(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 11/12 20060101AFI20230221BHJP
E02D 1/02 20060101ALI20230221BHJP
E02D 1/08 20060101ALI20230221BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G01N11/12 Z
E02D1/02
E02D1/08
E02D17/20 106
(21)【出願番号】P 2019056614
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018073862
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴ヶ崎 和博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 順司
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-501078(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139378(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0196993(US,A1)
【文献】特開2005-156369(JP,A)
【文献】特開2012-097480(JP,A)
【文献】特開2017-043949(JP,A)
【文献】特開2002-054956(JP,A)
【文献】特開2001-066118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 11/00-13/04
E02D 1/02
E02D 1/08
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟弱層の流動抵抗を検出する検出装置であって、
前記軟弱層内に単体で埋設される光ファイバセンサと、
該光ファイバセンサからの検出信号に基づいて、前記軟弱層の流動抵抗を検出する検出器と、を備え
、
前記光ファイバセンサは、基端側が拘束端となり、先端側が自由端であることを特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検出装置であって、
前記検出器は棒状に形成され、
前記光ファイバセンサは、前記検出器の軸方向端部から一体的に軸方向に沿って突設されて構成されることを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の検出装置であって、
前記光ファイバセンサは、トレミー管の下部に基端側が支持され、前記光ファイバセンサ及び前記検出器により、前記トレミー管の径方向外側に堆積される前記軟弱層である堆積地盤の流動抵抗を検出することを特徴とする検出装置。
【請求項4】
軟弱層の流動抵抗を検出する検出方法であって、
前記軟弱層内に
、基端側が拘束端となり、先端側が自由端である光ファイバセンサを単体で埋設して、当該光ファイバセンサまたは前記軟弱層を、前記光ファイバセンサの軸方向に対して略直交する方向にスライドさせつつ、前記光ファイバセンサ
の前記自由端を屈曲させることで、検出器が、該光ファイバセンサからの検出信号に基づいて、前記軟弱層の流動抵抗を検出することを特徴とする検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、軟弱層、例えば軟弱地盤等の流動抵抗を検出するための検出装置及び検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地盤強度、すなわち地盤の硬軟、締まり具合や流動抵抗等は、標準貫入試験方法(JIS A 1219 )、機械式コーン貫入試験方法(JIS A 1220)または原位置ベーンせん断試験方法(JGS 1411 2012)等に基づいて調査されている。
【0003】
しかしながら、上述した調査方法は、ある程度の強度が期待できる地盤が対象であり、高い含水比を有する粘土状の軟弱地盤や廃棄物汚泥等、強度(流動抵抗)が期待できないものを対象として計測することは困難であった。一方で、例えば材料物性の既知である金属片に計測用のひずみゲージなどを貼り付けて、その伸び縮みや変形から地盤の流動抵抗を検出する方法が考えられる。しかしながら、この検出方法では、金属片の強度や加工精度に影響されること、ひずみゲージと金属片との接着剤が強度に影響されること、また電気的な計測となるために防水処理用のコーティング剤に影響される等の問題がある。
【0004】
ところで、特許文献1には、光ファイバを用いた地中設置型の傾斜センサ装置において、盛土に隣接する地中に、底部を支持層に固定した光ファイバが固定される杭を配置した地中設置型の傾斜センサ装置を設置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の調査方法では、軟弱地盤や廃棄物汚泥等の軟弱層の流動抵抗を検出することは困難であった。
また、上述した特許文献1に係る発明は、光ファイバをプレートに固定した傾斜センサにより、盛土に起因する当該盛土の隣接地の傾斜を監視する構成であって、当該構成をもって、軟弱層の流動抵抗を検出することは困難である。すなわち、この傾斜センサでは、光ファイバがプレートに固定されているために、仮に、この傾斜センサによって軟弱層の流動抵抗を測定しようとすると、光ファイバに付与される流動抵抗が軟弱層の流動抵抗と一致せず、詳しくは光ファイバに付与される流動抵抗は、軟弱層の流動抵抗からプレートの剛性を差し引いたものとなり、純粋な軟弱層の流動抵抗を光ファイバで検出することができず、その検出精度が著しく低下するようになる。しかも、軟弱層の流動抵抗がプレートの剛性よりも小さい場合には、光ファイバには軟弱層の流動抵抗が付与されず、軟弱層の流動抵抗が検出不能になる虞がある。上述したように、特許文献1に係る発明では、軟弱層の流動抵抗を検出することは困難である。
【0007】
さらに、港湾工事の、埋立、防波堤や護岸等の構造物の築造に際して、土砂や水中コンクリート等を投入、打設する際トレミー管が用いられる場合がある。この場合には、トレミー管の下端が、軟弱層である堆積地盤に没入された状態を維持しつつ、トレミー管を上昇させて順次土砂や水中コンクリート等を投入する必要がある。このため、施工時には、トレミー管の下端とトレミー管周辺の堆積地盤(軟弱層)との位置関係を最適化するために、常時、トレミー管の高さ管理を行う必要があった。
【0008】
上述したトレミー管の高さ管理には、潜水夫の目視による管理方法など様々な方法が採用されているが、コストを抑え、適切に高さ管理を行うことは難しく、改善する必要がある。そのために、施工時、常時トレミー管周辺の軟弱層である堆積地盤の流動抵抗を精度良く検出して、その結果をトレミー管の高さ管理に反映させる必要があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、軟弱層の流動抵抗を精度良く検出することができる検出装置及び検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の態様)
以下に示す発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0011】
(1)軟弱層の流動抵抗を検出する検出装置であって、前記軟弱層内に単体で埋設される光ファイバセンサと、該光ファイバセンサからの検出信号に基づいて、前記軟弱層の流動抵抗を検出する検出器と、を備え、前記光ファイバセンサは、基端側が拘束端となり、先端側が自由端であることを特徴とする検出装置(請求項1の発明に相当)。
(1)項に記載の検出装置では、例えば、軟弱層内に単体で埋設された光ファイバセンサをその軸方向に対して直交する方向にスライドさせ、軟弱層の流動抵抗により光ファイバセンサの自由端を屈曲させることにより、軟弱層の流動抵抗を検出することで、光ファイバセンサによる検出精度を向上させることができる。また、光ファイバセンサは、基端側が拘束端となり、先端側が自由端であるので、光ファイバセンサの設置作業を容易にすることができる。また、拘束されない光ファイバセンサの先端の変位の自由度を確保することで、軟弱層の流動(軟弱層と光ファイバセンサとの相対変位)に対する光ファイバセンサの屈曲追従性を高めることができる。
【0013】
(2)(1)項に記載の検出装置であって、前記検出器にて検出した軟弱層の流動抵抗を経時的に保存するデータロガーを備えることを特徴とする検出装置。
(2)項に記載の検出装置では、データロガーにて蓄積された軟弱層の流動抵抗のデータにより、適切な流動抵抗を解析することができる。
【0014】
(3)(1)項に記載の検出装置であって、前記検出器は棒状に形成され、前記光ファイバセンサは、前記検出器の軸方向端部から一体的に軸方向に沿って突設されて構成されることを特徴とする検出装置(請求項2の発明に相当)。
(3)項に記載の検出装置では、その全体の大きさをコンパクトにして、ハンディタイプの検出装置を提供することができる。その結果、検出装置の取り扱いが非常に良好になる。
【0015】
(4)(3)項に記載の検出装置であって、前記検出器には、前記軟弱層の流動抵抗が表示される表示部が設けられていることを特徴とする検出装置。
(4)項に記載の検出装置では、検出時、作業者が速やかに軟弱層の流動抵抗を確認することができる。
【0016】
(5)(1)項または(2)項に記載の検出装置であって、前記光ファイバセンサは、トレミー管の下部に基端側が支持され、前記光ファイバセンサ及び前記検出器により、前記トレミー管の径方向外側に堆積される前記軟弱層である堆積地盤の流動抵抗を検出することを特徴とする検出装置(請求項3の発明に相当)。
(5)項に記載の検出装置では、光ファイバセンサにより、トレミー管の下部で、その径方向外側に堆積し始めた、軟弱層である堆積地盤の流動抵抗を検出することができ、その検出結果に基づいて、トレミー管を上昇させるタイミングを正確に把握することができる。要するに、(5)項に記載の検出装置をトレミー管の高さ管理に適用することができる。
【0017】
(6)軟弱層の流動抵抗を検出する検出方法であって、前記軟弱層内に、光ファイバセンサを単体で埋設して、当該光ファイバセンサまたは前記軟弱層を、前記光ファイバセンサの軸方向に対して略直交する方向にスライドさせつつ、前記光ファイバセンサの前記自由端を屈曲させることで、検出器が、該光ファイバセンサからの検出信号に基づいて、前記軟弱層の流動抵抗を検出することを特徴とする検出方法(請求項4の発明に相当)。
(6)項に記載の検出方法では、軟弱層内に、基端側が拘束端となり、先端側が自由端である光ファイバセンサを埋設した状態で、光ファイバセンサまたは軟弱層をスライドさせつつ、光ファイバセンサの自由端を屈曲させることで、検出器により、軟弱層の流動抵抗を検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る検出装置及び検出方法によれば、軟弱層の流動抵抗を精度良く検出することができる。また、本発明に係る検出装置では、トレミー管周辺の軟弱層である堆積地盤の流動抵抗を精度良く検出することができ、施工時におけるトレミー管の高さ管理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る検出装置を示しており、(a)は、光ファイバセンサをスライドさせる前の様子を示し、(b)は、光ファイバセンサをスライドさせた後の様子を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る検出装置であって、軟弱層を横方向にスライドさせた様子を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る検出装置であって、検出器を含む光ファイバセンサを複数備え、軟弱層を横方向にスライドさせた様子を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る検出装置であって、検出器の構成を説明するための図である。
【
図5】
図5は、各試料において、光ファイバセンサのスライド距離と応答ひずみ量との関係を示したものである。
【
図6】
図6は、
図5におけるひずみ量の安定区間における応答ひずみ量と各試料との関係を示したものである。
【
図7】
図7は、光ファイバセンサの応答ひずみ量に対する粘度を示したものである。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る検出装置の概略斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る検出装置の概略図である。
【
図11】
図11は、光ファイバセンサから得られる光の波長の変化を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図11に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1~第3の実施形態に係る検出装置1a、1b、1cは、例えば、以下(1)~(6)に示す軟弱層10の流動抵抗を検出することができる。(1)一般の軟弱地盤。(2)河川、湖沼及び海域の浮泥。(3)埋立工事における施工中及び施工後の堆積地盤や投入土等で、特にトレミー管周辺の堆積地盤。(4)廃棄物汚泥や処分場における堆積物や投入物。(5)セメントスラリー。(6)その他流動性を有する軟弱層。要するに、本検出装置1a、1b、1cは、軟弱層10(例えば、粘着力1kN/m
2以下)の流動抵抗を検出するものである。
【0021】
まず、本発明の第1の実施形態に係る検出装置1aを
図1~
図4に基づいて詳細に説明する。
第1の実施形態に係る検出装置1aは、
図1に示すように、軟弱層10内に、それ単体で埋設される光ファイバセンサ3と、該光ファイバセンサ3からの検出信号に基づいて、軟弱層10の流動抵抗を検出する検出器4と、検出器4にて検出した軟弱層10の流動抵抗を経時的に保存するデータロガー5と、を備えている。光ファイバセンサ3は、細径で柔軟性を有する。光ファイバセンサ3は、軟弱層10内に単体で設置されている。光ファイバセンサ3は、その基端側がセンサ固定部8により拘束される。このように、光ファイバセンサ3は、その基端側がセンサ固定部8により拘束される拘束端となり、その先端側が拘束されず自由端で設置される。光ファイバセンサ3は、データロガー5内の検出器4に接続される。
【0022】
検出器4は、データロガー5に一体的に内蔵されている。検出器4は、
図4に示すように、光ファイバセンサ3に向かって光を供給する光源部15と、光ファイバセンサ3からの光を受光する受光部16と、該受光部16から軟弱層10の流動抵抗(外部入力)に応じて変化する光の特性変化を検出する検出部17と、検出部17からの光の特性変化により軟弱層10の流動抵抗を演算する演算部18と、を備えている。そして、
図1も参照して、光ファイバセンサ3へ軟弱層10の流動抵抗が付与されると、光ファイバセンサ3が軟弱層10の流動抵抗により屈曲しつつ、検出器4の検出部17にて、軟弱層10の流動抵抗(外部入力)に応じて変化する光の特性変化を検出して、演算部18により、検出部17にて検出した光の特性変化に基づいて、光ファイバセンサ3に付与される物理的な量の変化である軟弱層10の流動抵抗を検出することができる。なお、演算部18には、光の特性変化に対する粘度(流動抵抗)の関係が予め入力されている(
図7参照)。データロガー5は、検出器4にて検出された軟弱層10の流動抵抗を経時的に保存するものである。そして、データロガー5では、検出器4からの軟弱層10の流動抵抗に基づいて、光ファイバセンサ3の屈曲具合(時間の経過)に基づく軟弱層10の流動抵抗をグラフ化するなどして、軟弱層10の流動抵抗(強度)を解析することができる。
【0023】
次に、第1の実施形態に係る検出装置1aを使用した軟弱層10の流動抵抗の検出方法、及び検出装置1aの作用を説明する。
図1(a)に示すように、光ファイバセンサ3を軟弱層10内に埋設する。詳しくは、光ファイバセンサ3を、軟弱層10の表面に対して直交する方向から軟弱層10内に没入するようにして設置する。光ファイバセンサ3は、軟弱層10内に、その先端部が拘束されず自由端で設置される。続いて、検出器4の光源部15からの光が入射光として光ファイバセンサ3に供給されると共に、その反射光を受光部16によって受光する。続いて、
図1(b)に示すように、センサ固定部8を、光ファイバセンサ3の軸方向に対して直交する方向にスライドさせる。このとき、光ファイバセンサ3を、加速度の発生を抑制しながら、なるべくゆっくりとほぼ等速運動でスライドさせる必要がある。すると、光ファイバセンサ3へ軟弱層10の流動抵抗が付与され、光ファイバセンサ3が軟弱層10の流動抵抗に応じて屈曲する。引き続き、データロガー5内の検出器4の検出部17では、受光部16にて受光した、光ファイバセンサ3の屈曲に応じて変化する光の特性変化を検出する。光の特性は、光強度、位相、周波数、波長、偏波などである。
【0024】
引き続き、検出器4の演算部18では、検出部17にて検出した光の特性変化に基づいて、軟弱層10の流動抵抗が演算される。引き続き、検出器4の演算部18にて演算された軟弱層10の流動抵抗が、光ファイバセンサ3の屈曲に伴ってデータロガー5に保存される。引き続き、データロガー5では、時間の経過に伴って、言い換えれば、光ファイバセンサ3の屈曲具合に応じて軟弱層10の流動抵抗が順次保存される。そして、データロガー5では、光ファイバセンサ3の屈曲具合(時間の経過)に基づく軟弱層10の流動抵抗をグラフ化するなどして、適切な軟弱層10の流動抵抗(強度)が解析される。
【0025】
なお、例えば、光ファイバセンサ3をスライドさせる際、その速度を計測する構成を採用して、この測定結果を経時的にデータロガー5に保存するようにするようにしてもよい。この実施形態の場合には、データロガー5では、光ファイバセンサ3の屈曲具合(時間の経過)に基づく軟弱層10の流動抵抗に加えて光ファイバセンサ3の速度をもグラフ化するなどして、軟弱層10の流動抵抗を解析する。要するに、上述のグラフにおいて、光ファイバセンサ3がほぼ等速運動でスライドされる区間、言い換えれば、流動抵抗が時間の経過に伴って略一定に推移する区間を着目することで、正確な軟弱層10の流動抵抗を把握することができる。
【0026】
また、上述した実施形態では、光ファイバセンサ3をスライドさせているが、
図2に示すように、光ファイバセンサ3を軟弱層10内に埋設させた状態で、軟弱層10を横方向(光ファイバセンサ3の軸方向に対して略直交する方向)に流動させることで、光ファイバセンサ3を屈曲させて、その流動抵抗を検出するようにしてもよい。
【0027】
さらに、
図3に示すように、複数の光ファイバセンサ3、3を軟弱層10内に埋設しておき、軟弱層10を横方向に流動させることで、各光ファイバセンサ3、3をそれぞれ屈曲させて、各検出器4、4にて流動抵抗を検出する。続いて、各検出器4、4で演算した流動抵抗をデータロガー5にて保存する。そして、データロガー5にて、各検出器4、4からの流動抵抗に基づいて、適切な流動抵抗を解析することができる。これにより、
図1に示す実施形態により、軟弱層10の流動抵抗の検出精度を向上させることができる。
【0028】
そこで、第1の実施形態に係る検出装置1aによる実験結果を以下に説明する。軟弱層10としての試料を、含水比200%、250%、300%、400%、500%、1000%の6通りの浚渫粘性土とした。なお、含水比200%以上の粘性土については、ベーンせん断試験方法によって、その強度(流動抵抗)を特定することが困難であることが既に実験にて確認済みである。そして、これら各試料10内に光ファイバセンサ3の先端部10mmを挿入して、当該光ファイバセンサ3を一定の速度(10mm/s)で横方向にスライドさせて、光ファイバセンサ3を屈曲させる。すると、各試料10の強度に応じた撓みが光ファイバセンサ3に生じ、その時に発生したひずみ量を計測する。
図5は、各試料10(含水比200%、250%、300%、400%、500%、1000%の粘性土)において、光ファイバセンサ3のスライド距離と応答ひずみとの関係を示したものである。
【0029】
この
図5を参照すると、各試料10にて、光ファイバセンサ3の応答ひずみ量が異なっていることが解る。すなわち、各試料10においてその含水比が低くなるほど、流動抵抗が大きくなるため、光ファイバセンサ3が屈曲して、それに伴い光ファイバセンサ3のひずみ量が大きくなっている。また、
図5においては、各試料10とも、スライド初期の応答ひずみ量がスライド量に比例して上昇している区間と、その後応答ひずみ量が安定した区間とに分けられる。スライド初期の、応答ひずみ量がスライド量に比例して上昇している区間では、光ファイバセンサ3がスライドし始めてその速度が一定になるまでの加速度が作用している区間及び光ファイバセンサ3が撓み始めてその撓みが安定するまでの区間であると考えられる。スライド速度が遅い(10mm/s)ことや、応答ひずみ量が上昇する傾きが各試料10にて同一ラインに載っていることなどから、この区間は光ファイバセンサ3の撓みが安定するまでの区間とみなせる。
【0030】
一方、その後の応答ひずみ量が安定している区間については、各試料10ごとにそのひずみ量がほぼ一定値で推移していることが解る。そして、
図6には、安定区間における応答ひずみ量と各試料10との関係を示している。この
図6を参照すると、各試料10のうち、含水比500%より大きいものはひずみ量の差は認められないものの、含水比200~500%の試料10では、そのひずみ量の差をはっきりと判別することができる。そして、含水比が低くなるほど、光ファイバセンサ3のひずみ量が大きくなっており、この検出装置1aの検出結果が妥当であることが解る。なお、含水比500%より大きい粘性土であっても、光ファイバセンサ3の固定位置や粘性土内への挿入長さを変化させる、あるいは光ファイバセンサ3の材質を変化させる、といった方法によりセンサ部の感度を変えることで、ひずみ量の差を得ることは可能である。
【0031】
また、各試料10の含水比と粘度(流動抵抗)との関係を事前に算出しておけば、
図7に示すような、光ファイバセンサ3のひずみ量に対する粘度のグラフを得ることができ、このグラフを検出器4の演算部18に予め入力しておけばよい。
この実験結果からも解るように、軟弱層10であっても、第1の実施形態に係る検出装置1aにより、その流動抵抗(強度)を容易に検出することが可能となる。
【0032】
以上説明した、第1の実施形態に係る検出装置1aは、軟弱層10内に単体で埋設される光ファイバセンサ3と、該光ファイバセンサ3からの検出信号に基づいて、軟弱層10の流動抵抗を検出する検出器4と、を備えている。これにより、軟弱層10の流動抵抗を直接光ファイバセンサ3で受けるので、流動抵抗の検出精度を向上させることができる。また、光ファイバセンサ3は、その先端側が拘束されることなく自由端で軟弱層10内に設置されるので、光ファイバセンサ3の設置作業を容易にすることができる。また、光ファイバセンサ3の先端側における変位の自由度を確保することで、軟弱層10の流動に対する光ファイバセンサ3の屈曲追従性を高めることができる。
【0033】
次に、第2の実施形態に係る検出装置1bを
図8に基づいて説明する。この第2の実施形態に係る検出装置1bを説明する際には、第1の実施形態に係る検出装置1aとの相違点のみを説明する。
第2に実施形態に係る検出装置1bでは、検出器4が断面略円形状の棒状に形成される。この検出器4は、作業者が手で握れる程度の外径を有する。この検出器4の部分が、作業者が把持する部分となり、検出器4は適宜長さで形成される。検出器4の軸方向一端から光ファイバセンサ3が延びている。当該光ファイバセンサ3は所定長さで延びている。この長さは軟弱層10の態様に基づいて適宜設定される。また、検出器4の外面には、軟弱層10の流動抵抗を表示する表示部25が形成される。
【0034】
そして、第2の実施形態に係る検出装置1bでは、作業者が検出器4の部分を把持して、容器20等に入った軟弱層10内に、光ファイバセンサ3を埋設して、その軸方向と直交する方向に沿ってスライドさせる。すると、表示部25には、流動抵抗の値が0から上昇して略一定値を維持しながら表示される。その略一定値が容器20内の軟弱層10の流動抵抗となる。
【0035】
以上説明した、第2の実施形態に係る検出装置1bでは、その大きさがハンディタイプとなっているので、持ち運びが容易であり、取り扱いが非常に良好になる。また、作業者は、検出時、その場で速やかに軟弱層10の流動抵抗を確認することができる。このように、第2の実施形態に係る検出装置1bは、軟弱層10の流動抵抗を簡易的に検出する際に有効である。
【0036】
次に、第3の実施形態に係る検出装置1cを
図9~
図11に基づいて説明する。この第3の実施形態に係る検出装置1cを説明する際には、第1の実施形態に係る検出装置1aとの相違点のみを説明する。
第3の実施形態に係る検出装置1cは、トレミー管30の高さ管理に適用される。トレミー管30の下部には、光ファイバセンサ3のセンサ固定部8を支持する支持手段33が固定される。支持手段33は、トレミー管30の下部周りに固定される円筒状の支持本体部35と、該支持本体部35の下端外周面から径方向外方に向かって突設される環状の支持板部36と、から構成される。光ファイバセンサ3は、センサ固定部8を介して支持板部36に周方向に沿って間隔を置いて複数配置される。支持手段33により、基端側が支持された各光ファイバセンサ3は、その先端部が、トレミー管30の下部で、その径方向外側に堆積し始める、軟弱層10である堆積地盤に接触可能な位置に配置される。検出器4は、各光ファイバセンサ3それぞれに対応するように複数備えられる。各検出器4は、データロガー5に一体的に内蔵されている。
【0037】
そして、供給管40からトレミー管30内に、例えば液体状の土砂(またはそれに準じるような土砂)が投入されると、トレミー管30の下端から液体状の土砂が流出しつつ、該液体状の土砂がトレミー管30の下部外周に軟弱層10である堆積地盤として堆積し始める。その後、トレミー管30への液体状の土砂の投入が継続されると、堆積地盤が徐々に上昇して各光ファイバセンサ3の先端部に接触しつつ、その流動抵抗により各光ファイバセンサ3の先端部が屈曲し始める。その後、各光ファイバセンサ3の先端部が、上昇してくる堆積地盤内に埋設されながら、各光ファイバセンサ3及び各検出器4によって、堆積地盤の流動抵抗が検出されて、その検出結果が連続してデータロガー5に伝達され、データとして蓄積される。その際、データロガー5に保存された堆積地盤(軟弱層10)の流動抵抗の推移に基づいて、例えば、堆積地盤の流動抵抗が所定時間維持された時点で、トレミー管30を各光ファイバセンサ3と共に、トレミー管30の下端が堆積地盤に没入された状態を維持しながら所定高さまで上昇させる。この動作を繰り返して、土砂投入が完了する。このようにして、第3の実施形態に係る検出装置1cを採用することにより、トレミー管30の高さ管理(筒先高さ管理)を精度良く実施することができる。
【0038】
なお、第3の実施形態に係る検出装置1cは、第1の実施形態に係る検出装置1aのように、堆積地盤そのものの強度(流動抵抗)を検出する目的ではなく、堆積地盤の強度(流動抵抗)の推移を検出して、トレミー管30を上昇させるタイミングを管理するためのものである。つまり、液体状の土砂を供給管40からトレミー管30内に投入して、その液体状の土砂がトレミー管30の下端から流出した際に、検出器4により、光ファイバセンサ3の先端部の屈曲度合(光の特性変化)を検出して、データロガー5に保存された流動抵抗の推移を把握することで、トレミー管30を上昇させるタイミングを管理するようにしている。
【0039】
そこで、第3の実施形態に係る検出装置1cによる実験結果を以下に説明する。
トレミー管30の先端部に取り付けられた光ファイバセンサ3を水の張った容器内にセットし、その後静かにトレミー管30内に高含水比のスラリーを投入すると、容器内にスラリーが堆積していく。その容器内の堆積層が上昇して光ファイバセンサ3に接触すると、光ファイバセンサ3の先端部が屈曲し始め、ひずみが生じその波長が検出器4によって順次検出されて、その波長の推移がデータロガー5に保存されることになる。このときの光ファイバセンサ3から得られる光の波長の推移を
図11に示している。
【0040】
この
図11を参照すると、まず、投入開始において、水のなかにスラリーを投入していくので、当然水自体の流れは生じるが、光ファイバセンサ3は水の流れでは屈曲せず、反応もない。その後、容器内の堆積層が上昇するにしたがって、光ファイバセンサ3の先端部が屈曲し始めてセンサが反応し始めている。その後、一旦スラリーの投入を停止すると、光ファイバセンサ3は堆積層中に埋設され屈曲した状態が維持されるため、光ファイバセンサ3の先端部のひずみに伴う光波長も一定値に維持される。その後、トレミー管30を引き上げると、光ファイバセンサ3の先端部の屈曲は解除され、光の波長も回復している。このように、堆積層の強度(流動抵抗)の変化に追従するように、光ファイバセンサ3の先端部の屈曲程度が変化(光の特性変化)することが解る。
【0041】
この実験結果からも解るように、第3の実施形態に係る検出装置1cでは、検出器4及びデータロガー5により、光ファイバセンサ3の先端部の屈曲度合(光の特性変化)に基づいて、堆積地盤の強度(流動抵抗)の推移を精度良く検出することができる。そして、この検出結果に基づいて、トレミー管30を上昇させるタイミングを管理することが可能になる。
【0042】
なお、第3の実施形態に係る検出装置1cにて検出された堆積地盤(軟弱層10)の流動抵抗に基づいて、トレミー管30を自動で昇降させるシステムを構築してもよい。詳しくは、トレミー管30を昇降させる昇降装置を備え、またデータロガー5からの信号に基づいて、昇降装置の駆動を制御する制御装置を備える。そして、検出器4からデータロガー5に伝達される流動抵抗に基づき、データロガー5からの信号が制御装置に伝達されることで、昇降装置によりトレミー管30を所定高さに上昇させるシステムを構築してもよい。
【0043】
以上説明した、第3の実施形態に係る検出装置1cでは、各光ファイバセンサ3及び各検出器4により、トレミー管30の下部周辺に堆積される、軟弱層10である堆積地盤の流動抵抗を精度良く検出することができる。その結果、データロガー5に保存された堆積地盤の流動抵抗の推移を把握することで、トレミー管30を上昇させるタイミングを正確に把握することができる。このように、第3の実施形態に係る検出装置1cにて、トレミー管30の高さ管理を精度良く実施することができるので、トレミー管30の高さ管理に係るコストを抑制して、正確なタイミングでトレミー管30を上昇させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1a、1b、1c 検出装置,3 光ファイバセンサ,4 検出器,10 軟弱層,30 トレミー管