(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】加飾シート及び表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230221BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20230221BHJP
G09F 13/00 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B3/24 Z
G09F13/00 Z
(21)【出願番号】P 2020066755
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149216
【氏名又は名称】浅津 治司
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100121120
【氏名又は名称】渡辺 尚
(72)【発明者】
【氏名】濱 大地
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達朗
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G09F 13/00-13/46
B60R 13/00-13/10
B60Q 3/00-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明シートと、
前記透明シートに付けられたインキまたは蒸着膜によって意匠が表されている意匠層とを備え、
前記意匠層は、前記透明シートを透過する光を複数のマイクロホールによって透過させる光透過領域を有し、
前記複数のマイクロホールは、それぞれ、前記インキまたは前記蒸着膜が付けられていない第1スリット及び第2スリットを含み、前記第1スリットと前記第2スリットが互いに交差
し、
前記第1スリット及び前記第2スリットは、それぞれ、幅が50μm以下で、長さが500μm以下である、加飾シート。
【請求項2】
前記意匠層は、前記光透過領域以外の領域である遮光領域の光の透過率が20%以下であり、
前記光透過領域は、光の透過率が、前記遮光領域の光の透過率よりも3%以上大きく、しかし前記遮光領域の光の透過率よりも10%以上大きくならないように、前記複数のマイクロホールが配置されている、請求項1に記載の加飾シート。
【請求項3】
前記第1スリット及び前記第2スリットは、それぞれ直線状であり、前記第1スリットと前記第2スリットのなす角の角度が、30度以上90度以下である、請求項1または2に記載の加飾シート。
【請求項4】
前記複数のマイクロホールは、それぞれ、前記透明シートを透過する光が通過するように前記インキまたは前記蒸着膜が付けられていない第3スリットを含み、前記第3スリットが直線状であり、前記第1スリットの中点、前記第2スリットの中点及び前記第3スリットの中点が互いに重ねられており、
前記第3スリットは、前記第1スリットとのなす角及び前記第2スリットとのなす角が30度以上90度以下である、請求項3に記載の加飾シート。
【請求項5】
前記複数のマイクロホールは、それぞれ、前記透明シートを透過する光が通過するように前記インキまたは前記蒸着膜が付けられていない第4スリットを含み、前記第4スリットが直線状であり、前記第1スリットの中点、前記第2スリットの中点、前記第3スリットの中点及び前記第4スリットの中点が互いに重ねられており、前記第1スリット、前記第2スリット、前記第3スリット及び前記第4スリットは、互いに隣接するスリット同士のなす角が45度である、請求項4に記載の加飾シート。
【請求項6】
前記複数のマイクロホールは、千鳥状に並べて配置されている、請求項1から5のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項7】
複数の前記マイクロホールが、前記第1スリットの長さよりも短い距離だけ離して、行列に並べて配置されている、請求項3から6のいずれかに記載の加飾シート。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の加飾シートと、
照射した光が前記加飾シートを通過するように配置されている画面とを備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過する加飾シート及び当該加飾シートを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、通常の状態で見えている視認対象(以下、1次オブジェクトと呼ぶ。)の間を透過する光によって1次オブジェクトとは異なる視認対象(以下、2次オブジェクトと呼ぶ。)を視認させる高い意匠性を備える内装材が知られている。例えば、1次オブジェクトが木目模様であり、2次オブジェクトが濃淡のグラデーション模様である特許文献1のような内装材は、微細な開口で光を透過して濃淡のグラデーション模様(2次オブジェクト)を表示するものではあるが、光を透過しないときに見える木目模様(1次オブジェクト)にも良好な外観が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、微細な開口を透過する光で大きな絵柄の2次オブジェクト(例えば、透過光による濃淡のグラデーション模様など。)を表示させるには、従来の内装材のような視認性でも十分である。しかしながら、透過する光で、精細な2次オブジェクトを表示させたり、2次オブジェクトによって情報を伝えたりする場合には、透過する光によって表示される2次オブジェクトを見やすくする必要がある。ところが、透過する光を多くしようとして例えば絵柄全体に微細な開口を単に増やすだけでは、光を透過させる前の1次オブジェクト(例えば、木目模様など)の質が低下するなどの不具合が生じる。
【0005】
本発明の課題は、光を透過していない場合に主に表示される意匠などの1次オブジェクトの質の低下を抑制しつつ、透過する光によって表示される図柄などの2次オブジェクトの視認性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る加飾シートは、透明シートと、透明シートに付けられたインキまたは蒸着膜によって意匠が表されている意匠層と、を備えている。意匠層は、透明シートを透過する光を複数のマイクロホールによって透過させる光透過領域を有する。複数のマイクロホールは、それぞれ、インキまたは蒸着膜が付けられていない第1スリット及び第2スリットを含み、第1スリットと第2スリットが互いに交差する。
このように構成されている加飾シートは、意匠層によって表される意匠以外に、複数のマイクロホールによって図柄を表示することができる。各マイクロホールが第1スリットと第2スリットを交差してなるものであるため、例えば、ドット(円形の穴)などで表示される図柄と比較すると、複数のマイクロホールの一つ一つの輝度を大きくして各マイクロホールの視認性を向上させることができる。その結果、複数のマイクロホールによって表示される図柄の視認性を向上させることができる。他方、各マイクロホールと同じ大きさの丸穴などを透過する光で表示させる場合と比較すると、マイクロホールによって減らされる意匠層の面積を少なくすることができるので、意匠層の質が低下するのを抑制することができる。
【0007】
上述の加飾シートでは、第1スリット及び第2スリットは、それぞれ、幅が50μm以下で、長さが500μm以下であるように、構成してもよい。このように構成された加飾シートは、複数のマイクロホールによって表示される図柄の視認性の向上と、意匠層の質の低下の抑制とを両立させ易くなる。
上述の加飾シートでは、意匠層は、光透過領域以外の領域である遮光領域の光の透過率が20%以下であり、光透過領域は、光の透過率が、遮光領域の光の透過率よりも3%以上大きく、しかし遮光領域の光の透過率よりも10%以上大きくならないように、複数のマイクロホールが配置されるように構成してもよい。このように構成された加飾シートは、光透過領域の光の透過率が遮光領域の光の透過率よりも10%以上大きくならないので光を透過させないときの1次オブジェクトの良好な視認性を確保できる。また光透過領域の光の透過率が遮光領域の光の透過率よりも3%以上大きいので、光が透過することで表示される2次オブジェクトの良好な視認性を確保することができる。
【0008】
上述の加飾シートでは、第1スリット及び第2スリットは、それぞれ直線状であり、第1スリットと第2スリットのなす角の角度が、30度以上90度以下である、ように構成することができる。このように構成された加飾シートは、第1スリットと第2スリットの間にインキまたは蒸着膜を残し易くなる。
上述の加飾シートでは、複数のマイクロホールは、それぞれ、透明シートを透過する光が通過するようにインキまたは蒸着膜が付けられていない第3スリットを含み、第3スリットが直線状であり、第1スリットの中点、第2スリットの中点及び第3スリットの中点が互いに重ねられており、第3スリットは、第1スリットとのなす角及び第2スリットとのなす角が30度以上90度以下である、ように構成することができる。このように構成された加飾シートは、第1スリットと第2スリットだけからなるマイクロホールを配列する場合に比べ、第3スリットの存在によるモアレなどの干渉縞を低減させつつ、マイクロホール一つ一つの輝度を向上させ易くなる。
【0009】
上述の加飾シートでは、複数のマイクロホールは、それぞれ、透明シートを透過する光が通過するようにインキまたは蒸着膜が付けられていない第4スリットを含み、第4スリットが直線状であり、第1スリットの中点、第2スリットの中点、第3スリットの中点及び第4スリットの中点が互いに重ねられており、第1スリット、第2スリット、第3スリット及び第4スリットは、互いに隣接するスリット同士のなす角が45度である、ように構成することができる。このように構成された加飾シートは、第4スリットの存在によるモアレなどの干渉縞を低減させつつ、マイクロホール一つ一つの輝度を向上させ易くなる。
上述の加飾シートは、複数のマイクロホールが、千鳥状に並べて配置されている、ように構成することができる。このように構成された加飾シートは、マイクロホールを高い密度で配置し易く、所望の光の透過率を確保し易くなる。
上述の加飾シートは、複数のマイクロホールが、第1スリットの長さよりも短い距離だけ離して、行列に並べて配置される、ように構成することができる。このように構成された加飾シートは、マイクロホールを高い密度で配置して、所望の光の透過率を容易に確保できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の加飾シートは、光を透過していない場合に主に表示される1次オブジェクトの質の低下を抑制しつつ、マイクロホールを透過する光によって表示される2次オブジェクトの視認性を向上させることができる。また、本発明の表示装置は、光を透過させない場合の加飾を主に担う1次オブジェクトの質の低下を抑制しつつ、マイクロホールを透過する光によって表示される2次オブジェクトが見易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】組み込まれた表示装置が光を透過している状態のセンターコンソールの斜視図。
【
図2】組み込まれた表示装置が光を透過していない状態のセンターコンソールの斜視図。
【
図4】マイクロホールの一例を説明するための加飾シートの拡大平面図。
【
図5】マイクロホールの他の例を説明するための加飾シートの拡大平面図。
【
図6】
図4のマイクロホールに関するレーザ光線の照射領域を示す二次元データの概念図。
【
図7】
図5のマイクロホールに関するレーザ光線の照射領域を示す二次元データの概念図。
【
図8】
図4のマイクロホールの加工例を示す図面代用写真。
【
図9】
図5のマイクロホールの加工例を示す図面代用写真。
【
図10】変形例Aに係る加飾シートの一例を示す拡大平面図。
【
図11】変形例Aに係る加飾シートの他の例を示す拡大平面図
【
図12】複数の円形の穴を持つ加飾シートの一例を示す拡大平面図。
【
図13】加飾シートの断面構造の一例を示す加飾シートの模式的な断面図。
【
図14】複数の円形の穴で構成された光透過領域に表されている文字を示す図面代用写真。
【
図15】アスタリスク形のマイクロホールで構成された光透過領域に表されている文字を示す図面代用写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)全体構成
図1及び
図2には、本発明の実施形態に係る表示装置1が示されている。ここでは、自動車のセンターコンソール200に取り付けられている表示装置1が例に挙げられている。センターコンソール200の多くの部分に、木目模様を持つ加飾シート20が貼り付けられている。この加飾シート20は、表示装置1を構成する構成要素の一つである。この木目模様が1次オブジェクトである。ここでは、1次オブジェクトが木目模様である場合について説明するが、1次オブジェクトは木目模様のような意匠に限られるものではない。1次オブジェクトは、例えば、情報伝達のための符号、図形であってもよい。
加飾シート20の下には、表示装置1の画面10が配置されている。言い換えると、この画面10は、照射した光が加飾シート20を通過するように配置されているということである。この画面10には、午後2時46分の時刻が表示されている。画面10の中で、「PM」の文字及び時刻を示す「02」及び「46」の数字の部分が光っている。これら文字及び数字が2次オブジェクトである。ここでは、2次オブジェクトが文字及び数字などの符号である場合について説明しているが、2次オブジェクトは、例えば加飾用の図柄またはシグナルであってもよく、情報伝達のための符号、図形に限られるものではない。
図1において、加飾シート20の木目模様が破線で示されている箇所が光透過領域Ar1である。
図1において、加飾シート20の木目模様が実線で示されている箇所が遮光領域Ar2である。表示装置1は、加飾シート20の光透過領域Ar1を有することで、2つの見え方の異なるオブジェクトを切り換えることができる。表示装置の画面10の表示が消えると、
図2に示されているように、専ら、加飾シート20の意匠層22の木目模様が視認される。
【0013】
図3には、表示装置1の一構成例の概要が示されている。表示装置1は、マトリクス状に配置された複数の光源11と透明な保護板12を有する画面10を備えている。複数の光源11には、例えば、複数のLEDを用いることができる。また、透明シート21と、インキで意匠が印刷された意匠層22とを有する加飾シート20とを備えている。意匠層22は、光を透過させる光透過領域Ar1の全体に、複数のマイクロホール51を有する。光透過領域Ar1では、透明シート21を透過した光が、複数のマイクロホール51を透過する。各マイクロホール51は、インキが付いていない第1スリット231と第2スリット232とを含んでいる。第1スリット231と第2スリット232は、互いに交わり、異なる方向に延びている。光源11の光を透過させる複数のマイクロホール51が、それぞれ、互いに交差する第1スリットと第2スリットとを含んでいることにより、光透過領域に同じ方向に延びる複数のスリットを配置する場合に比べてモアレなどの干渉縞の発生による不具合を低減することができる。
図3に示されているマイクロホール51では、第1スリット231と第2スリット232のなす角が90度である。言い換えると、第1スリット231と第2スリット232が交差したものがマイクロホール51である。マイクロホール51を構成する第1スリット231と第2スリット232が直線状である場合、第1スリット231と第2スリット232のなす角は、30度以上90度以下であることが好ましい。第1スリット231と第2スリット232は、それぞれ、幅50μm以下且つ長さ500μm以下であることが好ましい。
加飾シート20の光透過領域Ar1の裏側に配置されている画面10から照射された光は、各マイクロホール51を通過して加飾シート20の外部に放射される。表示装置1は、例えば、マトリクス状に配置された複数の光源11のうち、数字の「2」の形に配置された箇所の光源11を光らせることで、
図1に示されているように、時間を表す数字の「2」を表示することができる。
図3に示されている表示装置1は、光の透過率が20%以下の遮光領域Ar2を有している。この遮光領域Ar2の意匠層22には、マイクロホール51が形成されていない。この遮光領域Ar2は、複数のマイクロホール51が形成されていないという意味であり、意匠層22を通過させることによって透明シート21を透過した光を減衰させるための領域とみなすことができる。
また、
図3に示されている加飾シート20は、意匠層22のインキがないかまたは透明のインキが印刷されている領域Ar3を有している。
図1に示されているセンターコンソール200には、オートマチックトランスミッションのセレクトレバー210が配置されている。セレクトレバー210の操作位置(レンジ)を示す「P」、「R」、「N」及び「D」が表示されている領域Ar3には、加飾シート20の木目模様が配置されていない。領域Ar3の裏側には、例えば、「P」、「R」、「N」及び「D」が印刷された金属製の表示板が配置される。
【0014】
(2)光透過領域Ar1の透過率
このような光透過領域Ar1において、1次オブジェクトである意匠層22の木目模様の視認性を確保することが重要である。反射光により、意匠層22に印刷されている木目模様を見易くするためには、マイクロホール51を少なく且つ小さくして、意匠層22のインキが光を反射する面積を大きくすることが考えられる。言い換えると、意匠層22の木目模様の反射光を多くするためには、複数のマイクロホール51の第1スリット231と第2スリット232によって意匠層22のインキが付いていない面積が減少するのを抑制することが好ましいということである。
また、光透過領域Ar1において、2次オブジェクトである画面10の時刻表示の視認性を確保することが重要である。透過光により、複数の光源11による表示を見易くするためには、マイクロホール51を多く且つ大きくして、意匠層22を通過して視認される光源11の光についての透過率を大きくすることが考えられる。意匠層22の複数のマイクロホール51を通過する透過光を多くするためには、複数のマイクロホール51の第1スリット231と第2スリット232によって意匠層22のインキが付いていない面積が多くなることが好ましいということである。
上述のように、意匠層22の木目模様の視認性を良くするためのマイクロホール51に対する処置と、画面10の時刻表示の視認性を良くするためのマイクロホール51に対する処置は、互いにトレードオフの関係にある。両者の視認性のバランスを取るには、実験などを繰り返して、次のように光の透過率を設定することが好ましいことを見出した。遮光領域Ar2の光の透過率は、20%以下であることが好ましい。さらに、光透過領域Ar1の光の透過率は、遮光領域Ar2の光の透過率よりも3%以上大きくし、しかし、10%以上は大きくならないようにすることが好ましい。
光の透過率は、JISK7361またはISO13468の全光線透過率の測定方法に準拠して測定される。本発明における透過率の測定は、例えば、日本電色工業株式会社製のNDH 7000、NDH 5000などを用いて、測定径をφ14mmとし、受光部側に加飾シート20の最終外観面(
図3の透明シート21の側)をセットして行う。
【0015】
(3)マイクロホールの具体的な配置
(3-1)マイクロホールの配置例
光透過領域Ar1の複数のマイクロホール51は、
図4に拡大して示されている第1スリット231と第2スリット232とを組み合わせて形成されている。
図4においては、斜線で示されている部分を光が透過する。以下の説明では、
図4に示されているXY座標を用いて、第1スリット231と第2スリット232の関係について説明する。X軸方向を行方向と呼び、Y軸方向を列方向と呼ぶ。
図4において、第1スリット231がX軸方向に延び、第2スリット232がY軸方向に延びている。一つの第1スリット231と一つの第2スリット232がそれぞれの中点C1,C2で互いに交差してマイクロホール51を形成している。ここでは、交差する第1スリット231と第2スリット232のなす角θ1が90度である場合について説明している。しかし、第1スリット231と第2スリット232のなす角は、例えば、30度以上90度以下であればよく、90度に限られるものではない。ここでは、全てのマイクロホール51の第1スリット231と第2スリット232のなす角が同じである場合について説明しているが、第1スリット231と第2スリット232のなす角が異なるマイクロホール51が混ざっていてもよい。
図4に示されている複数のマイクロホール51は、行列に並べて配置されている。しかし、複数のマイクロホール51の配置は、行列に並べて配置されない不規則な配置とすることもできる。
第1スリット231の幅W1及び第2スリット232の幅W2は、例えば20μmである。ここでは、第1スリット231の幅W1と第2スリットの幅W2が同じ場合について説明するが、幅W1と幅W2を異ならせてもよい。ここでは、各第1スリット231の幅W1がX軸方向の全体にわたって同じである場合について説明するが、一つの第1スリット231の中で幅W1の広い部分と狭い部分があってもよい。また、各第2スリット232の幅W2がY軸方向の全体にわたって同じである場合について説明するが、一つの第2スリット232の中で幅W2の広い部分と狭い部分があってもよい。ここでは、複数の第1スリット231の幅W1が全て同じである場合について説明するが、複数の第1スリット231の幅W1が全て同じでなくてもよい。ここでは、複数の第2スリット232の幅W2が全て同じである場合について説明するが、複数の第2スリット232の幅W2が全て同じでなくてもよい。このような場合には、最も広い部分で第1スリット231及び第2スリット232の幅W1,W2を定義する。
【0016】
第1スリット231の長さL1及び第2スリットの長さL2は、例えば60μmである。ここでは、第1スリット231の長さL1と第2スリットの長さL2が同じ場合について説明するが、長さL1と長さL2を異ならせてもよい。ここでは、複数の第1スリット231の長さL1が全て同じである場合について説明するが、複数の第1スリット231の長さL1が全て同じでなくてもよい。また、複数の第2スリット232の長さL2が全て同じである場合について説明するが、複数の第2スリット232の長さL2が全て同じでなくてもよい。ここでは、各第1スリット231の長さL1が全体にわたって同じである場合(スリット端が直線状である場合)について説明するが、例えば、一つの第1スリット231の中で長さの長い部分と短い部分があってもよい。各第2スリット232の長さL2も同様である。例えば、レーザでインキを除去する場合には、端部が直線状にならないため、長さL1,L2が全体にわたって同じにはならない。このような場合には、最も長い部分で第1スリット231及び第2スリット232の長さL1,L2を定義する。
次に、同じ行に並んでいるマイクロホール51a,51b、言い換えるとX軸方向に並んでいるマイクロホール51a,51bについて説明する。ここでは、マイクロホール51の中点C1の間隔がX軸方向において、例えば90μmで並んでいる場合が示されている。X軸方向において互いに隣接するマイクロホール51a,51bの距離D1は、例えば30μmである。
また、マイクロホール51は、Y軸方向に延びる列ROに沿って千鳥(ジグザグ)に配置されている。マイクロホール51の互いに隣接する行CLA,CLBの間隔Ph1は、例えば70μmである。Y軸方向において互いに隣接するマイクロホール51a,51cの距離D2は、約27μmである。
上述のように、互いに隣接するマイクロホール51a,51bの距離D1もマイクロホール51a,51cの距離D2も、長さL1,L2よりも短くなっている。ここでは、X軸方向及びY軸方向にマトリクス状に並ぶマイクロホール51のピッチが一定である場合について説明している。しかし、X軸方向及びY軸方向にマトリクス状に並ぶマイクロホール51のピッチは一定でなくてもよい。例えば、X軸方向において、ある組みの隣接するマイクロホール51の中点C1の間隔が90μm、次の組みの中点C1の間隔が91μm、次の組みの中点C1の間隔が89μm、…などのようにピッチが変化していてもよい。
【0017】
(3-2)マイクロホールでの配置の他の例
光透過領域Ar1の複数のマイクロホールは、
図4に示されているマイクロホール51に代えて、
図5に拡大して示されている第1スリット231と第2スリット232と第3スリット233と第4スリット234を組み合わせたマイクロホール52としてもよい。
図5においては、斜線で示されている部分を光が透過する。
図5において、第1スリット231がX軸方向に延び、第2スリット232がY軸方向に延びている。第1スリット231及び第2スリット232の中点C1,C2は、第3スリット233及び第4スリット234の中点C3,C4でもある。言い換えると、第1スリット231、第2スリット232、第3スリット233及び第4スリット234は、中点C1,C2,C3,C4が互いに重なるように、交差している。第1スリット231を、中点C1を中心にして、反時計回りに45度回転させると第3スリット233に重なる。第1スリット231を、中点C1を中心にして、時計回りに45度回転させると第4スリット234に重なる。
ここでは、交差する第1スリット231と第2スリット232のなす角θ1が90度である。この場合、第1スリット231と第3スリットのなす角θ2が45度であり、第1スリット231と第4スリット234のなす角θ3も45度である。しかし、
図5の第2スリット232を第3スリットと見なし、第3スリット233を第2スリットと見なすことができる。このように見なすときには、第1スリット231を45度ずつ反時計回りに回転させると、見なし第2スリット(第3スリット233)、見なし第3スリット(第2スリット232)、第4スリット234の順に重なる。言い換えると、このように見なすときには、第1スリット231と、見なし第2スリットとのなす角が角θ2となる。
図5に示されている場合には、第1スリットと、見なし第2スリットとのなす角が45度になる。
【0018】
ここでは、全てのマイクロホール52の第1スリット231と第2スリット232と第3スリット233と第4スリット234のなす角が同じである場合について説明している。しかし、第1スリット231と第2スリット232と第3スリット233と第4スリット234のなす角が異なるマイクロホール52が混ざっていてもよい。言い換えると、全てのマイクロホール52の第1スリット231と第2スリット232と第3スリット233と第4スリット234のなす角が同じでない構成とすることもできる。
図5に示されている複数のマイクロホール52は、行列に並べて配置されている。しかし、複数のマイクロホール52の配置は、行列に並べて配置されない不規則な配置とすることもできる。
各マイクロホール52について、第1スリット231の幅W1、第2スリット232の幅W2、第3スリット233の幅W3、及び第4スリット234の幅W4は、例えば10μmである。ここでは、一つのマイクロホール52について、第1スリット231の幅W1と第2スリットの幅W2と第3スリット233の幅W3と及び第4スリット234の幅W4が同じ場合について説明している。しかし、一つのマイクロホール52について、幅W1と幅W2と幅W3と幅W4を異ならせてもよい。ここでは、一つの第1スリット231の幅W1がX軸方向の全体にわたって同じである場合について説明するが、一つの第1スリット231の中で幅W1の広い部分と狭い部分があってもよい。
第1スリット231の幅W1、第2スリット232の幅W2、第3スリット233の幅W3、及び第4スリット234の幅W4が全て同じである場合について説明している。しかし、第1スリット231の幅W1、第2スリット232の幅W2、第3スリット233の幅W3、及び第4スリット234の幅W4が全て同じでなくてもよい。例えば、異なる2つのマイクロホール52a,52bについて、第1スリット231の幅W1を異ならせてもよく、第2スリット232の幅W2を異ならせてもよく、第3スリット233の幅W3を異ならせてもよく、第4スリット234の幅W4を異ならせてもよい。
第1スリット231の長さL1、第2スリット232の長さL2、第3スリット233の長さL3及び第4スリット234の長さL4は、例えば全て90μmである。ここでは、各マイクロホール52について、長さL1,L2、L3,L4が同じ場合について説明している。しかし、各マイクロホール52について、長さL1,L2,L3,L4の一部または全部を異ならせてもよい。ここでは、長さL1,L2,L3,L4がスリット全体にわたって同じである場合について説明するが、各マイクロホール52の中で長さの長い部分と短い部分があってもよく、その場合の第1スリット231の長さL1、第2スリット232の長さL2、第3スリット233の長さL3及び第4スリット234の長さL4は、最も長い部分で定義する。
同じ行CLAに並んでいるマイクロホール52a,52b、言い換えるとX軸方向に並んでいるマイクロホール52a,52bについて説明する。ここでは、X軸方向において、マイクロホール52の中点C1の間隔Ph3が例えば100μmの場合が示されている。X軸方向において互いに隣接するマイクロホール52a,52bの距離D3は、10μmである。
また、複数のマイクロホール52が、Y軸方向に延びる列ROに沿って配置されている。同じ列ROの互いに隣接するマイクロホール52a,52cの中点C1の間隔Ph4は、例えば100μmである。Y軸方向において互いに隣接するマイクロホール52a,52cの距離D4は、10μmである。互いに隣接するマイクロホール52a,52bの距離D3及びマイクロホール52a,52cの距離D4は、長さL1,L2よりも短い。
図5においては、複数のマイクロホール52が行においても列においても直線状に配置されている。しかし、複数のマイクロホール52は、千鳥に配置されてもよい。
【0019】
(4)加飾シートの製造方法
第1ステップでは、透明度80%以上の透明の透明シート21に、インキまたは蒸着膜で意匠が現されている意匠層22を形成する。蒸着膜は、例えば金属蒸着膜である。
透明シート21には、例えば樹脂フィルムを用いることができる。ただし、透明シート21の用いることができる材料は樹脂には限られない。例えば、ガラスを透明シート21の材料として用いることができる。
透明シート21に用いることができる樹脂には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂等の合成樹脂がある。透明シート21に用いられる樹脂フィルムの厚さは、例えば30μm~500μmの範囲から選択される。
意匠層22の意匠をインキで形成する場合には、例えばグラビア印刷法またはスクリーン印刷法を用いることができる。意匠層22を形成するインキには、グラビア印刷法またはスクリーン印刷法に従来から用いられているインキを用いることができる。このようなインキには、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、熱可塑性ウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂などの樹脂と、樹脂に添加される顔料または染料とが含まれる。
意匠層22に蒸着膜を形成する場合には、例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法を用いることができる。例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法により透明シート21に金属蒸着膜が蒸着される。蒸着後に、例えば、金属蒸着膜をエッチングして、意匠が表される。金属蒸着膜に用いられる材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、スズまたは銅である。
【0020】
第2ステップでは、レーザ光線を光透過領域Ar1に照射する。透明シート21に穴を開けずにインキまたは蒸着膜をレーザ光線で除去して、光透過領域Ar1の全体に、上述のマイクロホール51,52のような複数のマイクロホールを形成する。このようなレーザ光線で形成されるスリットは、マイクロホール51,52の第1スリット231、第2スリット232、第3スリット233及び第4スリット234に相当するものである。このようなレーザ光線で形成されるスリットは、意匠層22に与えるダメージを小さくするため、幅50μm以下且つ長さ500μm以下であることが好ましい。
第1スリット231から第4スリット234を形成するためのレーザ光線の照射には、例えば、CO
2レーザ、ファイバーレーザ、YVO4レーザまたはYAGレーザを使用できる。レーザ光線の波長は、例えば、0.2μmから11μmの範囲から選択できる。
第2ステップでは、例えば、レーザ光線の照射ポイントを固定し、意匠層22が形成された透明シート21をXYステージ(図示せず)に載せて、XYステージで透明シート21を移動させながらレーザ光線を照射する。レーザ光線の照射のタイミングと、XYステージの移動は、例えばコントローラ(図示せず)によりコントロールされる。コントローラは、例えばCPUとメモリを含んで構成される。レーザ光線の照射のタイミングとXYステージの移動の軌跡は、予めプログラミングされ、コントローラのメモリに記憶されている。
図6及び
図7には、プログラミングされたレーザ光線による照射領域を二次元データに変換したデータ変換後の照射領域が示されている。
図6においては、十字形のマイクロホール53以外の意匠層22が斜線で示されている。
図7においては、アスタリスク形のマイクロホール54以外の意匠層22が斜線で示されている。
第3ステップとして、第1ステップ及び第2ステップで行われた処理以外の処理が行われてもよい。第3ステップとして、例えば、レーザ光線により複数のマイクロホール53,54が形成された透明シート21及び意匠層22を保護するため、意匠層22を覆う保護層を形成してもよい。
図8及び
図9には、レーザ光線により加工された後の十字形のマイクロホール51と、レーザ光線により加工された後のアスタリスク形のマイクロホール52とが示されている。
【0021】
(5)変形例
(5-1)変形例A
図10に示されているように、複数の十字形のマイクロホール51について、X軸方向に対する第1スリット231の角度を個別に変えて配置してもよい。
図10に示されている複数のマイクロホール51は、X軸方向に対する第1スリット231の角度を変更しているが、第1スリット231と第2スリット232のなす角を90度に固定している。しかし、複数のマイクロホール51について、X軸方向に対する第2スリット232の角度を、第1スリット231とは無関係に、個別に変えて配置してもよい。例えば、X軸方向に対する第1スリット231の角度を5度とするとともにX軸方向に対する第2スリット232の角度を95度としたものと、X軸方向に対する第1スリット231の角度を6度とするとともにX軸方向に対する第2スリット232の角度を98度としたものとを配置してもよい。
また、
図11に示されているように、複数のアスタリスク形のマイクロホール52について、X軸方向に対する第1スリット231の角度を個別に変えて配置してもよい。
図11に示されている複数のマイクロホール52は、X軸方向に対する第1スリット231の角度を変更しているが、第1スリット231と第2スリット232のなす角、第1スリット231と第3スリット233のなす角、第1スリット231と第4スリット234のなす角を固定している。しかし、複数のマイクロホール51について、X軸方向に対する第2スリット232の角度を、第1スリット231とは無関係に、個別に変えて配置してもよい。
(5-2)変形例B
上記実施形態では、第1スリット231と第2スリット232を交差させて形成した十字形のマイクロホール51及び、第1スリット231と第2スリット232と第3スリット233と第4スリット234を交差させて形成したアスタリスク形のマイクロホール52について説明した。しかし、マイクロホールの形状は、マイクロホール51,52の形状に限られるものではない。
例えば、3本のスリットを中点で重ねたアスタリスク形のマイクロホールを用いることもできる。この場合、例えば、X軸方向に延びる第1スリットに対して中点を中心に60度反時計回りに回転した第2スリット、X軸方向に延びる第1スリットに対して中点を中心に120度反時計回りに回転した第3スリットをマイクロホールが有するように構成することができる。
また、マイクロホールを形成する場合に、スリットを重ねる位置は、互いの中点に限られるものではない。例えば、各スリットを2:3に分ける点で重ねてもよい。例えば、各スリットの端部を重ねてもよい。例えば、2本のスリットの端部を重ねると、V字形のマイクロホールを形成することができる。
また、異なる形状のマイクロホールを行列に配置してもよい。例えば、十字形のマイクロホール51とアスタリスク形のマイクロホール52を交互に配置してもよい。
【0022】
(5-3)変形例C
上記実施形態では、表示装置1の画面10が、マトリクス状に配置されている複数の光源11を用いて構成される場合について説明した。しかし、画面10の構成はこのような複数の光源からなるものに限られるものではない。画面10は、例えば、加飾シートの裏側に、液晶とバックライトとが順に配置された構成にすることもできる。この場合、液晶を透過した光が光透過領域Ar1を通過するように構成すれば、液晶で表示した図柄を光透過領域Ar1のマイクロホール51,52などを用いて表示することができる。
(5-4)変形例D
上記実施形態では、透明シート21の表面に凹凸が形成されていない加飾シート20について説明した。しかし、透明シート21の表面に凹凸が形成されてもよい。言い換えると、加飾シート20は、マット調の外観を呈してもよい。
(5-5)変形例E
上記実施形態では、マイクロホール51,52を構成している第1スリット231から第4スリット234が直線状である場合について説明した。しかし、マイクロホールを構成するスリットは、直線状でなくてもよい。マイクロホールを構成するスリットは、例えば曲線状であってもよい。
【0023】
(6)特徴
第1スリット231と第2スリット232を含む加飾シート20の特長について、
図12に示されている加飾シート321と比較しながら説明する。
図12には、加飾シート321の一部分が拡大して示されている。
図12に示されている加飾シート321は、複数の円形の穴351を意匠層22に形成したものである。
図12においては、斜線で示されている箇所を光が透過する。穴の直径Di1は、25μmである。円形の穴351は、X軸方向及びY軸方向に沿って行列に配置されている。X軸方向及びY軸方向のいずれにおいても、円形の穴351の中心点の間隔Ph4,Ph5は、40μmである。
上述の加飾シート321と比較するのは、実施形態で例示した加飾シート20のアスタリスク形のマイクロホール52である。比較するアスタリスク形のマイクロホール52(
図5参照)の第1スリット231~第4スリット234は、幅W1~W4が30μm、長さL1~L4が270μm、X軸方向及びY軸方向の中点C1の間隔が300μmである。
【0024】
データ変換後の開口率は、加飾シート321が約37%、アスタリスク形のマイクロホール52を用いた加飾シート20(以下、アスタリスク形の加飾シート20と呼ぶ。)が約28%である。開口率は、光透過領域Ar1の総面積に対する開口部分の総面積の割合である。データ変換後の開口率は、
図6及び
図7に示されているようなメモリに記憶されているデータから計算した開口率である。
透過率は、加飾シート321が約11%、アスタリスク形の加飾シート20が約14%である。なお、レーザ光線で加工する前の透明シート21に意匠層22を形成した状態での透過率は、約7%である。
図14及び
図15に、光を透過している状態の加飾シート321と加飾シート20が示されている。
図14に示されている加飾シート321及び
図15に示されている加飾シート20には、木目模様が印刷されている。
図13には、
図15に示されている加飾シート20の断面構造が模式的に示されている。加飾シート321の断面構造は図示していないが、加飾シート321は、
図13に示されている加飾シート20と同じ断面構造を有する。
図13に示されている加飾シート20は、透明シート21の表面に、凹凸を形成するための透明な樹脂24が印刷されている。透明シート21の裏面には、意匠層22が形成されている。意匠層22において、柄22a,22bが印刷されている。透明シート21の反対側の意匠層22の面には、接着層25が形成されている。接着層25は、例えば、成形同時加飾の際に射出された成形体に接着するための接着剤が塗布されている層である。
光を透過していない状態での意匠層22の評価としては、アスタリスク形の加飾シート20、及び加飾シート321の外観は、商品となり得るものであった。
図14に示されている加飾シート321と、
図15に示されている加飾シート20のいずれにも、第1オブジェクトである木目模様の中に、第2オブジェクトである「35」の文字が映し出されている。
図14に示されている「35」の文字に比べ、
図15に示されている「35」の文字の方が、文字を構成している光透過領域Ar1のマイクロホール52が一つ一つはっきりと見えている。一つ一つのマイクロホール52の視認性が高いため、「35」の文字もはっきりと見えている。それに対して、
図14の「35」の文字を構成しているマイクロホール52の一つ一つが明瞭でないため、「35」の文字と背景の木目模様との分離が十分に行われていないように見える。
【0025】
(6-1)
加飾シート20は、意匠層22によって表される意匠以外に、複数のマイクロホール51,52によって図柄を表示することができる。各マイクロホール51,52が第1スリット231と第2スリット232を交差してなるものであるため、例えば、円形の穴351のようなドットなどで表示される図柄と比較すると、
図15に示されている複数のマイクロホール52の一つ一つの輝度を大きくして各マイクロホール52の視認性を向上させることができる。その結果、例えば、
図15に示されている複数のマイクロホール52によって表示される図柄の視認性を向上させることができる。
また、このような加飾シート20を備える表示装置1は、マイクロホール51,52の大きさに比して、意匠層22をより多く残すことができる。例えば、
図2に示されている木目模様を鮮明に表しながら、
図1の時刻表示を十分に表示させることができる。
(6-2)
上述の加飾シート20では、例えば、マイクロホール51,52の第1スリット231及び第2スリット232が、それぞれ、幅が50μm以下で、長さが500μm以下であるように構成されている。このように構成された加飾シート20は、複数のマイクロホール51,52によって表示される図柄(第2オブジェクト)の視認性を向上させることと、意匠層22の図柄(第1オブジェクト)の質が低下するのを抑制することとを両立させ易くなる。
(6-3)
加飾シート20は、光透過領域Ar1の光の透過率が遮光領域Ar2の光の透過率よりも10%以上大きくならないので光を透過させないときの例えば木目模様などの1次オブジェクトの良好な視認性を確保できる。また光透過領域Ar1の光の透過率が遮光領域Ar2の光の透過率よりも3%以上大きいので、光が透過することで表示される
図15の「35」の文字のような2次オブジェクトの良好な視認性を確保することができる。
【0026】
(6-4)
加飾シート20では、第1スリット231及び第2スリット232は、それぞれ直線状であり、第1スリット231と第2スリット232のなす角の角度が、30度以上90度以下であるように構成される。このように構成された加飾シート20は、第1スリット231と第2スリット232の間にインキまたは蒸着膜を残し易くなる。その結果、マイクロホール51,52を形成することによる木目模様などの1次オブジェクトの質の低下を抑制することができる。
(6-5)
加飾シート20では、複数のマイクロホールは、それぞれ、透明シートを透過する光が通過するようにインキまたは蒸着膜が付けられていない第3スリットを含むように構成することができる。この場合、第3スリットが直線状であり、第1スリットの中点、第2スリットの中点及び第3スリットの中点が互いに重ねられており、第3スリットは、第1スリットとのなす角及び第2スリットとのなす角が30度以上90度以下である、ように構成することができる。このように構成された加飾シート20は、第1スリット231と第2スリット232だけからなるマイクロホール51を配列する場合に比べ、第3スリットの存在によるモアレなどの干渉縞を低減させつつ、マイクロホール一つ一つの輝度を向上させ易くなる。
【0027】
(6-6)
図5に示されている加飾シート20のように、複数のマイクロホール52は、それぞれ、第1スリット231、第2スリット232、第3スリット233、及び第4スリット234を含むように構成することができる。各マイクロホール52の第1スリット231から第4スリット234が直線状であり、第1スリット231の中点C1、第2スリットの中点C2、第3スリットの中点C3及び第4スリットの中点C4が互いに重ねられている。各マイクロホール52において、第1スリット231、第2スリット232、第3スリット233及び第4スリット234は、互いに隣接するスリット同士のなす角が45度である、ように構成されている。このように構成された加飾シート20は、第4スリット234の存在によるモアレなどの干渉縞を低減させつつ、マイクロホール52一つ一つの輝度を向上させ易くなる。
【0028】
(6-7)
図4に示されている加飾シート20のマイクロホール51のように、マイクロホールを千鳥状に並べて配置することができる。このように構成された加飾シート20は、マイクロホール51を高い密度で配置し易く、所望の光の透過率を確保し易くなる。
(6-8)
加飾シート20は、複数のマイクロホール51,52が、第1スリット231の長さL1よりも短い距離D1,D2,D3,D4だけ離して、行列に並べて配置されている。この加飾シート20は、マイクロホール51,52を高い密度で配置して、所望の光の透過率を容易に確保できる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 表示装置
20 加飾シート
21 透明シート
22 意匠層
51,52 マイクロホール
231 第1スリット
232 第2スリット
233 第3スリット
234 第4スリット