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特許7231558高誘電率及び低誘電散逸のポリマー複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】高誘電率及び低誘電散逸のポリマー複合体
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/04 20060101AFI20230221BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230221BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K3/013
C08K7/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019557588
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 US2018028088
(87)【国際公開番号】W WO2018208446
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】62/505,270
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ピチョン
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-057307(JP,A)
【文献】特開平04-339862(JP,A)
【文献】特開2017-135211(JP,A)
【文献】特開平11-116825(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084322(WO,A1)
【文献】特開平09-321191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0059754(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)炭素又は導電性酸化物を含み、1~20,000nmの平均直径及び前記平均直径の少なくとも5倍の平均長さを有する、導電性繊維と、
b)1~20,000nmの平均直径を有する非導電性粒子と、
c)前記導電性繊維及び前記非導電性粒子を取り囲むポリシロキサンポリマーマトリックスと、
を含み、
前記非導電性粒子が、前記導電性繊維上に吸着されている、組成物。
【請求項2】
前記導電性繊維が、3nm~1,000nmの平均直径及び10~1×10S/mの導電率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記非導電性粒子が、5nm~1,000nmの平均直径及び0.1S/m以下の導電率を有する、請求項2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状及び粒子状充填剤を含むポリマー複合体、特に、電気作動用途において有用な、繊維状導電性充填剤及び非導電性粒子状充填剤を含むポリマー複合体に関する。更に、繊維状充填剤をポリマーマトリックスに組み込む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気作動に加えて、ポリマーの誘電率を上げることが望ましい多くの他の用途がある。主鎖及び側基の化学修飾、並びに高誘電率充填剤の組み込みを含む多くの技術がこの目的に適用されてきた。誘電率の増加の一般的な欠点は、誘電損失の同時増加である。誘電損失の増加は、エネルギー消費量の更なる増加、デバイスの作動中の発熱、信号遅延、及びリーク電流の増加を引き起こす可能性がある。シリコーンフィルムには、誘電体フィルムアクチュエータを提供するためにチタン酸バリウムが充填されて来た(例えばY.Liu et al.,Smart Mater.Struct.,18(2009)095024を参照されたい)。しかしながら、この参考文献は、チタン酸バリウムの量の増加に伴う誘電損失の増加を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの手法を完全に利用して、誘電率は増加させるが、革新的な技術を使用して誘電損失の増加を抑制するという未解決の問題が存在する。更に、弾性率の増加は最小限に抑えるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、
a)炭素、導電性酸化物又は金属を含み、1~20,000nmの平均直径及び平均直径の少なくとも5倍の平均長さを有する、導電性繊維と、
b)1~20,000nmの平均直径を有する非導電性粒子と、を含む組成物を提供する。
【0005】
本発明はまた、
c)物理的吸着又は化学酸化によって繊維状材料上に表面電荷を生成することと、
d)表面上に反対電荷を有する粒子状材料を添加して混合物を形成することと、
e)混合物をポリマーと組み合わせることと、を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
特に指定しない限り、百分率は重量百分率(重量%)であり、温度は℃である。特に指定しない限り、操作は室温で行った。本明細書で使用するとき、別途記載のない限り、分子量M、M及びMは、従来の意味を有し、ゲル浸透クロマトグラフィにより測定される。本明細書で、分子量を、g/mol単位で報告する。シラノール指数は、実施例に記載されているように、FT-IRによって決定される。
【0007】
好ましくは、組成物は、ポリマーマトリックス、好ましくはポリシロキサンを含むものを更に含む。好ましくは、ポリシロキサンは、(a)ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物と、(b)縮合硬化性シリコーン組成物と、(c)チオール-エン反応硬化性シリコーン組成物と、(d)フリーラジカル硬化性シリコーン組成物と、(e)開環反応硬化性シリコーン組成物と、から選択される硬化性シリコーン組成物から製造される。前述した各々は、明示した手段以外の手段を使用して、又は手段の組み合わせによって、硬化させることができる。
【0008】
ヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物は、典型的には、(A)1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンと、(B)オルガノポリシロキサン(A)中のケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合水素原子と反応することができる、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合水素原子又はケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含む。オルガノポリシロキサン(A)及び有機ケイ素化合物(B)は独立して、直鎖、分枝鎖、環状、又は樹脂性であってもよい。特に、オルガノポリシロキサン(A)及び有機ケイ素化合物(B)は、M単位、D単位、T単位、及びQ単位の任意の組み合わせを含んでもよい。Mは、1官能性単位R SiO1/2を表す。Dは、2官能性単位R SiO2/2を表す。Tは、3官能性単位RSiO3/2を表す。Qは、4官能性単位SiO4/2を表す。各Rは任意の炭化水素基、芳香族基、脂肪族基、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基であってもよい。繰り返しD単位を含むオルガノポリシロキサンは、実質的に直鎖であるが、T単位及び/又はQ単位に起因するいくつかの分枝鎖を含むことがある。オルガノポリシロキサンが主に直鎖状であるとき、得られる構造はエラストマーである。好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサン(A)は、一般式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2 (I)
(式中、各Rは独立して選択されるヒドロカルビル基であり、置換でも非置換であってもよく、かつヒドロカルビル基内にヘテロ原子(例えばO、N、S)を含んでいてもよく、各Rは独立して、R及びアルケニル基から選択されるが、ただし、Rのうちの少なくとも2つはアルケニル基であり、w、x、y、及びzは、w+x+y+z=1となるモル分率である)を有する。直鎖オルガノポリシロキサンでは、下付き文字y及びzは一般に0であるのに対し、樹脂では、下付き文字y及び/又はzは>0である。好ましくは、下付き文字wは、0~0.9、好ましくは0~0.6、好ましくは0~0.3、好ましくは0~0.1、好ましくは0.00001~0.001の値を有する。好ましくは、下付き文字xは、0~0.99999、好ましくは0~0.9999、好ましくは0~0.999、好ましくは0~0.99、好ましくは0.9~0.99999、好ましくは0.9~0.9999、好ましくは0.9~0.999の値を有する。下付き文字yは、好ましくは0~0.99、好ましくは0~0.45、好ましくは0~0.25、好ましくは0.25~0.8、好ましくは0.5~0.8の値を有する。下付き文字zは、好ましくは0~0.99、好ましくは0~0.85、好ましくは0.85~0.95、好ましくは0.6~0.85、好ましくは0.4~0.65、好ましくは0.2~0.5、好ましくは0.1~0.45、好ましくは0~0.5、好ましくは0~0.25、好ましくは0~0.15の値を有する。好ましくは、Rがハロゲン置換されているとき、Rは、3,3,3-トリフルオロプロピル、3-クロロプロピル、クロロフェニル、ジクロロフェニル、2,2,2-トリフルオロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル、又は2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルである。好ましくは、Rは、C~C10ヒドロカルビル基であり、好ましくは、アルキル、アリール、又はアラルキルである。好ましくは、アルケニル基は、Rで表され、Rは、オルガノポリシロキサン(A)内において同一のものでも異なっていてもよく、2~10個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子を有していてもよく、好ましくはビニル又はアリル、好ましくはビニルであってもよい。
【0009】
好ましくは、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、(A’)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合ヒドロキシル基又は加水分解性基を有するオルガノポリシロキサン、任意選択的に(B’)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合水素原子、ヒドロキシル基、又は加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、及び(C’)縮合触媒、を含む縮合硬化性シリコーン組成物を含む。好ましくは、縮合触媒(C’)は、ケイ素結合ヒドロキシ(シラノール)基の縮合を促進してSi-O-Si連結を形成するために典型的に使用される、任意の縮合触媒、好ましくはアミンであり、又はカルボン酸、アルキル、及びアルコキシド基を有するチタン、鉛、スズ、亜鉛、ジルコニウム、及び鉄の化合物であり、好ましくはスズ(II)及びスズ(IV)化合物、例えば、ジラウリン酸スズ、ジオクタン酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、及びテトラブチルスズ、及びチタン化合物、例えばチタンテトラブトキシドである。
【0010】
好ましくは、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、典型的には、(A”)平均して少なくとも2つのケイ素結合不飽和基を有するオルガノポリシロキサン及び(C”)フリーラジカル開始剤、を含む、フリーラジカル硬化性シリコーン組成物を含む。
【0011】
好ましくは、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、典型的には、(A’’’)少なくとも2つのエポキシ置換基、シラシクロブタン環及び/又はベンゾシクロブテン環を有するオルガノポリシロキサン、及び(C’’’)硬化剤を含む、開環反応硬化性シリコーン組成物を含む。
【0012】
好ましくは、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、(A’’’’)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合メルカプトアルキル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B’’’’)オルガノポリシロキサン(A’’’’)中のケイ素結合アルケニル基又はケイ素結合メルカプト-アルキル基と、反応することができる、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合メルカプト-アルキル基又はケイ素結合アルケニル基を有する有機ケイ素化合物と、(C’’’’)触媒と;(D’’’’)2つ以上のメルカプト基を含有する任意の有機化合物と、を含むチオール-エン硬化性シリコーン組成物を含む。触媒(C’’’’)は、オルガノポリシロキサン(A’’’’)と、有機ケイ素化合物(B’’’’)及び/又は有機化合物(D’’’’)との間の反応を触媒するのに好適な任意の触媒であり得る。典型的には、触媒(C’’’’)は、i)フリーラジカル触媒、ii)求核試薬、及びiii)i)及びii)の組み合わせから選択される。触媒(C’’’’)として使用するのに好適なフリーラジカル触媒としては、光活性フリーラジカル触媒、熱活性フリーラジカル触媒、室温フリーラジカル触媒、例えばレドックス触媒及びアルキルボラン触媒、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。触媒(C’’’’)として使用するのに好適な求核試薬としては、アミン、ホスフィン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0013】
好ましくは、シリコーン組成物のうちの少なくとも1つは、典型的には、(A’’’’’)1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合水素原子又は少なくとも2つのシリコーン結合ヒドロキシル基を有するオルガノポリシロキサンと、(B’’’’’)オルガノポリシロキサン(A’’’’’)中のケイ素結合水素原子又はケイ素結合ヒドロキシル基と反応することができる、1分子当たり平均して少なくとも2個のケイ素結合ヒドロキシル基又は少なくとも2個のケイ素結合水素原子を有する有機ケイ素化合物と、(C’’’’’)触媒と、(D’’’’’)任意の活性水素含有化合物と、を含む水素化ケイ素-シラノール反応硬化性シリコーン組成物を含む。典型的には、触媒(C’’’’’)は、i)第X族金属含有触媒、例えば白金、ii)塩基、例えば金属水酸化物、アミン、又はホスフィン、及びiii)これらの組み合わせから選択される。
【0014】
ポリマーマトリックスは、シリコーンに限定されない。他のポリマーも好適であり、熱可塑性ポリマー、例えばポリオレフィン、ポリエーテル、ポリケトン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアクリレート、及び熱硬化性ポリマー、例えばエポキシド、シアン酸エステル、ポリイミド、ポリウレタンなどが挙げられる。
【0015】
好ましくは、導電性繊維は、1メートル当たり0.1~1×10ジーメンス(S/m)、好ましくは1~1×10S/m、好ましくは4~1×10S/m、好ましくは10~1×10S/m、好ましくは100~1×10S/m、好ましくは1×10~1×10S/mの導電率を有する。好ましくは、繊維は、表面酸化されている炭素を含む。
【0016】
好ましくは、非導電性粒子は、少なくとも1nm、好ましくは少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、好ましくは20,000nm以下、好ましくは10,000nm以下、好ましくは1,000nm以下の平均直径を有する。平均直径は、算術平均として決定され、多くの技術、好ましくは透過型電子顕微鏡、続いて画像解析によって測定することができる。好ましくは、ナノ粒子は、非導電性であり、すなわち、0.1S/m以下、好ましくは1×10-2S/m以下、好ましくは1×10-3S/m以下の導電率を有する。好ましくは、ナノ粒子は、無機又は有機ポリマー組成物を含む。無機粒子としては、チタン酸バリウム及びペロブスカイト構造の他の酸化物組成物、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、及び他の金属、例えばハフニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ニオブ、スカンジウム、イットリウム、バナジウム、及びランタニド、並びにアクチニド系列元素、例えばエルビウム、並びにユーロピウム、の酸化物、ホウ化物、窒化物、炭化物、及びケイ化物が挙げられるが、これらに限定されない。有機ポリマー粒子としては、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、及び様々なコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
好ましくは、導電性繊維は、少なくとも2nm、好ましくは少なくとも3nm、好ましくは少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、好ましくは10,000nm以下、好ましくは5,000nm以下、好ましくは1,000nm以下、好ましくは500nm以下、好ましくは100nm以下、好ましくは50nm以下の平均直径を有する。好ましくは、導電性繊維は、直径の少なくとも8倍、好ましくは少なくとも10倍、好ましくは1,000,000倍以下、好ましくは100,000倍以下の平均長さを有する。
【0018】
好ましくは、ナノ粒子対導電性繊維の重量比は、0.01:50~50:1、好ましくは0.1:10~10:1、好ましくは0.2:2~5:1である。好ましくは、組成物がポリマーマトリックスを含むとき、ナノ粒子及び導電性繊維の総重量は、ポリマーマトリックス、ナノ粒子、及び導電性繊維の総重量の0.1~80重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは80重量%以下、好ましくは60重量%以下である。
【0019】
本発明の方法では、好ましくは、粒子及び繊維をポリマー樹脂と組み合わせ、次いで硬化させる。
【実施例
【0020】
【表1】
【0021】
酸化カーボンナノファイバー(CNF)の調製。
2.84gのピログラフIII PR-19-XT-PSカーボンナノファイバー(気相成長、平均直径約150nm、表面上にCVD堆積された炭素)を、機械的撹拌器、還流凝縮器、及び温度計を備えた3つ口丸底フラスコに入れた。90gの70重量%HNOを脱イオン水で250mLの総体積まで希釈して、1MのHNO溶液を調製し、溶液をフラスコに添加した。撹拌しながら、温度を105.1℃に上昇させ、還流を110時間維持した。次いで、内容物を冷却し、#1濾紙で濾過した。濾紙の上に残ったケークを、DI水で8回洗浄した。75%のケークを、20gのDI水中に分散させて、安定なスラリーを作製した。このスラリー中の固形分は、熱乾燥測定に基づいて~10重量%であると判定された。残りのケークを、換気オーブン内で95℃で20時間乾燥させ、次いで120℃で1時間乾燥させた。
【0022】
BaTiOナノ粒子の処理及び分散
10gの50nmのBaTiO乾燥粒子を、40mLのガラスバイアル瓶に入れ、20gのDI水を添加し、続いて0.13gの34~37重量%塩酸を添加した。混合物を、室温において磁気撹拌棒で20時間撹拌し、次いでIKA T18 Ultra Turraxローターステーターミキサーによって、20krpmで60秒間混合した。分散液は、更に処理せずに次のステップで使用するができた。
【0023】
CNF上に吸着されたBaTiOを有するCNFの調製(CNF@BaTiO
上記の調製したCNFスラリーの半分の量を取り、そこに65gのDI水を添加した。混合物を振盪して安定な分散液を作製した。確実に均質混合するために、その混合物を、IKA T18 Ultra Turraxローターステーターミキサーによって、20krpmで60秒間混合した。ローターステーターミキサーによる撹拌を維持しながら、上記の調製したBaTiO分散液10gを添加した。混合を更に60秒間継続し、次いで、内容物をガラス容器に入れ、容器を上部が開いた状態で、換気オーブン内に95℃で20時間、次いで120℃で1時間配置することによって水を除去した。4.5gの乾燥材料が得られ、2/4重量部の処理されたBaTiO中1重量部の処理されたCNFからなると推定された。
【0024】
CNF上に吸着されたシリカナノ粒子を有するCNFの調製(CNF@SiO
8.62gの上記の処理したCNFスラリーを40mLのガラスバイアル瓶に入れ、8gのDI水と混合した。その混合物を、最大出力130W、モデルCV18振動発生器、及び直径3/8”のステンレス鋼チップを有する超音波プロセッサ、モデルGEX130を用いて、90%の振幅で3分間、混合した。次いで、5gのNalco DVSZN002コロイダルシリカを添加し、同じ超音波プロセッサ及び同じプロセスパラメータを使用して混合した。得られた分散液は安定であった。次いで、それをペトリ皿に注ぎ、それを換気オーブン内に配置し、95℃まで3℃/分で、95℃/8時間、100℃まで1℃/分で、100℃/1時間、115℃まで1℃/分で、115℃/2時間、乾燥させた。2.2gの固形材料を得た。CNF対シリカの重量比は1対2.32であると推定された。
【0025】
シルガード184シリコーンエラストマー中のITOの調製
IPA中の適切な量の100nmのITO粒子(平均直径、約150nm)分散液を、一口丸底フラスコ内において、シルガード184ベースポリマーと混合した。後者の量は、所望のITO/シリコーン比に達するように計算した。その混合物を、80℃に設定された回転蒸発器上に配置し、減圧を連続的に減少させてIPAを除去した。最終圧力は1mmHgであった。次いで、IPAを含まない混合物を冷却し、シルガード184硬化触媒を、開始シルガード184ベースの重量の1/10の量で添加し、硬化させるために十分に混合した。最終硬化組成物において所望の総ITO含有量に達するように、異なるサンプルに関してITO量を調整した。
【0026】
誘電測定のための比較サンプルディスクの調製
5gのシルガード184ベース及び0.5gのシルガード184硬化触媒を、FlackTekミキサー上の10gの容量カップ内で3500rpmで2分間混合した。下にある研磨ステンレス板(6”×6”)上にテフロンシートによって裏打されたアルミニウムプレートから切り取った厚さ0.8mmのスペーサの直径2インチ開口部に、2gの混合物を配置した。更なるテフロンシートを上部に配置し、次いで別の研磨ステンレス板によって被覆する。アセンブリを、130℃の温度及び4000lbの力の下加熱プレス状態に置いた。この状態でアセンブリを30分間保持し、次いで定盤を通って流れる冷水で冷却した。硬化した直径2インチ、厚さ0.8mmのディスクを収集し、誘電試験に使用する。スペーサの厚さを変更して、試験のために異なる厚さのサンプルを得た。
【0027】
誘電測定のためのITO粒子を含有する比較サンプルディスクの調製
上記と同じ手順に従って、シルガード184ベースと触媒との混合物を含有するITOを使用して、ディスクを作製した。
【0028】
誘電測定のためのAgナノ粒子を含有する比較サンプルディスクの調製
適切な量の平均直径18nmの乾燥Agナノ粒子を、10g容量のデンタルミキサーカップに入れ、次いで5gのシルガード184ベースを秤量して入れた。直径10 3mmの耐食性ステンレス鋼製軸受ボールを、カップに入れ、混合物をFlackTecミキサーにおいて3500rpmで2分間(1分間混合、5分間待機し、次いで1分間混合して加熱を最小化した)混合した。10分間冷却した後、0.5gのシルガード184硬化剤を秤量して入れ、3500rpmで30秒間混合した。混合物を2g採取して、上記の同じディスク作製手順に従って、誘電体測定のためのディスクを作製した。Agナノ粒子の量は、ディスクにおいて望ましいAg含有量に達するように調整した。
【0029】
誘電測定のためのカーボンナノファイバーを含有する比較サンプルディスクの調製
同様の手順を使用して、上記の未処理のピログラフIIICNF含有ディスクを、Agナノ粒子の代わりに未処理ピログラフIIICNFのみを使用して調製した。
【0030】
誘電測定のためのMWCNT-TiOを含有する実施例ディスクの調製
同じ手順を使用し、Agナノ粒子又は未処理ピログラフIII CNFの代わりにMWCNT-TiOのみを使用して、上記のようにMWCNT(多層カーボンナノチューブ、内径5~15nm、外径>50nm、長さ5~20ミクロン)-TiO含有ディスクを調製した。
【0031】
誘電測定のためのCNF@BaTiOを含有する実施例ディスクの調製
同じ手順を使用し、MWCNT-TiO、Agナノ粒子、又は未処理ピログラフIIICNFの代わりに、上で調製したCNF@BaTiOのみを使用して、上記のようにCNF@BaTiO含有ディスクを調製した。
【0032】
誘電測定のためのCNF@SiOを含有する実施例ディスクの調製
同じ手順を使用し、MWCNT-TiO、Agナノ粒子、又は未処理ピログラフIIICNFの代わりに、上で調製したCNF@SiOのみを使用して、上記のようにCNF@SiO含有ディスクを調製した。
【0033】
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【0034】
本発明において、驚くべきことに、本質的に非導電性であるナノ粒子は、導電性繊維の表面上に吸着されると、その複合体が導電性になる傾向を極めて効果的に低減し得る、ことが発見された。更に、この手法は、誘電損失を依然として低く抑えながら、誘電率を効果的に増加させるために驚くほど大量の導電性繊維を組み込むことができる。
【0035】
より広義には、様々な組成の増大している入手可能なナノファイバーを使用しようとする試みにおいては長年の問題があったが、一般には、一般的なナノファイバー製造技術では、密に束ねられた繊維を生成されることから、ナノファイバーをポリマーマトリックス中に均一に分散させることが課題であった。驚くべきことに、本発明の方法により、密に束ねられたナノファイバーをポリマーマトリックス中に均一に簡単に分散させ得ることを発見した。