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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】焼入装置および焼入方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/62 20060101AFI20230221BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20230221BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20230221BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C21D1/62
C21D1/18 X
C21D1/00 119
C22F1/04 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019081578
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020176323
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112336
【氏名又は名称】ファーネス重工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 仁
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520267(JP,A)
【文献】特開平05-202413(JP,A)
【文献】実開平07-012463(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 1/62
C21D 1/18
C21D 1/00
C22F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に並列配置され、かつ、上下方向に積層配置された複数のワーク格納室と、当該ワーク格納室に対応した複数のワーク取出口を有する溶体化処理炉から取り出された溶体化処理後のワークに対して焼入処理を行う焼入装置であって、
前記ワーク取出口の位置にあわせて移動可能に設けられていることを特徴とする焼入装置。
【請求項2】
請求項に記載の焼入装置において、
前記ワーク取出口から取り出されたワークを格納するワーク格納部を有し、
前記ワーク格納部に格納されたワークを空冷する空冷ファンを備えることを特徴とする焼入装置。
【請求項3】
請求項に記載の焼入装置において、
前記ワーク格納部には、ワークの出し入れを行う箇所に開閉動作自在なシャッターが設けられることを特徴とする焼入装置。
【請求項4】
請求項又はに記載の焼入装置において、
前記空冷ファンによって発生する空気の流れを整流する整流板を備えることを特徴とする焼入装置。
【請求項5】
請求項に記載の焼入装置において、
前記ワーク取出口は、前記溶体化処理炉の上下方向に複数設けられており、
前記ワーク取出口の位置にあわせて昇降移動可能に設けられることを特徴とする焼入装置。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の焼入装置を用いて焼入処理を行うことを特徴とする焼入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶体化処理炉から取り出されたワークに対して焼入処理を行う際に用いられる焼入装置と焼入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業的に行われる金属の加熱処理は、主に炉を使用して行われる。例えば、アルミニウム合金を加熱処理する際に使用される炉の種類としては、炉内温度のバラツキを低減して品質の安定化を図る目的等では熱風循環式の炉が使用され、また、熱処理施設の省スペース化の目的等では多段型炉床回転炉が使用される。最近では、これらの特徴を組み合わせた熱風循環式の多段型炉床回転炉が、アルミニウム合金等の金属の加熱処理に用いられている。なお、この種の加熱処理炉の実施形態を示す先行技術文献として、例えば、下記特許文献1等が存在する。
【0003】
ところで、アルミニウム合金等の熱処理合金金属の場合、需要家において曲げ加工やプレス加工によって一定の成形品を得る目的から、軟質材を成形加工した上で溶体化処理を行い、その後に衝風焼入れすることが多く行われている。つまり、下記特許文献1等で開示される熱風循環式の多段型炉床回転炉によって溶体化処理が行われたアルミニウム合金等の金属には、その後の衝風焼入れによって焼入加工を行うことが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-138916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上掲した特許文献1等に開示される従来技術では、溶体化処理が行われた複数のワークに対する衝風焼入れを複数のワークごとで均一に行うことが困難であり、複数のワークごとで均質な品質を有するワークを得るための衝風焼入れによる焼入加工には改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、溶体化処理が行われた複数のワークに対する衝風焼入れを複数のワークごとで均一に行うことができ、その結果として、複数のワークごとで均質な品質を有するワークを得ることができる衝風焼入れによる焼入加工を実現可能な焼入装置と、その焼入装置を用いて実施される焼入方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係る別の焼入装置(20)は、環状に並列配置され、かつ、上下方向に積層配置された複数のワーク格納室(11)と、当該ワーク格納室(11)に対応した複数のワーク取出口(12)を有する溶体化処理炉(10)から取り出された溶体化処理後のワーク(W)に対して焼入処理を行う焼入装置(20)であって、前記ワーク取出口(12)の位置にあわせて移動可能に設けられることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る焼入装置(20)は、前記ワーク取出口(12)から取り出されたワーク(W)を格納するワーク格納部(21)を有し、前記ワーク格納部(21)に格納されたワーク(W)を空冷する空冷ファン(22)を備えることとすることができる。
【0011】
さらに、本発明に係る焼入装置(20)において、前記ワーク格納部(21)には、ワーク(W)の出し入れを行う箇所に開閉動作自在なシャッター(24)が設けられることとすることができる。
【0012】
またさらに、本発明に係る焼入装置(20)は、前記空冷ファン(22)によって発生する空気の流れを整流する整流板(23)を備えることとすることができる。
【0013】
さらにまた、本発明に係る焼入装置(20)において、前記ワーク取出口(12)は、前記溶体化処理炉(10)の上下方向に複数設けられており、前記ワーク取出口(12)の位置にあわせて昇降移動可能に設けられることとすることができる。
【0014】
本発明に係る焼入方法は、上述した焼入装置(20)を用いて焼入処理を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶体化処理が行われた複数のワークに対する衝風焼入れを複数のワークごとで均一に行うことができ、その結果として、複数のワークごとで均質な品質を有するワークを得ることができる衝風焼入れによる焼入加工を実現可能な焼入装置と、その焼入装置を用いて実施される焼入方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る焼入装置の構成例を示す平面図である。
図2】本実施形態に係る焼入装置の構成例を示す正面図である。
図3】本実施形態に係る焼入装置を用いて行われる焼入方法を説明するための模式図である。
図4】本実施形態に係る焼入装置を用いて行われる焼入方法を説明するための模式図である。
図5】本実施形態に係る焼入装置を用いて行われる焼入方法を説明するための模式図である。
図6】本実施形態に係る焼入装置を用いて行われる焼入方法を説明するための模式図である。
図7】本実施形態に係る焼入装置を用いて行われる焼入方法を説明するための模式図である。
図8】本実施形態に係る焼入装置を用いて行われる焼入方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
まず、図1および図2を用いて、本実施形態に係る焼入装置の構成についての説明を行う。ここで、図1は、本実施形態に係る焼入装置の構成例を示す平面図である。また、図2は、本実施形態に係る焼入装置の構成例を示す正面図である。図2は、図1の紙面下側から上側に向かって本実施形態に係る焼入装置を見た場合の図として示されている。
【0019】
図1に示すように、本実施形態では、1つの溶体化処理炉10に対して2つの焼入装置20a,20bが設置される構成となっている。
【0020】
ここで、本実施形態に係る焼入装置20(20a,20b)が設置される溶体化処理炉10について説明すると、本実施形態の溶体化処理炉10は、環状に並列配置される複数のワーク格納室11を備えている。また、これら複数のワーク格納室11は、上下方向に積層配置される構成を備えており、図1で示す本実施形態の溶体化処理炉10の場合、1段中で環状に並列配置されるワーク格納室11は16室であり、この1段中16室あるワーク格納室11が、上下方向に6段ほど積層配置される構成となっている。
【0021】
そして、16室×6段=96室あるワーク格納室11には、各段ごとにワーク格納室11に対応した複数のワーク取出口12が形成されている。また、複数のワーク取出口12に対しては、各取出口を閉鎖したり、開放したりするための可動蓋13が配置されている。すなわち、この可動蓋13は、図1の紙面左側に示されるように、ワーク取出口12を塞いで取出口を閉鎖したり、図1の紙面右側に示されるように、ワーク取出口12から離れて取出口を開放したりすることが可能となっている。
【0022】
また、本実施形態の溶体化処理炉10では、図1の紙面左側に示されるワーク取出口12が、2、4、6段目に設けられたワーク取出口12となっており、図1の紙面右側に示されるワーク取出口12が、1、3、5段目に設けられたワーク取出口12となっている。つまり、本実施形態の溶体化処理炉10では、上下6段で積層配置されるとともに環状に並列配置された16室のワーク格納室11に対して、各段ごとに1つのワーク取出口12が設けられ、これら各段ごとのワーク取出口12に対してそれぞれに可動蓋13が配置され、さらには、溶体化処理炉10を上下方向で見たときに、各段ごとで互い違いにワーク取出口12が設けられた構成となっている。
【0023】
上述した溶体化処理炉10に対しては、2つの焼入装置20a,20bが設置されている。本実施形態では、図1の紙面左側に示される焼入装置20bが、1、3、5段目に設けられたワーク取出口12となっており、図1の紙面右側に示される焼入装置20aが、2、4、6段目に設けられたワーク取出口12となっている。つまり、本実施形態では、焼入装置20a,20bとワーク取出口12は、各段ごとに左右逆となるようにクロス配置されている。このような構成となっているのは、後述する多関節ロボットアーム30によるワークWのワーク取出口12から焼入装置20a,20bへの移し替えが、よりスムーズとなるような導線が得られるからである。
【0024】
また、本実施形態に係る焼入装置20a,20bについては、図2にて示すように、図2の紙面左側に示される1、3、5段目用の焼入装置20bが1台設置され、図2の紙面右側に示される2、4、6段目用の焼入装置20aが1台設置され、これら2つの焼入装置20a,20bそれぞれが、ワーク取出口12の位置にあわせて上下方向で昇降移動可能となるように設けられている。すなわち、図2で示す紙面左側に示される1、3、5段目用の焼入装置20bについては、1、3、5段目に設けられたワーク取出口12と略同じ高さの位置で停止することが可能となっており、図2で示す紙面右側に示される2、4、6段目用の焼入装置20aについては、2、4、6段目に設けられたワーク取出口12と略同じ高さの位置で停止することが可能となっている。なお、焼入装置20a,20bの上下方向での昇降移動は、モータ25とチェーン26による移動手段によって実現されている。
【0025】
また、本実施形態に係る焼入装置20a,20bは、溶体化処理炉10のワーク取出口12から取り出されたワークWを格納するワーク格納部21を有しており、ワーク格納部21の上方位置には、ワーク格納部21に格納されたワークWを空冷するための空冷ファン22が設置されている。
【0026】
また、空冷ファン22の直下には、空冷ファン22によって発生する空気の流れを整流するための2枚の整流板23が配置されており、さらに、ワーク格納部21には、ワークWの出し入れを行う箇所に開閉動作自在なシャッター24が設けられている。これら空冷ファン22、整流板23、シャッター24の作用によって、ワークWを格納するワーク格納部21には、溶体化処理炉10から搬出されたワークWに対して適切に整流された風を送ることができるので、各ワーク格納部21で均一条件の衝風焼入れによる焼入加工を実施することが可能となっている。
【0027】
上述した溶体化処理炉10のワーク格納室11に対するワークWの出し入れや、焼入装置20a,20bのワーク格納部21に対するワークWの出し入れについては、2つの焼入装置20a,20bの略中間部分に配置された多関節ロボットアーム30によって実行可能となっている。なお、図1では、説明の便宜のために、多関節ロボットアーム30の本体部31と、多関節ロボットアーム30のアーム先端部32とが、分離して描かれているが、本来、本体部31とアーム先端部32とは接続した状態にあり、符号32a~32dで示したアーム先端部32は、アーム先端部32が取り得るポジションの一例を示したものである。
【0028】
すなわち、図1で示すように、本実施形態に係る多関節ロボットアーム30のアーム先端部32は、符号32aで示すワークWの搬入位置から、符号32bで示すワーク格納室11に対するワークWの挿入位置や、符号32cで示すワーク格納室11からのワークWの取り出し位置や、符号32dで示すワークWの搬出位置などを取ることができるようになっている。また、符号32cで示すワーク格納室11からワークWを取り出して、焼入装置20aのワーク格納部21に対してワークWを挿入設置することが可能となっている。このように、本実施形態では、ワークWを溶体化処理して衝風焼入れを行う焼入加工を行う際のワークWの搬送を、1台の多関節ロボットアーム30によって実行することが可能となっている。
【0029】
以上、本実施形態に係る焼入装置20(20a,20b)の構成についての説明を行った。次に、上述した焼入装置20(20a,20b)を用いて行われる焼入方法について、図3図8を参照図面に加えて説明を行う。ここで、図3図8は、本実施形態に係る焼入装置を用いて行われる焼入方法を説明するための模式図である。なお、図4図8における多関節ロボットアーム30については、説明の便宜のために、多関節ロボットアーム30の本体部31を省略し、多関節ロボットアーム30のアーム先端部32のみが示されている。
【0030】
図3では、搬入位置にあるワークWを多関節ロボットアーム30のアーム先端部32が掬い上げて搬送しようとしている状況が示されている。このとき、溶体化処理炉10の1、3、5段目に設けられた紙面右側のワーク取出口12の可動蓋13が開き、1、3、5段目のワーク格納室11のワーク取出口12が開放された状態となる。
【0031】
次に、図4で示すように、多関節ロボットアーム30のアーム先端部32がワークWを搬送し、1、3、5段目のワーク格納室11内に対してワークWを搬入する。その後、アーム先端部32がワーク格納室11内から退避して可動蓋13が閉じ、溶体化処理炉10によるワークWの溶体化処理が実行される。
【0032】
図4と同様に、図5で示す2、4、6段目のワーク格納室11についても、多関節ロボットアーム30のアーム先端部32がワークWを搬送し、2、4、6段目のワーク格納室11内に対してワークWを搬入する。その後、アーム先端部32がワーク格納室11内から退避して可動蓋13が閉じ、溶体化処理炉10によるワークWの溶体化処理が実行される。
【0033】
その後、溶体化処理が終了したワークWから順次、溶体化処理炉10外へ搬出される。例えば、図6に示されるように、1、3、5段目のワーク格納室11のワーク取出口12を閉鎖していた可動蓋13が開き、1、3、5段目のワーク格納室11のワーク取出口12が開放され、1、3、5段目のワーク格納室11内にある溶体化処理が終了したワークWが、アーム先端部32によって炉外に搬出される。そして、1、3、5段目のワーク格納室11から搬出されたワークWは、1、3、5段目用の焼入装置20bに形成されたワーク格納部21に搬入される。このとき、焼入装置20bは、搬出先であるワーク取出口12の段数に応じた高さ位置に移動するよう、図示しない制御装置により制御されているので、ワークWを移送する多関節ロボットアーム30のアーム先端部32は、高さ方向での位置をほぼ変えることなく、ワークWを移送することができる。また、焼入装置20bとワーク取出口12は、平面視で左右逆となるようにクロス配置されているので、多関節ロボットアーム30によるワークWのワーク取出口12から焼入装置20bへの移し替えがスムーズに実行される。さらに、ワークWが挿入された焼入装置20bでは、図2で示した空冷ファン22、整流板23、シャッター24の作用によって、ワークWを格納するワーク格納部21には、溶体化処理炉10から搬出されたワークWに対して適切に整流された風を送ることができるので、各ワーク格納部21で均一条件の衝風焼入れによる焼入加工を実施することが可能となっている。
【0034】
一方、図7で示す2、4、6段目のワーク格納室11で溶体化処理が実行されたワークWについても、図6と同様の処理が実行可能である。すなわち、図7に示されるように、2、4、6段目のワーク格納室11のワーク取出口12を閉鎖していた可動蓋13が開き、2、4、6段目のワーク格納室11のワーク取出口12が開放され、2、4、6段目のワーク格納室11内にある溶体化処理が終了したワークWが、アーム先端部32によって炉外に搬出される。そして、2、4、6段目のワーク格納室11から搬出されたワークWは、2、4、6段目用の焼入装置20aに形成されたワーク格納部21に搬入される。このとき、焼入装置20aは、搬出先であるワーク取出口12の段数に応じた高さ位置に移動するよう、図示しない制御装置により制御されているので、ワークWを移送する多関節ロボットアーム30のアーム先端部32は、高さ方向での位置をほぼ変えることなく、ワークWを移送することができる。また、焼入装置20aとワーク取出口12は、平面視で左右逆となるようにクロス配置されているので、多関節ロボットアーム30によるワークWのワーク取出口12から焼入装置20aへの移し替えがスムーズに実行される。さらに、ワークWが挿入された焼入装置20aでは、図2で示した空冷ファン22、整流板23、シャッター24の作用によって、ワークWを格納するワーク格納部21には、溶体化処理炉10から搬出されたワークWに対して適切に整流された風を送ることができるので、各ワーク格納部21で均一条件の衝風焼入れによる焼入加工を実施することが可能となっている。
【0035】
その後、衝風焼入れによる焼入加工が終了したワークWから順次、焼入装置20(20a,20b)外へ搬出される。すなわち、焼入装置20(20a,20b)のワーク格納部21において衝風焼入れによる焼入加工が完了したワークWは、図8に示されるように、搬出位置へと移送され、多関節ロボットアーム30のアーム先端部32がワークWから退避することで、一連の焼入加工工程が終了する。
【0036】
以上説明した焼入方法を実行することで、すべてのワークWに対して、ワークWの溶体化処理炉10からの取り出しから10秒以内に焼入装置20(20a,20b)による衝風焼入れが可能となっており、この衝風焼入れは、すべてのワークWにおいて略同一条件で実行することが可能となっている。したがって、本実施形態によれば、ワークWの焼入れ遅れが無く、均一な焼入処理を実行することができるので、ワークWの品質を安定させることが可能となる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0038】
例えば、上述した実施形態の焼入装置20(20a,20b)は、空冷式の衝風焼入れを行うものであったが、本発明の焼入装置については、水冷式や油冷式の焼入装置とすることができる。
【0039】
また、上述した溶体化処理炉10はワーク格納室が環状に配置される構成であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワークが載置されるワーク格納室(トレイ)がベルトコンベア等により直線状に移動するタイプの溶体化処理炉で、このベルトコンベアが複数並列されるような、いわゆるストレートタイプの溶体化処理炉にも適用可能であり、これ以外のタイプの溶体化処理炉にも本発明は適用可能である。
【0040】
また例えば、上述した実施形態では、ワーク取出口12のすぐ近くに焼入装置20(20a,20b)のワーク格納部21が移動するように構成されていたが、いずれのワーク取出口12からも一定の距離にワーク格納部21が移動するように構成すればよい。ワーク取出口12の違いによるワークWへの焼入処理のバラツキをなくすことが本発明の本質である。
【0041】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0042】
10 溶体化処理炉、11 ワーク格納室、12 ワーク取出口、13 可動蓋、20,20a,20b 焼入装置、21 ワーク格納部、22 空冷ファン、23 整流板、24 シャッター、25 モータ、26 チェーン、30 多関節ロボットアーム、31 本体部、32,32a,32b,32c,32d アーム先端部、W ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8