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特許7231410定量吸入器用アドオン装置、遵守向上システム、及び定量吸入器における使用の遵守向上のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】定量吸入器用アドオン装置、遵守向上システム、及び定量吸入器における使用の遵守向上のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20230221BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018553240
(86)(22)【出願日】2016-04-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 IB2016052070
(87)【国際公開番号】W WO2017178865
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2019-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】518021849
【氏名又は名称】バイオコープ プロダクション エス.アー.
【氏名又は名称原語表記】BIOCORP PRODUCTION S.A.
【住所又は居所原語表記】P.I.T. Lavaur La Bechade, F-63500 Issoire (FR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】マルコス, アラン
(72)【発明者】
【氏名】ジェズ, エマニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ディオゴ, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】グールべ, パトリス
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ, アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ポラー, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】ジレ, ケヴィン
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】村上 聡
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-516265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0283341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定量吸入器の外部表面上へ取り外し可能に取り付けられるように適合されている、定量吸入器用遵守アドオン装置であって、
前記アドオン装置は、
少なくとも1つの圧力センサを有する遵守システムを備える、遵守システム筐体部品、及び
前記定量吸入器上に提供されたマウスピース出口の外部表面に適合し、当該外部表面を取り囲み、且つ当該外部表面と取り外し可能に係合するように、構成されている、マウスピース部品を備え、
前記マウスピース出口は、薬物の吸入時にユーザの口内に配置される口腔端部を備え、
前記遵守システム筐体部品は、前記マウスピース部品に適合し、且つ前記マウスピース部品の一方の端部である遠位端部の側において前記マウスピース部品と取り外し可能に係合するように構成され、
前記マウスピース部品は、前記アドオン装置を前記定量吸入器に取り付けた状態において、前記マウスピース部品の内部表面が前記定量吸入器の前記マウスピース出口の前記外部表面上に弾性的に密着するように係合し、前記マウスピース部品の他方の端部である近位端部が前記口腔端部と同一平面上に配置されるように構成されており、
前記アドオン装置を前記定量吸入器に取り付けた状態において、前記マウスピース部品の前記内部表面と前記マウスピース出口の前記外部表面との間には、空気流路が形成され
前記空気流路は、前記マウスピース部品の前記近位端部から前記遠位端部を経由して前記遵守システム筐体部品まで延び、
前記遵守システム筐体部品の少なくとも1つの前記圧力センサは、前記空気流路に沿った位置に配置されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
少なくとも1つの前記圧力センサは、前記空気流路を通した空気の流れにおける、少なくとも1つ又はそれ以上の空気圧力変化事象を測定するように構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記定量吸入器は、前記薬物を収容するカートリッジを備え、前記カートリッジを押し下げることにより薬物を放出可能に構成され、
前記遵守システム筐体部品は、前記アドオン装置を前記定量吸入器に取り付けた状態において前記カートリッジの下方に配置され、且つ第2圧力センサをさらに備え、
前記第2圧力センサは、前記遵守システム筐体部品の内部に設置され、前記遵守システム筐体部品の圧縮に起因する少なくとも1つ又はそれ以上の圧力変化事象を検出するように構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項4】
請求項に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記遵守システム筐体部品は、モーションセンサをさらに備え、
前記モーションセンサは、前記アドオン装置が前記定量吸入器上に取り付けられると、ユーザが誘起した自発的な、前記定量吸入器の少なくとも1つ又はそれ以上の振動事象であって、所定の運動レベルを上回る振動事象を、検出するように構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項5】
請求項4に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記モーションセンサは、加速度計である、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項6】
請求項4に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記モーションセンサは、約1Gから約3Gの、少なくとも1つ又はそれ以上の所定の加速度運動を検出するように構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記遵守システム筐体部品は、マイクロコントローラと、データストレージの手段、視覚信号を生成する手段、可聴信号を生成する手段、電力供給源、無線通信モジュール、及び通信ポートから選択された少なくとも1つ又はそれ以上の要素とを、さらに備え、
少なくとも1つ又はそれ以上の前記要素はそれぞれ、前記マイクロコントローラに接続されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項8】
請求項4を引用する請求項7に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マイクロコントローラは、前記モーションセンサにより検出された少なくとも1つ又はそれ以上の前記振動事象が、ユーザが誘起した自発的な、前記定量吸入器の振動事象に対応しているかどうかを判定するように、且つそれによって、前記定量吸入器が薬物送達を行う用意ができたかどうかを判定するように、構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項9】
請求項3を引用する請求項7に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マイクロコントローラは、前記第2圧力センサにより検出された前記圧力変化事象を記録するように、さらに構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項10】
請求項に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マイクロコントローラは、前記第2圧力センサにより検出された前記圧力変化事象が前記カートリッジの押し下げによる前記定量吸入器の作動に伴う薬物放出に対応しているかどうかを判定するように、さらに構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項11】
請求項4を引用する請求項7に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マイクロコントローラは、前記モーションセンサにより検出された前記振動事象、及び前記第2圧力センサにより検出された前記圧力変化事象が、前記定量吸入器のマウスピースを通して薬物を放出するためにユーザが前記定量吸入器の薬物カートリッジを用意して押す動作に対応しているかどうかを判定するように、さらに構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記遵守システム筐体部品は、任意のセンサ事象が発生した時刻を登録するための計時手段も備える、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項13】
請求項3を引用する請求項7に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記遵守システム筐体部品は、少なくとも1つの前記圧力センサとして第1圧力センサを備え、
前記マイクロコントローラは、前記第2圧力センサにより検出された前記圧力変化事象が発生した時刻、及び前記第1圧力センサにより検出された圧力変化事象が発生した時刻を記録し、次いで、前記第1及び第2圧力センサから受信した全てのデータ及び対応する事象の時刻を、所定長さの経過時間の間バッファに記録するように、構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項14】
請求項7から11及び13のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マイクロコントローラは、リモート装置、リモートサーバ、又は分散型ネットワークシステム上で実行されるソフトウェアアプリケーションと、データやり取りを行うように、さらに構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項15】
請求項14に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記データの前記やり取りは、無線通信モジュール又は通信ポートを介して行われる、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項16】
請求項から11及び13から15のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マイクロコントローラは、前記遵守システムの電力供給源を管理するように、さらに構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項17】
請求項15のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記通信ポートは、前記遵守システムの電力供給源の再充電を可能にするように構成されている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マウスピース部品の前記内部表面には、前記遠位端部から前記近位端部に向かって延びる溝が設けられ、
前記空気流路の近位領域は、前記マウスピース部品の前記溝の内側表面と、前記定量吸入器の前記マウスピース出口前記表面との間に作られた空間により形成される、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記空気流路の遠位領域は、第1圧力センサと直接一直線に並ぶように配置された、前記遵守システム筐体部品の開口部により形成される、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記空気流路の遠位領域は、前記遵守システム筐体部品の遠位端部に配置された、前記遵守システム筐体部品の開口部により形成される、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記空気流路の遠位領域と近位領域との間に位置する中間領域は、
一部分は、前記遵守システム筐体部品内に提供され、且つ前記遵守システム筐体部品の外壁の近位端部に位置し、
一部分は、前記マウスピース部品の前記遠位端部に作られた空間によって提供され、
前記2つの部分は、相互に直接空気流接触して、前記中間領域を形成する、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項22】
請求項18に記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マウスピース部品の前記溝の前記内側表面の遠位端部は、前記マウスピース部品の突出した連結突起の切り出した部分によって規定される、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記定量吸入器上に提供された前記マウスピース出口の外部表面に適合し、当該外部表面を取り囲み、且つ当該外部表面と取り外し可能に係合するように構成されている前記マウスピース部品は、実質的に環形状を有する、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マウスピース部品は、共に合わさって環形状を形成する内側及び外側周壁によって規定された、実質的に環形状を有し、
前記マウスピース部品の前記内側周壁は、前記マウスピース出口の外部表面と係合する、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1つに記載の定量吸入器用アドオン装置であって、
前記マウスピース部品は、外側及び内側周壁から形成された、実質的に環形状を有し、
前記内側周壁には、前記マウスピース出口の前記外部表面と弾性的に係合するための把持手段が備わっている、
定量吸入器用アドオン装置。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか1つに記載の遵守システムアドオン装置を備え付けた、定量吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MDIとしても知られている手持ち式定量吸入器に関するものであり、より具体的には、定量の薬物を投与することを目的とした手持ち式定量吸入器の使用に関わる治療計画の遵守の向上に関するものである。そのような定量吸入器は、一般に中空体を備え、その中空体の中にカートリッジが挿入される。カートリッジは、投与又は送達すべき薬物を含む。カートリッジの投与機構が作動すると、薬物が、ガス状のビヒクル中を浮遊する薬物微粒子又は薬液微粒子のエアロゾルとして放出されるように、又は薬物の溶液が、カートリッジなどの高圧環境から装置のユーザの周囲環境などのより低圧の環境へと放出されると、微細に分散するように、薬物は一般に調合される。
【背景技術】
【0002】
そのような装置に係る最大の問題の1つは、それらは、定量の、すなわち、既知且つ所定の量の有効薬物物質を散布するが、製造業者、又は治療を処方するヘルスケアの専門家の推奨に従って薬物が投与又は送達されたかどうかを知ることは非常に難しいということである。これは、例えば、薬物放出の作動と吸入との間の正しい調整の不足によって、薬物がユーザによって正しく吸入されない状況を引き起こす可能性や、例えば、薬物が偶発的に送達された場合、又は例えば、ユーザが、その前の薬物吸入の試みがうまくいかなかった、又は不十分であったと考えたために過剰投与までもが行われた場合に、薬物が単に無駄に使われる状況を引き起こす可能性がある。そのような装置は、例えば、喘息のような長期間の呼吸状態を治す又は治療するために、長期間にわたってしばしば使用されるため、そのような手持ち式定量吸入器の誤った投与及び使用は、他のより深刻な問題を引き起こす可能性がある。
【0003】
吸入すべき薬物の送達に対するより優れた管理を行うための、そしてユーザに対してある程度の安心、フィードバック、又は快適性を提供するための、いくつかの試みが、長年にわたって提案されてきた。これらの試みの多くは、投与すべき薬物を含むカートリッジを受け入れる中空体内に、センサ及び電気回路を直接組み込むこと(これを、本明細書では理解しやすいように、「一体化アプローチ」と称す)に着目したもの、又は中空体又はカートリッジに何らかの方法で追加する装置に関するものである。後者の解決策は、「アドオン」装置と称される。なぜならば、一般に当該装置は、例えば、装置の電気回路のクリーニング又は交換を行うために、中空体、又はカートリッジに、必要に応じて付け足す、又は取り外すことができるからである。
【0004】
一体化アプローチの一例は、欧州特許EP0617762において開示されている。中空体が提供され、その中空体内に薬物投与カートリッジが挿入される。中空体は、視覚及び可聴信号を含む遵守システムと、カートリッジにより投与された薬物の正しい投与に関するメッセージをユーザへ表示するディスプレイとを装備している。中空体には、外気又は周囲空気からの空気の通過を可能にする流路又は管路が、中空体を通して、薬物散布のためのマウスピース出口内へと通過するために、備わっている。流路を流れる空気の圧力変化を測定するために、電子センサ手段が流路内に配置されており、各作動に先立ちキャニスタが振られたかどうかを検出するために、モーションセンサ手段が提供されている。様々なセンサ手段から得られた様々な信号は、ユーザへ適切なメッセージを示すために、処理され、ディスプレイへ送られる。そのようなシステム及び装置の問題は、それらが、一方では全てのマイクロ電子回路を、他方では空気の流れを測定するための余分な空気流路を含めるために製造された特別な中空体を必要とすること、及びその結果として、中空体が、特に、例えば、治療計画を正しく遵守しない危険性が最も高い子供の手によって、適切に操作することが困難なほどにかさばることである。
【0005】
「アドオン」装置アプローチの一例は、欧州特許EP0387222において開示されている。この文書には、圧力充填されたキャニスタ、及びキャニスタを含むための中空体を備える定量吸入器システムが記載されている。圧力キャニスタには、ノズルが備わっており、ノズルを有するブラケットに設置されている。ブラケットは、吸入の流れのための空気流路、及び電子ユニットに接続された検出器を備える、分離可能なユニットの形状を呈する。患者がマウスピースから吸入すると、空気の流れが、圧力キャニスタ周辺の間隙を通り過ぎ開放され、マウスピースを通して広がる。吸入の初期段階において、患者は、服用量がノズルを通して放出されるように、キャニスタを押し下げなければならない。キャニスタ及びブラケット周辺の空気の流れがノイズを生じさせ、このノイズはノイズ検出器により検出することができる。用量がノズルを通して放出されると、音が生じ、この音は、ノイズと区別することができ、検出器により検出することができる。これらの音は相互に異なるため、マイクロフォンを検出器として用いることができる。図7に係る吸入器を通した吸入において、周囲圧力とマウスピース開口部における圧力との間に圧力降下が生じる。すなわち、患者が吸入すると、ブラケット内に準圧力が生じ、準圧力は、圧力トランスミッタにより検出することができる。服用量の放出において、短時間の強い圧力変化が生じ、これも圧力トランスミッタにより検出可能である。図7に係る実施形態において、圧力トランスミッタは、服用量の吸入及び放出の両方、すなわち、患者が服用量のエアロゾルを処方された方法で使用するよう、管理するために必要な情報を、検出するために用いることもできる。
【0006】
アドオン装置の別の例は、欧州特許EP146172から得ることができる。この文書は、定量吸入器(MDI)とは対照的に、ドライパウダー吸入器(DPI)用のアドオンを開示している。この文書におけるドライパウダー吸入器は、患者が吸入を実行したことを検出するセンサ、オン/オフスイッチ、電力供給源、センサがユーザによる吸入を感知し、装置のスイッチがオンになった際に、当該手段への電気の供給により可聴信号又は光信号を発生させるための管理手段用の要素を含む。可聴又は光信号を発生させる手段は、吸入の強さ及び頻度を判定するように構成されており、適切な呼吸パターンを達成したことを患者に知らせるため、判定された吸入の強さ及び頻度の値に基づき光及び音の信号を発生させるためのものである。
【0007】
アドオン装置の別の例は、米国特許US5794612から得ることができ、これは、マウスピース出口に付け足す吸入チャンバーを開示し、定量吸入器のマウスピース出口によって形成されるチャンバーの他に、吸入のための追加のチャンバーを形成するものである。この追加のチャンバーは、超音波センサ、差圧センサ、及び情報を記憶しユーザに表示するためのマイクロ電子回路を装備している。
【0008】
米国特許US5809997は、定量吸入器の中空体の背面上にねじ留めされるさらに別のアドオン装置を開示し、これは、カートリッジ上に提供されたバルブ軸の隣にカートリッジの一部を係合するために、中空体の背面にひずみゲージアームを挿入できるような、中空体の変更も必要とする。感知アームの役割は、カートリッジが薬物の放出のために適切に圧縮されたかどうかを判定できるように、アドオン装置に含まれるマイクロプロセシング電気回路にデータを通信することである。この装置の問題は、中空体の特定の変更を必要とすることである。すなわち、定量吸入器の製造業者により提供されたような中空体の完全性は、必然的に破壊される。
【0009】
米国特許US8807131は、さらに別の定量吸入器用アドオン装置を開示し、装置の変形物の1つは、マイクロ電子回路及び通信モジュールのための外部筐体と、筐体に接続され、薬物カートリッジを収容する中空体内に設置されている、センサとを備え、これにより、センサは、マウスピース出口のチャンバー内に配置される。この方式で実施されるセンサは、ユーザがマウスピース出口をユーザの口に挿入する又は口から引き抜く際、又は、カートリッジから薬物が放出される際の、温度変化を検出するための、温度センサである。加圧されたカートリッジからの薬物の放出は、温度センサにより検出可能といわれている温度変化も引き起こすからである。
【0010】
米国特許US2007023034は、定量吸入器による投与の遵守向上のための、取り外し可能なアドオン装置を開示し、この装置は、薬物カートリッジを受け入れる中空体の下端部に備え付けられている。中空体の下端部の下側に準拠モニターが配置されている。準拠モニターのゴム筐体は、電池、スイッチ、電子モジュール、温度センサ、及び接点のセットを含む。電池、電子モジュール、スイッチ、及び接点は、プリント基板上に取り付けられ、温度センサは、定量吸入器のマウスピースの底面に沿って延びるゴム筐体の突き出た部分の終端に取り付けられている。スイッチを押し下げることができるように、スイッチは柔軟性のあるゴム筐体で覆われている。電気接点は、準拠モニターがドッキングステーション上に設置された際に取り外す、又は開くことが可能なゴム筐体の開閉可能な部分で覆われている。繰り返しになるが、この文書で提案された解決策は、中空体の変更を必要とし、この場合、準拠モニターを定量吸入器と同一平面に据え付けられるように、切り取る必要がある。
【0011】
PCT特許出願WO2011083377A1によれば、MDIのマウスピース出口の周囲に適合し、マイクロ電子回路、センサ、及びユーザにフィードバックを提供するための表示手段を含む、定量吸入器用アドオン装置が開示されている。MDIの中空体は、アドオン装置内に存在し、堅い筐体内に取り付けられ支持された、柔軟性のある内側部分により保持されている。柔軟性のある内側部分は、MDIの中空体のマウスピース出口を受け入れるように構築された開口部を規定する、壁を含む。装置は、筐体内に薬剤が流れるための中央流路が作られるように、マウスピースを筐体の前端に含む。筐体のマウスピースは、追加のチャンバーを作り、薬物は、カートリッジから放出されたあと、チャンバーを通して、MDIのマウスピース出口内に流れ込まなければならない。
【0012】
上述の全ての解決策には、不利な点がある。完全な一体化アプローチの場合、必要となる全ての電気回路、センサ、及びスクリーン又は管理ボタンを含められるように、中空体を変更しなければならず、それによって容積が増し、小さな手を持つユーザが装置を正しく操作することが難しくなる可能性がある。そのような装置に、ユーザの装置との対話のためのスクリーン及びボタンを装置に組み込んでも、相対的な容積は、それでも尚依然として最小限にとどめなければならず、それによって大きな手を持つ人、又は単に一般に、手の調整及び動きの正確性に問題を抱える人にとって問題となる。アドオン装置アプローチの場合、現在出願人が知る装置で、MDIに取り付けた際に装置の単純な操作を可能にし、同時に正確な遵守及び準拠データの収集及び報告を可能にするものは無い。従って、本発明の目的の1つは、先行技術の装置に付随する困難を克服する定量吸入器用遵守アドオン装置である。以下にさらに説明するように、本発明の別の目的は、本発明に係るアドオン装置を用いた、定量吸入器により送達される薬物の送達の遵守向上のための方法である。本発明のさらに別の目的は、定量吸入器用遵守システムである。本発明のさらなる目的は、さらなる説明及び請求項において示され又は議論された際に、明らかとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のとおり、本発明の1つの目的は、定量吸入器の外部表面上へ取り外し可能に取り付けられるように適合されている、定量吸入器用遵守アドオン装置であって、
前記アドオン装置は、
少なくとも1つの圧力センサを有する遵守システムを備える、遵守システム筐体部品、及び
定量吸入器上に提供されたマウスピース出口の外部表面に適合し、外部表面を取り囲み、且つ外部表面と取り外し可能に係合するように、構成されている、マウスピース部品を備え、
前記遵守システム筐体は、前記マウスピース部品に適合し、且つ前記マウスピース部品と取り外し可能に係合するように構成され、又は逆も同様で、
前記マウスピース部品は、前記出口を通した投与量の薬物の送達を妨げることなく、定量吸入器のマウスピース出口の外部表面に合うように、特別に適合されている、
定量吸入器用アドオン装置である。
【0014】
従って、上述の内容より、MDI用遵守アドオン装置は、以下の2つの主要な部品を備えることが理解できる。
遵守システムを収容するための筐体部品である、第1部品、及び
定量吸入器上に提供されたマウスピース出口の外部表面に適合し、外部表面を取り囲み、且つ外部表面と取り外し可能に係合するように、構成されている、マウスピース部品である、第2部品。
【0015】
本出願において、「内側」という単語は、「内部」という単語と置き換え可能であり、「外側」という単語は、「外部」という単語と置き換え可能である。
【0016】
本発明の目的に従い、遵守システム筐体部品は、前記マウスピース部品に適合し、且つ前記マウスピース部品と取り外し可能に係合するように構成され、又は逆も同様で、つまり、マウスピース部品は、前記遵守システム筐体部品と取り外し可能に係合するように構成されている。最終結果として、遵守システム筐体部品及びマウスピース部品のいずれか一方はそれぞれ、他方の部品と係合、又は他方の部品から取り外すことが可能である。2つの部品の、この取り外し可能又は解放可能な係合による接続及び脱離を達成するために、例えば、少なくとも1つ又はそれ以上の突起及び溝による実矧ぎ手段、クリップフィット手段、ほぞ穴とほぞによる手段、スロットと突出部による手段、及び一般に技術的に既知の他の解放可能な類似システムなどの、様々な手段が想定される。遵守システム筐体、マウスピース部品、又はその両方のいずれかに提供された、解放可能に取り付け及び取り外しできる、又は係合及び係脱するそのようなシステムの有利な点の1つは、このシステムが、ユーザーがアドオン装置の様々な部品の、必要に応じた、例えば、マウスピース部品のクリーニングを行うための、分解を可能にすることである。筐体部品とマウスピース部品との間で解放可能に係合及び係脱するそのようなシステムのさらなる有利な点は、それによって、装置の製造業者が、筐体と、定量吸入器上に提供されたマウスピース出口の外部表面に適合し、外部表面を取り囲み、且つ外部表面と取り外し可能に係合するように、構成されている、複数のマウスピース部品とを含む、単一の遵守システムを製造することができることである。そして、これは、製造業者が、複数類型の銘柄の定量吸入器用に、筐体内に収容される単一の遵守システムを提供できることを意味する。なぜならば、各MDI製造業者は、製造業者自身のMDIの範囲のモデル及び投与すべき薬物に応じた、わずかに異なるマウスピース出口の形状を有する傾向にあるからである。
【0017】
遵守システム筐体部品は、定量吸入器の中空体の任意の部分と連結又は接続する必要がなく、アドオン装置をMDI上に取り付けられるように中空体を変更する必要がないことも、上述より理解されよう。マウスピース部品のみが、定量吸入器上に提供されたマウスピース出口の外部表面に適合し、外部表面を取り囲み、且つ外部表面と取り外し可能に係合するように、構成されており、上述のように、これは、現在入手可能な、又は将来開発されるであろうMDI用マウスピース出口のモデルのそれぞれ及びいずれとも、適合し、取り囲み、取り外し可能に係合するように、好ましくは適合させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの実施形態において、マウスピース部品は、MDIのマウスピースの近位又は口腔端部までしか延びない。好ましくは、前記マウスピース部品は、MDIのマウスピースの近位端部と一直線に並ぶ、又は近位端部からわずかに引き出された近位又は口腔端部を有する。このようにして、MDIによりすでに提供されているチャンバーに加えて、薬物が通過しなければならないであろう追加のチャンバーが1つも作られず、それによって、余分な飛行経路長さに起因して、通常よりも多くのエアロゾル性の薬物が、追加のチャンバーの壁上に堆積する、又はその対象に到達しない危険性が下がる。先行技術の解決策から知られている余分な又は追加のチャンバーが無いということは、マウスピース部品がマウスピース出口を遮ることも、ユーザへの薬物の流れを妨げることもないことも意味している。多くの定量吸入器は、ユーザへの製剤の正しい送達のために必要とされる特定の流れ特性を有するため、これは、既知のシステムよりも本発明のアドオン装置が顕著に有利な点といえる。
【0019】
本出願において、MDIのマウスピースの近位又は口腔端部は、マウスピースの、ユーザの口に最も近い端部又は先端として規定される。
【0020】
本発明の別の実施形態によると、前記マウスピース部品及び前記遵守システム筐体部品は、共に組み立てられると空気流路を形成し、筐体部品の少なくとも1つの圧力センサは、前記空気流路に沿った位置に配置されている。空気流路は、空気が、遵守システム筐体部品の外から、前記筐体部品を通して、次いでマウスピース部品の少なくとも1つの部分を通して流れることができるように、構成されている。アドオン装置がMDIのマウスピース出口上に取り付けられると、前記空気流路が、少なくとも部分的にMDIのマウスピース出口の外部表面に沿って前記MDIの近位又は口腔端部の方向に延びるように、遵守システム筐体部品及びマウスピース部品によって形成された空気流路は、好ましくは規定される。
【0021】
1つの実施形態において、前記空気流路は、MDIの外部マウスピース出口に沿って、MDIの前記マウスピース出口の近位又は口腔端部までずっと延びている。
【0022】
別の実施形態において、空気流路の近位領域は、マウスピース部品の溝の内側表面と、定量吸入器のマウスピースの対応する外側又は外部表面との間に作られた空間から形成される。或いは、マウスピース内の空気流路は、マウスピース部品それ自体を構成する材料内に直接提供された流路又は管路によって規定され、前記管路は前記マウスピース部品の近位又は口腔端部までずっと延びている。別の代替実施形態において、空気流路は、内側表面の複数の開口部によって規定され、前記マウスピース部品の近位又は口腔端部までずっと、又はその途中まで延びている。マウスピース部品の内側表面に沿って、ずっと、又は途中まで延びる空気流路を有する目的は、ユーザが吸入する際に前記空気流路に沿って空気が吸い込まれること、又は代わりに、ユーザが息を吐く、又は吸入を止める際に前記空気流路に沿って空気が吐き戻されることを可能にし、それによって、前記空気流路に沿って空気圧力の僅かな吐き戻しを生じさせることである。実際には、多くの吸入器によって提供される治療は、ユーザが、MDIのマウスピース出口を通してカートリッジにより送達された薬物を吸い込み、又は吸入し、次いでユーザが吸入を止め、しばらく、通常は数秒又はそれ以上の間息を止めるという原則に基づいて作用する。吸入を止める段階によって空気流路内に微小な空気圧力変化が生じ、第1圧力センサがこれを検出する。通常はユーザの頭の中において人力で数えられた、時計又は他の計時装置により数えられた、又は例えば子供の場合は自身の指によって数えられた、割り当て時間の終わりに、ユーザは息を吐く。息を吐く段階は、通常は、ユーザの口からMDIが取り外されて行われるが、ユーザが、割り当てられた、又は推奨される時間息を止めることが不可能又は難しすぎると感じ、息を吐く前にMDIを自分の口から取り外すのに十分な素早さに欠けることがしばしば起こりうる。この結果、空気流路に沿って空気が吐き戻され得る。繰り返しになるが、第1圧力センサがこの変化を検出する。
【0023】
さらに別の実施形態において、空気流路の遠位領域は、前記筐体外の局所大気環境へとつながり、且つ前記第1圧力センサと直接一直線に並ぶように配置された、遵守システム筐体の外壁における開口部により形成される。この実施形態において、遠位領域、すなわち、ユーザが吸入すると一般に空気が装置内に引き込まれる領域における空気流路は、空気が、遵守システム筐体の外壁の開口部を介して流れ込み、そこから第1圧力センサ(第1圧力センサにおいて、前記空気の流れに起因して空気圧力変化が検出される)の上方を流れ、次いでマウスピース部品の口腔又は近位の領域又は端部へとつながる残りの空気流路を通って流れることを可能にする。
【0024】
代替実施形態において、空気流路の遠位領域は、前記筐体の遠位端部に配置された遵守システム筐体内の開口部により形成される。そのような開口部は、例えば、USBポート、マイクロUSB、又はミニUSBポートなどの通信ポートの配置にある、遵守システム筐体の外壁の開口部に代表され、或いは、前記遵守システム筐体の外壁のどこか他の場所に作られた複数の開口部などの、1つ又はそれ以上の開口部に代表される。
【0025】
さらに別の実施形態によると、前記空気流路の遠位領域と近位領域との間に配置される中間領域は、一部分は、遵守システム筐体内に提供され、且つ前記筐体の外壁の近位端部に配置され、一部分は、前記マウスピース部品の遠位端部に作られた空間によって提供される。これら2つの部分は、相互に直接空気流接触して、前記中間領域を形成する。従って、中間領域は、遵守システム筐体の近位開口部、及びマウスピース部品の遠位端部空間の両方を備える。
【0026】
好ましくは、中間領域は、マウスピース部品の溝の内側表面の遠位端部と直接空気流連通している、遵守システム筐体内の開口部によって形成される。
【0027】
別の好ましい実施形態において、マウスピース部品の溝の内側表面の遠位端部は、マウスピース部品の突出した連結突起の切り出した部分によって規定される。
【0028】
空気流路の全長及び形状は、空気が空気流路を通り抜け、遠位領域又は遠位端部から、近位領域又は近位端部へ向かって、若しくはその逆のいずれかの方向に、且つ前記第1空気圧力センサの上方又は第1空気圧力センサを通して流れる際の、第1圧力センサにより検出可能な圧力変化に対する、適切な感度を提供できるように規定されている。
【0029】
さらに別の実施形態において、定量吸入器上に提供されたマウスピース出口の外部表面に適合し、前記外部表面を取り囲み、且つ前記外部表面と取り外し可能に係合するように構成されているマウスピース部品は、実質的に環形状を有する。出願人は、概ね環形状がマウスピース部品に最も有利な形状であると認められると判断した。なぜなら、環形状は、マウスピース部品が、MDIのマウスピース出口の外側又は外部表面上へその周囲を滑り、且つ当該表面と係合できるように、ぴったりと合う弾性又は摩擦に基づく適合を実行することを可能にするからである。マウスピース部品を実質的に環形状とすることで、現在入手可能な、又は将来開発されるであろうMDIの入手可能な任意のマウスピース出口の輪郭に適合するように、前記部品を容易に設計することも可能になる。
【0030】
この目的のため、別の実施形態において、マウスピース部品は、共に合わさって環形状を形成する内側及び外側周壁によって規定された実質的に環形状を有し、マウスピース部品の内側周壁は、マウスピース出口の外部表面と係合する。
【0031】
さらに別の実施形態において、環形状のマウスピース部品の内側周壁には、マウスピース出口の外部表面と弾性的に係合するための把持手段が備わっている。そのような把持手段は、いくつかの異なる方法で、例えば、クッション、パッド、突条、リブ、溝、スティプル、又はMDIのマウスピース出口上で環形状のマウスピース部品をぴったりと弾性により確実に適合させるその他の同等の把持手段から成る群より選択された、少なくとも1つ又はそれ以上を用いて、提供することができる。出願人は、マウスピース部品を定位置に留め、その一方でユーザが比較的容易に取り外すことを可能にする、そのようなぴったりと合う弾性による適合を確実にするための最も適切な手段は、環形状のマウスピース部品の内側周壁上の戦略的に選ばれた領域に置かれたエラストマーベースのパッドであることを発見した。把持手段は、マウスピース部品をMDIのマウスピース出口の外側周囲面上に正しく据え付け留めることを可能にするだけではなく、装置が取り付けられた際、マウスピース部品の内側周壁の上方を突き出る把持手段の相対的な厚みと深さに応じて、中間領域と近位領域との間に空気の追加の流路を提供することもできる。
【0032】
本発明の1つの実施形態によると、少なくとも1つの圧力センサ、又は第1圧力センサは、少なくとも1つ又はそれ以上の空気圧力変化事象を検出するように構成されている。圧力センサは、例えば、高度を判定するために携帯電話技術においてしばしば用いられる種類の空気圧力用圧力センサ、ピエゾ抵抗型圧力センサ、デジタル絶対圧力センサ、MEMS圧力センサなどの、任意の好適な類型のものでよい。商業的に入手可能な圧力センサの好適な例は、ボッシュBMP 280、NXP MPL 115A、アンフェノールNPA 201、オムロン25MP-01-01、及びST LPS 25 HBという名称で、販売されている。好ましい圧力センサは、ピエゾ抵抗型圧力センサであり、例えば、フランスのSTマイクロエレクトロニクスにより販売されているST LPS25HBであり、これは、本発明のアドオン装置に特に好適であることが分かっている。
【0033】
別の実施形態において、少なくとも1つの圧力センサは、マウスピース部品及び前記遵守システム筐体部品が共に組み立てられた際に両者によって形成される空気流路を通した空気の流れにおける、少なくとも1つ又はそれ以上の空気圧力変化事象を測定するように構成されている。第1圧力センサは、空気流路の経路に配置され、特定の場所の空気圧力変化を測定又は検出するためのみに用いることが可能であるが、この圧力センサを、空気流路長さの全体、又は実質的に全体にわたる任意の点で起こる空気圧力変化事象を検出するように、構成することが好ましい。この程度まで、空気圧力センサの感度は適切に設定される。
【0034】
さらに別の実施形態において、遵守システム筐体部品は、第2圧力センサをさらに備える。この第2圧力センサは、少なくとも1つ又はそれ以上の、ユーザが作動させた遵守システム筐体の圧縮事象を、登録するように好ましくは構成されている。これに関して、ユーザが作動させた遵守システム筐体の圧縮事象は、ユーザによって直接的又は間接的に遵守システム筐体に加えられた機械圧縮を指す。そのような機械圧縮は、(この構成において、遵守システム筐体が、少なくとも部分的にMDIの中空体の下側に配置される場合を除いて、)ユーザがMDIを親指とその他の指の間に、通常は、親指をカートリッジ本体の下側に、その他の指をカートリッジの最上部に持った際に、親指、又は例えば手のひらで、遵守システム筐体を圧迫し、この機械圧縮がセンサによって検出される程度に遵守システム筐体を圧縮することで、一般に起こる。
【0035】
さらに別の実施形態において、遵守システム筐体の本体は、半柔軟性の材料、例えば、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレンポリマー)、PC(ポリカーボネートポリマー)、POM(ポリオキシエチレンモノマー)、及びABS-PC(アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネートコポリマー)から成る群より好適に選択されたプラスチック材料で好ましくは作られ、この中で、ABS-PCは、最も好ましく、そのような状況で一般に加えられ得る力に対する適切な度合いの柔軟性及び耐性を提供することが分かっている。或いは、遵守システム筐体は、ユーザが、手のひら又は握りこぶしをカートリッジの最上部に当て、遵守システム筐体がその上にあるより硬い又は柔らかい表面を押し下げ圧迫することに起因する、機械圧縮に耐え得る材料で作ることができる。従って、遵守システム筐体の本体は、加えられた機械圧縮の刺激を受けて弾性的に変形可能な素材で作られ、この変形は、一定の大きさの機械圧縮が起こったことを第2圧力センサが検出するうえで、十分なものである。
【0036】
別の実施形態において、第2圧力センサは、遵守システム筐体内に提供されたプッシュボタンと接続可能な関係にすることが可能で、接続可能なプッシュボタンは、遵守システム筐体の本体が変形すると、第2圧力センサに直接的な機械圧力を加える。そのような構成において、接続可能なプッシュボタンを、遵守システム筐体の本体の内壁に取り付けることができ、筐体に与えられた弾性による変形により、プッシュボタンが第2圧力センサの表面と接続された関係に移行する。それによって、センサに、好適な信号又はデータポイントに変換される直接的な機械圧縮が加わるか、又はその代りに、電気回路、及び対応する信号であって、信号の強さが加えられた圧力を示す信号が、プッシュボタンとセンサとの間に作られる。
【0037】
さらに別の実施形態において、遵守システム筐体は、モーションセンサをさらに備える。
【0038】
ある好ましい実施形態において、モーションセンサは、アドオン装置が定量吸入器上に取り付けられると、ユーザが誘起した自発的な、定量吸入器の少なくとも1つ又はそれ以上の振動事象であって、所定の運動レベルを上回る振動事象を登録するように、構成されている。
【0039】
別の実施形態において、モーションセンサは、ユーザによって与えられ、且つあるレベルを上回る運動を検出し、それによって、遵守システムがスイッチオン若しくはオフ、又はスリープできるように構成されている。モーションセンサは、設定したレベルを下回る任意のレベルの運動を無視し、しきい値又は設定したレベルを超える任意のレベルの運動を登録するように、好ましくは構成されている。
【0040】
必要とされるレベルの運動の検出が達成可能な1つの好ましい方法は、加速度計のモーションセンサとしての使用によるものである。適切なモーションセンサは、ボッシュBMA 455、アナログ・デバイセズADXL 363、NXP FXL 58471 8471、及びST LIS2DHという名称で、商業的に入手可能なそれらのモーションセンサから好適に選択することができ、この中では、ST LIS2DHを参照のもとSTマイクロエレクトロニクスにより販売されているモーションセンサが特に好適である。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態によると、モーションセンサは、約1Gから約3Gの、好ましくは2Gから2.5Gの、少なくとも1つ又はそれ以上の所定の加速度運動を登録するように構成されている。好ましくは、前記モーションセンサは、少なくとも2個から5個の連続する加速度運動を登録し、2個から5個の連続する加速度運動はそれぞれ上述の範囲内であるように、構成されている。
【0042】
さらに別の実施形態において、遵守システム筐体は、マイクロコントローラと、データストレージの手段、視覚信号を生成する手段、可聴信号を生成する手段、電力供給源、無線通信モジュール、及び通信ポートから選択された少なくとも1つ又はそれ以上の要素とをさらに備え、少なくとも1つ又はそれ以上の前記要素はそれぞれ、前記マイクロコントローラに接続されている。マイクロコントローラは、プログラム可能で好適な任意のマイクロコントローラから選択することが可能であるが、好ましくは、前記マイクロコントローラは、商業的に入手可能な以下のマイクロコントローラから選択される。一体化されたブルートゥースモジュール及びアンテナを含むブロードコムBCM 20736S、一体化されたブルートゥースモジュール及びアンテナを含むブロードコムBCM 20732S、一体化されたブルートゥースモジュールを含むサイプレスPSSoc 4xx7、外付けのブルートゥースBlueNRG回路を装備したSTM 322、一体化されたブルートゥースモジュールを有するノルディックセミコンダクターNRF 51、及び一体化されたブルートゥースモジュールを有するノルディックセミコンダクターNRF 52。前記リストの中で好ましいマイクロコントローラは、ノルディックセミコンダクターNRF 52である。
【0043】
装置は、装置の所望の利用、及び装置が相互作用又は適合するように意図されているMDIの特定のモデル又は銘柄に応じて、異なる方法で機能することができるように構成可能である。特に、1つの実施形態によると、装置をオフ状態に留めることができ、これにより、遵守システムのほとんどの部品が電力供給源より給電されない状態になるか、システムがスリープ状態に保たれる。モーションセンサは、例えば、約1Gから約3Gの加速度に対応する運動を検出し、次いで、約1Gから約3Gの加速度の2個から5個の連続する運動がそれぞれ検出されると、マイクロコントローラにその情報を送るようにのみ構成されている。連続する加速度運動のそのような数が上述の範囲内で減少していることがそれぞれ検出されると、マイクロコントローラは、この情報を受け取り、マイクロコントローラを介してシステムのその他の部分が起動し電力供給源により給電されるようにすることで、さらにそれに対応する。或いは、ユーザがMDIからの薬物の送達を必要とし、次いで、適切に含められた電力供給源スイッチであって、アドオン装置内に提供され遵守システムに接続された電源スイッチを切り替えるときまで、装置全体を給電されない状態、又はオフ状態に保つことが可能である。
【0044】
別の実施形態によれば、マイクロコントローラは、第1モーションセンサから登録された少なくとも1つ又はそれ以上の振動事象が、ユーザが誘起した自発的な、定量吸入器の振動事象に対応しているかどうかを判定し、且つそれによって、定量吸入器が薬物送達を行う用意ができたかどうかを判定するように、構成されている。実際には、2個から5個の連続する加速度運動は、MDIの使用のための通常の取扱説明書のとおりに、製剤の放出に先立って、送達のためにカートリッジ内のエアロゾルを準備又は用意することを目的としてユーザがMDIを振る動作に、正確に対応するとみなされる。上述のように、これらの加速度運動は、モーションセンサにより捉えられ、マイクロセンサへ送られる。
【0045】
さらに別の実施形態によると、マイクロコントローラは、ユーザが作動させた遵守システム筐体の圧縮に起因する、第2圧力センサにおける圧力変化事象を登録するように、さらに構成されている。
【0046】
さらに別の実施形態において、マイクロコントローラは、第2圧力センサにおいて登録された圧力変化事象がユーザによる薬物送達の作動に対応しているかどうかを判定するように、さらに構成されている。従って、例えば、カートリッジを押し下げ、そのバルブにMDIのマウスピース出口内へ薬物を放出させることで、薬物を放出させるために、ユーザがMDIを作動させたかどうかを判定することができるように、マイクロコントローラは構成されている。第2圧力センサに係る項において上述したように、この検出は、第2圧力センサに加えられた機械圧縮による圧力又は力の登録によって行われる。
【0047】
ユーザが偶発的にカートリッジを押し下げ、筐体部品が機械的に圧縮され、それによって、薬物が放出されたことを示す信号が生成される可能性があることを念頭に置き、マイクロコントローラは、第1モーションセンサから登録された振動事象、及び第2モーションセンサにおいて登録された圧力変化事象が、定量吸入器のマウスピースを通して薬物を放出するためにユーザが定量吸入器の薬物カートリッジを用意して押す動作に、対応しているかどうかを判定するように、さらに構成されている。すなわち、マイクロコントローラは、MDIが正しく用意されたこと、及び遵守システム筐体部品内に含まれる第2圧力センサへ与えられた機械圧縮による力又は圧力に対応する好適な圧力をカートリッジ上に加えることにより、薬物が放出されたことを、確かめるように構成されている。
【0048】
さらなる実施形態として、マイクロコントローラは、第2圧力センサにおいて登録された圧力変化事象が発生した時刻、及び第1圧力センサにおいて登録された圧力変化事象が発生した時刻を登録し、次いで、前記第1及び第2圧力センサから受信した全てのデータ及び対応する事象の時刻を、所定の経過時間ウィンドウの間ローリングバッファに記録するように、構成されている。好ましくは、所定の経過時間ウィンドウを有するバッファは、第2圧力センサにおいて登録された圧力変化事象が発生すると登録される時刻から、0.5から1.5秒までの幅を取り得るバッファマージンを引き、それに5秒のリスニングウィンドウを加えることで規定され、この経過時間ウィンドウの間、前記第1及び第2圧力センサから受信した全ての圧力センサ事象の発生は、マイクロコントローラによって記録され、メモリに記憶される。
【0049】
さらに別の実施形態によると、遵守システム筐体は、好ましくは計時手段を装備しており、任意のセンサ事象が発生した時刻の登録を可能にする。計時手段は、マイクロコントローラに含めることもでき、例えば、マイクロコントローラは、リアルタイムクロックを含むことができ、これは、センサにおいて発生しセンサにより登録された事象の相対的な時刻を登録するための参照用に使われる。
【0050】
従って、計時手段、マイクロコントローラ、及び圧力センサは、協同してデータを入手し、そして、入手したデータに基づき、ソフトウェアアプリケーションを実行するリモートシステム又は装置によって、薬物の放出のためにカートリッジを押してから、MDIのマウスピース出口を通したユーザによる薬物の吸入に起因する、空気流路における圧力変化までに経過した時間を、第2圧力センサにおける圧力変化、すなわち、機械圧縮事象の事象時刻から、計算することを可能にする。圧力変化の時刻及び度合いは、吸入の質を示し、且つ時間ウィンドウにわたる理想的な薬物送達及び放出と関連付けることができる。マイクロコントローラは、第1圧力センサから複数の圧力測定値を取得するようにさらに構成されており、且つそれを経過時間と関連付けることが可能であるため、時間曲線にわたる圧力値を、計算し、アドオン装置の遵守システム内のデータストレージに記憶し、そこからリモートシステム上で実行されるソフトウェアアプリケーションへ通信することができる。
【0051】
十分なデータが集められると、上述のように、本発明のさらなる実施形態では、データストレージに記憶されたデータは、サーバのようなリモート装置又はリモートシステム、又は例えばスマートフォン上の、分散型ネットワークシステム上で作動するソフトウェアアプリケーションへと、データ交換によって通信することができる。
【0052】
従って、別の実施形態によると、データ交換は、無線通信モジュールを介して、又は通信ポートを介して行われる。無線通信モジュールは、例えば、ブルートゥース低エネルギー回路を備えることができ、データ送信のための任意の既知のプロトコル及び手段、又はアドオン装置及び遵守システム用に特別に必要とされ設計された特注プロトコルを用いることができる。無線通信モジュールが必要でない場合、データ交換は、アドオン装置と別のシステムとの間で、通信ポート、例えば、USB、マイクロUSB、若しくはミニUSBポート、又は任意の他の好適な通信ポートを介して行うことができる。
【0053】
さらに別の実施形態において、マイクロコントローラは、システムのオン・オフの切り替え、及びシステムを休止状態又は起動状態に保つことなどを含む、遵守システムの電力供給源の管理を行うように、さらに構成されている。
【0054】
上述のように、通信ポートは、アドオン装置内の遵守システムと、リモート装置又はシステムとの間のデータの通信及び交換のために構成することができるが、遵守システムの電力供給源の再充電を可能にするように構成することもできる。或いは、遵守システムは、要望に応じて、無線充電回路を備えることもできる。
【0055】
本発明のさらに別の目的によれば、本発明は、上述の様々な実施形態及び詳細により説明したように、遵守システムアドオン装置を備え付けた定量吸入器に関するものである。
【0056】
本発明のまたさらに別の目的は、定量吸入器によって送達される薬物の、送達の遵守を向上する方法であって、
前記方法は、
遵守システムアドオン装置を、上述の様々な実施形態及び詳細により説明したように、定量吸入器のマウスピース出口に備え付ける工程、
前記アドオン装置上に提供されたモーションセンサから受信された特定の大きさの振動事象が、前記アドオン装置上に提供されたマイクロコントローラによって登録されると、アドオン装置の電源が入るように、アドオン装置を構成する工程、
定量吸入器のマウスピースを通して薬物を放出するために定量吸入器の薬物カートリッジを押す動作に対応する、前記アドオン装置上に提供された第2圧力センサにおける圧力変化事象を、検出するように、前記アドオン装置を構成する工程、
アドオン装置上に提供された第1圧力センサにおいて登録された圧力変化事象により、吸入の開始を検出するように、前記アドオン装置を構成する工程、
前記第1圧力センサにおける圧力変化事象により、吸入の終了を検出するように、アドオン装置を構成する工程、
少なくとも1つのセンサ事象に関連するデータを、リモート装置、リモートサーバ、又は分散型ネットワークシステム上で実行されるソフトウェアアプリケーションへ通信する工程、及び
アドオン装置のユーザ又はヘルスケアの専門家が、薬物が正しく吸入されたかどうかを確かめることを、可能とするように、前記データを、前記ユーザ又はヘルスケアの専門家へ提示する工程を含む、
方法である。
【0057】
上述の方法は、既存且つ既知のアドオン装置に対しての向上だけではない。当該方法はまた、使うのがかなり簡単であり、装置の操作を必要以上に複雑にしたり、既知のMDIの通常の機能を妨げたりすることなく、ユーザへ迅速にフィードバックを提供する。実際には、本発明により実行される方法は、情報のフィードバック及び遵守データの便益を損なわずに、ユーザが慣れているものと全く同じ所定の手順に従ったMDIの使用を維持する。
【0058】
この目的の1つの実施形態によると、当該方法は、残存電力供給源の正しいレベル、及び/又は装置が使用できる状態にあることを示す視覚信号又は可聴信号を作動させるようにアドオン装置を構成する工程を、さらに含む。
【0059】
前記目的の別の実施形態によると、当該方法は、送達すべき薬物が正しく用意されたことを示す視覚信号又は可聴信号を作動させるように、アドオン装置を構成する工程を、さらに含む。
【0060】
この目的のさらに別の実施形態によると、当該方法は、マウスピースを通して送達された薬物の正しい吸入を示す、視覚信号、可聴信号、又はその両方を作動させるように、アドオン装置を構成する工程を、さらに含む。
【0061】
さらに別の実施形態において、当該方法は、アドオン装置の配置及び/又は位置を示す視覚信号、可聴信号、又はその両方を作動させるようにアドオン装置を構成する工程を、さらに含む。この実施形態のねらいは、アドオン装置をMDI上に取り付ける際に、ユーザが前記装置又はMDIの置き場所を間違える不測の事態に備え、アドオン装置の配置を容易にすることである。リモート装置、例えば、対応するソフトウェアを実行するスマートフォンは、装置の配置を検出し、例えば配置識別コマンドをアドオン装置へ送ることで視覚的に(例えば、閃光、又は有色のLEDにより)、又は可聴的に(例えば、可聴信号を発することにより)、前記装置にその所在をユーザへ明らかにさせる。或いは、装置は、GPS追跡ソフトウェアにより装置を追跡することを可能にするGPS発信回路などの電気回路を含むことができ、当該ソフトウェアは、リモート装置、例えばスマートフォン上で作動して、アドオン装置の配置を容易にすることを可能にする。
【0062】
有利には、本発明による方法は、定量吸入器により送達された薬物投与量の個数を装置内に記憶するようにさらに構成されるアドオン装置を、さらに提供する。
【0063】
本発明の方法の別の実施形態は、定量吸入器内に残存する薬物投与量の個数を前記装置内に記憶するように、アドオン装置をさらに構成することである。次いで、この情報は、ユーザへ送ることができ、例えば、通信モジュール又は通信ポートを介してスマートフォンアプリケーションソフトウェアへ送られ、そこからユーザへと送ることができる。
【0064】
さらに別の実施形態によると、アドオン装置は、電力供給源のレベルをアドオン装置内に記憶するように、さらに構成されている。
【0065】
さらに、当該方法及び/又は装置は、アドオン装置の起動時刻を装置内に記憶するようにアドオン装置をさらに構成する、実施形態に関連している。
【0066】
類似の方法により、以下のような他の実施形態が想定され得る。
前記定量吸入器が用意された時刻をアドオン装置内に記憶するように、アドオン装置をさらに構成する工程、
前記定量吸入器から薬物が放出された時刻をアドオン装置内に記憶するように、前記アドオン装置をさらに構成する工程、
放出された薬物の吸入が開始した時刻をアドオン装置内に記憶するように、前記アドオン装置をさらに構成する工程、
放出された薬物の吸入が終了した時刻をアドオン装置内に記憶するように、前記アドオン装置をさらに構成する工程、及び
上述のデータ、信号、又は時間事象のうちのいずれかを、リモート装置、リモートサーバ、又は分散型ネットワークシステムへ通信するように、前記アドオン装置をさらに構成する工程であって、前記リモート装置は、好ましくは携帯電話又はスマートフォンである、工程。
【0067】
本発明のさらに別の目的によれば、マイクロコントローラと、データストレージの手段、視覚信号を生成する手段、可聴信号を生成する手段、電力供給源、無線通信モジュール、第1圧力センサ、第2圧力センサ、モーションセンサ、及び通信ポートから選択された少なくとも1つ又はそれ以上の要素とを備え、少なくとも1つ又はそれ以上の前記要素はそれぞれ、前記マイクロコントローラに接続されている、定量吸入器用遵守システムが、提供される。
【0068】
マイクロコントローラは、前記マイクロコントローラに接続されたモーションセンサから受信した、少なくとも1つ又はそれ以上の、所定の大きさの振動事象を登録するように、好ましくは構成されている。
【0069】
前記マイクロコントローラに接続されたモーションセンサから受信した、少なくとも1つ又はそれ以上の、所定の大きさの振動事象はそれぞれ、約1Gから約3Gの加速度の運動を有する。
【0070】
マイクロコントローラは、前記マイクロコントローラに接続されたモーションセンサから受信した、2個から5個の連続する振動事象を、登録するようにより好ましくは構成され、ここで、各振動事象は、約1Gから約3Gの加速度の運動を有する。
【0071】
マイクロコントローラは、前記マイクロコントローラに接続された前記第1圧力センサにおける、少なくとも1つ又はそれ以上の圧力変化事象を登録するように、さらに好ましくは構成されている。
【0072】
マイクロコントローラは、前記マイクロコントローラに接続された第1圧力センサにおける、少なくとも1つ又はそれ以上の空気圧力変化事象を登録するように、さらに好ましくは構成されている。
【0073】
少なくとも1つ又はそれ以上の前記圧力変化事象は、最も好ましくは、定量吸入器により送達された薬物が吸入されると第1圧力センサにおいて生じる空気圧力変化である。
【0074】
少なくとも1つ又はそれ以上の前記圧力変化事象は、さらにより好ましくは、定量吸入器により送達された薬物の吸入の終了時に第1圧力センサにおいて生じる空気圧力変化である。
【0075】
マイクロコントローラは、前記マイクロコントローラに接続された第2圧力センサにおける、少なくとも1つ又はそれ以上の圧力変化事象を検出するように、好ましくはさらに構成されている。
【0076】
第2圧力センサにおける少なくとも1つ又はそれ以上の圧力変化事象は、より好ましくは、機械圧縮圧力変化である。
【0077】
第2圧力センサにおける少なくとも1つ又はそれ以上の圧力変化事象は、さらにより好ましくは、前記第2センサへ加えられた機械圧縮により生じる、機械圧縮圧力変化である。
【0078】
第2圧力センサにおける少なくとも1つ又はそれ以上の圧力変化事象は、最も好ましくは、直接的又は間接的に前記第2センサへ加えられた機械圧縮により生じる機械圧縮圧力変化である。
【0079】
前記マイクロコントローラは、少なくとも1つ又はそれ以上のセンサ事象に関連するデータを、前記無線通信モジュール又は前記通信ポートを介して、リモート装置、リモートサーバ、又は分散型ネットワークシステム上で実行されるソフトウェアアプリケーションへ通信するように、さらに好ましくは構成されている。
【0080】
リモート装置は、さらに好ましくは携帯電話又はスマートフォンであり、前記マイクロコントローラは、前記データを前記ソフトウェアアプリケーションへ通信するようにさらに好ましくは構成され、ソフトウェアアプリケーションは、前記遵守システムを装備した定量吸入器装置のユーザ、又はヘルスケアの専門家が定量吸入器により送達された薬物が正しく吸入されたかどうかを確かめることを、可能とするように、前記データを、前記ユーザ、又はヘルスケアの専門家へ提示するように、構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0081】
上述及び他の目的は、純粋に例示目的のために提供された、本発明の実施形態の添付図面及び詳細な説明への参照により、さらに説明され、理解される。
【0082】
図1図1は、本発明に係るアドオン装置を備え付けた既知の類型の定量吸入器の断面を概略的に描写したものである。
【0083】
図2図2は、本発明のアドオン装置の、第1角度からの概略透視図である。
【0084】
図3図3は、図2に描かれたような本発明のアドオン装置の、図2とは反対で逆の見方である第2角度からの概略透視図である。
【0085】
図4図4は、本発明のアドオン装置の一部を構成する遵守システム筐体部品の分解組立図を、概略的に描写したものである。
【0086】
図5図5は、本発明のアドオン装置の一部を構成するマウスピース部品の分解組立図を、概略的に描写したものである。
【0087】
図6図6A及び6Bは、本発明に係るアドオン装置の遵守システム筐体部品及びマウスピース部品の分解組立図を、反対の角度から、マウスピース部品用のキャップと共に、概略的に描写したものである。
【0088】
図7図7は、本発明に係る遵守システムを構成する要素を、概略的に描写したものである。
【0089】
図8図8は、本発明に係る遵守システムが機能を果たす1つの方法の、概略フローチャートである。
【0090】
図9図9は、本発明に係る遵守システムが機能を果たす別の方法の、概略フローチャートである。
【0091】
図10図10は、図9のフローチャートから続く、概略フローチャートである。
【0092】
図11図11は、図10のフローチャートから続く、概略フローチャートである。
【0093】
図12図12は、図11のフローチャートから続き、図11のフローチャートへとつながり戻る、概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0094】
図1において、定量吸入器又はMDIは、一般に参照数字1によって描写されている。前記MDIは、中空体2、及び投与すべき製剤を含むカートリッジ3を備える。カートリッジは、既知の方法により定量吸入器内のエアロゾル製剤を投与するためのバルブ、及び投与ノズルを装備している。カートリッジ3がユーザによって押し下げられると、製剤は、ノズル4を通してマウスピース出口5内へと放出される。マウスピース出口5は、中空体2の不可欠な部分を形成し、且つ当接肩部6を形成する。当接肩部6上には、安全キャップ7が、当接関係で通常は係合し、それによって、MDIが使用されていない際にマウスピース出口が閉じられる。マウスピース出口5は、薬物を吸入する際にユーザの口内に、開口部10(開口部10を通してカートリッジが中空体2内に差し込まれる)に配置された遠位端部9と向かい合って設置される、近位又は口腔端部8を有する。
【0095】
本発明に係る定量吸入器用遵守アドオン装置は、一般に参照数字11で描写されている。図1に示した実施形態において、装置11は、2つの部品で構成されている。第1部品は、遵守システム筐体部品12である。筐体12は、一般に参照数字13で描写された遵守システムを収容する。遵守システムは、より詳細に以下に説明される様々な電子又はマイクロ電子要素又は部品を備え、これらの要素は、プリント基板(PCB)14上に取り付けられる。アドオン装置の第2部品は、マウスピース部品15である。図1から明らかなように、マウスピース部品は実質的に環形状であり、内側表面16及び外側表面17を有し、これによりマウスピース部品15の内側又は内部表面16は、中空体2のマウスピース出口5の外部又は外側の周囲面18と係合しその上に置かれる。マウスピース部品15の遠位端部19は、中空体2の当接肩部6に当接する。マウスピース出口5が、ノズルを通してマウスピース出口内に押し出された薬物の流れに関して遮られることが無いように、且つ入手可能なMDIと比べて構造的に変更されることが無いように、マウスピース部品15は、前記マウスピース出口5に弾性的に又は摩擦によって適合し、係合する。従って、カートリッジ3からのノズル4及びマウスピース出口5を通した薬物の流れ、投与、又は送達は、変化しない。マウスピース部品15は、アドオン装置がMDI上に取り付けられた際に、マウスピース出口5の近位端部8が存在する面に沿って同一平面にある近位又は口腔端部20も備える。このように、MDI上に取り付けられたアドオン装置を含むMDIを、薬物を吸入するためにユーザが口へ挿入する際、ユーザにとって重大で顕著な違いはない。環形状のマウスピース部品の内側表面16及び外側表面17は、共に壁21を形成し、壁21の厚みは、MDIのマウスピース出口を口に挿入する際ユーザに顕著な不快感をもたらさないように、選択される。図1よりさらに明らかなように、マウスピース部品15は、マウスピース部品の遠位端部19を超えて延び、且つマウスピース部品15の残りの部分と同じ材料で好ましくは作られる、突出部又は突起22をさらに備える。突出部又は突起22は、MDIの中空体2の底の輪郭に一致するように好適に湾曲させることもできるが、一般には、平らであり、且つ遠位方向に延び支持プレート23を形成する。突起は、それ自体の遠位端部24において終端となり、重要性を以下に説明する保持フック、クリップ、又は弾性を持つ支持台を形成する。他の図に関して以下で説明するように、突起22の支持プレート23及び遠位端部24は、遵守システム筐体部品12が取り外し可能に係合できるように、構成されている。図1から明らかなように、遵守システム筐体部品は、マウスピース部品15の突起22及びプレート23と同じ平面にある。この構成は、遵守システム筐体部品12とマウスピース部品15との相互への及び相互からの取り外し可能な係合を可能にし、遵守システム筐体部品12については単一の設計を維持し、且つ現在既知の、又は将来開発されるであろう全ての様々な形状のマウスピース出口5に適合され得るマウスピース部品15については可変の設計を可能にする。説明及び図で示したような、取り外し可能に係合するマウスピース部品15及び遵守システム筐体部品12のこの構成により、マウスピース部品15は、クリーニングのために取り外す、又はユーザが異なるMDIに切り替える場合に簡単に変えることもできる。取り外し可能に係合する遵守システム筐体も、必要に応じて、例えば、不備が生じた場合に、対応するマウスピース部品を変える必要なく、交換することができる。アドオン装置を使用する際の柔軟性の向上は、マウスピース部品及び遵守システム筐体部品をこのように構成することの有利な効果である。
【0096】
図2及び図3を参照すると、アドオン装置は2つの透視角度から示されており、図3は、図2のアドオン装置を実質的に反対にし、且つ裏返した図である。これらの描写において、各部品、すなわち、遵守システム筐体部品12及びマウスピース部品15は、共に組み立てられて、相互に係合しアドオン装置11を形成する。マウスピース部品15の実質的に環形状を見ることができる。図2では、近位又は口腔端部20を見ることができ、把持手段25、例えば、パッド又はクッションは、内側表面16のレベルと同一平面に埋め込まれるか、又は当該レベルより僅かに突出しており、これにより、本発明のアドオン装置がMDI上に取り付けられた際に、把持手段25は、環状のマウスピース部品15の内側表面16の、MDIの外側又は外部の周囲面18との弾性又は摩擦による係合を容易にする。そのような把持手段は、例えば、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレンポリマー)、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンポリマー)、シリコン、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエン-モノマー)、ゴム、及びTPE-U、ポリウレタンベースの熱可塑性エラストマー、又はドイツの有限合資会社クライブルグTPEにより商品化されたThermolast(登録商標) Kを例とする水素化配列スチレンブロックコポリマーなどの(TPEとしても知られる)熱可塑性エラストマーから成る群より選択された、エラストマー材料で好ましくは作られる。環形状のマウスピース部品15の外側周囲面17上にある、類似の把持手段26も見ることができる。把持手段26は、マウスピース部品15の前記外側周囲面17上への、安全キャップ7の弾性又は摩擦による係合を容易にするためのものである。把持手段25及び把持手段26の摩擦による係合は、ユーザが手動操作のみを用いて、すなわち、道具の補助なしに、マウスピース部品15、及び安全キャップ7を個々に、合わせ面又は係合面17、18それぞれの面上に滑らせて付けること、及び面上から滑らせて外すことができるようになっている。把持手段25、26は、例えば、アドオン装置がぶつけられた、落とされた、又は突然衝突若しくは衝撃を受けた場合に、マウスピース部品及び安全キャップ7のそれぞれがいずれも、簡単に落下、又は各面17、18から係脱しないことも確実にする。図2は、遵守システム筐体部品12のための支持プレート23を形成するために延びる突起22の一部も示している。遵守システム筐体部品12は、プレート23、及び蓋又はカバー28上に置かれ、それらにより支持され、且つ/又はそれらと係合するトレイ27を含むことが理解できる。遵守システム筐体部品12は、例えば、LED又はLEDアレイなどの視覚信号手段63のためのライトガイド29も備え、アドオン装置及び遵守システムが機能している最中の様々な状態を好適な光信号で表現した表示を可能にする。図2において、ライトガイド29は、トレイとカバーとの間に配置されているが、任意の好適な位置に、例えば、カバー28上、又はトレイ27の本体30上のどこか他の場所に、配置することもできる。或いは、ライトガイドは、無くてもよく、遵守システム筐体部品内に配置された可聴信号エミッタで任意に置き換える、又は完成させることもできる。図2から明らかなように、カバー28は、親指などのユーザの指を受けるように適合されたサイズ及び寸法の、持ちやすい窪み31を備える。持ちやすい窪み31は、使用の際に、アドオン装置がMDI上に取り付けられ、ユーザがカートリッジ3上を押し下げて、中空体の下端部及びアドオン装置が、圧縮され、且つ相互に近づくようにするときに、挟む動きを形成するようなユーザの指の配置を容易にする。発生したこの機械圧縮圧力は、持ちやすい窪み31と直接的又は間接的に、物理的に又は電気的に接触する、遵守システム筐体部品12内に配置された圧力センサ32によって登録される。
【0097】
図3において、マウスピース部品15の内側表面16を、その上に配置された把持手段25を含めて見ることができる。さらなる把持手段33も、環形状のマウスピース部品15の遠位端部19に提供され、アドオン装置がその上に取り付けられるであろうMDIの当接肩部7と摩擦によって当接することを可能にする。図3は、内側表面16に沿ってマウスピース部品の遠位端部19から前記部品の近位端部20に向かって延びる、流路又は溝34も示している。流路又は溝34は、空気の通過のための近位空気流路35の少なくとも一部分、又は全体を規定する。アドオン装置がMDI上に取り付けられると、流路34の壁37に沿って提供され、且つ突出してMDIのマウスピース出口の外部周囲面と接触し密閉するように係合する、密閉手段36の存在により、近位空気流路は、前記流路34に沿って気密になる。そのような密閉手段36は、例えば、把持手段用に用いられたものと同じ材料のようなエラストマー材料の突条とすることが可能である。その遠位端部19において、マウスピース部品には、遵守システム筐体部品の近位端部に提供された(図3には示していない)開口部39に対応する開口部38が備わっている。それによって、空気流路の連通が、遵守システム筐体12からマウスピース部品15まで確立する。実質的に平らに構成されて遠位端部24に向かって延びる突起22及び支持プレート23もまた、図3に示されている。突起22の遠位端部24は、トレイ27の遠位端部40の周囲に巻き付き、且つトレイ27の遠位端部40と取り外し可能に係合するための係合手段41が備わっている、湾曲したへり、フック、又はエッジを形成するように、好ましくは構成されている。そのような取り外し可能な係合手段41は、例えば、突起22の遠位端部24に提供されたスナップ式又はクリック式の突出部であって、トレイ27の遠位端部40に提供された対応するスロット内に弾性的に挿入できる突出部とすることが可能である。図3に描写された実施形態において、支持プレート23は、前記プレート23に提供された2つのスロット42も示している。スロット42は、支持プレートが突起の遠位端部に向かって延びるうえで、支持プレート及び突起に柔軟性を提供する。この遵守システム筐体部品は、トレイの遠位端部40にある開口部44も示しており、開口部44は、USB、マイクロUSB、又はミニUSBポートなどの通信ポート45、及び/又は遵守システム筐体部品12に配置された充電モジュールへのアクセスを可能にし、同じく前記筐体部品12に含まれる電力供給源が外付けの電源から電荷を受け取ることを可能にする。ある好ましい実施形態において、開口部44は、マイクロUSBポート45へと通じ、マイクロUSBポート45は、遵守システム筐体内に含まれる電力供給源を充電するために少なくとも用いることできるが、加えて、例えば、必要に応じて又は適切に、アドオン装置上の遵守システムをフラッシュ、ワイプ、再インストール、アップグレードするために、アドオン装置と、例えばコンピュータ、ドッキングステーション、又はプログラミングユニットなどの別個の装置との間の通信を可能にすることもできる。
【0098】
図4は、遵守システム筐体部品12の分解組立図を示しており、図中にトレイ27及びカバー28が示されている。併せてプリント基板14も示されており、プリント基板14上には様々な要素を備える遵守システムが取り付けられている。近位端部46において、カバー又は蓋28にはプッシュ式又はスナップ式の2つの突起突出部47であって、トレイ27の本体の内側近位端部内に提供された対応するスロット又は開口部内に挿入される突起突出部47が備わっている。カバーは、トレイ上に提供された対応する肩部と提供する留め具(図示していない)も、遠位端部48において含んでいる。基板14は、トレイ27の内部へ挿入され、且つ当該内部上に保持され、例えば取り外し可能且つ/又は再充電可能な電池である電力供給源49は、プリント基板14上の、カバー28と前記プリント基板14との間に、配置することができる。図1から図4において、電力供給源49は、再充電可能なリチウムイオン電池であり、同様に前記プリント基板14上に提供され適切に配置されたコネクタ50を介して、プリント基板14に接続されている。プリント基板14は、前記基盤上に提供された突出部52によって、基盤の近位端部51においてトレイ27内に置かれている。基盤は、トレイ27の本体内に提供された対応する開口部39と係合し、遠位端部及び開口部44の近くに配置された栓66及び肩部67の上に置かれている。開口部39は、基盤の突出部52を収容するために十分な寸法になっており、空気が、基盤の上方で前記開口部39を通して、マウスピース部品15内に形成された流路又は溝34から流れ出して、流れ込んで、通過することを可能にする。空気圧力センサ54は、プリント基板14上の空気の流れの領域に理想的には配置される。なぜならば、そうすることで、空気圧力センサ54は、空気流路内に直接置かれることとなり、ユーザによる吸入、息を吐く行為、息を止める行為などに起因する、対応する空気圧力変化事象を検出できるからである。図4は、カバー28には側壁55が備わっており、側壁55は、トレイ27上に提供された対応する肩部56と合わさり、それによって、遵守システムを完全に囲い遵守システム筐体12を形成することを、さらに示している。
【0099】
図5は、マウスピース部品15、及び前記マウスピース部品用のキャップ7の概略透視図を示している。マウスピース部品15は、外側周囲面17を有する環状マウスピースを呈し、外側周囲面17は、当該面上の環形状のマウスピース部品15の遠位端部19に配置された把持手段を備える。必要な場合、例えば、前記装置の使用のために、キャップがアドオン装置と摩擦により係合し、キャップをアドオン装置から取り外すことが可能となっている。実質的に平らに構成されて遠位端部24に向かって延びる突起22及び支持プレート23もまた、図5に示されている。突起22の遠位端部24は、トレイ27の遠位端部40の周囲に巻き付き、且つトレイ27の遠位端部40と取り外し可能に係合するための係合手段41が備わっている、湾曲したへり、フック、又はエッジを形成するように、好ましくは構成されている。そのような取り外し可能な係合手段41は、例えば、突起22の遠位端部24に提供されたスナップ式又はクリック式の突出部であって、トレイ27の遠位端部40に提供された対応するスロット内に弾性的に挿入できる突出部とすることが可能である。図5に描写された実施形態において、支持プレート23は、プレート23の表面の1つに提供された2つのスロット42も示している。スロット42は、支持プレートが突起の遠位端部に向かって延びるうえで、支持プレート及び突起に柔軟性を提供する。プレート23は、突起のプレートに同様に配置され、且つプレートに沿って延びる2つの溝又は流路57も備える。これらの溝57は、溝の遠位終端からプレートの厚み内へと内方向に、環状マウスピース部品の遠位終端へ向かって、突起表面から傾斜している。溝57は、トレイ上に位置し、且つトレイを環状マウスピース部品の突起プレート23上に滑らせて突起プレート23と係合させる際にトレイを実質的にまっすぐな軸に沿って導く、対応して配置された突出部58を受け入れるための寸法となっている。同時に、突起プレート23には、プレート23からプレートの外側エッジに向かって延びる、実質的に直角に突出したフランジ59も備わっている。フランジは、溝57と実質的に同じ長手方向の軸に沿っており、トレイ27の外側表面上に提供された対応する溝と協同し且つ係合するように設計されている(以下に説明する図6Bに示されている)。
【0100】
図6A及び6Bは、図2及び図3と類似の方法で、本発明のアドオン装置の2つの透視角度からの分解組立図を示しており、図6A図6Bのアドオン装置の実質的に反対且つ裏返した図である。図6Aにおいて、共に組み立てられた蓋及びトレイが、マウスピース部品15のプレート23上にどのように配置されているかを理解することができる。一方、図6Bにおいて、突起22の突起プレート23及び遠位端部24が、トレイ27の遠位端部40の周囲に巻き付き、且つトレイ27の遠位端部40と取り外し可能に係合するための係合手段41が備わっている、湾曲したへり、フック、又はエッジを形成するように、どのように好ましく構成されているかを理解することができる。そのような取り外し可能な係合手段41は、例えば、突起22の遠位端部24に提供されたスナップ式又はクリック式の突出部であって、トレイ27の遠位端部40に設置された対応するスロット内に弾性的に挿入できる突出部とすることが可能である。
【0101】
図7は、アドオン装置内での使用に適合された、本発明に係る遵守システムを概略的にブロックで描写したものである。図7により描写したような遵守システムは、マイクロコントローラ60、及びマイクロコントローラ60に接続された様々な他の要素を備える。遵守システムを構成する他の要素は、この場合は空気圧力センサ54にあたる第1圧力センサ(PS1)、この場合は機械圧縮圧力センサ32にあたる第2圧力センサ(PS2)、例えば、上述のように再充電可能なリチウムイオン電池である、電力供給源49、モーションセンサ61、図7において「無線通信モジュール」と識別された無線通信モジュール62、視覚信号手段63、可聴信号手段64、及びデータストレージモジュール65である。視覚信号手段63は、上述のように、適切に配置された1つ又は複数のLEDからなるLEDディスプレイを備えることができる。可聴信号手段64は、例えば、ブザー又は他の可聴音エミッタを備えることができる。無線通信モジュール62は、好ましくはブルートゥース低エネルギー回路であり、スマートフォンのようなリモート装置との狭域通信を可能にする。代替の無線通信モジュールとしては、例えば、wifi-a、b、g、又はnのような様々な無線通信プロトコルを介して通信するものも可能である。データストレージモジュール65は、例えば、ROM又はRAMチップ、ソリッドステート回路、NAND回路、及び化学メモリストレージなどの、既知の類型の、又は将来開発されるであろうデータストレージから、任意の好適なモジュールとすることができる。マイクロコントローラ60は、部品間の様々な相互作用を管理し、部品から受信した又は部品へ通信するデータ又は信号を登録し記憶する役割をしており、それ故、他の部品に接続されている。しかし、マイクロコントローラは、計算も行い、且つ遵守システム及びアドオン装置が目的どおりに機能を果たせるよう様々な状態の判定も行う。マイクロコントローラ60は、遵守システムの様々な要素への電力供給源49を管理する役割もしている。任意の時刻における特定の状態に応じて、マイクロコントローラ60は、電力消費を最も効率的な方法で管理するために、部品に起動又はスリープ要請を行い、そして、他の部品に電力を提供すること、又は前記部品への電力アクセスをシャットダウンすることができる。
【0102】
遵守システムがどのように機能を果たすかについての以下の説明、及び対応する図において、定数及び変数に関連する以下の頭字語は、以下のように規定される。
定数:
【表1】

変数:
【表2】
【0103】
図8を参照すると、遵守システムを機能するように構成する1つの方法の、全体的な概要が示されている。図8から分かるように、例えば、上述したように遵守システム筐体12内に含まれる、遵守システムは、一般にスリープ、休止、又はハイバーネーションモードにある。このモードは、特に、電力供給源が例えば再充電可能な電池である場合に、電力供給源を過剰に消耗することなく、以下に説明するように、遵守システムがある事前に規定された事象を登録することを可能にする。すなわち、システムは、電源が入った状態であるが、最小限の電力しか使用しないということである。出願人による試験では、モーションセンサ61のみがスリープモードで電力を供給されていて、マイクロコントローラ60及び電力供給源49それ自体を除く他の要素が作動している際に、有利な結果が得られたことが示されている。このようにして、装置がユーザによって振られると、モーションセンサ61は加速度運動を検出することができ、これはマイクロコントローラにより登録され、例えばデータストレージ内に記憶されるか、直接利用される。マイクロコントローラ60は、例えば、アドオン装置が偶発的にぶつけられた、又は落とされたときのような、モーションセンサ61により登録された偶発的な加速度運動と、例えば、ユーザが装置を繰り返し振ったことに起因する、自発的な加速度運動との違いを判定することができるように、構成されている。そのような信号を受信すると、装置の残りの部分が効率的に起動するように、マイクロコントローラ60は、電力が他の部品に供給されるようにする。次いで、マイクロコントローラ60は、所定の長さの時間待機状態に入り、圧力センサ(PS2)32からの信号、すなわち、ユーザがMDIのカートリッジ3上を押し下げる際に、ユーザが筐体12を親指で押す動作、又は親指とその他の指との間で筐体を圧縮する動作などの、機械圧縮を、待つ。そのような圧力信号が圧力センサ(PS2)32により検出及び登録された場合、圧力信号はデータストレージに記憶され、又はそうでなければマイクロコントローラにより評価される。圧力センサ(PS2)32からの好適な信号の検出と同時に、又はその後に、マイクロコントローラ60は、空気圧力変化事象が起こったことを示す、空気圧力センサ(PS1)54からの信号の検出も待つこともできる。そのような空気圧力変化事象は、一般に、ユーザが装置を通して吸入し、息を吐き、又は息を止めた際に起こる。図8において、登録された事象は、遵守システム筐体12及びマウスピース部品15を通してユーザにより空気が引き込まれ、ユーザがカートリッジ上を押すことにより送達された薬物が吸入される際に、圧力センサ(PS1)54にわたり圧力降下を生じさせる、吸入事象である。ユーザが吸入を止めると、一般に別の圧力変化事象が生じ、これもまたマイクロコントローラにより記憶され、又は必要に応じて評価される。吸入の終了の後、システムが周囲の空気圧力と再び平衡を保つため、一般に、圧力センサ(PS1)54にわたり空気圧力の上昇が起こる。これら全ての圧力変化事象は、圧力センサ(PS1)54により登録され、記憶及び/又は評価のためにマイクロコントローラへと信号で伝えられることが可能である。十分なデータが記憶されると、データは、通信モジュール、例えば、ブルートゥースを介して、スマートフォンのようなリモート装置、リモートサーバ、又は分散型ネットワーク上で作動するソフトウェアアプリケーションへと送信される。そこから、データは、さらに評価されるか、且つ/又はユーザが自身の治療計画を遵守することを補助する手段としてユーザへ、若しくはヘルスケアの専門家が、治療計画に何らかの調整を行う若しくは推奨する、若しくは単にユーザへ前記治療の改善のための指針を与えることを可能にするために、ヘルスケアの専門家へ、どちらかへと有意義な方法で表示されることができる。データの送信が完了した後、或いは、所定の時間枠内(この時間枠は、図8上で装置非作動時間(TDI)と識別されている)に薬物放出及びその後の薬物吸入の基準を満たしているとみなすために必要となる事象に対応する事象が、何も登録されない場合は、マイクロコントローラは、システムに装置をスリープモードに戻すよう信号を送信する。本発明に係る有利な装置非作動時間(TDI)は、約5秒から約60秒の間の範囲で決定される。
【0104】
従って、上述の説明より理解されるように、システムは、特に以下を記録するように構成されている。
薬物放出事象、
呼吸活動事象、
最大バッファ経過時間(TMB)、
バッファウィンドウ開始時刻(これは、TMAから計算され、従って、任意の最初の呼吸活動の前に起こるものである)、及び
バッファウィンドウ停止時刻(TSR)。
遵守システムの機能を詳細に見ると、図9は、加速度運動が登録又は検出された際にシステムがどのように機能するかに関する概要を示している。システムの起動を誘発し得る突然の非自発的な運動を誤って登録又は検出することを回避するために、マイクロコントローラ60は、モーションセンサ61により特定の数の加速度運動が登録又は検出され、そして前記加速度運動が所定の値を超えるときのみ、反応するように構成されている。図9において概略的に示されているように、そのような加速度運動がモーションセンサ61によって検出又は登録された際、割り込み判定が発生する。システムが「起動」モードに入るために、マイクロコントローラは、連続する一連の割り込み判定、通常は2個から5個の連続する割り込み判定であり、好ましくは3個の連続する割り込み判定に、注目するように構成されており、ここで、各割り込み判定は、おおよそ1Gから3G、好ましくは2Gから2.5Gの加速度運動に対応する。これらの割り込み判定の値及び数は、ユーザが、MDIを左右に、又は上下に続けざまに振ることによりMDIを用意する、すなわち、薬物の送達又は放出のためにMDIを準備又は用意する際に登録された値に対応する。このようにして、それらの条件を満たした場合のみ、残りの部品はさらなる動作のために起動され、それによって、必要とされていないときにシステムが「起動」状態に置かれることを回避する。装置非作動時間(TDI)に対応する時間に条件が何も満たされない場合は、システムはスリープ状態に戻る。
【0105】
図10は、薬物放出に関連する事象が機能を果たす仕組みを概略的に説明する。起動状態において、すなわち、図9から続く起動状態において、システムは、圧力変化事象が前記圧力センサ(PS2)32において登録又は検出され、対応する信号がマイクロコントローラ60へ送られるのを待つ。センサ又は遵守システム筐体に加えられた所定の機械圧力に対応する圧力信号、及び薬物を放出するためにユーザがカートリッジを押す動作に対応する圧力信号のみが、マイクロコントローラにより処理される。そのような事象が起こった時刻は、システム内に登録され、薬物放出時刻(IDR)と呼ばれる。この時刻の登録は、放出事象と呼ばれる事象の作製につながり、薬物が送達のために放出されたこと、すなわち、ユーザがMDI内のカートリッジを押し下げ、製剤をMDIのマウスピース出口内へ放出したことをシステムに示す。必要に応じて、さらなる処理、及び/又はデータ送信のために、放出事象は記憶され、ループは戻り、次の圧力信号事象、例えば、ユーザが、カートリッジをもう一度押し下げ、その際に圧力センサ(PS2)32を圧縮する場合の事象を待つ。図10には示されていないが、ループは同じタイムリミット又は装置非作動時間(TDI)にも基づいており、タイムリミット又は装置非作動時間経過後、放出事象が何も登録されていない場合は、装置はスリープモードに戻る。
【0106】
図11を参照すると、吸入事象ループが機能を果たす仕組みが概略的に描写されている。この概要において、示されているように図9から続く「起動」状態のシステムにより、圧力センサ(PS1)54から受信した空気圧力センサデータは、「バッファへのPS1連続データ入手(TMB)」と表題をつけたボックス内に示したように、バッファに連続的に登録される。バッファは、所定の経過時間(TMB)の連続ローリングウィンドウ用に受信したデータを記憶するのみである。出願人は、最大ローリングバッファ時間(TMB)ウィンドウとして、15秒以上且つ60秒以下が、さらなる正確な処理に十分なデータを収集できる有利な時間であると判断した。最初の段階において、マイクロコントローラは、呼吸活動(IRA)の開始時刻がシステムによって登録されたかどうかを判定する。その判定の結果が肯定的なものである場合、次いで、呼吸事象が検出されたかどうかについて判定が行われる。呼吸事象が検出された場合、次いで、最後の呼吸活動が記録された時刻(ILA)は、システムによって登録された現在時刻又は瞬間時刻に等しいと規定され、そして、以下に説明するその後の判定へと進む。呼吸事象が何も検出されない場合、システムは、以下の2つの条件が両方満たされているかどうかの以下の判定へとすぐに進む。
現在時刻Tから最後の呼吸活動時刻(ILA)を引いたものが、前に記録された呼吸活動以降、且つTMBに達する前に呼吸活動が何も起こらなかった際に記録が停止していた時間(TSR)よりも、小さいという条件、及び
現在時刻Tから呼吸開始時刻(IRA)を引いたものが、最大記録時間(TMR)よりも、小さい、という条件。
【0107】
上述の判定において、出願人は、TSRは、有利には、1秒以上15秒以下であると判断した。
【0108】
この判定の結果も肯定的である場合、ループは空気圧力センサ(PS1)54データの連続的な収集状態に戻り、さらなるデータを待つ。この判定の結果が否定的である場合、呼吸活動終了時刻(ISA)、すなわち、吸入が終了する時刻の値は、システムにより記録された実際の現在時刻に等しいと規定される。この場合、吸入事象が作られ、呼吸活動開始時刻(IRA)と呼吸活動終了時刻(ISA)との間にバッファより抽出されたデータは、さらなる処理、及び/又はデータ通信のためにシステムに記憶される。最後に、呼吸活動開始時刻(IRA)の値が無効化され、ループは空気圧力センサ(PS1)54データの連続的な収集状態に戻り、さらなるデータを待つ。最初の段階において、呼吸活動開始時刻(IRA)の判定が否定的である場合、さらなる判定が行われ、その判定において、以下の条件の両方が検証される。
現在の登録時刻Tから呼吸終了時刻(ISA)を引いたものが、装置非作動時間(TDI)よりも、大きいという条件、及び
現在の登録時刻Tから薬物放出時刻(IDR)を引いたものが、装置非作動時間(TDI)よりも、大きいという条件。
【0109】
この判定の結果が肯定的である場合、すなわち、両方の条件が満たされる場合、図12に説明されるように、システムは、呼吸活動検出ループに入る。しかしながら、結果が否定的である場合、システムは、通信モジュールを介してバッファから回復した任意のデータを、リモート装置へと送信し、システムはスリープ状態に戻る。
【0110】
図12図11の続きであり、吸入が開始した際に判定を行うためにシステムが用いる吸入活動検出ループを、概略的に説明したものである。このループにおいて、まず、吸入事象が検出されたかどうかについて、判定が行われる。この判定の結果が肯定的である場合、呼吸活動開始時刻(IRA)の値は、システムに記録された現在時刻Tからバッファ開示時刻マージン(TMA)を引いたものに設定される。加えて、前の呼吸活動時刻の値(ILA)は、システムに記録された現在時刻Tに設定され、そしてループは、図11に戻ることを指し示す矢印により図示されているように、空気圧力センサ(PS1)54の連続的データ入手に戻る。呼吸活動が何も検出されない場合も、図11に戻ることを指し示す矢印により図示されているように、システムは空気圧力センサ(PS1)54の連続的データ入手に戻る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12