(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】植物栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230221BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
(21)【出願番号】P 2019060068
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】久保 義治
(72)【発明者】
【氏名】多田 拓平
(72)【発明者】
【氏名】大塚 貴雄
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-129051(JP,U)
【文献】実開昭54-183457(JP,U)
【文献】実開昭60-106453(JP,U)
【文献】実開昭51-136943(JP,U)
【文献】登録実用新案第3192278(JP,U)
【文献】特開2015-019634(JP,A)
【文献】実開平03-129050(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培パネルと培地カップとを備え、栽培パネルは、培地カップ取付孔が設けてあり、培地カップ取付孔は、
円形の孔の左側と右側の二箇所に切欠きを有し、培地カップは、取付孔挿入部と、取付孔挿入部の下方に
左右両側に突出して設けた抜け止め部と、取付孔挿入部の上方に設けたつばを有し、抜け止め部を切欠きに通して取付孔挿入部を栽培パネルの培地カップ取付孔に挿入して、培地カップを垂直軸回りに回転させることで、つばが栽培パネルの上面に係止し、抜け止め部が栽培パネルの下面に対向していることを特徴とする植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場における植物栽培装置は、水をはったトレーの上に栽培パネルが並べて配置してあり、各栽培パネルには植物を植えた培地カップが複数保持してある。栽培パネルは、植物が成長するにつれて、培地カップの間隔の狭いものから培地カップの間隔の広いものに交換する必要がある。従来、培地カップは、栽培パネルに形成した丸い孔に嵌め込んで保持してあるだけだったので(例えば、特許文献1参照)、栽培パネルを交換する際に栽培パネルを粗雑に扱うと、培地カップが栽培パネルから脱落するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、栽培パネルを粗雑に扱っても培地カップが栽培パネルから脱落することのない植物栽培装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による植物栽培装置は、栽培パネルと培地カップとを備え、栽培パネルは、培地カップ取付孔が設けてあり、培地カップ取付孔は、円形の孔の左側と右側の二箇所に切欠きを有し、培地カップは、取付孔挿入部と、取付孔挿入部の下方に左右両側に突出して設けた抜け止め部と、取付孔挿入部の上方に設けたつばを有し、抜け止め部を切欠きに通して取付孔挿入部を栽培パネルの培地カップ取付孔に挿入して、培地カップを垂直軸回りに回転させることで、つばが栽培パネルの上面に係止し、抜け止め部が栽培パネルの下面に対向していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による植物栽培装置は、栽培パネルに設けた培地カップ取付孔は、円形の孔の左側と右側の二箇所に切欠きを有し、培地カップは、取付孔挿入部と、取付孔挿入部の下方に左右両側に突出して設けた抜け止め部と、取付孔挿入部の上方に設けたつばを有し、抜け止め部を切欠きに通して取付孔挿入部を栽培パネルの培地カップ取付孔に挿入して、培地カップを垂直軸回りに回転させることで、つばが栽培パネルの上面に係止し、抜け止め部が栽培パネルの下面に対向しているので、栽培パネルを粗雑に扱っても培地カップが栽培パネルから脱落することがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明の植物栽培装置の一実施形態を示す正面図である。
【
図3】
図2のB-B断面図であって、(a)は培地カップ取付孔の間隔が狭い栽培パネルを設置した状態、(b)は培地カップ取付孔の間隔が広い栽培パネルを設置した状態を示す。
【
図4】(a)は培地カップ取付孔の間隔が狭い栽培パネルの平面図であり、(b)は同栽培パネルの側面図である。
【
図5】(a)は培地カップ取付孔の間隔が広い栽培パネルの平面図であり、(b)は同栽培パネルの側面図である。
【
図6】栽培パネルと培地カップを分離した状態で示す斜視図である。
【
図7】(a)は培地カップの平面図、(b)は一部切欠き正面図、(c)は側面図である。
【
図8】培地カップの取付手順を示す平面図であって、(a)は培地カップの抜け止め部を切欠きに通して栽培カップを栽培パネルの培地カップ取付孔に挿入した状態、(b)は培地カップを垂直軸回りに回転して抜け止めした状態を示す。
【
図9】栽培パネルを培地カップ取付孔の間隔の狭いものから間隔の広いものへ交換する手順を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1~3は、本発明の植物栽培装置の一実施形態を示している。本植物栽培装置は、野菜等を生産する植物工場内に設置されるものであり、
図2に示すように、植物栽培棚8と送風装置9とを備える。植物栽培棚8は、上下5段の棚板10,10,…と天板11とが支柱12に支持してある。植物栽培棚8は、左右方向の長さが約6m、奥行き(前後方向長さ)が約1.3m、高さが約2.5mある。各段の棚板10の上には、
図1,2に示すように、植物栽培用のトレー13が設置してある。天板11の下面と、上から1~4段目の棚板10の下面には、照明14が取付けてある。栽培する植物は、特に限定されるものではないが、例えばレタス等の葉物野菜があげられる。
【0009】
送風装置9は、
図2に示すように、給気装置15と、圧力調整室16と、送風管17,17,…を有している。給気装置15は、市販のシロッコファンを用いたもので、モーターでファンを回転させることで二酸化炭素濃度が調整された工場内の空気を吸い込んで圧力調整室16に送り込む。圧力調整室16は、直方体の箱状のものであり、給気装置15から空気が直接的に送り込まれることで、内部の圧力が一定に保たれる。送風管17,17,…は、ポリエチレン製のチューブで形成したものであり、植物栽培棚8の左右方向の全長に跨って設けてあり、右側の端部は圧力調整室16の空気吹出口18に連結され、左側の端部は閉じられている。送風管17は、
図1に示すように、植物栽培棚8の各段毎に前後方向に間隔をあけて3本ずつ設けてある。送風管17は、天板11及び棚板10の下面に取付けた略U字形の支持具19で支持してある。送風管17は、長手方向に一定の間隔をおいて空気吹出口(図示省略)が設けてある。空気吹出口は、送風管17の下面側に垂直方向から前方及び後方に所定角度傾いた位置に設けてあり、図中の矢印20に示すように、風を斜めに吹出している。これにより、植物の蒸散によりトレー13上にこもる湿気や熱を拡散させ、送風管17から送られてくる新しい空気で効率よく置換できる。このような構成の送風装置9を用いることで、棚の全ての植物に均一に風を当てることができ、均質な生育を行うことができる。
【0010】
図1に示すように、トレー13内には養液21が供給されており、トレー13上には培地カップ2を保持した栽培パネル1が設置してある。栽培パネル1は、
図3(a),(b)に示すように、培地カップ取付孔3の間隔が狭い育苗用栽培パネル1aと、培地カップ取付孔3の間隔が広い定植用栽培パネル1bの2種類があって、それぞれ左右方向に多数連結して設置される。植物の育成の初期段階では育苗用栽培パネル1aが用いられ、植物がある程度成長すると定植用栽培パネル1bに交換される。
図4は育苗用栽培パネル1aを示し、
図5は定植用栽培パネル1bを示している。両栽培パネル1a,1bは、光を透過しない発泡スチロール板で形成してあり、左右方向の一端部と他端部に連結用の突部22と凹部23がそれぞれ設けてあり、凹部23に隣の栽培パネル1a,1bの突部22を嵌合することで、栽培パネル1a,1b同士を連結できるようになっている。各栽培パネル1a,1bには、培地カップ取付孔3が複数設けてあり、培地カップ取付孔3は、円形の孔の左側と右側の二箇所に半円形の切欠き4を有する形状となっている。
【0011】
培地カップ2は、樹脂で一体成形したものであり、
図6,7に示すように、上側が広がった略円筒状に形成されており、栽培パネル1a,1bの培地カップ取付孔3に挿入される取付孔挿入部5と、取付孔挿入部5の下方に左右両側に突出して設けた抜け止め部6と、取付孔挿入部5の上方に設けた円形のつば7を有している。抜け止め部6は、栽培パネル1a,1bの培地カップ取付孔3の切欠き4を通過できる形状となっており、つば7は培地カップ取付孔3の切欠き4よりも外周側に広がっている。培地カップ2は、
図1に示すように、内部にスポンジ等よりなる培地24が挿入保持され、培地24に植物25が植えつけられ、植物25の根が養液21に浸かる。
【0012】
培地カップ2は、
図6と
図8(a)に示すように、抜け止め部6を切欠き4に通して取付孔挿入部5を栽培パネル1a,1bの培地カップ取付孔3に挿入し、
図8(b)に示すように、培地カップ2を垂直軸回りに90°回転させる。すると、
図1に示すように、つば7が栽培パネル1a,1bの上面に係止し、抜け止め部6が栽培パネル1a,1bの下面に係止して、培地カップ2が培地カップ取付孔3に抜けないように安定して取付けられる。そうして培地カップ2を培地カップ取付孔3に取付けると、
図8(b)に示すように、培地カップ2と培地カップ取付孔3の隙間がつば7で全周隠れる。培地カップ2を取外す際は、培地カップ2を垂直軸回りに90°回転して抜け止め部6を切欠き4に合わせてから、上方に引き抜けばよい。
なお、培地カップ2を栽培パネル1a,1bの培地カップ取付孔3に取付けた状態において、抜け止め部6が必ずしも栽培パネル1a,1bの下面に係止していなくてもよく、抜け止め部6と栽培パネル1a,1bの下面との間に隙間があってもよい。すなわち、隙間の有無にかかわらず、抜け止め部6が栽培パネル1a,1bの下面に対向していればよい。
【0013】
次に、栽培パネル1を育苗用栽培パネル1aから定植用栽培パネル1bに交換するときの手順を説明する。まず、
図9(a)に示すように、植物栽培棚8の側方(左側)から連結された育苗用栽培パネル1a,1a,…を手前側に引寄せつつ、育苗用栽培パネル1aを一枚ずつトレー13から外す。外した育苗用栽培パネル1aから培地カップ2を取外し、培地カップ2を定植用栽培パネル1bに付け替える。その後、
図9(b)に示すように、植物栽培棚8の側方から定植用栽培パネル1bを一枚ずつ順次連結して奥側に送るようにしてトレー13に設置する。
【0014】
以上に述べたように本植物栽培装置は、栽培パネル1a,1bに設けた培地カップ取付孔3に切欠き4を有し、培地カップ2は、取付孔挿入部5と、取付孔挿入部5の下方に設けた抜け止め部6と、取付孔挿入部5の上方に設けたつば7を有し、抜け止め部6を切欠き4に通して取付孔挿入部5を栽培パネル1a,1bの培地カップ取付孔3に挿入して、培地カップ2を垂直軸回りに回転させることで、つば7が栽培パネル1a,1bの上面に係止し、抜け止め部6が栽培パネル1a,1bの下面に対向しているので、栽培パネル1a,1bを粗雑に扱っても培地カップ2が栽培パネル1a,1bから脱落することがない。
また、培地カップ2のつば7は、培地カップ取付孔3の切欠き4よりも外周側に広がっており、培地カップ2と培地カップ取付孔3の隙間をつば7で全周隠してあることで、切欠き4が露出せず見た目が良いとともに、培地カップ取付孔3からトレー13内にゴミ等が落ちたりする不都合もない。さらに、培地カップ2と培地カップ取付孔3の隙間をつば7で全周隠してあることで、培地カップ2と培地カップ取付孔3の隙間からトレー13内に光が漏れないので、トレー13の養液21中に藻が発生するのを防ぐことができる
栽培パネル1a,1bは、光を透過しない材質で形成したので、トレー13の養液21中に藻が発生するのを防ぐことができる。
【0015】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。栽培パネルと培地カップの形状、材質は、適宜変更することができる。栽培パネルの材質は、限定されるものではないが、光を透過しないものが好ましく、発泡スチロールの他、プラスチック、木であってもよい。栽培する植物の種類は問わない。
【符号の説明】
【0016】
1,1a,1b 栽培パネル
2 培地カップ
3 培地カップ取付孔
4 切欠き
5 取付孔挿入部
6 抜け止め部
7 つば