(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20230221BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20230221BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230221BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
(21)【出願番号】P 2019009915
(22)【出願日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】岡本 直久
(72)【発明者】
【氏名】舩山 健治
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-183105(JP,A)
【文献】特開2012-075281(JP,A)
【文献】特開平8-098304(JP,A)
【文献】特開2015-043662(JP,A)
【文献】特開2017-117614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/04
H02J 7/10
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の充電を制御する蓄電システムであって、
前記蓄電池の温度を測定する温度センサと、
前記蓄電池に対する充電を行う充電部と、
前記充電部が所定の充電電力で充電を開始し終了するよう制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記温度センサの測定結果が所定温度を超える場合には、第1の充電電力で前記充電部による充電を行う一方で、前記温度センサの測定結果が所定温度以下である場合には、前記蓄電池に対する充電電力を前記第1の充電電力よりも低い第2の充電電力で前記充電部による充電を開始
することで、満充電になるまでに要する充電時間を長くし、前記蓄電池の温度が、
充電終了後の待機状態において当該蓄電池が動作不能となる温度を下回らないように充電を終了させることを特徴とする蓄電システム。
【請求項2】
前記蓄電池の電池残量を測定する電池残量測定手段を備え、
前記制御部は、
前前記温度センサの測定結果と、記電池残量測定手段の測定結果とに基づいて、前記第2の充電電力を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記温度センサの測定結果が前記所定温度以下である場合には、充電開始時から予め設定された充電終了目標時刻まで充電を続行し前記充電終了目標時刻において満充電となる充電電力を前記第2の充電電力として設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システムに関し、例えば、屋外に設置された蓄電池の充電を制御する蓄電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば太陽光などの再生可能エネルギーを利用して発電する発電設備と、蓄電池ユニットを有する蓄電システムを備えた電力システムが考えられている(特許文献1参照)。
【0003】
このような電力システムでは、太陽光発電が可能な昼間の時間帯には太陽光発電設備を利用して太陽光発電を行い、当該太陽光発電により発生した電力により蓄電池ユニットを充電し、一方、太陽光発電を利用し得ない夜間には、深夜電力を利用して蓄電池ユニットを充電するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、かかる電力システムにおいては、蓄電池ユニットの電池温度が電池として動作し得ない程度(例えば、零度以下)に低下すると、放電を開始しようとしても放電が困難になるという問題があった。特に屋外に蓄電池ユニットが設置されるシステムにおいては、低温になることが想定されるため、電池の低温対策が必要となっていた。
【0006】
このように、深夜の時間帯などにおいて環境の温度が低下することによって、電池の放電開始が困難な状態になると、蓄電池ユニットに蓄電された電力を使用することが困難になる問題があった。
【0007】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、充電終了後に蓄電池の温度低下によって当該蓄電池の使用が困難になることを抑制し得る、蓄電システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓄電システムは、蓄電池の充電を制御する蓄電システムであって、前記蓄電池の温度を測定する温度センサと、前記蓄電池に対する充電を行う充電部と、前記充電部が所定の充電電力で充電を開始し終了するよう制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記温度センサの測定結果が所定温度を超える場合には、第1の充電電力で前記充電部による充電を行う一方で、前記温度センサの測定結果が所定温度以下である場合には、前記蓄電池に対する充電電力を前記第1の充電電力よりも低い第2の充電電力で前記充電部による充電を開始し、前記蓄電池の温度が、当該蓄電池が動作不能となる温度を下回らないように充電を終了させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、温度センサの測定結果が所定温度以下となる低温時に充電電力を第2の充電電力に低下させて充電を開始し、蓄電池の温度が、当該蓄電池が動作不能となる温度を下回らないように充電を終了させる充電制御を行うことにより、充電終了後に蓄電池に充放電が行われない待機状態となって当該蓄電池が動作不能となる温度にまで低下することを防止することができる。
【0010】
また本発明の蓄電システムは、上記構成において、前記蓄電池の電池残量を測定する電池残量測定手段を備え、前記制御部は、前記温度センサの測定結果と、前記電池残量測定手段の測定結果とに基づいて、前記第2の充電電力を決定することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、電池残量と電池温度に基づく充電電力に低下させて充電を行うことにより、充電終了目標時刻に満充電となる充電制御を行うことができる。
【0012】
また本発明の蓄電システムは、上記構成において、前記制御部は、前記温度センサの測定結果が前記所定温度以下である場合には、充電開始時から予め設定された充電終了目標時刻まで充電を続行し前記充電終了目標時刻において満充電となる充電電力を前記第2の充電電力として設定することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、充電開始時から充電終了目標時刻まで充電を続行できることにより、充電終了目標時刻前に充電が終了して蓄電池の温度が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、充電終了後に蓄電池の温度低下によって当該蓄電池の使用が困難になることを回避し得る蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る充電制御装置の構成を示す接続図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る充電制御装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る充電制御処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の実施形態に係る低温時モードの充電制御により蓄電池を充電した際の電池温度および充電量を示す特性曲線図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る通常モードの充電制御により蓄電池を充電した際の電池温度および充電量を示す特性曲線図である。
【
図6】他の実施形態に係る低温時モードの充電制御により蓄電池を充電した際の電池温度および充電量を示す特性曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る蓄電システム10は、商用電力系統13および自立出力系統14を含む交流電路20に繋がる双方向AC/DCコンバータ30と、双方向DC/DCコンバータ40と、蓄電池50と、制御部70とを備えている。
【0017】
交流電路20には、商用電力系統13および自立出力系統14と、双方向AC/DCコンバータ30との間にノイズフィルタ21が設けられている。双方向AC/DCコンバータ30と商用電力系統13との間にはスイッチ回路S1およびS2が設けられており、双方向AC/DCコンバータ30と商用電力系統13との間が開閉可能となっている。また、双方向AC/DCコンバータ30と自立出力系統14との間にはスイッチ回路S5およびS6が設けられており、双方向AC/DCコンバータ30と自立出力系統14との間が開閉可能となっている。また商用電力系統13と自立出力系統14との間にはスイッチ回路S3およびS4が設けられており、互いの系統の間が開閉可能となっている。
【0018】
双方向AC/DCコンバータ30は、交流側コンデンサC31と、交流リアクトルL31、L32と、インバータ33と、中間コンデンサC32とを有する。インバータ33は、スイッチング素子Q31~Q34をブリッジ接続したものである。スイッチング素子Q31、Q32、Q33、Q34には、それぞれ、ダイオードD31、D32、D33、D34が逆方向に並列接続されている。ダイオードD31~D34は寄生ダイオードであってもよい。これらのスイッチング素子Q31~Q34は、制御部70によってオン・オフ制御可能となっている。なお、スイッチング素子Q31~Q34は、MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)の他、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などを用いることができる。制御部70は、例えば、コンピュータを含み、記憶部(図示せず)に記憶された所定のプログラムを実行することによって、スイッチング素子Q31~Q34を制御する。
【0019】
交流側コンデンサC31および交流リアクトルL31、L32は、インバータ33でスイッチングした波形を平滑するLCフィルタである。
【0020】
双方向DC/DCコンバータ40は、ハイサイドのスイッチング素子Q41およびローサイドのスイッチング素子Q42と、直流リアクトルL41と、直流側コンデンサC41とを有し、チョッパ回路を構成する。スイッチング素子Q41、Q42には、ぞれぞれ、ダイオードD41、D42が逆方向に並列接続されている。ダイオードD41、D42は寄生ダイオードであってもよい。
【0021】
スイッチング素子Q41、Q42は、制御部70によってオン・オフ制御可能となっている。なお、スイッチング素子Q41、Q42は、MOSFETの他、例えば、IGBTなどを用いることができる。制御部70は、記憶部に記憶された所定のプログラムを実行することによって、スイッチング素子Q41、Q42を制御する。
【0022】
双方向DC/DCコンバータ40は、双方向に使用することができ、蓄電池50の放電時は昇圧チョッパとなり、蓄電池50の充電時は降圧チョッパとなる。また、インバータ33は、直流から交流への変換を行うだけでなく交流から直流への変換を行う双方向性のAC/DCコンバータとして機能することが可能である。
【0023】
DC/DCコンバータ40には、蓄電池50の状態を計測するための電池状態センサ60が設けられている。電池状態センサ60は、蓄電池50の近傍に設けられたサーミスタなどの温度センサを有し、当該温度センサによる測定値を蓄電池50の温度測定値として出力する。また、電池状態センサ60は、蓄電池50の電圧および電流を測定する電圧センサおよび電流センサを有し、蓄電池50の電圧測定値および電流測定値として出力する。さらに、電池状態センサ60は、蓄電池50の端子電圧から電池残量(充電量)を計測して出力する。なお、温度センサは、蓄電池50の近傍に設けることに限らず、外気温等に基づいて間接的に蓄電池50の温度を測定してもよい。
【0024】
制御部70は電池状態センサ60にセンサI/F74を介して信号線で接続されており、電池状態センサ60から取得した温度測定値、電圧測定値、電流測定値および電池残量(充電量)に基づいて、スイッチング素子Q41、Q42をオン・オフ制御する。具体的には、制御部70は、予め設定されている充電開始時刻になると、蓄電池50への充電電力が、所定の充電電力指定値となるように、スイッチング素子Q41、Q42を制御する。そして、充電を開始した後、電池状態センサ60から取得した電圧測定値に基づいて充電量を判断し、充電量が指定値または100%(満充電)となったことを検出すると、充電を終了するように制御する。
【0025】
図2は、制御部70の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御部70は、バスBUSにCPU71、ROM72、RAM73、センサI/F74、コンバータI/F75、ネットワークI/F76、時計77、操作入力部78を有している。
【0026】
RAM73は、後述する蓄電池50の充電制御を行うために必要な情報を記憶している。具体的には、充電開始となる深夜電力時間帯の開始時刻、充電終了の目標時刻となる深夜電力時間帯の終了時刻、充電電力として通常モード用の充電電力(通常充電時の目標とする電圧値および電流値)、低温時モード用の充電電力(低温時に充電を行うための目標とする電圧値および電流値)などが記憶されている。なお、本実施形態において、充電開始時刻は深夜電力時間帯の開始時刻に設定されるが、これに限られず、例えば、操作入力部78を介して、ユーザが手動で操作設定することもできる。また、ROM72は、後述する蓄電池50の充電制御を行うための処理プログラムなどを記憶している。
【0027】
図3は、制御部70による充電制御処理手順を示すフローチャートである。
図3に示すように、制御部70は、時計77から現在時刻を表す現在時刻情報を取得し(ステップS10)、当該取得した現在時刻情報とRAM73に記憶されている充電開始時刻情報に基づいて、現在時刻が充電を開始する時刻に達しているか否かを判断する(ステップS11)。充電開始時刻情報は、深夜電力時間帯の開始時刻情報またはユーザによって任意に設定された時刻を表す情報である。
【0028】
現在時刻が充電を開始すべき充電開始時刻に至っていない場合、制御部70のCPU71は、ステップS11において否定結果を得ることにより、再度時刻情報を取得する(ステップS10)。これに対して、現在時刻が充電を開始すべき充電開始時刻に至っている場合、制御部70のCPU71は、ステップS11において肯定結果を得ることにより、ステップS11からステップS12に処理を移して、電池状態センサ60から電池の温度測定値を取得し、さらに、続くステップS13において、電池状態センサ60から現在の電池残量の情報を取得する。
【0029】
そして、CPU71は、ステップS14に処理を移して、上述のステップS12乃至ステップS13において取得した情報に基づいて、充電モードを選択する。具体的には、蓄電池50の現在(例えば、深夜電力料金適用開始時刻)の電池温度が予め決められている所定の基準温度(例えば5℃)を下回っている場合には、その後の充電時間内(深夜時間帯)に0℃を下回ることが予測されるため、通常の充電電力(第1の充電電力)での充電(通常モード)に比べて充電電力を低く抑えた低温時モードの充電電力(第2の充電電力)を選択する。この低温時モードが選択されると、CPU71は、ステップS15からステップS16に処理を移して、現在の蓄電池50の電池残量に基づいて、充電終了時刻(例えば、深夜電力料金適用終了時刻)までの時間全部を使用して満充電となるような充電電力を選択する。すなわち、通常の充電電力よりも低く抑えた充電電力であって、かつ、充電終了目標時刻に満充電となるような充電電力を選択する。この選択肢は、充電開始時の現在温度、現在電池残量、充電時間といったパラメータに対応した充電電力として、予めRAM73に記憶されている。因みに、これらのパラメータに対応した充電電力は、蓄電池50の仕様別、環境(温度)別に試験的に充電を行った結果に基づいて設定されている。例えば、ある電池温度および電池残量の場合にどのくらいの充電電力で充電を行った場合には、充電時間がどれくらいになるかといった試行を条件別に行うことにより得られた結果をRAM73に記憶して用いる。
【0030】
このような充電電力の選択により、例えば、通常モードでの充電電力で充電する場合には、10A(アンペア)の充電電流を維持する充電を行うのに対して、低温時モードでは5A(アンペア)に抑えた充電電流を維持する充電を行うといった選択がなされる。このように充電電力を低く抑えた充電電力を選択することにより、通常モードで充電する場合に比べて、満充電になるまでに要する充電時間を長くすることができる。すなわち、充電終了目標時刻よりも前に満充電となって充電が終了してしまうことを回避し、充電終了目標時刻に満充電となって充電が終了するように制御することができる。
【0031】
一方、現在の電池温度が上記した基準温度以上である場合には、CPU71は、ステップS15からステップS17に処理を移して、通常モードでの充電電力を選択する。これにより、低温時モードで選択される充電電力よりも大きな通常の充電電力が選択されることにより、充電終了目標時刻よりも前に充電を終了することが許容される。
【0032】
このような充電制御処理を実行することにより、低温時において充電終了目標時刻よりも前に充電が終了して蓄電池が待機状態(充電も放電もされていない状態)になることを回避することができる。すなわち、充電終了目標時刻は、放電開始時刻と一致する時刻に設定されており、充電終了目標時刻に充電が終了するように充電制御すれば、充電終了後、直ちに放電が開始されることになる。これにより、充放電時に蓄電池50が発熱することで当該蓄電池50が動作不能温度(例えば0℃以下)になることを防止することができ、蓄電池50が低温により使用不可能状態(充電も放電も困難になる状態)に陥ることを予防することができる。
【0033】
図4は、本実施形態における低温時モードの充電制御により蓄電池50を充電した際の蓄電池50の電池温度および充電量を示す特性曲線図であり、
図5は、比較例として、通常モードの充電制御により蓄電池50を充電した際の蓄電池50の電池温度および充電量を示す特性曲線図である。
図4に示すように、充電開始時刻t0において低温時モード用に選択された充電電力により蓄電池50の充電を開始すると、蓄電池50の充電量は充電量曲線L11で示すように上昇して行く。この上昇の度合いは、通常モードの充電電力(低温時モードの充電電力よりも大きい充電電力)で充電した場合(
図5の充電量曲線L1)に比べて、緩やかになっている。
【0034】
これにより、充電終了目標時刻t3(深夜電力時間帯の終了時刻)まで充電が終了することなく続行され、当該充電終了目標時刻t3において満充電(充電量100%)となって充電を終了するように制御することができる。このように、充電終了目標時刻t3まで充電が続行されることにより、蓄電池50の温度は、温度曲線L12(
図4)で示されるように、充電開始時刻t0から緩やかに上昇した後、充電終了目標時刻t3まで、ほぼ一定の温度を維持することになる。そして、充電終了目標時刻t3は、放電開始時刻と一致する時刻に設定されていることにより、充電終了後、直ちに放電が開始されることになる。この場合、蓄電池50の温度は、充電時および放電時の発熱により、上昇した状態を維持し、当該蓄電池50が動作し得なくなる0℃にまで低下することがなくなる。
【0035】
これに対して、通常モードで充電した場合(
図5)、充電電力が低温時モードよりも大きいことにより、蓄電池50の温度は、
図5において温度曲線L2で示されるように、低温時モードに比べて急激に上昇する。そして、通常モードでの充電量曲線L1で示されるように、充電終了目標時刻t3よりも前の時刻t1において満充電となることにより、蓄電池50は、当該時刻t1から充電終了目標時刻t3(すなわち、放電開始時刻)までの間、充電も放電もされない待機状態となる。これにより、当該蓄電池50の温度は、待機状態に切り替わった時刻t1以降下降に転じ、例えば時刻t2において0℃を下回ることになる。すなわち、放電が開始される時刻t3において、蓄電池50の温度は0℃以下に下がってしまい、放電に移行することが困難になるおそれが生じる。
【0036】
本実施形態においては、蓄電池50の充電制御として、低温時モードを選択し得ることにより、
図4に示したように、充電終了目標時刻t3の前に充電が終了して待機状態となることを回避することができ、これにより、放電開始時刻(充電終了目標時刻t3)において蓄電池50の電池温度が動作不可能となる0℃以下にまで低下することを防止することができる。
【0037】
なお、上述の実施形態においては、充電開始時に充電モード(通常モードまたは低温時モード)を選択すると、当該選択された充電モードで充電終了目標時刻t3まで充電を続行する場合について述べたが、これに限られるものではなく、充電途中で充電モードの見直しを行うようにしてもよい。
【0038】
具体的には、
図6に示すように、制御部70(
図1)において、電池状態センサ60から取得した蓄電池50の充電量(電池残量)が70%まで充電された状態を監視し、その時点(
図6の時点tx)において充電電力の見直しを行う。この場合、制御部70のCPU71は、時計77から現在時刻txを取得し、現在時刻txと充電終了目標時刻t3とに基づいて、残り時間を求める。そして、現在の充電量70%から充電を開始して、残り時間の経過時(充電終了目標時刻t3)に満充電となるような充電電力を再設定する。この充電電力は、現在温度、現在電池残量、充電時間といったパラメータに対応した充電電力として、予めRAM73に記憶されている選択肢から選択することができる。
【0039】
このような充電電力の再設定を行うことにより、例えば、充電開始時t0において設定した充電電力では充電終了目標時刻t3において満充電に満たない予測がされた場合には、それまでの充電電力よりも大きな充電電力により充電電力が再設定されることにより、充電終了目標時刻t3において満充電となるように充電制御を行うことができる。これにより、例えば、蓄電池50の設置環境の気温が、低温時モードとして想定されている気温と異なるなど、想定された充電条件と実際の充電条件が異なって満充電となる目標時刻に差異が生じる可能性がある場合、充電電力の再設定を行うことにより、充電終了目標時刻t3まで充電状態を維持することができる。これにより、予測時刻よりも前に充電が終了することにより、蓄電池50が待機状態に移行してその温度が使用不可能な温度(例えば、0℃を下回る温度)にまで低下することを防止することができる。
【0040】
また、
図6に示した場合とは逆に、充電量が70%まで充電された時点が予定よりも早い時刻となっている場合には、その後の充電電力をそれまでの充電電力よりも低い値に再設定することにより、充電終了目標時刻よりも前に充電が終了してしまうことを、温度環境などの実際の状況に応じて適切に回避することができる。
【0041】
また、上述の実施形態においては、蓄電池50の現在の温度と電池残量に基づいて充電モード(通常モードまたは低温時モードのいずれか)を選択する場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、ネットワークI/F76(
図2)を介して外部から気温の予測情報を取得し、当該取得した気温の予測情報に基づいて、充電モードを選択するようにしてもよい。具体的には、気温の予測情報として充電開始時刻から充電終了目標時刻までの間に気温が0℃を下回ると予測される場合、低温時モードを選択することにより、蓄電池50の設置環境の気温予測に応じた充電電力の設定を行うことができる。特に、蓄電池50が屋外に設置される場合には、外気温の予測結果を充電モードの選択時において考慮することにより、蓄電池50の温度が外気温に左右され易い環境(屋外など)において、一段と有効に充電制御を行うことができる。
【0042】
また、上述の実施形態においては、予め決められた時刻に充電を開始する場合について述べたが、これに限られるものではなく、例えば、充電開始前から電池状態センサ60により蓄電池50の電池温度を監視し、蓄電池50の電池温度が低温(例えば、0℃または0℃を僅かに上回る温度など)になった場合には、予め決められている充電開始時刻前(
図4において時刻t0より前の時刻)であっても、充電を開始するようにしてもよい。このようにすれば、充電開始時に既に蓄電池50が動作(充放電)し得ない程度の低温(例えば0℃)に温度低下しているような場合であっても、蓄電池50を確実に充電することができる。この場合、充電開始時の充電制御処理は、
図3について上述した処理手順により充電電力を選択して行うことができる。
【0043】
また、上述の実施形態においては、充電開始時に低温時モードを選択する基準となる電池温度を5℃以下とした場合について述べたが、基準温度はこれに限られず、要は充電開始後の深夜電力時間帯において待機状態となった蓄電池50の温度が当該蓄電池50の充放電動作が困難となる温度(例えば0℃)以下となることが予測される温度(0℃よりも僅かに高い温度)を充電開始時のモード選択の基準温度として用いればよい。
【符号の説明】
【0044】
10 蓄電システム
13 商用電力系統
14 自立出力系統
20 交流電路
30 AC/DCコンバータ
40 DC/DCコンバータ
50 蓄電池
60 電池状態センサ
70 制御部