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特許7231547端末装置、通信システム、および通信方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】端末装置、通信システム、および通信方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20230221BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230221BHJP
   G08G 1/005 20060101ALI20230221BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20230221BHJP
   H04W 4/029 20180101ALI20230221BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/16 D
G08G1/005
G08G1/09 F
H04W48/18
H04W4/029
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019539039
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2018026523
(87)【国際公開番号】W WO2019044208
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/010185
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017164180
(32)【優先日】2017-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省、ICTを活用した次世代ITSの確立のうち歩車間通信技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛
(72)【発明者】
【氏名】須藤 浩章
(72)【発明者】
【氏名】後明 一聖
(72)【発明者】
【氏名】田中 悟史
(72)【発明者】
【氏名】村松 慎太郎
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-009281(JP,A)
【文献】特開2015-125669(JP,A)
【文献】特開2002-245595(JP,A)
【文献】特開2017-068741(JP,A)
【文献】特開平11-120488(JP,A)
【文献】特開2009-217438(JP,A)
【文献】特許第6349002(JP,B1)
【文献】特開2009-045956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
G08G 1/16
G08G 1/005
H04W 48/18
H04W 4/029
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置であって、
前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、
前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、
自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が緊急車両であり、かつ、前記車両が緊急走行の状態である場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択することを特徴とする端末装置。
【請求項2】
自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置であって、
前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、
前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、
自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、
を備え、
前記制御部は、自装置の周辺に存在する複数の歩行者端末からのメッセージを受信し、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が特定車両であり、かつ、受信した前記メッセージの送信元である前記歩行者端末の数をカウントして、その歩行者端末の数が所定値以上となる場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択することを特徴とする端末装置。
【請求項3】
自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置と、道路に設置されて、前記端末装置と通信を行う路側装置と、を備える通信システムであって、
前記端末装置は、
前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、
前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、
自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、
を備え
前記制御部は、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が緊急車両であり、かつ、前記車両が緊急走行の状態である場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択することを特徴とする通信システム。
【請求項4】
自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置と、道路に設置されて、前記端末装置と通信を行う路側装置と、を備える通信システムであって、
前記端末装置は、
前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、
前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、
自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、
を備え、
前記制御部は、自装置の周辺に存在する複数の歩行者端末からのメッセージを受信し、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が特定車両であり、かつ、受信した前記メッセージの送信元である前記歩行者端末の数をカウントして、その歩行者端末の数が所定値以上となる場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択することを特徴とする通信システム。
【請求項5】
端末装置から、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する通信方法であって、
自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信と、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、
選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信し、
前記メッセージの送信では、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が緊急車両であり、かつ、前記車両が緊急走行の状態である場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択することを特徴とする通信方法。
【請求項6】
端末装置から、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する通信方法であって、
自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信と、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、
選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信し、
前記メッセージの送信では、自装置の周辺に存在する複数の歩行者端末からのメッセージを受信し、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が特定車両であり、かつ、受信した前記メッセージの送信元である前記歩行者端末の数をカウントして、その歩行者端末の数が所定値以上となる場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択することを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置、道路に設置されて端末装置と通信を行う路側装置、端末装置と路側装置とを備える通信システム、および端末装置からメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する通信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムの実用化および普及に向けた検討が進められている。この安全運転支援無線システムでは、車両に搭載された車載端末同士で通信を行う車車間通信や、道路上に設置された路側機と車載端末との間で通信を行う路車間通信により、車両の位置情報などを含むメッセージをやり取りして、車両の運転者に事故回避のための注意喚起を行うようにしている。
【0003】
また、近年、歩行者の事故を防止するため、歩行者に所持させた歩行者端末と車載端末との間で通信を行う歩車間通信が提案されている。この歩車間通信では、歩行者端末と車載端末とが、位置情報などを含むメッセージを直接やり取りして、歩行者の存在を車載端末に通知するとともに車両の存在を歩行者端末に通知することで、歩行者と車両の運転者との双方に対して適切なタイミングで注意喚起を行うことができることから、歩行者の事故を防止する上で大きな効果が期待される。
【0004】
このような歩車間通信では、繁華街の交差点のように歩行者や車両が多くなる状況では、歩行者端末や車載端末が増えることで、歩車間通信のトラフィックが増大して、歩車間通信の輻輳が発生するおそれがあり、この歩車間通信の輻輳は可能な限り回避する必要があるため、歩車間通信のトラフィックを低減することが望まれる。
【0005】
このような歩車間通信のトラフィックの低減に関する技術として、従来、車載端末が路側機および歩行者端末との間で第1の通信(V2X通信:路車間通信および歩車間通信)が可能な通信システムにおいて、路側機が、歩行者端末との間で無線LANなどの第2の通信を行い、車載端末との間で第1の通信(路車間通信)を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-68335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、歩車間通信システムにおいて、前記従来の技術と同様に、歩車間通信とは異なる第2の通信を行うようにすると、端末数が増えても、歩車間通信の輻輳を抑えることができる。しかしながら、歩行者端末と車載端末とが路側機を介して間接通信を行う構成とすると、歩行者端末と車載端末との間でのメッセージの送受信に時間がかかる。このため、歩行者や車両が危険状態である場合には、その歩行者や車両の存在を、周辺の歩行者や車両の運転者に迅速にかつ確実に通知するために、直接通信(歩車間通信)でメッセージを送信することが望ましい。
【0008】
また、歩車間通信の通信品質が低下している状況や、歩車間通信の通信トラフィックが増大してパケット衝突が多発する状況では、通信エラーが発生してパケット誤りにより再送が頻発する。このような状況では、本来であればメッセージが早く届くはずの直接通信(歩車間通信)の方が、間接通信より遅くなる場合がある。一方、歩行者が認知症患者のような見守りが必要な人物である場合や、車両が救急車や消防車のような緊急車両である場合には、歩行者や車両の存在をできるだけ早期に周辺の歩行者や車両の運転者に通知する必要がある。このため、通知の緊急性が特に高い場合には、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信することが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、端末装置間での歩車間通信(直接通信)と、路側装置を介した間接通信との2つの通信方式の中から適切な通信方式を選択することで、歩車間通信の輻輳を抑えつつ、歩行者や車両の存在を、周辺の歩行者や車両の運転者に迅速にかつ確実に通知することができる端末装置、路側装置、通信システム、および通信方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の端末装置は、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置であって、前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、を備え、前記制御部は、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が緊急車両であり、かつ、前記車両が緊急走行の状態である場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、装置情報に基づいて、直接通信と間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択するため、歩車間通信の輻輳を抑えつつ、歩行者や車両の存在を、周辺の歩行者や車両の運転者に迅速にかつ確実に通知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る通信システムの全体構成図
図2】第1実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3でのメッセージの送信状況を示す説明図
図3】第1実施形態に係る歩行者端末1の概略構成を示すブロック図
図4】第1実施形態に係る車載端末3の概略構成を示すブロック図
図5】第1実施形態に係る路側機5の概略構成を示すブロック図
図6】第1実施形態に係る歩行者端末1がメッセージを送信する場合の歩行者端末1、車載端末3および路側機5の動作手順を示すフロー図
図7】第1実施形態に係る車載端末3がメッセージを送信する場合の歩行者端末1、車載端末3および路側機5の動作手順を示すフロー図
図8】第1実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図9】第2実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図
図10】第2実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図
図11】第2実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図12】第3実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図
図13】第3実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図14】第4実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図
図15】第4実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図16】第5実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図
図17】第5実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図18】第6実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図
図19】第6実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図20】第7実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図
図21】第7実施形態に係る優先度テーブルの登録内容を示す説明図
図22】第7実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図23】第8実施形態に係る路側機5の概略構成を示すブロック図
図24】第9実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送受信状況を示す説明図
図25】第9実施形態に係る歩行者端末1から送信されるメッセージの内容を示す説明図
図26】第9実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図27】第10実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送受信状況を示す説明図
図28】第10実施形態に係る車載端末3から送信されるメッセージの内容を示す説明図
図29】第10実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図30】第11実施形態に係る車載端末3から送信されるメッセージの内容を示す説明図
図31】第11実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
図32】第12実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置であって、前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、を備え、前記制御部は、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が緊急車両であり、かつ、前記車両が緊急走行の状態である場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択する構成とする。
【0017】
これによると、装置情報に基づいて、直接通信と間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択するため、歩車間通信の輻輳を抑えつつ、歩行者や車両の存在を、周辺の歩行者や車両の運転者に迅速にかつ確実に通知することができる。特に、直接通信と間接通信の両方の通信方式によるメッセージの送信を、通知の緊急性が高い場合に限定することで、歩車間通信の輻輳をより一層抑えることができる。
【0048】
また、前記課題を解決するためになされた第2の発明は、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置であって、前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、を備え、前記制御部は、自装置の周辺に存在する複数の歩行者端末からのメッセージを受信し、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が特定車両であり、かつ、受信した前記メッセージの送信元である前記歩行者端末の数をカウントして、その歩行者端末の数が所定値以上となる場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択する構成とする。
【0049】
これによると、直接通信と間接通信の両方の通信方式によるメッセージの送信を、周辺に歩行者が多い場合に限定することで、歩車間通信の輻輳をより一層抑えることができる。
【0054】
また、第の発明は、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置と、道路に設置されて、前記端末装置と通信を行う路側装置と、を備える通信システムであって、前記端末装置は、前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、を備え、前記制御部は、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が緊急車両であり、かつ、前記車両が緊急走行の状態である場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択する構成とする。
また、第4の発明は、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置と、道路に設置されて、前記端末装置と通信を行う路側装置と、を備える通信システムであって、前記端末装置は、前記他の端末装置との間で、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信を行う第1の通信部と、前記他の端末装置との間で、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信を行う第2の通信部と、自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、前記直接通信と前記間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信する制御部と、を備え、前記制御部は、自装置の周辺に存在する複数の歩行者端末からのメッセージを受信し、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が特定車両であり、かつ、受信した前記メッセージの送信元である前記歩行者端末の数をカウントして、その歩行者端末の数が所定値以上となる場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択する構成とする。
【0055】
これによると、第1の発明と同様に、装置情報に基づいて、直接通信と間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択するため、歩車間通信の輻輳を抑えつつ、歩行者や車両の存在を、周辺の歩行者や車両の運転者に迅速にかつ確実に通知することができる。特に、直接通信と間接通信の両方の通信方式によるメッセージの送信を、通知の緊急性が高い場合に限定することで、歩車間通信の輻輳をより一層抑えることができる。
【0056】
また、第の発明は、端末装置から、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する通信方法であって、自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信と、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信し、前記メッセージの送信では、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が緊急車両であり、かつ、前記車両が緊急走行の状態である場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択する構成とする。
また、第6の発明は、端末装置から、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する通信方法であって、自装置の状態および属性の少なくともいずれかに関する装置情報に基づいて、第1の通信方式である前記歩車間通信による直接通信と、道路に設置された路側装置を介した第2の通信方式による間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択し、選択した通信方式で前記メッセージを前記他の端末装置に送信し、前記メッセージの送信では、自装置の周辺に存在する複数の歩行者端末からのメッセージを受信し、前記装置情報に含まれる自装置の属性に関する属性情報に基づいて、自装置の車両が特定車両であり、かつ、受信した前記メッセージの送信元である前記歩行者端末の数をカウントして、その歩行者端末の数が所定値以上となる場合に、前記直接通信と前記間接通信の両方の通信方式を選択する構成とする。
【0057】
これによると、第1の発明と同様に、装置情報に基づいて、直接通信と間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択するため、歩車間通信の輻輳を抑えつつ、歩行者や車両の存在を、周辺の歩行者や車両の運転者に迅速にかつ確実に通知することができる。
【0062】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0063】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る通信システムの全体構成図である。
【0064】
この通信システムは、歩行者が携帯する歩行者端末1(端末装置)および携帯情報端末2と、車両に搭載される車載端末3(端末装置)およびカーナビゲーション装置4と、路側機5(路側装置)と、を備えており、歩行者端末1と車載端末3との間で歩車間通信が行われ、また、路側機5を介して歩行者端末1と車載端末3との間でWiFi(登録商標)などの無線LAN通信が行われる。
【0065】
歩車間通信では、位置情報などの所要の情報を含むメッセージを、歩行者端末1と車載端末3との間で送受信する。この歩車間通信では、ITS無線通信、すなわち、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯(例えば700MHz帯や5.8GHz帯)を利用した無線通信によりメッセージを送受信する。
【0066】
無線LAN通信では、路側機5が親機(アクセスポイント)となり、歩行者端末1および車載端末3が子機となり、歩行者端末1と車載端末3との間でのメッセージの送受信を路側機5が中継する。なお、メッセージの形式および内容は、歩車間通信と無線LAN通信とで共通である。
【0067】
歩行者端末1は、携帯情報端末2と接続されている。この携帯情報端末2は、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ウェアラブル端末などである。歩行者端末1では、車載端末3との間でメッセージを送受信することで、注意喚起が必要と判定すると、携帯情報端末2に注意喚起の指示を出力し、携帯情報端末2では、歩行者端末1からの指示に応じて、乗員に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や振動など)を行う。
【0068】
車載端末3は、カーナビゲーション装置4と接続されている。このカーナビゲーション装置4は、運転者に対して経路案内を行うものである。車載端末3では、歩行者端末1との間でメッセージを送受信することで、注意喚起が必要と判定すると、カーナビゲーション装置4に注意喚起の指示を出力し、カーナビゲーション装置4では、車載端末3からの指示に応じて、運転者注意喚起の出力動作(例えば音声出力や画面表示など)を行う。
【0069】
なお、歩行者端末1は、携帯情報端末2に内蔵されたものとしてもよく、車載端末3は、カーナビゲーション装置4に内蔵されたものとしてもよい。
【0070】
また、歩行者端末1自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。また、車載端末3自身が注意喚起の出力動作を行うものとしてもよい。また、車載端末3が、運転者が所持する携帯情報端末2と通信を行い、運転者に対する注意喚起の出力動作を携帯情報端末2に行わせるようにしてもよい。
【0071】
路側機5は、交差点の信号機の近傍など、歩行者や車両が多く、歩行者端末1や車載端末3での歩車間通信の輻輳が発生しやすい地点に設置される。
【0072】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況について説明する。図2は、歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図である。
【0073】
本実施形態では、歩行者端末1および車載端末3において、メッセージを送信するための通信方式として、歩車間通信により歩行者端末1と車載端末3との間で直接メッセージを送受信する直接通信と、路側機5を介した無線LAN通信により歩行者端末1と車載端末3との間でメッセージを送受信する間接通信とのいずれかを選択することができる。
【0074】
なお、ITSでは、所定間隔(例えば100ms)で定期的にメッセージを送信するようにしており、直接通信および間接通信のいずれの通信方式でも、メッセージの送信タイミングは同一である。
【0075】
ここで、歩行者端末1や車載端末3が路側機5の通信圏外に位置する場合には、路側機5を介した間接通信ができないため、直接通信が選択される。一方、歩行者端末1や車載端末3が路側機5の通信圏内に入って間接通信が可能になると、直接通信から間接通信に切り替えられる。
【0076】
また、本実施形態では、歩行者端末1において、歩行者の状態に関する装置情報に応じて通信方式(直接通信または間接通信)を選択する。特に本実施形態では、歩行者が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。
【0077】
すなわち、図2(A-1)に示すように、歩行者が危険状態でない場合には、間接通信が選択され、無線LAN通信により路側機5を介して歩行者端末1から車載端末3にメッセージが送信される。一方、図2(A-2)に示すように、歩行者が危険状態となると、間接通信から直接通信に切り替えられ、歩車間通信により歩行者端末1から車載端末3にメッセージが直接送信される。
【0078】
ここで、本実施形態では、飛び出しや転倒などの歩行者の危険行動を検知した場合に、歩行者が危険状態と判定する。
【0079】
また、本実施形態では、歩行者が危険エリアに進入した場合に、歩行者が危険状態と判定する。なお、危険エリアとは、例えば、歩道と車道とを分離する防護構造物がない歩道における車道寄りのエリアや、事故が多発している危険な交差点の周辺エリアなど危険性の高い任意のエリアであり、予め地図情報に設定されているものとする。
【0080】
また、本実施形態では、歩行者端末1の所持者が自転車やバイクに乗車するなどして、歩行者が所定値(通常の歩行とみなされる速度の上限値)以上の速度で移動している場合に、歩行者が危険状態と判定する。
【0081】
また、本実施形態では、歩行者が、子供、高齢者、認知症患者など、危険行動をとる可能性が高い人物である場合に、歩行者が危険状態と判定する。
【0082】
また、本実施形態では、車載端末3において、車両の状態に応じて通信方式(直接通信または間接通信)を選択する。特に本実施形態では、車両が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。
【0083】
すなわち、図2(B-2)に示すように、車両が危険状態でない場合には、間接通信が選択され、無線LAN通信により路側機5を介して車載端末3から歩行者端末1にメッセージが送信される。一方、図2(B-1)に示すように、車両が危険状態となると、間接通信から直接通信に切り替えられ、歩車間通信により車載端末3から歩行者端末1にメッセージが直接送信される。
【0084】
ここで、本実施形態では、車両が所定値(通常の走行とみなされる速度の上限値)以上の速度で移動している場合に、車両が危険状態と判定する。
【0085】
また、本実施形態では、車両が急加速や急な方向転換や蛇行などの危険走行を行った場合に、車両が危険状態と判定する。
【0086】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。図3は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0087】
歩行者端末1は、測位部11と、状態検出部12と、歩車間通信部13(第1の通信部)と、無線LAN通信部14(第2の通信部)と、入出力部15と、制御部16と、記憶部17と、を備えている。
【0088】
測位部11は、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)などの衛星測位システムにより自装置の位置を測定して、自装置の位置情報を取得する。なお、携帯情報端末2が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0089】
状態検出部12は、自装置(自装置を所持する歩行者)の状態を検出するものであり、加速度センサ25と、方位センサ26と、を備えている。
【0090】
歩車間通信部13は、歩車間通信により、メッセージをブロードキャストで車載端末3に送信し、また、車載端末3から送信されるメッセージを受信する。この歩車間通信では、ITSを利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯を使用した無線通信が行われる。
【0091】
無線LAN通信部14は、WiFi(登録商標)などの無線LAN通信により、路側機5を介してメッセージを車載端末3に送信し、また、車載端末3から路側機5を介して送信されるメッセージを受信する。
【0092】
入出力部15は、携帯情報端末2との間で情報の入出力を行う。この入出力部15から出力される情報に基づいて、携帯情報端末2において、歩行者に対する注意喚起の動作が行われる。
【0093】
記憶部17は、地図情報や、制御部16を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。なお、地図情報は携帯情報端末2から取得するようにしてもよい。
【0094】
制御部16は、メッセージ制御部21と、通信方式選択部22と、衝突判定部23と、注意喚起制御部24と、を備えている。この制御部16は、プロセッサで構成され、制御部16の各部は、記憶部17に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0095】
メッセージ制御部21は、端末IDや位置情報などの歩行者情報を含むメッセージの送信を制御する。このとき、通信方式選択部22の選択結果に応じて、歩車間通信部13または無線LAN通信部14からメッセージを送信する。
【0096】
通信方式選択部22は、メッセージを車載端末3に送信する際の通信方式(直接通信または間接通信)を選択する。
【0097】
この通信方式選択部22では、まず、路側機5からブロードキャストで送信されるビーコン信号に基づいて、自装置が路側機5の通信圏内か否か、すなわち、間接通信が可能か否かを判定し、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には、直接通信を選択する。
【0098】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には、状態検出部12の検出結果など、自装置(自歩行者)が危険状態であるか否かを表す状態情報を取得して、その状態情報に基づいて、自歩行者が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。すなわち、自歩行者が危険状態である場合には、直接通信を選択し、自歩行者が危険状態でない場合には、間接通信を選択する。
【0099】
ここで、本実施形態では、状態検出部12の検出結果に基づいて、自歩行者が飛び出しや転倒などの危険行動をとったことを検知した場合に、自歩行者が危険状態と判定する。具体的には、加速度センサ25の検出結果から、自歩行者が急に走り出したこと(急加速)を検知し、また、方位センサ26の検出結果から、自歩行者が急に向きを変更したこと(急転回)を検知した場合に、飛び出しと判定する。また、加速度センサ25の検出結果から、急な下向きの動きを検知した場合に、転倒と判定する。
【0100】
また、本実施形態では、測位部11で取得した自歩行者の現在の位置情報と、記憶部17に記憶された地図情報とに基づいて、自歩行者が所定の危険エリア内に位置する場合に、歩行者が危険状態と判定する。
【0101】
また、本実施形態では、測位部11で取得した自歩行者の位置情報の推移状況から歩行者の移動速度を取得して、自歩行者が所定値(通常の歩行とみなされる速度の上限値)以上の速度で移動している場合に、歩行者が危険状態と判定する。
【0102】
また、本実施形態では、自歩行者の属性情報に基づいて、自歩行者が、子供、高齢者、認知症患者など、危険行動をとる可能性が高い人物である場合に、歩行者が危険状態と判定する。なお、危険行動をとる可能性が高い人物であるか否かの情報は、歩行者の属性情報として記憶部17に予め記憶させておけばよい。
【0103】
衝突判定部23は、測位部11で取得した自歩行者の位置情報と、車載端末3から受信したメッセージに含まれる車両の位置情報とに基づいて、自歩行者に車両が衝突する危険性があるか否かを判定する。
【0104】
注意喚起制御部24は、衝突判定部23の判定結果に応じて、自歩行者に対する注意喚起を実施する。本実施形態では、入出力部15を介して、注意喚起の指示を携帯情報端末2に出力して、この指示に応じて携帯情報端末2において、歩行者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や振動など)が行われる。
【0105】
次に、第1実施形態に係る車載端末3の概略構成について説明する。図4は、車載端末3の概略構成を示すブロック図である。
【0106】
車載端末3は、測位部31と、状態検出部32と、歩車間通信部33(第1の通信部)と、無線LAN通信部34(第2の通信部)と、入出力部35と、制御部36と、記憶部37と、を備えている。
【0107】
測位部31は、GPS、QZSSなどの衛星測位システムにより自装置の位置を測定して、自装置の位置情報を取得する。なお、カーナビゲーション装置4が有する測位機能を利用して、自装置の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0108】
状態検出部32は、自装置(自装置が搭載された車両)の状態を検出するものであり、加速度センサ45と、方位センサ46と、を備えている。
【0109】
歩車間通信部33は、歩車間通信により、メッセージをブロードキャストで歩行者端末1に送信し、また、歩行者端末1から送信されるメッセージを受信する。この歩車間通信では、ITSを利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯を使用した無線通信が行われる。
【0110】
無線LAN通信部34は、WiFi(登録商標)などの無線LAN通信により、メッセージを路側機5を介して歩行者端末1に送信し、また、歩行者端末1から路側機5を介して送信されるメッセージを受信する。
【0111】
入出力部35は、カーナビゲーション装置4との間で情報の入出力を行う。この入出力部35から出力される情報に基づいて、カーナビゲーション装置4において、運転者に対する注意喚起の動作が行われる。
【0112】
記憶部37は、地図情報や、制御部36を構成するプロセッサで実行されるプログラムを記憶する。なお、地図情報はカーナビゲーション装置4から取得するようにしてもよい。
【0113】
制御部36は、メッセージ制御部41と、通信方式選択部42と、衝突判定部43と、注意喚起制御部44と、を備えている。この制御部36は、プロセッサで構成され、制御部36の各部は、記憶部37に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0114】
メッセージ制御部41は、端末IDや位置情報などの車両情報を含むメッセージの送信を制御する。このとき、通信方式選択部42の選択結果に応じて、歩車間通信部33または無線LAN通信部34からメッセージを送信する。
【0115】
通信方式選択部42は、メッセージを歩行者端末1に送信する際の通信方式(直接通信または間接通信)を選択する。
【0116】
この通信方式選択部42では、まず、路側機5からブロードキャストで送信されるビーコン信号に基づいて、自装置が路側機5の通信圏内か否か、すなわち、間接通信が可能か否かを判定し、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には、直接通信を選択する。
【0117】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には、状態検出部32の検出結果など、自装置(自車両)が危険状態であるか否かを表す状態情報を取得して、その状態情報に基づいて、自車両が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。すなわち、自車両が危険状態である場合には、直接通信を選択し、自車両が危険状態でない場合には、間接通信を選択する。
【0118】
ここで、本実施形態では、測位部31で取得した自車両の位置情報の推移状況から自車両の移動速度を取得して、自車両が所定値(通常の走行とみなされる速度の上限値)以上の速度で移動している場合に、自車両が危険状態と判定する。
【0119】
また、本実施形態では、状態検出部32の検出結果に基づいて、自車両が急加速や急転回(急な方向転換)や蛇行などの危険走行を行ったことを検知した場合に、自車両が危険状態と判定する。具体的には、加速度センサ45の検出結果から、自車両の急加速を検知し、また、方位センサ46の検出結果から、自車両の急転回や蛇行を検知する。
【0120】
衝突判定部43は、測位部31で取得した自車両の位置情報と、歩行者端末1から受信したメッセージに含まれる歩行者の位置情報とに基づいて、歩行者に自車両が衝突する危険性があるか否かを判定する。
【0121】
注意喚起制御部44は、衝突判定部43の判定結果に応じて、自車両の運転者に対する注意喚起を行う。本実施形態では、入出力部35を介して、注意喚起の指示をカーナビゲーション装置4に出力して、この指示に応じてカーナビゲーション装置4において、運転者に対する注意喚起の出力動作(例えば音声出力や画面表示など)が行われる。
【0122】
次に、第1実施形態に係る路側機5の概略構成について説明する。図5は、路側機5の概略構成を示すブロック図である。
【0123】
路側機5は、無線LAN通信部51と、制御部52と、記憶部53と、を備えている。
【0124】
無線LAN通信部51は、WiFi(登録商標)などの無線LAN通信により、歩行者端末1や車載端末3から送信されるメッセージを受信し、また、受信したメッセージをブロードキャストで歩行者端末1や車載端末3に送信する。
【0125】
記憶部53は、制御部52を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。
【0126】
制御部52は、メッセージ制御部61を備えている。この制御部52は、プロセッサで構成され、メッセージ制御部61は、記憶部53に記憶されたプログラムをプロセッサで実行することで実現される。
【0127】
メッセージ制御部61は、歩行者端末1や車載端末3から送信されるメッセージを無線LAN通信部51で受信すると、そのメッセージを無線LAN通信部51から歩行者端末1や車載端末3に送信する。
【0128】
ところで、路側機5は、歩行者端末1や車載端末3から送信されるメッセージを受信すると、その都度、受信したメッセージを送信すればよいが、受信した複数のメッセージを一括して送信するようにしてもよい。すなわち、受信した複数のメッセージの各々に含まれる歩行者情報や車両情報を1つのメッセージに格納して送信する。
【0129】
また、受信したメッセージの内容に応じて、受信した順番と異なる順番でメッセージを送信するようにしてもよい。例えば、受信したメッセージに含まれる位置情報に基づいて、送信元(歩行者端末1や車載端末3)から路側機5までの距離を算出して、路側機5に近い送信元のメッセージを優先して、路側機5に近い送信元のメッセージから順番に送信する。また、送信元の端末種別(歩行者端末1および車載端末3)に優先順位を設定して、優先順位の高い送信元のメッセージを先に送信する。また、受信したメッセージに含まれる位置情報に基づいて、送信元の位置が変化していない場合には、受信したメッセージを送信しないようにする。
【0130】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1がメッセージを送信する場合の動作手順について説明する。図6は、歩行者端末1、車載端末3および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
【0131】
歩行者端末1では、まず、測位部11において、自装置(自歩行者)の位置情報を取得する(ST101)。そして、メッセージ制御部21において、自歩行者の位置情報に基づいて、歩行者情報を送信する状況か否か、具体的には自歩行者が屋内などの安全地帯にいるか否かを判定する(ST102)。
【0132】
ここで、歩行者情報を送信する状況であれば(ST102でYes)、次に、通信方式選択部22において、メッセージを送信する際の通信方式(直接通信または間接通信)を選択する(ST103)。
【0133】
そして、メッセージ制御部21において、通信方式選択部22で選択された通信方式が直接通信であれば(ST104でYes)、歩行者情報を含むメッセージを、歩車間通信部13から車載端末3に送信する(ST105)。一方、通信方式選択部22で選択された通信方式が間接通信であれば(ST104でNo)、歩行者情報を含むメッセージを、無線LAN通信部14から路側機5に送信する(ST106)。
【0134】
路側機5では、メッセージ制御部61において、歩行者端末1から送信されるメッセージを無線LAN通信部51で受信すると(ST201)、そのメッセージを無線LAN通信部51から車載端末3に送信する(ST202)。
【0135】
車載端末3では、歩行者端末1から送信されるメッセージを歩車間通信部33で受信し、または、路側機5から送信されるメッセージを無線LAN通信部34で受信すると(ST301)、衝突判定部43において、メッセージに含まれる歩行者の位置情報などに基づいて、歩行者に自車両が衝突する危険性があるか否かの衝突判定を行う(ST302)。
【0136】
そして、注意喚起制御部44において、衝突判定部43の判定結果に基づいて、運転手に対する注意喚起が必要か否かを判定する(ST303)。ここで、運転手に対する注意喚起が必要である場合には(ST303でYes)、運転者に対する注意喚起を実施する(ST304)。
【0137】
次に、第1実施形態に係る車載端末3がメッセージを送信する場合の動作手順について説明する。図7は、歩行者端末1、車載端末3および路側機5の動作手順を示すフロー図である。
【0138】
車載端末3では、車両のエンジンが起動されたときに、通信方式選択部42において、メッセージを送信する際の通信方式(直接通信または間接通信)を選択する(ST401)。
【0139】
そして、メッセージ制御部41において、通信方式選択部42で選択された通信方式が直接通信であれば(ST402でYes)、車両情報を含むメッセージを、歩車間通信部33から歩行者端末1に送信する(ST403)。一方、通信方式選択部42で選択された通信方式が間接通信であれば(ST402でNo)、車両情報を含むメッセージを、無線LAN通信部34から路側機5に送信する(ST404)。
【0140】
路側機5では、メッセージ制御部61において、車載端末3から送信されるメッセージを無線LAN通信部51で受信すると(ST501)、そのメッセージを無線LAN通信部51から歩行者端末1に送信する(ST502)。
【0141】
歩行者端末1では、車載端末3から送信されるメッセージを歩車間通信部13で受信するか、または、路側機5から送信されるメッセージを無線LAN通信部14で受信すると(ST601)、衝突判定部23において、メッセージに含まれる車両の位置情報などに基づいて、自歩行者に車両が衝突する危険性があるか否かの衝突判定を行う(ST602)。
【0142】
そして、注意喚起制御部44において、衝突判定部23の判定結果に基づいて、歩行者に対する注意喚起が必要か否かを判定する(ST603)。ここで、歩行者に対する注意喚起が必要である場合には(ST603でYes)、歩行者に対する注意喚起を実施する(ST604)。
【0143】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3で行われる通信方式選択の処理について説明する。図8は、歩行者端末1で行われる通信方式選択(図6のST103)、および車載端末3で行われる通信方式選択(図7のST403)の手順を示すフロー図である。
【0144】
図8(A)に示すように、歩行者端末1の通信方式選択部22では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部14で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST701)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST701でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0145】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST701でYes)、次に、状態検出部12などから自装置(自歩行者)の状態情報を取得する(ST702)。そして、自歩行者の状態情報に基づいて、自歩行者が危険状態か否かを判定する(ST703)。
【0146】
ここで、歩行者端末1の加速度センサ25の検出結果から、自歩行者が急に走り出したこと(急加速)や、方位センサ26の検出結果から、自歩行者が急に向きを変更したこと(急転回)を検知した場合に、危険状態と判定する。また、加速度センサ25の検出結果から、急な下向きの動きを検知した場合に、危険状態と判定する。自歩行者が危険状態である場合には(ST703でYes)、直接通信を選択する(ST704)。一方、歩行者が危険状態でない場合には(ST703でNo)、間接通信を選択する(ST705)。
【0147】
図8(B)に示すように、車載端末3の通信方式選択部42では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部34で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST801)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST801でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0148】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST801でYes)、次に、状態検出部32などから自装置(自車両)の状態情報を取得する(ST802)。そして、自車両の状態情報に基づいて、自車両が危険状態か否かを判定する(ST803)。
【0149】
ここで、車載端末3の加速度センサ45の検出結果から、自車両の急加速を検知したことや、方位センサ46の検出結果から、自車両の急転回や蛇行を検知した場合に、危険状態と判定する。自車両が危険状態である場合には(ST803でYes)、直接通信を選択する(ST804)。一方、自車両が危険状態でない場合には(ST803でNo)、間接通信を選択する(ST805)。
【0150】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図9図10は、第2実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図である。
【0151】
第1実施形態では、歩行者や車両が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式(直接通信または間接通信)を選択するようにしたが、本実施形態では、歩行者や車両が危険状態であるか否かの判定に加えて、歩行者や車両が特定エリア内に位置するか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。すなわち、歩行者や車両が危険性の低い特定エリアにいない場合は直接通信を選択し、特定エリアに入ると、状態情報から自装置が危険状態でなければ、直接通信から間接通信に切り替える。
【0152】
これにより、特定エリア内に歩行者端末1および車載端末3が多数存在する場合でも、危険状態にない場合は間接通信を行うので、直接通信(歩車間通信)の輻輳を抑えることができる。
【0153】
本実施形態では、比較的危険性が低いエリアを特定エリアとする。例えば、図9(A)に示すように、ガードレールや植樹帯などの防護構造物で歩道と車道とが分離されている道路では、交差点でも危険性が低い。そこで、本実施形態では、このような所定の条件を満たし危険性が低い交差点の周辺エリアを特定エリアとし、このような交差点の周辺エリア内に歩行者や車両が入ると、直接通信から間接通信に切り替える。
【0154】
また、踏切の周辺では、車両が踏切で一旦停止することから、車両の移動速度が遅いため、危険性が低い。そこで、本実施形態では、図9(B)に示すように、踏切の周辺エリアを特定エリアとし、踏切の周辺エリア内に歩行者や車両が入ると、直接通信から間接通信に切り替える。
【0155】
また、バス停の周辺では、バスに乗車しようとしている人が、危険性が高い人(飛び出しや道路横断をしようとしている人)と誤認識されることが懸念される。このため、バスに乗車したい人は、そのことを示す情報を、バス停周辺に設置される路側機5に送信するようにし、バス停周辺に設置された路側機5は、バスに乗車しようとしている人かそうでない人かを識別し、バスに乗車しようとしている人を除いた飛び出しや道路横断をしようとしている人の歩行者情報のみを周辺の車両に送信するようにする。このように、バス停の周辺では、路側機5を介した間接通信とすることで、バスに乗車しようとしている人が飛び出しや道路横断をしていると誤認識されることを回避できる。そこで、本実施形態では、図10に示すように、バス停の周辺エリアを特定エリアとし、バス停の周辺エリア内に入ると、歩行者や車両が直接通信から間接通信に切り替える。なお、バス停付近に停車する車両が存在する場合に、路側機5からこの停車車両に対して警告することにより、バスがバス停に停車できなくなるという問題を回避することも可能となる。
【0156】
次に、第2実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択(図6のST103)の手順について説明する。図11は、歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0157】
歩行者端末1の通信方式選択部22では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部14で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST701)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST701でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0158】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST701でYes)、次に、測位部11から自歩行者の位置情報を取得する(ST711)。そして、自歩行者の位置情報と、記憶部17に記憶された地図情報とに基づいて、自歩行者が特定エリア内に位置するか否かを判定する(ST712)。ここで、自歩行者が、特定エリアに位置しない場合には(ST712でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0159】
一方、自歩行者が特定エリアに位置する場合には(ST712でYes)、次に、第1実施形態と同様に、状態検出部12などから自歩行者の状態情報を取得する(ST702)。そして、自歩行者の状態情報に基づいて、自歩行者が危険状態か否かを判定する(ST703)。
【0160】
ここで、自歩行者が危険状態である場合には(ST703でYes)、直接通信を選択する(ST704)。一方、歩行者が危険状態でない場合には(ST703でNo)、間接通信を選択する(ST705)。
【0161】
なお、図11には、歩行者端末1の通信方式選択部22で行われる処理の手順を示したが、車載端末3の通信方式選択部42でも、これと同様の手順で通信方式選択の処理が行われる。
【0162】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図12は、第3実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図である。
【0163】
第2実施形態では、歩行者や車両が特定エリア内に位置する場合に、間接通信を選択するようにしたが、本実施形態では、歩行者や車両が特定エリア内に位置し、かつ、歩行者や車両の危険性が低下する特定条件が成立する場合に、特定エリア内に位置する歩行者端末1および車載端末3で間接通信を選択するようにする。特に本実施形態では、特定エリアを踏切の周辺エリアとし、特定条件として遮断機が通行許可状態であるか否かに応じて通信方式を選択する。
【0164】
具体的には、図12(A)に示すように、歩行者や車両が特定エリア内に位置していても、遮断機が通行許可状態(遮断機が上がった状態)である場合には、歩行者端末1および車載端末3は、直接通信を選択する。一方、図12(B)に示すように、遮断機が通行禁止状態(遮断機が降りた状態)となると、踏切の周辺エリア内に位置する歩行者端末1および車載端末3は、直接通信から間接通信に切り替える。
【0165】
これにより、遮断機が通行禁止状態である場合には、車両が踏切で一旦停止することから、車両の移動速度が遅く、踏切の周辺エリアは危険性が低くなるため、踏切の周辺エリア内に位置する端末装置を間接通信としても、安全性の低下を避けることができる。
【0166】
また、本実施形態では、路側機5が、遮断機を制御する踏切制御装置7から遮断機の動作情報を取得して、その遮断機の動作情報をメッセージに付加して路側機5から歩行者端末1や車載端末3に送信することで、歩行者端末1や車載端末3が遮断機の動作情報を取得する。
【0167】
次に、第3実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択(図6のST103)の手順について説明する。図13は、歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0168】
歩行者端末1の通信方式選択部22では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部14で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST701)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST701でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0169】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST701でYes)、次に、測位部11から自歩行者の位置情報を取得する(ST711)。そして、自歩行者の位置情報と、記憶部17に記憶された地図情報とに基づいて、自歩行者が踏切の周辺エリア内に位置するか否かを判定する(ST721)。ここで、自歩行者が踏切の周辺エリア内に位置しない場合には(ST721でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0170】
一方、自装置が踏切の周辺エリア内に位置する場合には(ST721でYes)、次に、踏切制御装置7から遮断機の動作情報を取得する(ST722)。
【0171】
次に、遮断機の動作情報に基づいて、遮断機が通行禁止状態であるか否かを判定する(ST723)。ここで、遮断機が通行禁止状態でない、すなわち、遮断機が通行許可状態である場合には(ST723でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0172】
一方、遮断機が通行禁止状態である場合には(ST723でYes)、次に、第1実施形態と同様に、状態検出部32などから自歩行者の状態情報を取得する(ST702)。そして、自歩行者の状態情報に基づいて、自歩行者が危険状態か否かを判定する(ST703)。
【0173】
ここで、自歩行者が危険状態である場合には(ST703でYes)、直接通信を選択する(ST704)。一方、自歩行者が危険状態でない場合には(ST703でNo)、間接通信を選択する(ST705)。
【0174】
なお、図13には、歩行者端末1の通信方式選択部22で行われる処理の手順を示したが、車載端末3の通信方式選択部42でも、これと同様の手順で通信方式選択の処理が行われる。
【0175】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図14は、第4実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図である。
【0176】
第3実施形態では、歩行者や車両が危険性の低い踏切の周辺エリアに位置し、かつ、遮断機が通行禁止状態である場合に、踏切の周辺エリア内に位置する歩行者端末1および車載端末3で間接通信を選択するようにしたが、本実施形態では、特定車両が停車場に接近した場合に、停車場の周辺の特定エリア内に位置する歩行者端末1および車載端末3で間接通信を選択する。特に本実施形態では、特定車両をバス(路線バス)とし、停車場をバス停として説明する。
【0177】
具体的には、図14(A)に示すように、バスがバス停から所定距離以内にいない場合には、バス停の周辺エリア内に位置する歩行者端末1および車載端末3では、直接通信を選択する。一方、図14(B)に示すように、バスがバス停から所定距離以内まで近づくと、バス停の周辺エリア内に位置する歩行者端末1および車載端末3では、直接通信から間接通信に切り替える。なお、バスがバス停から発車してバス停から所定距離以上遠ざかると、直接通信に戻す。
【0178】
なお、バスの車載端末3は、常時、直接通信でメッセージを送信する。
【0179】
これにより、バスの車載端末3の直接通信を優先して、バス停の周辺エリア内に位置する歩行者端末1および車載端末3の直接通信を制限することで、直接通信の輻輳を抑えるとともに、バスの接近を迅速にかつ確実にバス停の周辺の歩行者や車両の運転者に通知することができる。特に、バス停の周辺エリアに停車する車両の運転者にバスの接近を通知することで、車両をバス停の周辺エリアから速やかに移動させるように案内することができる。
【0180】
また、本実施形態では、自車両がバスであることを表す情報を属性情報としてメッセージに付加して送信する。これにより、バス停に近づく車両がバスであるか否かを認識することができる。
【0181】
次に、第4実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択(図7のST401)の手順について説明する。図15は、車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0182】
車載端末3の通信方式選択部42では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部34で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST801)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST801でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0183】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST801でYes)、次に、測位部31から自車両の位置情報を取得する(ST811)。そして、自車両の位置情報と、記憶部37に記憶された地図情報とに基づいて、自車両がバス停の周辺エリア内に位置するか否かを判定する(ST812)。ここで、自車両がバス停の周辺エリア内に位置しない場合には(ST812でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0184】
一方、自車両がバス停の周辺エリア内に位置する場合には(ST812でYes)、次に、受信したメッセージに含まれる他車両の属性情報および位置情報を取得する(ST813)。そして、属性情報および位置情報と、記憶部37に記憶された地図情報とに基づいて、バスがバス停から所定距離以内まで近づいているか否かを判定する(ST814)。ここで、バスがバス停から所定距離以内まで近づいていない場合には(ST814でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0185】
一方、バスがバス停から所定距離以内まで近づいている場合には(ST814でYes)、次に、第1実施形態と同様に、状態検出部32などから自車両の状態情報を取得する(ST802)。そして、自車両の状態情報に基づいて、自車両が危険状態か否かを判定する(ST803)。
【0186】
ここで、自車両が危険状態である場合には(ST803でYes)、直接通信を選択する(ST804)。一方、自車両が危険状態でない場合には(ST803でNo)、間接通信を選択する(ST805)。
【0187】
なお、図15には、車載端末3の通信方式選択部42で行われる処理の手順を示したが、歩行者端末1の通信方式選択部22でも、これと同様の手順で通信方式選択の処理が行われる。
【0188】
また、本実施形態では、バス(路線バス)を特定車両としたが、その他の乗合自動車、例えばタクシーを特定車両としてもよい。この場合、タクシー乗り場が特定車両の停車場(乗降場)となる。
【0189】
また、本実施形態では、バスの位置情報と、バス停の位置情報を含む地図情報とに基づいて、バスがバス停から所定距離以内まで近づいているか否かを判定するようにしたが、バス停の周辺エリアに位置する歩行者端末1や車載端末3において、歩車間通信の通信圏内にバスが入って、バスの車載端末3から送信されるメッセージを受信できることで、バスがバス停から所定距離以内まで近づいているものと判定するようにしてもよい。
【0190】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図16は、第5実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図である。
【0191】
第1実施形態では、歩行者が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式(直接通信または間接通信)を選択するようにしたが、本実施形態では、歩行者が危険状態であるか否かの判定に加えて、周辺に存在する他の歩行者端末1が既に直接通信を行っているか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。すなわち、他の歩行者端末1が既に直接通信を行っている場合には、間接通信を選択し、既に直接通信を行っている他の歩行者端末1がいない場合には、直接通信を選択する。
【0192】
これにより、先に直接通信を開始した歩行者端末1を優先して、他の歩行者端末1の直接通信を制限することで、直接通信の輻輳を抑えることができる。
【0193】
また、本実施形態では、他の歩行者端末1から送信されるメッセージに基づいて、他の歩行者端末1が既に直接通信を行っているか否かを判定する。歩行者端末1から直接通信で車載端末3にメッセージを送信する際には、メッセージがブロードキャストで送信されるため、周辺に存在する他の歩行者端末1はメッセージを受信することができる。
【0194】
また、直接通信を行う歩行者端末1から、直接通信であることを表す通信方式情報をメッセージに付加して送信することで、他の歩行者端末1は、直接通信で送信されたメッセージであることを認識することができる。
【0195】
次に、第5実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択(図6のST103)の手順について説明する。図17は、歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0196】
歩行者端末1の通信方式選択部22では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部34で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST701)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST701でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0197】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST701でYes)、次に、所定時間内に受信したメッセージに含まれる通信方式情報を取得する(ST731)。そして、通信方式情報に基づいて、他の歩行者端末1から直接通信で送信されたメッセージを所定時間内に受信したか否かを判定する(ST732)。ここで、直接通信で送信されたメッセージを所定時間内に受信していない場合には(ST732でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0198】
一方、直接通信で送信されたメッセージを所定時間内に受信している場合には(ST732でYes)、次に、状態検出部32などから自歩行者の状態情報を取得する(ST702)。そして、自歩行者の状態情報に基づいて、自歩行者が危険状態か否かを判定する(ST703)。
【0199】
ここで、自歩行者が危険状態である場合には(ST703でYes)、直接通信を選択する(ST704)。一方、自歩行者が危険状態でない場合には(ST703でNo)、間接通信を選択する(ST705)。
【0200】
なお、本実施形態では、歩行者端末1が、直接通信を行う他の歩行者端末1からのメッセージを所定時間内に受信した場合に、間接通信を選択するようにしたが、直接通信を行う他の歩行者端末1を発見してから所定時間が経過するまで間接通信を継続し、所定時間が経過すると、直接通信を制限する状態を解除して直接通信に戻すようにしてもよい。
【0201】
また、直接通信を行う歩行者端末1が、直接通信を所定時間行わないように指示する通信方式指示情報をメッセージに付加して送信し、その通信方式指示情報を含むメッセージを他の歩行者端末1が受信すると、その歩行者端末1が、直接通信を所定時間行わないようにしてもよい。
【0202】
また、図17には、歩行者端末1の通信方式選択部22で行われる処理の手順を示したが、車載端末3の通信方式選択部42でも、これと同様の手順で通信方式選択の処理が行われる。
【0203】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図18は、第6実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図である。
【0204】
第1実施形態では、歩行者や車両が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式(直接通信または間接通信)を選択するようにしたが、本実施形態では、歩行者や車両が危険状態であるか否かの判定に加えて、自装置の所定距離以内に特定車両が存在するか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。すなわち、自装置の所定距離以内に特定車両を発見すると、直接通信から間接通信に切り替え、自装置の所定距離以内の特定車両がいなくなると、直接通信に戻す。
【0205】
なお、特定車両は、常時、直接通信でメッセージを送信する。
【0206】
これにより、特定車両に搭載された車載端末3の直接通信を優先して、特定車両の周辺に存在する歩行者端末1や車載端末3の直接通信を制限することで、直接通信の輻輳を抑えるとともに、特定車両の存在を迅速にかつ確実に周辺の歩行者や車両の運転者に通知することができる。
【0207】
特に、本実施形態では、救急車や消防車などの緊急車両を特定車両とする。また、本実施形態では、緊急車両の車載端末3は、常時、直接通信でメッセージを送信する。また、緊急車両の車載端末3は、緊急車両であることを表す属性情報をメッセージに付加して送信する。これにより、歩行者端末1が、緊急車両であることを識別することができる。また、本実施形態では、緊急車両の車載端末3から受信したメッセージに含まれる緊急車両の位置情報と、自歩行者の位置情報とに基づいて、緊急車両と自装置との距離を算出して、自装置の所定距離以内に特定車両が存在するか否かを判定する。なお、歩行者端末1は、自歩行者が危険行動の多い人物である場合には、事前に飛び出し等を行わないように警告するようにするとよい。また、所定距離は歩行者によって異なるようにしてもよい。
【0208】
次に、第6実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択(図6のST103)の手順について説明する。図19は、歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0209】
歩行者端末1の通信方式選択部22では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部14で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST701)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST701でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0210】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST701でYes)、次に、車載端末3から受信したメッセージに含まれる位置情報および属性情報を取得する(ST741)。そして、車載端末3の位置情報および属性情報に基づいて、自歩行者の所定距離以内に緊急車両が存在するか否かを判定する(ST742)。ここで、自歩行者の所定距離以内に緊急車両が存在しない場合には(ST742でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0211】
一方、自歩行者の所定距離以内に緊急車両が存在する場合には(ST742でYes)、次に、状態検出部12などから自歩行者の状態情報を取得する(ST702)。そして、自歩行者の状態情報に基づいて、自歩行者が危険状態か否かを判定する(ST703)。
【0212】
ここで、自歩行者が危険状態である場合には(ST703でYes)、直接通信を選択する(ST704)。一方、歩行者が危険状態でない場合には(ST703でNo)、間接通信を選択する(ST705)。
【0213】
なお、図19には、歩行者端末1の通信方式選択部22で行われる処理の手順を示したが、車載端末3の通信方式選択部42でも、これと同様の手順で通信方式選択の処理が行われる。
【0214】
また、本実施形態では、緊急車両の位置情報と自装置の位置情報とに基づいて、自装置の所定距離以内に緊急車両が存在するか否かを判定するようにしたが、歩行者端末1や車載端末3において、歩車間通信の通信圏内に緊急車両が入って、緊急車両の車載端末3から送信されるメッセージを受信できることで、自装置の所定距離以内に緊急車両が存在するものと判定するようにしてもよい。
【0215】
また、本実施形態では、自装置の所定距離以内に特定車両が存在する場合に間接通信を選択し、自装置の所定距離以内の特定車両がいなくなると、直接通信に戻すようにしたが、緊急車両を発見してから所定時間が経過するまで間接通信を継続し、所定時間が経過すると、直接通信を制限する状態を解除して直接通信に戻すようにしてもよい。
【0216】
また、緊急車両の車載端末3が、直接通信を所定時間行わないように指示する通信方式指示情報をメッセージに付加して送信し、その通信方式指示情報を含むメッセージを歩行者端末1や他の車載端末3が受信すると、その歩行者端末1や他の車載端末3が、直接通信を所定時間行わないようにしてもよい。
【0217】
また、緊急車両が自装置の所定距離以内まで近づいている場合に間接通信を選択し、自装置の近傍を緊急車両が通り過ぎると直接通信に戻すようにしてもよい。
【0218】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図20は、第7実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送信状況を示す説明図である。図21は、優先度テーブルの登録内容を示す説明図である。
【0219】
前記の実施形態では、歩行者や車両が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式(直接通信または間接通信)を選択するようにしたが、本実施形態では、歩行者や車両が危険状態であるか否かの判定に加えて、自装置の周辺に存在する移動体の種別(歩行者、自転車、シニアカー、自動車、バイクなど)に基づいて、通信方式を選択する。すなわち、自装置の周辺に歩行者が存在するか、また、自装置の周辺にどのような種別の車両が存在するかに応じて、相対的に通信方式を選択する。
【0220】
特に本実施形態では、予め直接通信の優先度を移動体の種別ごとに設定しておき、車載端末3において、自車両の優先度と、自車両の周辺に存在する歩行者および他車両の優先度とを比較して、自装置の通信方式を選択する。具体的には、自分より優先度の高い端末があると、間接通信を選択し、自分より優先度の低い端末があると、直接通信を選択する。
【0221】
ここで、移動速度が速いと、危険性が高い。また、移動速度が速いと、路側機5の通信エリアを短時間で通過するため、間接通信でメッセージを送信する機会が少なく、間接通信に切り替える利点があまりない。そこで、本実施形態では、移動速度が速いほど優先度を高く設定して、移動速度が速い端末では直接通信を選択し、移動速度が遅い端末では間接通信を選択するようにする。
【0222】
具体的には、車載端末3の通信方式選択部42において、図21に示す優先度テーブルと、自装置および周辺に存在する歩行者端末1および車載端末3の属性情報とに基づいて、通信方式を選択する。なお、優先度テーブルは記憶部37に記憶されている。また、属性情報をメッセージに付加して送信することにより、車載端末3では、自装置の周辺に歩行者が存在するか、また、自装置の周辺にどのような種別の車両が存在するかを判別することができる。
【0223】
優先度テーブルには、端末属性(歩行者、自転車、シニアカー、自動車、バイク)に応じた優先度が登録されており、優先度テーブルに基づいて、自装置の端末属性から、自装置の優先度を取得し、周辺に存在する歩行者端末1および車載端末3の端末属性から、歩行者端末1および車載端末3の優先度を取得する。自車両の優先度と、自車両の周辺に存在する他車両の優先度とを比較して、自装置の通信方式を選択する。
【0224】
ここで、自動車やバイクなどの高速車両は、優先度が最も高い。したがって、高速車両の車載端末3では、常時、直接通信を選択する。
【0225】
一方、シニアカーや自転車などの低速車両は、優先度が歩行者より高く、高速車両より低い。したがって、低速車両の車載端末3では、周辺に歩行者が存在する場合には、直接通信とする。また、周辺に歩行者が存在せず、かつ、周辺に自動車やバイクなどの高速車両が存在する場合には、間接通信を選択し、危険状態になると、直接通信を選択する。
【0226】
なお、歩行者は、優先度が最も低い。したがって、歩行者端末1では、通常状態では常時、間接通信とし、危険状態になると、直接通信を選択する。
【0227】
例えば、図20(A)に示すように、歩行者がいる場合には、歩行者端末1では間接通信が選択され、自転車やシニアカーやバイクや自動車の車載端末3では直接通信が選択される。一方、図20(B)に示すように、歩行者がいない場合には、自転車やシニアカーの車載端末3では間接通信が選択され、バイクや自動車の車載端末3では直接通信が選択される。
【0228】
このように本実施形態では、移動速度が速く危険性が高い車両の車載端末3の直接通信を優先して、他の車載端末3や歩行者端末1の直接通信を制限することで、直接通信の輻輳を抑えるとともに、移動速度が速く危険性が高い車両の存在を迅速にかつ確実に周辺の歩行者や車両の運転者に通知することができる。
【0229】
なお、歩行者端末1の所持者が自転車やシニアカーに乗車する場合がある。この場合、自転車やシニアカーに乗車していることを表す情報を属性情報としてメッセージに付加して送信すればよい。そして、歩行者端末1では、周辺に歩行者が存在する場合には、直接通信とし、周辺に歩行者が存在せず、バイクや自動車などの高速車両が存在する場合には、間接通信とする。
【0230】
次に、第7実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択(図7のST401)の手順について説明する。図22は、車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0231】
車載端末3の通信方式選択部42では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部34で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST801)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST801でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0232】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST801でYes)、次に、記憶部37に記憶された自車両の車両属性情報を取得する(ST821)。そして、自車両の車両属性情報に基づいて、自車両が、自動車やバイクなどの高速車両であるか否かを判定する(ST822)。ここで、自車両が高速車両である場合には(ST822でYes)、直接通信を選択する(ST804)。
【0233】
一方、自車両が、高速車両でない、すなわち、シニアカーや自転車などの低速車両である場合には(ST822でNo)、次に、歩行者端末1や他の車載端末3から受信したメッセージに含まれる属性情報を取得する(ST823)。そして、自車両の周辺に歩行者が存在するか否かを判定する(ST824)。ここで、自車両の周辺に歩行者が存在する場合には(ST824でYes)、直接通信を選択する(ST804)。
【0234】
一方、自車両の周辺に歩行者が存在しない場合には(ST824でNo)、次に、状態検出部32などから自車両の状態情報を取得する(ST802)。そして、自車両の状態情報に基づいて、自車両が危険状態か否かを判定する(ST803)。
【0235】
ここで、自車両が危険状態である場合には(ST803でYes)、直接通信を選択する(ST804)。一方、自車両が危険状態でない場合には(ST803でNo)、間接通信を選択する(ST805)。
【0236】
なお、歩行者端末1では、図8(A)に示す例と同様に、通信方式選択部22において、危険状態であれば直接通信を選択し、危険状態でなければ間接通信を選択する。
【0237】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
【0238】
前記の実施形態では、歩行者端末1や車載端末3が個別に、自装置の通信方式(直接通信または間接通信)を選択するようにしたが、本実施形態では、路側機5が、周辺に存在する歩行者端末1や車載端末3の通信方式を管理する。すなわち、路側機5が、通信方式の選択に必要な装置情報を歩行者端末1や車載端末3から収集して、歩行者端末1や車載端末3の通信方式を決定して、決定した通信方式を歩行者端末1や車載端末3に通知して、歩行者端末1や車載端末3において、路側機5が決定した通信方式でメッセージを送信させる。
【0239】
次に、第8実施形態に係る路側機5の概略構成について説明する。図23は、路側機5の概略構成を示すブロック図である。
【0240】
路側機5は、第1実施形態(図5参照)と同様に、無線LAN通信部51と、制御部52と、記憶部53と、を備えている。
【0241】
無線LAN通信部51は、WiFi(登録商標)などの無線LAN通信により、歩行者端末1や車載端末3から送信されるメッセージを受信し、また、受信したメッセージをブロードキャストで歩行者端末1や車載端末3に送信する。なお、歩行者端末1や車載端末3は、通信方式の選択に必要な状態情報、すなわち、状態検出部12,32の検出結果、位置情報および属性情報を含むメッセージを送信する。
【0242】
記憶部53は、制御部52を構成するプロセッサで実行されるプログラムなどを記憶する。また、記憶部53は、歩行者端末1や車載端末3から受信したメッセージに含まれる状態情報を記憶する。
【0243】
制御部52は、メッセージ制御部61と、通信方式選択部62と、を備えている。
【0244】
通信方式選択部62は、周辺の歩行者および車両の状態情報を記憶部53から取得して、その状態情報と、記憶部53に記憶された地図情報とに基づいて、周辺の歩行者および車両が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて通信方式を選択する。
【0245】
メッセージ制御部61は、歩行者端末1や車載端末3から送信されるメッセージを無線LAN通信部51で受信すると、そのメッセージを無線LAN通信部51から歩行者端末1や車載端末3に送信する。また、メッセージ制御部61は、通信方式選択部62で選択した通信方式でメッセージを送信するように指示する通信方式指示情報を含むメッセージを、歩行者端末1や車載端末3に送信する。
【0246】
歩行者端末1および車載端末3では、通信方式指示情報を含むメッセージを路側機5から受信すると、通信方式指示情報に基づいて、指示された通信方式でメッセージを送信する。すなわち、歩行者端末1および車載端末3は、路側機5から直接通信が指示された場合は、歩車間通信部によりメッセージを周辺の歩行者端末1および車載端末3に送信し、間接通信が指示された場合は、無線LAN通信部によりメッセージを路側機5に送信する。
【0247】
なお、本実施形態では、第1実施形態において歩行者端末1や車載端末3で行うようにした状態情報に基づく通信方式選択の処理を、路側機5で行うようにしたが、その他の実施形態において歩行者端末1や車載端末3で行うようにした通信方式選択の処理を、路側機5で行うようにしてもよい。特に、通信方式選択の処理を路側機5で行う構成は、第2,第3,第4実施形態のように、特定エリア(踏切の周辺エリアやバス停の周辺エリア)内に存在する歩行者端末1や車載端末3の通信方式を管理する場合に好適である。
【0248】
また、このような通信方式選択の処理の一部を歩行者端末1や車載端末3で行うようにしてもよい。例えば、位置情報に基づく判定は路側機5で行い、状態検出部12,32の検出結果に基づく判定は歩行者端末1や車載端末3で行うようにしてもよい。
【0249】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図24は、第9実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送受信状況を示す説明図である。
【0250】
前記の実施形態では、歩行者端末1において、自装置の状態に関する装置情報に基づいて、歩行者が危険状態であるか否かを判定して、その判定結果に応じて、直接通信と間接通信とのいずれか一方の通信方式を選択して、その一方の通信方式でメッセージを送信するようにしたが、直接通信で通信エラーが発生すると、間接通信の方が早くメッセージが車載端末3に届く場合がある。そこで、本実施形態では、所定の条件が成立する場合に、直接通信および間接通信の両方の通信方式を選択して、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを周辺の車載端末3に送信する。
【0251】
特に本実施形態では、歩行者端末1において、自歩行者が危険状態であるか否かの判定の前に、自歩行者が特定人物であるか否かを判定して、自歩行者が特定人物である場合には、自歩行者が危険状態であるか否かに関係なく、直接通信および間接通信の両方の通信方式を選択する。
【0252】
この場合、周辺の車載端末3では、歩行者端末1から直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを受信するが、いずれかの通信方式で先に正常に受信したメッセージを受信結果として使用し、先に正常に受信したメッセージに応じて衝突判定を行う。なお、直接通信および間接通信の各通信方式で受信したメッセージを合成するようにしてもよい。
【0253】
ここで、歩行者端末1では、自歩行者が特定人物であるか否かに関する情報が、自歩行者の属性に関する装置情報として、予め記憶部17に記憶される。このとき、例えば、自歩行者が危険行動をとったことを、危険行動履歴として記憶部17に蓄積し、その危険行動履歴に基づいて、自歩行者が過去に多くの危険行動をとった場合、具体的には、過去の所定期間内に危険行動をとった回数が所定回数以上となる場合に、自歩行者を特定人物に設定すればよい。また、認知症やその他の持病があるなどの理由で、本人や家族などの保護者から見守りの要請があった場合に、自歩行者を特定人物に設定するようにしてもよい。この場合、本人や家族などの保護者が歩行者端末1で特定人物の登録操作を行えばよい。
【0254】
また、踏切の遮断機が降りているのに踏切内に位置している場合に、歩行者端末1が自歩行者を特定人物に設定するようにしてもよい。この場合、高齢者等が踏切横断中に気分が悪くなった等の理由で、踏切内で動けなくなり、遮断機が降りてしまったと考えられる。このような場合は、非常に危険であるため、早急に列車に対して、踏切内に人がいることを通知する必要があるため、直接通信と間接通信の両方を用いることが有効である。遮断機が降りているかどうかの情報は、遮断機に設けた路側機あるいは遮断機を監視するカメラ等から受信するようにすればよい。または、列車に設けた車載端末から受信する列車の位置情報から、自歩行者との距離が接近した場合に、自歩行者を特定人物に設定するようにしてもよい。
【0255】
なお、直接通信と間接通信の両方を用いることを許可する特定人物には、広義の歩行者として、自転車、車椅子、電動車椅子、シニアカー、農機等を含めてもよい。
【0256】
次に、第9実施形態に係る歩行者端末1から送信されるメッセージについて説明する。図25は、歩行者端末1から送信されるメッセージの内容を示す説明図である。
【0257】
歩行者端末1のメッセージ制御部21では、ITS通信のメッセージのフォーマットにしたがって、歩車間通信のメッセージが生成される。このメッセージには、所定の情報を格納する共通領域と、ユーザが任意の情報を格納することができる自由領域(拡張領域)とがある。共通領域には、歩行者ID(歩行者端末1の端末ID)、自装置の位置情報(経度および緯度)などの所定の情報が格納される。自由領域には、自歩行者が特定人物か否かを表す情報(特定人物情報)が、自歩行者の属性情報として格納される。この特定人物情報は、自歩行者が特定人物である場合には「1」となり、自歩行者が特定人物でない場合には「0」となる。なお、その他の属性情報として、杖持参などの情報を自由領域に格納するようにしてもよい。
【0258】
このメッセージにより、特定人物が存在することを周辺の車載端末3に通知することができる。これにより、車載端末3で運転者に対する注意喚起を行うことで、運転者が特定人物に注意するようになる。
【0259】
次に、第9実施形態に係る歩行者端末1で行われる通信方式選択(図6のST103)の手順について説明する。図26は、歩行者端末1で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0260】
歩行者端末1の通信方式選択部22では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部14で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST701)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST701でNo)、直接通信を選択する(ST704)。
【0261】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST701でYes)、次に、自歩行者が特定人物か否かを判定する(ST751)。ここで、自歩行者が特定人物である場合には(ST751でYes)、直接通信および間接通信の両方を選択する(ST752)。
【0262】
一方、自歩行者が特定人物でない場合には(ST751でNo)、次に、状態検出部12などから自歩行者の状態情報を取得する(ST702)。そして、自歩行者の状態情報に基づいて、自歩行者が危険状態か否かを判定する(ST703)。
【0263】
ここで、自歩行者が危険状態である場合には(ST703でYes)、直接通信を選択する(ST704)。一方、歩行者が危険状態でない場合には(ST703でNo)、間接通信を選択する(ST705)。
【0264】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。図27は、第10実施形態に係る歩行者端末1および車載端末3におけるメッセージの送受信状況を示す説明図である。
【0265】
第9実施形態では、歩行者端末1において、所定の条件が成立する場合、具体的には、自歩行者が特定人物である場合に、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを周辺の車載端末3に送信するようにしたが、本実施形態では、車載端末3において、所定の条件が成立する場合に、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを周辺の歩行者端末1や車載端末3に送信する。特に本実施形態では、車載端末3において、自車両が緊急車両(救急車や消防車など)などの特定車両である場合に、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信する。
【0266】
この場合、周辺の歩行者端末1や車載端末3では、特定車両の車載端末3から直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを受信するが、いずれかの通信方式で先に正常に受信したメッセージを受信結果として使用し、先に正常に受信したメッセージに応じて衝突判定を行う。なお、直接通信および間接通信の各通信方式で受信したメッセージを合成するようにしてもよい。
【0267】
ここで、車載端末3では、自車両が特定車両であるか否かに関する情報が、自車両の属性に関する装置情報として、予め記憶部37に記憶される。
【0268】
次に、第10実施形態に係る車載端末3から送信されるメッセージについて説明する。図28は、車載端末3から送信されるメッセージの内容を示す説明図である。
【0269】
車載端末3のメッセージ制御部41では、ITS通信のメッセージのフォーマットにしたがって、歩車間通信のメッセージが生成される。このメッセージには、所定の情報を格納する共通領域と、ユーザが任意の情報を格納することができる自由領域(拡張領域)とがある。共通領域には、車両ID(車載端末3の端末ID)、自装置の位置情報(経度および緯度)などの所定の情報が格納される。自由領域には、自車両が特定車両(緊急車両)か否かを表す情報(特定車両情報)が、自車両の属性情報として格納される。この特定車両情報は、自車両が特定車両(緊急車両)である場合には「1」となり、自車両が特定車両でない場合には「0」となる。
【0270】
このメッセージにより、緊急車両が通行することを周辺の歩行者端末1や車載端末3に通知することができる。これにより、歩行者端末1で歩行者に対する注意喚起を行うことで、歩行者が緊急車両に注意するようになり、また、車載端末3で運転者に対する注意喚起を行うことで、緊急車両の通行の妨げにならないように、運転者が車両を運転するようになる。
【0271】
次に、第10実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択(図7のST401)の手順について説明する。図29は、車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0272】
車載端末3の通信方式選択部42では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部34で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST801)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST801でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0273】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST801でYes)、次に、自車両が特定車両か否かを判定する(ST831)。ここで、自車両が特定車両である場合には(ST831でYes)、直接通信および間接通信の両方を選択する(ST832)。
【0274】
一方、自車両が特定車両でない場合には(ST831でNo)、次に、状態検出部32などから自車両の状態情報を取得する(ST802)。そして、自車両の状態情報に基づいて、自車両が危険状態か否かを判定する(ST803)。
【0275】
ここで、自車両が危険状態である場合には(ST803でYes)、直接通信を選択する(ST804)。一方、自車両が危険状態でない場合には(ST803でNo)、間接通信を選択する(ST805)。
【0276】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
【0277】
第10実施形態では、車載端末3において、自車両が緊急車両(救急車や消防車など)などの特定車両である場合に、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信するようにしたが、本実施形態では、自車両(緊急車両)が緊急性の高い状態であるとの属性に関する装置情報を有する場合にのみ、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信する。
【0278】
ここで、緊急車両が緊急性の高い状態であるとは、例えば、救急車が、生死に関わる患者の救命のために緊急走行している場合や、消防車が火災現場に向かって緊急走行している場合、パトカーが犯人を追跡している場合などである。
【0279】
また、自車両が緊急性の高い状態か否かの判定は、自装置に設定された緊急性に関する情報に基づいて行う。このとき、例えば、緊急車両の隊員などが、出動する際に、緊急性に関する情報の入力操作を車載端末3で行うようにすればよい。また、車載端末3において、緊急車両のサイレン音に基づいて、緊急性の高い状態を検知するようにしてもよい。この場合、緊急性の高さに応じてサイレン音を変更するようにするとよい。また、出動要請を受信し、その要請に対する応答を返す時点で、緊急性が高いと判断してもよい。また、消防救急指令システムと通信を行う通信装置を緊急車両に搭載して、その通信装置から、緊急性に関する情報を車載端末3が取得するようにしてもよい。自車両が緊急性の高い状態か否かの情報を、自車両の属性に関する装置情報として記憶部37に記憶し、この装置情報に基づいて、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信するようにしてもよい。
【0280】
次に、第11実施形態に係る車載端末3から送信されるメッセージについて説明する。図30は、車載端末3から送信されるメッセージの内容を示す説明図である。
【0281】
本実施形態では、第10実施形態と同様に、歩車間通信のメッセージの自由領域に、自車両が特定車両(緊急車両)か否かを表す情報(特定車両情報)が、自車両の属性情報として格納されるが、この他に、緊急車両が緊急性の高い状態であるか否かを表す情報(緊急状態情報)が格納される。この緊急状態情報は、緊急性が高い場合には「1」となり、緊急性が低い場合には「0」となる。
【0282】
このメッセージにより、緊急車両が通行することに加えて、その緊急車両が緊急性の高い状態であることを周辺の歩行者端末1や車載端末3に通知することができる。
【0283】
次に、第11実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択(図7のST401)の手順について説明する。図31は、車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0284】
車載端末3の通信方式選択部42では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部34で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST801)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST801でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0285】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST801でYes)、次に、自車両が特定車両か否かを判定する(ST831)。ここで、自車両が特定車両である場合には(ST831でYes)、次に、自車両が緊急性の高い状態であるか否かを判定する(ST841)。
【0286】
ここで、自車両が緊急性の高い状態である場合には(ST841でYes)、直接通信および間接通信の両方を選択する(ST832)。
【0287】
一方、自車両が緊急性の低い状態である場合や(ST841でNo)、自車両が特定車両でない場合には(ST831でNo)、次に、状態検出部32などから自車両の状態情報を取得する(ST802)。そして、自車両の状態情報に基づいて、自車両が危険状態か否かを判定する(ST803)。
【0288】
ここで、自車両が危険状態である場合には(ST803でYes)、直接通信を選択する(ST804)。一方、自車両が危険状態でない場合には(ST803でNo)、間接通信を選択する(ST805)。
【0289】
(第12実施形態)
次に、第12実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
【0290】
第11実施形態では、自車両が緊急車両(救急車や消防車など)などの特定車両である場合で、かつ、自車両が緊急性の高い状態である場合に、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信するようにしたが、本実施形態では、自車両が特定車両である場合で、かつ、自車両の周辺に歩行者が多い場合に、特定車両のみ直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信し、歩行者は直接通信および間接通信のいずれか片方の通信方式のみでメッセージを送信する。
【0291】
繁華街などの歩行者が多い場所では、車両の運転者は、歩行者に注意することから、歩行者の飛び出しなどの危険行動に気づく可能性が高いため、運転手に対する注意喚起の緊急性が低い。また、複数の歩行者端末1から歩車間通信のメッセージが同時に送信される可能性が高いため、歩車間通信の輻輳が発生しやすい。このため、自車両の周辺に歩行者が多い場合にのみ、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信することで、歩車間通信の輻輳を抑えるとともに、緊急車両などの特定車両が通行することを周辺の歩行者や車両の運転者に早期に通知することができる。
【0292】
ここで、自車両の周辺に歩行者が多いか否かの判定は、周辺に存在する歩行者端末1の数に基づいて行えばよい。具体的には、受信したメッセージの送信元の歩行者端末1の数をカウントして、歩行者端末1の数が所定値以上となる場合に、自車両の周辺に歩行者が多いと判定すればよい。また、地図情報に基づいて、繁華街などの歩行者が多い特定エリアに自車両が位置する場合に、自車両の周辺に歩行者が多いと判定するようにしてもよい。自車両の周辺に歩行者が多いか否かの情報を、自車両の装置情報として記憶部37に記憶し、この装置情報に基づいて、直接通信および間接通信の両方の通信方式でメッセージを送信するようにしてもよい。
【0293】
次に、第12実施形態に係る車載端末3で行われる通信方式選択(図7のST401)の手順について説明する。図32は、車載端末3で行われる通信方式選択の手順を示すフロー図である。
【0294】
車載端末3の通信方式選択部42では、まず、路側機5から送信されるビーコン信号を無線LAN通信部34で受信したか否かに応じて、自装置が路側機5の通信圏内か否かを判定する(ST801)。ここで、自装置が路側機5の通信圏内でない場合には(ST801でNo)、直接通信を選択する(ST804)。
【0295】
一方、自装置が路側機5の通信圏内である場合には(ST801でYes)、次に、自車両が特定車両か否かを判定する(ST831)。ここで、自車両が特定車両である場合には(ST831でYes)、次に、自車両の周辺に歩行者が多いか否かを判定する(ST851)。
【0296】
ここで、自車両の周辺に歩行者が多い場合には(ST851でYes)、直接通信および間接通信の両方を選択する(ST832)。
【0297】
一方、自車両の周辺に歩行者が少ない場合や(ST851でNo)、自車両が特定車両でない場合には(ST831でNo)、次に、状態検出部32などから自車両の状態情報を取得する(ST802)。そして、自車両の状態情報に基づいて、自車両が危険状態か否かを判定する(ST803)。
【0298】
ここで、自車両が危険状態である場合には(ST803でYes)、直接通信を選択する(ST804)。一方、自車両が危険状態でない場合には(ST803でNo)、間接通信を選択する(ST805)。
【0299】
なお、第9実施形態から第12実施形態では、所定の条件が成立する場合、すなわち、歩行者が特定人物である場合や、車両が特定車両である場合に、直接通信と間接通信との両方の通信方式を選択するようにしたが、前記の条件に加えて、通信トラフィック量が所定値以下となる場合に、直接通信と間接通信との両方の通信方式の選択を許可するようにしてもよい。この場合、路側機5において、通信トラフィック量を監視し、その通信トラフィック量を歩行者端末1および車載端末3に通知するようにすればよい。
【0300】
また、第9実施形態から第12実施形態では、所定の条件が成立する場合に、直接通信および間接通信の両方の通信方式を選択し、所定の条件が成立しない場合には、危険状態であるか否かに応じて、直接通信と間接通信とのいずれか一方の通信方式を選択するようにしたが、所定の条件が成立しない場合に、危険状態であるか否かに関係なく、所定の通信方式、例えば間接通信を選択するようにしてもよい。
【0301】
また、第9実施形態から第12実施形態では、直接通信と間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択する処理を、歩行者端末1や車載端末3が個別に行うようにしたが、直接通信と間接通信とのいずれか一方または両方の通信方式を選択する処理を、第8実施形態と同様に、路側機5が行うようにしてもよい。
【0302】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0303】
例えば、前記の実施形態では、路側機を介した間接通信に無線LANの通信方式を採用したが、この間接通信に採用する通信方式は無線LANに限定されるものではなく、例えば、5G(第5世代移動通信システム)で採用される、高SHF帯やEHF帯などの高周波数帯を利用した通信方式で間接通信を行うようにしてもよい。
【0304】
また、第8実施形態以外の実施形態では、直接通信を行うか間接通信を行うかの選択は、端末装置が、自歩行者または自車両の状態に応じて自発的に選択するとしたが、路側機が直接通信を行う端末装置を選定するようにしてもよい。この場合、端末装置は、自装置の位置情報や状態情報、あるいは直接通信の要求等を路側機に通知し、路側機は、直接通信を行うことを許可する端末装置を決定し、許可または不許可を端末装置に通知するようにするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0305】
本発明に係る端末装置、路側装置、通信システム、および通信方法は、端末装置間での歩車間通信(直接通信)と、路側装置を介した間接通信との2つの通信方式の中から適切な通信方式を選択することで、歩車間通信の輻輳を抑えつつ、歩行者や車両の存在を、周辺の歩行者や車両の運転者に迅速にかつ確実に通知することができる効果を有し、自装置の位置情報を含むメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する端末装置、道路に設置されて端末装置と通信を行う路側装置、端末装置と路側装置とを備える通信システム、および端末装置からメッセージを歩車間通信で他の端末装置に送信する通信方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0306】
1 歩行者端末(端末装置)
3 車載端末(端末装置)
5 路側機(路側装置)
7 踏切制御装置
11 測位部
12 状態検出部
13 歩車間通信部(第1の通信部)
14 無線LAN通信部(第2の通信部)
16 制御部
31 測位部
32 状態検出部
33 歩車間通信部(第1の通信部)
34 無線LAN通信部(第2の通信部)
36 制御部
51 通信部
52 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図26
図27
図28
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図30
図31
図32