(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】情報処理システム、および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/9538 20190101AFI20230221BHJP
【FI】
G06F16/9538
(21)【出願番号】P 2019080257
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】319013263
【氏名又は名称】ヤフー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 知博
【審査官】早川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-259039(JP,A)
【文献】特開2004-287532(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0026640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ランキング対象群に対してランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第1ランキング結果として出力する第1ランキング処理部と、
前記第1ランキング対象群とは少なくとも部分的に異なる第2ランキング対象群に対して、前記第1ランキング処理部とは異なるランキング手法でランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第2ランキング結果として出力する第2ランキング処理部と、
を含む複数のランキング処理部と、
前記複数のランキング処理部によるランキング結果を混合して統合ランキング結果として出力する混合処理部と、
前記複数のランキング処理部によるランキング結果を、利用者の行動に基づいて評価する評価部と、を備え、
前記ランキング対象は、入力されたクエリに応じたランキング処理によって選択され、利用者にレコメンドされるものであり、
前記複数のランキング処理部のそれぞれは、前記クエリに応じてランキング処理の手法を決定してランキング処理を行う、
情報処理システム。
【請求項2】
前記第1ランキング処理部と前記第2ランキング処理部は、所定のタイミングで、互いに重複しないようにランキング手法を変更する、
請求項1記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記第1ランキング処理部を実装する装置と、前記第2ランキング処理部を実装する装置と、前記混合処理部を実装する装置とは、互いに別体の装置である、
請求項1または2記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記第1ランキング処理部を実装する装置と、前記第2ランキング処理部を実装する装置とは、互いに別体の装置であり、前記第1ランキング処理部を実装する装置または前記第2ランキング処理部を実装する装置が更に、前記混合処理部を実装する、
請求項1または2記載の情報処理システム。
【請求項5】
クエリに基づいて前記第1ランキング処理部と前記第2ランキング処理部とは、互いに重複しないようにランキング手法を決定する、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
コンピュータが、
第1ランキング対象群に対してランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第1ランキング結果として出力
する第1ランキング処理と、
前記第1ランキング対象群とは少なくとも部分的に異なる第2ランキング対象群に対して、前記ランキング処理のランキング手法とは異なるランキング手法でランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第2ランキング結果として出力
する第2ランキング処理と、
前記第1ランキング結果および前記第2ランキング結果を混合して統合ランキング結果として出力
する統合ランキング処理と、
前記第1ランキング処理および第2ランキング処理によるランキング結果を、利用者の行動に基づいて評価する評価処理と、を実行し
前記ランキング対象は、入力されたクエリに応じたランキング処理によって選択され、利用者にレコメンドされるものであり、
前記第1ランキング処理と前記第2ランキング処理とのそれぞれにおいて、前記クエリに応じてランキング処理の手法を決定してランキング処理を行う、
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分散処理を行う電子店舗取引システムの発明が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子商取引などの現場において、利用者の入力したクエリなどに応じて、情報提供する対象(ランキング対象)についてランキング処理を行い、上位となったランキング対象を利用者に提示するといったことが行われている。従来の技術では、このランキング処理において分散処理を行うことについて十分に検討されておらず、ランキング手法の評価のための処理を好適に行うことができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ランキング手法の評価のための処理を好適に行うことができる情報処理システム、および情報処理方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、第1ランキング対象群に対してランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第1ランキング結果として出力する第1ランキング処理部と、前記第1ランキング対象群とは少なくとも部分的に異なる第2ランキング対象群に対して、前記第1ランキング処理部とは異なる手法でランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第2ランキング結果として出力する第2ランキング処理部と、を含む複数のランキング処理部を備え、前記複数のランキング処理部によるランキング結果を混合して統合ランキング結果として出力する混合処理部を更に備える、情報処理システムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ランキング手法の評価のための処理を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】情報処理システム100の構成と使用環境の一例を示す図である。
【
図2】ユーザデータ70の内容の一例を示す図である。
【
図4】検索結果表示画面IM2の一例を示す図である。
【
図6】商品データ72の内容の一例を示す図である。
【
図7】ログデータ74の内容の一例を示す図である。
【
図8】第1商品データ124および第2商品データ134の内容の一例を示す図である。
【
図9】クエリに応じたランキング手法を用いてランキング処理の一例を示す図である。
【
図10】情報処理システム100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】ユーザに提供される商品販売画面IM4の一例を示す図である。
【
図12】フロントサーバ110およびショッピングサーバ50により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図13】ランキング手法の評価について説明するための図である。
【
図14】本実施形態の情報処理システム100と比較例1、2の情報処理システムとを比較する図である。
【
図15】第1実施形態における選択した商品を混合する処理と、第1実施形態の変形例における選択した商品を混合する処理とを比較するための図である。
【
図16】第2実施形態の情報処理システム100Aの構成と使用環境の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本発明の情報処理システム、および情報処理方法の実施形態について説明する。情報処理システムは、二以上のプロセッサにより実現される。情報処理システムは、電子商取引やコンテンツ配信などのサービスにおいて実行されるランキング処理を行いながら、ランキング処理の手法(以下、ランキング手法)を評価するための処理を実行する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、情報処理システム100の構成と使用環境の一例を示す図である。情報処理システム100のフロントサーバ110は、ネットワークNWを介してショッピングサーバ50と通信する。ショッピングサーバ50は、ネットワークNWを介して、端末装置10と通信する。ネットワークNWは、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network)、LAN(Local Area Network)、無線基地局、プロバイダ端末、専用回線などを含む。
【0011】
端末装置10は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォンなどの携帯電話、タブレット端末などである。これらにおいて、ブラウザやアプリケーションプログラムなどのUA(User Agent)20が起動する。UA20は、ショッピングサーバ50から提供された販売画面を表示すると共に、端末装置10のユーザによってなされた入力操作に応じたリクエストをショッピングサーバ50に送信する。
【0012】
[ショッピングサーバ]
ショッピングサーバ50は、例えば、サイト提供部52と、ランキング依頼部54と、ログ収集部56と、を備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの一以上のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることでインストールされてもよい。
【0013】
また、ショッピングサーバ50は、HDDやフラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)などの記憶装置に、ユーザデータ70、商品データ72、ログデータ74などのデータを格納している。この記憶装置は、ショッピングサーバ50に付随するものであってもよいし、ショッピングサーバ50がネットワークNWを介してアクセス可能なNAS(Network Attached Storage)であってもよい。
【0014】
サイト提供部52は、ユーザデータ70を参照しつつ、以下に説明する各種処理を行う。
図2は、ユーザデータ70の内容の一例を示す図である。ユーザデータ70は、例えば、氏名、性別、年齢、職業などの情報が、ユーザIDに対応付けられたデータである。これらのデータは、ユーザにより入力され、ユーザの行動履歴から特定され、或いはユーザの行動履歴から推定されたものである。
【0015】
サイト提供部52は、ショッピングサイトとしての各種画面を端末装置10に提供する。
図3は、検索入力画面IM1の一例を示す図である。検索入力画面IM1には、商品を検索するためのクエリを入力するためのクエリ入力欄A1、および、入力されたクエリで検索を実行させるための検索ボタンB1が設けられている。クエリ入力欄A1にクエリが入力され、検索ボタンB1が操作されると、検索結果表示画面IM2に遷移する。このとき、サイト提供部52は、クエリをランキング依頼部54に出力する。ランキング依頼部54は、クエリをフロントサーバ110に送信してランキング処理を依頼する。以下、この依頼をランキング依頼と称する。なお、クエリではなくカテゴリが選択された場合も、同様に検索結果表示画面IM2に遷移する。
【0016】
図4は、検索結果表示画面IM2の一例を示す図である。検索結果表示画面IM2には、検索結果表示欄A2が含まれる。検索結果表示欄A2には、情報処理システム100によって決定されたランキング順に、スクロールすることで視認可能な数の商品の画像や説明が、ポジション順に並べて表示される。検索結果表示画面IM2において一つの商品の画像や説明が操作(選択)されると、商品販売画面IM3に遷移する。
【0017】
図5は、商品販売画面IM3の一例を示す図である。商品販売画面IM3には、商品画像表示欄A3-1、タイトル欄A3-2、詳細説明欄A3-3などが含まれる。タイトル欄A3-2や詳細説明欄A3-3には、選択された商品(選択商品)の製造元、商品の素材、使用、その他の内容がテキストとして掲載される。商品販売画面IM3に対する操作によって、購入者により商品が購入される。
【0018】
各種画面に埋め込まれる情報は、商品データ72から取得される。
図6は、商品データ72の内容の一例を示す図である。商品データ72は、例えば、商品の識別情報である商品IDに対して、カテゴリの識別情報であるカテゴリID、商品画像、タイトル、詳細説明、価格、その他のデータが対応付けられたものである。以下、上記の所定の商品IDと、所定の商品IDに対応付けられた情報を「レコ-ド」と称する場合がある。これらのうち、商品IDは、不図示の出品受付部により付番された情報であり、その他の情報は、販売者により入力されたものである。カテゴリは、例えば階層的に設定されており、図示の例では、例えば「3」が「飲食品」、「35」が「お酒」、「356」が「赤ワイン」を示している。タイトルは、タイトル欄A3-2に表示され、詳細説明は、詳細説明欄A3-3に表示される。
【0019】
ログ収集部56は、ユーザごとのショッピングサイトの利用履歴を収集し、ログデータ74に登録する。
図7は、ログデータ74の内容の一例を示す図である。ログデータ74は、例えば、閲覧ページの識別情報(例えばURL:Uniform Resource Locator)に対して、閲覧時刻、検索結果表示画面であれば紹介商品の商品ID、商品販売画面であれば購入情報、実行されたランキング手法の情報などが対応付けられたデータである、購入情報には、購入された商品の商品IDなどが含まれる。また、ランキング手法の情報は、商品IDに対してランキング手法が対応付けられた情報である。ランキング手法は、情報処理システム100により商品がランキングされた際に用いられた手法である。詳細は後述する。
【0020】
[情報処理システム]
情報処理システム100は、フロントサーバ110と、少なくとも第1ランキングサーバ120および第2ランキングサーバ130を含む複数のランキングサーバとを備える。図示する例では、フロントサーバ110と、第1ランキングサーバ120と、第2ランキングサーバ130とは、異なる装置であるものとしているが、一つの装置であってもよい。
【0021】
[フロントサーバ]
フロントサーバ110は、例えば、ランキング手法指定部112と、混合処理部114と、評価部116とを備える。ランキング手法指定部112は、第1ランキングサーバ120および第2ランキングサーバ130がランキング処理を行うのに適用する手法を決定する。ランキング手法指定部112は、決定したランキング処理を行うのに適用する手法でランキング処理を行うように第1ランキングサーバ120および第2ランキングサーバ130に指示する。詳しくは、後述する。
【0022】
混合処理部114は、複数のランキング処理部(例えば、後述する第1ランキング処理部122および第2ランキング処理部132)によるランキング結果を混合して統合ランキング結果として出力する。例えば、混合処理部114は、統合ランキング結果をショッピングサーバ50に出力する。例えば、混合処理部114は、複数のランキング処理部により出力されたランキング結果のそれぞれからスコアが高い順に所定数の商品を選択して、選択した商品を混合する。
【0023】
評価部116は、混合処理部114によるランキング結果、およびユーザの行動に基づいて、ランキング手法を評価する。ユーザの行動とは、例えば、ランキング結果を含むウエブページに対するユーザの行動である。ユーザの行動とは、例えば、ランキング結果に含まれるコンテンツ(商品)に対するCVR(Conversion Rate)や、CTR(Click Through Rate)などである。
【0024】
第1ランキングサーバ120は、例えば、第1ランキング処理部122と、第1商品データ124とを含む。第1ランキング処理部122は、第1商品データ124(第1ランキング対象群)に対してランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第1ランキング結果として出力する。第1商品データ124は、商品データ72に含まれる複数のレコードを含む。
【0025】
第2ランキングサーバ130は、例えば、第2ランキング処理部132と、第2商品データ134とを含む。第2ランキング処理部132は、第2商品データ134(第2ランキング対象群)に対して、第1ランキングサーバ120とは異なるランキング手法でランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第2ランキング結果として出力する。第2商品データ134は、第1商品データ124とは少なくとも部分的に異なる商品データである。
【0026】
図8は、第1商品データ124および第2商品データ134の内容の一例を示す図である。
図8では、第2商品データ134は、第1商品データ124と異なる商品データである。例えば、商品「テレビ」の商品ID001~100のレコードは、第1商品データ124に含まれ、商品「テレビ」の商品ID101~200のレコードは、第2商品データ134に含まれる。また、例えば、商品「冷蔵庫」の商品ID201~300のレコードは、第1商品データ124に含まれ、商品「テレビ」の商品ID301~400のレコードは、第2商品データ134に含まれる。このように、同じ商品であっても、第1商品データ124に含まれ商品データと、第2商品データ134に含まれる商品データとは異なる。以下、第1商品データ124と第2商品データ134とを区別しない場合は、「商品データ」と称する場合がある。
【0027】
第1商品データ124に含まれる商品データと、第2商品データ134に含まれる商品データとは、ランキング処理の結果をユーザに提示した場合に、ユーザの行動に偏りが出ないように分類されている。例えば、所定のクエリに対応する商品のうち、売れ筋の商品や、人気の商品、評価の高い商品が、第1商品データ124と第2商品データ134とに均等に含まれるように、第1商品データ124と第2商品データ134とが生成されている。
図8において商品IDがある値を境に分割されているのは、内容的な分割を意味するものでは無い。
【0028】
[ランキング処理]
ここで、第1ランキング処理部122または第2ランキング処理部132(以下、ランキング処理部)が実行する処理の一例について説明する。ランキング処理部は、例えば、所定のランキング手法に基づいて、ランキング処理を行う。所定のランキング手法とは、例えば、商品の価格を重視したランキングや、商品に対するレビューを重視したランキング、クエリと商品とのマッチング度を重視したランキング、これらのランキングを統合したランキングなどである。
【0029】
例えば、ランキング処理部が、クエリと商品とのマッチング度を重視したランキング処理を行う場合、まずクエリを用いて商品データを検索し、タイトルまたは商品詳細の中にクエリが含まれる商品を抽出する。そして、ランキング処理部は、抽出した商品の特徴量(PV(Page View)数、クエリとのマッチ度合い、価格など)をランキング用モデルに入力することで商品ごとのスコアを導出し、スコアが高い商品から順に商品を選択することでランキング結果を生成する。
【0030】
例えば、ランキング処理部が、商品の価格を重視したランキング処理を行う場合、例えば、上記のように、まずクエリを用いて商品データを検索し、タイトルまたは商品詳細の中にクエリが含まれる商品を抽出し、抽出した商品のうち価格が安い順や高い順に商品を選択することでランキング結果を生成する。
【0031】
[フロントサーバ(再)]
ランキング手法指定部112の処理について、より詳細に説明する。例えば、ランキング手法指定部112は、ランキング依頼を取得する度に、第1ランキング処理部122と第2ランキング処理部132とが実行するランキング手法を決定する。これに代えて、ランキング手法指定部112は、一定期間は指定したランキング手法を固定するようにしてもよい。
【0032】
この際、ランキング手法指定部112は、第1ランキング処理部122に実行させるランキング手法と、第2ランキング処理部132に実行させるランキング手法とが異なるように、ランキング手法を指定する。これにより、第1ランキング処理部122と第2ランキング処理部132は、所定のタイミングで、互いに重複しないようにランキング手法を変更する。
【0033】
ランキング手法は、例えば、以下のように決定される。
(1)ランキング手法指定部112は、まず、クエリを予め設定された手順に従ってハッシュ化し、ハッシュ値に基づくシード値を導出する。このとき、ハッシュ化されるクエリは、元のクエリを前処理したものであってもよい。前処理とは、検索ワードに含まれる「てにをは」などのワードを削除したり、同義語を統合したりする処理である。
(2)ランキング手法指定部112は、導出したシード値に基づき乱数を発生させて、発生させた乱数に基づいて、ランキング手法を決定する。乱数は、クエリが同じであれば同じ値となる。
【0034】
例えば、シード値「X1」により発生した乱数「X2」が導出された場合、「X2」に対応する第1ランキング処理部122のランキング手法1と、第2ランキング処理部132のランキング手法2とが導出される。この結果、あるクエリ(前処理されたもの)に対して、各ランキング処理部に指示するランキング手法は固定的に決定される。例えば、クエリが「テレビ」の場合、「テレビ」に対応するランキング手法が各ランキング処理部に指示される。また、クエリが「冷蔵庫」の場合、「冷蔵庫」に対応するランキング手法が各ランキング処理部に指示される。
【0035】
上記のように処理が行われることにより、
図9に示すように、情報処理システム100は、クエリに応じたランキング手法を用いてランキング処理を行う。これにより網羅的にランキング手法が第1ランキング処理部122、または第2ランキング処理部132で適用される。上記のようにランキング手法が選択されることで、様々なクエリが順次入力されると、各ランキング処理部は予め用意されたランキング手法を均等に採用してランキング処理を行うことになる。
【0036】
そして、評価部116は、複数のランキング手法のそれぞれと、第1商品データとの組み合わせのランキング結果に対するユーザの行動、および複数のランキング手法のそれぞれと、第2商品データとの組み合わせのランキング結果に対するユーザの行動に基づいて、ランキング手法を評価する。この結果、本実施形態の情報処理システム100は、後述するよう処理負荷を加味せずに、ランキング手法を評価する場合と同様に、ランキング手法を評価することができる(後述の
図14参照)。
【0037】
[フローチャート(その1)]
図10は、情報処理システム100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。本処理は、例えば、3日や1週間など設定された期間行われる。まず、フロントサーバ110が、ショッピングサーバ50からクエリと共にランキング依頼を取得したか否かを判定する(S10)。
【0038】
ランキング依頼を取得すると、ランキング手法指定部112が、ランキング手法を決定し(S12)、クエリおよびS12で決定した第1ランキングサーバ120向けのランキング手法と、第2ランキングサーバ130向けのランキング手法とを、第1ランキングサーバ120と第2ランキングサーバ130のそれぞれに送信する(S14)。
【0039】
次に、第1ランキングサーバ120の第1ランキング処理部122が、S14で送信されたクエリおよび決定されたランキング手法に基づいてランキング処理を行い(S30)、ランキング処理の結果をフロントサーバ110に送信する(S32)。
【0040】
並行して(時間的に前後してもよいが)第2ランキングサーバ130の第2ランキング処理部132が、S14で送信されたクエリおよび決定されたランキング手法に基づいてランキング処理を行い(S60)、ランキング処理の結果をフロントサーバ110に送信する(S62)。
【0041】
次に、フロントサーバ110の混合処理部114が、S32およびS62で送信されたランキング処理の結果を混合して(S16)、混合したランキング結果をショッピングサーバ50に送信する(S18)。これにより、本フローチャートの1ルーチンの処理が終了する。
【0042】
ショッピングサーバ50は、フロントサーバ110から取得したランキング結果をユーザに提供する。
図11は、ユーザに提供される商品販売画面IM4の一例を示す図である。商品販売画面IM3との相違点を中心に説明する。例えば、検索結果表示欄A2には、第1ランキング処理部122によりランキング処理されたランキング結果(図中、R1)と、第2ランキング処理部132によりランキング処理されたランキング結果(図中、R2)とが含まれる。そして、ユーザが検索結果表示欄A2に含まれる商品を選択したり、購入したりすると、その行動がログデータ74としてショッピングサーバ50の記憶装置に記憶される。
【0043】
上記処理により、情報処理システム100は、種々のランキング手法に基づいたコンテンツをユーザに提供し、コンテンツが提供されたユーザの行動を収集することができる。そして、以下の処理で、ランキング手法が評価される。
【0044】
[フローチャート(その2)]
図12は、フロントサーバ110およびショッピングサーバ50により実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0045】
まず、評価部116が、評価タイミングが到来したか否かを判定する(S100)。評価タイミングが到来した場合、評価部116は、ショッピングサーバ50にログデータ74の送信を依頼する(S102)。ショッピングサーバ50は、S102の依頼に応じて、ログデータ74をフロントサーバ11に送信する(S120)。
【0046】
次に、評価部116は、ログデータ74に基づいて、ランキング手法を評価する(S104)。次に、評価部116は、S104の評価結果に基づいて、評価が高いランキング手法を決定する(S106)。これにより、本フローチャートの処理が終了する。
【0047】
図13は、ランキング手法の評価について説明するための図である。評価部116は、ログデータ74を参照して、ランキング処理の結果に含まれる商品に対するKPI(key performance indicator)を、クエリおよびランキング手法ごとに統合する(例えば、平均を求めたり、合計を求めたりする)。KPIは、例えば、CTR(Click Through Rate)やCVR(Conversion Rate)、或いはそれらの混合、または他の種類の指標値である。そして、評価部116は、例えば、クエリおよびランキング手法ごとのKPIが高いランキング手法に対して高い評価を与える。
【0048】
例えば、クエリ01に関して、ランキング手法1および第1商品データ124を用いてCTRが導出され、ランキング手法2および第2商品データ134を用いてCTRが導出されている。このため、クエリ01の結果だけでは、ランキング手法の有用性を示すものとは言えない。しかしながら、他の複数のクエリについても、クエリ01と同様にランキング処理が試行され、その結果に基づいてKPIが導出される。そして、種々のクエリを含めることで、ランキング手法と商品データとが固定されていても、ランキング手法の特性を客観的に示すKPIが導出される。
【0049】
例えば、以降のランキング処理に関して、フロントサーバ110は、評価が高いランキング手法を用いた処理を行い、処理結果をショッピングサーバ50に送信する。そして、ショッピングサーバ50は、評価が高いランキング手法に基づくランキング処理の結果をユーザに提供することができる。
【0050】
図14は、本実施形態の情報処理システム100と比較例1、2の情報処理システムとを比較する図である。
【0051】
[比較例1]
比較例1の情報処理装置Dについて説明する。
図14の上図に示すように、比較例1の情報処理装置Dは、第1ランキング処理部と、第2ランキング処理部と、商品データとを備える。商品データは、ショッピングサーバ50が備えるものと同一の商品データである。第1ランキング処理部は、商品データを参照して、例えば、ランキング手法1でランキング処理を行う。すなわち、第1ランキング処理部は、商品データに含まれる商品に対してランキング処理を行う。第2ランキング処理部は、商品データを参照して、例えば、ランキング手法2でランキング処理を行う。第2ランキング処理部は、商品データに含まれる商品に対してランキング処理を行う。情報処理装置Dは、複数のランキング手法を時分割で切り替えてランキング処理を行うため、全体としての処理負荷が実施形態の情報処理システム100よりも高く、処理時間も長くなる。
【0052】
[比較例2]
比較例2の情報処理システムSについて説明する。
図14の中図に示すように、比較例2の情報処理装置Sは、第1ランキング処理部と、商品データとを含む第1装置と、第2ランキング処理部と、商品データとを含む第2装置とを備える。商品データは、ショッピングサーバ50が備えるものと同一の商品データである。第1装置の第1ランキング処理部は、比較例1と同様に、商品データを参照して、例えば、ランキング手法1でランキング処理を行う。第2装置の第2ランキング処理部は、比較例1と同様に、商品データを参照して、例えば、ランキング手法2でランキング処理を行う。情報処理システムSは、第1装置と、第2装置とで処理が分散されるが、それぞれの装置が参照する商品データはショッピングサーバ50が保有するものと同じであるため、全体としての処理負荷が実施形態の情報処理システム100よりも高く、処理時間も長くなる。
【0053】
[本実施形態]
本実施形態の情報処理システム100について説明する。
図14の下図に示すように、本実施形態の情報処理システム100では、第1ランキング処理部122が、第1商品データ124を参照して、例えば、ランキング手法1でランキング処理を行い、第2ランキング処理部132は、第2商品データ134を参照して、例えば、ランキング手法2でランキング処理を行う。各ランキング処理部が、参照するデータは各比較例に比して小さいため、処理負荷が軽減され、処理時間も短縮される。
【0054】
電子商取引のサービス現場において、クエリを入力してから検索結果表示画面が提示されるまでの時間は、利用者のサービス満足度に大きく影響する。このため、少しでも処理時間を短縮することのニーズは非常に高い。しかしながら、ランキング手法の評価といった客観性を要求される処理に関して、従来は各比較例に示すような構成および処理しか想定されていなかった。この点、実施形態の情報処理システム100では、商品データを分割することで処理負荷を軽減し、データの偏りが生じることをランキング手法の逐次切り換えによって抑制している。この結果、実施形態の情報処理システム100は、ランキング手法の評価のための処理を好適に(高速かつ適切に)行うことができる
【0055】
以上説明した第1実施形態によれば、情報処理システム100は、第1ランキング対象群に対してランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第1ランキング結果として出力する第1ランキング処理部122と、第1ランキング対象群とは少なくとも部分的に異なる第2ランキング対象群に対して、第1ランキング処理部122とは異なるランキング手法でランキング処理を行って上位のランキング対象を選択し、第2ランキング結果として出力する第2ランキング処理部132とを含み、複数のランキング処理部によるランキング結果を混合して統合ランキング結果として出力することにより、ランキング手法の評価のための処理を好適に行うことができる。
【0056】
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態では、情報処理システム100は、複数のランキング処理部によるランキング結果のそれぞれからスコアが高い順に所定数の商品を選択して、選択した商品を混合するものとした。第1実施形態の変形例では、複数のランキング処理部によるランキング結果の集合の中から、スコアが高い順に所定数商品が選択される。
【0057】
図15は、第1実施形態における選択した商品を混合する処理と、第1実施形態の変形例における選択した商品を混合する処理とを比較するための図である。
図15の上図は、第1実施形態の混合処理部114により行われる処理である。
図15の下図は、第1実施形態の変形例の混合処理部114により行われる処理である。
【0058】
第1実施形態の変形例の混合処理部114は、例えば、ランキング手法1およびランキング手法2のランキング処理の結果からスコアが高い順に所定数(例えば4つ)の商品を選択する。
図15の下図に示すように、ランキング手法1の商品が3つ選択され、ランキング手法2の商品が1つ選択された場合、評価部116は、ランキング手法1とランキング手法2とを評価する際に、KPIに対する偏りを排除する処理を行う。
【0059】
例えば、ランキング手法1により選択された3つの商品がユーザに提供され、ランキング手法2により選択された1つの商品がユーザに提供される場合、ランキング手法1の商品が選択されることの期待値は、商品の特性を考慮しなければ、ランキング手法2の商品が選択されることの期待値の3倍となる。このような選択される期待の偏りを抑制するために、例えば、評価部116は、クエリごとに、ランキング手法1により選択された商品の数と、ランキング手法2により選択された商品の数とを合計し、全体のKPIに反映させる度合いを調整してもよい(例えば当該クエリに関してランキング手法1に対応するKPIを1/3倍するなどしてもよい)。これによって、評価部116は、ランキング手法ごとの処理結果を共通化することにより生じる偏りを抑制することができる。
【0060】
以上説明した第1実施形態の変形例によれば、情報処理システム100は、共通化された処理結果でレコメンドするので、評価期間であっても魅力的な商品を利用者に提示することができる。この結果、情報処理システム100は、ランキング手法の評価に関して生じる偏りも抑制することができる。
【0061】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、フロントサーバ110と第1ランキングサーバ120または第2ランキングサーバ130とが統合される。以下の説明では、フロントサーバ110と第1ランキングサーバ120とが統合される例について説明する。
【0062】
図16は、第2実施形態の情報処理システム100Aの構成と使用環境の一例を示す図である。第2実施形態の情報処理システム100Aは、例えば、情報処理システム100に代えて、情報処理システム100Aを備える。情報処理システム100Aは、例えば、第1ランキングサーバ120Aと、第2ランキングサーバ130とを備える。
【0063】
第1ランキングサーバ120Aは、例えば、ランキング手法指定部112と、混合処理部114と、評価部116と、第1ランキング処理部122と、第1商品データ124とを備える。これらの機能部の機能は、第1実施形態における同様の名称の機能と同様である。
【0064】
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態が奏する効果と同等の効果を奏する。
【0065】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0066】
10‥端末装置、11‥フロントサーバ、50‥ショッピングサーバ、52‥サイト提供部、54‥ランキング依頼部、56‥ログ収集部、72‥商品データ、100、100A‥情報処理システム、110‥フロントサーバ、112‥ランキング手法指定部、114‥混合処理部、116‥評価部、120、120A‥第1ランキングサーバ、122‥第1ランキング処理部、124‥第1商品データ、130‥第2ランキングサーバ、132‥第2ランキング処理部、134‥第2商品データ