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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】改良土の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230221BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C09K17/10 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019108899
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020200689
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
(72)【発明者】
【氏名】ヘム ラムラヴ
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-136207(JP,A)
【文献】特開2018-188909(JP,A)
【文献】特開2000-170154(JP,A)
【文献】特開2000-211959(JP,A)
【文献】特開2016-060679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0326053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C09K 17/10
C09K 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂に、セメント材及び水を混合してなる改良土の製造方法であって、
前記土砂の粒径加算曲線を算出する曲線算出ステップと、
当該粒径加算曲線よりも上部の範囲の面積を算出して、全粒径における粒度分布面積を算出する面積算出ステップと、
予め算出した、土砂の粒度分布面積と、土砂の量に対する加水量との相関関係に基づいて、前記面積算出ステップにより算出した粒度分布面積より、加える水の量を算出する加水量算出ステップと、
を備えることを特徴とする改良土の製造方法。
【請求項2】
前記改良土は、繊維材及びベントナイトを含むことを特徴とする請求項1に記載の改良土の製造方法。
【請求項3】
前記改良土は、土砂の粒度に関わらず、前記繊維材、前記セメント材及び前記ベントナイトを一定量混合して、土砂の粒度に対応した、最適な水の量を混合して製造することを特徴とする請求項2に記載の改良土の製造方法。
【請求項4】
前記土砂、前記セメント材及び前記ベントナイトを混合する第1混合ステップと、
前記水及び前記繊維材を混合する第2混合ステップと、
前記第1混合ステップにて製造される第1混合物、及び前記第2混合ステップにて製造される第2混合物を混合する第3混合ステップと、
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の改良土の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂に、少なくともセメント材及び水を混合してなる改良土の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、河川の流曲部においては、水の流れによって河岸法面が侵食されている。侵食の原因は、洪水時の水の流れにより、土砂が削り取られるためである。なお、法面内の土砂が不飽和な状態では、土粒子間の摩擦力やサクションの効果により土砂は削られにくい。しかしながら、水の流れと共に土砂内に水が浸水し、不飽和な状態から飽和な状態に変化すると、土粒子間の摩擦力やサクションの効果が小さくなるために、土砂は洗掘されやすくなり、河岸が侵食されていく。
【0003】
このような侵食に対する対策として、土砂を利用した短繊維混合補強土にて河岸の法面を覆う方法が提案されている。この方法においては、土砂の物性(土粒子密度、含水比、粒度分布など)が事前に明らかとなっている購入土、建設発生土や安定化処理土を主材として使用するために、比較的容易に安価な改良土として材料供給することが可能である。またこの方法においては、土砂への混合材料として、短繊維材と、場合によってはセメント材とを混合することで土粒子間の一体化を図り、侵食に対する抵抗力を向上させることができる。
【0004】
一方、浚渫粘性土やフライアッシュ(石炭灰)を主材として短繊維材とセメント材、場合によってはベントナイトを混合する遮水材が開発されている。浚渫粘性土やフライアッシュは、粒径が細かいことより、透水係数が小さく、遮水材として適用可能となることが特徴である。さらには、短繊維材及びセメント材に加え、ベントナイトを混合することで、ベントナイトが水を吸収して膨張し、さらに遮水材としての透水係数を小さくでき、河岸法面に適用した場合には、その法面内への浸水量を低減する効果が得られる。
【0005】
ここで、上述した従来方法の思想を組み合わせ、さらに河川岸近傍にある現地の土砂を用いる発想を加え、河岸法面の浸食対策材として、現地の土砂に、短繊維材、セメント材及びベントナイトに水を加えた改良土を製造することを想定している。現地の土砂を主材として用いることで、材料の運搬調達が不要となり、さらに容易に安価な改良土として材料供給することができる。
【0006】
その際には、短繊維材、セメント材、ベントナイトの単位体積あたりの添加量をある一定値としても、物性が不明な現地の土砂に混合する水の配合比(重量比)は、所定の強度や所定の透水係数、および材料分離しないなどの施工性が満足できるように、事前に検討しておく必要がある。つまり、事前に配合比が異なる改良土を複数製造して、当該各改良土のブリーディング試験や強度試験や透水試験等を行って、その改良土としての品質を確認し、配合比を設定する必要がある。しかしながら、この従来方法では、採取する現地土砂の物性のバラつきごとに、改良土をさらに複数製造する作業や、各改良土の強度試験等の品質確認作業が非常に多数となり、相当な時間と費用を要することとなる。そのため、容易に配合を設定できるように改善する必要が生じる。
【0007】
この問題を対策すべく提案された従来技術として、特許文献1には、セメント改良土の圧縮強度を対象としてX線回折法により推定する方法であって、推定対象のセメント改良土から採取した試料についてX線回折を行うことで、回折ピーク強度およびその回折角(2θ)を測定するステップと、予め得たセメント改良土の圧縮強度と前記回折角(2θ)における回折ピーク強度との相関関係に基づいて前記測定された回折ピーク強度からセメント改良土の圧縮強度を求めるステップと、を有し、前記求めた圧縮強度を前記推定対象のセメント改良土の圧縮強度と推定するセメント改良土の強度推定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-35208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した、特許文献1に記載のセメント改良土の強度推定方法では、実際の強度試験[(JIS A 1216(土の一軸圧縮強度試験方法)]を実施する必要はないものの、配合比の異なった改良土を複数製造する必要があり、根本的な問題を解決することはできない。また、現地で混合する土砂の粒度分布が試験時と異なる場合への適用性についても疑義が生じる。また、透水係数を品質評価指標のひとつとする場合には、評価することができない。
しかも、特許文献1に記載のセメント改良土の強度推定方法では、特殊な設備、すなわち、X線回折装置等を備える必要があり、余計な設備費を負担しなければならず、好ましくない。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、特殊な設備を必要とせず、効率良く、所定品質(施工性、強度、透水係数)を満足する改良土の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の態様)
以下に示す発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0012】
(1)土砂に、セメント材及び水を混合してなる改良土の製造方法であって、前記土砂の粒径加算曲線を算出する曲線算出ステップと、当該粒径加算曲線よりも上部の範囲の面積を算出して、全粒径における粒度分布面積を算出する面積算出ステップと、予め算出した、土砂の粒度分布面積と、土砂の量に対する加水量との相関関係に基づいて、前記面積算出ステップにより算出した粒度分布面積より、加える水の量を算出する加水量算出ステップと、を備えることを特徴とする改良土の製造方法(請求項1の発明に相当)。
(1)項に記載の改良土の製造方法では、曲線算出ステップ及び面積算出ステップにより、改良土に使用される土砂の全粒径における粒度分布面積を算出して、その後、加水量算出ステップにより、予め算出した、土砂の粒度分布面積と、土砂の量に対する加水量との相関関係に基づいて、面積算出ステップにより算出した粒度分布面積から、混合時や施工時に材料分離することのない加水量を算出することができる。その結果、効率的に、施工性を確保し、所定品質を満足した改良土を製造することができる。すなわち、予め、土砂の粒度分布面積と、土砂の量に対する加水量との相関関係(相関式)を求めておけば、対象土砂が変化しても、その都度、事前に配合比の異なった改良土を複数製造して、それぞれの改良土に対して品質確認試験を実施する必要はなく、しかも、特殊な設備も備える必要もなく、効率的に、所定品質を満足した改良土を製造することができる。
【0013】
(2)(1)項に記載の改良土の製造方法であって、前記改良土は、繊維材及びベントナイトを含むことを特徴とする改良土の製造方法(請求項2の発明に相当)。
(2)項に記載の改良土の製造方法では、河岸法面の侵食を抑制すべく、現地土砂を利用した改良土を製造する際に、特に有効である。
【0014】
(3)(2)項に記載の改良土の製造方法であって、前記改良土は、土砂の粒度に関わらず、前記繊維材、前記セメント材及び前記ベントナイトを一定量混合して、土砂の粒度に対応した、最適な水の量を混合して製造することを特徴とする改良土の製造方法(請求項3の発明に相当)。
(3)項に記載の改良土の製造方法では、改良土の必要強度に応じたセメント添加量を決定し、また改良土に必要な透水係数に応じたベントナイト添加量を決定し、その上で、土砂の粒度に対応した最適な水の量を混合することができるので、粒度の異なる種々の土砂に対して、粒度分布面積を算出するだけの作業にて、施工性を確保し、所定の品質、すなわち所定の強度及び所定の透水係数を満足した改良土を製造することができ、非常に効率的である。この根拠は、以下の考え方に基づいている。すなわち、水量は粒子の表面に付着して保水されるため、粒径の二乗に比例する表面積と保水可能水量とは、比例関係にあると考えられる。セメントの水和反応に修費される水量や、ベントナイトの吸水量は一定と見積ることができるため、粒度分布から表面積を関連付けることで、必要な水量の総量が推定可能となる。
【0015】
(4)(2)項または(3)項に記載の改良土の製造方法であって、前記土砂、前記セメント材及び前記ベントナイトを混合する第1混合ステップと、前記水及び前記繊維材を混合する第2混合ステップと、前記第1混合ステップにて製造される第1混合物、及び前記第2混合ステップにて製造される第2混合物を混合する第3混合ステップと、を備えることを特徴とする改良土の製造方法(請求項4の発明に相当)。
(4)項に記載の改良土の製造方法では、繊維材、セメント材及びベントナイトを略均一に分散させて混合することができ、ひいては、改良土の強度を全体的に略均一にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るによれば、特殊な設備を必要とせず、効率良く、所定品質(施工性、強度、透水係数)を満足する改良土を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態に係る改良土の製造方法にて算出する土砂の粒径加算曲線を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る改良土の製造方法にて算出する土砂の全粒径における粒度分布面積(A)を示す図である。
図3図3は、図2のグラフにおいて、その横軸を、各粒径の単位をμmに換算して、log10で表した図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る改良土の製造方法にて使用する、土砂の粒度分布面積(A)と、土砂の量に対する加水量(W/S)との相関関係(相関式)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図1図4に基づいて詳細に説明する。
改良土は、例えば、河川の流曲部等の河岸であって、水の流れによって侵食される可能性のある箇所(未整備箇所)から掘削した土砂に、短繊維材、ベントナイト、セメント材及び水を混合して構成される。短繊維材は、本実施形態では、長さ10~50mm、繊維径10~400μm(PVA製の場合、およそ1~1600dtex)のものが採用されている。ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とする粘土である。セメント材は、本実施形態では、例えば、普通ポルトランドセメント材が採用されている。
【0019】
本発明の実施形態に係る改良土の製造方法を実施するには、予め、所定のセメント添加量(C=40~200kg/mの範囲内の適宜量)及びベントナイト添加量(B=0~200kg/mの範囲内の適宜量)ごとに、土砂の粒度分布面積(A)と、土砂の量に対する加水量(W/S)との相関関係(相関式)を求めておく必要がある。これを求めるには、まず、試験体1~n(nは整数)を複数製造する。例えば、試験体1~nは、土砂1~n(nは整数)に、ベントナイト、セメント材、短繊維材、及び水を混合したものである。試験体1~nにおいて、土砂1~nは、例えば、その量S=700~1700kg/mであり、それぞれ粒度が相違している。各試験体1~nにおいて、ベントナイトの添加量は同じで、例えば、ベントナイトの添加量B=60kg/mである。また、各試験体1~nにおいて、セメント材の添加量も同じで、例えば、セメント材の添加量C=60kg/mである。さらに、各試験体1~nにおいて、短繊維材の添加量も同じで、例えば、混合土に占める体積比0.6%である。さらにまた、各試験体1~nにおいて、水の量Wはこれらの粒子態材料が材料分離することなく、適切な粘性をもって施工できる程度の量として設定されるため、それぞれ相違している。すなわち、これら各試験体1~nでは、ブリーディングをしない、もしくは許容範囲内となる、施工性の良い状態(スランプ8~12cm程度)となるように加水量がそれぞれ設定されている。
【0020】
そして、セメント材とベントナイトと短繊維材との添加量が一定であるため、改良土の一定体積を配合設計する場合には、水量を減らすと土砂量が増加し、逆に土砂量を増やすと水量を減少させて配合設計することとなる。この関係下において、前記の施工性の良い状態を満足する加水量を各試験体1~nにおいて抽出する。なお、この事前設定のための試験結果は、あらゆる土砂に対して汎用性があるため、セメント材及びベントナイトの添加量ごとに不変である。したがって、各工事現場において、必要強度、必要透水係数が要求されると、後述する、それに適したセメント材およびベントナイトの添加条件における、土砂の粒度分布面積(A~A)と、土砂の量に対する加水量(W/S~W/S)との相関式が提供される。
【0021】
次に、各試験体1~nにおいて、混合された土砂1~nの粒径加算曲線を、土質試験のふるい試験や沈降分析試験によりそれぞれ算出する(図1相当)。続いて、混合された土砂1~nにおいて、当該粒径加算曲線よりも上部の範囲(図2及び図3の斜線部Aの範囲相当)の面積をそれぞれ算出して、全粒径における粒度分布面積(A~A)をそれぞれ算出する。なお、粒度分布面積(A)を算出する際には、図3に示すように、図2に示す横軸を、各粒径の単位をμmに換算して、log10で表す。続いて、粒径1μmを横軸の原点0として、横軸対数グラフにおける原点からの距離Xを数値化する(例えば粒径10mmの場合、X=log1010=4)。続いて、各粒径の差分(X-Xi-1)をΔXとして、粒径Xのときの通過質量百分率の高さ相当をh、粒径Xi-1のときの通過質量百分率の高さ相当をhi-1とすると、各粒径の面積ΔA=(h+hi-1)/2×ΔXとなり、この各粒径の面積ΔAを合計して、全粒径における粒度分布面積(A=ΣΔA)を算出する。
【0022】
そして、各試験体1~nにおける、土砂1~nの粒度分布面積(A~A)及び加水量(W~W)に基づいて、図4に示すような、土砂の粒度分布面積(A~A)と、土砂の量に対する加水量(W/S~W/S)との規則性のある相関関係、すなわち規則性のある相関式を導くことができる。図4に示す、土砂の粒度分布面積(A~A)と、土砂の量に対する加水量(W/S~W/S)との相関関係(相関式)は、A=400と、A=400の場合のW/Sの値を任意に変化させて、各試験体1~nにおける試験結果を再現する最も相関係数の高いW/Sの値に漸近する関数(ここでは、例えば累乗近似式)で与えられる。
【0023】
なお、各試験体1~nは、強度試験、すなわち、一軸圧縮強度試験(JIS A 1216)を実施しており、強度q=100~1000kN/mであり、ひずみ10%においても強度が降伏せず、靱性を有していることを確認している。また、各試験体1~nにおいては、透水試験(JIS A 1218より試験精度の高い三軸透水試験)を実施して、満足な結果(例えば、土砂の粒度分布面積(A)が217の場合、透水係数はk=3×10-7cm/s程度)を得ている。
【0024】
次に、本発明の実施形態に係る改良土の製造方法を説明する。
改良土は、上述したように、現地の改良(補強)すべき対象土砂に、短繊維材、ベントナイト、セメント材及び水を混合して構成される。なお、短繊維材、ベントナイト及びセメント材の量は、上述した、土砂の粒度分布面積(A~A)と、土砂の量に対する加水量(W/S~W/S)との相関関係(図4に示す)を導いた際と同じである。
まず、曲線算出ステップとして、改良すべき対象土砂に対して、図1に示す粒径加算曲線を、土質試験のふるい試験や沈降分析試験により算出する。
【0025】
次に、面積算出ステップとして、粒径加算曲線よりも上部の範囲(図2及び図3の斜線部Aの範囲)の面積を算出して、全粒径における粒度分布面積(A’)を算出する。
次に、加水量算出ステップとして、予め算出した、図4に示す、相関式に基づいて、面積算出ステップにより算出した対象土砂の粒度分布面積A’からW’/S’を算出し、改良土単位体積あたりの土砂量S’と加水量W’を算出する。そして、この加水量W’が、改良土の施工性及び品質を確保した最適な水量となる。これにより、現地の土砂を利用した改良土を製造する際の、短繊維材、ベントナイト、セメント材及び水の配合比(配合量)が決定される。なお、この相関式から算出された水量の品質に及ぼす許容誤差は、W/Sとして±2%である。つまり現地施工時に水量が少々ばらついても一定の品質を確保することができる。
【0026】
次に、第1混合ステップとして、第1撹拌混合機(図示略)により、対象土砂、ベントナイト及びセメント材を混合、撹拌して、第1混合物を製造する。また、第2混合ステップとして、第2撹拌混合機(図示略)により、水及び短繊維材を混合、撹拌して、第2混合物を製造する。
次に、第3混合ステップとして、第3撹拌混合機(図示略)により、上述した、第1混合物及び第2混合物を混合、撹拌して最終的に改良土を製造する。そして、この改良土を、土砂を掘削した岸法面に塗り付けるように施工する。その結果、岸法面を改良土により補強することができ、水の流れによる侵食を抑制することが可能となる。
例えば、日本国内では渇水期に、東南アジアなどでは乾季の水位の低い時期に河川法面に施工しておけば、出水期や雨季に水位が増加した際の河川法面の浸食懸念が払拭できる。
【0027】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る改良土の製造方法では、予め、改良土の試験体を複数製造して、土砂の粒度分布面積(A)と、土砂の量に対する加水量(W/S)との規則性のある相関関係(相関式)を導いておく。そして、改良土の製造する際には、曲線算出ステップ及び面積算出ステップにより、対象土砂の粒度分布面積を算出して、加水量算出ステップにおいて、予め算出した、土砂の粒度分布面積(A)と、土砂の量に対する加水量(W/S)との相関関係(相関式)に基づいて、対象土砂の粒度分布面積A’から加える水の量W’を算出することができる。
【0028】
これにより、予め、土砂の粒度分布面積(A)と、土砂の量に対する加水量(W/S)との規則性のある相関関係を導いておけば、対象土砂が変化しても、すなわち、対象土砂の粒度が変化しても、その都度、配合比の異なった改良土を複数製造して品質確認試験を実施する必要はなく、特殊な設備を備える必要もなく、効率的に所定品質(施工性、強度、透水係数)を有する改良土を製造することができる。また、本発明の実施形態に係る改良土の製造方法では、対象土砂が変化した場合でも、その都度、容易に加水量を修正することが可能であり、改良土の品質の安定が図れる。
【0029】
また、本発明の実施形態に係る改良土の製造方法によれば、土砂、ベントナイト及びセメント材を混合して第1混合物を製造する第1混合ステップと、水及び短繊維材を混合して第2混合物を製造する第2混合ステップと、第1混合物及び第2混合物を混合する第3混合ステップと、を備えている。
これにより、対象土砂に、短繊維材、ベントナイト、セメント材及び水を混合して改良土を製造する際、これら短繊維材、ベントナイト及びセメント材を略均一に分散させて混合することができる。これにより、改良土の強度の偏りを抑制することができ、その強度を全体的に略均一にすることができる。
【0030】
なお、本実施形態では、土砂に、短繊維材、ベントナイト、セメント材及び水を混合して改良土を製造しており、河岸の侵食を抑制すべく、現地の土砂を利用した改良土を製造する際に、特に有効であるが、短繊維材及びベントナイトとは別の補強材(例えば植生や新聞紙片など)を採用して混合してもよい。
【0031】
また、本実施形態では、河川の流曲部等、水の流れによって河岸が侵食される可能性のある箇所(またはその近傍)から掘削される土砂を対象としているが、河岸に限らず、地盤の改良が必要な箇所から掘削される土砂を含み、さらに、ケーソン等の内部に充填される中詰砂など、現地にて安価に入手できる礫を含まない土粒子をも含む。
【0032】
さらに、本実施形態では、本改良土は、河川の流曲部等、水の流れによって河岸が侵食される可能性のある箇所(またはその近傍)に適用されているが、その他の適用箇所として、例えば、海域の砂地盤に打設された杭周りの洗堀防止対策材として、本改良土を打設することなどが使い道として考えられる。このような場合も同様の効果が期待できる。その他、陸上で盛土された道路路肩法面や、埋立処分場の法面、貯水池の法面などに適用した場合も同様の効果が期待できる。
図1
図2
図3
図4