IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社不動テトラの特許一覧

<>
  • 特許-流動化砂組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】流動化砂組成物
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20230221BHJP
   E02D 3/08 20060101ALI20230221BHJP
   C04B 28/08 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
E02D3/10 104
E02D3/08
C04B28/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019143624
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025289
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 英典
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 竹史
(72)【発明者】
【氏名】永石 雅大
(72)【発明者】
【氏名】山下 祐司
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-111766(JP,A)
【文献】特開2018-053701(JP,A)
【文献】特開2006-182822(JP,A)
【文献】特開2008-308612(JP,A)
【文献】特開2015-017265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
E02D 3/08
C04B 28/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の空洞部に充填されるものであり、充填後、適宜な強度を発現する流動化砂組成物であって、
該流動化砂組成物は、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、材料砂、含水比調製用水、流動化剤及び高炉スラグ微粉末を含有するものであり、
該消石灰及び/又は石膏の配合量は、該高炉スラグ微粉末100重量部に対して、10~200重量部であり、
該空洞部への充填後における製造後28日の一軸圧縮強度が100~500kN/m であることを特徴とする流動化砂組成物。
【請求項2】
該流動化砂組成物中の材料砂100重量部に対して、高炉スラグ微粉末を1~20重量部、配合することを特徴とする請求項記載の流動化砂組成物。
【請求項3】
該流動化砂組成物は、製造後1時間以内でのテクスチャー試験における貫入応力が、50,000Pa以下であることを特徴とする請求項又は記載の流動化砂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打設時には十分な流動性を有し、脱水できる土壌又は脱水できない土壌中であっても、打設後、掘削や矢板の打込みなどに支障のない適度な強度を有する流動化砂用混合材、改良流動化砂の製造方法、流動化砂組成物及び流動化砂組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
締固め砂杭造成工法は、特公昭62-25808号公報などに開示されているように、中空管を地盤中の設計深度まで貫入した後、地表まで引き抜く過程で、前記中空管を所定高さ引き抜き管内に投入された砂等を排出する引き抜き工程と、前記中空管を再び貫入して排出砂等を締固める再貫入工程とを繰り返して行うことにより、所定の強度に締固めた砂杭を造成し、地盤を改良するものである。
【0003】
締固め砂杭造成工法には、例えばラックとピニオンを使用した強制昇降装置による回転圧入施工により、中空管の貫入及び引き抜きを行う静的締固め砂杭工法(例えば特開平08-284146号公報)、振動する中空管を使用し、貫入、引き抜き及び打ち戻しを繰り返す打ち戻し式サンドコンパクション工法などがある。
【0004】
いずれの工法も地表に起立又は傾斜させた地中貫入用中空管に砂杭材料を投入するため、砂杭造成区域にはタイヤショベルなどの砂杭材料供給手段が稼動するスペースが必要であった。しかし、既設構造物の直下又は直近が砂杭造成区域となる場合、タイヤショベルなどの砂杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できず、従来の砂杭造成工法を適用することができないという問題があった。
【0005】
これを解決するものとして、特開2010-13885号公報には、地盤改良に用いる砂杭材料に遅効性塑性化剤を含有する砂杭材料流動化物を、流動状態を保持したまま地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させることを特徴とする砂杭造成工法が開示されている。また、特開2018-53701号公報には、材料砂に含水比調整用水と共に流動化剤を加えて圧送ポンプにより配管を通して移送可能に処理される地盤改良用の流動化砂において、前記材料砂に対し該材料砂に含まれる、前記流動化剤の阻害要因となる金属イオン等の陽イオンを電荷中和可能なイオン電荷中和用添加剤を混ぜた後、前記流動化剤を混入していることを特徴とする流動化砂が開示されている。これら砂杭材料流動化物や流動化砂によれば、既設構造物の直下又は直近など砂杭材料供給手段が稼動するスペースを確保できない狭い砂杭造成地盤区域であっても、該地盤中で脱水され、流動化剤が不溶化し、塑性化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭62-25808号公報
【文献】特開2010-13885号公報(請求項1)
【文献】特開2018-53701号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の流動化砂は、圧入圧力により脱水ができれば砂としての強度を発現するが、脱水ができない場合はほとんど強度が発現しない。従って、排水が望めない地盤や圧入脱水を行わない施工では、十分な強度が発現できないという問題がある。そこで、これら脱水できない地盤中であっても、目的に応じた任意の強度を発現できる流動化砂の登場が望まれていた。
【0008】
従って、本発明の目的は、打設時には十分な流動性を有し、脱水できる土壌あるいは脱水できない土壌中であっても、打設後、目的に応じた任意の強度を発現できる、又は周辺の硬質地盤と同等の強度を有する流動化砂用混合材、改良流動化砂の製造方法、流動化砂組成物及び流動化砂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、及び高炉スラグ微粉末を含有することを特徴とする流動化砂用混合材を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、該消石灰及び/又は石膏の配合量は、該高炉スラグ微粉末100重量部に対して、10~200重量部であることを特徴とする前記流動化砂用混合材を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、該高炉スラグ微粉末の比表面積が、2,750~10,000cm/gであることを特徴とする前記流動化砂用混合材を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、地盤への充填前の流動化砂に、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、及び高炉スラグ微粉末を含有する流動化砂用混合材を混合することを特徴とする改良流動化砂の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、地盤への充填前の流動化砂に、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、及び高炉スラグ微粉末を混合することを特徴とする改良流動化砂の製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、該流動化砂中の乾燥状態の材料砂100重量部に対して、高炉スラグ微粉末を1~20重量部、配合することを特徴とする前記改良流動化砂の製造方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、該流動化砂は、材料砂、含水比調製用水及び流動化剤を含有することを特徴とする前記改良流動化砂の製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、該改良流動化砂は、製造後1時間以内でのテクスチャー試験における貫入応力が、50,000Pa以下であることを特徴とする前記改良流動化砂の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、材料砂、含水比調製用水、流動化剤及び高炉スラグ微粉末を含有することを特徴とする流動化砂組成物を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、該流動化砂組成物中の材料砂100重量部に対して、高炉スラグ微粉末を1~20重量部、配合することを特徴とする前記流動化砂組成物を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、該流動化砂組成物は、製造後1時間以内でのテクスチャー試験における貫入応力が、50,000Pa以下であることを特徴とする前記流動化砂組成物を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、材料砂、含水比調製用水、流動化剤及び高炉スラグ微粉末を混合することを特徴とする流動化砂組成物の製造方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、材料砂及び高炉スラグ微粉末を混合する第1工程と、該第1工程で得られた混合物と、含水比調製用水及び流動化剤を混合する第2工程とを行うことを特徴とする前記流動化砂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、打設時には十分な流動性を有し、脱水できない土壌中であっても、打設後、目的に応じた任意の強度を発現できる、又は周辺の硬質地盤と同等の強度を有する流動化砂組成物を提供できる。また、従来の流動化砂に添加するだけで、上記性能を発現する流動化砂用混合材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の流動化砂組成物を使用した圧入式砂充填装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(流動化砂用混合材)
本発明において、流動化砂用混合材(以下、単に「混合材」とも言う。)は、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種及び高炉スラグ微粉末を含有する。
【0025】
混合材において、高炉スラグ微粉末は、製鋼工程で生じる粉粒状の副産物であり、CaO、SiO、Al、MgOが主成分である。高炉スラグには、除冷スラグと水砕スラグがあり、この中、水砕スラグが使用できる。水砕スラグとは、溶融状態の高炉スラグを加圧水で急冷することにより生成されるガラス質(非結晶)で粒状のものを言う。
【0026】
高炉スラグ微粉末は、高炉スラグ微粉末は、比表面積が、2,750~10,000cm/gのものが好ましい。これにより、高炉スラグ微粉末は、例えば、公知の流動化砂に添加された際、消石灰又は石膏の存在により、反応が促進され、凝結して、適度の強度を発現する。従って、高炉スラグ微粉末単独では、適度の強度が発現できない。
【0027】
消石灰は、水酸化カルシウムであり、生石灰を水または水蒸気で消和してつくられる。建築用消石灰、肥料用消石灰、工業用消石灰などいずれも粉末状のものが使用できる。消石灰の配合量は、高炉スラグ微粉末100重量部に対して、10重量部~200重量部、好ましくは20重量部~100重量部である。消石灰の配合量が多過ぎると、流動化砂のpHがアルカリとなり、アルカリ分が溶出することで環境に対する影響の点で好ましくなく、また少な過ぎると、高炉スラグ微粉末との反応が促進されない点で好ましくない。
【0028】
石膏としては、特に限定されず、二水石膏、半水石膏、無水石膏が挙げられ、この内、半石膏が入手し易い点で好ましい。石膏の具体例としては、天然石膏、排煙脱硫処理によって副生する石膏、天然無水石膏、ふっ酸の製造過程で副産するふっ酸無水石膏等が挙げられる。石膏の配合量は、高炉スラグ微粉末100重量部に対して、10重量部~200重量部、好ましくは20重量部~100重量部である。石膏の配合量が多過ぎると、経済性の点で好ましくなく、また少な過ぎると、高炉スラグ微粉末との反応が促進されない点で好ましくない。
【0029】
混合材は、高炉スラグ微粉末、消石灰及び石膏の3成分を含むものであってもよい。また、上記必須の成分以外に、水などの第3成分を含んでいてもよい。混合材は、粉末状であることが、ハンドリングがよい点で好ましい。
【0030】
混合材が添加される流動化砂としては、材料砂、含水比調製用水及び流動化剤を含有する公知のものが挙げられる。すなわち、公知の流動化砂は、流動状態を保持したまま地盤中に圧入され、地盤中の脱水環境下で塑性化させるものであれば、特に制限されない。この流動化砂は、地盤中、圧入圧力により脱水ができれば砂としての強度を発現するが、脱水ができない場合はほとんど強度が発現しない。
【0031】
混合材が添加される流動化砂で使用される材料砂としては、従来の砂杭造成工法で使用されてきた公知の材料と同様のものであり、例えば、砂、シルトや礫を含む砂、砕石及びスラグ等が挙げられる。材料砂としては、好ましくは、粒径が0.074~2.0mm程度を主体としたものであり、最大粒径は、好ましくは9.5mmである。
【0032】
混合材が添加される流動化砂で使用される流動化剤は、砂の粒子間の間隙水の粘性を高め、飽和状態で砂と水の分離を抑制してポンプ圧送性を向上させる添加剤であり、具体的には、アニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤などである。アニオン系高分子凝集剤としては、イタコン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド2-メチルプロパンスルフォン酸、ビニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸などの単独重合体あるいはアクリルアミドとの共重合体が挙げられる。
【0033】
(改良流動化砂の製造方法)
次に、本発明の改良流動化砂の製造方法について説明する。改良流動化砂は、地盤への充填前の流動化砂に、上記混合材を混合することで得られ、あるいは地盤への充填前の流動化砂に、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、及び高炉スラグ微粉末を混合することで得られる。地盤への充填前の流動化砂に、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、及び高炉スラグ微粉末を添加する場合、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種と高炉スラグ微粉末の混合は、別々の混合であってもよく、混合順序は制限されない。
混合材の配合量は、流動化砂中の乾燥状態の材料砂100重量部に対して、高炉スラグ微粉末の配合量が1~20重量部となるように配合することが、消石灰又は石膏の存在により、反応が促進され、凝結して、適度の強度を発現する点で好ましい。高炉スラグ微粉末の配合量が多過ぎると、圧送性が低下する点で好ましくなく、また少な過ぎると、強度が発現しない点で好ましくない。なお、流動化砂中の材料砂の配合量は、流動砂の含水比を測定することで、乾燥状態の材料砂の重量を求めればよい。
【0034】
本発明の改良流動化砂の製造方法において、得られた改良流動化砂は、製造後1時間以内のテクスチャー試験における貫入応力が、50,000Pa以下、好ましくは30,000Pa以下である。これにより、改良流動化砂は、高炉スラグ微粉末等が配合されていても、打設時には十分な流動性を有する。また、製造後28日の一軸圧縮強さは100kN/m以上であり、上限値は、適宜決定でき、例えば矢板の打ち込みに支障のない強度として、上限値が500kN/mである。また、使用材料の配合によっては、コンクリートと同程度の2000kN/mも可能である。これにより、脱水されない地盤中において、液状化せず、且つ打設後には掘削や矢板の打込みなどに支障のない適度な強度を発現することができる。
【0035】
(流動化砂組成物)
本発明において、流動化砂組成物は、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、材料砂、含水比調製用水、流動化剤及び高炉スラグ微粉末を含有する。流動化砂組成物に含まれる材料砂、含水比調製用水、流動化剤、高炉スラグ微粉末、消石灰及び石膏は、前記混合材及び改良流動化砂の製造方法に記載したものと同様のものが使用できる。
【0036】
流動化砂組成物において、流動化剤の配合量は、材料砂100重量部に対し、0.01~2.0重量部である。流動化剤の配合量が少な過ぎると、材料砂が分離し圧送できない点で好ましくなく、多過ぎると、経済性の点で好ましくない。また、高炉スラグ微粉末の配合量は、乾燥状態の材料砂100重量部に対して、1~20重量部である。高炉スラグ微粉末の配合量が少な過ぎると、強度が発現しない点で好ましくなく、多過ぎると、圧送性が低下する点で好ましくない。消石灰又は石膏の配合量は、材料砂100重量部に対して、1~20重量部である。消石灰又は石膏の配合量が少な過ぎると、材料砂が分離し圧送できない点で好ましくなく、多過ぎると、経済性の点で好ましくない。
【0037】
本発明において、流動化砂組成物は、改良流動化砂と同様の、製造後1時間以内のテクスチャー試験における貫入応力が、50,000Pa以下、好ましくは30,000Pa以下である。これにより、改良流動化砂は、高炉スラグ微粉末等が配合されていても、打設時には十分な流動性を有する。また、製造後28日の一軸圧縮強さは100kN/m以上であり、上限値は、適宜決定でき、例えば矢板の打ち込みに支障のない強度として、上限値が500kN/mである。これにより、脱水されない地盤中において、液状化せず、且つ打設後には掘削や矢板の打込みなどに支障のない適度な強度を発現することができる。
【0038】
(流動化砂組成物の製造方法)
流動化組成物は、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、材料砂、含水比調製用水、流動化剤及び高炉スラグ微粉末を混合することで製造することができ、消石灰及び石膏から選択される1種又は2種、材料砂及び高炉スラグ微粉末を混合する第1工程と、該第1工程で得られた混合物と、含水比調製用水及び流動化剤を混合する第2工程とを行うことが好ましい。
【0039】
(流動化砂組成物製造プラント及び圧入式砂杭造成装置)
流動化砂組成物製造プラント及び圧入式砂杭造成装置を図1を参照して説明する。図1において、圧入式砂杭造成装置50は、流動化砂組成物製造プラント10と、砂杭造成用の中空管23と、流動化砂組成物製造プラント10で製造された流動化砂組成物を中空管23に送る圧送ポンプ4と、圧送ポンプ4と中空管23とを接続する流動化砂組成物供給配管36とを備える。なお、「消石灰及び石膏から選ばれる1種又は2種」は、装置説明においては「消石灰」と略称する。
【0040】
流動化砂組成物製造プラント10は、砂杭区域26より離れた場所にあるもので、流動化砂組成物を製造する装置群である。流動化砂組成物製造プラント10は、例えば流動化砂組成物混合撹拌手段1、材料砂供給手段2、高炉スラグ微粉末供給手段3、消石灰供給手段4、含水比調製用水供給手段5、流動化剤供給手段6、流動化砂組成物移送配管31、材料砂移送配管32、高炉スラグ微粉末移送配管33、消石灰移送配管34、含水比調製用水移送配管35、流動化剤移送配管36からなる。なお、それぞれの供給手段には、必要に応じて、貯留タンク、供給ポンプ及び撹拌手段など設置される。このような流動化砂組成物製造プラント10は、砂杭施工区域26に設置しなくてもよく、既設構造物の直下や直近に施工する際の設置スペースを確保する必要がない点で好適である。流動化砂組成物供給配管36は、通常可撓性ホースが使用され、その長さは適宜決定されるが、概ね200m未満である。なお、砂杭施工区域26は、本例では、コンクリート床板261とその下方地盤262との間に空洞部263が存在する地盤である。
【0041】
圧送ポンプ4は、公知のものが使用でき、例えばピストンポンプ、スクイズポンプなどが挙げられる。また、圧送ポンプ4は、低圧ポンプでも高圧ポンプでもよいが、高圧ポンプを用いると、圧入砂杭造成工法が利用できる。
【0042】
次に、流動化砂組成物の製造方法の一例を示す。流動化砂組成物製造プラント10において、先ず、所定量の材料砂を材料砂供給手段2から流動化砂組成物混合撹拌手段1に供給する。次いで、所定量の高炉スラグ微粉末及び所定量の消石灰を、流動化砂組成物混合撹拌手段1中の材料砂に混合する。この粉末混合物を充分に撹拌混合する。材料砂、高炉スラグ微粉末及び消石灰は、粉末状であるため、均一に混合することができる。この粉末混合物に対して、含水比調整用水及び流動化剤を配合して、流動化砂組成物を得る。なお、流動化砂組成物には、別途、公知の遅効性塑性化剤を配合することもできる。
【0043】
本発明の改良流動化砂及び流動化砂組成物(以下、単に「改良流動化砂」とも言う。)は、公知の砂杭造成工法により、地盤中に砂杭を造成することができる。すなわち、この砂杭の造成工法としては、静的締固め砂杭造成工法や打ち戻し式サンドコンパクション工法などの公知の締固め砂杭造成工法が挙げられる。また、圧入砂杭造成工法であれば、圧入時、塑性化した地盤改良材を地中に拡径の砂杭として造成し、これを繰り返して行えばよい。
【0044】
なお、圧入砂杭造成工法は、図1に示すように、中空管23を地盤中の設計深度まで貫入した後、中空管23を通して地表から地中に改良流動化砂を圧入し、必要に応じて圧入と同時に塑性化剤を添加して、地中に拡径の砂杭を造成し、これを繰り返して行うことにより、所定長の拡径の砂杭を造成する工法である。
【0045】
地中に充填、又は圧入された砂杭材料は、含水比調製用水、流動化剤、高炉スラグ微粉末、及び消石灰又は石膏を含み、打設後、掘削や矢板の打込みなどに支障のない適度な強度を有する。本発明の改良流動化砂や流動化砂組成物が適用される地盤としては、矢板等の構築物が除去された後の改良を行わない空洞充填部、地盤中で脱水される地盤及び脱水されない地盤が挙げられる。空洞充填部に充填された改良流動化砂や流動化砂組成物は、充填後、空洞内に隙間を生じることなく、適度な強度を発現することができる。また、透水性の低い地盤で排水が望めないような地盤においては、自硬することで、適度な強度を付与することができる。従来の公知の流動化砂においては、このような地盤では排水できず、十分な強度が得られなかった。
【実施例
【0046】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
(混合材A1の製造)
混合撹拌機に、高炉スラグ微粉末(比表面積4000cm/g)と消石灰を入れ、両者が均一に混ざるまで撹拌し、粉末状の混合材A1を製造した。なお、消石灰の配合量は、高炉スラグ微粉末100重量部に対して、50重量部であった。この配合は、高炉スラグ微粉末の配合量が、消石灰100重量部に対して、200重量部となる。
【0047】
(改良流動化砂B1の製造)
予め公知の流動化砂1を準備した。この流動化砂1は、含水比35.0重量%の蓋井砂(材料砂)に、流動化剤(ポイリアクリルアミド)を含むものであった。流動化剤の配合量は、蓋井砂100重量部に対して、0.64重量部であった。次に、流動化砂1の100重量部に対して、2.21重量部の混合材A1を添加し、撹拌混合して、改良流動化砂B1を製造した。改良流動化砂B1中、高炉スラグ微粉末の配合量は、材料砂100重量部に対して2重量部であった。
【0048】
(テクスチャー試験)
市販のテクスチャー試験装置(山電社製;卓上式物性測定器)を使用し、所定容器に試料(改良流動化砂B1)を充填し、試験装置にセットした後、シリンダーを一定速度で上下させ、試料上面から20mmの貫入及び引抜を行い、貫入時の最大荷重Paを応力に換算して貫入応力値として求めた。試験は、改良流動化砂1製造直後(経過0時間)、製造後48時間(2日後)、製造後72時間(3日後)、製造後168時間(7日後)、製造後672時間(28日後)について行った。その結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
(混合材A2の製造)
混合撹拌機に、高炉スラグ微粉末(比表面積4000cm/g)と石膏を入れ、両者が均一に混ざるまで撹拌し、粉末状の混合材A2を製造した。なお、石膏の配合量は、高炉スラグ微粉末100重量部に対して、50重量部であった。
【0050】
(改良流動化砂B2の製造)
混合材A1に代えて、混合材A2とした以外は、実施例1の(改良流動化砂B1の製造)と同様の方法により、改良流動化砂B2を製造し、テクスチャー試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
(流動化砂b1の製造)
混合材1の添加を省略した以外は、実施例1の(改良流動化砂B1の製造)と同様の方法により、流動化砂b1を調製し、テクスチャー試験を実施した。すなわち、この比較例1の流動化砂b1は、公知の流動化砂そのものである。その結果を表1に示した。
【0052】
(比較例2)
(流動化砂b2の製造)
混合材A1に代えて、高炉スラグ微粉末とした以外は、実施例1の(改良流動化砂B1の製造)と同様の方法により、流動化砂b2を製造し、テクスチャー試験を実施した。すなわち、この比較例2の流動化砂b2は、公知の流動化砂に高炉スラグ微粉末を添加したものである。その結果を表1に示した。
【0053】
(比較例3)
(混合材a3の製造)
消石灰に代えて、ベントナイトとした以外は、実施例1の(混合材A1の製造)と同様の方法により、混合材a3を製造した。すなわち、混合材a3は、高炉スラグ微粉末とベントナイトの混合物である。なお、ベントナイトの配合量は、高炉スラグ微粉末100重量部に対して、50重量部であった。
【0054】
(流動化砂b3の製造)
混合材A1に代えて、混合材a3とした以外は、実施例1の(改良流動化砂B1の製造)と同様の方法により、流動化砂b3を製造し、テクスチャー試験を実施した。すなわち、この比較例3の流動化砂b3は、公知の流動化砂に高炉スラグ微粉末とベントナイトの混合物を添加したものである。その結果を表1に示した。
【0055】
(比較例4)
(流動化砂b4の製造)
混合材A1に代えて、固化セメントとした以外は、実施例1の(改良流動化砂B1の製造)と同様の方法により、流動化砂b4を製造し、テクスチャー試験を実施した。すなわち、この比較例4の流動化砂b4は、公知の流動化砂に固化セメントを添加したものである。固化セメントの配合量は、蓋井砂100重量部に対して、3重量部であった。その結果を表1に示した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1において、高炉スラグ微粉末単体(比較例2)は、無添加(比較例1)と同程度の貫入応力であり、固結による強度増加はみられなかった。一方、消石灰又は石膏を添加した実施例では大きな強度増加がみられた。また、ベントナイトの添加(比較例3)は、製造直後の貫入応力が高く、その値が大きく変化しなかった。このことから、ベントナイトのような細粒分は、強度に寄与しないことが判った。消石灰又は石膏を高炉スラグ微粉末に添加した実施例は、比較的貫入応力が高く、目標となる強度を発現した。消石灰(実施例1)と石膏(実施例2)を比較すると、消石灰の方が大きな貫入応力となっている。
【0058】
次に、混合材A1を構成する高炉スラグ微粉末と消石灰の混合系において、消石灰の配合量を一定とし、高炉スラグ微粉末の配合量が、貫入応力に及ぼす影響について検討した。以下、実施例3~5に示す。
【0059】
(実施例3~5)
(改良流動化砂B3~B5の製造)
高炉スラグ微粉末の配合量2重量部に代えて、4重量部(実施例3)、6重量部(実施例4)、8重量部(実施例5)とした以外は、実施例1の(改良流動化砂B1の製造)と同様の方法により、改良流動化砂B3~B5を製造し、テクスチャー試験を実施した。その結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2の結果から、実施例1に比べ、高炉スラグ微粉末添加量が多い実施例3~5はいずれも貫入応力が大きくなっており、より固結していた。しかし、実施例3~5間では大きな違いはみられない。これは、高炉スラグ微粉末の添加量に対して、消石灰の添加量が不足しており、高炉スラグ微粉末の反応が促進されていないことが判る。
【0062】
(実施例6)
(流動化砂組成物Cの製造)
前述の改良流動化砂と同じ組成となる流動化砂組成物Cを製造した。すなわち、蓋井砂、流動化剤(ポリアクリルアミド)、高炉スラグ微粉末(比表面積4000cm/g)、消石灰及び水を混合して、流動化砂組成物を製造した。具体的には、蓋井砂に、所定量の高炉スラグ微粉末と消石灰を添加し、均一になるまで混合攪拌し、次いで、この混合物に、所定量の水及び流動化剤を配合し、流動化砂組成物Cを製造し、テクスチャー試験を実施した。その結果、改良流動化砂Bと同じ結果を得た。
【0063】
(実施例7)
(混合材A2の製造)
消石灰の配合量50重量部に代えて、20重量部とした以外は、実施例1の(混合材A1の製造)と同様の方法により、混合材A2を作製した。なお、混合材A2において、高炉スラグ微粉末の配合量は、消石灰100重量部に対して、500重量部であった。
【0064】
(改良流動化砂B6の製造)
混合材A1に代えて、混合材A2とした以外は、実施例1の(改良流動化砂B1の製造)と同様の方法により、改良流動化砂B6を作製し、製造後672時間(28日後)の試料に対して、一軸圧縮強度(JIS A1216)を測定した。その結果、173kN/mであった。
【0065】
実施例7は、製造28日後は、掘削や矢板の打込みなどに支障のない適度な強度を有するものであった。従って、実施例7の改良流動化砂は、透水性の低い、圧入後は排水が望めないような地盤においても適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、打設時には十分な流動性を有し、脱水できる土壌又は脱水できない土壌中において、打設後、目的に応じた任意の強度を発現できる、又は周辺の硬質地盤と同等の強度を有する流動化砂組成物を提供できる。
図1