(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】架橋ゴムの網目構造を評価する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20230221BHJP
G01N 33/44 20060101ALI20230221BHJP
C08J 7/02 20060101ALI20230221BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N33/44
C08J7/02 CEQ
C08J7/02 CET
C08J7/00 A
(21)【出願番号】P 2019129084
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 由真
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
(72)【発明者】
【氏名】塩見 友梨子
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-094493(JP,A)
【文献】特開2001-316595(JP,A)
【文献】特開2009-298959(JP,A)
【文献】特開2016-056237(JP,A)
【文献】国際公開第2011/081037(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 33/44
C08J 7/00 - C08J 7/18
C08J 3/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性モノマーを用いて架橋ゴムを膨潤させた後、重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合させることにより、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムを準備する工程と、
透過型電子顕微鏡を用いた計算機トモグラフィー法により、前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの3次元画像を取得する工程を有し、
得られた3次元画像を2値化した処理画像において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似することにより求められる粒径に基づき、粒径の体積基準のメジアン径(D50)を算出することを特徴とする架橋ゴムの網目構造を評価する方法。
【請求項2】
前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムを、染色剤で染色する工程を有することを特徴とする請求項1記載の架橋ゴムの網目構造を評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ゴムの網目構造を評価する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ゴムの網目構造は、その架橋点間分子量(網目長さ)の均一・不均一により、架橋ゴムの力学的性質に大きく影響を及ぼすことが知られている。このような架橋ゴムの網目構造と力学的性質の関係性を評価する技術としては、例えば、重合性モノマーを用いて架橋ゴムを膨潤させた後、重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合させることにより、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴム(膨潤ゴム)を準備して(樹脂包埋設法ともいう)、続いて、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた計算機トモグラフィー(CT)法により、前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴム(膨潤ゴム)の3次元膨張モデルを生成し、さらに、当該3次元膨張モデルから生成した膨張前3次元モデルに有限要素法(FEM)を適用することによって、架橋ゴムの力学特性を解析するシミュレーション方法が開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、上記のような樹脂包埋設法において、透過型電子顕微鏡(TEM)で適切に観察するために、重合性モノマーに対する重合開始剤の使用量を最適化する技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-298959号公報
【文献】特開2016-56237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で開示された技術は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた計算機トモグラフィー(CT)法によって取得した3次元膨張モデルから膨張前3次元モデルを生成する工程と、当該膨張前3次元モデルに有限要素法(FEM)を適用する工程により、架橋ゴムの力学特性を解析するシミュレーション方法であるため、一連の操作が煩雑であることなどの問題があった。また、特許文献2には、架橋ゴムの網目構造と力学的性質の関係性を評価する方法については、何ら具体的な記載がなかった。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、樹脂包埋設法を用いた架橋ゴムにおいて、網目長さとみなせる指標を簡便に精度よく定量化できる、架橋ゴムの網目構造を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、重合性モノマーを用いて架橋ゴムを膨潤させた後、重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合させることにより、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムを準備する工程と、透過型電子顕微鏡を用いた計算機トモグラフィー法により、前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの3次元画像を取得する工程を有し、得られた3次元画像を2値化した処理画像において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似することにより求められる粒径に基づき、粒径の体積基準のメジアン径(D50)を算出することを特徴とする架橋ゴムの網目構造を評価する方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる架橋ゴムの網目構造を評価する方法における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。但し、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0009】
本発明の架橋ゴムの網目構造を評価する方法は、重合性モノマーを用いて架橋ゴムを膨潤させた後、重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合させることにより、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムを準備する工程と、透過型電子顕微鏡を用いた計算機トモグラフィー法により、前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの3次元画像を取得する工程を有し、得られた3次元画像を2値化した処理画像において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似することにより求められる粒径に基づき、粒径の体積基準のメジアン径(D50)を算出する。このような方法で算出される粒径のメジアン径(D50)は、架橋ゴムの架橋ゴム中の加硫剤添加量(架橋ゴムの架橋の程度)と一次相関性が高いことから、架橋ゴムの網目構造の網目長さを精度よく定量化できる指標となり得、さらに、架橋ゴムの力学的性質(破断強度)に相関することが示されたため、本発明の方法は、架橋ゴムの網目構造と力学的性質の関係性を評価する方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】透過型電子顕微鏡を用いて得られた3次元画像を2値化した処理画像において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似した画像の一例である。
【
図2】実施例および比較例で使用したサンプルにおける、粒径の体積基準のメジアン径(D50)と
加硫剤添加量との関係、および円の面積基準のメジアン径(D50)と
加硫剤添加量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の架橋ゴムの網目構造を評価する方法は、重合性モノマーを用いて架橋ゴムを膨潤させた後、重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合させることにより、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムを準備する工程(以下、工程1ともいう)と、透過型電子顕微鏡を用いた計算機トモグラフィー法により、前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの3次元画像を取得する工程(以下、工程2ともいう)と、得られた3次元画像を2値化した処理画像において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似することにより求められる粒径に基づき、粒径の体積基準のメジアン径(D50)を算出する工程(以下、工程3ともいう)を含む。
【0012】
<工程1>
前記工程1は、重合性モノマーを用いて架橋ゴムを膨潤させた後、重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合させることにより、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムを準備する工程である。
【0013】
前記架橋ゴムに使用できるゴム(ゴム成分)としては、加硫剤により架橋可能なゴムであれば、特に制限されず、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記加硫剤は、通常のゴム用加硫剤であればよく、例えば、有機過酸化物、硫黄系加硫剤が好ましい。前記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記加硫剤の含有量は、架橋ゴムを得るためのゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、通常、0.1~10質量部程度である。
【0015】
また、前記架橋ゴムを得るためのゴム組成物には、ゴム用の各種配合剤を用いることができる。前記配合剤としては、例えば、カーボンブラック、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤が挙げられる。
【0016】
前記重合性モノマーは、前記架橋ゴムの良溶媒となり、該架橋ゴムを飽和状態まで膨潤させることができ、かつ、当該膨潤した架橋ゴムとの共存下で重合することができるものであれば、特に制限されず、例えば、スチレンモノマー、スチレン誘導体モノマー、エポキシ、フラン、キシレン、シリコーン、ジアリルフタレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。架橋ゴムを膨潤させる溶媒として重合性モノマーを用いることによって、膨潤工程後に重合性モノマーを重合させることで、架橋ゴムを膨潤状態のまま固定化でき、透過型電子顕微鏡など真空中で観察する際にも、膨潤状態を変えることなく観察することができる。一方、重合性モノマーが架橋ゴムの貧溶媒である場合、架橋ゴムを充分に膨潤させることが困難となり、所望の膨潤度を得ることができない。重合性モノマーとしては、架橋ジエンゴムとの相溶性の観点から、スチレンモノマー、スチレン誘導体モノマーが好適である。
【0017】
前記工程1において、前記重合性モノマーを用いて前記架橋ゴムを膨潤させる方法は、架橋ゴムを膨潤させることができれば、特に制限されず、例えば、前記架橋ゴムを前記重合性モノマー溶液に浸漬する方法が挙げられる。浸漬条件は、架橋ゴムを充分に膨潤させることができれば、特に制限されず、適宜設定でき、例えば、架橋ゴムを平衡膨潤で吸収される以上量の重合性モノマー溶液に、室温(25℃)で、1~100時間浸漬すればよい。
【0018】
前記重合開始剤は、熱、光、振動などによってラジカルを発生するものであれば、特に制限されず、例えば、過酸化ベンゾイル(BPO)、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、過硫酸カリウム、過酸化ラウロイル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2´-アゾビスジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。前記重合開始剤としては、充分な重合速度を確保できることから、過酸化ベンゾイル、2,2´-アゾビスイソブチロニトリルが好適である。
【0019】
前記工程1において、重合開始剤の存在下で前記重合性モノマーを重合させる方法は、例えば、膨潤した架橋ゴムを含む重合性モノマー溶液に重合開始剤を添加し、重合反応を進行させることで行うことができる。重合反応条件は、重合性モノマー、重合開始剤の種類などに応じて適宜設定すればよい。また、重合開始剤の使用量は、重合性モノマー100質量部に対して、通常、0.001~10質量部程度であり、好ましくは、0.005~7質量部程度であり、より好ましくは、0.01~5質量部程度である。
【0020】
前記工程1の後、電子顕微鏡での観察をより容易に詳細に行うことができる観点から、前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムを染色剤で染色する工程(以下、染色工程ともいう)を設けることが好ましい。
【0021】
前記染色剤は、後述する工程2において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を認識しやすい観点から、架橋ゴムのゴム鎖を良好に染色することができ、かつ重合性モノマーを染色しないものが望ましく、例えば、オスミウム、ルテニウム、ヨウ素、金、セレン、タングステンなどの各種の染色化合物が挙げられ、とくに、炭素-炭素二重結合に付加する性質がある(炭素-炭素二重結合のある部分のみを染色する)四酸化オスミウムが好ましい。一方、架橋ゴムのゴム鎖を染色せずに、スチレンなどの重合性モノマーのみを染色する場合には、染色剤として、四酸化ルテニウム(RuO4)などを用いてもよい。
【0022】
<工程2>
前記工程2は、透過型電子顕微鏡を用いた計算機トモグラフィー法により、前記ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの3次元画像を取得する工程である。
【0023】
前記工程2としては、具体的には、例えば、ウルトラミクロトームなどによって、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの超薄切片を用い、透過型電子顕微鏡と当該超薄切片が載置された試料台とを所定の角度範囲(例えば、-70度から+70度の範囲)で所定角度(例えば、2度間隔)ずつ相対的に回転移動させつつスキャンすることにより超薄切片の連続傾斜画像を撮影し、撮影した多数枚の傾斜画像の画像データを用い、各画像間の回転軸を求め、計算機トモグラフィー法により3次元画像に再構成する方法などが挙げられる。前記超薄切片は、厚さが50~500nmで測定可能だが、3次元画像の構築後の情報を考慮すると、厚さが100nm以上であることが好ましく、さらに傾斜測定を考慮すると厚さが100~300nmであることがより好ましい。なお、前記透過型電子顕微鏡は、測定精度を向上させる観点から、走査透過型電子顕微鏡(STEM)を使用することが好ましい。
【0024】
<工程3>
前記工程3は、上記で得られた3次元画像を2値化した処理画像において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似することにより求められる粒径に基づき、粒径の体積基準のメジアン径(D50)を算出する工程である。
【0025】
前記工程3において、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似する方法は、上記で得られた3次元画像を2値化した処理画像から、網目構造の空隙部(膨潤部)を抽出仕分け処理し、各空隙部において、粒径(直径)が最大となるように内包する完全球体を作成する方法である。ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似した画像の一例を
図1に示す。なお、上記の2値化処理や抽出仕分け処理は、公知の画像解析ソフトを用いて行うことができる。
【0026】
前記粒径の体積基準のメジアン径(D50)は、ゴムの網目構造に存在する空隙部を球体近似することにより求められる粒径に基づいて算出され、ゴムの網目構造の網目長さを表す指標となる。なお、当該メジアン径(D50)を算出する際には、データの信頼性を高めるため、例えば、画像領域が200×200×50nm程度以上で算出すればよい。
【実施例】
【0027】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0028】
<実施例1~3>
<工程1>
<架橋ゴムの作製>
バンバリーミキサーを使用し、表1に示すゴム、加硫促進剤、および加硫剤を混練(排出温度は90℃)してゴム組成物を製造し、得られたゴム組成物を160℃×2時間加硫して加硫ゴム(サンプル1~3)を作製した。
【0029】
また、上記で作製した加硫ゴム(サンプル1~3)について、JIS K6251に準じて、引張試験(ダンベル状3号形)を実施して破断時の応力を測定し、サンプル1の値を100とした指数で表示した。数値が大きいほど、破断強度が高いことを示す。
【0030】
【0031】
表1中、SBRは、スチレンブタジエンゴム(スチレン量が20%、ビニル量が55%、商品名:「HPR350」、JSR(株)製);
加硫促進剤は、スルフェンアミド系加硫促進剤(商品名:「ソクシノールCZ」、住友化学(株)製);
加硫剤は、硫黄(商品名:「粉末硫黄」、鶴見化学工業(株)製);を示す。
【0032】
<ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの準備>
上記で得られた加硫ゴムの試験片(約0.03g)に、スチレンモノマー(3.2g)を加えて、室温で48時間浸漬し、膨潤させた。その後、重合開始剤として、AIBN(8.2mg)を加えて、ウォーターバスで80℃、6時間の条件下で加熱することによりスチレンモノマーを重合し、ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの試験片を準備した。
【0033】
<工程2>
<ゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの3次元画像の取得>
上記で得られたゴムの網目構造が固定化した架橋ゴムの試験片を、クライオミクロトームで100nmの厚さに薄片化した。続いて、薄片化した試験片を乗せたグリッドを2%四酸化オスミウム水溶液の蒸気で4時間染色した。走査透過型電子顕微鏡として、Thermo TEM(Talos F 200X)を用い、STEMモード、加速電圧200kV、検出器HAADF、傾斜角度-70°~70°で傾斜および測定を繰り返し、得られた複数の画像をトモグラフィー法で3次元画像を再構築した。
【0034】
<工程3>
<粒径の体積基準のメジアン径(D50)の算出>
画像解析ソフト(Avizo)を用いて、上記で得られた3次元画像(画像領域が900×900×110nm)を2値化し、網目構造の空隙部(膨潤部)を抽出仕分け処理後、ゴム網目に囲まれた空隙部(膨潤部)を球形近似し、各空隙部(各膨潤部)の球の粒径を求め、粒径の体積基準のメジアン径(D50)を算出した。結果を表2に示す。また、各サンプルにおける、粒径の体積基準のメジアン径(D50)と
加硫剤添加量との関係を
図2に示す。
【0035】
<比較例1~3>
上記の<工程1>の後、走査透過型電子顕微鏡として、Thermo TEM(Talos F 200X)を用い、STEMモード、加速電圧200kV、検出器HAADFで2次元画像を取得した。次いで、画像解析ソフト(Avizo)を用いて、得られた2次元画像(画像領域が900×900nm)を2値化し、ゴムの網目構造に存在する空間に、最長の直径となる内接円を作成(円近似)して、各円の面積基準のメジアン径(D50)を算出した。結果を表2に示す。また、各サンプルにおける、円の面積基準のメジアン径(D50)と
加硫剤添加量との関係を
図2に示す。
【0036】
【0037】
表2および
図2の結果より、3次元画像における粒径の体積基準のメジアン径の方が、2次元画像における円の面積基準のメジアン径よりも、架橋ゴムの架橋ゴム中の
加硫剤添加量(架橋ゴムの架橋の程度)と一次相関性が高いことから、3次元画像における粒径の体積基準のメジアン径は、架橋ゴムの網目構造の網目長さを精度よく定量化できる指標となり得ることが分かった。また、3次元画像における粒径の体積基準のメジアン径は、表1の架橋ゴムの力学的性質(破断強度)に相関することも示されたため、本発明の方法は、架橋ゴムの網目構造と力学的性質の関係性を評価する方法として有用であることが分かった。