましい。このようなことから、例えば商品が収容される容器の装飾性や意匠性を向上させることを目的として、例えばコンパクト容器等に取り付けて用いる装飾用の板状加飾成形体が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の板状加飾成形体は、射出成形によって成形された、表面の一部に立体模様が形成された樹脂成形品である無色透明な透明表面板の裏面側に、立体模様と対応する部分に彩色層を形成した加飾用の平坦な樹脂シートを、粘着薄膜層を介して一体として粘着させたものとなっており、透明表面板の立体模様と樹脂シートの彩色層による色模様とを合わせた多種多様な印象のデザインを実現できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-177919号公報
【文献】特開2002-67468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の板状加飾成形体では、立体模様によって立体感が強調される透明表面板は、例えば1.5mm~数mm程度の厚さを有していて、自在に湾曲させることはできないことから、平らに成形された板状加飾成形体を平らな面に取り付けることはできても、湾曲する面に取り付けたり、湾曲する面を形成したりすることは難しい。また、彩色層を形成した加飾用の平坦な樹脂シートのみでは、湾曲させることは可能であっても、立体感を強調することは困難である。
【0006】
さらに、湾曲させることが可能な厚さを備える例えば紙基材の表面に、シルク印刷やグラビア印刷による凹凸模様層を含む複数の印刷層を形成して、凹凸感が得られるようにした印刷物も開発されているが(例えば、特許文献2参照)、印刷層による凹凸模様では、十分な凹凸感を得ることができないばかりか、例えばシャープな稜線を有するダイヤモンド調の形状を含む立体模様等の、多彩な立体模様を自在に形成することは困難である。また、多彩な立体模様に加えて、別のアクセントを施すことによって、装飾性や意匠性をさらに向上させることが可能になると共に、機能性をも向上させることが可能になると考えられる。
【0007】
本発明は、平らに成形された状態から湾曲させて用いることができ、且つ多彩な立体模様等を形成することを可能にすると共に、別のアクセントを施すことで、装飾性や意匠性をさらに向上させることが可能になり、また機能性にも優れた加飾用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、合成樹脂素材を用いて一体成形された、シート状基部と、該シート状基部の表側の面から突出する立体加飾部とを含んで構成される加飾用シートであって、前記シート状基部と前記立体加飾部とは、同一の合成樹脂素材を用いて形成されており、前記立体加飾部は中実の立体形状を有しており、前記シート状基部における、前記立体加飾部が突出する部分以外の領域に、一又は複数の貫通穴が開口形成されており、前記立体加飾部は、突出方向先端部の、前記シート状基部の表側の面からの高さが、前記シート状基部の厚さ以上の高さとなっている加飾用シートを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加飾用シートによれば、多彩な立体模様等を形成することを可能にすると共に、別のアクセントを施すことで、装飾性や意匠性をさらに向上させることが可能になり、また機能性にも優れたシート材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る加飾用シート、及び該加飾用シートが取り付けられて加飾容器となる容器を例示する略示斜視図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係る加飾用シートを取り付けて形成された加飾容器を例示する断面図である。
【
図3】本発明の好ましい一実施形態に係る加飾用シートの正面図である。
【
図4】加飾用シートに形成された立体加飾部を説明する
図3のA-Aに沿った断面図である。
【
図5】(a)~(d)は、貫通穴をシート状基部に、圧縮成形時にゲートを閉塞するゲートカットを行った際に形成する状況の説明図である。
【
図6】圧縮成形後に打抜かれて貫通穴が形成されるゲートの説明図である。
【
図7】(a)~(d)は、加飾用シートの他の形態を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態に係る加飾用シート10は、
図1及び
図2に示すように、好ましくは有底筒形状又は筒形状(本実施形態では有底円筒形状)の容器本体21に取り付けられて、容器本体21の外周面を構成すると共に、容器本体21と一体となって加飾容器20(
図2参照)を形成する、湾曲可能な可撓性を備える加飾用のシート材料として用いられる。本実施形態の加飾用シート10は、容器本体21に取り付けられて、多彩な立体模様等による装飾性や意匠性に優れた加飾容器20を、容易に形成できるようにする機能を備えている。
【0012】
そして、本実施形態の加飾用シート10は、
図3及び
図4に示すように、合成樹脂素材を用いて一体成形された、シート状基部11と、シート状基部11の表側の面11aから突出する立体加飾部12とを含んで構成される加飾用のシート材料であって、シート状基部11と立体加飾部12とは、同一の合成樹脂素材を用いて形成されている。立体加飾部12は中実の立体形状を有しており、シート状基部11における、立体加飾部12が突出する部分以外の領域に、一又は複数(本実施形態では、1箇所)の貫通穴40が開口形成されている。立体加飾部12は、突出方向先端部の、シート状基部11の表側の面11aからの高さh1が、シート状基部11の厚さt1以上の高さとなっている。
【0013】
また、本実施形態では、好ましくはシート状基部11は、湾曲可能な0.2~0.8mmの厚さを備えている。
【0014】
さらに、本実施形態では、好ましくはシート状基部11は、200~1000cm2の面積を有する矩形状又は多角形状(本実施形態では、矩形状)に形成されている。
【0015】
さらにまた、本実施形態では、加飾用シート10は、好ましくは射出成形によってシート状基部11と立体加飾部12とが一体成形された成形品となっており、詳細には射出圧縮成形によって成形されている。
【0016】
本実施形態では、加飾用シート10を取り付けて形成される加飾容器20は、
図1及び
図2に示すように、天面部が開口面となっている有底円筒形状の容器本体21と、容器本体部21の天面部を覆って装着される装着キャップ部22とを含んで構成される外容器23と、外容器23の内側に取換え可能に配設される内容器としての袋容器24とを備える、二重構造の容器となっている。加飾用シート10は、有底円筒形状の容器本体21の筒状胴部21aの外周面を覆うようにして、接着剤や粘着剤等を介して貼着されることによって、当該筒状胴部21aの外周面を形成している。
【0017】
また、本実施形態では、内容器である袋容器24の上端部に、注出口部材25が一体として取り付けられおり、装着キャップ部22には、これの中央部分に形成されたガイドスリーブ部22aを貫通するようにして、ポンプディスペンサー30が着脱可能に一体として装着されている。注出口部材25の外周面に設けられた雄ネジ凸条25aを、装着キャップ部22の下面から下方に突出して設けられた、螺着スリーブ22bの雌ネジ凸条22cに締着することによって、ポンプディスペンサー30のポンプハウジング31や吸上げ筒部35を、注出口部材25や袋容器24の内側に配置した状態で、袋容器24が装着キャップ部22に取り付けられる。装着キャップ部22は、容器本体21の筒状胴部21aの外径と同様の外径を備えると共に、外周縁部から下方に突出して、容器本体21の筒状胴部21aの天端部に係止される周縁係止部22dを有している。周縁係止部22dを、容器本体21の筒状胴部21aの天端部に係止することにより、袋容器24は、注出口部材25及びポンプディスペンサー30を介して装着キャップ部22から支持されて、外容器23の内側に吊り下げられた状態で保持されている。
【0018】
さらに、本実施形態では、袋容器24に取り付けられたポンプディスペンサー30は、ポンプハウジング31、吸上げ筒部35、ノズルヘッド(押圧操作部)36等を備える、公知の吐出具である。ポンプディスペンサー30のポンプハウジング31は、ポンプ室(図示せず)、ボール弁(図示せず)、好ましくはバネによる付勢手段(図示せず)等を内部に含んで構成されている。ポンプディスペンサー30は、横方向吐出流路36aが内部に形成された、押圧操作部として機能するノズルヘッド36を備えている。ポンプディスペンサー30は、ノズルヘッド36に一体として接続した、横方向吐出流路36aと連続する縦方向吐出流路37aを内部に備えるピストン37の作用によって、ポンプハウジング31内のポンプ室を拡縮することにより、内容液を袋容器24から吸い上げて、ノズルヘッド36の先端吐出口36bから吐出させるようになっている。これによって、加飾容器20は、ポンプディスペンサー30により内容液を吐出させる、ポンプ付き吐出容器となっている。
【0019】
そして、本実施形態では、容器本体21の筒状胴部21aの外周面を覆って取り付けられて、加飾容器20を形成する加飾用シート10は、上述のように、好ましくは射出圧縮成形によりシート状基部11と立体加飾部12とが一体成形された、シート状基部11と立体加飾部12とが同一の合成樹脂素材を用いて形成された成形品となっている。
図3及び
図4に示すように、シート状基部11は、好ましくは湾曲可能な0.2~0.8mmの厚さt1を備えていると共に、立体加飾部12は、好ましくは突出方向先端部12aのシート状基部11の表側の面11aからの高さh1が、シート状基部11の厚さt1以上の高さとなっている、中実の立体形状を備えている。
【0020】
ここで、シート状基部11と立体加飾部12とを一体成形するための射出圧縮成形は、本実施形態では、後述するように、キャビティに樹脂を供給するゲートを固定型(
図5(a)~(d)参照)の中央部分に設けたことを除いて、例えば特開昭61-211012号公報に記載の射出圧縮成形装置と同様の構成を備える成形装置を用いることにより、容易に実施することができる。射出圧縮成形装置は、プラスチックレンズ等の精密部品を安定した状態で精度良く形成することが可能な装置として公知のものであり、キャビティに供給される樹脂の流量や圧力を制御しながら成形を行うようになっている。射出圧縮成形装置を用いて加飾用シート10を形成することにより、好ましくは湾曲可能な0.2~0.8mmの厚さt1を備える薄厚のシート状基部11を、精度良く容易に形成することが可能になると共に、好ましくはシート状基部11の表側の面11aからの高さh1が、シート状基部11の厚さt1以上の高さとなっている中実の立体形状を備える立体加飾部12の立体加飾模様を、所望の形状となるように精度良く形成することが可能になる。また後述するように、角張った稜線を含むブリリアント調の立体加飾部12の立体加飾模様を、容易に形成することが可能になると共に、シート状基部11の裏側の面11bに、光を干渉又は全反射させることが可能な、380nm~50μmの間隔及び高低差のホログラム調の微細な凹凸を、容易に形成することが可能になる。ここで、立体加飾部12の中実の立体形状は、例えば柱状の立体形状、錐体状の立体形状等、種々の立体形状とすることができ、ドーナツ状やしずく状の立体形状等とすることもできる。
【0021】
シート状基部11と立体加飾部12とを一体成形するための同一の合成樹脂素材は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂(PMMA)、エチレンアイオノマー、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン等の合成樹脂素材を用いることができる。また同種の合成樹脂素材であって、例えば硬質アクリルと軟質アクリルを所定の割合でブレンドした合成樹脂素材を、同一の合成樹脂素材として用いることもできる。さらに、ブレンド可能な複数の合成樹脂素材から作られたポリマーアロイを、同一の合成樹脂素材として用いることもできる。ポリマーアロイとしては、例えばPC(ポリカーボネート)/PS(ポリスチレン)アロイを好ましく用いることができる。シート状基部11と立体加飾部12とを一体成形するための合成樹脂素材が、同一の合成樹脂素材であることにより、リサイクル適性が向上すると共に、製作工程数が少なくなって簡易になる。また繋ぎ目のないきれいな一体成形品を得ることが可能になると共に、一体成形品の強度を高めることが可能になる。また、同一の合成樹脂素材は、透明又は半透明な樹脂であることが好ましい。シート状基部11と立体加飾部12とを一体成形するための同一の合成樹脂素材が、透明又は半透明な樹脂であることにより、特に立体加飾部12が中実の立体形状を備えることで、奥行きのある立体的表現が可能になると共に、高屈折率素材(例えばアクリル樹脂)による透明感のある色彩や輝度感の実現が可能になる。また光の乱反射や干渉を利用した多彩な表現と高級感を付与することが可能になる。使用の目的に応じて、透明感や曲げ弾性を調整することも可能になる。
【0022】
樹脂な透明性は、JIS K7136:2000(ISO 14782:1999)に準拠してヘイズメーターを用いて測定されるヘイズ値で評価することができ、厚み1mmの試料にて測定されたヘイズ値が50%以下であることが好ましい。
【0023】
本実施形態では、加飾用シート10は、シート状基部11が、好ましくは0.2~0.8mmの厚さt1を備えている。これによって、加飾用シート10は、樹脂量を低減した高速成形が可能になり、また自在な曲げ加工が可能になる。このような観点から、加飾用シート10のシート状基部11の厚さt1は、0.2~0.7mmであることがより好ましく、0.3~0.6mmであることがさらに好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、加飾用シート10の立体加飾部12は、好ましくは突出方向先端部12aのシート状基部11の表側の面11aからの高さh1が、シート状基部11の厚さt1以上の高さとなっており、中実の立体形状を備えている。ここで、高さh1は、各々の立体加飾部12の最大の高さである。立体加飾部12の突出方向先端部12aの高さh1が、シート状基部11の厚さt1以上の高さとなっていることにより、立体加飾部12による立体感を効果的に強調することが可能になる。立体加飾部12が中実の立体形状を備えていることにより、光の反射による輝度感や立体感の向上を図ることが可能になると共に、好ましくは加飾用シート10が透明又は半透明な合成樹脂素材によって形成されている場合には、透明感を向上させることが可能なる。これらの観点及び奥行感を強調できる観点及び成形性の観点から、中実の立体形状を備える立体加飾部12の突出方向先端部12aの高さh1は、0.3~2mmとなっていることが好ましく、0.4~1.5mmとなっていることがより好ましく、0.5~1mmとなっていることがさらに好ましい。
【0025】
また、同様の観点から、シート状基部11の厚みt1と、立体加飾部12の突出方向先端部12aの、シート状基部11の表側の面11aからの高さh1との比h1/t1は、1以上10以下となっていることが好ましく、1.1以上5以下となっていることがより好ましく、1.2以上2.5以下となっていることがさらに好ましい。
【0026】
ここで、シート状基部11の表側の面11aに形成された各々の立体加飾部12は、連続する一つの立体加飾部であっても良く、シート状基部11の表側の面11aに、離間した状態で設けられた複数の単位立体加飾部12b(
図3参照)の集合体であっても良い。立体加飾部12が、複数の単位立体加飾部12bの集合体である場合には、少なくとも1箇所の単位立体加飾部12bの、突出方向先端部12aのシート状基部11の表側の面11aからの高さh1が、好ましくはシート状基部11の厚さt1以上の高さとなっていれば良い。単位立体加飾部12bの集合体の中に、突出方向先端部12aの高さh1が、シート状基部11の厚さt1よりも低いものが含まれていても良い。
【0027】
さらに、本実施形態では、立体加飾部12の立体加飾模様は、少なくともその一部に、角張ったシャープな稜線12cを含んで形成されていることが好ましい(
図3参照)。これによって、例えばダイヤモンド調のブリリアントカットの乱反射による光表現が可能になって、さらに多彩な凹凸模様を形成することが可能になる。また、立体加飾部12の立体加飾模様は、例えば角張ったシャープな稜線12cを含む部分と、丸みを帯びて湾曲する部分との両者を混在させることによって、より一層多彩な凹凸模様を形成することが可能になる(
図3参照)。
【0028】
さらにまた、本実施形態では、シート状基部11の裏側の面11bは、平坦な面となっていることが好ましい。シート状基部11の裏側の面11bが平坦な面となっていることにより、加飾用シート10を、接着剤や粘着剤等を介して容器本体部21の筒状胴部21aの外周面に、容易に貼着することが可能になる。平坦な面は、マクロな視点で平坦になっていれば良く、例えばシート状基部11の裏側の平坦な面11bに、光を干渉させることが可能な、可視光波長と同程度(380~780nm)の間隔及び高低差の微細な凹凸が形成されていても良い。また、例えば特開平7-174910号公報に記載のプリズムシートのように、光を全反射させることが可能な、頂角80~150°でピッチが50μm程度のプリズム列が形成されていても良い。シート状基部11の裏側の平坦な面11bに、光を干渉又は全反射させることが可能な、380nm~50μmの間隔及び高低差の微細な凹凸が形成されていることにより、ホログラム調あるいは金属光沢調の模様を形成することが可能になって、さらに多彩な表現の凹凸模様を形成することが可能になる。光を干渉又は全反射させることが可能な微細な凹凸は、上述の射出圧縮成形装置を用いた射出圧縮成形によって、ホログラム調のフィルムをラミネートしたりすることなく、簡易な作業工程によって容易に形成することができる。
【0029】
また、本実施形態では、加飾用シート10の平坦な面となっているシート状基部11の裏側の面11bに、メタリック調又はホログラム調のフィルムをラミネートすることもできる。これによって、金属光沢による多彩な表現の凹凸模様を形成することが可能になると共に、上述のようにシート状基部11の裏側の平坦な面11bに微細な凹凸を形成した場合と同様に、光を干渉又は全反射させるホログラム調の多彩な表現の凹凸模様を形成することが可能になる。
【0030】
そして、本実施形態では、
図3及び
図4に示すよう、シート状基部11における、立体加飾部12が突出する部分以外の領域に、貫通穴40が開口形成されている。貫通穴40は、本実施形態では、好ましくは円形の開口形状を有しており、例えば0.2~4cm
2の開口面積を有している。貫通穴40が円形の開口形状を有していることにより、キャビティ54を形成する可動型52や固定型51(
図5(a)~(d)参照)に、貫通穴を形成するための加工を何等施すことなく、後述するように、加飾用シート10を圧縮成形する工程において、ゲート53を閉塞するゲートカットを行ったり、ゲートとして例えばディスクゲート55(
図6参照)を打抜いたりすることで、シート状基部11に円形の貫通穴40を容易に形成することが可能になる。貫通穴40が0.2~4m
2の開口面積を有していることにより、成形時における十分な樹脂の流動速度と、良好なゲート閉塞性あるいはゆがみやバリのない良好な打ち抜き性との両立を図ることが可能になる。
【0031】
また、本実施形態では、貫通穴40は、好ましくはシート状基部11の中央部分に形成されている。これによって、後述するように、加飾用シート10を圧縮成形する工程において、ゲート53を閉塞するゲートカットを行ったり(
図5(c)参照)、ゲートとして例えばディスクゲート55(
図6参照)を打抜いたりすることによって、シート状基部11に円形の貫通穴40を形成する際に、キャビティ54内に合成樹脂素材を供給するゲート53,55は、必然的に、キャビティ54の中央部分に配置されることになる。これによって、例えば200~1000cm
2程度の面積を有する相当の大きさの矩形状のシート状基部11を形成する場合でも、キャビティ内に合成樹脂素材を供給するゲートが矩形形状の周縁部に設けられているものと比較して、中央部分のゲート53,55からキャビティ54の全体に合成樹脂素材を至らせるための合成樹脂素材の最大の流動長を、半分程度に短くすることが可能になるので、キャビティ54の全体に、合成樹脂素材を隙間なく容易に行き亘らせて、品質の良好な、シート状基部11が0.2~0.8mmの薄い厚さとなっている、比較的大きな面積の加飾用シート10を、射出圧縮成形によって、短い作製サイクルで容易に形成することが可能になる。
【0032】
本実施形態では、上述の構成を備える、シート状基部11と立体加飾部12とが合成樹脂素材を用いて一体成形された加飾用シート10は、射出圧縮成形による成形方法によって、容易に得ることができる。すなわち、例えば特開昭61-211012号公報に記載の射出圧縮成形装置と略同様の構成を備える射出圧縮成形装置50を用い、例えば
図5(a)~(d)に示すように、好ましくは固定型51の中央部分に合成樹脂素材を供給するゲート53を設けて、立体加飾部12に対応する形状の凹凸模様が押圧面に形成された可動型52と、固定型51との間のキャビティ54内に、ゲート53から合成樹脂素材を供給する(
図5(a)参照)。しかる後に、可動型52を固定型51に近づけ、供給された合成樹脂素材を押圧して圧縮することにより(
図5(b)、(c)参照)、シート状基部11が0.2~0.8mmの厚さを備えると共に、立体加飾部12が一体成形された加飾用シート10を、容易に形成することができる(
図5(d)参照)。
【0033】
また、本実施形態では、加飾用シート10のシート状基部11に開口形成された貫通穴40は、上述の射出圧縮成形による成形時に、容易に設けることができる。すなわち、例えば
図5(b)~(d)に示すように、可動型52による圧縮成形時に、キャビティ54内に供給された合成樹脂素材がゲート53を介して逆流しないようにするために、可動型52から閉塞ピン52aを突出させてゲート53の流出口53aを閉塞するゲートカットを行なわれる際に(
図5(b)、(c)参照)、閉塞ピン52aは、成形されるシート状基部11の中央部分を貫通した状態で残置されることになる(
図5(c)参照)。これによって、合成樹脂素材の硬化後に、加飾用シート10を可動型52及び固定型51から製品として取り出す際に、閉塞ピン52aを加飾用シート10から引き抜くことで、貫通穴40を、シート状基部11の中央部分に容易に形成することが可能になる。
【0034】
本実施形態では、加飾用シート10のシート状基部11に開口形成される貫通穴40は、キャビティ54内に合成樹脂素材を供給するゲートとして、好ましくは
図6に示すようなディスクゲート55を用いることによって、射出圧縮成形による成形時に設けることもできる。すなわち、ディスクゲート55は、中央部分に穴がある製品や、リング状若しくは円筒状の製品を成形する際に利用されるゲートであって、薄い円板状ゲート55aを備えている。またディスクゲート55は、樹脂材料の流動配向による変形を防いだり、ウェルドラインの発生を防いだりする機能を備えている。ディスクゲート55は、加飾用シート10の成形後にパンチダイで打ち抜かれたり、機械加工により除去されたりするので、これらの除去された部分によって、大きめの貫通穴40を、シート状基部11の中央部分に容易に形成することが可能になる。ディスクゲート55を用いることで、加飾用シート10の成形サイクルを短縮することも可能になる。
【0035】
さらに、本実施形態では、シート状基部11に、印刷、箔押し、罫押し、又は熱成形を施すこともできる。これらによって、加飾用シート10の装飾性や意匠性を、さらに向上させることが可能になる。例えばシート状基部11の平面部分でこれらの加工を施すことによって、効率良く加工することが可能になり、加飾の多様性を容易に向上させることが可能になる。罫押しは、例えば可動型52の対応する部分に凸条を設けておくことによって、射出圧縮成形による成形時に、シート状基部11に容易に形成することができる。シート状基部11に罫押しが施されていることにより、加飾用シート10を罫押しに沿って折り曲げて、所定の立体形状を有するように容易に加工することが可能になり、例えば継ぎ接ぎなしで、日用品サイズの個箱を作成することが可能になる。
【0036】
そして、上述の構成を備える本実施形態の加飾用シート10によれば、好ましくは湾曲させて用いることができ、且つ多彩な立体模様等を形成することを可能にすると共に、別のアクセントを施すことで、装飾性や意匠性をさらに向上させることが可能になり、また機能性にも優れる。
【0037】
すなわち、本実施形態によれば、加飾用シート10は、好ましくはシート状基部11が0.2~0.8mmの厚さを備えているので、容易に湾曲させて、有底円筒形状の容器本体21の筒状胴部21aの湾曲している外周面に、一体として容易に取り付けることが可能になる。また立体加飾部12は、中実の立体形状を備えているので、立体感を効果的に強調することが可能になると共に、光の反射による輝度感や奥行感を強調することが可能になって、装飾性や意匠性に優れた加飾容器20を容易に形成することが可能になり、且つシート状基部11における立体加飾部12が突出する部分以外の領域に、貫通穴40が開口形成されているので、貫通穴40が別のアクセントとなって、装飾性や意匠性をさらに向上させることが可能になる。
【0038】
また、シート状基部11における立体加飾部12が突出する部分以外の領域に、貫通穴40が開口形成されているので、加飾用シート10の軽量化を図ることが可能になると共に、加飾用シート10を例えば容器本体21の筒状胴部21aの外周面に取り付ける際に、貫通穴40にエア抜きの機能を発揮させて、外周面に強固に密着させることが可能になり、さらに水はけの向上や、外観のユニークさの向上を図ることが可能になる。また、貫通穴40を係止穴として機能させて、追加の飾りパーツ等を取り付けて、自己アレンジすることも可能になる。
【0039】
図7(a)~(d)は、本発明の好ましい他の実施形態に係る加飾用シート41,42,43,44を例示するものである。
図7(a)~(d)に示す他の実施形態の加飾用シート41,42,43,44は、主として貫通穴の形態が相違していること以外は、上記実施形態の加飾用シート10と略同様の構成を備えている。なお、
図7(a)~(d)に示す他の実施形態の加飾用シート41,42,43,44に関して、上記実施形態の加飾用シート10と異なる構成部分について主として説明し、同様の構成部分については同一の符号を付して説明を省略している。特に言及しない構成部分については、上記実施形態の加飾用シート10に関する説明が適宜適用される。
【0040】
図7(a)の加飾用シート41では、シート状基部11の中央部分に設けられた貫通穴40は、非円形の開口形状として、例えば台形形状を備えている。
図7(b)の加飾用シート42では、貫通穴40は、非円形の開口形状として、例えば星形形状を備えていると共に、シート状基部11の中央部分以外の領域に設けられている。これらの非円形の貫通穴40は、圧縮成形時にゲートを閉塞するゲートカットを行った際に形成できる他、可動型の対応する部分に固定型に密着させる凸部を設けたり、加飾用シート41,42の成形後にシート状基部11の対応する部分を打ち抜いたりすることによって、容易に設けることができる。なお、貫通穴40を中央部分以外の領域に設けるとは、貫通穴40の中心が、加飾用シート42の中心からシートの長辺の長さの15%以上ずれるように設けることである。
【0041】
図7(a)、(b)の加飾用シート41,42によっても、シート状基部11に貫通穴40が形成されていることにより、上記実施形態の加飾用シート10と同様の作用効果が奏される他、貫通穴40が非円形の開口形状を有していることにより、例えば印刷、箔押し、罫線入れ、貼り合せ等の加工時に、方向合せや位置合せが容易になると共に、外観上のユニークさを向上させることが可能になる。
【0042】
また、
図7(b)の加飾用シート42では、貫通穴40が中央部分以外の領域に開口していることにより、例えば意匠デザインの一部に組込む際の自由度が向上するとともに、飾りパーツの取り付け穴やシートを固定するための留め具をひっかける穴として好適に利用することが可能になる
【0043】
図7(c)の加飾用シート43及び
図7(d)の加飾用シート44では、シート状基部11における、立体加飾部12が突出する部分以外の領域に、複数の貫通穴40が開口形成されている。これらの複数の貫通穴40のうち、少なくとも1箇所の貫通穴40は、圧縮成形時にゲートを閉塞するゲートカットを行った際に形成することができ、また圧縮成形後にゲートを打抜くことによって形成することもできる。複数の貫通穴40の一部又は全部は、可動型の対応する部分に固定型に密着させる凸部を設けたり、加飾用シートの成形後にシート状基部11の対応する部分を打ち抜いたりすることによって設けることができる。
【0044】
図7(c)、(d)の加飾用シート43,44によっても、シート状基部11に貫通穴40が形成されていることにより、上記実施形態の加飾用シート10と同様の作用効果が奏される他、複数の貫通穴40が開口形成されていることにより、好みの位置に追加の飾りパーツ等を取り付けて、自己アレンジすることが可能になる。
【0045】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。
例えば、シート状基部と立体加飾部とは、射出圧縮成形によって一体成形された成形品である必要は必ずしも無く、その他の射出成形方法によって一体成形することもできる。射出成形以外の種々の成形方法によって形成することもできるまた、射出圧縮成形によって形成される貫通穴は、シート状基部の中央部分に限らず、上述のように中央部分以外の領域に形成してもよい。
また、シート状基部と立体加飾部とは、不透明な合成樹脂素材を用いて一体成形されていても良い。シート状基部の裏側の面は、平坦な面となっている必要は必ずしも無く、微細な凹凸が形成されていなかったり、メタリック調又はホログラム調のフィルムがラミネートされていなくても良い。
また、加飾用シートは、種々の容器の容器本体の外周面に取り付けて用いる必要は必ずしもなく、その他の種々の化粧品や日用品の外周面に取り付けて、これらの商品の装飾性や意匠性を向上させることもできる。シート状基部は、矩形状又は多角形状に形成される必要は必ずしもなく、円形状や長円形状等の、その他の種々の平面形状を備えるように形成することもできる。本発明の加飾用シートは、例えば化粧用のコンパクト容器の天面部等の、平坦な箇所に一体として取り付けて用いることもできる。
【符号の説明】
【0046】
10 加飾用シート
11 シート状基部
11a 表側の面
11b 裏側の面
12 立体加飾部(立体加飾模様)
12a 突出方向先端部
12b 単位立体加飾部
12c シャープな稜線
13 閉塞面部
13a 肉厚凸部
14 易破断線
15 引張り操作部
15a 指掛けリング部
15b 起立部
15c 折曲り連結部
20 加飾容器(ポンプ付き吐出容器)
21 容器本体
21a 筒状胴部
22 装着キャップ部
23 外容器
24 袋容器(内容器)
25 注出口部材
30 ポンプディスペンサー
31 ポンプハウジング
35 吸上げ筒部
36 ノズルヘッド
37 ピストン
40 貫通穴
41,42,43,44 加飾用シート
50 射出圧縮成形装置
51 固定型
52 可動型
52a 閉塞ピン
53 ゲート
53a 流出口
54 キャビティ
55 ディスクゲート(ゲート)
55a 円板状ゲート
h1 立体加飾部の突出方向先端部のシート状基部の表側の面からの高さ
t1 シート状基部の厚さ